説明

モノクローナルヒト腫瘍特異的抗体

腫瘍関連抗原NY−ESO−1を認識する新規なヒト腫瘍特異的抗体、その断片、誘導体およびバリアントを提供する。さらに、腫瘍の治療におけるそのような抗体およびその模倣体を含有する医薬組成物についても説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、腫瘍抗原と腫瘍関連抗原を認識する新規な腫瘍特異的結合分子(特にヒト抗体)と、その断片、誘導体およびバリアント(variant、変異型)とに関す
る。さらに、本発明は、種々の腫瘍の治療における、特には黒色腫、乳癌および腫瘍転移におけるそのような結合分子、抗体、およびその模倣体を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍に対する体液性免疫反応は、文献(1,2)において比較的高い頻度で起こっている。この現象を活用して、がん患者から得た血清で自己の発現ライブラリをスクリーニングすることにより種々の腫瘍関連抗原(taa)を識別した(1)。これらのtaaのうちの一部は、患者における抗腫瘍CTL反応を誘発するためのT細胞抗原としての役割を現在果たしている(3,4)。細胞性(大半は細胞毒性である)免疫応答が治療戦略としてこのように好ましいことが現在見直されており、新規なワクチンも抗体反応を引き起こすように設計されている。一部で、この概念の変更は、トラスツズマブ(ハーセプチン)およびベバシズマブ(アバスチン)等の腫瘍治療用の種々のモノクローナル抗体の最近の成功により影響を受けた可能性もある(5)。これらのモノクローナル抗体は推定の腫瘍に関連する標的に対して特異的作製されたが、がん患者で生じる抗体は、自発的なものであれ予防接種によるものであれ、その治療上の重要性を評価するのが困難な種々のクラスの分子を形成する。この理由のほとんどは、ヒト癌のインビトロおよび動物モデルにおいて該分子の単離および後の特性付けを行うための直接的な実験アプローチがないことによる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、上述の制約を克服し、かつ癌に関連する抗原に対する診断用抗体を提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、腫瘍抗原および腫瘍関連抗原(taa)に特異的なヒトモノクローナル抗体を単離するためにがん患者の腫瘍特異的免疫反応を利用している。詳細には、本発明に従って行なわれた実験によれば、NY−ESO−1に対する血清力価と部分的な臨床反応とを示した黒色腫患者からのtaa NY−ESO−1に特異的なモノクローナル抗体の単離に成功した。腫瘍抗原およびtaaに特異的なヒト抗体の単離のために、組織マイクロアレイ(TMA)を使用した免疫組織化学(IHC)を使用した。
【0005】
本発明は、腫瘍関連抗原NY−ESO−1を認識可能なヒト抗体、抗原結合断片、および同様の抗原結合分子をその対象とする。さらに、本発明は、かかる抗体を含有する組成物およびかかる抗体を用いた免疫治療法および免疫診断法に関する。
【0006】
本発明の特に好ましい実施形態では、ヒト抗体またはその抗原結合断片は、図4(配列番号2および4)に記載されている可変領域VHおよび/またはVLにより特徴付けられる抗体の免疫結合特性を実証している。代わりに、抗体はヒト化抗体、異種抗体、またはキメラヒト−マウス抗体であり、キメラヒト−マウス抗体は動物における診断方法および研究に特に有用である。上記抗体またはその活性断片、アゴニストおよび同族分子、もしくは代わりに該抗体またはその活性断片のアンタゴニストを含有する治療組成物、およびかかる組成物を用いた腫瘍の予防、診断、または治療におけるかかる組成物の使用方法であって有効量の組成物はかかる治療を必要とする患者に投与される方法も含まれる。
【0007】
抗体の抗原結合断片は、一本鎖Fv断片、F(ab’)断片、F(ab)断片、およびF(ab’)2断片、または他の抗原結合断片であってよい。特定の実施形態では、以下
、抗体またはその断片はヒトIgGアイソタイプ抗体である。
【0008】
当然ながら、本発明は、以下に定義されるような明確に区別される固有の特性を有する抗体を生産する不死化ヒトBメモリリンパ細胞およびB細胞にそれぞれ及ぶ。
本発明はさらに、本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも1つの可変領域をコードするポリヌクレオチドに関する。好ましくは、該可変領域は、図4(配列番号 5〜10)に記載された可変領域のVHおよびVLのうちの少なくとも一方の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を有する。
【0009】
従って、本発明は、かかるポリペプチドを含むベクター、該ベクターにより形質転換された宿主細胞、および腫瘍、特には黒色腫または乳癌であることを示すか引き起こすかのいずれか一方である抗原に特異的な抗体および等価な結合分子の製造のための該ベクターまたは該宿主細胞の使用方法も包含する。
【0010】
抗体、免疫グロブリン鎖、その結合断片、および前記抗体に結合する抗原を、腫瘍免疫療法および診断のために医薬組成物および診断組成物にそれぞれ使用することができる。しかしながら、医薬の準備における上記組成物の使用が好ましい。
【0011】
従って、原発性乳癌および転移のような癌の病気を治療または予防する方法を提供することが本発明の特定の目的である。方法は、抗体が腫瘍組織および細胞を標的とする位置で被験者に有効な濃度の抗体または誘導体抗体を投与することを含む。
【0012】
本発明のさらなる実施形態が、以下に続く説明および実施例から明らかとなろう。さらに、本発明の説明は、必要な場合または適切な場合には、2007年3月13日に欧州特許庁に出願された初期の出願人の欧州特許出願EP 07 005 180.0号の開示内容により捕足され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】メモリB細胞培養物ウェル12 D7はNY−ESO−1特異的な抗体を含む。メモリB細胞培養物により調整された培地をNY−ESO−1特異的ヒト抗体が存在するかどうかについて分析した。A)完全長組換えNY−ESO−1を示すELISA。B)NY−ESO−1陽性乳腺癌(mamma carcinoma, (mc)およびNY−ESO−1陰性対照組織(ct)に対する免疫組織化学。2つのELISA陽性メモリB細胞培養物ウェル(9D1、12D7)の馴化培地で得られた染色を示す。C)ウェル12D7に含まれていたNY−ESO−1特異的抗体は、IgG1サブクラスに属する。これはNY−ESO−1陽性組織を培養物ウェルからのB細胞馴化培地で染色し、その後IgGサブクラスであるIgG−4に対する2次抗体で染色することにより実証された。
【図2】培養メモリB細胞のPCR単一細胞RT−PCRにより得られた組換えヒト抗体12D7クローンの第4番は、ELISAおよび組織切片でNY−ESO−1を特異的に認識する。クローン12D7 第4番を発現している免疫グロブリンの重鎖および軽鎖発現ベクターでトランスフェクトした293T HEK細胞から採取した上澄み液(SN)を、A)完全長組換えNY−ESO−1を示すELISAでNY−ESO−1に対する特異性について試験した。ELISAの値は、無希釈SN(1:12D7.4 SN)、1/10稀釈液(2:12D7.4 SN)、および1/100稀釈液(3:12D7.4 SN)について示す。比較のため、1/100稀釈として使用されたメモリB細胞培養物の由来元である患者の血漿について得られたELISAシグナルも示す(4)。対照として、12D7.4と同じ方法で生産された無関係の組み換え抗体をトランスフェクトして得られたSNがNY−ESO−1でコーティングされたELISAプレートへ結合しないことが示される(5)と共に、12D7クローン4番が無関係な抗原でコーティングされたELISAプレートに結合しないことも示される。B)NY−ESO−1陽性乳腺癌(mc)およびNY−ESO−1陰性対照組織(ct)に対する免疫組織化学は、乳腺癌に対する組換え12D7クローン第4番の特異的結合を示している。
【図3】ヒトモノクローナル抗体であるマンハッタン(Manhattan)の特徴付け。エピトープマッピングを、ELISAプレート上にコーティングしたNY−ESO−1タンパク質全体にわたる重複ペプチドを使用して行なった。A) マンハッタンはNY−ESO−1タンパク質のN末端基の11〜30のアミノ酸に及ぶペプチドに特異的に結合する。B)患者C1の血清はNY−ESO−1のN末端および中間領域の種々のペプチド断片を認識する。C)NY−ESO−111-30ペプチドとの競争ELISA実験によりマンハッタンの結合力(アビディティ)はKD=10-10として決定される。D)NY−ESO−1陽性細胞株SK−MEL−37のhumAbマンハッタンによる免疫蛍光染色法は、核マーカーのヘキスト(Hoechist)とのNY−ESO−1の同時局在を示す。MOGに特異的な対照抗体ヒト組換え個体8−15c5は結合しない。
【図4】抗体12D7の可変領域(すなわち重鎖およびκ軽鎖)のアミノ配列とヌクレオチド配列。相補性決定領域(CDR)には強調表示をしている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一実施例に説明される抗体に対して概説したような免疫結合特性および/または生物学的特性を実証する抗体とその抗原結合断片に関する。存在する場合には、用語「免疫結合特性」、または抗原との抗体の他の結合特性は、その文法の形式のすべてにおいて、特異性、親和性、交差反応性および他の抗体の結合特性を指す。当然ながら、本発明は、抗体を生産する細胞株および組換え細胞にも及ぶ。本発明はさらに、本発明の結合分子を含む診断アッセイおよびキットと、それに基づく治療方法とに関する。
【0015】
本発明によれば、腫瘍関連抗原NY−ESO−1に特異的なヒト抗体を、2008年1月7日出願の出願人の同時係属国際出願第PCT/EP2008/000053号「疾病特異的結合分子および標的を提供する方法(Method of providing disease-specific binding molecules and targets)」に開示されているのと本質的に同様な腫瘍の診断および治療に有用な結合分子を識別、確認、および生産する方法を使用して、ELISAでおよび自己腫瘍切片でNY−ESO−1に血清反応陽性だった黒色腫患者からクローニングした。上記出願の開示内容は本明細書に援用する。抗体候補のスクリーニングは、ELISAで、および組織マイクロアレイ技術の適応を使用して腫瘍組織で行なった。得られた組織反応性のヒトモノクローナル抗体は、腫瘍関連抗原LAGE−1によっても共有されているNY−ESO−1のN末端基に結合することが示された;実施例3を参照のこと。
【0016】
別段の定めをした場合を除き、用語「がん」および「腫瘍」は本明細書では互換的に使用される。
あくまで明確さのためであって本発明の範囲を限定するわけではないが、以下の実施形態の大部分は、本発明に従う治療薬および診断薬の開発に好適な結合分子を表わすヒト抗体および抗体様分子に関して説明する。しかしながら、本発明の文脈で使用する場合、用語「抗体」およびその断片は、ヒト由来腫瘍(関連)抗原NY−ESO−1に結合するホルモン、受容体、リガンド、主要組織適合複合体(MHC)分子、熱ショックタンパク質(HSP)を初めとするシャペロン、およびカドヘリン、インテグリン、C型レクチン、および免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーを初めとする細胞−細胞接着分子を含むがこれらに限定されない他の抗体以外の結合分子をも指す。
【0017】
NY−ESO−1は、元々は抗体に基づくクローニング技術(SEREX、以下参照)使用
して食道がんの患者で識別されたが、NY−ESO−1を発現する腫瘍を有する患者の高
い割合で自発的な細胞性免疫反応と体液性免疫反応を観察することができるため、最近、NY−ESO−1が最も免疫原性の高いCT抗原を表わす可能性が示されている(Gnjatic
et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100 (2003), 8862-8867; Jager and Knuth, Breast 14 (2005), 631-635)。
