モノパイル式基礎施工方法及び接合管
【課題】工期の短縮化や施工コストの低減化を図る。
【解決手段】本発明に係るモノパイル式基礎施工方法は、中央に形成された基礎杭打設空間3の周囲に複数の導杭打設空間4a,4b,4c,4dが形成された導枠1,9を、沿岸陸地に設置したクレーン5,8により吊り上げ、沿岸水域の所定位置に設置する工程と、クレーン5,8を使用して導枠1,9の各導杭打設空間4a,4b,4c,4dにそれぞれ導杭6a,6b,6c,6dを建込み、打設する工程と、クレーン5,8を使用して導枠1,9の基礎杭打設空間3に基礎杭10を建込み、打設する工程と、クレーン5,8を使用して導枠1,9及び導杭6a,6b,6c,6dを引き抜く工程とを備えていることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係るモノパイル式基礎施工方法は、中央に形成された基礎杭打設空間3の周囲に複数の導杭打設空間4a,4b,4c,4dが形成された導枠1,9を、沿岸陸地に設置したクレーン5,8により吊り上げ、沿岸水域の所定位置に設置する工程と、クレーン5,8を使用して導枠1,9の各導杭打設空間4a,4b,4c,4dにそれぞれ導杭6a,6b,6c,6dを建込み、打設する工程と、クレーン5,8を使用して導枠1,9の基礎杭打設空間3に基礎杭10を建込み、打設する工程と、クレーン5,8を使用して導枠1,9及び導杭6a,6b,6c,6dを引き抜く工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沿岸水域にモノパイル式基礎を構築するためのモノパイル式基礎施工方法、及びこのモノパイル式基礎施工方法において使用される接合管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境にやさしいクリーンなエネルギー源として風力発電が注目されている。一般に、この種の風力発電の施設は、常に安定した一定以上の風力の得られる場所に設置することが必要条件とされるが、国土が狭く、山間部の多い地理的事情を有する我が国では、このような条件を満たす適当な設置場所を陸上に確保するのは極めて困難であった。
【0003】
そこで、最近、我が国の山形県酒田市や北海道瀬棚町では、洋上に風力発電所が設置され、運転されている。これらの洋上風力発電所では、いずれも、ドルフィン式基礎構造が採用され、作業台船とクレーンを使用して防波堤内の陸側水域に施工されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、この他にモノパイル式基礎構造を採用して洋上風力発電施設を施工する方法も提案されている。この種の従来技術としては、例えば、杭運搬用SEPと基礎杭打ち用SEPとを洋上に固定し、両SEPに搭載されたクローラクレーンを用いてモノパイル式鋼管杭を吊り上げて基礎杭打ち用SEPに搭載された位置決め保持装置に保持固定した後、基礎杭打ち用SEPに搭載された杭打込み装置によりモノパイル式鋼管杭を所定深度まで貫入させる洋上風力発電施設の施工方法などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】川崎重工業株式会社ウェブサイト(http://www.khi.co.jp/knews/backnumber/bn_2004/pdf/news134_05.pdf)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開20006−37397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来のドルフィン式基礎構造では、多数の杭を海上に精度良く打設する必要があるため、工期の短縮化や施工コストの低減化が図り難く、また、施工場所が防波堤内の陸側水域に限定されていた。
【0008】
また、従来のドルフィン式基礎構造やモノパイル式基礎構造を採用した施工方法では、作業台船(又はSEP)を使用した海上作業となり、天候や海象の影響を受け易く、座礁等の危険性があると共に、波浪の影響を受け易いため、精度良く施工することが難しいといった問題があった。さらにまた、施工場所の水深が浅い場合には施工ができないといった問題や、大型クレーン船のリース料が高いため、施工コストの低減化が図り難いといった問題などもあった。
【0009】
本発明は、上記した各課題を解決すべくなされたものであり、工期の短縮化や施工コストの低減化が可能なモノパイル式基礎施工方法、及び該モノパイル式基礎施工方法において使用される接合管を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明は、沿岸水域にモノパイル式基礎を構築するためのモノパイル式基礎施工方法であって、中央に形成された基礎杭打設空間の周囲に複数の導杭打設空間が形成された導枠を、沿岸陸地に設置したクレーンにより吊り上げ、沿岸水域の所定位置に設置する工程と、前記クレーンを使用して前記導枠の各導杭打設空間にそれぞれ導杭を建込み、打設する工程と、前記クレーンを使用して前記導枠の基礎杭打設空間に基礎杭を建込み、打設する工程と、前記クレーンを使用して前記導枠及び前記導杭を引き抜く工程とを備えていることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明に係るモノパイル式基礎施工方法は、前記導杭の建込み及び打設時には仮導枠を使用し、前記基礎杭の建込み及び打設時には前記仮導枠を加工し直した本導枠を使用してもよい。
