説明

モノマー溶液の液滴の重合による吸水性ポリマー粒子の製造法

本発明は、モノマー溶液の液滴を周囲気相中で重合させることによって吸水性ポリマー粒子を製造するための方法に関する。本発明によれば、モノマー溶液は少なくとも1のアゾ化合物及び少なくとも1の過硫酸塩を含有し、得られたポリマー粒子は水含分少なくとも5質量%を有し、かつ少なくとも100℃の温度で少なくとも5分間熱的に後処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー溶液の液滴を周囲気相中で重合させることによって吸水性ポリマー粒子を製造するための方法において、モノマー溶液が少なくとも1のアゾ化合物及び少なくとも1の過硫酸塩を含有し、得られたポリマー粒子が水含分少なくとも5質量%を有し、かつ少なくとも100℃の温度で少なくとも5分間熱的に後処理を行うことを特徴とする方法に関する。
【0002】
吸水性ポリマー粒子の製造は、文献"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F. L. Buchholz及びA. T. Graham著, Wiley-VCH, 1998, 第71-103頁に記載されている。
【0003】
吸水性ポリマーは、おむつ、タンポン、生理帯及びその他の衛生用品を製造するための、水溶液を吸収する製品として使用されているが、しかし、農業園芸における保水剤としても使用されている。
【0004】
噴霧重合により、重合及び乾燥の処理工程をまとめることができた。加えて、粒度を、適した方法操作によって、ある特定の範囲に調整することができた。
【0005】
モノマー溶液の液滴の重合による吸水性ポリマー粒子の製造は、例えばEP348180A1号、WO96/40427A1号、US5,269,980号、DE10314466A1号、DE10340253A1号及びDE102004024437A1号、WO2006/077054A1号並びに出願番号102006001596.7の先願のドイツ国出願及び出願番号PCT/EP2006/062252を有する先願のPCT出願に記載されている。
【0006】
WO96/40427A1号には、低い水含分を有する吸水性ポリマー粒子を製造するための噴霧重合法が記載されている。実施例において、アゾ化合物と過硫酸塩とからの混合物が重合開始剤として使用されている。
【0007】
本発明の課題は、モノマー溶液の液滴を、該液滴を取り囲んでいる気相中で重合させることによる、吸水性ポリマー粒子の改善された製造法を提供することである。
【0008】
特に本発明の課題は、わずかな残留モノマーを有するポリマー粒子を製造する方法を提供することであった。
【0009】
上記課題は、以下
a)少なくとも1のエチレン系不飽和モノマー
b)選択的に、架橋剤
c)少なくとも1のアゾ化合物
d)少なくとも1の過硫酸塩、及び
e)水
を含有するモノマー溶液の液滴を周囲気相中で重合させることによって吸水性ポリマー粒子を製造するための方法において、得られたポリマー粒子が水含分少なくとも5質量%を有し、かつ少なくとも100℃の温度で少なくとも5分間熱的に後処理を行うことを特徴とする方法により解決された。
【0010】
得られたポリマー粒子の水含分は、好ましくは8〜40質量%、殊に好ましくは10〜30質量%、特に12〜20質量%である。
【0011】
熱的な後処理は、有利に5〜120分、特に有利に8〜60分、極めて特に有利に10〜30分実施される。
【0012】
熱的な後処理の際の温度は、有利に120〜200℃、特に有利に140〜180℃、極めて特に有利に150〜170℃である。
【0013】
本発明は、アゾ化合物と過硫酸塩とが異なる安定性を示すという知見に基づく。アゾ化合物は通常迅速にラジカルへと分解する。これとは対照的に、過硫酸塩は比較的ゆっくりとした重合開始剤である。これは、モノマー溶液の液滴の重合によって得られる吸水性ポリマー粒子が、なおも著量の過硫酸塩を含有することを意味する。この過硫酸塩は熱的な後処理の間に分解し、それによって残留モノマーが減少する。ここで、ポリマー粒子を乾燥させ過ぎないことが重要である。乾燥し過ぎた粒子の場合、残留モノマーはあまり低減しない。水含分が高すぎると、ポリマー粒子のケーキング傾向が高まる。
【0014】
