説明

モノニトロトルエン製造の廃水からのニトロクレゾールの除去方法及びこの抽出物の更なる使用方法

本発明の主題は、モノニトロトルエン製造の廃水からのニトロクレゾールの除去方法であって、前記モノニトロトルエン製造のこのアルカリ性廃水を酸により最高で3のpH値に酸性化し、前記ニトロクレゾールを抽出剤で処理することを特徴とする、モノニトロトルエン製造の廃水からのニトロクレゾールの除去方法である。本発明の主題は更に、使用物質としての前記ニトロクレゾール含有抽出物の使用による、ジニトロトルエンの製造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、モノニトロトルエン製造の廃水からの、抽出によるニトロクレゾールの除去方法及びジニトロトルエン製造における前記抽出物の更なる使用方法に関する。
【0002】
US−A−4597875は、ジニトロトルエン製造の廃水の硫酸での処理を記載し、その際前記廃水中に含有されるジニトロクレゾール及びトリニトロクレゾールを液体として分離し、燃焼により処分する。モノニトロトルエン製造の廃水の処理には前記方法はあまり適さず、というのは類似の条件下では、前記モノニトロトルエン製造の廃水の酸性化の際に、この含有されるニトロクレゾールは極めて細かく分割された、固体の沈殿として生じ、その際前記沈殿が前記水相から分離されにくいからである。この付着性の残留水のために、この分離した固体の沈殿は連続的な方法でもやはり取り扱いが困難である。
【0003】
ニトロトルエンは工業規模において、トルエンに対する硝酸−硫酸−混合物の作用によって製造される。この際、この所望のモノニトロトルエン異性体の他に、前記トルエンに対する酸化作用により、様々なニトロクレゾール化合物も不所望の副生成物として、1パーセントよりも少ない割合で生じる。前記反応生成物からのこの除去が、前記生成物の更なる使用、例えば蒸留又は融解物の結晶化による異性体分離の前に絶対に必要となる。
【0004】
この粗生成物からの前記ニトロクレゾールの除去のために、前記粗生成物を通常はまず、酸痕跡量の除去のため水で、次に塩基性溶液、例えば希釈した苛性ソーダ、ソーダ溶液、又はアンモニア溶液で洗浄する。この際、この比較的酸性のニトロクレゾールはナトリウムニトロクレゾラートとして、ほぼ完全にこの水相中へ移行する。この相分離後にいわゆるモノニトロトルエン廃水を得、以下MNT−廃水と呼ぶ。
【0005】
流路として使用される水域中への導入のための、連続的に運転する設備にMNT−廃水流を準備するために、前記MNT−廃水に生物学的な廃水処理を施す。前記MNT−廃水中に含有されるニトロクレゾールは、生物学的に分解しにくいことが証明されている。
【0006】
以上より、前記ニトロクレゾールをほぼ完全に前記MNT−廃水から除去し、この分離したニトロクレゾールを、単純でかつ経済的に支持可能な方法で、処理するか又は更なる使用に供給することを可能にする方法を開発するという課題が生じる。
【0007】
前記課題は、前記のMNT−製造のアルカリ性廃水を酸により最高で3のpH値に酸性化し、前記ニトロクレゾールを抽出剤、有利にはトルエン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン又はこれらの混合物で抽出する、本発明により解決された。
【0008】
本発明の主題は従って、前記のモノニトロトルエン製造のアルカリ性廃水を酸により最高で3のpH値に酸性化し、前記ニトロクレゾールを抽出剤で処理することを特徴とする、モノニトロトルエン製造の廃水からのニトロクレゾールの除去方法である。
【0009】
本発明の主題は更に、使用物質としての前記ニトロクレゾール含有抽出物の使用による、ジニトロトルエンの製造である。
【0010】
前記アルカリ性MNT−廃水の酸性化を、適した液状抽出剤の使用下での抽出と組み合わせ、その際この得られたニトロクレゾール含有抽出物を、前記ジニトロトルエン製造に側流として供給してよい方法が見出された。
【0011】
前記アルカリ性MNT−廃水の酸性化のために有利には、最高で2、有利には1より低いpK値を有する酸を使用する。これは特に鉱酸、例えば硫酸及び硝酸である。特に有利には、硫酸又は硝酸又はこれらの混合物が使用される。
【0012】
前記酸の量は本発明により、前記廃水が、前記酸性化の後に最高で3のpH値、有利には最高で2のpH値を有するように選択する。
【0013】
前記抽出を、適した液状抽出剤の使用下で行う。前記ジニトロトルエン製造における、前記ニトロクレゾール含有抽出物の更なる使用に関して、抽出剤として特にトルエン、又は前記抽出の方法温度で液状のモノニトロトルエン(o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン)又はこれらの異性体混合物、又はトルエンとモノニトロトルエン異性体とからなる混合物が使用される。
【0014】