【0012】
また、本発明に係るモノパイル式基礎施工方法は、前記打設した基礎杭の上端部に接合管を被嵌し、該接合管の上面が水平になるようにレベル調整を行った上で前記基礎杭と前記接合管との隙間にグラウトを充填する工程をさらに備えていてもよい。
【0013】
さらにまた、本発明は、上記したモノパイル式基礎施工方法において使用される接合管であって、下端内周に沿って設けられる弾性を有する環状のパッキンを備え、前記基礎杭の上端部に被嵌される際に、前記パッキンはその内周部が前記基礎杭の外面に接触することにより上方に屈曲し、前記隙間に充填されるグラウトを支持可能なように形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、工期の短縮化や施工コストの低減化を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される仮導枠を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法の一工程を示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される本導枠を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される接続管を示す側面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される接続管を示す底面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される接続管の下端部分を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される接続管を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される仮導枠を示す平面図、図2は同モノパイル式基礎施工方法の一工程を示す側面図、図3は同モノパイル式基礎施工方法において使用される本導枠を示す平面図、図4は同モノパイル式基礎施工方法の次の一工程、図5は同モノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図、図76は同モノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図、図7は同モノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図、図8は同モノパイル式基礎施工方法において使用される接続管を示す側面図、図9は同接続管を示す底面図、図10は同接続管の下端部分を示す側面図、図11は同接続管を示す平面図である。なお、以下の説明では、本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法を洋上風力発電所の基礎工事に適用した場合について例示して説明する。
【0017】
先ず、準備作業として、陸上において仮導枠1の組立てを行う。この仮導枠1は、図1に示されているように、H鋼2を箱型に接合することにより形成されており、例えば、外径寸法が8.0m×8.0m×8.0mの立方体形状を成している。この仮導枠1の中央には直方体形状の基礎杭打設空間3が形成され、基礎杭打設空間3の周囲の四隅にはそれぞれ直方体形状の導杭打設空間4a,4b,4c,4dが形成されている。
【0018】
次に、図2に示すように、沿岸陸地に設置した第1のクローラクレーン5(例えば、450t)を使用して、この仮導枠1を吊り上げ、沿岸水域の海底の所定位置に設置する。この時、海底が平坦でない場合には、海底と仮導枠1との間にH鋼等を介装して仮導枠1が水平姿勢となるようにレベル調整する。
【0019】
そして、この仮導枠1を目安にして所要箇所(例えば、図1の黒丸部分)にH鋼(例えば、H−300)を海底に打込み、障害物の探査を行った後、第1のクローラクレーン5を使用して仮導枠1の導杭打設空間4a,4b,4c,4dにそれぞれ導杭6a,6b,6c,6d(例えば、φ800mmの鋼管)を建込み、油圧バイブロハンマ7で各導杭6a,6b,6c,6dを打設する。
【0020】
次に、沿岸陸地に設置した第2のクローラクレーン8(例えば、750t)を使用して、仮導枠1を吊り上げ、海底から撤去する。そして、図3に示すように、この仮導枠1の各導杭打設空間4a,4b,4c,4dの上部を横切るように鋼材26(例えば、H−400)をそれぞれ掛け渡すと共に、基礎杭打設空間3に臨む部分の上部にローラ27を取り付け、下部にガイド(図示省略)を取り付けることにより、仮導枠1を本導枠9に加工し直す。その後、図4に示すように、第2のクローラクレーン8を使用して、本導枠9を吊り上げ、導杭6a,6b,6c,6dの上に各鋼材26を載せ、振れ止め用専用金具で導杭6a,6b,6c,6dを各鋼材26に固定して、本導枠9を前記海底の所定位置に設置する。
