説明

モノアミンの製造方法

【課題】基質として1級又は2級の原料モノアミンを用い、この原料モノアミンと、モノアルコールとを反応させて、2級又は3級のモノアミンを製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、1級又は2級の原料モノアミンと、モノアルコールとの反応を、3価の鉄化合物(臭化鉄(III)等)、及び、窒素原子を含むカルボン酸(ピログルタミン酸等)又はそのエステルの存在下に行い、それぞれ、2級又は3級のモノアミンを製造する方法である。反応に際して、更に、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン等の脱会合剤を存在させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基質として1級又は2級の原料モノアミンを用い、この原料モノアミンと、モノアルコールとを反応させて、2級又は3級のモノアミンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミンは、工業的に多様な用途に好適な化合物であり、特に、芳香族アミンは、医農薬分野の中間体、電子材料、光記録材料、染料の中間体、ウレタンフォームの原料、界面活性剤、防錆剤、防蝕剤、殺菌剤、乳化剤、帯電防止剤、潤滑油添加剤、石油添加剤、ゴム・プラスチック用添加剤、アスファルト添加剤、水処理剤、顔料分散剤、繊維柔軟剤、浮遊選鉱剤、エポキシ樹脂硬化剤等の形成のために広く用いられている。そのため、これまでに、目的に応じた構造を有するアミン製造方法が検討されており、例えば、特許文献1〜5及び非特許文献1〜4が知られている。
【0003】
特許文献1には、芳香族臭化物又は芳香族ヨウ化物と、アミン化合物とを、パラジウム触媒(2価のパラジウム化合物)の存在下で反応させ、芳香族アミン化合物を製造する方法が開示されている。
特許文献2には、アミン化合物、臭素化芳香族化合物及び無機ヨウ化物を、銅元素含有触媒、塩基及び複素環式第3級アミン化合物の存在下で反応させ、アリールアミンを製造方法が開示されている。
また、特許文献3には、リン原子を含むカチオン部位と、アニオン部位とからなるイオン性化合物及び塩基の存在下で、金属化合物を触媒として、アミン化合物と、ハライドとを反応させる工程を含み、アミン化合物及びハライドの少なくとも一方はアリール基を有する芳香族アミン化合物の製造方法が開示されている。
【0004】
非特許文献1〜4には、アルコールを酸化させてアルデヒドやケトンとした後、イリジウム、ルテニウム、銅等の遷移金属触媒の存在下、低級アミンと反応させてイミンとし、次いで、イミンを再還元しアニリン誘導体やスルホンアミドを製造する方法が開示されている。
また、アミン及びアルコールをカップリングさせる炭素−窒素結合形成反応を利用した高級アミンの製造方法も知られている。この方法は、アルコールの水酸基をハロゲン又はトシラート若しくはメチラートに変換した後、低級アミンと反応させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−275130号公報
【特許文献2】特開2006−347964号公報
【特許文献3】特開2002−308413号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Org.Lett. 4(2002) 2691
【非特許文献2】Org.Lett. 10(2008) 181
【非特許文献3】J.Org.Chem. 49(1984) 3359
【非特許文献4】Angew.Chem.Int.Ed. 48(2009) 5912
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のアミン製造方法においては、一般に、目的とするアミンの構造に応じて、基質が選択され、用いられてきた。これは、例えば、基質としてアニリンを用いた場合、フリーデル−クラフツ反応による副生成物が反応系に含まれる等、の不具合が見られるからである。そこで、新たな触媒と、それによる反応機構とを利用した、基質依存性の小さいアミンの製造方法が求められている。また、非特許文献1?4の方法では、不飽和結合(例えば、炭素−炭素二重結合)を含む反応基質を用いた場合、不飽和結合が水素化されて飽和炭化水素を与えるという問題点がある。所望以外の不要な反応を避けて、高い官能基選択性を目指すうえで解決すべき課題である。
本発明の目的は、基質として1級又は2級の原料モノアミンを用い、それぞれ、2級又は3級のモノアミンを製造する方法であって、高い選択性及び収率が得られ、製造後の廃棄物の低減化を図ることができるモノアミンの効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、低級アミンであるアニリンと、反応性の低いベンジルアルコールとをモデル基質として選択し、臭化鉄(III)等の3価の鉄化合物、及び、窒素原子を含むカルボン酸を触媒成分として用いたところ、高い収率をもって、N−ベンジルアニリンを得ることができた。そして、この方法により、基質に依存することなく、アミンの製造を効率よく進めることができることから、本発明を完結するに至った。
本発明は、基質として1級又は2級の原料モノアミンを用い、それぞれ、2級又は3級のモノアミンを製造する方法において、3価の鉄化合物、及び、窒素原子を含むカルボン酸又はそのエステルの存在下、上記原料モノアミンと、モノアルコールとを反応させる反応工程を備えることを特徴とする。
上記反応工程において、更に、脱会合剤を存在させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明において、反応工程は、3価の鉄化合物及び窒素原子を含むカルボン酸又はそのエステルの存在下に進められるので、モノアルコールを求電子剤として作用させて、原料モノアミンから、2級又は3級のモノアミンを効率よく製造することができる。特に、反応系に、窒素原子を含むカルボン酸を存在させることで、フリーデル−クラフツ反応による副生成物の生成を抑制しつつ、目的のアミンを製造することができる。
また、反応系に、更に、脱会合剤を存在させた場合には、得られる2級又は3級のモノアミンの収率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、下記スキームに示されるように、基質としての1級又は2級の原料モノアミン(I)をモノアルコール(II)と反応させ、それぞれ、2級又は3級のモノアミンを製造する方法である。即ち、本発明において、基質として、1級アミンを用いた場合、2級アミンを製造することができ、2級アミンを用いた場合、3級アミンを製造することができる。
そして、本発明における反応工程では、3価の鉄化合物(以下、「鉄化合物」という。)、及び、窒素原子を含むカルボン酸又はそのエステル(以下、併せて、「含窒素カルボン酸」ともいう。)の存在下、原料モノアミンと、モノアルコールとを反応させるものである。
【化1】

