説明

モノカルボキシル酸またはその誘導体から一価アルコールを製造する方法

【課題】
モノカルボキシル酸またはその誘導体から一価アルコールを製造する方法を提供する。
【解決手段】
亜鉛酸化物を担体にしたRu及びSn成分からなる触媒、または前記成分からなる触媒に成形性を付与するためにシリカやアルミナ、またはチタン酸化物等の無機物バインダーを制限された範囲で追加で添加して製造された触媒、または触媒の還元能力を改良するためにCo、Ni、Cu、Ag、Rh、Pd、Re、Ir、及びPtなど還元性成分からなる群から選択された少なくとも一つ以上の改良成分をさらに添加して改質された触媒を使用することによって、原料物質であるモノカルボキシル酸またはその誘導体の水の含有有無に関わらず高収率で一価アルコールを製造することができ、公知発明の触媒より非常に穏和な反応条件下で運転可能で、高選択的かつ高生産性を示すので経済的な方法で一価アルコールを製造することができ、触媒の長期反応安定性が優れているので、商業生産適用に有利に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノカルボキシル酸から一価アルコールを製造する方法に関するもので、より詳細には、モノカルボキシル酸の水の含有有無に関わらず、モノカルボキシル酸を直接気相水素化させることができる水素化触媒を使用して、モノカルボキシル酸から一価アルコールを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油資源の枯渇と全地球的な環境問題の浮上により、自動車燃料の脱石油化のための研究が持続的に行われてきて、現在バイオエタノールが石油代替運送燃料として一部国家で使用されている。一方、バイオブタノールは、バイオエタノールが有する自動車の腐食や沸点が低いなどの問題点がなく、また石油燃料を使用する自動車システムの特別な改造なしに使用することができ、バイオエタノールに比べて体積基準燃料効率が高いという点等の多くの長所を有する燃料であるが、バイオブタノール製造工程はまだ、バイオエタノール製造工程に比べて収率及び生産性が低く、経済的に製造することができるバイオ工程が開発されずにいるのが現状である。
【0003】
そのため、バイオブタノール製造工程の一つ代案として、自然循環資源であるバイオマス(biomass)からバイオ工程によってn−ブタン酸を製造して、n−ブタン酸を触媒化学的な方法で還元させてn−ブタノールを製造する、バイオ化学(bio−chem)複合技術が考慮されている。
【0004】
一方、今までn−ブタノールは、石油化学工程でプロピレンのヒドロホルミル化(hydroformylation)反応後、水素化反応を通じて大量に製造されてきて、溶媒や可塑剤、アミノレジン、ブチルアミンなどの製造に使用されている。
【0005】
n−ブタン酸のようなモノカルボキシル酸(monocarboxylic acid)を還元反応させて、n−ブタノールのような一価アルコールを製造することは、化学的に容易な反応である。しかし、このような化学的還元反応の場合、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH)のような高価で強力な還元剤を使用しなければならず、このような還元剤を使用する還元反応は、n−ブタノールのような汎用一価アルコールを工業的規模で大量生産するのに相応しくない。
【0006】
一方、一価アルコールを工業的規模で生産するために、水素化触媒上で還元剤として水素を使用する水素化反応が使用されている。しかし、このような水素化反応は、通常的にカルボキシル酸の直接水素化には、応用することができない。これは、一般的に使用されている水素化触媒が反応物であるカルボキシル酸に溶解されてカルボキシル酸の存在下で触媒活性を長期間維持することができなかったり、触媒成分がカルボキシル酸の脱カルボキシル酸化を誘発したりして、カルボキシル酸の直接水素化反応は、選択性が低いからである。
【0007】
