説明

モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体の製造方法

【課題】毒性が高い天然のカリキアミシンの効果的な標的化が可能な、カリキアミシン誘導体製造方法の提供。
【解決手段】より高い薬剤担持量/収率及び減少した凝集を伴う、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体の調製方法が提供される。これらの複合体は、非求核性の、蛋白と相容性の緩衝溶液、プロピレングリコール、エタノール、DMSO、及びそれらの組み合わせ物からなる群から選ばれる補助溶媒、並びに、少なくとも1種類のC−C18カルボン酸を含んでなる添加剤を含んでなる、約4.0から8.5の範囲内のpHをもつ溶液中の、カリキアミシン誘導体及び蛋白質性キャリアーを、約25℃から約37℃の範囲の温度で、約15分間から約24時間の範囲の期間、インキュベーションさせること、並びに、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を回収すること、により調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモノマー性カリキアミシン(calicheamicin)誘導体/キャリアー複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体の産生方法の発見が1970年代に発行されて以来(非特許文献1)、腫瘍を抗腫瘍物質の選択的な標的とさせるためにこれらの蛋白を使用する多数の試みが実施されて来た(例えば、非特許文献2、非特許文献3及び非特許文献4を参照されたい)。当該技術分野における進歩は継続しているが、大部分の古典的な抗腫瘍物質は、種々の理由のために比較的無効である抗体複合体を生成する。この無効性の理由のなかには化学療法剤の効力の欠如が含まれる。
【0003】
集合的にカリキアミシン類又はLL−E33288複合体として知られる、抗バクテリア及び抗腫瘍物質の強力な群が、特許文献1に記載されている。それらの物質の最も強力なものはγ1と命名されており、本明細書では簡単にガンマと称される。これらの化合物は、適宜なチオールと反応してジスルフィドを形成することができ、同時にキャリアーにカリキアミシン誘導体を結合させるのに有用な、ヒドラジドのような官能基又はその他の官能基を導入する、メチルトリスルフィドを含有している。カリキアミシンとのこの反応の例は、特許文献2に示され、それはまたカリキアミシンの標的化された形態を公表している。
【0004】
前記の複合体の使用を制約してきたファクターは、キャリアーに結合しているカリキアミシン誘導体の担持量を増加させると凝集物を形成する、それらの傾向である。より高い薬剤担持量は複合体の固有の効力を増強させるので、キャリアー蛋白の親和性の維持と調和する限り、できるだけ多量の薬剤をキャリアー上に担持させる)ことが望ましい。治療的適用のためには除去しなければならない凝集物の存在はまた、これらの複合体の大規模調製をより困難にさせ、そして生成物の収率を減少させる。従って、キャリアー蛋白上に担持されるカリキアミシン量(薬剤担持量)、複合体化反応中に形成される凝集物の量、並びに、得ることができる最終的に精製されたモノマー性複合体の収率、はすべて関連している。従って、複合化反応に添加される反応性カリキアミシン誘導体の量を調整することにより、より高い薬剤担持量と、最終モノマーの収率の間で妥協しなければならない。
【0005】
複合体化反応が、特許文献3に記載されたリンカーを用いて実施される場合、カリキアミシン複合体の凝集傾向は特に問題である。この場合、生成された大部分の複合体が、治療的適用の為に更に精製することが極めて困難な凝集形態にある。ある種のキャリアー蛋白に対しては、軽度の担持量をもつ複合体ですら、小規模の場合を除いて実質的に調製不可能である。従って、凝集量を最小にし、それにより、生成物の適度な収率を伴って、出来るだけ高い薬剤配合量を可能にするような、カリキアミシンのような細胞毒性薬剤をキャリアーに複合体化させる方法が極めて必要である。良好な生物学的活性に要する実際の薬剤担持量、精製過程中に有効に除去することができる凝集物の量、及び、得ることができる複合体の最終的収率は、個々の場合に応じて決定する必要がある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,970,198号明細書
【特許文献2】米国特許第5,053,394号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0689845号明細書
【非特許文献1】G.K・hler et al.,Nature 256:495(1975))
【非特許文献2】T.Ghose et al.,CRC Critical Rev.Drug Carrier Systems 3:263, 1987
【非特許文献3】G.A.Koppel,Bioconjugate Chem.1:13,1990
【非特許文献4】J.Upeslacis et al.,Ann.Rep.Med.Chem.23:151,1988
【発明の開示】
【0007】
本発明のカリキアミシン誘導体/キャリアー複合体は式、
Pr(−X−S−S−W)
[式中:
Prは蛋白質性キャリアーであり、
Xは、蛋白質性キャリアーと反応することができる、あらゆる反応性の基の生成物を含んでなるリンカーであり、
Wは天然のカリキアミシンに存在するメチルトリスルフィド基の除去により形成されるカリキアミシン残基であり;そして
mは0.5から15の数である]
を有する。
【0008】
より高い薬剤担持量/収率、及び減少した凝集を伴う、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体(コンジュゲート)の調製のための本発明の方法は、
(1) 非求核性で、蛋白と相容性で、約4.0から8.5の範囲内の適宜なpHをもつ緩衝溶液中の、カリキアミシン誘導体及び蛋白質性キャリアーをインキュベーションすること、その際、該溶液は更に
(a) プロピレングリコール、エタノール、DMSO、及びそれらの組み合わせ物からなる群から選ばれる補助溶媒、並びに
(b) 少なくとも1種類のC−C18カルボン酸を含んでなる添加剤を含んでなり、その際、該インキュベーションは、約25℃から約37℃の範囲の温度で、約15分から約24時間の範囲の期間で実施される;
(2) 段階(1)で生成された複合体を精製してモノマー性複合体を生成すること:
の段階を含んでなる。
【0009】
より高い薬剤配合量/収率、及び減少した凝集を伴う、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体の調製のための、本発明の方法の代替的態様は、
(1) その溶液が更に、補助溶媒のt−ブタノールを含んでなる、非求核性で、蛋白と相容性で、約4.0から8.5の範囲内の適宜なpHをもつ緩衝溶液中の、カリキアミシン誘導体及び蛋白質性キャリアーをインキュベーションすること、その際、該インキュベーションは、約25℃から約37℃の範囲の温度で、約15分から約24時間の範囲の期間で実施される、及び
(2) 段階(1)で生成された複合体を精製してモノマー性複合体を生成すること:
の段階を含んでなる。
【0010】
<発明の詳細な記述>
本発明の複合体は、蛋白質性の、標的を目指すキャリアーと反応する、いずれの反応性
の基をも含むリンカー(本明細書では「結合剤」ともいう)により誘導される治療剤を含む。具体的な補助溶媒及び添加剤の使用は、これらの複合体の凝集形態と対抗するようなモノマー形態を誘導し、そして過剰な凝集をもたらさずに、より高い薬剤担持量/収率を可能にする。モノマー形態は治療的な価値をもつ。
【0011】
<キャリアー>
本発明のキャリアーは好ましくは蛋白質性キャリアーである。キャリアー分子として含まれるものは、成長因子、抗体、抗体のフラグメント、及びそれらの遺伝学的又は酵素学的に操作された拮抗物質であり、以後単数で、又はグループとしてキャリアーと称する。キャリアーの本質的な性状は、抗原又は、望ましくない細胞と結合している受容体を認識する能力である。キャリアーの例は、米国特許第5,053,394号明細書に記載されており、そしてそのようなキャリアーがまた本発明においても適宜である。本発明における使用に好ましいキャリアーはヒト又はヒト化抗体である。
【0012】