(式中、Rは、ハロゲン原子、>NH基及び−NH基を含まない有機基であり、Rは、>NH基及び−NH基を含まない有機基又は水素原子であり、R及びRは、互いに結合して、N原子とともに環構造を形成していてもよい。Rは、−OH基を含まない、置換又は非置換の炭化水素基である。)
【0011】
原料モノアミン(I)は、−NH基又は>NH基を有する化合物であれば、脂肪族アミン、脂環族アミン及び芳香族アミンのいずれでもよい。これらの化合物は、ヒドロキシル基を有してもよい。本発明においては、フリーデル−クラフツ反応が抑制され、反応工程を効率よく進められることから、芳香族アミンが好ましい。
【0012】
上記脂肪族アミンは、通常、炭素原子数が1〜40の化合物であれば、飽和化合物及び不飽和化合物のいずれでもよい。また、この化合物における炭化水素基は、直鎖状であってよいし、分岐状であってもよい。
1級の脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、へプチルアミン、オクチルアミン、ノナニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン等が挙げられる。
また、2級の脂肪族アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、プロピルブチルアミン、メチルイソプロピルアミン、メチルtert−ブチルアミン等が挙げられる。
【0013】
上記脂環族アミンは、通常、炭素原子数の合計が3〜20の化合物であれば、飽和化合物及び不飽和化合物のいずれでもよい。また、環構造は、炭素原子のみから形成されていてよいし、炭素原子と、窒素原子、硫黄原子、酸素原子等の他の原子とから形成されていてもよい。
上記脂環族アミンとしては、シクロアルキルアミン類、ピペリジン類、ピロリジン類、モルホリン類、ピペラジン類等が挙げられる。
【0014】
1級のシクロアルキルアミン類としては、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、シクロノナニルアミン、シクロデシルアミン、シクロウンデシルアミン、シクロドデシルアミン等が挙げられる。
2級のシクロアルキルアミン類としては、N−イソプロピルシクロヘキサンアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルエチルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、アザシクロヘプタン、アザシクロオクタン、アザシクノナン、アザシクロデカン、アザシクロウンデカン、アザシクロドデカン等が挙げられる。
【0015】
1級のピペリジン類としては、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(3−アミノプロピル)ピペリジン等が挙げられる。
2級のピペリジン類としては、1,N−ジメチルピペリジン−3−アミン、2−(ピペリジニル)メタノール等が挙げられる。
【0016】
1級のピロリジン類としては、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、1−(3−アミノプロピル)ピロリジン等が挙げられる。
2級のピロリジン類としては、2−(ピロリジニル)メタノール等が挙げられる。
【0017】
1級のモルホリン類としては、N−(2−アミノエチル)モルホリン、1−(3−アミノプロピル)モルホリン等が挙げられる。
2級のモルホリン類としては、2−(ヒドロキシメチル)モルホリン等が挙げられる。
【0018】
上記芳香族アミンは、ベンゼン環を含む、通常、炭素原子数の合計が6〜26の単環式化合物又は多環式化合物である。また、ベンゼン環を構成する少なくとも2つの炭素原子を含む環構造を有する化合物であってもよい。その場合、この環構造は、炭素原子のみから形成されていてよいし、炭素原子と、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の他の原子とから形成されていてもよい。
1級の芳香族アミンとしては、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,4−キシリジン、2,5−キシリジン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、4−メトキシアニリン、4−ニトロアニリン、3−メチルアニリン、トリルアニリン、3−アミノビフェニル等が挙げられる。
【0019】
2級の芳香族アミンとしては、N−メチルベンジルアミン、ジベンジルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、N−(4−ニトロソフェニル)アニリン、1−フェニルピペラジン、N−フェニルベンジルアミン、N−フェニル(4−メトキシベンジル)アミン、4−アミノ−1−ベンジルピペリジン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロキノリン等が挙げられる。
【0020】
また、原料モノアミン(I)との反応に供されるモノアルコール(II)は、−OH基を1つ有する化合物であり、脂肪族アルコール、脂環族アルコール及び芳香族アルコールのいずれでもよい。
