説明

モサプリドを含有する固形製剤

【課題】
本発明の課題は、モサプリド又はその生理学的に許容される塩の分解生成物の生成を防ぐことである。
【解決手段】
本発明は、モサプリドまたはその生理学的に許容される塩を含有する固形製剤であって、糖類無水和物及び/又は糖アルコール無水和物を含む前記剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド(以下、「モサプリド」ともいう)又はその生理学的に許容される塩を含有する固形製剤、特にはモサプリド又はその生理学的に許容される塩と糖類無水和物及び/又は糖アルコール無水和物とを含む固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
モサプリドは、慢性胃炎に伴う消化器症状、例えば胸やけ、吐気及び嘔吐など、の治療の為に用いられる化合物である。当該化合物の生理学的に許容される塩であるモサプリドクエン酸塩・2水和物が既に実用化されている。実用化された製品は、日本ではガスモチン(商標)なる商品名の下に市販されている。当該製品は、モサプリドクエン酸塩を2.5mg又は5mg含有する錠剤である。当該錠剤は、添加物として乳糖水和物、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、ヒプロメロース、マクロゴール6000、酸化チタン及びタルクを含む。また、モサプリドクエン酸塩は苦味を呈するので、当該錠剤はフィルムコーティング錠の形態をとっている。また、モサプリドは、長期保存下において分解して分解生成物を生じる。当該分解生成物が生じることを防ぐ為に、当該錠剤はアルミ包装が施されている。当該分解生成物は、一般に類縁物質とも呼ばれる。第十五改正日本薬局方第二追補はモサプリドクエン酸塩錠の純度試験を記載し、当該純度試験において類縁物質の量が一定範囲以内になる必要があると定めている。
【0003】
下記特許文献1では、「4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド(以下、「化合物A」という)またはその生理学的に許容される塩を含有する速溶性のフィルムコーティング錠」を記載し(請求項1)、当該フィルムコーティング錠は、「(a)化合物Aまたはその生理学的に許容される塩を含有する素錠および(b)該素錠の表面に、可塑剤を実質的に含まないか、もしくは、(中略)特定製剤化成分を少なくとも1種含む被覆層を有する」(請求項1)と記載されている。上記化合物Aは、「(±)−4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド(以下、「モサプリド」ということがある。)」と記載されているとおり(第1頁第8〜10行)、モサプリドである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/011637号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モサプリドは、時間とともに分解して分解生成物を生成する。従って、当該分解生成物の生成を抑制して、モサプリド又はその生理学的に許容される塩を含む固形製剤の保存安定性を改善する必要がある。そこで、本発明は、モサプリドの分解生成物の生成を防ぐことを目的とする。すなわち、本発明の課題は、モサプリド又はその生理学的に許容される塩を含有する固形製剤の保存安定性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はモサプリド又はその生理学的に許容される塩を含む固形製剤を提供する。当該固形製剤は、糖類無水和物及び/又は糖アルコール無水和物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明において、モサプリド又はその生理学的に許容される塩と糖類無水和物及び/又は糖アルコール無水和物との組合せにより、モサプリドの分解を抑制することができ、その結果、分解生成物の生成を防ぐことができる。よって、本発明に従う固形製剤は保存安定性に優れている。さらに、本発明に従う固形製剤では、上記特許文献1に記載されるような特別なフィルムコーティングを施さなくても、モサプリドの分解が抑制される。さらに、本発明によって、モサプリドの分解を防ぐ為に従来用いられていたアルミ包装などの保護包装が不要となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
モサプリドは、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドともいう。モサプリドは、ラセミ体であってもよく、または一方の光学活性体であってもよいが、ラセミ体が好適である。モサプリドは、選択的セロトニン4受容体アゴニストとして、良好な消化管運動促進作用を有する。モサプリドは、例えば、米国特許第4870074号明細書に記載の方法によって製造されうる。
【0009】
