説明

メーキャップ化粧料

【課題】 発色が良好で見たままの色が塗布され、なおかつ経時での色残りが良好で化粧持ちに優れたメーキャップ化粧料を提供する。
【解決手段】(A)疎水化処理色材と、(B)金属石鹸処理微粒子酸化チタンとを配合し、湿式成型により製造されるメーキャップ化粧料を提供する。前記疎水化処理色材は、シリコーン化合物又はフッ素化合物で処理された色材であるのが好ましく、前記金属石鹸処理微粒子酸化チタンは、炭素数が12〜18の脂肪酸のカルシウム、マグネシウム、亜鉛、又はアルミニウム塩で処理した微粒子酸化チタンであるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水化処理色材及び金属石鹸処理微粒子酸化チタンを配合したメーキャップ化粧料に関する。より詳細には、湿式成型されたメーキャップ化粧料であって、発色性及び化粧持ちに優れたメーキャップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メーキャップ化粧料は顔料(有機、無機、パール顔料など)を種々の基剤中に分散させたものであり、様々な形態の製品が上市されている。特に、アイシャドー、口紅、頬紅などのポイントメーキャップ化粧料は、肌に塗布することにより色彩を付与し美的効果を得る化粧料であって、その発色性は重要な特性の一つである。
【0003】
これらのメーキャップ化粧料に多く配合される粉末成分の性質は当該化粧料の発色性のみならず、肌へのなじみ、滑らかさ等の使用性に影響を与えるため、用途に応じて適切な粉末成分を選択して配合することが必要であり、表面処理等によって所望の性質を持った粉末を得るための様々な工夫がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、金属コロイド微粒子を金属酸化物に内包した着色複合粉末及びそれを配合した化粧料が記載され、当該着色複合粉末は特に青色又は緑色に鮮やかに発色し、美しい色彩を有する化粧料が得られるとされている。
また、特許文献2には、特定の球状樹脂粉末、極性油分、固形油分、及び好ましくは蛍光を発する染料を所定比率で配合したスティック状メーキャップ化粧料が記載され、鮮やかでくすみのない発色が得られるとされている。
【0005】
一方、特許文献3には、特定の粉体をカチオン性界面活性剤で処理したカチオン性界面活性剤処理粉体と、シリコーン化合物又はフッ素化合物で表面処理した疎水化処理色材とを配合した場合、肌へのなじみ、滑らかさ等の使用性に優れ、経時での色ぐすみが少ない粉末化粧料が得られると記載されている。
しかしながら、一般のメーキャップ化粧料においては、化粧料自体の色彩と肌に塗布したときの色彩とが異なる場合が多く、さらには肌に塗布した際に得られた美しい色彩が経時で変化してしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−24677号公報
【特許文献2】特開2008−247844号公報
【特許文献1】特開2006−199645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明における課題は、発色が良好で見たままの色が塗布され、なおかつ経時での色残りが良好で化粧持ちに優れたメーキャップ化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、湿式成型で製造されるメーキャップ化粧料において、(A)疎水化処理色材及び(B)金属石鹸処理微粒子酸化チタンを配合することにより、発色に優れ、経時での色残りも良好な化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、(A)疎水化処理色材と、(B)金属処理石鹸処理微粒子酸化チタンとを配合し、湿式成型により製造されるメーキャップ化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のメーキャップ化粧料は、発色に優れ、見たままの色を肌上に再現することができ、なおかつ化粧持ちに優れ、経時での変色がなく塗布時の色が長時間に渡って維持されるという効果を奏する。また、本発明のメーキャップ化粧料は容器からのとれ及び肌へのフィット感にも優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のメーキャップ化粧料は、疎水化処理色材(成分A)を含有する。本発明における疎水化処理色材とは、表面を疎水化処理された色材を意味する。
表面を疎水化する表面処理剤としては、特に限定されないが、シリコーン化合物またはフッ素化合物を用いるのが好ましい。
シリコーン化合物としては、ジメチコン、メチコン、シランカップリング剤、アルキル変性シリコーン、シリコーンレジンなどが挙げられる。
フッ素化合物としては、フッ素変性アルキル化合物およびフッ素変性シリコーン化合物が挙げられ、例えばパーフルオロアルキルリン酸エステルとその塩、パーフルオロアルキルシラン、テフロン(登録商標)、パーフルオロアルキルカルボン酸などがを含む。またフッ素化合物とともにアクリル酸アルキルや(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマーなどと併用した疎水化処理を施してもよい。
【0012】
疎水化処理される色材としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの白色顔料や、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青、などの有色顔料が挙げられる。
【0013】
本発明のメーキャップ化粧料における疎水化処理色材の配合量は、通常は0.01〜40質量%、好ましくは0.05〜35質量%である。配合量が0.01質量%未満であると色材としての発色が認められない場合があり、40質量%を越えて配合するとチップ等での製品の取れや肌への伸び等の使用性が悪くなる傾向がある。
【0014】
本発明のメーキャップ化粧料は、さらに金属石鹸処理微粒子酸化チタン(成分B)を含有する。本発明における金属石鹸処理微粒子酸化チタンは、微粒子酸化チタンの表面を金属石鹸で処理したものである。
【0015】
本発明の金属石鹸処理微粒子酸化チタンを構成する微粒子酸化チタンは、微粒子酸化チタンと呼ばれるものであれば特に限定されないが、一般的には、平均一次粒子径が0.1μm以下の微粒子酸化チタンが好ましく使用される。微粒子酸化チタンの平均粒子径の下限は特に限定されないが、通常は30nm程度である。微粒子酸化チタンは、例えば、硫酸法や塩素法等の常法により製造することが可能であり、市販品を用いることも可能である。市販の微粒子酸化チタンとしては、例えば、SIVシリーズ、TTO−55シリーズ、TTO−Sシリーズ(以上、石原産業社製)、MT−100TV、MT−500V、 MT−01(以上、テイカ社製)などが挙げられる。
【0016】
本発明においては、表面を金属石鹸処理された微粒子酸化チタンが必須成分として用いられる。表面処理に使用される金属石鹸は脂肪酸の多価金属塩であり、特に脂肪酸の炭素数が12〜18のものが好ましく、またそれらの塩としては、例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等が挙げられ、特にアルミニウム塩が好ましい。
好ましい具体例として、ステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム,ミリスチン酸アルミニウム,ジミリチン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0017】