【0018】
CT抗原がヒト腫瘍細胞および精巣の精原細胞で選択的に発現されるため、それらはがん患者における免疫療法アプローチのための標的抗原の候補グループを表わしている。その中でも、NY−ESO−1は免疫原性が強いようであり、黒色腫、卵巣がん、乳がん、肺がん、および膀胱がんの患者で効率的な体液性および細胞性免疫反応を引き起こすことが知られており、有効ながん免疫療法の理想的標的となっている。腫瘍抗原および腫瘍関連抗原起源のヌクレオチドおよびアミノ酸配列についての情報や、起源、主な文献等の情報については、EMBLホストのUniProtKB/ Swiss-Prot等の適当なデータベースを参照
されたい。UniProtKB/ Swiss-ProtにはNY−ESO−1のエントリがプライマリアクセ
ッション番号P78358で見出され得る。
【0019】
特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、NY−ESO−1タンパク質の11〜30のアミノ酸残基を表わす配列番号11のアミノ酸配列により定義されたエピトープに結合する。
【0020】
抗体およびその模倣体の組換え生産のための手段および方法、および競争結合する分子(これは抗体であってもよいし、そうでなくてもよい)をスクリーニングする方法は、当該技術分野で周知である。実施例も参照されたい。しかしながら、本明細書に記載されているように、特にヒトでの治療的応用に関して、本発明の抗体は、かかる抗体がキメラ抗体やさらにはヒト化個体でも観察されるヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を実質的に生じないという意味で、ヒト抗体である。
【0021】
さらに、添付の実施例3に実証されているように、抗体は識別されクローニングされ、低いナノモル範囲でもその同族抗原との相互作用の平衡解離定数(KD)に関し特に高い結合親和性を示す。好ましくは、本発明の結合分子のその同族抗原との結合親和性は、少なくとも約10-7Mであり、より好ましくは少なくとも約10-8Mであり、特に好ましくは約10-9Mであり、さらにより好ましくは約10-10Mである。
【0022】
本発明は、自身の可変領域すなわち結合領域に、図4に描かれた(VH)(配列番号2)および(VL)(配列番号4)のアミノ酸配列を含む可変領域のVHおよびVLのうちの少なくとも一方の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことにより特徴付けることが可能なヒト抗NY−ESO−1抗体およびその結合断片を例証する。図4に描かれたVHおよびVL領域の上記アミノ酸配列のCDRの例証的なセットは、配列番号5〜10で与えられるが、以下に説明するように、当業者は、追加的にまたは代替的に、配列番号5〜10のアミノ酸配列とは1つ、2つ、3つ、またはCDR2およびCDR3の場合にはそれ以上のアミノ酸だけ異なるCDRが使用されてもよいという事実がよく理解される。
【0023】
1実施形態では、本発明の抗体は、図4に描かれたVH領域およびVL領域のうちの少なくとも一方のアミノ酸配列を含む任意の抗体の一つである。代わりに、本発明の抗体は、NY−ESO−1抗原への結合について、図4に描かれたVH領域およびVL領域のうちの少なくとも一方を有する抗体の少なくとも一つと競争する抗体またはその抗原結合断片である。これらの工程はマウス抗体であってもよいが、特に治療用途ではヒト化抗体、異種抗体、またはキメラヒト−マウス抗体が好ましい。抗体の抗原結合断片は、例えば一本鎖Fv断片(scFv)、F(ab’)断片、F(ab)断片、またはF(ab’)2断片
である。
【0024】
したがって、いくつかの用途では、Fab’、Fab、またはF(ab’)2部分を生
成できるよう適当な試薬で抗体を処理することにより得ることが可能な抗体の可変領域のみが要求される。そのような断片は、例えば放射性同位元素等の検出試薬に免疫グロブリンの免疫特異的部分を結合させることを伴う免疫診断手順で使用するのに十分である。
【0025】
不死化B細胞またはBメモリ(記憶)細胞の培養物から免疫グロブリンを直接取得する代わりとして、不死化細胞を後続の発現および/または遺伝子操作のために再編成した重鎖および軽鎖座の供給源として使用してもよい。再編成された抗体遺伝子を、適切なmRNAから逆転写し、cDNAを生産する。所望の場合、重鎖の定常領域は、異なるアイソタイプのそれと交換するか、またはすべて除去してもよい。可変領域は一本鎖Fv領域をコードするよう連結され得る。1つよりも多い標的への結合能力を与えるために、複数のFv領域を連結させてもよく、キメラの重鎖および軽鎖の組み合わせが使用されてもよい。一旦遺伝子材料が利用可能になると、所望の標的に結合するその能力を保持する上述したような類似体の設計は簡単である。抗体可変領域のクローニング方法および組換え抗体の生成方法は、当業者には周知であり、例えばGilliland et al., Tissue Antigens 47 (1996), 1-20; Doenecke et al., Leukemia 11 (1997), 1787-1792.に記載されている。
【0026】
いったん適切な遺伝子材料が得られ、所望の場合、類似体をコードするように修飾されると、最小限で重鎖と軽鎖の可変領域をコードするものを含むコード配列は、ベクターに含まれる発現系に挿入され、ベクターは標準的な組換え宿主細胞にトランスフェクトされ得る。種々のそのような宿主細胞を使用してもよいが、効率的な処理を求める場合、哺乳動物細胞が好まれる。この目的で有用な典型的な哺乳動物細胞系にはCHO細胞、HEK293細胞、またはNSO細胞が含まれる。その後、抗体または類似体の生産が、宿主細胞の増殖およびコード配列の発現に適した培養条件下で修飾組換え宿主を培養することにより行われる。その後、抗体を、培地から単離することにより回収する。発現系は好ましくは、生じた抗体が培地に分泌されるようシグナルペプチドを含むように設計されるが、細胞内での生産も可能である。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、ペプチド型でも翻訳後修飾の型でも上述した本発明の抗体により認識されるNY−ESO−1抗原に関する。抗原は好ましくは少なくとも6−50アミノ酸長、好ましくは10−100アミノ酸長(同族エピトープを含む)から成るペプチドである。好ましくは、本発明の抗原は、配列番号11のアミノ酸配列を有し、約10〜30個のアミノ酸から成り、好ましくは長さが約20アミノ酸以下である。該分子は、翻訳後修飾を行わなくても抗原性がある程度に十分に大きく、従って、アジュバントと組み合わされた場合に(またはアジュバントなしでも)、前駆物質の型でも翻訳後修飾の型でも免疫原として有用である。これらの抗原とペプチドは、抗体が血清または血液等のサンプル中に存在するかどうかを決定するために使用することが可能である。好ましくは、本発明の抗原は、ヒトでの体液性反応を誘発することが可能である。
【0028】
上記に従うと、本発明は、本発明の抗原または結合分子をコードするポリヌクレオチドに関し、抗体の場合、好ましくは上述された抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域である。典型的には、ポリヌクレオチドによってコードされる可変領域は、前記抗体の可変領域のVH領域およびVL領域の少なくとも一方の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。当業者には、抗体の各可変領域(重鎖VHおよび軽鎖VL)が、4つの比較的保存されたフレームワーク領域すなわち「FR」と隣接した相補性決定領域すなわち「CDR」と称されることもある3つの超可変領域を含み、抗原結合の原因となる抗体のアミノ酸残基のことを指すことが知られている。抗体のヒトIgGサブタイプの超可変領域すなわちCDRは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md (19
91)に記載されているような軽鎖可変領域の残基24−34(L1)、50−5(L2)
および89−97(L3)および重鎖可変領域の残基31−35(H1)、50−65(H2)および95−102(H3)由来のアミノ酸残基および/またはChothia et al., J. Mol. Biol. 196 (1987), 901-917に記載されているような軽鎖可変領域の超可変ルー
プすなわち26−32(L1)、50−52(L2)、および91−96(L3)および重鎖可変領域の26−32(H1)、53−55(H2)、96−101(H3)由来の残基を有する。フレームワークすなわちFRの残基は、超可変領域以外の超可変領域の限界を定める可変領域の残基である。用語「特異的結合」とは、所定の抗原に対する抗体の結合を指す。典型的には、抗体は、10-7M以下の解離定数(KD)で結合し、所定の抗原以外(例えばBSA、カゼインまたは他の特定のポリペプチド)に対するKDよりも、
少なくとも2倍小さいKDで所定の抗原に結合する。語句「抗原を認識する抗体」および
「抗原に特異的な抗体」は、本明細書では用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に使用される。本明細書に使用する場合、「高度に特異的な」結合とは、特異的な標的エピトープ(すなわちtaa NY−ESO−1)に対する抗体の相対KDが、その抗体の
他のリガンドに対する結合のKDよりも少なくとも10倍小さいことを意味する。好まし
くは、抗体は、10-9M以下の解離定数(KD)でその同族NY−ESO−1抗原に結合
する。
【0029】
抗原に対する抗体の親和性(アフィニティ)または結合性(アビディティ)は任意の適切な方法を使用して実験的に決定することが可能である;例えばBerzofsky et al., "Antibody- Antigen Interactions" In Fundamental Immunology, Paul, W. E., Ed., Raven Press New York, N Y (1984), Kuby, Janis Immunology, W. H. Freeman and Company New York, N Y (1992)および本明細書で説明している方法を参照されたい。異なる条件(例えば塩濃度、pH)で測定されると、特定の抗体−抗原相互作用の親和性の測定値は変化し得る。したがって、親和性および他の抗原結合パラメータ(例えばKD、IC50)の
測定は、抗体および抗原の標準溶液および標準化バッファを用いて好ましくは行われる。
【0030】
当業者には、所望の特異性および生物学的機能を有する他のポリペプチドまたは抗体を構築するために、上述の可変領域を有する抗体の可変領域が使用され得ることが容易に理解されるだろう。したがって、本発明は、上述の可変領域の少なくとも1つのCDRを含み、添付の実施例で記載された抗体と実質的に同一のまたは類似の結合特性を有利に有するポリペプチドおよび抗体も包含する。当業者には、本明細書で説明した可変領域またはCDRを使用して、例えば欧州特許出願出願公開第EP0 451 216 A1および第EP 0 549 581 A1号に記載されたような当該技術分野で周知の方法を使用して抗体を構築し得ることが容易に理解されるだろう。さらに、当業者には、Kabatに
より定義されたCDRと部分的に重複するCDRの内のまたは超可変ループ内のアミノ酸置換を置換することにより結合親和性が増強され得ることを知っている(Chothia and Lesk, J. MoI. Biol. 196 (1987), 901-917)。したがって、本発明は、上記CDRの1つ
または複数が、1つまたは複数の(好ましくは2つの以下の)アミノ酸置換を有する抗体にも関連する。好ましくは、本発明の抗体は、その免疫グロブリン鎖の一方又は両方に、配列番号5〜10の可変領域の2つまたは3つすべてのCDRを有する。
【0031】
上述の抗体をコードする本発明のポリヌクレオチドは、例えばDNA、cDNA、RNA、または合成DNAもしくはRNA、または上記ポリヌクレオチドの任意のものを単独でまたは組み合わせて含む組み換えキメラ核酸分子であってよい。好ましくは、ポリヌクレオチドはベクターの一部である。そのようなベクターは、適切な宿主細胞中でおよび適切な条件下でベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子等の遺伝子をさらに含んでもよい。