本明細書で例示されるキャリアーの特定の例は、抗体P67.6、A33、CT−M−01(7F11C7としても知られている)及びワルトマン(Waldman)の「抗−Tac」抗体である。これらの抗体は、本明細書では2種の形態:「m」で表されるネズミの形態(例えば、m−P67.6)、及び適宜な場合にはいつでも「h」で表される、遺伝学的に操作されたヒト化形態(例えば、h−P67.6)で使用される。抗体のヒト化のための基礎的技術は、米国特許第5,225,539号(1993)明細書においてWinterにより、そしてPCT発行番号、国際出願公開第91/09967号パンフレット(1991)においてAdairにより公表されている。m−P67.6はI.D.Bernstein et al.,J.Clin.Invest.79:1153(1987)及びI.D.Bernstein et al.,J.Immunol.128:867−881(1992)に公表されておりそして、ある種のヒトの骨髄腫瘍、特に急性の非リンパ球性白血病(ANLL)に優勢なCD33抗原を認識する。使用できるもう一つの抗体は、標的指向性でない抗体で、その複合体が、その他の抗体複合体の標的指向性効果を示すための対照として有用な、MOPC−21である。このネズミ抗体は、Melchers,F.,Biochem.J.119:765−772(1970)に公表されている。
【0013】
欧州特許出願公開第0689845号明細書は本発明における使用に特に好ましい、ある特定のh−P67.6の可変領域のアミノ酸配列を公表している。この抗体の枠組み構造は、Gottlieb et al.,Biochemistry 9:3115 and 3161,1970に示されたヒトlgG4のEU枠組み構造である。抗体はPCT公開第91/09967号パンフレットに記載された一般方法を使用して調製された。
【0014】
抗体m−CT−M−01は欧州特許出願第86401482.4/0208615号明細書に開示されており、そして多数のヒトの固形腫瘍、特に乳房、肺及び卵巣腫瘍上に存在する多上皮ムチン(PEM)抗原を認識する。この抗体のヒト化形態の、h−CT−M−01は、PCT公開第93/06231号(1993)パンフレットに記載されている。抗体m−A33は米国特許第5,160,723号及び同5,431,897号明細書に公表されており、そして、結腸癌細胞上に存在する糖蛋白の抗原を認識するネズミの抗体である。この抗体のヒト化形態であるh−A33は、PCT公開第94/13805号(1994年、6月23日)パンフレットに公表されている。抗−TacはT.A.Waldman et al.,J.Immunol.126:1393(1981)に公表され、そして異常に活性化された白血病細胞を含む、活性化されて機能的に成熟したT細胞上に認められるlL−2受容体と反応性のネズミ抗体である。
【0015】
<治療薬>
本発明における使用に適宜な治療薬はDNAに結合してDNAを崩壊させる、細胞毒性の抗生物質である。好ましい細胞毒性物質はメチルトリスルフィドの抗腫瘍抗生物質である、カリキアミシン類である。本発明における使用に適宜なカリキアミシンの例は、例えば、米国特許第5,053,394号明細書に公表されている。更に、米国特許第4,671,958号;同第4,970,198号;同第5,037,651号;及び同第5,079,233号明細書を参照願いたい。好ましいカリキアミシンはN−アセチルガンマ・カリキアミシン類のガンマ・カリキアミシンである。複合体()形態にある、N−アセチルガンマ−カリキアミシンの構造は下記に示される。
【0016】
【化1】

【0017】
<カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体>
本発明の複合体は構造
Pr(−X−S−S−W)
[式中:
Prは蛋白質性キャリアーであり、
Xは蛋白質性キャリアーと反応することができるあらゆる反応性の基の生成物を含んでなるリンカーであり、
Wは天然のカリキアミシンに存在するメチルトリスルフィド基の除去により形成されたカリキアミシン残基であり;そして
mは0.5から15の数である]
を有する。
【0018】
好ましくは、Xは、式 Z−Sp
[式中:
Spは直鎖もしくは分枝鎖の2価もしくは3価(C−C18)の基、2価もしくは3価アリールもしくはヘテロアリール基、2価もしくは3価(C−C18)シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル基、2価もしくは3価アリール−もしくはヘテロアリール−アリール(C−C18)基、2価もしくは3価シクロアルキル−もしくはヘテロシクロアルキル−アルキル(C−C18)基、又は2価もしくは3価(C−C18)不飽和アルキル基であり、ここで、
ヘテロアリールは好ましくは、フリル、チエニル、N−メチルピロリル、ピリジニル、N−メチルイミダゾリル、オキサゾリル、ピリミジニル、キノリル、イソキノリル、N−メチルカルバゾイル、アミノクマリニル、又はフェナジニルであり、そして
Spが3価の基である場合は、Spは更に、低級(C−C)ジアルキルアミノ、低級(C−C)アルコキシ、ヒドロキシ、又は低級(C−C)アルキルチオ基で置換されていてもよく;そして
Zは、−NHC(=O)−、−CH=NNHC(=O)−、−CHNHNHC(=O)−、−CH=NNHC(=O)NH−、−CHNHNHC(=O)NH−、−CH=
NNHC(=S)NH−、−CHNHNHC(=S)NH−、−CH=H−、−CHNH−、−OC(=O)−、−SS−、
【0019】
【化2】

【0020】
である]
を有する。
【0021】
また、Xは式
(CO−Alk−Sp−Ar−Sp−Alk−C(Z)=Q−Sp)
[式中、
Alk及びAlkは独立して、1個の結合又は分枝もしくは非分枝(C−C10)アルキレン鎖であり;
Spは1個の結合、−S−、−O−、−CONH−、−NHCO−、−NR’−、−N(CHCHN−、又は−X−Ar’−Y−(CH−Z−であり、ここで、
X、Y及びZは独立して、1個の結合、−NR’−、−S−、又は−O−である、ただし、
n=0の時は、Y及びZの少なくとも一方は1個の結合でなければならず、そして
Ar’は、場合によっては、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR’、−CONHR’、−O(CHCOOR’、−S(CHCOOR’、−O(CHCONHR’、又は−S(CHCONHR’の基のうちの1、2又は3個の基で置換されている、1,2−、1,3−、又は1,4−フェニレンである、ただし、
Alkが1個の結合である時は、Spが1個の結合であり;
nは0から5の整数であり;
R’は、場合によっては−OH、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、(C−C)ジアルキルアミノ、又は(C−C)トリアルキルアンモニウム−A(ここで、Aは、塩を完成させている、製薬学的に許容できる陰イオンである)のうちの1又は2種の基により置換されている、分枝もしくは非分枝(C−C)鎖である;
Arは、場合によっては、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR’、−CONHR’、−O(CHCOOR’、−S(CHCOOR’、−O(CHCONHR’又は−S(CHCOHR’
(ここで、n及びR’は前記で定義されたものである)のうちの1、2又は3個の基で置換されている、1,2−、1,3−又は1,4−フェニレンであるか、あるいは、1,2
−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、1,8−、2,3−、2,6−、又は2,7−ナフチリデン、あるいは、
【0022】
【化3】

【0023】
場合によっては、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR’、−CONHR’、−O(CHCOOR’、−S(CHCOOR’、又は−S(CHCONHR’(ここで、n及びR’は前記に定義されているものである)のうちの1、2、3又は4個の基で置換されている、各ナフチリデン又はフェノチアジンである、ただし、
Arがフェノチアジンである場合は、Spは窒素にのみ結合されている1個の結合である;
Spは1個の結合、−S−、又は−O−である、ただし、Alkが1個の結合である時は、Spが1個の結合である;
はH、(C−C)アルキル、あるいは、場合によっては、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR’、−CONHR’、−O(CHCOOR’、−S(CHCOOR’、−O(CHCONHR’、又は−S(CHCONHR’(ここで、n及びR’は前記に定義されたものである)のうちの1、2又は3個の基で置換されているフェニルであり;
Spは直鎖もしくは分枝鎖の2価もしくは3価(C−C18)基、2価もしくは3価アリールもしくはヘテロアリール基、2価もしくは3価(C−C18)シクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル基、2価もしくは3価アリール−もしくはヘテロアリール−アリール(C−C18)基、2価又は3価シクロアルキル−もしくはヘテロシクロアルキル−アルキル(C−C18)基、又は2価もしくは3価(C−C18)不飽和アルキル基であり、ここで、