【0021】
上記脂肪族アルコールは、通常、炭素原子数が1〜25の化合物であり、飽和化合物及び不飽和化合物のいずれでもよい。また、この化合物における炭化水素基は、直鎖状であってよいし、分岐状であってもよい。
上記脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ネオペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、ゲラニオール、ネロール、6−ノネン−1−オール等の1級アルコール;2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、3−ノナノール、4−ノナノール、2−デカノール、3−デカノール、2−アダマンタノール、2−オクテン−1−オール等の2級アルコール;2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘプタノール、1−アダマンタノール、2−メチル−2−アダマンタノール等の3級アルコールが挙げられる。
【0022】
上記脂環族アルコールは、通常、炭素原子数の合計が3〜25の化合物であり、飽和化合物及び不飽和化合物のいずれでもよい。また、環構造は、炭素原子のみから形成されていてよいし、炭素原子と、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の他の原子とから形成されていてもよい。
上記脂環族アルコールとしては、シクロヘキシルアルコール、シクロヘキサンメタノール、シクロペンチルアルコール、シクロへプチルアルコール、4−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロペンタノール、3−エチルシクロペンタノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、シクロノナノール、シクロデカノール、シクロウンデカノール、シクロドデカノール等が挙げられる。
【0023】
上記芳香族アルコールは、ベンゼン環を含む、通常、炭素原子数の合計が6〜25の単環式化合物又は多環式化合物である。また、ベンゼン環を構成する少なくとも2つの炭素原子を含む環構造を有する化合物であってもよい。その場合、この環構造は、炭素原子のみから形成されていてよいし、炭素原子と、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の他の原子とから形成されていてもよい。
上記芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ−フェニルプロピルアルコール、桂皮アルコール、アニスアルコール、メチルベンジルアルコール、エチルベンジルアルコール、プロピルベンジルアルコール、ブチルベンジルアルコール、メトキシベンジルアルコール、エトキシベンジルアルコール、2−メチルフェネチルアルコール、3−メチルフェネチルアルコール、4−メチルフェネチルアルコール、α−ジメチルフェネチルアルコール、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、2−ベンジルオキシエタノール、ベラチルアルコール、ジフェニルメタノール、1,2−ジフェニルエタノール、1,3−ジフェニル−2−プロパノール、クロロベンジルアルコール、ブロモベンジルアルコール、ヨードベンジルアルコール、1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オール等が挙げられる。
【0024】
上記原料モノアミンとの反応に供されるモノアルコールの使用量は、両者の反応効率の観点から、原料モノアミン1モルに対して、好ましくは0.1〜3モル、より好ましくは0.3〜2モルである。
【0025】
本発明に係る反応工程は、鉄化合物及び含窒素カルボン酸の存在下、原料モノアミンと、モノアルコールとを反応させる工程である。この反応工程において、鉄化合物及び含窒素カルボン酸を併用することにより、反応系において、Feを中心元素とする鉄錯体が形成されると考えられ、この鉄錯体が触媒成分として作用し、同時に、モノアルコールを求電子剤として、原料モノアミンのアミノ結合部のN−Hに作用させることができる。そして、この反応工程により、目的とする2級又は3級アミンを製造することができる。
【0026】
上記鉄化合物としては、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(III)等のハロゲン化物;クエン酸鉄(III)等の有機酸塩;鉄トリフラートFe(OTf)、鉄トシラートFe(OTs)等のスルホン酸塩等が挙げられる。これらのうち、原料モノアミンと、モノアルコールとの反応性の観点から、ハロゲン化物及びスルホン酸塩が好ましい。なかでも、ハロゲン化物が好ましく、臭化鉄(III)が特に好ましい。尚、上記鉄化合物は、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記鉄化合物の使用量は、モノアルコール1モルに対して、好ましくは0.001〜0.15モル、より好ましくは0.005〜0.1モル、更に好ましくは0.01〜0.05モルである。上記使用量であれば、原料モノアミン及びモノアルコールの反応を円滑に進めることができる。