本発明において、モサプリドの生理学的に許容される塩は、好ましくは酸付加塩である。酸付加塩のうち、有機酸の付加塩としては、例えばギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩等が挙げられ、無機酸の付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が挙げられる。これら酸付加塩のうち特にクエン酸塩が好ましい。さらに、モサプリド又はその生理学的に許容される塩は、溶媒和物であってもよく、水和物若しくは非水和物であってもよい。好ましくはクエン酸塩の水和物がよく、とりわけクエン酸塩・2水和物が好ましい。モサプリドのクエン酸塩・2水和物は、下記式:
【化1】

により表される化合物である。本発明において、固形製剤に含まれるモサプリド又はその塩の重量割合は、固形製剤の全重量に対して、0.5〜10重量%、特には1〜8重量%、より特には1.5〜6重量%、さらにより特には2〜5重量%である。この割合によって又はこの割合と下記糖類無水和物及び/又は糖アルコール無水和物の割合との組合せによって、モサプリド又はその塩の分解が抑制されうる。
【0010】
本発明において、糖類無水和物とは、水和水を含まない糖類をいう。すなわち、糖類無水和物は、化学構造上水分子が0である糖類である。糖アルコール無水和物とは、水和水を含まない糖アルコールをいう。すなわち、糖類アルコール無水和物は、化学構造上水分子が0である糖アルコールである。水和水は結晶水とも呼ばれる。本発明において、糖類無水和物及び/又は糖アルコール無水和物の存在により、モサプリド又はその塩の分解が抑制されると考えられる。
【0011】
本発明において、糖類無水和物とは、特には二糖類又は単糖類の無水和物であり、例えば白糖無水和物、乳糖無水和物、ぶどう糖無水和物、果糖無水和物、マルトース無水和物、トレハロース無水和物、ガラクトース無水和物及び/又はマンノース無水和物であり、モサプリド又はその塩の分解抑制の観点から好ましくは白糖無水和物及び/又はトレハロース無水和物であり、特に好ましくはトレハロース無水和物である。これらの糖類無水和物は市販入手可能である。白糖無水和物としては例えばフロストシュガーFS2(日新製糖株式会社)を、トレハロース無水和物としては例えばトレハロースP(旭化成ケミカルズ株式会社)を、それぞれ挙げることができる。本発明において、固形製剤に含まれる糖類無水和物の重量割合は、固形製剤の全重量に対して、5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜78重量%、より好ましくは50〜75重量%、さらにより好ましくは60〜70重量%である。この割合によって又はこの割合と上記モサプリド又はその塩の重量割合との組合せによって、モサプリド又はその塩の分解が抑制されうる。
【0012】
本発明において、糖アルコール無水和物とは、例えばD−マンニトール無水和物、ソルビトール無水和物、キシリトール無水和物、エリスリトール無水和物、マルチトール無水和物、イソマルト無水和物、ラクチトール無水和物、アラビトール無水和物、ガラクチトール無水和物及び/又はリビトール無水和物であり、モサプリド又はその塩の分解抑制の観点の観点から好ましくはD−マンニトール無水和物、ソルビトール無水和物、キシリトール無水和物、エリスリトール無水和物及びマルチトール無水和物からなる群から選ばれる1以上の糖アルコール無水和物であり、特に好ましくはD−マンニトール無水和物である。これらの糖アルコール無水和物は市販入手可能である。D−マンニトール無水和物は例えば、マンニットP(三菱商事フードテック株式会社)である。エリスリトール無水和物は例えば、エリスリトール(物産フードサイエンス株式会社)である。ソルビトール無水和物は例えば、ソルビトール(物産フードサイエンス株式会社)である。キシリトール無水和物は例えば、キシリトール(物産フードサイエンス株式会社)である。マルチトール無水和物は例えば、アマルティMR(三菱商事フードテック株式会社)である。本発明において、固形製剤に含まれる糖アルコール無水和物の重量割合は、固形製剤の全重量に対して、5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜78重量%、さらにより好ましくは60〜70重量%である。この割合によって又はこの割合と上記モサプリド又はその塩の重量割合との組合せによって、モサプリド又はその塩の分解が抑制されうる。
【0013】
本発明において、固形製剤に含まれる糖類無水和物及び糖アルコール無水和物の合計重量の割合は、固形製剤の全重量に対して、5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜78重量%、さらにより好ましくは60〜70重量%である。この割合によって又はこの割合と上記モサプリド又はその塩の重量割合との組合せによって、モサプリド又はその塩の分解が抑制されうる。
【0014】