そのため、大部分のカルボキシル酸水素化工程は、カルボキシル酸をメタノールやエタノールとエステル化反応させて、そのように収得されたエステル化物を水素化反応させて一価アルコールを製造する2工程方法で製造されている。例えば、1,4−ブタンジオールは、マレイン酸や無水マレイン酸とメタノールまたはエタノールとのエステル化物を水素化反応させて製造されている(特許文献1〜5)
【0008】
しかし、このような工程は、カルボキシル酸を水素化させるのにおいて、エステル化反応工程及びエステル化反応に使用されるアルコールの回収、精製工程が加えられなければならないし、水素化反応後に未反応エステル化物を回収、精製しなければならないなど、反応工程が複雑で、生産費用の側面でも不利な問題点がある。
【0009】
このような問題点のため、一価アルコールを生産するにおいて、反応工程を短縮させるための多くの研究が行われている。
【0010】
例えば、特許文献6及び同特許に引用された特許には、カルボキシル酸に比べて過量の水が供給される反応条件下で、マレイン酸やコハク酸を直接水素化させて1,4−ブタンジオールを製造する水素化触媒系が公知されている[ルテニウム−スズ/活性炭素(activated carbon);ルテニウム−鉄酸化物;ルテニウム−スズ/チタンまたはアルミナ;ルテニウム−スズ及びアルカリ金属やアルカリ土類金属の中から選択された成分;スズ−ルテニウム、プラチニウム及びロジウムの中から選択された成分;ルテニウム−スズ−プラチニウム/活性炭素]。
【0011】
一方、特許文献7では、n−ブタン酸の水素化触媒として、ARuDEO(A=Zn、Cd、Ni及びそれらの混合物、E=Fe、Cu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt及びそれらの混合物)のルテニウム系触媒を開示している。水が存在する場合、n−ブタノールが得られるが、水がない場合は、n−ブタン酸ブチル(n−butyl butyrate)が得られることを例示している。
【0012】
すなわち、前記従来技術は、カルボキシル酸から一価アルコールを製造するために、過量の水を使用しなければならないので(特許文献 7:10重量%酸水溶液使用)廃水発生量が多くてエネルギー使用費用が高くなり、また生産性が低く(例、LHSV:0.1hr−1以下)水素化反応圧力が60気圧以上の高い圧力が要求されるなどの問題点がある。
【0013】
そのため、モノカルボキシル酸の水素化反応による一価アルコールの工業的生産のためには、経済的な製造技術開発が求められている。また、本発明者等は、その活性を発現する(改良された)銅−シリカ系触媒上でモノカルボキシル酸の直接気相還元反応を通じて一価アルコールを直接製造する方法を開発したが、長期反応安定性の側面で、前記触媒が十分な耐久性を持っているとは考えにくく、工業用触媒としては改善の余地があった。
【0014】
以上のことに鑑みて、本発明者等は、カルボキシル酸の水素化において、Ru系触媒を使用した従来技術の問題点、例えば、上述したように高い反応圧力を要する点、反応物に必要以上の水を同時に供給しなければならないという点、生産性が低くて工業生産適用が難しいという点等の問題を改善するための研究中、適切な濃度のRuを含みそれをSn成分で改質して担体に亜鉛酸化物(ZnO)を使用した触媒の場合、モノカルボキシル酸の水素化反応活性及び選択性が画期的に改善されることを発見し、固定相反応で前記触媒下でモノカルボキシル酸を気相水素化させることにより、一価アルコールを経済的に製造することができることを確認して本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US6,100,410
【特許文献2】US6,077,964
【特許文献3】US5,981,769
【特許文献4】US5,414,159
【特許文献5】US5,334,779
【特許文献6】US6,495,730
【特許文献7】US4,443,639