【0028】
また、上記含窒素カルボン酸に含まれるカルボキシル基又はエステル結合の数は、特に限定されず、1つのみであってよいし、2つ以上であってもよい。
上記含窒素カルボン酸としては、アミノ酸類、含窒素芳香族カルボン酸類(複素環化合物を含む)、イミド含有カルボン酸等が挙げられる。これらのうち、原料モノアミンと、モノアルコールとの反応性の観点から、アミノ酸類が好ましい。
【0029】
上記アミノ酸類としては、グルタミン酸(ピログルタミン酸を含む)、アスパラギン酸、プロリン(=2−ピロリジンカルボン酸)、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニン等が挙げられる。これらのうち、グルタミン酸が好ましい。
【0030】
上記含窒素芳香族カルボン酸類としては、N−フェニルグリシン、ピコリン酸、3−メチルピコリン酸、6−メチルピコリン酸、6−クロロピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、キノリン酸、ルチジン酸、イソシンコメロン酸、ジピコリン酸、シンコメロン酸、ジニコチン酸、ベルベロン酸、キノリンカルボン酸等が挙げられる。
また、上記イミドカルボン酸としては、N−フタロイルグリシン、サクシミジルグリシン等が挙げられる。
【0031】
上記含窒素カルボン酸が、エステルである場合には、そのエステル部COORを構成するRは、通常、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基である。
【0032】
上記含窒素カルボン酸の使用量は、モノアルコール1モルに対して、好ましくは0.002〜0.3モル、より好ましくは0.01〜0.2モル、更に好ましくは0.02〜0.1モルである。上記使用量であれば、原料モノアミン及びモノアルコールの反応を円滑に進めることができる。
【0033】
本発明において、上記反応工程は、鉄化合物及び含窒素カルボン酸以外に、脱会合剤を存在させて、原料モノアミン及びモノアルコールを反応させる工程とすることができる。本発明者らの推定であるが、この脱会合剤を用いることにより、反応系において会合しやすい鉄錯体を単核状態に維持することができるものと考えている。
【0034】
上記脱会合剤としては、環構造中に隣接しない炭素−炭素二重結合を有する環状ジエン、芳香族類等が挙げられる。これらのうち、上記効果が顕著であることから、環状ジエンが好ましい。尚、上記脱会合剤は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記環状ジエンとしては、炭素原子数の合計が4〜35である化合物が好ましく、例えば、1,3−シクロオクタジエン、1.5−シクロオクタジエン、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエン、1,2,3,4,5−ペンタプェニルシクロペンタジエン等が挙げられる。
また、上記芳香族類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソプロピルメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン等が挙げられる。
【0036】
上記脱会合剤の使用量は、目的とする2級又は3級アミンの収率の観点から、モノアルコール1モルに対して、好ましくは0.001〜0.15モル、より好ましくは0.005〜0.1モル、更に好ましくは0.01〜0.05モルである。
【0037】
上記反応工程における反応は、溶媒を用いて行ってよいし、溶媒を使用せずに行ってもよい。溶媒を用いる場合、非プロトン性の有機溶剤が好ましく用いられる。
非プロトン性の有機溶剤としては、炭素原子数が5〜35である炭化水素(脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等)、メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記反応工程における反応温度は、溶媒を用いる場合、通常、25℃以上であり且つ上記有機溶剤の沸点温度以下である範囲から選択される。また、溶媒を用いない場合、通常、25℃〜250℃である。
また、反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。
更に、上記反応工程における反応は、加圧条件下で行ってもよい。
【0039】
上記反応工程において、原料モノアミン、モノアルコール、鉄化合物及び含窒素カルボン酸として、それぞれ、アニリン、ベンジルアルコール、臭化鉄(III)及びDL−ピログルタミン酸を用いた場合、下記スキームに示されるように、N−ベンジルアニリンが得られる。このとき、反応系において、まず、臭化鉄(III)及びDL−ピログルタミン酸により、鉄触媒が形成される。その後、この鉄触媒の存在下、アニリン及びベンジルアルコールによる脱水反応が進行し、N−ベンジルアニリンが製造される。このように、多段階反応を必要とするものではなく、極めて単純である。
【化2】