本発明の固形製剤は、例えば錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤などの形態をとりうるがこれらに限定されない。本発明の固形製剤は、モサプリド又はその塩の分解抑制の観点から、好ましくは錠剤である。当該錠剤はフィルムコーティングされていてもよい。すなわち、当該錠剤はフィルムコーティング錠でありうる。当該フィルムコーティングは当技術分野で通常用いられるものであってよい。また、当該錠剤は口腔内崩壊錠
でありうる。口腔内崩壊錠とは、口腔内で容易に崩壊する錠剤であり、特には流通過程で崩れない程度の適度な強度を有することにより錠剤の取り扱いやすさを残したまま、錠剤が口腔内で唾液または少量の水で崩壊することにより飲み込みやすくした製剤である。当該口腔内崩壊錠は、当技術分野で既知の技術により製造されうる。
【0015】
本発明の固形製剤は、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、割滑剤などの製剤化成分を配合しても良い。本発明において、上記糖類無水和物及び/又は糖アルコール無水和物は、賦形剤としての役割も果たしうる。
【0016】
本発明において、崩壊剤として、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシプロピルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプンなどが挙げられる。これらの崩壊剤のうち、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが、熱又は湿度などによる崩壊遅延が生じにくいという観点から、崩壊剤として好ましい。崩壊剤の含有量は、当技術分野で一般的なものであってよく、例えば、剤の全重量に対して通常1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%でありうる。本発明において、1〜20重量%とは1重量%以上20重量%以下を意味する。
【0017】
本発明において、結合剤として、例えばヒドロキシプロピルセルロース、デンプンのり、ポビドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、カルメロースナトリウムなどが挙げられる。本発明において、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプンのり、ポビドン及びポリビニルアルコールが、製剤化しやすいという観点から、結合剤として好ましい。結合剤の配合量は、当技術分野で一般的なものであってよく、例えば、剤の全重量に対して通常1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0018】
本発明において、軽質無水ケイ酸及び含水二酸化ケイ素などの流動化剤、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル及び硬化油などの割滑剤などの製剤化成分を必要に応じて本発明の剤に配合してもよい。
【0019】
本発明の固形製剤は、フィルムコーティングを有しうる。当該フィルムコーティングは、フィルム基剤、可塑剤、着色剤、固着防止剤、光沢化剤などを必要に応じて適宜配合しても良い。当該フィルムコーティングは、当技術分野で一般に用いられるものであってよい。
【0020】
本発明の固形製剤は、公知の方法(例えば、第15改正日本薬局方製剤総則に記載されている方法)に従って製造することができる。例えば、錠剤の場合、モサプリド又はその生理学的に許容される塩と、糖類無水和物又は糖アルコール無水和物と、賦形剤等他の製剤化成分を混合し、結合剤を加えて顆粒とし、当該顆粒を打錠して錠剤とすることができる。丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤の形態についても、当技術分野の公知の方法に従い製造することができる。
【0021】
下記に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものでない。
以下の実施例において、類縁物質の生成割合を測定した。類縁物質とは、モサプリドの分解生成物である。類縁物質の生成割合は、剤の保存安定性の指標である。類縁物質の生成割合は、少なければ少ないほど好ましい。剤における類縁物質の生成割合が少なければ少ないほど、剤は保存安定性に優れている。上記測定は、以下のとおりに行なわれた。すなわち、製造した剤を20個以上とり、粉末とした。モサプリドクエン酸塩(C2125ClFN・C)10mgに対応する量の上記粉末をとり、当該量の粉末に水1mLを加えて潤した。さらに、メタノール9mLを加えて20分間振り混ぜた後、3000rpmで10分間遠心分離し、上澄液を試料溶液とした。当該試料溶液について液体クロマトグラフィーを下記の試験条件下で行った。
【0022】