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、反応物が水を含んでいてもいなくても追加で水を使用せずに、モノカルボキシル酸を直接水素化させて一価アルコールを製造するにおいて、熱安定性と化学的安定性及び反応活性が優秀な触媒を使用して、穏和な反応条件下でも高い選択性及び高い空間収率で長期間安定的に一価アルコールを製造することができる、工業的に活用性が高い水素化触媒下で一価アルコールを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、本発明は、Ru、Sn、Zn成分を必須成分とする下記化学式1で表わされる組成を有する触媒の存在下で、モノカルボキシル酸を直接水素化反応させる工程を含む一価アルコールの製造方法を提供する。
【0018】
Ru(a)Sn(b)Zn(d)Ox...化学式1
(式中、(a)、(b)、(d)及びxは、本明細書で定義したのと同様である)。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一価アルコール製造方法において、化学式1の触媒を使用する場合、原料物質である炭素数1ないし10、好ましくは炭素数1ないし8のモノカルボキシル酸などのモノカルボキシル酸の水の含有有無に関わらず、高収率で炭素数1ないし10、好ましくは炭素数1ないし8の一価アルコールを製造することができ、公知発明の触媒より非常に穏和な反応条件下で運転可能であり、高選択的かつ高生産性を示すので、経済的な方法で一価アルコールを製造することができ、また、触媒の長期反応安定性が優秀なので商業生産適用に有利な一価アルコールの製造方法になり得る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0021】
本発明は、Ru、Sn、Zn成分を必須成分とする下記化学式1で表わされる組成を有する触媒の存在下で、モノカルボキシル酸を水素によって直接水素化反応させる工程を含む一価アルコールの製造方法を提供する。
【0022】
Ru(a)Sn(b)Zn(d)Ox...化学式1
(式中、(a)、(b)及び(d)は各成分の原子数を基準にした成分比であり、(d)が100の場合、(a)は1〜20、好ましくは2〜10、(b)は1〜40、好ましくは2〜20を示し;xは酸素の原子数で、他の成分の原子価及び組成比によって決定される値)。
【0023】
また、本発明は下記化学式2で表わされるように、前記化学式1の触媒において、Co、Ni、Cu、Ag、Rh、Pd、Re、Ir及びPtからなる群から選択される一つ以上の成分Aを、追加で含む触媒の存在下で、モノカルボキシル酸を水素によって直接水素化反応させる工程を含む、一価アルコールの製造方法を提供する。
【0024】
Ru(a)Sn(b)A(c)Zn(d)Ox...化学式2
(式中、(a)、(b)、(c)及び(d)は、各成分の原子数を基準にした成分比であり、(d)が100の場合、(a)は1〜20、好ましくは2〜10、(b)は1〜40、好ましくは2〜20、(c)は0超過〜20、好ましくは0超過〜10を示し;xは、酸素の原子数で、他の成分の原子価及び組成比によって決定される値)。
【0025】
さらに、本発明は、下記化学式3で表わされるように、前記化学式2の触媒において、Si、Ti及びAlからなる群から選択される一つ以上の成分Bを追加で含む触媒の存在下で、モノカルボキシル酸を水素によって直接水素化反応させる工程を含む、一価アルコールの製造方法を提供する。
【0026】
Ru(a)Sn(b)A(c)Zn(d)B(e)Ox...化学式3
(式中、Aは、Co、Ni、Cu、Ag、Rh、Pd、Re、Ir及びPtからなる群から選択される一つ以上の成分を示し;Bは、Si、Ti及びAlからなる群から選択される一つ以上の成分を示し;(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)は、各成分の原子数を基準にした成分比であり、(d)+(e)が100の場合を基準に、(a)は1〜20、好ましくは2〜10;(b)は1〜40、好ましくは 2〜20;(c)は0超過〜20、好ましくは0超過〜10;(d)は50以上、好ましくは80〜100;(e)は0超過〜50、好ましくは0超過〜20を示し;xは、酸素の原子数で、他の成分の原子価及び組成比によって決定される値)。
【0027】