ヘテロアリールは好ましくはフリル、チエニル、N−メチルピロリル、ピリジニル、N−メチルイミダゾリル、オキサゾリル、ピリミジニル、キノリル、イソキノリル、N−メチルカルバゾイル、アミノクマリニル、又はフェナジニルであり、そしてそこで、
Spが3価の基である場合には、Spは更に、低級(C−C)ジアルキルアミノ、低級(C−C)アルコキシ、ヒドロキシ又は低級(C−C)アルキルチオ基で置換することができる;そして
Qは、=NHNCO−、=NHNCS−、=NHNCONH−、=NHNCSNH−、又は=NHO−である]
を有する。
【0024】
好ましくは、
Alkが分枝もしくは非分枝(C−C10)アルキレン鎖であり;
Spが、1個の結合、−S−、−O−、−CONH−、−NHCO−、又は−NR’であり(ここで、R’は前記に定義されたものである)、ただし、
Alkが1個の結合である場合は、Spは1個の結合である;
Arが,場合によっては、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR’、−CONHR’、−O(CHCOOR’、−S(CHCOOR’、−O(CHCONHR’、
又は−S(CHCONHR’(ここで、n及びR’は前記に定義されたものである)のうちの1、2、又は3個の基で置換されている、1,2−、1,3−、又は1,4−フェニレンであるか、あるいは、
Arが、それぞれ場合によっては、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR’、−CONHR’、−O(CHCOOR’、−S(CHCOOR’、−O(CHCONHR’、又は−S(CHCONHR’からの1、2、3、又は4個の基で置換されている、1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、1,8−、2,3−、2,6−、又は2,7−ナフチリデンである。
【0025】
が(C−C)アルキル、あるいは、場合によっては、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR’、−CONHR’、−O(CHCOOR’、−S(CHCOOR’、−O(CHCONHR’、又は−S(CHCONHR’のうちの1、2、又は3個の基で置換されているフェニルであり;
Alk及びSpが共に1個の結合であり;そして
Sp及びQが直前に定義されたものである。
【0026】
カリキアミシン誘導体は例えば、抗体のリジン残基に結合できる。米国特許第5,053,394号明細書に公表されたようなリジンへの結合は、通常の生理学的条件下における加水分解に対して安定な複合体を生成する。
【0027】
米国特許第5,053,394号明細書はまた、穏やかな酸性条件下で、ヒドラジドのような求核性カリキアミシン誘導体が、抗体上の、過ヨウ素酸塩により酸化された炭水化物と反応する複合体につき公表している。この方法は、シッフ塩基又は、ヒドラゾンのようなその誘導体を生成し、それは更に、所望の場合は、例えばシアノボロヒドリド(cyanoborohidride)により還元されて、加水分解に安定な複合体を生成することができる。
【0028】
欧州特許出願公開第0689845号明細書は、カリキアミシンから調製された、求核性誘導体、特にヒドラジド及び関連求核物質とともに使用することができるその他のリンカーにつき公表している。これらのリンカーは、薬剤とリンカーの間に形成された結合が加水分解できる場合に、よりよい活性がえられる場合(例えば、P67.6)に有用である。これらのリンカーは2種の官能基を含有する。1個の基は具体的にキャリアーと反応するために使用されるカルボン酸である。酸官能基は、適宜に活性化されると、例えば、モノクローナル抗体キャリアーのリジンの側鎖のアミンのような、キャリアーの遊離アミン基とアミド結合を形成することができる。他方の官能基は一般にカルボニル基、すなわちアルデヒド又はケトンであり、それらは適宜に誘導された治療剤と反応するであろう。カルボニル基は薬剤上のヒドラジド基と反応してヒドラゾン結合を形成することができる。この結合は標的細胞において加水分解可能で、複合体から治療剤を放出することができる。
【0029】
本発明における使用のために最も好ましい二官能性結合剤は4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)で、それは、その複合体が、3−メルカプト−3−メチルブタン酸のヒドラジド、結合剤の4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)、及びヒト又はヒト化モノクローナル抗体標的キャリアーとともに反応させることにより官能化されるガンマ・カリキアミシン又はN−アセチル・ガンマ・カリキアミシンからなる、好ましい生成物をもたらす。
【0030】
<モノマー性複合体化>
カリキアミシンの元来の疎水性が、臨床的適用のために必要な、良好な薬剤担持量と妥
当な収率を有するモノマー性複合体の調製を困難にさせている。欧州特許出願公開第0689845号明細書に公表された、AcButリンカーのようなリンカーによりもたらされる結合の、増加した疎水性、並びに、治療剤をモノクローナル抗体(MoAb)から分離している増加した共有結合の距離が、この問題を悪化させている。
【0031】
より大量の薬剤担持量によるカリキアミシン/キャリアー複合体の凝集は、カリキアミシンの疎水性により起こる。妥当な量のモノマー性生成物を得るためにはしばしば、薬剤担持量を制限しなければならない。欧州特許出願公開第0689845号明細書の複合体におけるような幾つかの例では、しばしば、過剰な凝集により、米国特許第5,053,394号明細書に公表された反応条件を使用する、治療的適用に対して有効な配合量により、有効な収率で複合体を生成することは不可能である。これらの反応条件は、複合体化反応中に補助溶媒としてDMFを使用した。従って、凝集及び物質の固有の喪失をもたらさずに、より高い薬剤担持量/収率を可能にする方法が必要となる。
【0032】
それらに限定はしないが、例えば本明細書で開示される、P67.6及びその他のヒト化モノクローナル抗体のような、本明細書中で細胞毒性治療薬を標的指向性とするために使用される、ヒト又はヒト化モノクローナル抗体のような蛋白を含む、ヒト化キャリアーに対して、(i) 補助溶媒としてプロピレングリコール(PG)及び(ii) 少なくとも1種類のC−C18カルボン酸を含んでなる添加剤を含有する、非求核性で、蛋白と相容性の緩衝溶液の使用が、優れた活性をもち、より高い薬剤担持量/収率及び少い凝集を伴う、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成することが見いだされた。好ましい酸は、CからC12の酸であり、そして最も好ましい酸はオクタン(カプリル)酸(CA)である。抗体の酸化された炭水化物から調製された複合体のための好ましい緩衝溶液は酢酸ナトリウムであるが、OSuエステル又はその他の比較的活性化されたエステルから調製された複合体に好ましい緩衝溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はN−2−ヒドロキシエチル・ピペラジン−N’−2−エタン・スルホン酸(ヘペスバッファー)である。これらの複合化反応に使用された緩衝溶液は遊離アミン又は求核物質を含有することはできない。その他の種類の複合体のための許容できる緩衝液は、当業者により容易に決定することができる。代替的に、添加剤を含まず、t−ブタノール含有の、非求核性で、蛋白と相容性の緩衝溶液もまた、より高い薬剤配合量/収率と、少い凝集を伴うモノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成することが見いだされた。
【0033】
使用される補助溶媒の量は、モノマー性複合体化の有効量であり、予定外の実験なしで通常の技術をもつ当業者により決定することができる。添加剤の量はモノマー性複合体化を増強する有効量である。この量もまた予定外の実験なしで通常の当該技術の一種により決定されることができる。総溶液の約10容量%から約60容量%、好ましくは約10容量%から約40容量%の範囲の量の、そして最も好ましくは約30容量%のプロピレングリコール(PG)、並びに、約20mMから約100mM、好ましくは約40mMから約90mMの範囲の、そして最も好ましくは約60mMからの量の、少なくとも1種類のC−C18カルボン酸、好ましくはカプリル酸を含んでなる添加剤、の添加物質が、複合体化反応に添加されて、より高い薬剤担持量/収率と少い凝集を伴うモノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成させる。PG補助溶媒のいくらか又はすべては、複合体化混合物中に薬剤を移行させるために使用される。薬剤の移行のために使用された補助溶媒が複合体化混合物の総容量の10%以下である時は、それは場合によってはエタノール又はDMSOにより置き換えることができる。
【0034】