【0032】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、原核細胞または真核細胞の発現を許容する
発現制御配列に作用的に連結される。該ポリヌクレオチドの発現は、翻訳可能なmRNAへのポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞(好ましくは哺乳動物細胞)における発現を保証する調節エレメントは、当業者には周知である。それらは通常、転写の開始を保証する調節配列と、任意選択で、転写の終了と転写物の安定化を保証するポリAとを含む。さらなる調節エレメントは、転写エンハンサー、翻訳エンハンサー、および/または天然で結合したまたは異種起源のプロモーター領域を含んでもよい。
【0033】
この点で、当業者には、軽鎖および/または重鎖の少なくとも可変領域をコードするポリヌクレオチドが、両方の免疫グロブリン鎖または1つだけの可変領域をコードし得ることが容易に理解されるだろう。同様に、ポリヌクレオチドは、すべて同じプロモーターの制御下にあってもよいし、または発現のために別々に制御されてもよい。原核生物の宿主細胞での発現を許容する可能な調節エレメントには、例えば大腸菌(E.coli)のPLプロ
モーター、lacプロモーター、trpプロモーター、またはtacプロモーターが含まれ、真核生物の宿主細胞での発現を許容する調節エレメントの例には、酵母のAOX1プロモーターまたはGALlプロモーター、もしくは哺乳動物細胞および他の動物細胞中のCMVプロモーター、シミアンウイルス40プロモーター、RSVプロモーター、CMVエンハンサー、SV40エンハンサーまたはグロビンイントロンが含まれる。
【0034】
転写の開始の原因となるエレメントの他に、そのような調節エレメントはSV40ポリA部位またはtk−ポリA部位等の転写終止コドンをポリヌクレオチドの下流にさらに含んでもよい。さらには、使用される発現系に依存して、ポリペプチドを細胞のコンパートメントに向けたり、あるいはポリペプチドを培地中に分泌させたりすることが可能なリーダー配列を、本発明のポリヌクレオチドのコード配列に追加してもよく、かかる配列は当該技術分野において周知である。リーダー配列は適切な段階で、翻訳配列、開始配列および終了配列と共に組み合わされ、好ましくは、翻訳されたタンパク質またはその一部を周辺質空間または細胞外の培地に分泌させるように向けることが可能なリーダー配列である。任意選択で、異種配列は、所望の特性(例えば発現された組換え産物の安定化または精製の単純化)を与えるC末端またはN末端識別ペプチドを備えた融合タンパク質をコードしてもよい。これに関し、Okayama-Berg cDNA 発現ベクターpcDV1 (Pharmacia社), pCDM8, pRc/CMV, pcDNA1, pcDNA3 (Invitrogen社、またはpSPORT1 (GIBCO BRL社等の適切な発
現ベクターが当該技術分野で周知である。
【0035】
好ましくは、発現制御配列は、真核生物の宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることが可能なベクターにおける真核生物のプロモーター系であるが、原核生物宿主のための制御配列が使用されてもよい。一旦ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主は、高いレベルのヌクレオチド配列の発現に適した条件下で維持され、所望の場合には、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、軽鎖/重鎖二量体またはインタクトな抗体、結合断片または他の免疫グロブリン型の収集および精製が続いて行われ得る。Beychok, Cells of Immunoglobulin Synthesis, Academic Press, N. Y., (1979)参照。
【0036】
さらに、本発明は、抗原をコードするポリヌクレオチドまたは好ましくは本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の可変領域を含む、遺伝子工学で従来から使用されているベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルス)およびバクテリオファージに関する。これに、任意選択で、本発明の抗体の別の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードする本発明のポリヌクレオチドが任意選択で組み合わされる。好ましくは、ベクターは発現ベクターおよび遺伝子導入ベクターすなわちターゲッティングベクターの少なくとも一つである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ関連ウイルスウイルス、ヘルペスウイルスまたはウシ乳頭腫ウイルス等のウイルス由来の発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを標的の細胞集団に送達するために使用され得る。当業者に周知の方法を使用して組換えウイルスベクターを構築することが可能である;例えばSambrook, Molecular Cl
oning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N. Y. および Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N. Y. (1994)を参照されたい。代わりに、本発明のポリヌクレオチドおよびベクターを、標的細胞への送達用リポソームへ再編成してもよい。本発明のポリペプチド(例えば免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖可変領域のコード配列および発現制御配列)を含むベクターは周知の方法により宿主細胞に移送することが可能であるが、これは宿主細胞の種類によって変わる。例えば、原核細胞には塩化カリウムトランスフェクションがよく利用されているが、他の宿主細胞にはリン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションが使用されてもよい。前掲のSambrookを参照のこと。
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換された宿主細胞に関する。宿主細胞は原核生物であっても真核細胞であってもよい。宿主細胞中に存在する本発明のポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよいし、または染色体外で維持されてもよい。宿主細胞は任意の原核生物または真核細胞であってよく、それには細菌細胞、昆虫細胞、菌類細胞、植物細胞、動物細胞またはヒト細胞が含まれる。好ましい菌類細胞は例えばサッカロマイセス属の細胞であり、特にはS. cerevisiae種の細胞である。「原核生物」という用語は、本発明の抗体または対応する免疫グ
ロブリン鎖の発現のためのDNAまたはRNA分子で形質転換またはトランスフェクト可能なすべての細菌を含むことを意味する。原核生物の宿主はグラム陰性細菌とグラム陽性細菌の両方を含み、例えば大腸菌(E. coli)、
S. typhiurium、Serratia marcescensおよび枯草菌(Bacillus subtilis)が含まれる。
「真核生物」という用語は、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞および好ましくは哺乳動物細胞を含むことを意味し、最も好ましくはHEK293細胞、NSO細胞およびCHO細胞である。組換え生産手順に使用される宿主に応じて、本発明のポリヌクレオチドによりコードされた抗体または免疫グロブリン鎖は、糖鎖形成されてもよいしまたは糖鎖形成されなくてもよい。本発明の抗体または対応免疫グロブリン鎖は、開始メチオニンアミノ酸残基を含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは、当業者には周知の任意の技術を使用して宿主を形質転換またはトランスフェクトするために使用可能である。さらに、融合された作用的に連結した遺伝子の調整方法および該遺伝子の例えば哺乳動物細胞や細菌における発現方法は当該技術分野において周知である(Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989))。該文献に記載された遺伝
子構築物および方法を、真核生物宿主または原核生物宿主における本発明の抗体または対応免疫グロブリンの発現のために利用することができる。一般に、挿入されたポリヌクレオチドの効率的な転写を促進するプロモーター配列を含む発現ベクターが、宿主に関連して使用される。発現ベクターは、一般に、複製開始点、プロモーター、およびターミネータ、そして形質転換細胞の発現型の選択を提供可能な特異的特定の遺伝子を含んでいる。DNA配列の適切な供給源細胞および免疫グロブリンの発現および分泌用の宿主細胞は、例えば米国培養菌保存施設(ATCC)「本明細書に援用する”Catalogue of Cell Lines and Hybridomas 第5版 (1985)、アメリカ合衆国メリーランドロックビル)等の多く
の供給元から得ることが可能である。さらに、本発明の細胞を含むトランスジェニック動物、好ましくは哺乳動物を、本発明の抗体の大規模生産のために使用してもよい。
【0037】
したがって、さらなる実施形態では、本発明は、本発明の抗原、抗体またはその結合断片、もしくはその免疫グロブリン鎖の生産のための方法であって、
(a)上述した細胞を培養する工程、および
(b)培養物から前記抗原、抗体または結合断片、もしくはその免疫グロブリン鎖を分離する工程、
からなる方法に関する。
【0038】
形質転換宿主は、最適の細胞増殖を達成するように、発酵槽で増殖され、かつ当該技術分野の周知技術により培養され得る。いったん発現されると、完全抗体、その二量体、個
々の軽鎖および重鎖、または本発明の他の免疫グロブリン型は、硫安沈澱、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動およびその同等物を含む当該技術分野の標準的手順により精製され得る。Scopes, "Protein Purification", Springer Verlag,
N. Y. (1982)を参照されたい。その後、本発明の抗体またはその対応免疫グロブリン鎖
は、増殖培地、細胞溶解物または細胞膜分画から分離され得る。例えば本発明の組換え発現抗体または免疫グロブリン鎖の分離および精製は、例えば本発明の抗体の定常領域に対して作製されたモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を伴う調製クロマトグラフィー分離および免疫分離等の任意の従来の手段によって行われ得る。本発明の抗体がさらに、例えば薬物ターゲティングおよびイメージング用途のための他の部分にさらに結合可能であることが当業者には明らかである。そのような結合は、抗体または抗原の発現後に取付部位に化学的に行われてもよいし、または結合用産物がDNAレベルで本発明の抗体または抗原に遺伝子工学的に組み込まれるようにしてもよい。その後、DNAは適切な宿主系で発現され、必要な場合、発現されたタンパク質は収集および復元される。
【0039】
少なくとも約90%から95%の均質性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、医薬の用とには98〜99%またはそれより高い均質性が最も好ましい。部分的にまたは望ましい均質性までいったん精製されると、抗体は(生体外を含む)治療に、またはアッセイ手順を開発および実施するために使用することが可能である。
【0040】
本発明はまた、本発明の抗体またはその対応免疫グロブリン鎖を発現可能な細胞を生産する方法であって、本発明のポリヌクレオチドで、または本発明のベクターで細胞を遺伝子操作する工程からなる方法を含む。本発明の方法により取得可能な細胞を、例えば本発明の抗体のその抗原との相互作用を試験するために使用することができる。
【0041】