すなわち、本発明の前記一価アルコールの製造方法において使用される触媒は、亜鉛酸化物(ZnO)を担体にしたRu及びSn成分からなる触媒、前記成分からなる触媒で成形性を付与するためにシリカやアルミナ、またはチタン酸化物等の無機物バインダーを制限された範囲でさらに添加して製造された触媒、または触媒の還元能力を改善するためにCo、Ni、Cu、Ag、Rh、Pd、Re、Ir、及びPtなど還元性成分からなる群から選択された少なくとも一つ以上の改良成分をさらに添加して改質された触媒である。
【0028】
本発明による一価アルコールの製造方法に使用される触媒において、Ruは水素化活性を示す核心成分で、Zn成分を含んだ担体成分の原子数を基準にした成分比を100とする時、Ruの組成比は1〜20、好ましくは2〜10の値を有し、これより低い時は水素化活性が低く、これより高い時は活性増加量対比Ruの高価格を考慮する時、好ましくない。
【0029】
Sn成分は、Ru成分の改良剤としての役割をし、組成比は1〜40、好ましくは2〜20の範囲の値を有する。この値より低いかまたは高い時は、効果がない。
【0030】
担体として、ZnはZnOのような酸化物状態で存在して、ZnO単独で十分な役割を遂行する。しかし、前記本発明の触媒においてこれを工業触媒として使用するために、押出成形法を適用する場合、成形体が強度を有するために必要によって添加され、ここで、無機物バインダーとしてBは、シリカやアルミナ、二酸化チタンの中から選択される一つ以上の成分を追加で添加することができる。
【0031】
ここで、無機物バインダーとしてBの添加量は、50以下(例、Bが50の時;Zn5050)、好ましくは20以下の値を有するようにする範囲内で添加する。無機物バインダーBの添加量の多い時は触媒活性が低くなり、触媒の脱水能力の増加で選択性が落ちる。
【0032】
一方、Ru成分単独で十分な活性を発揮するが、触媒の還元能力を改良するために、Ru成分とともに還元触媒成分として一般的によく知られた、Co、Ni、Cu、Ag、Rh、Pd、Re、Ir及びPtの群から選択される一つ以上の成分Aを追加で含むことができる。ここで、前記成分(A)の添加量は、Ru成分対比1/2以下。すなわち、10以下、好ましくは5以下の値を有するように添加する。
【0033】
添加量の多い時は、Ru成分との合金や混合物の生成で活性が減少したり、または脱カルボキシル化のため選択性が落ちるようになる。
【0034】
本発明による一価アルコールの製造方法に使用される化学式1の触媒は、ZnOを含んだ担体に、Ru、Snなどの成分を担持させる担持法や、Sn及びZn酸化物粒子を先に製造して(ここで、他の無機物担体成分を含むことができ、共浸法や担持法で製造することができる)、そこに、Ru成分を含んだ還元性金属成分を担持させる方法で製造したり、すべての触媒成分を一度に共浸させる共浸法やまたはゾル−ゲル法など、どんな方法でも製造可能である。
【0035】
触媒製造に必要な水溶性塩は、塩化物や窒酸化物などを使用して、共浸剤(または沈澱剤)は、アンモニア水や水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムの中から選択されるどれでも使用することができる。触媒成形体は、球形や棒型、リング型等その形状が特別に制限されるのではなく、成形方法は押出成形や打錠成形法または担持法等、どんな方法でも製造することができる。
【0036】
上述した方法で製造された化学式1の触媒は、焼成過程を経るようになる。焼成過程は、通常空気雰囲気下で300〜800℃、好ましくは350〜600℃で遂行する。
【0037】
化学式1の酸化物状態の触媒は、モノカルボキシル酸の水素化反応を遂行する前に活性化過程を経るようになり、活性化過程は、H/N混合ガスを使用して200〜600℃、好ましくは250〜400℃で遂行する。
【0038】