同時に、熱的な後処理の間に分解する過硫酸塩によって、架橋密度が程度の差はあれ強度に低下し、それにより遠心分離保持能力(CRC)が高まり、かつ加圧下での吸収(AUL0.7psi)が低下する。前記効果は、例えば架橋剤b)の使用量を高めることにより補償することができる。
【0015】
熱的な後処理の間に、ポリマー粒子の水含分は有利に5〜40質量%、特に有利に8〜30質量%、極めて特に10〜20質量%の範囲内である。
【0016】
吸水性ポリマー粒子を、流動化状態で、乾燥ガス1kg当たり少なくとも0.25kgの水蒸気を含有するガス流の存在下に、熱的に後処理することができる。
【0017】
ガスの水蒸気含分は、有利に乾燥ガス1kg当たり1〜10kg、特に有利に乾燥ガス1kg当たり2〜7.5kg、極めて特に有利に乾燥ガス1kg当たり3〜5kgである。
【0018】
ガスの残りの成分は有利に空気又は窒素である。
【0019】
流動化状態において、ポリマー粒子の運動エネルギーは、ポリマー粒子間の凝集力又は付着力よりも大きい。
【0020】
流動化状態は、流動床によって達成することができる。その際、吸水性ポリマー粒子は下方から流入し、その結果、粒子は流動床を形成する。流動床の高さは、ガス量及びガス速度によって、すなわち、流動床の圧力損失によって(ガスの運動エネルギー)調整される。
【0021】
ガス流の速度は、好ましくは0.5〜2.5m/s、殊に好ましくは0.8〜1.5m/s、特に好ましくは0.9〜1.2m/sである。
【0022】
流動ガスとの接触により、残留モノマーをさらに減少させることができる。この場合、吸水性ポリマー粒子の乾燥があまりに迅速になりすぎないように、流入ガスはすでに水蒸気を含有しなければならない。
【0023】
モノマーa)は、好ましくは水溶性であり、すなわち、23℃での水中での溶解度は、典型的には少なくとも1g/水100g、好ましくは少なくとも5g/水100g、とりわけ有利には少なくとも25g/水100g、極めて有利には少なくとも50g/水100gであり、かつ、これを好ましくは少なくとも1酸基毎に有する。
【0024】
適したモノマーa)は例えば、エチレン系不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸である。特に有利なモノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸である。さらにアクリル酸が特に有利である。
【0025】
有利なモノマーa)は、少なくとも1個の酸基を有し、その際、該酸基は、好ましくは少なくとも部分的に中和されている。
【0026】
モノマーa)の全量に対するアクリル酸及び/又はその塩の割合は、有利に少なくとも50モル%、特に有利に少なくとも90モル%、とりわけ有利に少なくとも95モル%である。
【0027】
モノマーa)の酸基は、通常は部分的に、好ましくは25〜85モル%までが、有利には50〜80モル%までが、とりわけ有利には60〜75モル%までが中和されており、その際、慣例の中和剤、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩並びにそれらの混合物を使用してよい。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩を使用することもできる。ナトリウム及びカリウムは、アルカリ金属として特に好ましく、しかしながら殊に好ましいのは水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム並びにこれらの混合物である。通常、中和は、水溶液として、溶融物として、又は有利には固体としての中和剤を混入することによって達成される。例えば、50質量%を顕著に下回る水含分を有する水酸化ナトリウムが、23℃を上回る融点を有する蝋状の塊として存在していてよい。この場合には、断片状体としてか、又は高められた温度で溶融物として計量供給することが可能である。
【0028】
このモノマーa)、特にアクリル酸は、好ましくは0.025質量%までのヒドロキノン半エーテルを含有する。好ましいヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)である。
【0029】