前記の本発明の目的の達成のために、抽出剤としてまた、その他の、水に溶解しにくい、有機の、前記方法温度で液状の物質、例えばベンゼン、キシレン、n−アルカン及びイソアルカン、又はハロゲン化炭化水素、例えば四塩化炭素又は二塩化メチレンも使用可能である。
【0015】
前記抽出すべき廃水対前記抽出剤の体積割合は、有利には1:1〜50:1とされたい。有利には、2:1〜10:1の割合で行われる。特に良好な結果が、2:1〜5:1の割合で得られる。
【0016】
前記ジニトロトルエン製造における、前記ニトロクレゾール含有抽出物の更なる使用に関して、抽出剤として有利にはトルエン、又は前記抽出の方法温度の際に液状のモノニトロトルエン(o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン)又はこれらの異性体混合物、又はトルエンとモノニトロトルエン異性体とからなる混合物が使用される。
【0017】
抽出温度として有利には、例えば前述の洗浄からMNT−廃水が生じる温度が選択される。この有利な温度範囲は、25〜60℃、特に30〜55℃にある。
【0018】
前記廃水への前記酸及び抽出剤の計量供給の順序は任意である。この両方の成分の添加後に、前記有機相及び水相の強力な混合を、この有機相中へとニトロクレゾールの物質移動が達成されるように実施してよい。このために適した装置は例えば、撹拌槽、向流カラム、又はスタティックミキサである。この引き続く相分離は有利には静的な分離機中で天然の重力により又は動的な分離機(遠心分離機)中で行われる。
【0019】
前記ニトロクレゾール含有抽出物はこの際主にジニトロクレゾールを含有するが、モノニトロクレゾール及びトリニトロクレゾールも少量含有する。
【0020】
本発明の特別な利点は、前記の抽出したニトロクレゾールが、前記のジニトロトルエン製造の方法への前記ニトロクレゾール含有抽出物の導入を介して、更に使用されてよいことである。この際意外にも、前記の抽出したニトロクレゾールの大部分が分解する。前記の抽出物の併用により、DNT−廃水中のニトロクレゾールの総含量は明らかに増加することが期待されるはずであった。
【0021】
前記抽出物が部分流として、前記トルエンのモノニトロ化の方法工程に、又はジニトロ化の方法工程に添加されるかは原則的には些細なことである。有利には、特に抽出剤としてのトルエンの使用の場合には、前記の得られた抽出物は前記トルエンのモノニトロ化の方法工程に添加される。抽出剤としてのニトロトルエンの使用の際には、ジニトロ化の方法工程への添加が有利である。
【0022】
抽出物の添加により前記ジニトロトルエンの製造方法に加えられたニトロクレゾールの量は、産生されたジニトロトルエンの量に対して、有利には0.01〜1質量%、特に0.05〜0.5質量%である。この限定の維持の際には、前記ジニトロトルエンの品質の顕著な低下及び前記ジニトロトルエン製造の方法の廃水の処分に及ぼす本質的にネガティブな影響は観察されない。
【0023】
以上の見出した方法の利点は従って、前記モノニトロトルエン製造の廃水からのニトロクレゾールの低コストの除去及びこの単純な処分にある。有利には更に、前記ニトロクレゾールはほとんど定量的に除去され、この処分のための別々の方法工程を必要とせず、かつ付加的な熱エネルギーを供給又は排出する必要がない。
【0024】
本発明は、以下の実施例でより詳細に説明されるがこれにより相応して限定されることはない。
【0025】
実施例1
10:1の割合でのMNT−廃水のトルエンによる抽出
攪拌機及び滴下漏斗を有する丸底フラスコ中で、2620mg/lのジニトロクレゾール含量を有するアルカリ性MNT−廃水1lを、トルエン0.1lと強力に混合した。pH値を約2に調節するために、93%硫酸7mlを滴加した。引き続き、更に30分間撹拌した。前記攪拌機の停止後、この完全な相分離の終了を待った。水相である、このように処理したMNT−廃水は、あと46mg/lのジニトロクレゾールの残留含量を有した。
【0026】
実施例2
10:1の割合でのMNT−廃水のモノニトロトルエンによる抽出
実施例1の方法と同様ではあるが、前記のトルエン0.1lを、3つのモノニトロトルエンの工業的に製造された異性体混合物0.1lにより置換した。水相である、このように処理したMNT−廃水は、あと32mg/lのジニトロクレゾールの残留含量を有した。
【0027】
実施例3
3:1の割合でのMNT−廃水のモノニトロトルエンによる抽出
実施例1の方法と同様ではあるが、前記のトルエン0.1lを、3つのモノニトロトルエンの工業的に製造された異性体混合物0.33lにより置換した。水相である、このように処理したMNT−廃水は、あと8mg/lのジニトロクレゾールの残留含量を有した。
【0028】
実施例4
ジニトロクレゾール含有トルエンの添加下での、トルエンからジニトロトルエンへのニトロ化
攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗及び温度計を有する0.5lの四ツ口フラスコ中に、99.8%純度を有するトルエン65gと、ジニトロクレゾール含有トルエン(実施例1からの有機相)4gとからの混合物を装入し、その際前記トルエン中には、ジニトロクレゾール約120mgが含まれていた。硝化酸(96%硫酸53質量%、98%硝酸40質量%、及び水7質量%からなる)167gを、ゆっくりと冷却下で、この反応混合物中の温度が45℃を上回ることのないように滴加した。計量供給後1時間35℃で後撹拌した。室温での相分離後、この生じたモノニトロトルエンを有機相として、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗及び温度計を有する0.5lの四ツ口フラスコ中に移し、硝化酸(96%硫酸71質量%及び98%硝酸29質量%からなる)125gを、ゆっくりと冷却下で、この反応混合物中の温度が60℃を上回ることのないように滴加した。計量供給後1時間60℃で後撹拌した。60℃での相分離後、この生じたジニトロトルエンを有機相として、蒸留水100mlでの強力な撹拌及び60℃での引き続く相分離により2回洗浄した。このジニトロクレゾールの除去のために、この洗浄したジニトロトルエンを5%ソーダ溶液100mlで、60℃で15分間強力に撹拌した。60℃での相分離後、前記ソーダ溶液(水相)中で、ジニトロクレゾール含量582mg/lが測定された。
【0029】
実施例5−比較例:
ジニトロクレゾール含有トルエンの添加なしでの、トルエンからジニトロトルエンへのニトロ化
実施例4の方法と同様ではあるが、99.8%純度を有するトルエン65gと、ジニトロクレゾール含有トルエン4gとからの混合物の代わりに、使用物質として、ここでは99.8%純度を有するトルエン69gを使用した。60℃での相分離後、前記ソーダ溶液(水相)中で、ジニトロクレゾール含量572mg/lが測定された。
【0030】
この比較例は、実施例4のジニトロクレゾール含有トルエンの併用により、前記ジニトロトルエン中でのジニトロクレゾールの顕著な増加が生じないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノニトロトルエン製造の廃水からニトロクレゾールを除去するにあたり、前記のモノニトロトルエン製造のアルカリ性廃水を酸により最高で3のpH値に酸性化し、前記ニトロクレゾールを抽出剤で処理することを特徴とする、モノニトロトルエン製造の廃水からのニトロクレゾールの除去方法。
【請求項2】
最高で2のpK値を有する酸を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
鉱酸を使用することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ニトロクレゾールを、トルエン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン又はこれらの混合物で抽出することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記の抽出すべき廃水対前記抽出剤との体積割合が、1:1〜50:1であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ジニトロトルエンの製造の際の使用物質としての前記ニトロクレゾール含有抽出物の使用。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法により得られたニトロクレゾール含有抽出物を、使用物質として併用することを特徴とする、ジニトロトルエンの製造方法。
【請求項8】
前記ニトロクレゾール含有抽出物を、トルエンのモノニトロ化の方法工程の部分流として添加することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記ニトロクレゾール含有抽出物を、ジニトロ化の方法工程の部分流として添加することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記抽出物の添加により加えられたニトロクレゾールの量が、産生されたジニトロトルエンの量に対して、0.01〜1質量%であることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2007−506799(P2007−506799A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529997(P2006−529997)
【出願日】平成16年9月18日(2004.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010497
【国際公開番号】WO2005/037766
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】