先に述べたように、免疫グロブリンまたはそのコードcDNAはさらに修飾されてもよい。したがって、さらなる実施形態では、本発明の方法は、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、Fab断片、二特異性抗体、融合抗体、標識抗体、またはそれらのうちの任意の一つの類似体を生産する工程の任意の一つを含む。対応する方法は当業者に周知であり、例えばHarlow and Lane "Antibodies, A Laboratory Manual", CSH Press, Cold Spring Harbor, 1988に記載されている。ファージディスプレイ法によって上記抗体の誘導体が得られる場合、BIAcoreシステムで使用されるような表面プラスモン共鳴を使用して、本
明細書に記載の抗体の任意の一つのエピトープと同じエピトープに結合するファージ抗体の効率を増大させることができる(Schier, Human Antibodies Hybridomas 7 (1996), 97-105; Malmborg, J. Immunol. Methods 183 (1995), 7-13)。キメラ抗体の生産については例えば国際公開第WO89/09622号に記載されている。ヒト化抗体の生産方法は例えば欧州出願出願公開第EP−A1 0 239 400号および国際公開第WO90/07861号に記載されている。本発明に従って利用されるさらなる抗体源は、いわゆる異種抗体である。マウスでのヒト抗体のような、異種抗体生産の一般的原理は、例えば国際公開第WO91/10741号、第WO94/02602号、第WO96/34096号、第WO96/33735号に記載されている。上述したように、本発明の抗体は完全抗体に加えて種々の形式で存在してもよく、それには例えばFv、Fab、F(ab)2、および一本鎖が含まれる。例えば国際公開第WO88/09344を参照されたい。
【0042】
本発明の抗体またはその対応免疫グロブリン鎖は、例えばアミノ酸の削除、挿入、置換、追加および/または組換え、および/または当該技術分野で周知の他の修飾を単独でまたは組み合わせて使用することにより、当該技術分野で周知の従来技術を使用してさらに修飾可能である。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の基礎となっているDNA配列にそのような修飾を導入する方法は、当業者にとっては周知であり、例えばSambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N. Y. およびAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and
Wiley Interscience, N. Y. (1994)を参照されたい。本発明の抗体の修飾には、側鎖修
飾、バックボーン修飾、およびN末端ならびにC末端修飾を含む1つまたは複数の構成アミノ酸の化学的酵素的誘導体化を含み、それにはアセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、および、炭水化物部分もしくは脂質部分、共同因子またはその同等物の取り付けが含まれる。同様に、本発明は、C末端にある免疫刺激リガンド等の異種起源の分子に融合されたアミノ末端にある上記抗体またはその断片を含むキメラタンパク質の生産を包含する。対応する技術的詳細については例えば国際公開第WO00/30680号参照。
【0043】
さらに、本発明は、上述の結合分子を含む小型ペプチドを含む、小型ペプチドも包含し、例えば上述の抗体の任意の一つの可変領域のCDR3領域(重鎖CDR3(HCDR3)は抗原抗体相互作用において高い変化性と関与の優位性を有することがしばしば観察されているため、特には重鎖のCDR3)を含む小型ペプチドがある。そのようなペプチドは、本発明による有用な結合剤を生産する組換え手段によって、容易に合成または生産可能である。そのような方法は当業者には周知である。ペプチドは、例えば市販の自動ペプチド合成装置を使用して合成することができる。ペプチドは、ペプチドを発現するDNAを発現ベクターに組み込んで、ペプチドを生産するよう発現ベクターで細胞を形質転換することによる組換え技術により生産することが可能である。
【0044】
従って、本発明は、上記手段によって取得可能であり、上記特性を示し(すなわちNY−ESO−1を特異的に認識する)、かつ治療用に患者における免疫原性がないように実質的にヒトのフレームワークを好ましくは維持する、任意の結合分子、抗体または結合断片に関する。
【0045】
本発明のさらなる実施形態では、抗体、免疫グロブリン鎖またはその結合断片、もしくは抗原は検出可能に標識される。標識用の作用物質は、本発明の抗体または抗原に直接結合されても間接的に結合されてもよい。間接的結合の1つの例は、スペーサー部分の使用によるものである。さらに、本発明の抗体は、共有結合または非共有結合で連結されるさらなる領域(ドメイン)を含んでもよい。そのような連結は、当該技術分野で周知の、上述の方法による遺伝子融合に基づいてよく、例えば国際公開第WO94/04686号に記載されているような化学的架橋により行うことが可能である。本発明の抗体を含む融合タンパク質中に存在する追加ドメインは、可撓性リンカーにより、有利には該さらなるドメインのC末端と本発明の抗体のN末端との間またはその逆の間の距離に及ぶ十分な長さの複数の親水性ペプチド結合されたアミノ酸を有するポリペプチドリンカーにより、好ましくは連結され得る。種々の手段により、本発明の抗体またはその抗原結合断片に、治療上または診断上活性な作用物質を結合することが可能である。これには、例えば、治療上または診断上活性な作用物質にペプチド結合等の共有結合法で結合された本発明の抗体の可変領域を含む一本鎖の融合タンパク質が含まれる。さらなる例は、以下の非限定的な例のリストにあるものを含む、追加の分子に共有結合でまたは非共有結合で結合された少なくとも抗原結合断片を含む分子を含む。Traunecker, Int. J. Cancer Surp. SuDP 7 (1992), 51-52は、CD3に対するFv領域が可溶性CD4またはOVCAおよびIL−7等
の他のリガンドに結合された二特異性試薬ジャナシン(janusin)について説明している。
同様に、本発明の抗体の可変領域はFv分子へ構築され、引用した文献に例証されたもの等の代替リガンドに結合され得るHiggins, J. Infect Disease 166 (1992), 198-202は、GP 120のV3領域の特異的配列に対する抗体に架橋されたOKT3から構成されたヘテロ共役抗体について説明している。そのようなヘテロ共役抗体は、本発明の方法の抗体に含まれていた少なくとも可変領域を使用して構築することもできる。特異的抗体の追加の例には、Fanger, Cancer Treat. Res. 68 (1993), 181- 194 およびFanger, Crit. Rev. Immunol. 12 (1992), 101-124に記載されたものが含まれる。従来の抗体を含む免疫
毒素である共役体は、当該技術分野において広く記載されている。毒素は従来の結合技術
によって抗体に結合されてもよいし、またはタンパク質毒素部分を含む免疫毒素を融合タンパク質として生産してもよい。本発明の抗体は、そのような免疫毒素を得るための対応する方法で使用することができる。そのような免疫毒素の例に、Byers, Seminars Cell. Biol. 2 (1991), 59-70 and by Fanger, Immunol. Today 12 (1991), 51-54に記載されたものがある。
上述の融合タンパク質は、プロテイナーゼのための開裂リンカーまたは開裂部位をさらに備えてもよい。かかるスペーサー部分は不溶であっても可溶であってもよく(Diener et al., Science 231 (1986), 148)、かつ標的部位で抗原から薬物を放出可能にするように選択することが可能である。免疫療法のために本発明の抗体および抗原に結合させることが可能な治療用作用物質の例には、薬物、放射性同位元素、レクチンおよび毒素がある。本発明の抗体および抗原に共役可能な薬物には、マイトマイシンC、ダウノルビシンおよびビンブラスチン等の、薬物と古典的に呼ばれる化合物が含まれる。例えば腫瘍免疫療法のために、本発明の放射性同位体に結合した抗体または抗原を使用する際には、白血球の分布や安定性および放射に依存して、特定の放射性同位元素が別の放射性同位元素よりも望ましい場合がある。自己免疫反応に基づいて、あるエミッタは他のエミッタよりも好ましい場合がある。一般に、免疫療法では、αおよびβ粒子を放射する放射性同位元素が好まれる。212Biのような射程が短く高エネルギーのαエミッタが好まれる。治療目的で
本発明の抗体または抗原に結合させることが可能な放射性同位元素の例は、125I、131I、90Y、67Cu、212Bi、212At、211Pb、47Sc、109Pdおよび188Reである。
本発明の抗体または抗原に結合可能な他の治療薬と、エキソビボ(生体外)およびインビボ(生体内)治療プロトコルが、周知であるかまたは当業者には容易に確認することができる。適切な場合にはいつでも、当業者は、プロテイナーゼ物質の代わりに、上述の抗体、抗原または対応ベクターのうちの任意の1つをコードする本発明のポリヌクレオチドを使用し得る。
【0046】
従って、本明細書で識別された抗体および結合領域の生物活性は、病気の細胞および組織の適切な表面構造を呈している細胞への薬物の局在化の候補となるよう抗体および結合領域が十分な結合性をそれぞれ有することを示唆している。細胞へのこのターゲティングおよび結合は、治療上または診断上活性な作用物質の送達および遺伝子療法/遺伝子送達に有用であり得る。本発明の抗体を備えた分子/粒子は、NY−ESO−1抗原を発現している細胞/組織に特異的に結合し、したがって、診断および治療の使用を有し得る。したがって、本発明の抗体または抗原は、標識され(例えば、蛍光標識、放射性標識、酵素標識、核磁気標識、重金属標識)、インビトロでの「免疫化学」様アッセイを含めて、特異的標的をインビボまたはインビトロ検出するために使用することが可能である。インビボでは、標識した本発明の抗体または抗原は、組織、細胞、またはNY−ESO−1抗原を発現する他の材料を検出する核医学イメージング技術に似た方法で使用され得る。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、腫瘍のインビボ検出するためのまたは標的である腫瘍への治療および/または診断用作用物質を向けるための組成物の調製のための、本発明の抗体またはその結合断片の使用に関する。
【0047】
さらに、本発明は、本発明の前記抗体または結合断片、または抗原、またはその化学誘導体、または本発明のポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を含有する組成物に関する。本発明の組成物はさらに、医薬として許容されるキャリアを含んでもよい。用語「化学誘導体」は、通常は基本分子の一部でない追加の化学的部分を含む分子のことを指す。そのような部分は基本分子の溶解度、半減期、吸着性等を改善し得る。代わりに、そのような部分は、基本分子の不適当な副作用を低減したり、または基本分子の毒性を減少させたりし得る。さらに、本発明の医薬組成物は、その医薬組成物の意図した使用に依存して、インターロイキンまたはインターフェロン等の抗腫瘍因子をさらに含んでもよい。従って、特定の好ましい実施形態では、本発明は、腫瘍の進行を治療または予防するための、腫瘍に関連する徴候を改善するための、腫瘍が存在するかどうかについて被験者をスクリーニ
ングするための、または被験者が腫瘍を発症する危険性を決定するための、医薬組成物または診断用組成物を製造するための、本発明の抗体または結合断片の、または本発明の抗体または結合断片の任意の一つと実質的に同じ結合特異性を有する結合分子の、本発明の抗原、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、または本発明の細胞の使用方法に関する。上記医薬組成物は、静脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、鼻腔内に、非経口的に、またはエアゾールとして投与されるように設計可能である。以下も参照のこと。