モノマー溶液は、そのつどアクリル酸に対して、好ましくは最大でも160質量ppm、有利には最大でも130質量ppm、とりわけ有利には最大でも70質量ppm、有利には少なくとも10質量ppm、とりわけ有利には少なくとも30質量ppm、殊に約50質量ppmのヒドロキノン半エーテルを含有し、その際、アクリル酸塩はアクリル酸と見なされる。例えば、このモノマー溶液の製造のために、アクリル酸を、相応するヒドロキノン半エーテル含分と一緒に使用することができる。
【0030】
重合阻害剤は、例えば活性炭への吸着によってモノマー溶液から除去することもできる。
【0031】
架橋剤b)は、ポリマー網目構造にラジカル共重合されうる少なくとも2個の重合性基を有する化合物である。適した架橋剤b)は、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルオキシエタン(例えばEP530438A1に記載)、ジアクリレート及びトリアクリレート(例えばEP547847A1、EP559476A1、EP632068A1、WO93/21237A1、WO2003/104299A1、WO2003/104300A1、WO2003/104301A1及びDE10331450A1に記載)、アクリレート基以外にさらに別のエチレン系不飽和基を含有する混合アクリレート(例えばDE10331456A1及びDE10355401A1に記載)、又は架橋剤混合物(例えばDE19543368A1、DE19646484A1、WO90/15830A1及びWO2002/32962A2に記載)である。
【0032】
適当な架橋剤b)は、特にN,N’−メチレンビスアクリルアミド及びN,N’−メチレンビスメタクリルアミド、不飽和モノカルボン酸又はポリカルボン酸とポリオールとのエステル、例えばジアクリレート又はトリアクリレート、例えばブタンジオールジアクリレート又はエチレングリコールジアクリレート、又はブタンジオールジメタクリレート又はエチレングリコールジメタクリレート並びにトリメチロールプロパントリアクリレート及びアリル化合物、例えばアリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリルエステル、ポリアリルエステル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、テトラアリルエチレンジアミン、リン酸のアリルエステル並びに例えば、EP343427A2に記載されているようなビニルホスホン酸誘導体である。更に、適当な架橋剤b)は、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル及びペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル及びグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールをベースとするポリアリルエーテル、並びにそのエトキシ化変形である。本発明による方法では、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレートが使用可能であり、その際、使用されるポリエチレングリコールは300〜1000の分子量を有する。
【0033】
しかしながら、とりわけ好ましい架橋剤b)は、3〜20個のエトキシ基を有するグリセリンの、3〜20個のエトキシ基を有するトリメチロールプロパンの、3〜20個のエトキシ基を有するトリメチロールエタンのジアクリレート及びトリアクリレート、殊に2〜6個のエトキシ基を有するグリセリン又はトリメチロールプロパンの、3個のプロポキシ基を有するグリセリン又はトリメチロールプロパンの、並びに3個の、混合エトキシ基又はプロポキシ基を有するグリセリン又はトリメチロールプロパンの、15個のエトキシ基を有するグリセリン又はトリメチロールプロパンの、並びに少なくとも40個のエトキシ基を有するグリセリン、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパンのジアクリレート及びトリアクリレートである。
【0034】