代替的に、C−C18カルボン酸、好ましくはカプリル酸の濃度は150−300mMに増加させることができ、そして補助溶媒は1〜10%のプロピレングリコール、エタノール、又はDMSO、そして好ましくは200mMのカプリル酸及び5%のプロピレン
グリコール又はエタノールに減少させた。
【0035】
もう1つの代替法において、総溶液の約10容量%から約25容量%の範囲の、好ましくは約15容量%の濃度のt−ブタノールを複合化反応に添加して、より高い薬剤担持量/収率と少い凝集を伴う、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成することができる。
【0036】
前記の反応において、MoAbの濃度は約1から15mg/mlの範囲にあり、そして薬剤、例えば、AcButカリキアミシンの濃度は約0.025から約1mg/mlの範囲にある。反応は、PBS又は酢酸塩緩衝液中で、生成される複合体の種類に応じて、約4.0から約8.5のpHで、大体室温(25℃)から約37℃の範囲の温度で、約15分から約24時間の範囲で実施される。複合体を回収し、そして通常の方法、例えば、HPLC、FPLC又はSEPHACRYL S−200TMにより精製する。精製した複合体はモノマー性であって、約2から約6モル/薬剤1モル/MoAbを含有する。
【0037】
補助溶媒及び/又は添加剤の添加は、緩衝溶液のpHを変化させる可能性があるので、約4.0から8.5の好ましいpH範囲に、溶液のpHを調整する必要があるかもしれない。好ましくは、補助溶媒及び添加剤を含有する緩衝溶液のpHは、OSuエステルから調製された複合体に対しては約7.0から8.5であり、あるいは抗体の酸化された炭水化物から調製された複合体に対しては約4.0から6.5であるだろう。最も好ましくは、補助溶媒及び添加剤を含有する緩衝溶液のpHは、OSuエステルから調製された複合体に対しては約7.7であり、あるいは、抗体の酸化された炭水化物から調製された複合体に対しては約5.5であるだろう。その他の種類の複合体に対して許容できるpH範囲は、当業者により容易に決定され得る。
【0038】
種々のネズミのモノクローナル抗体に対して、前記の添加剤のその他の組み合わせ物の使用が、薬剤担持量及びモノマー性複合体収率を改善することが認められ、そして、最適な結果を達成するためには、ある特定の蛋白質性キャリアーは、正確な条件又は添加剤の選択において、ある僅かな変更を必要とするかもしれないことは理解される。
【0039】
<好ましい態様の説明>
本発明は、その範囲を限定することなしに、本発明を更に説明することを目的とする、特別な実施例において下記に更に具体的に説明される。
【0040】
<実施例1> DMF中における複合体化:DMF濃度、薬剤/蛋白比及び使用された緩衝液の変更
第1組の実験は、ネズミ及びヒトP67.6両者に対して、DMF濃度、薬剤/蛋白比、及び緩衝液を変化させて、3−メルカプト−3−メチルブタン酸のヒドラジドと反応させることにより官能化され、結合剤4−(4−アセチルフェノキシ)ブタン酸に結合され、そしてOSuエステルとして活性化された(ここではAcButカリキアミシンと称される)、N−アセチル・ガンマ・カリキアミシンを用いて実施された。結果は、これらの「標準」条件により、1.5−3モル薬剤/蛋白1モルの薬剤担持量をもち、凝集物としての物質の喪失により、20〜30%の収率でモノマー性複合体が生成されたので、従って、代替条件が必要であることを示した。
【0041】
PBS緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、100mMNaCl、pH7.4)中、4.5〜5mg/mL蛋白の蛋白溶液に、更にDMFを加えて最終濃度25%にしたDMF中の6モル等量の薬剤を添加した(3.3mg/mL)。これを穏やかに震盪しながら一夜室温でインキュベーションした。次いで複合化蛋白を、<0.5mLの容量に対してはFPLC SuperoseTMにより、そしてより大きい容量にはSEPHACRYL
S−200TMのどちらかにより精製した。
【0042】
mP67.6(大規模)に対しては、これは、1.9M/Mの薬剤担持量で、32%のみの蛋白収率をもたらした。hP67.6に対しては、2.9M/Mの薬剤担持量で、モノマー性蛋白収率は26%であった。従って、モノマーに対する薬剤担持量は許容できるが、困難な精製及び凝集物としての物質の喪失による低い収率が、更なる開発及び大規模化に対して許容できないものと考えられた。
【0043】
pH7.4のPBS中のhP67.6及び種々の等量(5〜9.5M/M)の薬剤を使用して、30%DMF中の薬剤担持量対、モノマー収率の比較研究が実施された。すべてのサンプルを室温で一夜インキュベーションし、PD10カラム上でPBS中に交換し、そして蛋白回収率及び薬剤担持量を分光分析計により分析した。サンプルは更に0.2Mのリン酸ナトリウム、pH7中でZorbaxTM GF−250上でそしてPBS、pH7.4中でSuperoseTM 12上でHPLCにより分析した。次に、PBS中でFPLC SueroseTM上で精製した。結果:得ることができた最大担持量は、低収率(<20%)で、3〜3.5M/Mであった。
【0044】
前記と同様な担持研究を実施したが、PBS緩衝液の代わりにヘペス緩衝液(100mM、pH7)を使用した。結果:凝集物が沈澱又はカラムに付着したように見え、従って最終精製時には見えなかったことを除いて相異はなかった。次いで前記のような担持研究を、しかし緩衝液に0.5MのNaClO4を使用して実施した。これは薬剤に対する可能な可溶化剤として使用させるために実施した。結果:著明な効果なし。
【0045】
次いで追加的研究を、PBSの代わりにヘペス緩衝液(50mM、pH7.4)中で実施した。結果:著明な効果なし。
【0046】
<実施例2> ヒト化抗体の最適化
凝集物の分離実験
この時点では、初期の方法の改善は見いだされなかった。凝集物の量の減少をもたらした条件が、薬剤担持量の増加及び/又は精製モノマーのより高い収率を可能にするかどうかの可能性を研究した。すべての徴候が、凝集した複合体は会合性で、共有性でなくそして恐らく、疎水性相互作用により誘起されていたので、それらの性状を検討することが情報を与えるものと仮定した。従って最初に、前以て形成された凝集物を分解することができる添加剤を発見するために実験を実施した。このような活性をもつどれかの物質はまた、複合体化過程中に使用されると凝集を抑制する(そしてそれによりモノマーの収率を増加させる)役に立つであろうと推定された。使用された試薬は、それらの、薬剤添加剤としてFDA承認の安全性、疎水性部分を可溶化させるためのそれらの可能な作用、及び/又はそれらの、蛋白との相容性(または適合性)、を基礎にして選択した。これらの研究により3種の潜在的に有用な添加剤を同定させた。
【0047】
12組の異なった添加剤を凝集物分解に使用した。〜25%のダイマーを含有するhP67.6−AcButカリキアミシン複合体精製物からの凝集物分画を0.7mg/mL蛋白に濃縮した。種々の添加剤:PBS、0.3Mグリシン、0.2Mグリシン+2%マルトース、0.1Mグリシン+0.1Mヒスチジン、1%プルロニックF−68、80mMカプリル酸(オクタン酸)、40mMカプリル酸+6mMのN−アセチル−トリプトファン、1%ベンジルアルコール、0.5%安息香酸ナトリウム、33%プロピレングリコール、及び25%グリセロール、をダイマーの豊富なhP67.6−AcButのアリコートに添加した。処理された各々のアリコートを一夜、室温でインキュベーションさせ、次いで280及び333nmにおける二重検出機を使用してZorbaxTM GF−250及びSuperoseTM 12におけるゲル濾過HPLCにより分析した。分析は凝集物(又はダイマー)対モノマー比及びモノマーの総回収率の両者につき実施した。結果:プロピレングリコール(PG)、カプリル酸(CA)及びグリセロールは、蛋白の収率を減少させずにダイマーを減少させる点においてその他の添加剤よりも有効であった。それらは凝集物を50〜90%減少させたが、その他の添加剤は殆ど効果がなかった。
【0048】
<実施例3> 離解添加剤を使用する複合体化
これらの結果に基づいて、PG、CA及びグリセロールを複合体化過程に使用した。更に、イソプロパノール及びt−ブタノールを同様に試験した。イソプロパノール及びt−ブタノールは、無害で、蛋白との低い割合での補助溶媒として使用された(個人的な見解)。
【0049】