また、本発明の一価アルコールの製造方法で使用されるモノカルボキシル酸では、水素化が気相状態で成り立たなければならないので、炭素数1ないし10のモノカルボキシル酸、好ましくは沸点が250℃以下の炭素数1ないし8のモノカルボキシル酸を挙げることができる。前記モノカルボキシル酸のアルキル基部分は、線形または分枝形のアルキル基であり得る。前記モノカルボキシル酸では、炭素数1ないし8のモノカルボキシル酸が好ましく、具体的には、前記モノカルボキシル酸では、線形または分枝形のギ酸、酢酸、プロパン酸、ブチル酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸などとこれらの異性体が含まれる。また、本発明の一価アルコールの製造方法は、反応物として上記のモノカルボキシル酸の誘導体化合物も使用することができる。このような誘導体では、モノカルボキシル酸の無水物またはエステルを挙げることができる。本発明の前記製造方法は、特にn−ブタン酸またはその無水物またはエステルのような誘導体からn−ブタノールを製造するのに非常に有用である。
【0039】
モノカルボキシル酸の水素化条件を、下記に示す。
水素化反応温度は、150〜400℃、好ましくは170〜300℃で、反応圧力は、0〜50気圧、好ましくは反応圧力は1〜50気圧、より好ましくは1〜30気圧であり、H/モノカルボキシル酸のモル比は、10〜200:1、好ましくは20〜100:1で、モノカルボキシル酸の供給速度は、0.05〜5hr−1、0.2〜3hr−1の範囲で供給することが好ましい。
【0040】
本発明は、モノカルボキシル酸の含水率に制限されるものではない。
【0041】
前記方法によるモノカルボキシル酸の水素化は、純粋なモノカルボキシル酸の場合やモノカルボキシル酸に水が含有された場合においても、高活性を示し、非常に低い反応圧力下でも高い活性を示した。また、高い空間速度下でも反応物を充分に転換させる高い生産性を示した。
【0042】
したがって、本発明によるモノカルボキシル酸から一価アルコールを製造する方法は、公知発明の触媒より非常に穏和な反応条件下で運転可能であり、高選択的かつ高生産性を示すので、経済的な方法で一価アルコールを製造することができ、触媒の長期反応安定性に優れているので、商業生産適用に有利に使用することができる。
【0043】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。但し、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
(1−1)Ru4.75Sn8.07Zn100Ox触媒製造
塩化ルテニウム(RuCl、Ru43.6重量%)1.15g、塩化スズ(II)(SnCl2・2HO)1.901g及び窒酸亜鉛(Zn(NO2・6HO)31.07gを300mlの脱イオン水に溶解した溶液と水酸化ナトリウム溶液を常温で同時に滴下して激しく撹拌しながら共浸法によって触媒スラリー溶液を製造した。最終スラリー溶液のpHを7.2に合わせて、スラリー溶液をゆっくり昇温して、80℃で5時間受熱熟成した。以後、溶液の温度を常温に減温して脱イオン水で充分に洗浄した後、ろ過した。ろ過したケーキ(残渣)を120℃で10時乾燥した後、乾燥したケーキを粉末状態にして、打錠法で成形した後、20〜40メッシュサイズに破砕、分別した。前記分別された触媒を450℃、空気雰囲気で6時間焼成した。
【0045】
(1−2)触媒活性化
焼成された酸化物状態の触媒2.0gをチューブ型反応器に充填して、5%H/N 混合ガスを流しながら徐徐に昇温して280℃で12時間活性化させた。
【0046】
(1−3)n−ブタン酸の水素化反応
触媒を還元活性化させた後、反応温度250℃、反応圧力25気圧、WHSV=1.0hr−1、H/n−BA(m/m)=35の条件下で連続反応させた。
【0047】
生成物は、捕集してGC(ガスクロマトグラフィー)で分析した。反応結果は、100時間経過後、n−ブタン酸転換率99.9%、n−ブタノールの選択度98.3%であった。
【実施例2】
【0048】
前記実施例1で製造された触媒を実施例1と同様に反応させるにおいて、反応圧力を変化させながら触媒の活性を調査した。反応圧力を除外した他の条件は、実施例1と同一である。実験結果は、下記の[表1]に示し、本発明の触媒は、5気圧以下の低い圧力下でも高い活性を示した。
【0049】
【表1】

【0050】
* WHSV=1.0hr−1、H/n−BA(m/m)=35
【実施例3】
【0051】