極めて特に有利な架橋剤b)は、例えばWO2003/104301A1に記載されているような、ジアクリレート又はトリアクリレートを得るためにアクリル酸又はメタクリル酸とエステル化された多重エトキシ化及び/又はプロポキシ化されたグリセリンである。3〜10個のエトキシ基を有するグリセリンのジアクリレート及び/又はトリアクリレートが特に有利である。さらに、1〜5個のエトキシ基及び/又はプロポキシ基を有するグリセリンのジアクリレート又はトリアクリレートが極めて特に有利である。3〜5個のエトキシ基及び/又はプロポキシ基を有するグリセリンのトリアクリレートが最も有利である。
【0035】
該モノマー溶液は、そのつどモノマーa)に対して、好ましくは少なくとも0.1質量%の、有利には少なくとも0.2質量%の、とりわけ有利には少なくとも0.3質量%の、極めて有利には少なくとも0.4質量%の架橋剤b)を含有する。
【0036】
適当なアゾ化合物c)は、アゾ開始剤、例えば2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド及び2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドである。
【0037】
アゾ化合物c)の量は、モノマーa)に対して、有利に少なくとも0.1質量%、特に有利に少なくとも0.25質量%、極めて特に有利に少なくとも0.5質量%である。
【0038】
適当な過硫酸塩d)は、特に過硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム及びペルオキソ二硫酸カリウムである。
【0039】
過硫酸塩d)の量は、モノマーa)に対して、有利に少なくとも0.25質量%、特に有利に少なくとも0.5質量%、極めて特に有利に少なくとも0.75質量%である。
【0040】
他の開始剤として、重合条件下でラジカルへと分解する全ての化合物が使用されてよく、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素及びいわゆるレドックス開始剤が使用されてよい。水溶性開始剤の使用が有利である。多くの場合、種々の開始剤の混合物を使用するのが有利である。
【0041】
特に有利な他の開始剤は、光開始剤、例えば2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、レドックス開始剤、例えば過酸化水素/ヒドロキシメチルスルフィン酸及び過酸化水素/アスコルビン酸、光開始剤、例えば1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン並びにそれらの混合物である。
【0042】
モノマー溶液の固体含分は、好ましくは少なくとも35質量%、有利には少なくとも38質量%、とりわけ有利には少なくとも40質量%、極めて有利には少なくとも42質量%である。この場合、前記固体含分は、重合により揮発しない全ての成分の総和である。これは、モノマーa)、架橋剤b)、アゾ化合物c)及び過硫酸塩d)である。
【0043】
モノマー溶液の酸素含分は、好ましくは少なくとも1質量ppm、とりわけ有利には少なくとも2質量ppm、とりわけ有利には少なくとも5質量ppmである。それゆえ、該モノマー溶液の慣例の不活性化を実質的になしで済ませることができる。
【0044】
高められた酸素含分によってモノマー溶液は安定化され、かつ、より少量の重合阻害剤の使用を可能にし、ひいては、該重合阻害剤によって引き起こされる生成物変色を減少させる。
【0045】
モノマー溶液は、重合のために気相中に配量される。気相の酸素含分は、好ましくは0.001〜0.15体積%、とりわけ有利には0.002〜0.1体積%、極めて有利には0.005〜0.05体積%である。
【0046】
気相は、酸素以外に、好ましくは不活性ガス、すなわち反応条件下で重合には関与しないガス、例えば窒素及び/又は水蒸気のみを含有する。
【0047】
モノマー溶液は、液滴の形成下に気相中に配量される。該液滴は、例えば液滴化プレートを用いて作製することができる。
【0048】
該液滴化プレートは、少なくとも1個の穿孔を有するプレートであり、その際、液体は上方から穿孔を通り抜ける。液滴化プレートもしくは液体は振動されて、それによって液滴化プレートの下側で、穿孔ごとに理想的には単分散した液滴の鎖状物が作製される。有利な一実施態様において、液滴化プレートは撹拌されない。
【0049】