AcBut−カリキアミシンに対するhP67.6の複合体化は、25%PG、80mMのCA、25%グリセロール、25%イソプロパノール(IPA)、25%t−ブタノール、又は25%PG+80mMのCAの存在下で実施した。すべては、PBS、pH7.4中3.25mg/mL蛋白(最終の)及び、MoAb1モル当たり6モルの薬剤を使用して実施した。すべては25%DMF中で実施された対照の複合体化に比較したが、一方すべてのテスト溶液は薬剤ストックからの〜5%DMFを含有していた。複合体化はまた、対照として25%PG又は25%DMF中の薬剤4M/Mを使用して実施された。すべてのサンプルは一夜、室温でインキュベーションされ、PD10カラム上でPBS中に交換させ、そして、蛋白回収率及び薬剤担持量について分光分析法により分析した。サンプルは更に、ZorbaxTM及びSuperoseTM上でHPLCにより分析した。複合体化反応後、複合体をFPLC SuperoseTMにより精製した。結果:これらすべての添加剤は、グリセロール(低い担持量)を除いて有効のように見えた。PG+CAは、複合体収率、薬剤担持量及び凝集物の最小化に関して最も有効に見えた。
従って次に、CAの、その他の添加剤への組み合わせ、PG濃度の最適化、及びt−BuOHとの直接的比較を研究する一連の研究を実施した。
【0050】
PGに添加したCAは、前記のように、蛋白の回収率、薬剤担持量を改善しそして凝集を最小にするように見えたので、CAがその他の添加剤と相乗作用をもつかどうか調べるために、それぞれCA(80mM)を含んで又は含まずに、PG、t−BuOH、又はIPA(それぞれ25%で)を使用して、hP67.6上で複合体化を実施した。条件及び分析法は前記と同様であった。結果:t−BuOH及びCAはこれらの濃度で不相容性であったが、IPAは、収率を改善しそして凝集物を減少させる点においてPGほど有効でなかった。
【0051】
PGを10、15、又は20%で使用しそしてCAを40又は80mM使用して、PG+CA条件を最適化するために複合体化を実施した。分析法は前記と同様であった。結果:20%PG及び80mMCAが、>60%の回収率を伴って3〜3.8の配合量をもたらすことにより、最善の効果を持つように見えた。結論:t−BuOHはPG/CAの代替物として有効であったのでそのため、この観察を確認し、そしてt−BuOHの使用に対する条件を最適化させるために、更に実験を実施した。
【0052】
5〜20%のt−BuOH及び6〜10等量の薬剤を使用してPBS中のhP67.6
で複合体化を実施した。結果:10%t−BuOHは6等量の薬剤で十分に、粗製生成物中に殆ど凝集物を生成せずに、2.3M/Mの配合量を伴う複合体を生成したように見えた。PBSの代替物としてのヘペス(Hepes)緩衝液は効果を示さない。
【0053】
15%のt−BuOHに対して、20%のプロピレングリコール(PG)及び80mMのカプリル酸(CA)を比較することにより複合体化を実施した。それぞれ、PBS中のhP67.6を1モルに対して6、9、及び12モルの薬剤を使用してテストした。結果:PG+CAの組み合わせ物はより高い担持量の生成に対する蛋白回収率に関して、より有効であるように見えたが、両者の方法とも、より低い担持量に対しては大体同等であった。
【0054】
この時点で、80mMCAとの20%PGの使用は15%t−BuOHよりも幾らかより有効な添加剤であったが、しかし両者とも元来の条件よりもかなり改善していた。しかし、t−BuOHはPBS中の蛋白のpHに対して効果を与えなかったが、PGは7.4から〜6.9までpHを低下させた。これは、t−BuOH反応が1〜3時間で終結するがPG/CA反応は一夜を要したという観察に関連していた。
【0055】
<実施例4> pH変動に伴うPG/CAにおける複合体化
pHを7.4に調整して、そして調整しないで、30%PG/80mMCAを使用して、一連の複合体化を実施した。更に、DMFの不在下で、25%対30%のt−BuOHを使用して複合体化を実施した。結果:pH調整は薬剤のより良い取り込みをもたらした。
【0056】
pHを7.4に再調整しての、PG+CA中における複合化は、高担持量をもつ複合体を生成するためにはt−BuOHにおける複合体化におけるよりもかなり良い収率をもたらした。〜2M/Mの配合量については、2種の方法は、同様な収率をもたらしたが、複合体化過程の間に、薬剤/蛋白比を増加させることにより、配合量を増加させるに従って、t−BuOHを使用する収率が、PG/CAで得られた収率の25%のように低くまで、有意に減少した(例えば、5M/Mの配合量)。
【0057】
<実施例5> 大規模調製
大規模調製(実験的規模で使用された1サンプル当たり0.5〜1mgよりもむしろ20〜40mgの蛋白を使用して)を実施した。目的は、大規模化の過程での新規の条件の適用性を決定し、そしてまた、ある範囲の薬剤担持量をもつ複合体を生成することであった。これらの複合体は、その添加剤が有効な複合体の生成を可能にすること及び、より担持量の多い複合体が、担持量のより低いものより、より有効であることを確認するために、異種移植腫瘍に対してインビボでテストした。
【0058】
hP67.6−AcButの大規模調製物は、4モル等量のみの薬剤及び20%PG/80mMCA、pH7.5に調整された5%DMFを使用して実施した(蛋白質30mgを使用した)。これらの条件下で、元来の調製におけるよりもずっと少ない凝集物が生成された。最終精製モノマーは67%の蛋白収率を伴って1.9M/Mの薬剤を含有していた。
【0059】
より高い薬剤担持量を得るために、複合体化のために、6等量の代わりに9等量の薬剤を使用して同様な条件を使用した。これはごく僅かに多い凝集をもたらしたが、3.2M/Mの薬剤配合量及び、〜60%へのごく僅かに低い蛋白収率を伴う、モノマー性複合体
を生成した。
【0060】
元来の結果よりは著しく改善されたが、大規模(30mgの蛋白)調製はやはり、小規模研究を基にして期待されたよりも30〜40%低い配合量をもたらした。大規模研究で使用された僅かに増加したDMFがこの問題を惹起させたと疑われた。従って、このことを確認するためにDMFの種々の濃度にわたって、多数の小規模研究を実施した。
【0061】
<実施例6> 複合体化過程時の少量のDMFの影響
DMF濃度を1%から7%に変化させながら、4M/M薬剤を含む10%t−BuOH中で複合体化を実施した。ここで、薬剤ストックは複合体化中、低いDMF濃度を可能にするように、10mg/mLDMFであった。結果:DMFの量を増加すると、薬剤の取り込みを低下させるように見えた。
【0062】
小規模複合体化を、6.4M/M薬剤及び30%PG/80mMCAを使用して、しかし2%及び8%DMFを伴う25%t−BuOHに対して0及び8%DMFを使用して実施した。薬剤ストックはDMF濃度をより良く調節するためにPG中で製造した。結果:DMFはPG/CA及びt−BuOHの両者において(PG/CAにおける方が強い)凝集を増加させることが見いだされ(従ってモノマー収率を減少させる)そして再度、複合体化に対して、PG/CAがt−BuOHよりもより良い効果を有した。
【0063】
小規模の結果を確認するためにDMFを使用せずに大規模調製を実施した。複合体化を30%PG/80mMCA及び6.1M/M薬剤で開始した。アリコートをテストすると、これらの条件が、小規模実験を基礎にして期待されたように3.2M/Mの配合量をもたらすことを示し、補助溶媒としてのDMFを回避する必要を確認させた。
【0064】
この複合体化を更に3等量の薬剤で実施すると、薬剤配合量4.4M/M及び蛋白収率46%をもつ最終精製モノマーを生成した。
【0065】
このように、3種の大規模調製を終結して、蛋白1モル当たり1.9モル、3.2モル、及び4.4モルの薬剤配合量をもつ複合体を生成した。これらはインビボ及びインビトロで効力を測定された。PG及びCAの組み合わせ物が最も有効な添加剤であったが、DMFはこの反応に有害であった。
【0066】
<実施例7> 最終的最適化
PG及びCAの最適濃度、最適なpH、添加の順序、及び薬剤の溶媒としてのDMFの代替物を発見するために、一連のテストを実施した。
【0067】
小規模複合体化を、30%PG/80mMCA中で、MoAb、PG、CA及び、PG、EtOH、又はDMSO中で調製された薬剤ストック、の添加の順序を変えて実施した。結果:最適な添加順序は、MoAb、次いでPG、次いでCA(pHを調整して)、次いでPG中で調製された薬剤ストックであった。EtOH及びDMSOは両者とも薬剤ストックのためのPG使用に対する許容できる代替物であった。
【0068】
40、55、75、及び80mMCAを使用し、すべて25%PGを伴って複合化実験を実施した。結果:55mMCAが、蛋白収率及び薬剤担持量に関しては最適であることが見いだされた。
【0069】
もう1つの複合体化実験を、40、50、60、及び70mMCAと25%PGで実施
した。結果:60mMCAが、蛋白収率及び薬剤配合量に関して最適であることが見いだされた。
【0070】
25%PG+80mMCA及び0、2、又は4%DMFを使用して複合体化実験を実施した。これは低濃度のDMFが有害であるかどうかを知るためであった。結果:著しい相異はなく、従って4%を越える濃度のみが問題をおこすにちがいない。
【0071】
複合体化過程中の撹拌速度を変化させて複合化を実施した。結果:差異はなかった。
【0072】