(式中、X及びXは、互いに、同一又は異なって、水素原子、R又は−ORであり、Rは、上記と同様である。Rは、炭化水素基等とすることができる。)
【0040】
本発明の製造方法は、上記反応工程の後、必要に応じて、精製工程を備えることができる。即ち、溶媒除去、洗浄、クロマト分離等といった一般的な後処理に供することができる。
【0041】
本発明の製造方法によれば、1級又は2級のモノアミンを原料モノアミンとして用いた場合に、それぞれ、1級又は2級のモノアミンを高収率で製造することができる。収率は、好ましくは45%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上とすることができる。尚、上記「収率」とは、反応基質として用いたアルコールのモル量に基づき算出される値である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0043】
実施例1
27.0mg(0.09mmol)の臭化鉄(III)と、23.5mg(0.18mmol)のDL−ピログルタミン酸と、0.3mLの1,2,4−トリメチルベンゼンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、324.3mg(3.0mmol)のベンジルアルコール及び558.6mg(6.0mmol)のアニリンを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、160℃で撹拌しながら18時間反応を行った。
その後、反応系を室温まで冷却し、50mLの酢酸エチルにて希釈した。次いで、20mLの炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液にて2回洗浄し、水層を、20mLの酢酸エチルにより抽出した(2回)。一方、有機層を回収し、硫酸ナトリウムにより脱水し、減圧下、濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/1)により精製し、白色固体のN−ベンジルアニリン(390.3mg)を得た。内部標準としてビフェニルを用いたガスクロマトグラフィーにより収率71%を得た。
【0044】
上記で得られたN−ベンジルアニリンのNMR測定(H及び13C)を、日本電子社製核磁気共鳴装置「JNM−GSX270」(型式名)により行ったところ、下記の化学シフトを得た。
(1)H−NMR(270MHz,CDCl
δ7.369−7.148(m,7H),6.73−6.15(m,3H),4.31(s,2H),4.00(br,1H)
(2)13C−NMR(270MHz,CDCl
δ148.0,139.4,129.2,128.6,127.4,127.2,117.5,112.8,48.2
【0045】
実施例2
27.0mg(0.09mmol)の臭化鉄(III)と、23.5mg(0.18mmol)のDL−ピログルタミン酸と、23.9μL(0.15mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、0.3mLの1,2,4−トリメチルベンゼンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、324.3mg(3.0mmol)のベンジルアルコール及び558.6mg(6.0mmol)のアニリンを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、160℃で撹拌しながら18時間反応を行った。
その後、実施例1と同様の操作を行い、N−ベンジルアニリンを得た。収率は82%であった。
【0046】
実施例3
27.0mg(0.09mmol)の臭化鉄(III)と、23.5mg(0.18mmol)のDL−ピログルタミン酸と、17.2μL(0.108mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、0.3mLの1,2,4−トリメチルベンゼンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、324.3mg(3.0mmol)のベンジルアルコール及び558.6mg(6.0mmol)のアニリンを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、160℃で撹拌しながら24時間反応を行った。
その後、反応系を室温まで冷却し、50mLの酢酸エチルにて希釈した。次いで、20mLの炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液にて2回洗浄し、水層を、20mLの酢酸エチルにより抽出した(2回)。一方、有機層を回収し、硫酸ナトリウムにより脱水し、減圧下、濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=100/1)により精製し、白色固体のN−ベンジルアニリン(506mg)を得た。収率は92%であった。
【0047】
実施例4
DL−ピログルタミン酸に代えて、0.18mmolのDL−ピログルタミン酸メチルを用いた以外は、実施例2と同様にして、N−ベンジルアニリンを得た。収率は53%であった。
【0048】
実施例5
DL−ピログルタミン酸に代えて、0.18mmolのN−フタロイルグリシンを用いた以外は、実施例2と同様にして、N−ベンジルアニリンを得た。収率は49%であった。
【0049】
実施例6
DL−ピログルタミン酸に代えて、0.18mmolの6−クロロピコリン酸を用いた以外は、実施例2と同様にして、N−ベンジルアニリンを得た。収率は85%であった。
【0050】
実施例7
臭化鉄(III)に代えて、0.09mmolの塩化鉄(III)を用いた以外は、実施例2と同様にして、N−ベンジルアニリンを得た。収率は55%であった。
【0051】
実施例8
ベンジルアルコールに代えて、下記の4−クロロベンジルアルコールを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、N−(4−クロロベンジル)ベンゼンアミンを得た。収率は91%であった。
【化3】