穿孔の数とサイズとは、所望の能力と液滴のサイズに従って選択される。その際、液滴の直径は、通常は穿孔の直径の1.9倍である。この際に重要なのは、液滴化すべき液体が穿孔を通り抜けるのが速すぎないこと、もしくは穿孔通じた圧力損失が大きすぎないことである。さもなければ、液体は液滴化されず、むしろ液体噴流が、高い運動エネルギーのために分裂(噴霧)される。液滴化装置は、層流のジェット破砕の流れ範囲内で操作され、すなわち、穿孔1つ当たりの装入量及び穿孔直径に基づくレイノルズ数は、好ましくは2000を下回り、殊に好ましくは1000を下回り、特に好ましくは500を下回り、極めて好ましくは100を下回る。穿孔を通じた圧力損失は、好ましくは2.5barを下回り、殊に好ましくは1.5barを下回り、特に好ましくは1barを下回る。
【0050】
液滴化プレートは、通常少なくとも1個の、好ましくは少なくとも10個の、とりわけ有利には少なくとも50個の、かつ、通常10000個までの、好ましくは5000個までの、とりわけ有利には1000個までの穿孔を有し、その際、該穿孔は、通常、一様に液滴化プレート上に分布しており、好ましくはいわゆる三角ピッチで分布しており、すなわち、3個の穿孔は、それぞれ正三角形の頂点を形成する。穿孔の直径は、所望の液滴のサイズに適合される。
【0051】
しかしながら、液滴は、空気吸引式ノズル、回転、噴流の切断又は迅速に制御可能なマイクロバルブノズルによっても作製することができる。
【0052】
空気吸引式ノズルにおいては、液体噴流が、ガス流と一緒にダイヤフラムを通して加速される。ガス量により、液体噴流の直径、ひいては液滴直径に影響を及ぼすことができる。
【0053】
回転による液滴作製の場合、液体は回転ディスクの開口部を通り抜ける。液体に作用する遠心力によって、定義された寸法の液滴が引きちぎられる。回転液滴化のための有利な装置は、例えばDE4308842A1に記載されている。
【0054】
しかしまた、流出する液体噴流を、回転刃を用いて、定められた区分で切り分けてもよい。各区分は、引き続き液滴を形成する。
【0055】
マイクロバルブノズルが使用される場合、直接的に、定義された液体体積を有する液滴が作製される。
【0056】
作製された液滴は、好ましくは少なくとも200μmの、とりわけ有利には少なくとも250μmの、極めて有利には少なくとも300μmの平均直径を有し、その際、液滴の直径は、光散乱によって測定され、かつ体積平均直径を意味する。
【0057】
重合反応器は、ガスを通過させる。その際、キャリアーガスを、自由落下するモノマー溶液の液滴に対して並流又は向流で、有利には並流で、すなわち下方から上方に反応室に導いてよい。好ましくは、該ガスは通過後に、少なくとも部分的に、有利には少なくとも50%、とりわけ有利には少なくとも75%の範囲で、循環ガスとして反応室中に返送される。通常、キャリアーガスの部分流は、そのつど通過後に、好ましくは10%まで、とりわけ有利には3%まで、極めて有利には1%までが排出される。
【0058】
ガス速度は、好ましくは、流れが重合反応器に向くように、例えば一般的な流れ方向と反対の対流渦が存在しないように調整され、かつ、例えば0.01〜5m/s、好ましくは0.02〜4m/s、とりわけ有利には0.05〜3m/s、極めて有利には0.1〜2m/sである。
【0059】
反応器を貫流するガスは、適切には、反応器前で反応温度に予熱される。
【0060】
反応温度は、熱誘導型重合の場合には、好ましくは100〜250℃、特に有利には120〜200℃、殊に有利には150〜180℃である。
【0061】
該反応は、過圧下もしくは低圧下で実施され、周囲圧力に対して100mbarまでの低圧が有利である。
【0062】
反応排ガス、すなわち反応室から排出されるガスは、例えば熱交換器中で冷却してよい。その際、水と、反応しなかったモノマーa)とが凝縮する。次いで、反応排ガスは、少なくとも部分的に再び加熱され、そして循環ガスとして反応器へと返送することができる。反応排ガスの一部が排出され、かつ新鮮なガスと置き換えられ、その際、反応排ガス中に含まれた水と反応しなかったモノマーa)とを分離し、かつ返送することができる。
【0063】
とりわけ有利なのは熱統合であり、すなわち排ガスの冷却に際しての排熱の一部を、循環ガスの再加熱のために使用する。
【0064】
該反応器は随伴加熱(begleitbeheizt)することができる。随伴加熱は、その際、壁部温度が、反応器内部温度より少なくとも5℃高く、反応器壁部での凝縮が確実に回避されるように調整される。