含水率が、10重量%であるn−ブタン酸を使用して反応条件中、WHSV=1.1hr−1であることを除き実施例1と同一条件で反応させた。
【0052】
反応結果は、n−ブタン酸転換率99.9%で、n−ブタノールの選択度は98.2%だった。
【実施例4】
【0053】
前記実施例1の触媒を実施例1と同様に反応させるにおいて、250℃、7気圧の反応圧力下で1000時間連続反応させた。
【0054】
1000時間経過後、n−ブタン酸の転換率は99.9%、n−ブタノールの選択度は98.6%で、触媒活性変化は全く観察されなかった。
【実施例5】
【0055】
Ru4.75Sn8.07Zn93SiOxの組成を有する触媒を実施例1と同じ方法で製造した。使用したSiOは、平均粒子サイズが7nmであるコロイダルシリカ(Ludox SM−30、Grace Davison社製品)で、pHを9.5に合わせた脱イオン水に希釈して使用した。スラリー製造後、実施例1と同じ方法及び条件で後処理して、実施例1と同じ反応条件でn−ブタン酸の水素化を遂行した。
【0056】
100時間経過後の反応結果は、n−ブタン酸転換率98.5%、n−ブタノールの選択度は95.2%で、中間体のn−ブタン酸ブチルが3.5%だった。
【実施例6】
【0057】
Ru4.75Sn8.07Zn93TiOxの組成を有する触媒を実施例1及び実施例5と同じ方法で製造した。Ti成分は、チタニウムイソプロポキシド(Ti(OiP))をイソプロパノール溶液に溶解して使用した。スラリー製造後、実施例1と同様に後処理して実施例1の反応条件でn−ブタン酸の水素化を遂行した。
【0058】
100時間経過後の反応結果は、n−ブタン酸転換率97.7%、n−ブタノールの選択度は94.8%であり、中間体n−ブタン酸ブチルの選択度が3.9%だった。
【実施例7】
【0059】
Ru4.7Cu0.5Sn8.0Zn100Oxの組成を有する触媒を実施例1と同じ方法で製造した。Cuは、窒酸銅(Cu(NO2・2.5HO)をRu、Sn化合物と一緒に溶解して触媒を製造した。実施例1と同じ方法及び条件で後処理して、同一反応条件でn−ブタン酸の水素化を遂行した。
【0060】
100時間経過後の結果は、n−ブタン酸転換率99.9%、n−ブタノールの選択度は98.9%だった。
【実施例8】
【0061】
Ru4.7Co0.5Sn8.0Zn100Oxの組成を有する触媒を実施例1と同じ方法で製造するにおいて、亜鉛酸化物ZnO粉末を先に水に分散させて、以後、Ru、Co、Sn成分を脱イオン水に一緒に溶解した溶液と水酸化ナトリウム溶液を常温で同時に滴下して製造した。ここで、Co成分は、Co(NO2・6HOを使用した。以後、実施例1と同一方法で後処理して、触媒性能を同じ条件で調査した。
【0062】
実験結果は、100時間経過後、n−ブタン酸の転換率が99.9%、n−ブタノールの選択度は95.2%で、n−ブタン酸ブチルが3.7%だった。
【実施例9】
【0063】
Ru4.7Pt0.3Re0.3Sn8.0Zn100Oxの組成を有する触媒を製造するにおいて、実施例1の触媒製造過程で、SnとZn成分の混合含酸素物のスラリーを先に共浸法で製造して、前記スラリーを撹拌しながらRuとPt成分を脱イオン水に一緒に溶解した溶液を水酸化ナトリウム溶液と同時に滴下して、pHを調節しながら触媒を製造した。ここで、Pt成分は、HPtCl6・6HOを使用した。
【0064】
以後、受熱熟成過程と洗浄及び乾燥過程を実施例1と同じ方法で遂行した。乾燥した触媒ケーキを粉末化して、そこに、Reを脱イオン水に溶解した溶液を担持させた。以後、乾燥、焼成、成形、破砕及び分別、焼成過程は、実施例1と同じ条件で実施し、触媒性能を同じ条件で調査した。
【0065】
実験結果は、100時間経過後、n−ブタン酸の転換率が99.9%以上、n−ブタノールの選択度は98.4%だった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表わされる組成を有する触媒の存在下で、C1〜10のモノカルボキシル酸またはその誘導体を水素によって直接水素化反応させる工程を含む、一価アルコールの製造方法:
[化学式1]