【0021】
次に、図5に示すように、第2のクローラクレーン8を使用して、基礎杭10(例えば、φ3500mmの鋼管)を吊り上げ、本導枠9の中央の基礎杭打設空間3に建込む。この時、本導枠9の基礎杭打設空間3に臨む部分にはローラ27及び前記ガイドが取り付けられているため、基礎杭10の建込み作業を容易且つ円滑に行うことができる。
【0022】
次に、図6に示すように、第2のクローラクレーン8を使用して、基礎杭10にヤットコ14を載せ、さらにヤットコ14に第1の油圧ハンマー15を載せて、基礎杭10を打設する。その後、本導枠9を吊り上げ、海底から撤去すると共に、海側の2本の導杭6a,6bを引き抜く。なお、この時、陸側の2本の導杭6c,6dは、風力発電所の完成後にメンテナンスで使用する管理橋(図示せず)の基礎として利用するため、引き抜かずに残しておく。
【0023】
次に、図7に示すように、第2のクローラクレーン8を使用して、打設した基礎杭10の上端部に接合管17を被嵌する。この接合管17は、鋼管製であり、図8〜図11に示されているように、基礎杭10の上端部に被嵌される円筒形状の下側部分18(例えば、φ3800mm)と、下側部分18から基礎上に固定される風車のタワー(図示せず)の直径(例えば、φ4200mm)まで拡幅される上側部分19とにより構成されている。そして、接合管17の内面であって下側部分18と上側部分19との間には、例えばH鋼(H−400)から成るレベル調整部20が3個放射状に突設されているため、基礎杭10の上端部に接合管17を被嵌する際に、このレベル調整部20と基礎杭10の上端面との間に鉄板等を介装することにより接合管17を水平に取り付けることができる。
【0024】
図10に良く示されているように、接合管17の下側部分18の下端には、その内周に沿って弾性を有する環状の(例えば、ゴム製)パッキン21が取り付けられており、接合管17を基礎杭10の上端部に被嵌する際に、パッキン21の内周部が基礎杭10の外面に沿って上方に屈曲し、基礎杭10と接合管17との隙間22の下端面をパッキン21が閉塞するようになっている(図10の二点鎖線部分を参照)。そこで、この時、パッキン21がこの隙間22の下端面を閉塞していることを潜水士が海中に潜って確認するのが望ましい。
【0025】
また、接合管17の下側部分18の内面には、ガイド23が突設されており、ガイド23の内側端部24は湾曲して形成されている。そして、このガイド23の内側端部が、接合管17を基礎杭10の上端部に被嵌する際に基礎杭10の外面に接触することにより、接合管17の基礎杭10への被嵌作業を円滑且つ確実に行うことができるようになる。
【0026】
以降、特に図示しないが、第1のクローラクレーン5を使用して、陸上で組立てた歩廊橋を基礎杭10に接続し、陸上と基礎杭10との間に掛け渡す。そして、この歩廊橋上にグラウトホースを配管し、陸上で錬り混ぜたグラウト(例えば、水中不分離性高流動無収縮モルタル)を接合管17と基礎杭10との隙間22に充填する。この時、基礎杭10と接合管17との隙間22の下端面はパッキン21によって閉塞されているため、グラウトが海中に漏出することはない。
【0027】
次に、陸上にコンクリートポンプ車を設置し、前記歩廊橋上に配設したコンクリート配管を介して、基礎杭10及び接合管17の中に生コンを打設する。この時、図8及び図11に示されているように、接合管17の上側部分19の上端には内周に沿ってフランジ部25が内鍔状に形成されているため、生コンの打設はこのフランジ部25から所定長(例えば80cm程度)下方のレベルまでとする。これにより、その後に前記風車のタワーを接合管17のフランジ部25にボルト等の締結具で接続する際の作業スペースを形成することができるため、前記風車のタワーの接続作業を容易且つ円滑に行なうことができるようになる。
【0028】
最後に、基礎杭10と陸側の2本の導杭6c,6dについて、電気防食を行い、モノパイル式基礎の施工を完了する。
【0029】
このように本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法によれば、仮導枠1や本導枠9を使用して導杭6a,6b,6c,6dや基礎杭10を打設しているため、導杭6a,6b,6c,6dや基礎杭10の打設時に個々に測量することなく、高精度の施工を効率的に行うことができる。したがって、工期の短縮化を図ることができると共に、施工品質の向上を図ることができる。
【0030】
また、陸上に設置したクローラクレーンを使用して施工を行うことができるため、天候や海象の影響を受け難く、工程の管理が容易となり、工期の短縮化が可能となる。さらに、水深の浅い場所にも施工することができると共に、高価な大型クレーン船をリースする必要がないため、施工コストの低減化を図ることができる。