【0048】
従って、1実施形態では、本発明は、被験者の腫瘍の進行を治療または予防するための、腫瘍に関連する徴候を改善するための;腫瘍が存在するかどうかについて被験者を分析またはスクリーニングするための、または被験者が腫瘍を発症する危険性を決定するための方法であって、前記被験者に、有効量の本発明の前記抗体、抗原、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞の任意の一つを投与する工程からなる方法を含む。特に、本発明による治療および診断の用途には黒色腫と乳がんが含まれ腫瘍を標的とする用途に最も適したのは、原発性乳がんおよび/または転移を含む。別段の定めがない限り、用語「腫瘍」、「がん」、「癌」およびその同等物は本明細書では互換的に使用される。
【0049】
従って、本発明は、特に腫瘍に関連する障害を診断および/または治療するための、上述のヒト抗体の少なくともCDRを含有する腫瘍抗原結合分子の任意の使用を包含する。好ましくは、該結合分子は本発明の抗体またはその免疫グロブリン鎖である。さらに、本発明は、上述の抗体のうちの任意の一つの抗イデオタイプ抗体に関する。これらは、抗原結合部位付近の抗体の可変領域に位置する固有の抗原性ペプチド配列に結合する抗体または他の結合分子である。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、本発明の上述の抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞と、免疫または核酸に基づく診断法で従来から使用されている試薬等の任意選択の検出に適した手段とも含有する診断組成物に関する。本発明の抗体は、例えば、それらが液相で使用されるかまたは固相キャリアに結合された免疫測定法で使用するのに適している。本発明の抗体を利用可能な免疫測定法の例は、直接形式でも関節形式でもよい競争免疫測定法または非競争免疫測定法である。そのような免疫測定法の例には、ラジオイムノアッセイ(RIA)、サンドイッチ(免疫計量分析)、フローサイトメトリーおよびウエスタンブロットがある。本発明の抗原および抗体は種々のキャリアに結合させることが可能であり、それに特異的に結合する細胞を分離するために使用可能である。周知のキャリアの例には、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトが含まれる。キャリアの性質は発明の目的に応じて可溶であってもよいし不溶であってもよい。当業者に周知の多くの異なる標識および標識化方法がある。本発明に使用可能な標識の種類の例には、酵素、放射性同位元素、コロイド金属、蛍光化合物、化学発光化合物および生物発光化合物が含まれる。上記実施形態も参照のこと。
【0051】
さらなる実施形態によれば、本発明の結合抗体は、血液サンプル、リンパ液サンプルまたは他の体液サンプルであってもよい体液サンプルを試験される個体から取得し、かかる体液サンプルを、抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件下で本発明の抗体と接触させることによる、個体における腫瘍の診断方法に使用されてもよい。その後、そのような複合体のレベルは、当該技術分野で周知の方法により決定され、対照サンプルで形成されたのより有意に高いレベルは、試験された個体に腫瘍があることを示す。同様に、本発明の抗体により結合された特異性抗原を使用してもよい。したがって、本発明は、本発明の抗体または抗原を含むインビトロ免疫測定法に関する。本発明の好ましい実施形態は、がん、黒色腫、および特に乳がんの決定に関する。方法はNY−ESO−1の分析を含む。
【0052】
1実施形態では、本発明は、がん症状の状態(例えば腫瘍(関連)抗原NY−ESO−1を発現する腫瘍を有する患者におけるがん症状の攻撃の後退、進行)を決定する方法に関する。該方法は、前記抗原に特異的に結合する抗体について前記患者から得たサンプルを分析する工程と、前記患者から得られた先のサンプルの以下の分析から得多先の値と得られた値とを比較する工程とからなり、それらの値の差は、がん症状の状態の変化を示す。本発明に従って使用することが可能な対応の方法が国際公開第WO01/07917号に開示されている。代わりに、そのような方法は本発明の抗体を用いて行なってもよい。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、本発明の抗体を用いてNY−ESO−1タンパク質が存在するかどうかを分析することによりNY−ESO−1発現を分析する工程からなる、がん細胞(例えば乳がん細胞)の決定方法であって、NY−ESO−1の発現は前記サンプル中にがん細胞の存在を示す方法に関する。本発明に従って適応可能な同様の方法が、SCP−1、NY−ESO−1およびSSX−2に対して米国特許第6,338,947号に記載されている。
【0054】
これに関し、本発明は、上記目的のために特異的に設計された手段に関する。例えば、腫瘍(特には転移)を患っている患者に存在し得る自己抗体を検出するために本発明の抗原が装填されているか、または本発明の抗体もしくは等価な抗原結合分子が装填された、タンパク質または抗体に基づくアレイが使用され得る。マイクロアレイ免疫測定法の設計はKusnezow et al., MoI. Cell Proteomics 5 (2006), 1681-1696に要約されている。従
って、本発明は、本発明の抗体または抗原が装填されたマイクロアレイにも関する。
【0055】
本発明は、1つまたは複数の上述の成分、すなわち抗体、本発明の抗体もしくはその結合断片、抗原、ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞が装填された1つまたは複数のコンテナを備えた医薬用および診断用のパックまたはキットを提供する。そのようなコンテナには、医薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関による人への投与のための製造、使用または販売の許可を反映した政府機関により規定された形式の通知が伴っていてもよい。追加的または代替的に、キットは適切な診断分析における試薬および/使用説明書を含む。組成物、すなわち本発明のキットは、腫瘍関連抗原NY−ESOの存在が伴う病気の診断、予防および治療に特に適しており、上述の腫瘍の治療に特に適用可能である。
【0056】
用語「治療」およびその同等物は、本明細書では、一般に、所望の薬学的および/または生理学的結果を得ることを意味する。効力は、病気またはその徴候を完全にまたは部分的に予防するという意味では予防的であってよく、その病気に起因する病気または悪影響を部分的にまたは完全に治癒するという意味では治療的であってよい。用語「治療」は、本明細書に使用する場合、哺乳動物(特にヒト)における疾病のいかなる治療も包含し、(a)病気に罹患しやすいがまだ罹患しているとは診断されていない被験者において病気が起こるのを予防すること、(b)病気を阻害すること(すなわちその発達を妨げること)および(c)疾病を軽減すること(すなわち病気を抗体させること)を含む。さらに、用語「被験者」または「患者」は、状態、障害、または病気を治療する必要がある哺乳動物、好ましくは人を指す。
【0057】
本発明の医薬組成物は、当業者に周知の方法によって調剤することが可能である。例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy (2000) by the University of Sciences in Philadelphia, ISBN 0-683-306472を参照されたい。適切な医薬キャリアの例
が当該技術分野でよく知られており、それにはリン酸塩緩衝塩類溶液、水、水中油滴型エマルジョン等のエマルジョン、種々の種類の湿潤剤、滅菌溶液等が含まれる。そのようなキャリアを含む組成物は周知の従来法により調剤可能である。これらの医薬組成物は適切な用量で被験者に投与することができる。適切な組成物の投与は、種々の方法によって(
例えば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、または皮内投与により)達成され得る。鼻用噴霧製剤等のエアゾール製剤は、防腐剤および等張剤と共に活性薬剤を含む精製された水溶性溶液または他の溶液を含んでいる。そのような製剤は、鼻粘膜に適合するpHおよび等張状態に好ましくは調節される。直腸または膣への投与のための製剤は、適切なキャリアを含む坐薬として与えられ得る。
【0058】
投与計画は医師および臨床上の要因により決定されるだろう。医学の分野では周知であるように、任意の1人の患者に対する用量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、時間、投与経路、全体的な健康、および同時に投与される他の薬物を含む多くの要因によって決まる。一般的な用量は、例えば0.001〜1000μg(すなわちこの範囲の発現用または発現阻害用の核酸の用量)であるが、上記要因を考慮すれば、この例証的範囲よりも低いまたは高い用量も想定される。一般に、医薬組成物の規則的投与としての投薬計画(レジメン)は、1日当たり10μgから10mgの単位の範囲である。投薬計画が連続輸液である場合、それは毎分体重1キログラム当たり1μgから10mgのユニットの範囲であるべきである。進行は定期的評価によりモニタすることができる。非経口投与の調製物には、滅菌の水溶性または非水溶性溶液、懸濁液およびエマルジョンを含んでいる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、およびオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステル溶剤である。水性のキャリアには、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは塩類溶液および緩衝培地を含む懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または固定油が含んでいる。静脈内ビヒクルには、流体と栄養素の補給液、電解質補給液(リンゲルデキストロースに基づくもの)およびその同等物が含まれる。例えば抗菌剤、老化防止剤、キレート剤、および不活性ガスならびにその同等物のような防腐剤および他の添加物が存在してもよい。さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図した使用に依存して、抗腫瘍因子および細胞毒性薬のようなさらなる作用物質を含んでもよい。さらに、例えば、本発明の医薬品が受動免疫法のための本発明の抗体または能動免疫法のための同族抗原を含む場合、医薬組成物はワクチンとして調剤されてもよい。NY−ESO−1等の腫瘍関連抗原を使用してがんを治療するためのワクチン調剤については例えば国際公開第WO2005/105139号に記載されている。さらに、他の作用薬剤の同時投与または連続投与が望ましい場合もあり得る。
【0059】
治療上有効な用量または量とは、徴候または状態を改善するのに十分な活性成分の量を指す。そのような化合物の治療の効能および毒性は、細胞培養物または実験動物における標準的医薬手順、例えばED50(集団の50%において治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%が致死に至る用量)により決定することができる。治療効果と毒性効果との間の用量の比は治療指数であり、比LD50/ED50として表される。好ましくは、組成物中の治療薬は、細胞の転移および腫瘍性成長を予防するのに十分な量である。
【0060】
本発明による医薬組成物は、好ましくは黒色腫、原発性乳がん、肝細胞癌および転移を含むがこれらに限定されない腫瘍およびがんの治療のために使用することができる。
上記のおよび他の実施形態が、本発明の説明および実施例により開示され包含される。本発明に従って使用される材料、方法、使用方法、方法の任意の一つに関するさらなる文献が、例えば電子装置を使用して公共の図書館およびデータベースから検索され得る。例えば、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)および/または米国国立衛生研究所(NIH)内の国立医学図書館によりホストされている公共データベース「Medline」が利用され得る。欧州分子生物学研究所(EMBL)の一部である欧州バイオイン