【0052】
実施例9
ベンジルアルコールに代えて、下記の3−ブロモベンジルアルコールを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、N−(3−ブロモベンジル)ベンゼンアミンを得た。収率は94%であった。
【化4】

【0053】
実施例10
ベンジルアルコールに代えて、下記の3−ヨードベンジルアルコールを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、N−(2−ヨードベンジル)ベンゼンアミンを得た。収率は88%であった。
【化5】

【0054】
実施例11
ベンジルアルコールに代えて、下記の3−メチルベンジルアルコールを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、N−(3−メチルベンジル)ベンゼンアミンを得た。収率は90%であった。
【化6】

【0055】
実施例12
ベンジルアルコールに代えて、下記の3−メトキシベンジルアルコールを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、N−(3−メトキシベンジル)ベンゼンアミンを得た。収率は93%であった。
【化7】

【0056】
実施例13
アニリンに代えて、下記の2−メトキシアニリンを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、N−ベンジル−2−メトキシベンゼンアミンを得た。収率は78%であった。
【化8】

【0057】
実施例14
アニリンに代えて、下記の2−フルオロアニリンを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、N−ベンジル−2−フルオロベンゼンアミンを得た。収率は90%であった。
【化9】

【0058】
実施例15
アニリンに代えて、下記のN−メチルアニリンを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、N−ベンジル−N−メチルベンゼンアミンを得た。収率は87%であった。
【化10】

【0059】
実施例16
アニリンに代えて、下記の1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行い、1−ベンジル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリンを得た。収率は89%であった。
【化11】

【0060】
実施例17
45.0mg(0.15mmol)の臭化鉄(III)と、39.2mg(0.3mmol)のDL−ピログルタミン酸と、56.3μL(0.36mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、0.3mLの1,2,4−トリメチルベンゼンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、324.3mg(3.0mmol)のベンジルアルコール及び799.1mg(6.0mmol)の1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(下記参照)を添加し、これらの混合物を、密閉条件下、180℃で撹拌しながら36時間反応を行った。
その後、実施例3と同様の操作を行い、2−ベンジル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンを得た。収率は90%であった。
【化12】

【0061】
実施例18
1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンに代えて、下記のジベンジルアミンを用いた以外は、実施例17と同様の操作を行い、トリベンジルアミンを得た。収率は86%であった。
【化13】