【0031】
なお、上記した実施の形態では、仮導枠1を使用して導杭6a,6b,6c,6dを打設した後、仮導枠1を本導枠9に加工し直した上で基礎杭10を打設しているが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、仮導枠1を使用せずに最初から本導枠9を使用して導杭6a,6b,6c,6dと基礎杭10を打設してもよい。
【0032】
また、仮導枠1や本導枠9の平面形状は上記した正方形に限定されるものではなく、例えば、三角形や六角形等の多角形、或いは円形とすることもできる。
【0033】
さらに、上記した実施の形態では、本発明を洋上風力発電所の基礎工事に適用した場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は他の構造物の基礎工事に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 仮導枠
3 基礎杭打設空間
4a 導杭打設空間
4b 導杭打設空間
4c 導杭打設空間
4d 導杭打設空間
5 クレーン
6a 導杭
6b 導杭
6c 導杭
6d 導杭
8 クレーン
9 本導枠
10 基礎杭
11 吊り具
12 掛止部
13 抜け止め部
17 接合管
21 パッキン
22 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、沿岸水域にモノパイル式基礎を構築するためのモノパイル式基礎施工方法、及びこのモノパイル式基礎施工方法において使用される接合管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境にやさしいクリーンなエネルギー源として風力発電が注目されている。一般に、この種の風力発電の施設は、常に安定した一定以上の風力の得られる場所に設置することが必要条件とされるが、国土が狭く、山間部の多い地理的事情を有する我が国では、このような条件を満たす適当な設置場所を陸上に確保するのは極めて困難であった。
【0003】
そこで、最近、我が国の山形県酒田市や北海道瀬棚町では、洋上に風力発電所が設置され、運転されている。これらの洋上風力発電所では、いずれも、ドルフィン式基礎構造が採用され、作業台船とクレーンを使用して防波堤内の陸側水域に施工されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、この他にモノパイル式基礎構造を採用して洋上風力発電施設を施工する方法も提案されている。この種の従来技術としては、例えば、杭運搬用SEPと基礎杭打ち用SEPとを洋上に固定し、両SEPに搭載されたクローラクレーンを用いてモノパイル式鋼管杭を吊り上げて基礎杭打ち用SEPに搭載された位置決め保持装置に保持固定した後、基礎杭打ち用SEPに搭載された杭打込み装置によりモノパイル式鋼管杭を所定深度まで貫入させる洋上風力発電施設の施工方法などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】川崎重工業株式会社ウェブサイト(http://www.khi.co.jp/knews/backnumber/bn_2004/pdf/news134_05.pdf)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開20006−37397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来のドルフィン式基礎構造では、多数の杭を海上に精度良く打設する必要があるため、工期の短縮化や施工コストの低減化が図り難く、また、施工場所が防波堤内の陸側水域に限定されていた。
【0008】
また、従来のドルフィン式基礎構造やモノパイル式基礎構造を採用した施工方法では、作業台船(又はSEP)を使用した海上作業となり、天候や海象の影響を受け易く、座礁等の危険性があると共に、波浪の影響を受け易いため、精度良く施工することが難しいといった問題があった。さらにまた、施工場所の水深が浅い場合には施工ができないといった問題や、大型クレーン船のリース料が高いため、施工コストの低減化が図り難いといった問題などもあった。
【0009】
本発明は、上記した各課題を解決すべくなされたものであり、工期の短縮化や施工コストの低減化が可能なモノパイル式基礎施工方法、及び該モノパイル式基礎施工方法において使用される接合管を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明は、沿岸水域にモノパイル式基礎を構築するためのモノパイル式基礎施工方法であって、中央に形成された基礎杭打設空間の周囲に複数の導杭打設空間が形成された導枠を、沿岸陸地に設置したクレーンにより吊り上げ、沿岸水域の所定位置に設置する工程と、前記クレーンを使用して前記導枠の各導杭打設空間にそれぞれ導杭を建込み、打設する工程と、前記クレーンを使用して前記導枠の基礎杭打設空間に基礎杭を建込み、打設する工程と、前記クレーンを使用して前記導枠及び前記導杭を引き抜く工程とを備えていることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明に係るモノパイル式基礎施工方法は、前記導杭の建込み及び打設時には仮導枠を使用し、前記基礎杭の建込み及び打設時には前記仮導枠を加工し直した本導枠を使用してもよい。