フォマティックス研究所(EBI)等のさらなるデータベースおよびウェブアドレスも当業者には周知であり、インターネットのサーチエンジンを使用して取得することも可能である。バイオテクノロジーにおける特許情報と遡及調査および現在の認識に有用な特許情
報の関連情報源に関する調査とについての概説がBerks, TIBTECH 12 (1994), 352-364に
与えられる。
【0061】
上記の開示は本発明について包括的に説明している。別段の定めがない限り、本明細書に使用する用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, Oxford University Press, 1997, revised 2000 and reprinted 2003, ISBN 0 19 850673 2
にて規定される定義が与えられる。いくつかの文書を本明細書のテキストの全体にわたって引用している。参考文献の書誌の引用が特許請求の範囲の直前の明細書の最後に見出される。すべての引用文献(本願の全体にわたって引用した学術論文、発行特許、公開された特許出願、および製造業者の仕様書、説明書等)の内容は明示的に援用するが、引用された任意の文書が本発明に関して先行技術であることを認めているわけではない。
【0062】
以下の特定の実施例を参照することにより、より完全な理解を得ることができるが、かかる実施例は、例示の目的でのみ本明細書において提供しているのであって、本発明の範囲を制限することは意図しない。
【0063】
実施例
以下の実施例は本発明を例証するものであるが、本発明の範囲をいかようにも制限するよう解釈されるべきではない。本明細書にて使用しているような従来の方法についての詳細な説明は引用文献に見つけることが可能である。例えば"The Merck Manual of Diagnosis and Therapy" Seventeenth Ed. ed by Beers and Berkow (Merck & Co., Inc. 2003)
も参照されたい。
【0064】
本発明の実行には、別段の定めがない限り、当該技術分野の技術の範囲内にある細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来技術を使用する。本発明の実施に有用な一般的技術のさらなる詳細ついては、実施者が、細胞生物学および組織培養の標準テキストおよび概説を参照することが可能である。実施例で引用した文献についても参照されたい。分子および細胞生化学の一般的方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed. (Sambrook et al., Harbor Laboratory Press 2001)、 Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed. (Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons 1999)、 DNA Cloning, Volumes I and II (Glover ed., 1985)、 Oligonucleotide Synthesis (Gait ed., 1984)、 Nucleic Acid Hybridization (Hames and Higgins eds. 1984)、 Transcription And Translation (Hames and Higgins eds. 1984)、 Culture Of Animal Cells (Freshney and Alan, Liss, Inc., 1987)、 Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Miller and Calos, eds.)、 Current Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology, 3rd Edition (Ausubel et al., eds.)、 and Recombinant DNA Methodology (Wu, ed., Academic
Press). Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (Miller and Calos, eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory)、 Methods In Enzymology, VoIs. 154 and 155 (Wu et al., eds.)、 Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986)、 Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984)、 the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N. Y.)、 Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987)、 Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (Weir and Blackwell, eds., 1986). Protein Methods (Bollag et al., John Wiley & Sons 1996)、 Non-viral Vectors for Gene Therapy (Wagner et al. eds., Academic Press 1999)、 Viral Vectors (Kaplitt & Loewy eds., Academic Press 1995)、 Immunology Methods Manual (Lefkovits ed., Academic Press 1997)、 and Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology (Doyle
& Griffiths, John Wiley & Sons 1998)のような標準テキストで見つけることが可能で
ある。本開示で参照する遺伝子操作のための試薬、クローニングベクター、およびキット
はBioRad社、 Stratagene社、 Invitrogen社、 Sigma-Aldrich社、およびClonTech社等の販売元から入手できる。細胞培養および培地収集の一般的技術はLarge Scale Mammalian Cell Culture (Hu et al., Curr. Opin. Biotechnol. 8 (1997), 148); Serum-free Media (Kitano, Biotechnology 17 (1991), 73); Large Scale Mammalian Cell Culture (Curr. Opin. Biotechnol. 2 (1991), 375); and Suspension Culture of Mammalian Cells (Birch et al., Bioprocess Technol. 19 (1990), 251); Extracting information from cDNA arrays, Herzel et al., CHAOS 11 (2001), 98-107に概説されている。
補足方法
【0065】
患者の材料
腫瘍材料を、通常の組織病理学的分析が必要でない正常組織と同様に、液体窒素中で凍結させた。メモリB細胞単離のために血清を、地域の倫理委員会により承認され患者により署名されたインフォームドコンセントに従って患者C1から収集した。
【0066】
メモリB細胞培養物
メモリB細胞を2段階の選択手順によりヒト末梢血リンパ球(PBL)から分離した。MAC技術(Miltenyi社,ドイツ国ベルギッシュグラートバハ所在)を使用したB細胞陽
性選択のためにパンB細胞マーカーCD22を使用した。PBLを、MACS共役抗ヒトCD22モノクローナル抗体、フィコエリスリン共役モノクローナル抗体 抗ヒトIgDおよびAPC共役抗体 抗ヒトIgM、IgA、CD3、CD8、CD56(B ecton Dickinson社、スイス国バーゼル所在)を使用して標識した。パンB細胞を、midiMA
CS装置およびLSカラム(Miltenyi社)を使用して陽性選択CD22陽性細胞により単離し、続いてMoFlo細胞分別装置(DakoCytomation社、アメリカ合衆国フォートコリンズ所在)を使用してフィコエリスリン陰性およびAPC陰性細胞を選択した。次に、CD22陽性のIgM、IgD、およびIgA陰性B細胞を、10%ウシ胎児血清を補給したRPMI 1640を含むB細胞培地中でCpG 2006(6,15)の存在下でB95−8細胞から得られた上澄みを含むEBVでインキュベートした。細胞を、ボランティアのドナーから調製した30.000照射フィーダPBL上のB細胞培地に1つのウェル当たり50個の細胞を播いた。
【0067】
2週間の培養後、メモリB細胞培養物の馴化培地を、ELISAによりNY−ESO−1陽性の自己および非自己組織切片に対してNY−ESO−1特異的抗体が存在するかどうかについてスクリーニングした。
【0068】
ELISA
96ウェル片のウェルマイクロプレート(Corning社、アメリカ合衆国ニューヨーク所
在)を25μl/ウェルの1μg/mlの組換えNY−ESO−1タンパク質のPBS溶液で4℃にて一晩コーティングした。プレートをPBS−Tで洗浄し、5%の粉乳(Rapilai社、スイス国ミグロス所在)を含有するPBSで4℃にて一晩ブロックした。B細胞
馴化培地と、患者血清と、組換え抗体調製物を、室温で2時間インキュベートした。NY−ESO−1に対するヒト抗体の結合を、ロバ抗ヒトIgGHRP二次抗体(Jackson ImmunoResearch Europe ltd.社、英国ケンブリッジシア所在)を用いて、その後、TMB基質溶液(TMB、Sigma社、スイス国ブックス所在)を使用してHRP活性を測定するこ
とにより、決定した。
【0069】
エピトープマッピングELISA
10個のアミノ酸の重複が各隣接ペプチドによって共有されたNY−ESO−1タンパク質全体にわたる20merペプチド(Peptides&Elephants社、ドイツ国ナセータル(Nuthetal)所在)を用いて、Maxisorp ELISAプレート(Nunc社、ニューヨーク州ロチ
ェスター所在)をコーティングした。ヒト組換え抗体マンハッタンまたは患者血清(PB
Sで1:500に希釈)を西洋ワサビペルオキシダーゼ共役ヤギ抗ヒトIgG+IgM(Jackson ImmunoResearch)を使用して検出した。
【0070】
競争ELISA
飽和実験によると、NY−ESO−111−30ペプチドに対するヒトモノクローナル抗体マンハッタンの半値(最大の半分の)結合濃度が1×10-9Mまたは0.15μg/mlであると認められた。競争実験では、NY−ESO−111−30ペプチドの増大する濃度を0.15μg/mlの濃度のマンハッタンと混合し、次にNY−ESO−111−30でコーティングしたELISAプレートに移した。
【0071】
免疫組織化学
パラフィン埋設したNY−ESO−1陽性腫瘍組織および健康な対照組織から、直径0.6mmの腫瘍組織の円柱物を打ち抜いた。腫瘍組織の円柱物から構成されたペアと、健康な対照組織の円柱物から構成されたペアとを、2×4グリッドの各位置に配置した。グリッドの寸法はB細胞培養皿および従来のマルチチャンネルピペットのマイクロタイター形式に適合した。ホルマリン固定したパラフィン埋設組織に対し、免疫組織化学を行なった。
【0072】
すべてのスライドに、熱に基づく抗原回復を適用した。非特異性蛍光は、ポリクローナルウサギ抗ヒトIgG(Dako社、スイス国バール所在)を室温で30分間使用し、その後、1%低脂肪乳(Rapilait社、スイス国ミグロス所在)で10分間2次ブロックすることによりブロックした。一次抗体またはB細胞馴化培地を、4℃で一晩インキュベートした。NY−ESO−1に対するヒト抗体の結合は、ヒトIgGに対するCy3共役二次抗体(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.社、英国ソハム所在)を使用して明らかとなった。ビオチン化組換えヒト抗体マンハッタンの染色は、Cy3共役ストレプトアビジンまたはHRP共役ストレプトアビジン(Sigma社、スイス国ブックス所在)を使用して明らか