微粒子酸化チタンの表面を金属石鹸処理する方法は特に限定されず、例えば、金属石鹸をイソパラフィン,イソプロピルアルコールなどの揮発性溶媒に溶解し、それを微粒子酸化チタンと混合した後、揮発性溶媒を揮散させることによって調製することができる。また単に微粒子酸化チタンと金属石鹸とを混合するだけでもよい。
【0018】
本発明のメーキャップ化粧料における金属石鹸処理微粒子酸化チタンの配合量は、通常は0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%である。配合量が0.1質量%未満であると発色の向上効果が見られなくなる傾向があり、5質量%を越えて配合すると肌へ塗布した際に微粒子に起因するキシミ感が見られるなど使用性が悪くなる傾向がある。
【0019】
さらに本発明のメーキャップ化粧料は、湿式成型によって製造されることを特徴としている。湿式成型とは、前記疎水化処理色材(成分A)及び金属石鹸処理微粒子酸化チタン(成分B)を含む粉末成分と油分等を含む油剤成分とを含有する化粧料基剤に溶媒を添加してスラリーとし、次いで該スラリーを容器内に充填した後、前記溶剤を除去する成型方法である(例えば、特公昭57−60004号公報、特公昭61−54766号公報を参照)。
【0020】
湿式成型に用いられる揮発性溶媒としては、例えば、環状シリコーン、揮発性直鎖状シリコーン、軽質流動イソパラフィン、塩化メチレン、フルオロカーボン、ヘキサン、シクロヘキサン、エーテル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、テルペン類、水、1,3ブタンジオール、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられ、配合成分の種類等に応じて適宜選択することができる。
【0021】
また、湿式成型に用いられる湿式分散機としては、例えば、ディスパーミキサーやホモジナイザーなどの通常の湿式分散機から、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ、ステンレスビーズなどのメディアを用いた媒体攪拌ミルが挙げられ、特に限定されるものではない。
【0022】
本発明のメーキャップ化粧料は、上記の必須成分A及びBに加えて、従来からメーキャップ化粧品に使用されている他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合していてもよい。具体的には、粉末成分(金属石鹸処理微粒子酸化チタン及び疎水化処理色材を除く)、油分、ワックス、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、色素、防腐剤などが挙げられる。
【0023】
前記必須成分A(疎水化処理色材)及び成分B(金属石鹸処理微粒子酸化チタン)以外の粉末成分は、体質顔料、色剤、パール剤、ラメ剤などを含み、従来からメーキャップ化粧料等に使用されているものでよい。
【0024】
体質顔料としては、例えば、マイカ、セリサイト、タルク、カオリンなどの粘度鉱物の粉砕品、無水ケイ酸、酸化セリウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、含フッ素金雲母、合成タルク、硫酸バリウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。
色剤(着色顔料)としては、例えば、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、酸化チタン、酸化亜鉛、コンジョウなどを挙げることができる。
【0025】
パール剤としては、二酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン処理雲母チタン、コンジョウ処理雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ処理雲母チタン、酸化クロム処理雲母チタン、黒酸化チタン雲母チタン、アクリル樹脂被覆アルミニウム末、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化チタン被覆ガラス粉、ポリエチレンテレフタレート・ポチメチルメタクリレート積層フィルム末、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等が代表例として挙げられる。
【0026】
油分としては、炭化水素油、エステル油、シリコーン油などが挙げられる。具体的には、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン等の炭化水素油、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、バチルアルコール等の高級アルコール、セチルー2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、2−オクチルドデシルミリステート、ネオペンチルグリコールー2−エチルヘキサノエート、トリオクタン酸グリセリル、テトラオクタン酸ペンタエリスリトール、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、イソプロピルミリステート、ミリスチルミリステート、トリオレイン酸グリセリル等のエステル油、オリーブ油、アボカド油、ホホバ油、ヒマワリ油、サフラワー油、椿油、マカデミアナッツ油、ミンク油、ラノリン、液状ラノリン、酢酸ラノリン、ヒマシ油等の油脂、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン系油分、フッ素変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、パーフロロポリエーテル、パーフロロカーボン等のフッ素系油分等が含まれる。
【0027】
ワックスとしては、例えば、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ビースワックス、モクロウ、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィンワックス等が挙げられる。
保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等の多価アルコール系保湿剤が挙げられる。
これらの任意成分は、湿式成型における化粧料基剤の段階で基剤に混合される。
【0028】
上記したように、本発明のメーキャップ化粧料は特に発色性に優れ色持ちが良好である。従って、本発明の化粧料は、アイシャドー、頬紅、口紅などのポイントメーキャップ化粧料において、中でもアイシャドーとして使用するのに適している。
【実施例】
【0029】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0030】
(実施例及び比較例)
下記の表1に掲げた組成を有する試料(アイシャドー)を湿式成型法で調製した。湿式成型における揮発性溶媒としてエタノールを使用した。得られた各試料について、容器からのとれの良さ、塗布した際の発色の良さ、肌へのフィット感について、以下の評価方法及び基準に従って評価した。それらの結果を表1に併せて示す。
【0031】
(評価方法)
各試料をパネリスト(10名)に使用してもらい、5段階の官能評価(スコア)した。そのスコア平均値により、下記評価基準で判定した。
(スコア)
5:非常に優れている
4:優れている
3:普通
2:劣る
1:非常に劣る
(評価基準)
◎:評価値(平均値)4.0以上5.0点以下
○:評価値(平均値)3.0以上4.0点未満
△:評価値(平均値)2.0以上3.0点未満
×:評価値(平均値)1.0以上2.0点未満
【0032】
【表1】