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:274nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんしたもの(ジーエルサイエンス株式会社、Inertsil ODS−2)
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相A:クエン酸三ナトリウム二水和物8.82gを水800mLに溶かし、希塩酸を加えてpH4.0に調整した後、水を加えて1000mLとしたもの
移動相B:アセトニトリル
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御をした

【0023】
上記試験条件下での液体クロマトグラフィーの結果に基づき、自動積分法により類縁物質の合計ピーク面積と総ピーク面積を得た。類縁物質のピーク面積は溶媒のピークの後から注入後40分までの、モサプリドのピーク以外のピーク面積である。総ピーク面積は、溶媒のピークの後から注入後40分までの、モサプリドのピーク以外のピークの合計面積である。(類縁物質の合計ピーク面積/総ピーク面積)×100が、類縁物質の生成割合(重量%)である。
【実施例1】
【0024】
モサプリドクエン酸塩・2水和物(第十五改正日本薬局方第二追補における「モサプリドクエン酸塩水和物)7.58g、D−マンニトール無水和物(マンニットP:三菱商事フードテック株式会社)147g、トウモロコシデンプン(トウモロコシデンプン:日本食品加工株式会社)17gを秤量し、撹拌造粒機(FM−VG−01:株式会社パウレック)にて混合した。混合後、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SSL:日本曹達株式会社)6gを水24gに溶かした結合剤溶液を当該混合物に加え、練合した。練合後、練合物を1140μmの目開きの篩に通し、流動層造粒機(FD−MP−01:株式会社パウレック)にて乾燥した。乾燥後、710μmの目開きの篩にて整粒して顆粒を得た。
【0025】
当該顆粒に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH−22:信越化学工業株式会社)40g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101:フロイント産業株式会社)0.4g、ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム(植物性):太平化学産業株式会社)1.6gを添加し、錠用末とした。
【0026】
当該錠用末を、ロータリー打錠機(超小型ロータリー打錠機VELA5:菊水製作所株式会社)を用いて、1錠あたり150mgの楕円錠(長径:9.08mm、短径:4.54mm)で、硬度60Nから90Nとなるように打錠を行い、素錠(以下、「実施例1の素錠」という)を得た。下記表1に当該素錠の組成を示す。
【実施例2】
【0027】
D−マンニトール無水和物の代わりにエリスリトール無水和物(エリスリトール微粉:三菱化学フーズ株式会社)を用いたこと以外は実施例1と同じ方法で素錠(以下、「実施例2の素錠」という)を得た。下記表1に当該素錠の組成を示す。
【実施例3】
【0028】
D−マンニトールの代わりにマルチトール無水和物(粉末還元麦芽糖水あめ(アマルティMR):三菱商事フードテック株式会社)を用いたこと以外は実施例1と同じ方法で素錠(以下、「実施例3の素錠」という)を得た。下記表1に当該素錠の組成を示す。
【実施例4】
【0029】
D−マンニトールの代わりにトレハロース無水和物(トレハロースP:旭化成ケミカルズ株式会社)を用いたこと以外は実施例1と同じ方法で素錠(以下、「実施例4の素錠」という)を得た。下記表1に当該素錠の組成を示す。
【0030】
(比較例1)
D−マンニトールの代わりに乳糖水和物(乳糖200:DMV−Fonterra Excipients社、ドイツ)を用いたこと以外は実施例1と同じ方法で素錠(以下、「比較例1の素錠」という)を得た。下記表1に当該素錠の組成を示す。
【0031】
【表1】

【実施例5】
【0032】
ヒプロメロース(信越化学工業株式会社)816.0g、マクロゴール6000(三洋化成工業株式会社)81.6g、酸化チタン(フロイント産業株式会社)244.8gおよびタルク(松村産業株式会社)57.6gを、10800gの精製水に溶解及び分散し、フィルムコーティング液を調製した。実施例1の素錠をドリアコーター(株式会社パウレック)に投入し、当該フィルムコーティング液を噴霧して、乾燥後のコーティング量が1錠あたり5mgになるようにコーティングしてフィルムコーティング錠(以下、「実施例5のフィルムコーティング錠」という)を得た。当該フィルムコーティング層の組成を下記表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
(比較例2)
実施例1の素錠の代わりに比較例1の素錠を用いたこと以外は、実施例5と同じ方法でフィムルコ−ティング錠(以下、「比較例2のフィルムコーティング錠」という)を得た。