になった。NY−ESO−1抗原の存在に対する陽性対照として、マウス抗−NY−ESO−1モノクローナル抗体(Zymed社、アメリカ合衆国サウスサンフランシスコ所在)を
使用した。
【0073】
免疫蛍光検査法の分析は、倒立型蛍光顕微鏡(ライカ、Heerbrugg、Switzerland)上で行った。
【0074】
単一細胞RT−PCR
メモリB細胞培養物から得られた単一細胞を、PCRチューブに入れた。cDNAを免疫グロブリンGの重鎖、κ軽鎖、およびγ軽鎖の定常領域に特異的なプライマーを使用して調製した。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域のPCR増幅は標準プロトコル(7,16)に従って行なった。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域をsemi−nested PCR法を使用して増幅した。PCRの初回は、IgG定常領域に特異的なプライマーと、重鎖および軽鎖Igの可変領域ファミリー(7)の保存されたフレームワーク1領域に特異的なプライマーのプールとを用いて行なった。続いて、IgG定常領域に特異的なプライマーと、制限部位を有する重鎖および軽鎖Igの可変領域ファミリーのフレームワーク1に特異的なプライマーとを使用して、semi−nestedを記載されたように(8)行った。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖のPCR線物を、IgG1、IgκまたはIgλの定常領域を含むベクターに入れてクローニングした。
【0075】
抗体の産生と精製
293−T ヒト胚性腎臓細胞を10% Ultra−low IgG FCS、1%
ペニシリンストレプトマイシン、および1% L−グルタミン(Invitrogen社、スイス国バーゼル所在)を補給したDMEMにて培養した。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖を
コードするプラスミドDNAによる同時トランスフェクションを、標準のリン酸カルシウム沈澱法により行なった。その後、細胞を、1% Nutridoma SP(Roche社、スイス国ロ
ートクロイツ所在)を補給した無血清D−MEMがで培養した。上澄みは8日間の培養後に収集し、IgGは高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)(Amersham Biosciences社、スウェーデンウプサラ所在)を使用してタンパク質Gカラムで精製した。精製されたマンハッタン抗体を製造業者の説明書(SIGMA社、スイス国ブックス所在)に従
ってビオチン化した。
【0076】
免疫蛍光SK−MEL−37腫瘍細胞
SK−MEL−37細胞を、ホルムアルデヒドで固定し、1% Triton X−100で透過させ、室温で10分間顕微鏡スライド上で発達させた。10% ヤギ血清で室温で1時間ブロッキングした後、細胞を1μg/mlのマンハッタンまたは陰性対照抗体(ヒトFc領域と組換えて発現させたhu8−18c5(17))と、PBS/1%ヤギ血清/0.2% Triton X−100で4℃にて一晩インキュベートした。結合した抗体を、ヤギ抗ヒトIgG Alexa Fluor(登録商標)546(1:300、Molecular Probes社、オランダ国ライデン所在)で室温で1時間染色することにより視覚化した。Leica SP 5顕微鏡を使用して、顕微鏡検査を行った。
【0077】
実施例1:黒色腫患者のPBLからのNY−ESO−1特異的B細胞の同定
黒色腫患者Aを、ELISAにおけるtaa NY−ESO−1に対する血清力価について、生体組織検査で得られた自己リンパ節切片に対して選択した。完全長NY−ESO−1を発現している組換えワクシニアウイルスによる予防接種後に、肝臓における2つのNY−ESO−1陽性転移の対抗により実証された部分的臨床反応が観察された。50mlの末梢血を患者から収集し、Ig切り替えメモリB細胞を表わす表面IgM/IgD二重陰性B細胞を分離し、改変したエプスタイン−バーウイルス形質転換プロトコル(6)を使用して不死化後に培養した。100,000個のメモリB細胞が得られ、これを1ウェル当たり50個の細胞となるように96ウェルマイクロタイター鋳型に播いた。3週間の培養後、増殖中のクローンが培養ウェルで観察され、B細胞培養物により馴化された培地を、NY−ESO−1特異的抗体が存在するかどうかについて分析した。最初のスクリーニングとして、抗原として組換え全長NY−ESO−1を使用したELISAを行なった。ELISAシグナルがバックグラウンドシグナルを3倍だけ超えていたら、ELISAシグナルを陽性と評価した。これにより、合計2000個のウェルから9個のELISA陽性メモリB細胞培養物のウェルを同定した。ELISAで得られた信号雑音比の例を図1に描いている。続いて、ELISA陽性培養物を、NY−ESO−1陽性腫瘍組織を使用して、免疫組織化学で分析した。組織スクリーニングの設定は、ガラススライド上へ取り付けられる対照として、NY−ESO−1陽性乳腺腫瘍および健康な乳腺組織の8対の組織ロッドから成った。この分析が小型化されているため、分析を行うには15μlのB細胞馴化培地で十分だった。いくつかのメモリB細胞培養物の馴化培地と、陰性対照のそれとの比較を一つのスライド上で行えるため、蛍光染色の評価が容易であった。
【0078】
この組織分析における9つのELISA陽性B細胞培養物の評価により、他の8つの培養物と比較して高い染色強度を生じる1つの培養物が識別された。これを図1Bに示すが、組織反応性培養物12D7で得られた免疫蛍光を組織反応的でないと評価されたウェル9D1で得られた免疫蛍光と比較している。
【0079】
NY−ESO−1特異的抗体に対するIgGサブクラスの情報が分子クローニング工程で失われたので、これを今回の工程で、サブクラス特異的二次抗体である抗ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4と組み合わせたNY−ESO−1陽性組織切片による免疫組織化学を使用して決定した。図1Cに示されるように、NY−ESO−1に対する組織染色は、二次抗体 抗IgG1についてのみ観察される。
【0080】
実施例2:培養されたメモリB細胞により分泌されたNY−ESO−1特異的抗体の分子クローニング
識別された抗原特異的EBV形質転換ヒトメモリB細胞の細胞クローニングにおける以前の試みは成功しなかった。したがって、本発明に従って、上記染色パターンの原因である抗体クローンを単離するために、ウェル12D7から採取した単一選別細胞のRT−PCRに基づく分子クローニング戦略に乗り出した。32個の細胞を採取し、単一の細胞としてPCRチューブに直接入れた。
【0081】
cDNAの合成後に、ヒト免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域をnested PCRアプローチ(7)を使用して増幅した。32個の選別細胞のうち16個について重鎖およびκ軽鎖配列が得られた。λ軽鎖の可変配列のPCRは、いずれの細胞に関する産物も与えなかった。配列分析により、番号がそれらの相対的存在量に従って番号付けた4つの別個の抗体クローンを識別した。クローン1は、16個ののうちの8個の細胞で見つかり、クローン2は4個の細胞で見つかり、クローン3および4は2個の細胞でそれぞれ見つかった。
【0082】
その後、組換え抗体として発現された場合にこれらの4つのクローンのうちの1つがB細胞培養ウェル12D7からの馴化培地で観察されたのと同様なNY−ESO−1染色を生じさせるかどうかについて決定した。このため、重鎖および軽鎖可変配列を、ヒトIgG1重鎖およびヒトκ軽鎖(8)の定常領域を提供する抗体発現ベクターに入れてクローニングした。IgG1の定常領域を使用したのは、ウェル12D7の馴化培地で識別されたNY−ESO−1特異的抗体がこのサブクラスに属する(図1C)ことがわかったからである。
【0083】
4つのクローンの機能分析を、ELISAで組換え抗体について、NY−ESO−1陽性組織切片に対して再度スクリーニングすることにより行なった。このため、4つのクローンの重鎖および対応する軽鎖の発現ベクターを、293 HEK細胞にトランスフェクトし、トランスフェクトした細胞の上澄み液をELISAと免疫組織化学で直接試験した。4つの上澄み液はすべて抗ヒトIgG−ELISAで試験すると機能IgG1を生産した。クローン1−3はELISAではNY−ESO−1への結合を示さなかったが、クローン4は試験した最後の希釈(1/100)まで陽性だった(図2A)。このクローンは、NY−ESO−1陽性組織切片(図2B)を使用した免疫組織化学でも特異的染色を示した。
【0084】
上記実験は、患者で生じた元のNY−ESO−1特異的抗体の免疫グロブリン可変領域の配列が、回復されたことの確認として行われた。簡単にするために、クローン12D7
4は「マンハッタン」と命名し、一過性トランスフェクトHEK細胞から得られたGタンパク質精製材料を使用してさらに特徴付けを行うために使用した。
【0085】
実施例3:NY−ESO−1特異的ヒトモノクローナル抗体マンハッタンは、 NY−ESO−111-30ペプチドに10-10のKDで結合する。
NY−ESO−1でマンハッタンにより認識されるエピトープを同定するために、完全NY−ESO−1タンパク質に及ぶ重複ペプチドを使用してELISAを行なった。図3Aに示されるように、マンハッタンは、NY−ESO−1タンパク質由来の11〜30のアミノ酸を表すペプチドには結合したが、1−20アミノ酸または21−40アミノ酸にまたがる2つの隣接ペプチドには結合しなかった。これは、マンハッタンにより認識されるエピトープがNY−ESO−1のアミノ酸20の周囲のこれらの2つのペプチドの交点に存在することを示唆する。このエピトープは、とりわけ、患者C1の血清に含まれる抗体によっても認識された(図3B)。
【0086】
マンハッタンのアビディティはプレートに結合したペプチドに競争する増大する濃度の可溶性NY−ESO−111-30ペプチドを使用する競争ELISAにより決定した。図3
Cに描かれるように、その同族ペプチドとのマンハッタンの相互作用の抗原結合平衡解離定数(KD)は、より低いナノモルの範囲に存在した。
【0087】
ヒトモノクローナル抗体マンハッタンの特徴付けに使用される最後の分析法として、NY−ESO−1陽性細胞株SK−MEL−37に対する免疫蛍光分析を行なった(9)。マンハッタンによるこの細胞株をの染色により、核マーカーヘキストで得られた染色と同時局在かする核シグナルが生じた。
結論
上記の実験により、ヒト被験者の末梢血リンパ球(PBL)から抗体を同定および分子クローニングするための一般的な方法が提供されている。本発明の方法は、黒色腫患者から腫瘍関連抗原NY−ESO−1に対するヒトモノクローナル抗体を分離することにより、証明可能である。短期間の不死化ヒトメモリB細胞の培養物により分泌された抗体のスクリーニングから開始して、ELISAにおいて陽性かつNY−ESO−1陽性組織に対する免疫組織化学において陽性だった培養物を同定した。一次スクリーニングの後に、一次スクリーニングで検出された抗体を分泌したB細胞の単一クローンを同定および分離することを目的とする分子クローニング工程を行った。単一細胞RT−PCR後の配列分析により明らかになった、ウェル12D7にたった4つの異なるクローンしか存在しないということは、播かれた50個の細胞のうち、ほんの少数のみが不死化して生存したことを示唆している。
【0088】
続く組換え候補抗体の二次スクリーニングにより、患者PBLに由来する培養メモリB細胞により生産された元の抗体と同一の染色パターンを有する一つのモノクローナル抗体が識別された。したがって、患者で本来生じたのと同じ抗体がうまく回復できた。この新たに作成された抗体「マンハッタン」は、NY−ESO−1とtaa LAGE1−1(
9)との間で共有されるアミノ酸位置20の周囲のN末端基エピトープを認識する。このエピトープは患者C1の血清によっても認識され、これは患者で生じた抗体の真のコピーとしてのマンハッタンの概念を支持している。