【0065】
引き続いて反応生成物は熱的に後処理され、かつ選択的に、好ましくは少なくとも1個の流動床中で乾燥される。
【0066】
ポリマー粒子を、特性のさらなる改善のために後架橋させることができる。
【0067】
後架橋剤は、ヒドロゲルのカルボキシレート基と共有結合を形成しうる少なくとも2個の基を有する化合物である。適した化合物は、例えばアルコキシシリル化合物、ポリアジリジン、ポリアミン、ポリアミドアミン、ジエポキシド又はポリエポキシド(例えばEP83022A2、EP543303A1及びEP937736A2に記載)、二官能性又は多官能性アルコール(例えばDE3314019A1、DE3523617A1及びEP450922A2に記載)、又はβ−ヒドロキシアルキルアミド(例えばDE10204938A1及びUS6,239,230に記載)である。
【0068】
加えて、DE4020780C1の中で環状カーボネートが、DE19807502A1の中で2−オキサゾリドン及びその誘導体、例えば2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリドンが、DE19807992C1の中でビス−及びポリ−2−オキサゾリジノンが、DE19854573A1の中で2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサジン及びその誘導体が、DE19854574A1の中でN−アシル−2−オキサゾリドンが、DE10204937A1の中で環状尿素が、DE10334584A1の中で二環状アミドアセタールが、EP1199327A2の中でオキセタン及び環状尿素が、またWO2003/31482A1の中でモルホリン−2,3−ジオン及びその誘導体が適した後架橋剤として記載されている。
【0069】
後架橋剤の量は、ポリマーに対してそれぞれ、好ましくは0.01〜1質量%、とりわけ有利には0.05〜0.5質量%、極めて有利には0.1〜0.2質量%である。
【0070】
この後架橋は、一般的には、後架橋剤の溶液をヒドロゲル又は乾燥させたポリマー粒子上に吹き付けることにより実施される。この噴霧に引続き、加熱乾燥を行い、その際、後架橋反応は乾燥前でも乾燥中でも生じうる。
【0071】
架橋剤溶液の吹き付けは、有利に可動式混合器具を有するミキサー中で、例えばスクリューミキサー、パドルミキサー、ディスクミキサー、鋤刃ミキサー及びブレードミキサ中で実施する。特に有利に、バーティカルミキサー、殊に有利に鋤刃ミキサー及びブレードミキサーである。適したミキサーは、例えばLoedigeミキサー、Bepexミキサー、Nautaミキサー、Processallミキサー及びSchugiミキサーである。
【0072】
この加熱乾燥は、好ましくは接触乾燥器、特に好ましくはパドル型乾燥器、殊に好ましくはディスク型乾燥器中で実施する。適当な乾燥機は、例えばBepex乾燥機及びNara乾燥機である。さらに、流動床乾燥機も使用することができる。
【0073】
乾燥は、混合機それ自体中で、ジャケットの加熱又は熱風の吹き込みによって行なうことができる。後接続された乾燥機、例えば箱形乾燥機、回転管炉か又は加熱可能なスクリューは、同様に好適である。とりわけ好ましくは、流動床乾燥機中で混合及び乾燥される。
【0074】
有利な乾燥温度は、170〜250℃の範囲内、有利には180〜220℃、及びとりわけ有利には190〜210℃である。反応ミキサー又は乾燥機中におけるこの温度での有利な滞留時間は、好ましくは少なくとも10分間、とりわけ有利には少なくとも20分間、極めて有利には少なくとも30分間である。
【0075】
本発明による方法は、極めて少ない残留モノマー含分を有する吸水性ポリマー粒子を製造することが可能である。
【0076】
本発明による方法により得られる吸水性ポリマー粒子は、典型的に少なくとも15g/g、有利には少なくとも20g/g、特に有利には少なくとも25g/g、殊に有利には少なくとも30g/g、とりわけ有利には少なくとも35g/gの遠心分離保持能力(CRC)を有する。吸水性ポリマー粒子の遠心分離保持容量(CRC)は、通常は100g/g未満である。この吸水性ポリマー粒子の遠心分離保持容量を、EDANA(欧州不織布協会)によって推奨された試験方法番号441.2−02「遠心分離保持容量(Centrifuge retention capacity)」により測定する。