PGの代わりにEtOH中に添加した薬剤を添加して複合体化を実施した。結果:PG中への薬剤使用と有意な変化はなかった。
【0073】
PG/CA中及び6M/M薬剤を使用して、しかしpHを7.0から8.5に変化させて一連の複合体化を実施した。反応の進行及び配合の度合を、反応物質及び加水分解生成物(RP−HPLCを使用して)の測定により監視した。結果:すべての実験が、pH7で12時間からpH8.5で<45分間の範囲で、pHをより高くすると、より早い反応を示した。>7.5のpHが最も高い収率及び担持量をもたらすことを示した。
【0074】
PG/CA添加剤を使用する同様な方法を、AcBut−カリキアミシンの、2種のその他のヒト化MoAbs、CT−M−01及びA33への複合化に対して使用した。小規模及び大規模の両者のテストでヒト化P67.6の使用において認められたものと同様な担持量及び収率が、これらのヒト化MoAbsについても同様に得られた。
【0075】
<実施例8>
AcBut−カリキアミシンを、25%プロピレングリコール(PG)及び80%カプリル酸の存在下でヒト化CT−M−01モノクローナル抗体5mgに複合体化させた。反応は室温で(25℃)一夜(約24時間)実施した。生成物をHPLCにより分析した。
結果:1.9M/Mの薬剤担持量で、75%モノマー。
【0076】
<実施例9>
AcBut−カリキアミシンを、30%PG及び60mMCAの存在下でhCT−M−01モノクローナル抗体36.6mgに複合体化させた。反応は約25℃で2時間実施した。生成物をHPLCにより分析した。
結果:2.2M/Mの薬剤担持量で、60%モノマー。
【0077】
<実施例10>
AcBut−カリキアミシンを、30%PG及び60mMCAの存在下でヒト化A33MoAb1mgに複合体化させた。
結果:1.8M/Mの薬剤担持量で、約50%モノマー。hA33はその複合体が凝集する著しい傾向により、取り扱いの困難な蛋白質であることは、過去の経験から示されている。
【0078】
<実施例11>
AcBut−カリキアミシンを、200mMCA及び5%エタノール(薬剤ストックから)の存在下でhP67の50mgに複合体化させた。インキュベーションは25℃で2時間実施した。
結果:2.1M/Mの薬剤担持量及び65%の蛋白収率をもつ〜95%モノマー。
従って、CA濃度が著しく増加されそして補助溶媒が減少された時に、良好な結果が得られる事が見いだされた。
【0079】
<実施例12> ヒト化抗体のための最終的方法
前記のすべての結果を基にすると、AcBut−カリキアミシンへのhP67.6複合体化の開発において使用に推奨される最終的方法は、次のようである:5種類のストック溶液を使用した:PBS(50mMリン酸ナトリウム、100mMNaCl、pH7.4)中〜6.5mg/mLのhP67.6、プロピレングリコール(PG)、1MNaOH、PBS、pH7.4中の1Mカプリル酸(CA)、及びPG中の薬剤(〜6mg/mL)。複合体化過程中の最終的濃度は、:30%PG(PGの5%は薬剤ストックから)、60mMCA、約4mg/mlのp67.6及びhP67.6の1モル当たり薬剤6モル、であった。PGをhP67.6に添加して十分に混合した。CAを添加して十分に混合した。代替的には、CAを200mMの最終的濃度に添加し、そして薬剤(AcBut−カリキアミシン)の添加により、5%PG(又はEtOH)が得られた。〜10mLのNaOH/溶液1mLの添加によりpHを調整して7.7〜7.8のpHを得た。次いで薬剤を添加し、溶液を激しく混合した。溶液を25℃で3時間、震盪しながらインキュベーションし、次いでMillex HVフィルターで濾過して不溶物質を除去した。次いで複合体を、〜1%を越えない充填物を使用してPBS(pH7.4)中でSEPHACRYL S−200TM上でゲル濾過により精製するか、又は<0.5mLの少量の複合に対しては、PBS中のSuperoseTM 12 FPLCを使用した。最終的モノマー性(<4%ダイマー)複合体は>2.5モルの薬剤/蛋白1モル、の薬剤担持量を伴い、>60%の蛋白収率で生成された。
【0080】
この方法は、テストした3種のヒト化MoAbs:2種の異なった異種タイプであるA33、CT−M−01、及びP67.6、(それぞれ、lgG1、lgG4、及びlgG4)において有効であるように見えた。
【0081】
<実施例13> ネズミ抗体に対する条件の最適化
ネズミのMoAbsに適用された時、同様な方法により、補助溶媒としてただDMFのみの使用よりも改善を示したが、概括的には以下の実施例に認められるように、ヒト化抗体を使用したものよりも凝集抑制に有効性は少なかった。結果はまた、各MoAbに対して著しく変動し、これもまた、最善の複合体化方法は、各カリキアミシン/キャリアー複合体により変動するが、しかし、本発明中で提案された、全般的な方法の変更は、唯一の補助溶媒としてDMFにより達成された結果に比して、実験されたすべての例において有意な改善をもたらすことが示された。
【0082】
前記のPG/CA法を使用する複合体化は下記の担持量をもたらした:
MoAb 担持量(M/M)
抗−Tac 0.7
M5/114 1.2
CampathII 1.4
MN−1 1.2
LC−1 1.0
LK−26 1.2
TH−69 1.0
A33 1.1。
【0083】
蛋白収率は軽度で、20から40%の範囲にあった。mA33を8M/Mの薬剤を使用して複合体化させたとき、モノマーに対する最終担持量は1.1〜1.3M/Mのみであった。0.7m/Mの担持量を伴う抗−Tac複合体は、それが最善のバックアップ添加
剤であったので、20%t−BuOHの存在下で再複合体化させた。これは2.0M/Mに担持量を増加させたが、収率は23%のみであった。
【0084】
PG+t−BuOH使用の複合体化:
PG/CA系は、前記のMoAbsにより、ごく穏やかな改善をもたらしたが、t−BuOH/(t−Bu/PG)PGの使用は有望のように見えた。下記の研究は、PG及びt−BuOHを組み合わせて使用した複合化につき記載している。PG/t−BuOH系はこれらのネズミのMoAbsに対してはより適宜であったが、PG/CA系は試験されたヒト化MoAbsに対してより適宜であるという結論に導いた。
【0085】
t−BuOH及びPG濃度を変化させて複合体化を実施した。PGは、AcButカリキアミシン及びt−BuOHの存在下で、多数のネズミMoAbsに対する複合体化溶液の可溶化(透明化)に有効であることが認められた。抗−Tacが、20%t−BuOH、10%PG、及び6M/Mの薬剤中で複合化される場合、最終モノマーは40%の収率で1.3M/Mの薬剤担持量を有した。15%t−BuOH、15%PG、及び6.7M/Mの薬剤中で実施された場合は、生成物は1.4M/Mの薬剤担持量及び50%の収率を示し、前記の実験よりも僅かに改善されたが、PG/CAで得られた0.7M/Mの担持量及び〜20%の収率よりも明らかに有効であった。同様な条件を使用し、しかし蛋白濃度を2.8mg/mL(〜2から)に増加させると最終薬剤担持量は2.2M/Mに増加した。
【0086】
通常は作業が困難な蛋白の、mA33については、1.0M/Mを有意に越える担持量をもたらすことができる条件は発見できなかったが、t−BuOH及びPG(8M/Mの薬剤を使用して)の前記の組み合わせ物は大規模試験でも60%の収率の複合体をもたらした。3種のlgG1ネズミMoAbs(それらは恐らく同様な化学的反応性を有するであろう)のMOPC、M44及びM67は、本質的に同等な条件下で(15%t−BuOH、10〜20%PG、6.7M/Mの薬剤)複合体化させると、すべてが〜1.0の担持量をもつモノマーを、しかし14〜45%の範囲の収率で生成した。MOPCについては、2.8mg/mL(抗−Tacとの)までの蛋白濃度の増加、そして15%t−BuOH、20%P緩衝系中の8M/Mの薬剤の使用が、〜50%の収率で1.7M/Mまで薬剤担持量を増加させた。
【0087】
ネズミ抗体に対する最終的方法
この一連の複合体化に基づいて、これらのネズミMoAbsの複合体化のための推奨される方法は、実験されたヒト化MoAbsに対するものと実質的に異なる。更に、得られた最適の蛋白収率及び薬剤担持量は、実験された異なるネズミのMoAbs間で著しく変動し、ある具体的な蛋白質性キャリアーに対する最良の条件を見いだすためには、条件の、ある種の最適化が必要であろうことを示した。
【0088】
PBS、pH7.4を緩衝液として使用したが、MoAbストックは4から5.5mg/mLであった。t−BuOHを更なる補助溶媒として使用したが、CAは使用しなかった。薬剤ストック(8〜10mg/mL)はDMSO又はDMF中で生成した。最終反応条件は15%t−BuOH、〜20%プロピレングリコール(溶液を透明化させるためにはもっと多く)、2〜4%DMSO(薬剤ストックから)、及び6〜8モル薬剤/蛋白1モルであった。複合化は3から20時間、震盪しながら25℃でインキュベーションすることにより実施した。精製はヒト化複合体に対する前記のように実施した。最終蛋白収率は25%から60%の範囲にあり、そして薬剤担持量は、個々のMoAbにより、MoAbの1モル当たり薬剤1から2.2モルの範囲にあった。