【0089】
現在まで、マンハッタンは、NY−ESO−1に対する初めてのヒトモノクローナル抗体であると共に、腫瘍抗原およびtaaに対する初めての患者に由来する親和性成熟抗体でもある。本発明のこの新規な方法は、遺伝子の不安定性およびクローニング効率の低さ(6,10)等のB細胞のEBV形質転換に固有の課題のいくつかを回避している。EB
V不死化メモリB細胞からのヒトモノクローナル抗体の単離は先の研究(6)でも成功裡に行なわれたが、EBV形質転換および細胞クローニング技術を使用して同じ患者由来のNY−ESO−1特異的抗体の単離において本発明の上記方法より前に行われた先の試みは、細胞スクリーニングで相当な数のメモリB細胞培養物が識別されたにもかかわらず、失敗に終わったと述べることは注目に値するだろう。
【0090】
本発明の第2の目的は、組織反応性を有する腫瘍関連抗原NY−ESO−1に対する抗体の単離であった。これは、患者の血清が生体組織検査で得られたNY−ESO−1陽性の自己組織と反応する抗体を含むという観察により動機付けられた。このため、メモリB細胞培養物のスクリーニングのためにマイクロアレイ技術を適応した。これは、免疫組織化学の古典的方法と比較していくつかの利点を有していた。第1には、いくつかのサンプルの分析および比較を可能にするのにいくつかの複製位置を有する一つのスライドが利用できることである。第2に、陰性組織の隣りに陽性組織を配置できるため、分析感度が増大することであり、これはメモリB細胞培養物の馴化培地によるインキュベーションではしばしば非常に弱い染色しか生じないため重要な特徴である。第3に、分析形式が小型化
しているため、はるかに少量の馴化培地しか必要でないことであり、これもメモリB細胞培養物の培養量が200μl未満であるため重要な要因である。
【0091】
患者の血清と、ヒトモノクローナル抗体マンハッタンとが固定した組織切片を認識したという知見は、NY−ESO−1陽性細胞を取り除くように細胞レベルで作用する抗体誘発性の免疫エフェクタ機構の誘導を介した直接的な治療の役割に少なくとも関するインビボの状況とは無関係であり得る。NY−ESO−1は、細胞内抗原として記載されており(11)、該研究では核に、少なくとも細胞株SK−Me−37に局在化することが示された。これに関し、ビオチン化マンハッタンを使用した生きたSK−Me−37の表面染色であった。
【0092】
マンハッタンの分離は、患者に由来する腫瘍特異的抗体の治療の重要性の評価に対する主要な工程を構成する。かかる抗体が治療効果を媒介するシナリオはいくつか考えられる。第1に、かかる抗体は将来のワクチンプロトコル用のアジュバントとしての役割を果たし得る。NY−ESO−1とのマンハッタンの同時投与によって形成された免疫複合体により、細胞性免疫反応の増加が誘発され得る(12)。
【0093】
第2の可能性は、腫瘍患者におけるこの抗体のクラスの病態生理学的役割に取り組むことである。NY−ESO−1は、患者の予後不良と関連する体液性応答をしばしば引き起こす(13)。これは腫瘍が成長するにつれて抗原の存在量が増大するための単なる相関性であり得るが、このB細胞反応の免疫寛容誘発性の役割も仮定され得る。このシナリオによれば、壊死したまたはアポトーシスの腫瘍細胞により放出された遊離抗原が強いB細胞反応を引き起こし、その後、免疫複合体のFc受容体を媒介とした取り込みの結果、B細胞は抗原を提示するだろう(14)。B細胞は弱いAPCであり得るため、この提示によってNY−ESO−1反応性T細胞の寛容が誘発され、よって腫瘍の拒絶が防止される可能性がある。主要進行の初期段階では、組換えマンハッタンF(ab)sの投与によりB細胞による抗原の取り込みが妨害され得るが、これはF(ab)がFc受容体によっては結合されないが、未だ抗原を捕捉するためである。これにより、NY−ESO−1特異的T細胞での寛容の誘発が防止され得る。
【0094】
参照文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍関連抗原NY−ESO−1を認識可能なヒト抗体またはその結合断片。
【請求項2】
配列番号11に記載のアミノ酸配列により定義されるエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体または結合断片。
【請求項3】
一本鎖Fv断片(scFv)、F(ab’)断片、F(ab)断片、およびF(ab’)2から成るグループから選択される、請求項1または2に記載の抗体または結合断片。
【請求項4】
自身の可変領域中に、図4に示されたVH(配列番号2)およびVL(配列番号4)のアミノ酸配列を有する可変領域のVHおよびVLのうちの少なくとも一方の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体または結合断片。
【請求項5】
図4に示されたVH領域およびVL領域のうちの少なくとも一方のアミノ酸配列を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体または結合断片。
【請求項6】
少なくとも約10-9Mの結合親和性を有する、請求項1〜5のいずれか一項の結合断片。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体により認識される全長が50アミノ酸以下の抗原。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体または結合断片の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードするポリヌクレオチド。
【請求項9】
任意選択で請求項8に記載のポリヌクレオチドと組み合わせて前記抗体の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードする、請求項8に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項10】
請求項8に記載のポリヌクレオチドまたは請求項9のベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
抗体またはその結合断片、もしくはその免疫グロブリン鎖を調製する方法であって、
(a)請求項10に記載の細胞を培養する工程、および
(b)培養物から前記抗体またはその結合断片、もしくはその免疫グロブリン鎖を分離する工程
からなる方法。
【請求項12】
請求項8に記載のポリヌクレオチドによりコードされ、かつ請求項11に記載の方法により取得可能な抗体、その免疫グロブリン鎖、またはその結合断片。
【請求項13】
検出可能に標識された請求項1〜6、および12のいずれか一項に記載の抗体または結合断片。
【請求項14】
前記検出可能な標識は、酵素、放射性同位元素、フルオロフォアおよび重金属から成るグループから選択される請求項13に記載の抗体または結合断片。
【請求項15】
薬物に取り付けられた請求項1〜6、および12〜14のいずれか一項に記載の抗体または結合断片。
【請求項16】
抗体、請求項1〜6および12〜15のいずれか一項に記載の抗体または結合断片、請求
項7に記載の抗原、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、または請求項10に記載の細胞を含有する組成物。
【請求項17】
医薬組成物であって、かつ医薬として許容されるキャリアをさらに含有する請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
腫瘍を治療するのに有用な追加の薬剤をさらに含む請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項1〜6および12〜15のいずれか一項に記載の抗体または結合断片、請求項7に記載の抗原、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、または請求項10に記載の細胞と、任意選択で免疫または核酸に基づく診断法に従来から使用されている試薬とを含有する診断用組成物。
【請求項20】
腫瘍の進行を治療または予防するための、腫瘍に関連する徴候を改善するための、腫瘍が存在するかどうかについて被験者をスクリーニングするための、または被験者が腫瘍を発症する危険性を決定するための医薬組成物または診断用組成物を製造するための、
請求項1〜6および12〜15のいずれか一項に記載の抗体または結合断片、請求項1〜6および12〜15のいずれか一項に記載の抗体または結合断片と実質的に同じ結合特異性を有する抗体または請求項1〜6および12〜15のいずれか一項に記載の抗体または結合断片のイデオタイプ抗体、請求項7に記載の抗原、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、または請求項10に記載の細胞の使用方法。
【請求項21】
前記医薬組成物は静脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、鼻腔内に、またはエアゾールとして投与される請求項20に記載の使用方法。
【請求項22】
被験者の腫瘍の進行を治療または予防するための、腫瘍に関連する徴候を改善するための;腫瘍が存在するかどうかについて被験者を分析またはスクリーニングするための、または被験者が腫瘍を発症する危険性を決定するための方法であって、
前記被験者に、有効量の請求項1〜6および12〜15のいずれか一項に記載の抗体または結合断片、請求項1〜6および12〜15のいずれか一項に記載の抗体または結合断片と実質的に同じ結合特異性を有する抗体、または請求項1〜6および12〜15のいずれか一項に記載の抗体または結合断片のイデオタイプ抗体、請求項7に記載の抗原、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、または請求項10に記載の細胞を投与する工程からなる方法。
【請求項23】
前記抗体が静脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、鼻腔内に、またはエアゾールとして投与される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
腫瘍に関連する障害を診断するかまたは治療するかの少なくともいずれか一方を行う方法であって、被験者に、有効量の請求項1〜6および12〜15のいずれか一項に記載の抗体もしくは結合断片またはそれに対応する抗イデオタイプ抗体の少なくとも一つのCDRを含む腫瘍抗原結合分子を投与する工程からなる方法。
【請求項25】
前記腫瘍は原発性乳がんおよび/または転移を含む請求項20または21に記載の使用方法または請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
腫瘍診断用キットであって、
請求項1〜6および12〜15のいずれか一項に記載の抗体または結合断片、請求項7に記載の抗原、請求項8に記載のポリヌクレオチド、請求項9に記載のベクター、または請求項10に記載の細胞と、
任意選択で試薬および使用説明書の少なくとも一方と
を備えたキット。
【請求項27】
腫瘍を生体内で検出するための、または治療用および診断用の少なくとも一方のための作用物質を標的の腫瘍に向けるための請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体の少なくとも1つのCDRを含む腫瘍結合抗原分子の使用方法。
【請求項28】
実施例2に記載の培養メモリB細胞により分泌されたNY−ESO−1特異的抗体の分子クローニングの方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−520760(P2010−520760A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553077(P2009−553077)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002021
【国際公開番号】WO2008/110372
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(503148096)
【Fターム(参考)】