【0035】
(試験例1)
類縁物質の生成割合の測定
【0036】
実施例1、2、3、4、5、及び比較例1、2で得た錠剤をガラス瓶密栓で60℃で3日間保管した。保管前後の類縁物質の生成割合を測定した。測定結果を下記表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3に示されるとおり、比較例1の錠剤は類縁物質の生成割合が保管後において0.40%だったのに対し、実施例1〜4の錠剤は、類縁物質の生成割合が保管後において0.14〜0.22%であった。実施例1〜4の錠剤の錠剤についての類縁物質の生成割合は、比較例1の錠剤についての類縁物質の生成割合の半分程度である。よって、実施例1〜4の錠剤では、比較例1の錠剤よりも、モサプリドの分解が抑制されている。すなわち、実施例1〜4の錠剤は、比較例1の錠剤よりも良好な保存安定性を示した。また、比較例2のフィルムコーティング錠は類縁物質の生成割合が保管後において0.47%だったのに対し、実施例5のフィルムコーティング錠は、類縁物質の生成割合が保管後において0.18%であった。よって、実施例5のフィルムコーティング錠では、比較例2のフィルムコーティング錠よりも、モサプリドの分解が抑制されている。すなわち、実施例5のフィルムコーティング錠は、比較例2のフィルムコーティング錠よりも良好な保存安定性を示した。また、類縁物質の生成割合は、実施例1〜4の素錠と実施例5のフィルムコーティング錠との間で、ほぼ同じであった。類縁物質の生成割合は、比較例1の素錠と比較例2のフィルムコーティング錠との間でもほぼ同じであった。よって、フィルムコーティングの有無は、類縁物質の生成割合に対して影響を有さなかった。
【0039】
(試験例2)
熱湿度下における類縁物質の生成割合の測定
【0040】
実施例5のフィルムコーティング錠、及び比較例2のフィルムコーティング錠をガラス瓶開栓で60℃又は60℃75%RHで5日間保管した後、類縁物質の生成割合を測定した。当該測定は、実施例6に記載された方法により行なった。測定結果を下記表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表4に示すとおり、比較例2のフィルムコーティング錠は類縁物質の生成割合が60℃で0.63%だったのに対し、実施例5のフィルムコーティング錠は0.41%であった。よって、実施例5のフィルムコーティング錠では、比較例2のフィルムコーティング錠よりもモサプリドの分解が抑制されていた。また、温度60℃且つ相対湿度(RH)75%の熱湿度下においても、比較例2のフィルムコーティング錠は類縁物質の生成割合が0.98%であったのに対し、実施例5のフィルムコーティング錠は類縁物質の生成割合が0.45%であった。よって、実施例5のフィルムコーティング錠では、比較例2のフィルムコーティング錠よりもモサプリドの分解が抑制されていた。この結果から、本発明の固形製剤は、湿度による影響を受けにくいこともわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその生理学的に許容される塩を含有する固形製剤であって、糖類無水和物及び/又は糖アルコール無水和物を含む前記剤。
【請求項2】
前記糖アルコール無水和物が、D−マンニトール無水和物、エリスリトール無水和物、マルチトール無水和物、ソルビトール無水和物及び/又はキシリトール無水和物である、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記糖アルコール無水和物がD−マンニトール無水和物である、請求項2に記載の剤。
【請求項4】
前記糖アルコール無水和物の含有量が剤の重量に対して5重量%〜90重量%である、請求項2又は3に記載の剤。
【請求項5】
前記糖類無水和物が、白糖無水和物及び/又はトレハロース無水和物である、請求項1に記載の剤。
【請求項6】
前記糖類無水和物がトレハロース無水和物である、請求項5に記載の剤。
【請求項7】
前記糖類無水和物の含有量が剤の重量に対して5重量%〜90重量%である、請求項5又は6に記載の剤。
【請求項8】
前記剤が錠剤である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の剤。
【請求項9】
前記錠剤がフィルムコーティング錠剤である、請求項8に記載の錠剤。
【請求項10】
前記錠剤が口腔内崩壊錠である、請求項8に記載の錠剤。


【公開番号】特開2012−201597(P2012−201597A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64718(P2011−64718)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(306020438)日本ジェネリック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】