【0062】
実施例19
90.0mg(0.30mmol)の臭化鉄(III)と、78.4mg(0.60mmol)のDL−ピログルタミン酸と、56.3μL(0.36mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、0.3mLの1,2,4−トリメチルベンゼンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、324.3mg(3.0mmol)のベンジルアルコール及び727.1mg(6.0mmol)のN−メチルベンジルアミン(下記参照)を添加し、これらの混合物を、密閉条件下、180℃で撹拌しながら36時間反応を行った。
その後、実施例3と同様の操作を行い、N−ベンジル−N−メチル(フェニル)メタンアミンを得た。収率は83%であった。
【化14】

【0063】
実施例20
27.0mg(0.09mmol)の臭化鉄(III)と、23.5mg(0.18mmol)のDL−ピログルタミン酸と、18.9μL(0.12mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、0.5mLのm−キシレンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、366.5mg(3.0mmol)の1−フェニルエタノール(下記参照)及び882.9mg(9.0mmol)のアニリンを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、145℃で撹拌しながら24時間反応を行った。
その後、実施例3と同様の操作を行い、N−フェネチルベンゼンアミンを得た。収率は68%であった。
【化15】

【0064】
実施例21
45.0mg(0.15mmol)の臭化鉄(III)と、39.2mg(0.3mmol)のDL−ピログルタミン酸と、56.3μL(0.36mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、0.3mLの1,2,4−トリメチルベンゼンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、366.5mg(3.0mmol)の2−フェニルエタノール(下記参照)及び558.6mg(6.0mmol)のアニリンを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、200℃で撹拌しながら36時間反応を行った。
その後、実施例3と同様の操作を行い、N−(1−フェニルエチル)ベンゼンアミンを得た。収率は66%であった。
【化16】

【0065】
実施例22
2−フェニルエタノールに代えて、1−オクタノールを用いた以外は、実施例21と同様の操作を行い、N−オクチルベンゼンアミンを得た。収率は80%であった。
【0066】
実施例23
2−フェニルエタノールに代えて、1−ドデカノールを用いた以外は、実施例21と同様の操作を行い、N−ドデシルベンゼンアミンを得た。収率は86%であった。
【0067】
実施例24
2−フェニルエタノールに代えて、2−ウンデカノールを用いた以外は、実施例21と同様の操作を行い、N−(ウンデカン−2−イル)ベンゼンアミンを得た。収率は70%であった。
【0068】
実施例25
2−フェニルエタノールに代えて、下記の6−ノネン−1−オールを用いた以外は、実施例21と同様の操作を行い、N−(ノナ−6−エニル)ベンゼンアミンを得た。収率は85%であった。
【化17】

【0069】
実施例26
2−フェニルエタノールに代えて、下記の1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オールを用いた以外は、実施例21と同様の操作を行い、N−(1,3−ジフェニルアリル)ベンゼンアミンを得た。収率は74%であった。
【化18】

【0070】
実施例27
27.0mg(0.09mmol)の臭化鉄(III)と、23.5mg(0.18mmol)のDL−ピログルタミン酸と、18.8μL(0.12mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、0.5mLのトルエンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、630.8mg(3.0mmol)の1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オール及び666.7mg(6.0mmol)の2−フルオロアニリンを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、60℃で撹拌しながら24時間反応を行った。
その後、実施例3と同様の操作を行い、N−(1,3−ジフェニルアリル)−2−フルオロベンゼンアミンを得た。収率は83%であった。
【0071】
実施例28
27.0mg(0.09mmol)の臭化鉄(III)と、23.5mg(0.18mmol)のDL−ピログルタミン酸と、18.8μL(0.12mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、1.0mLのトルエンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、630.8mg(3.0mmol)の1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オール及び726.8mg(6.0mmol)のベンズアミドを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、60℃で撹拌しながら2時間反応を行った。
その後、実施例3と同様の操作を行い、N−(1,3−ジフェニルアリル)ベンズアミドを得た。収率は88%であった。
【0072】
実施例29
45.0mg(0.15mmol)の臭化鉄(III)と、39.2mg(0.30mmol)のDL−ピログルタミン酸と、28.2μL(0.18mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、0.3mLのトルエンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、462.8mg(3.0mmol)のゲラニオール(下記参照)及び558.6mg(6.0mmol)のアニリンを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、100℃で撹拌しながら36時間反応を行った。
その後、実施例3と同様の操作を行い、(E−N−(3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエニル)ベンゼンアミンを得た。収率は80%であった(E:Z=>99:1,α:γ=>99:1)。
【化19】