【0012】
また、本発明に係るモノパイル式基礎施工方法は、前記打設した基礎杭の上端部に接合管を被嵌し、該接合管の上面が水平になるようにレベル調整を行った上で前記基礎杭と前記接合管との隙間にグラウトを充填する工程をさらに備えていてもよい。
【0013】
さらにまた、本発明は、上記したモノパイル式基礎施工方法において使用される接合管であって、下端内周に沿って設けられる弾性を有する環状のパッキンを備え、前記基礎杭の上端部に被嵌される際に、前記パッキンはその内周部が前記基礎杭の外面に接触することにより上方に屈曲し、前記隙間に充填されるグラウトを支持可能なように形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、工期の短縮化や施工コストの低減化を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される仮導枠を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法の一工程を示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される本導枠を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される接続管を示す側面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される接続管を示す底面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される接続管の下端部分を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される接続管を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法において使用される仮導枠を示す平面図、図2は同モノパイル式基礎施工方法の一工程を示す側面図、図3は同モノパイル式基礎施工方法において使用される本導枠を示す平面図、図4は同モノパイル式基礎施工方法の次の一工程、図5は同モノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図、図76は同モノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図、図7は同モノパイル式基礎施工方法のさらに次の一工程を示す側面図、図8は同モノパイル式基礎施工方法において使用される接続管を示す側面図、図9は同接続管を示す底面図、図10は同接続管の下端部分を示す側面図、図11は同接続管を示す平面図である。なお、以下の説明では、本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法を洋上風力発電所の基礎工事に適用した場合について例示して説明する。
【0017】
先ず、準備作業として、陸上において仮導枠1の組立てを行う。この仮導枠1は、図1に示されているように、H鋼2を箱型に接合することにより形成されており、例えば、外径寸法が8.0m×8.0m×8.0mの立方体形状を成している。この仮導枠1の中央には直方体形状の基礎杭打設空間3が形成され、基礎杭打設空間3の周囲の四隅にはそれぞれ直方体形状の導杭打設空間4a,4b,4c,4dが形成されている。
【0018】
次に、図2に示すように、沿岸陸地に設置した第1のクローラクレーン5(例えば、450t)を使用して、この仮導枠1を吊り上げ、沿岸水域の海底の所定位置に設置する。この時、海底が平坦でない場合には、海底と仮導枠1との間にH鋼等を介装して仮導枠1が水平姿勢となるようにレベル調整する。
【0019】
そして、この仮導枠1を目安にして所要箇所(例えば、図1の黒丸部分)にH鋼(例えば、H−300)を海底に打込み、障害物の探査を行った後、第1のクローラクレーン5を使用して仮導枠1の導杭打設空間4a,4b,4c,4dにそれぞれ導杭6a,6b,6c,6d(例えば、φ800mmの鋼管)を建込み、油圧バイブロハンマ7で各導杭6a,6b,6c,6dを打設する。
【0020】
次に、沿岸陸地に設置した第2のクローラクレーン8(例えば、750t)を使用して、仮導枠1を吊り上げ、海底から撤去する。そして、図3に示すように、この仮導枠1の各導杭打設空間4a,4b,4c,4dの上部を横切るように鋼材26(例えば、H−400)をそれぞれ掛け渡すと共に、基礎杭打設空間3に臨む部分の上部にローラ27を取り付け、下部にガイド(図示省略)を取り付けることにより、仮導枠1を本導枠9に加工し直す。その後、図4に示すように、第2のクローラクレーン8を使用して、本導枠9を吊り上げ、導杭6a,6b,6c,6dの上に各鋼材26を載せ、振れ止め用専用金具で導杭6a,6b,6c,6dを各鋼材26に固定して、本導枠9を前記海底の所定位置に設置する。