【0089】
<実施例14> 炭水化物複合体に対するtBuOHの影響
MOPC−21を45分間、周囲温度で15mMのNaIO4を含む、pH5.5の酢酸緩衝液中で酸化させた。次いで、消費された酸化試薬を除去するために、緩衝液を新鮮な酢酸緩衝液と交換した。この酸化抗体の一分画を、15%DMFの存在下で、N−アセチル・ガンマ−カリキアミシンの、3−メルカプロ−3−メチルブタン酸(GAD)との反応によりもたらされる、ジスルフィドとともに処理した。第2の分画を、5%DMF及び15%tBuOHの存在下で、同濃度のGADで処理した。両反応とも周囲温度で17時間進行させた。次いで各反応は、pH7.4のPBSで緩衝液を交換された。tBuOHによる複合体化反応における凝集物の量は、DMFのみによる反応におけるものより少なかった(7.3%に対して4.1%)。ゲル除去クロマトグラフィーによる精製後、DMFのみによる反応からの複合体は、3%の残渣凝集物を伴う、3.2M/Mの担持量を示したが、tBuOHの存在下で生成された複合体は、認められる残渣の凝集物はなく、5.1M/Mの担持量を示した。
【0090】
<実施例15> 加水分解不可能な複合体の形成に対するPG/CAの効果
h−CT−M−01を、ヘペス(Hepes)緩衝液中の15%DMFの存在下での、N−アセチルガンマ−カリキアミシンの、4−メルカプト−4−メチルペンタン酸との反応により生成されるジスルフィドのOSuエステルで処理した。第2の複合体化はDMFの代わりに30%PG及び80mMのCAを使用して実施した。両者の反応とも周囲温度で2時間進行させた。次いで各反応はpH7.4のPBSと緩衝液を交換された。凝集物の量(〜2%)及び担持量(PG+CA4.12M/Mに対してDMF3.95M/M)は両者の反応に対しほぼ同等であったが、算定された収率はPG+CA存在下において進行した反応に対して、より高かった(50%に対し60%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

Pr(−X−S−S−W)m
[式中、Prは蛋白質性キャリアーであり、
Xは、式Z−Spで表されるリンカーであって、ここで、Spは直鎖もしくは分枝鎖の2価の(C−C18)基であり、かつ、Spは更に、場合によっては低級(C−C)ジアルキルアミノ、低級(C−C)アルコキシ又はヒドロキシで置換されていてもよく、そしてZは−NHC(=O)−又は−CH=NNHC(=O)−であり、Wは、天然のカリキアミシンに存在するからメチルトリスルフィド基の除去により形成されるカリキアミシン残基であり、そしてmは0.5から15の数である]
で表される、より高い薬剤配合量/収率及び減少された凝集を伴う、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体の製造方法であって、
(1) 約4.0から8.5の範囲内のpHをもつ、非求核性の、蛋白と適合性の緩衝溶液中で、カリキアミシン誘導体(X−S−S−W)及び蛋白質性キャリアー(Pr)をインキュベーションさせること、
ただし、前記溶液は更に、
(a) プロピレングリコール、エタノール、DMSO、及びそれらの組み合わせ物からなる群から選ばれる1種類の補助溶媒、並びに
(b) 少なくとも1種類のC−C12カルボン酸を含んでなる添加剤、を更に含んでなり、
ここで、前記インキュベーションは、約25℃から約37℃の範囲の温度で、約15分間から約24時間の範囲の期間で実施されて、カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成する段階;並びに
(2) 段階(1)で生成されたカリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を精製してモノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成する段階、
を含んでなる方法。
【請求項2】

Pr(−X−S−S−W)m
[式中、Prは蛋白質性キャリアーであり、
Xは式
(CO−Alk−Sp−Ar−Sp−Alk−C(Z)=Q−Sp)
で表され、ここで、Alkは1個の結合であり、Alkは分枝もしくは非分枝(C−C10)アルキレン鎖であり、
Spは、1個の結合又は−O−であり、Arは、場合によっては、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR′若しくは−CONHR′の1、2、若しくは3個の基で置換されていてもよい、1,2−、1,3−、若しくは1,4−フェニレン、又は場合によっては、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR′若しくは−CONHRの1、2、3、若しくは4個の基で置換されていてもよい、1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、1,8−、2,3−、2,6−、若しくは2,7−ナフチリデンであり、ここで、R’は場合によっては、−OH,(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、(C−C)ジアルキルアミノ若しくは(C−C)トリアルキルアンモニウム−Aの1つ若しくは2つの基で置換されていてもよい分枝若しくは非分枝の(C−C)鎖であり、かつ、Aは塩を完成させる製薬学的に許容できる陰イオンであり、
Spは1個の結合であり、
は、H若しくは(C−C)アルキルであり、
Spは、直鎖もしくは分枝鎖の2価の(C−C18)基であり、かつ、Spは更に、低
級(C−C)ジアルキルアミノ、低級(C−C)アルコキシ、若しくはヒドロキシで置換されていてもよく;そして
Qは=NHNCO−、=NHNCS−、=NHNCONH−、=NHNCSNH−、又は=NHO−であり、
Wは、天然のカリキアミシンに存在するメチルトリスルフィド基の除去により形成されるカリキアミシン残基であり;そして
mは0.5から15の数である]
で表される、より高い薬剤配合量/収率及び減少された凝集を伴う、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体の製造方法であって、
(1) 約4.0から8.5の範囲内のpHをもつ、非求核性の、蛋白と適合性の緩衝溶液中で、カリキアミシン誘導体(X−S−S−W)及び蛋白質性キャリアー(Pr)をインキュベーションさせること、
ただし、前記溶液は更に、
(a) プロピレングリコール、エタノール、DMSO、及びそれらの組み合わせ物からなる群から選ばれる1種類の補助溶媒、並びに
(b) 少なくとも1種類のC−C12カルボン酸を含んでなる添加剤、
を更に含んでなり、
ここで、前記インキュベーションは、約25℃から約37℃の範囲の温度で、約15分間から約24時間の範囲の期間で実施されて、カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成する段階;並びに
(2) 段階(1)で生成されたカリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を精製してモノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成する段階、
を含んでなる方法。
【請求項3】
Spが−O−であり、AlkがCアルキレンであり、Arが1,4−フェニレンであり、そしてZがCアルキルである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
Qが=NHNCO−であり、そしてSpが−CHC(CH−である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
Zが−NHC(=O)−であり、そしてSpが−CHCHC(CH−である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
Zが−CH=NNHC(=O)−であり、そしてSpが−CHC(CH−である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
カリキアミシン誘導体がガンマ・カリキアミシン又はN−アセチルガンマ・カリキアミシン誘導体を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
カリキアミシン誘導体が約0.025mg/mlから約1.0mg/mlの範囲の量で段階(1)中に存在する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