【0073】
実施例30
45.0mg(0.15mmol)の臭化鉄(III)と、39.2mg(0.30mmol)のDL−ピログルタミン酸と、28.2μL(0.18mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、0.3mLのトルエンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、462.8mg(3.0mmol)のネロール(下記参照)及び558.6mg(6.0mmol)のアニリンを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、100℃で撹拌しながら36時間反応を行った。
その後、実施例3と同様の操作を行い、(Z)−N−(3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエニル)ベンゼンアミンを得た。収率は70%であった(E:Z=1:>99,α:γ=>99:1)。
【化20】

【0074】
実施例31
22.5mg(0.075mmol)の臭化鉄(III)と、19.6mg(0.15mmol)のDL−ピログルタミン酸と、14.1μL(0.09mmol)の1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエンと、0.3mLのトルエンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、320.5mg(2.5mmol)の(E)-2?オクテン?1?オール(下記参照)及び465.7mg(5.0mmol)のアニリンを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、140℃で撹拌しながら24時間反応を行った。
その後、実施例3と同様の操作を行い、N−(オクタ−2−エニル)ベンゼンアミンを得た。収率は83%であった(E:Z=>99:1,α:γ=>99:1)。
【化21】

【0075】
比較例1
27.0mg(0.09mmol)の臭化鉄(III)と、324.3mg(3.0mmol)のベンジルアルコールと、558.6mg(6.0mmol)のアニリンとを、アルゴンガス雰囲気としたシュレンクフラスコに収容した。その後、このフラスコに、0.3mLの1,2,4−トリメチルベンゼンを添加し、これらの混合物を、密閉条件下、160℃で撹拌しながら18時間反応を行った。
その後、反応系を室温まで冷却し、5mLの酢酸エチルにて希釈した。次いで、この希釈液を、シリカゲルプレート上に注いだ。そして、200mLの酢酸エチルにより反応生成物を洗い出した。その後、濾液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、白色固体のN−ベンジルアニリンを得た。300mgのジブロモメタンを内部標準としてH−NMRを測定したところ、収率は41%であった。
【0076】
比較例2
臭化鉄(III)に代えて、0.09mmolの臭化鉄(II)を用いた以外は、実施例2と同様にして、N−ベンジルアニリンを得た。収率は46%であった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明により得られる、2級又は3級のモノアミンは、医農薬分野の中間体、電子材料、光記録材料、ウレタンフォームの原料、界面活性剤、防錆剤、防蝕剤、殺菌剤、乳化剤、帯電防止剤、潤滑油添加剤、石油添加剤、ゴム・プラスチック用添加剤、アスファルト添加剤、水処理剤、顔料分散剤、繊維柔軟剤、浮遊選鉱剤、エポキシ樹脂硬化剤等の形成材料等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質として1級又は2級の原料モノアミンを用い、それぞれ、2級又は3級のモノアミンを製造する方法において、3価の鉄化合物、及び、窒素原子を含むカルボン酸又はそのエステルの存在下、上記原料モノアミンと、モノアルコールとを反応させる反応工程を備えることを特徴とするモノアミンの製造方法。
【請求項2】
上記3価の鉄化合物が、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(III)、Fe(OTf)及びFe(OTs)から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載のモノアミンの製造方法。
【請求項3】
上記窒素原子を含むカルボン酸がアミノ酸である請求項1又は2に記載のモノアミンの製造方法。
【請求項4】
上記原料モノアミンが芳香族アミンである請求項1乃至3のいずれかに記載のモノアミンの製造方法。
【請求項5】
上記反応工程において、更に、脱会合剤を存在させる請求項1乃至4のいずれかに記載のモノアミンの製造方法。
【請求項6】
上記脱会合剤が、炭素原子数の合計が5〜35の環状ジエンである請求項5に記載のモノアミンの製造方法。

【公開番号】特開2011−140456(P2011−140456A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1557(P2010−1557)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】