【0021】
次に、図5に示すように、第2のクローラクレーン8を使用して、基礎杭10(例えば、φ3500mmの鋼管)を吊り上げ、本導枠9の中央の基礎杭打設空間3に建込む。この時、本導枠9の基礎杭打設空間3に臨む部分にはローラ27及び前記ガイドが取り付けられているため、基礎杭10の建込み作業を容易且つ円滑に行うことができる。
【0022】
次に、図6に示すように、第2のクローラクレーン8を使用して、基礎杭10にヤットコ14を載せ、さらにヤットコ14に第1の油圧ハンマー15を載せて、基礎杭10を打設する。その後、本導枠9を吊り上げ、海底から撤去すると共に、海側の2本の導杭6a,6bを引き抜く。なお、この時、陸側の2本の導杭6c,6dは、風力発電所の完成後にメンテナンスで使用する管理橋(図示せず)の基礎として利用するため、引き抜かずに残しておく。
【0023】
次に、図7に示すように、第2のクローラクレーン8を使用して、打設した基礎杭10の上端部に接合管17を被嵌する。この接合管17は、鋼管製であり、図8〜図11に示されているように、基礎杭10の上端部に被嵌される円筒形状の下側部分18(例えば、φ3800mm)と、下側部分18から基礎上に固定される風車のタワー(図示せず)の直径(例えば、φ4200mm)まで拡幅される上側部分19とにより構成されている。そして、接合管17の内面であって下側部分18と上側部分19との間には、例えばH鋼(H−400)から成るレベル調整部20が3個放射状に突設されているため、基礎杭10の上端部に接合管17を被嵌する際に、このレベル調整部20と基礎杭10の上端面との間に鉄板等を介装することにより接合管17を水平に取り付けることができる。
【0024】
図10に良く示されているように、接合管17の下側部分18の下端には、その内周に沿って弾性を有する環状の(例えば、ゴム製)パッキン21が取り付けられており、接合管17を基礎杭10の上端部に被嵌する際に、パッキン21の内周部が基礎杭10の外面に沿って上方に屈曲し、基礎杭10と接合管17との隙間22の下端面をパッキン21が閉塞するようになっている(図10の二点鎖線部分を参照)。そこで、この時、パッキン21がこの隙間22の下端面を閉塞していることを潜水士が海中に潜って確認するのが望ましい。
【0025】
また、接合管17の下側部分18の内面には、ガイド23が突設されており、ガイド23の内側端部24は湾曲して形成されている。そして、このガイド23の内側端部が、接合管17を基礎杭10の上端部に被嵌する際に基礎杭10の外面に接触することにより、接合管17の基礎杭10への被嵌作業を円滑且つ確実に行うことができるようになる。
【0026】
以降、特に図示しないが、第1のクローラクレーン5を使用して、陸上で組立てた歩廊橋を基礎杭10に接続し、陸上と基礎杭10との間に掛け渡す。そして、この歩廊橋上にグラウトホースを配管し、陸上で錬り混ぜたグラウト(例えば、水中不分離性高流動無収縮モルタル)を接合管17と基礎杭10との隙間22に充填する。この時、基礎杭10と接合管17との隙間22の下端面はパッキン21によって閉塞されているため、グラウトが海中に漏出することはない。
【0027】
次に、陸上にコンクリートポンプ車を設置し、前記歩廊橋上に配設したコンクリート配管を介して、基礎杭10及び接合管17の中に生コンを打設する。この時、図8及び図11に示されているように、接合管17の上側部分19の上端には内周に沿ってフランジ部25が内鍔状に形成されているため、生コンの打設はこのフランジ部25から所定長(例えば80cm程度)下方のレベルまでとする。これにより、その後に前記風車のタワーを接合管17のフランジ部25にボルト等の締結具で接続する際の作業スペースを形成することができるため、前記風車のタワーの接続作業を容易且つ円滑に行なうことができるようになる。
【0028】
最後に、基礎杭10と陸側の2本の導杭6c,6dについて、電気防食を行い、モノパイル式基礎の施工を完了する。
【0029】
このように本発明の実施の形態に係るモノパイル式基礎施工方法によれば、仮導枠1や本導枠9を使用して導杭6a,6b,6c,6dや基礎杭10を打設しているため、導杭6a,6b,6c,6dや基礎杭10の打設時に個々に測量することなく、高精度の施工を効率的に行うことができる。したがって、工期の短縮化を図ることができると共に、施工品質の向上を図ることができる。
【0030】
また、陸上に設置したクローラクレーンを使用して施工を行うことができるため、天候や海象の影響を受け難く、工程の管理が容易となり、工期の短縮化が可能となる。さらに、水深の浅い場所にも施工することができると共に、高価な大型クレーン船をリースする必要がないため、施工コストの低減化を図ることができる。
【0031】
なお、上記した実施の形態では、仮導枠1を使用して導杭6a,6b,6c,6dを打設した後、仮導枠1を本導枠9に加工し直した上で基礎杭10を打設しているが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、仮導枠1を使用せずに最初から本導枠9を使用して導杭6a,6b,6c,6dと基礎杭10を打設してもよい。