Ru(a)Sn(b)Zn(d)Ox
(式中、(a)、(b)及び(d)は、各成分の原子数を基準にした成分比であり、(d)が100の場合、(a)は1〜20、(b)は1〜40で;xは、酸素の原子数で、他の成分の原子価及び組成比によって決定される値)。
【請求項2】
前記触媒が、下記化学式2で表わされるように、Co、Ni、Cu、Ag、Rh、Pd、Re、Ir及びPtからなる群から選択される一つ以上の成分Aを追加で含むことを特徴とする一価アルコールの製造方法:
[化学式2]
Ru(a)Sn(b)A(c)Zn(d)Ox
(式中、(a)、(b)、(c)及び(d)は、各成分の原子数を基準にした成分比であり、(d)が100の場合、(a)は1〜20、(b)は1〜40、(c)は0超過〜20で;xは、酸素の原子数で、他の成分の原子価及び組成比によって決定される値)。
【請求項3】
前記触媒が、下記化学式3で表わされるように、Si、Ti及びAlからなる群から選択される一つ以上の成分Bを追加で含むことを特徴とする、請求項2に記載の一価アルコールの製造方法:
[化学式3]
Ru(a)Sn(b)A(c)Zn(d)B(e)Ox
(式中、Aは、Co、Ni、Cu、Ag、Rh、Pd、Re、Ir及びPtからなる群から選択される一つ以上の成分を示し;Bは、Si、Ti及びAlからなる群から選択される一つ以上の成分を示し;(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)は、各成分の原子数を基準にした成分比であり、(d)+(e)が100の場合を基準に、(a)は1〜20;(b)は1〜40;(c)は0超過〜20;(d)は50以上;(e)は0超過〜50であり;xは、酸素の原子数で、他の成分の原子価及び組成比によって決定される値)。
【請求項4】
前記触媒が、空気雰囲気下で、300〜800℃で焼成されることを特徴とする、請求項1に記載の一価アルコールの製造方法。
【請求項5】
前記触媒が、水素化反応を遂行する前に、H/N混合ガスを使用して200〜600℃で活性化されることを特徴とする、請求項1に記載の一価アルコールの製造方法。
【請求項6】
前記水素化反応が、前記C1〜10のモノカルボキシル酸またはその誘導体が150〜400℃の反応温度、及び1〜50気圧の反応圧力で気相還元されることを特徴とする、請求項1に記載の一価アルコールの製造方法。
【請求項7】
前記水素化反応で、水素と前記C1〜10のモノカルボキシル酸またはその誘導体のモル比が、10〜200:1であることを特徴とする、請求項1に記載の一価アルコールの製造方法。
【請求項8】
前記水素化反応で、前記C1〜10のモノカルボキシル酸またはその誘導体の供給速度(LHSV)が、0.05〜5hr−1であることを特徴とする、請求項1に記載の一価アルコールの製造方法。
【請求項9】
前記モノカルボキシル酸がn−ブタン酸で、前記一価アルコールはn−ブタノールであることを特徴とする、請求項1に記載の一価アルコールの製造方法。
【請求項10】
前記モノカルボキシル酸の誘導体が、モノカルボキシル酸無水物またはエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の一価アルコールの製造方法。
【請求項11】
前記C1〜10のモノカルボキシル酸またはその誘導体が、水を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の一価アルコールの製造方法。
【請求項12】
前記C1〜10のモノカルボキシル酸またはその誘導体が、水を含むことを特徴とする、請求項1に記載の一価アルコールの製造方法。

【公開番号】特開2009−215289(P2009−215289A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37782(P2009−37782)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(301040648)コーリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー (4)
【Fターム(参考)】