【0033】
金属石鹸処理微粒子酸化チタンを配合した実施例1は、その他の粉末成分を配合した比較例1〜7に比較して、とれ、発色及びフィット感の全ての項目において優れていた。
【0034】
以下に、本発明に係るメーキャップ化粧料の他の処方例を挙げる。これらの処方例の化粧料によっても前記実施例1と同様に良好な発色、フィット感及び使用性が得られた。
【0035】
処方例1(アイシャドー):
配合成分 配合量(質量%)
ワセリン 2
ジメチルポリシロキサン 2
メチルフェニルポリシロキサン 2
グリセリン 0.1
トリオクタノイン 1
植物性スクワラン 0.5
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1
窒化ホウ素 2
雲母チタン 4
金雲母 4
合成金雲母 0.1
セリサイト 25
タルク 残余
マイカ 7
ミリスチン酸亜鉛 1
ステアリン酸アルミニウム 0.01
無水ケイ酸 4
フィトステロール 0.01
酢酸DL−α−トコフェロール 0.02
D−δ−トコフェロール 0.02
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.02
パラオキシ安息香酸エステル 0.2
アルキルシラン処理酸化鉄 9
ステアリン酸アルミ処理微粒子酸化チタン 3
合成ケイ酸ナトリウム/マグネシウム 0.1
香料 適量
リンゴ酸ジイソステアリル 5
トリイソステアリン 2
【0036】
処方例2(アイシャドー):
配合成分 配合量(質量%)
流動パラフィン 3
ジメチルポリシロキサン 3
マイカ 20
タルク 残余
ステアリン酸アルミ処理微粒子酸化チタン 2
δ−トコフェロール 適量
パラオキシ安息香酸エステル 0.2
チタン酸コバルト 4
シリコーン処理酸化鉄 4
ケイ酸アルミニウムマグネシウム 1.5
香料 適量
セリサイト 20
セスキイソステアリン酸ソルビタン 2
ミリスチン酸亜鉛 5
【0037】
処方例3(頬紅):
配合成分 配合量(質量%)
ベンガラ被覆雲母チタン 30
タルク 残余
マイカ 15
δ−トコフェロール 0.02
パラオキシ安息香酸エステル 適量
色素 適量
アルキル変性シリコーン処理酸化鉄 1
ステアリン酸処理微粒子酸化チタン 0.5
ケイ酸アルミニウムマグネシウム 3
香料 適量
架橋型シリコーン末 5
ポリアクリル酸アルキル 10
金属石けん処理タルク 15

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)疎水化処理色材と、(B)金属処理石鹸処理微粒子酸化チタンとを配合し、湿式成型により製造されるメーキャップ化粧料。
【請求項2】
前記(A)疎水化処理色材が、シリコーン化合物又はフッ素化合物で処理された色材である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記(B)金属石鹸処理微粒子酸化チタンが、炭素数が12〜18の脂肪酸のカルシウム、マグネシウム、亜鉛、又はアルミニウム塩で処理した微粒子酸化チタンである、請求項1又は2に記載の化粧料。

【公開番号】特開2012−149005(P2012−149005A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8569(P2011−8569)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】