【0032】
また、仮導枠1や本導枠9の平面形状は上記した正方形に限定されるものではなく、例えば、三角形や六角形等の多角形、或いは円形とすることもできる。
【0033】
さらに、上記した実施の形態では、本発明を洋上風力発電所の基礎工事に適用した場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は他の構造物の基礎工事に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 仮導枠
3 基礎杭打設空間
4a 導杭打設空間
4b 導杭打設空間
4c 導杭打設空間
4d 導杭打設空間
5 クレーン
6a 導杭
6b 導杭
6c 導杭
6d 導杭
8 クレーン
9 本導枠
10 基礎杭
11 吊り具
12 掛止部
13 抜け止め部
17 接合管
21 パッキン
22 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沿岸水域にモノパイル式基礎を構築するためのモノパイル式基礎施工方法であって、
中央に形成された基礎杭打設空間の周囲に複数の導杭打設空間が形成された導枠を、沿岸陸地に設置したクレーンにより吊り上げ、沿岸水域の所定位置に設置する工程と、
前記クレーンを使用して前記導枠の各導杭打設空間にそれぞれ導杭を建込み、打設する工程と、
前記クレーンを使用して前記導枠の基礎杭打設空間に基礎杭を建込み、打設する工程と、
前記クレーンを使用して前記導枠及び前記導杭を引き抜く工程と、
を備えていることを特徴とするモノパイル式基礎施工方法。
【請求項2】
前記導杭の建込み及び打設時には仮導枠を使用し、前記基礎杭の建込み及び打設時には前記仮導枠を加工し直した本導枠を使用する請求項1に記載のモノパイル式基礎施工方法。
【請求項3】
前記打設した基礎杭の上端部に接合管を被嵌し、該接合管の上面が水平になるようにレベル調整を行った上で前記基礎杭と前記接合管との隙間にグラウトを充填する工程をさらに備えている請求項1又は2に記載のモノパイル式基礎施工方法。
【請求項4】
請求項3に記載のモノパイル式基礎施工方法において使用される接合管であって、
下端内周に沿って設けられる弾性を有する環状のパッキンを備え、前記基礎杭の上端部に被嵌される際に、前記パッキンはその内周部が前記基礎杭の外面に接触することにより上方に屈曲し、前記隙間に充填されるグラウトを支持可能なように形成されることを特徴とする接合管。
【請求項1】
沿岸水域にモノパイル式基礎を構築するためのモノパイル式基礎施工方法であって、
中央に形成された基礎杭打設空間の周囲に複数の導杭打設空間が形成された導枠を、沿岸陸地に設置したクレーンにより吊り上げ、沿岸水域の所定位置に設置する工程と、
前記クレーンを使用して前記導枠の各導杭打設空間にそれぞれ導杭を建込み、打設する工程と、
前記クレーンを使用して前記導枠の基礎杭打設空間に基礎杭を建込み、打設する工程と、
前記クレーンを使用して前記導枠及び前記導杭を引き抜く工程と、
を備えていることを特徴とするモノパイル式基礎施工方法。
【請求項2】
前記導杭の建込み及び打設時には仮導枠を使用し、前記基礎杭の建込み及び打設時には前記仮導枠を加工し直した本導枠を使用する請求項1に記載のモノパイル式基礎施工方法。
【請求項3】
前記打設した基礎杭の上端部に接合管を被嵌し、該接合管の上面が水平になるようにレベル調整を行った上で前記基礎杭と前記接合管との隙間にグラウトを充填する工程をさらに備えている請求項1又は2に記載のモノパイル式基礎施工方法。
【請求項4】
請求項3に記載のモノパイル式基礎施工方法において使用される接合管であって、
下端内周に沿って設けられる弾性を有する環状のパッキンを備え、前記基礎杭の上端部に被嵌される際に、前記パッキンはその内周部が前記基礎杭の外面に接触することにより上方に屈曲し、前記隙間に充填されるグラウトを支持可能なように形成されることを特徴とする接合管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−38247(P2011−38247A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183530(P2009−183530)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(592091529)東光電気工事株式会社 (10)
【出願人】(000146869)株式会社森長組 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(592091529)東光電気工事株式会社 (10)
【出願人】(000146869)株式会社森長組 (4)
【Fターム(参考)】
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