蛋白質性キャリアーがヒト化モノクローナル抗体を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ヒト化モノクローナル抗体が段階(1)において、約1mg/mlから約15mg/mlの範囲の量で存在する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
段階(1)の添加剤が20から300mMの範囲の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
補助溶媒が、溶液の約10容量%から60容量%の範囲の量のプロピレングリコールを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
段階(1)の添加剤が、約20mMから約100mMの範囲の量のオクタン酸を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
段階(1)の補助溶媒が、溶液の30容量%の量のプロピレングリコールであり、そして段階(1)の添加剤が60mMのオクタン酸を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
補助溶媒が、溶液の約1容量%から約10容量%の範囲の量で段階(1)中に存在し、そして段階(1)の添加剤が約150mMから約300mMの範囲の量のオクタン酸を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項16】
補助溶媒がエタノールである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
エタノールが、溶液の5容量%の量で段階(1)中に存在しそして添加剤のオクタン酸が段階(1)において200mMの量で存在する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
段階(1)の補助溶媒が溶液の5容量%の量のプロピレングリコールであり、そして添加剤のオクタン酸が200mMの量で段階(1)中に存在する、請求項15記載の方法。
【請求項19】

Pr(−X−S−S−W)m
[式中、Prは蛋白質性キャリアーであり、Xは、式Z−Spで表されるリンカーであって、ここで、Spは直鎖もしくは分枝鎖の2価の(C−C18)基であり、かつ、Spは更に、場合によっては低級(C−C)ジアルキルアミノ、低級(C−C)アルコキシ又はヒドロキシで置換されていてもよく、そしてZは−NHC(=O)−又は−CH=NNHC(=O)−であり、Wは、天然のカリキアミシンに存在するメチルトリスルフィド基の除去により形成されるカリキアミシン残基であり;そしてmは0.5から15の数である]
を有する、より高い薬剤配合量/収率及び減少した凝集を伴う、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体の製造方法であって、
(1) 約4.0から8.5の範囲内のpHをもつ、非求核性の、蛋白と適合性の緩衝溶液であって、更に、補助溶媒のt−ブタノールを含んでなる溶液中でカリキアミシン誘導体(X−S−S−W)及び蛋白質性キャリアーを約25℃から約37℃の温度範囲で、約15分間から約24時間の期間インキュベーションしてカリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成する段階;並びに
(2) 段階(1)で生成されたカリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を精製して、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成する段階、
を含んでなる方法。
【請求項20】

Pr(−X−S−S−W)m
[式中、Prは蛋白質性キャリアーであり、Xは式
(CO−Alk−Sp−Ar−Sp−Alk−C(Z)=Q−Sp)
で表され、ここで、Alkは1個の結合であり、Alkは分枝もしくは非分枝(C−C10)アルキレン鎖であり、Spは、1個の結合又は−O−であり、Arは、場合によっては、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR′若しくは−CONHR′の1、2、若しくは3個の基で置換されていてもよい、1,2−、1,3−、若しくは1,4−フェニレン、又は場合によっては、(C
)アルキル、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、−COOR′若しくは−CONHRの1、2、3、若しくは4個の基で置換されていてもよい、1,2−、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、1,8−、2,3−、2,6−、若しくは2,7−ナフチリデンであり、ここで、R’は場合によっては、−OH,(C−C)アルコキシ、(C−C)チオアルコキシ、ハロゲン、(C−C)ジアルキルアミノ若しくは(C−C)トリアルキルアンモニウム−Aの1つ若しくは2つの基で置換されていてもよい分枝若しくは非分枝の(C−C)鎖であり、かつ、Aは塩を完成させる製薬学的に許容できる陰イオンであり、Spは1個の結合であり、Zは、H若しくは(C−C)アルキルであり、Spは、直鎖もしくは分枝鎖の2価の(C−C18)基であり、かつ、Spは更に、低級(C−C)ジアルキルアミノ、低級(C−C)アルコキシ、若しくはヒドロキシで置換されていてもよく、そしてQは=NHNCO−、=NHNCS−、=NHNCONH−、=NHNCSNH−、又は=NHO−であり、
Wは、天然のカリキアミシンに存在するメチルトリスルフィド基の除去により形成されるカリキアミシン残基であり;そしてmは0.5から15の数である]
で表される、より高い薬剤配合量/収率及び減少された凝集を伴う、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体の製造方法であって、
(1) 約4.0から8.5の範囲内のpHをもつ、非求核性の、蛋白と適合性の緩衝溶液であって、更に、補助溶媒のt−ブタノールを含んでなる溶液中でカリキアミシン誘導体(X−S−S−W)及び蛋白質性キャリアーを約25℃から約37℃の温度範囲で、約15分間から約24時間の期間インキュベーションしてカリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成する段階;並びに
(2) 段階(1)で生成されたカリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を精製して、モノマー性カリキアミシン誘導体/キャリアー複合体を生成する段階、
を含んでなる方法。
【請求項21】
Spが−O−であり、AlkがCアルキレンであり、Arが1,4−フェニレンであり、そしてZがCアルキルである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
Qが=NHNCO−であり、そしてSpが−CHC(CH−である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
Zが−NHC(=O)−であり、そしてSpが−CHCHC(CH−である、請求項19記載の方法。
【請求項24】
Zが−CH=NNHC(=O)−であり、そしてSpが−CHC(CH−である、請求項19記載の方法。
【請求項25】
カリキアミシン誘導体が、ガンマ・カリキアミシン又はN−アセチルガンマ・カリキアミシン誘導体を含んでなる、請求項19記載の方法。
【請求項26】
カリキアミシン誘導体が、段階(1)において、約0.025mg/mlから約1.0mg/mlの範囲の量で存在する、請求項24記載の方法。
【請求項27】
蛋白質性キャリアーがヒト化モノクローナル抗体を含んでなる、請求項19記載の方法。
【請求項28】
ヒト化モノクローナル抗体が、約1mg/mlから約15mg/mlの範囲の量で段階(1)中に存在する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
t−ブタノールが、溶液の約10容量%から約25容量%の範囲の量で段階(1)中に存在する、請求項19記載の方法。
【請求項30】
t−ブタノールが、溶液の15容量%の量で段階(1)中に存在する、請求項19記載の方法。

【公開番号】特開2009−73832(P2009−73832A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230053(P2008−230053)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【分割の表示】特願平9−500547の分割
【原出願日】平成8年5月10日(1996.5.10)
【出願人】(591000791)ワイス・ホールディングズ・コーポレイション (43)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth Holdings Corporation
【Fターム(参考)】