【0077】
本発明による方法に従って得られる吸水性ポリマー粒子は、典型的には0.1質量%未満の、好ましくは0.07質量%未満の、有利には0.05質量%未満の、とりわけ有利には0.04質量%未満の含分の残留モノマーを有する。この残留モノマー含分を、EDANA(欧州不織布協会)により推奨された試験方法番号410.2−02「残留モノマー(Residual monomers)」により測定する。
【0078】
本発明による方法に従って得られる吸水性ポリマー粒子の平均直径は、好ましくは少なくとも200μm、とりわけ有利には250〜600μm、極めて有利には300〜500μmであり、その際、該粒径は、光散乱によって測定され、かつ体積平均直径を意味する。ポリマー粒子の90%は、好ましくは100〜800μm、殊に好ましくは150〜700μm、特に好ましくは200〜600μmの直径を有する。
【0079】
本発明の他の対象は、本発明による方法によって得られる吸水性ポリマー粒子である。
【0080】
吸水性ポリマー粒子は、以下で記載された試験法によって試験される。
【0081】
方法:
測定は、別に記載がない限り、23±2℃の環境温度及び50±10%の相対空気湿度で実施される。吸水性ポリマーを、測定前に十分に混和する。
【0082】
残留モノマー(Residual monomers)
前記吸水性ポリマー粒子の残留モノマー含分を、EDANA(欧州不織布協会)により推奨された試験方法番号410.2−02「残留モノマー(Residual monomers)」により測定する。
【0083】
水含分(Moisture content)
前記吸水性ポリマー粒子の水含分を、EDANA(欧州不織布協会)により推奨された試験方法番号430.2−02「水含分(Moisture content)」により測定する。
【0084】
遠心分離保持能力(CRC Centrifuge retention capacity)
前記吸水性ポリマー粒子の遠心分離保持能力を、EDANA(欧州不織布協会)により推奨された試験方法番号441.2−02「遠心分離保持能力(Centrifuge retention capacity)」により測定する。
【0085】
加圧下での吸収(AUL0.7psi Absorbency Under Load)
加圧下での吸収を、EDANA(欧州不織布協会)により推奨された試験方法番号442.2−02「加圧下での吸収(Absorption under pressure)」により測定し、その際、21g/cm3(0.3psi)の重りの代わりに49g/cm3(0.7psi)の重りを使用する。
【0086】
上記EDANA試験法は、例えば欧州不織布工業会(Avenue Eugene Plasky 157, B-1030 ブリュッセル,ベルギー)で入手できる。
【実施例】
【0087】
実施例1
アクリル酸ナトリウム14.153kg(水中の37.5質量%溶液)、アクリル酸1.620kg及び水0.226kgを、架橋剤としての15個のエトキシ基を有するトリメチロールプロパントリアクリレート28gと混合した。この溶液を、窒素雰囲気を充填した加熱した液滴化塔(高さ12m、幅2m、並流でガス速度0.1m/s)中に滴加した。モノマー溶液の供給速度は16kg/hであった。液滴化プレートは170μmの穿孔を30個有していた。ガス予熱を、ガス出口温度が一定に125℃となるように調節した。開始剤を、液滴化装置のすぐ上流で、スタティックミキサーを介してモノマー溶液と混合した。
【0088】
開始剤として、水中の2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドの4.8質量%溶液を使用した。開始剤溶液の供給速度は0.569kg/hであった。
【0089】
得られたポリマー粒子は18.1質量%の水含分を有しており、かつ乾燥棚中で160℃で1時間熱的に後処理した。
【0090】
次いで、得られた吸水性ポリマー粒子を分析した。結果を第1表にまとめる:
実施例2
アクリル酸ナトリウム14.356kg(水中の37.5質量%溶液)及びアクリル酸1.644kgを、架橋剤としての15個のエトキシ基を有するトリメチロールプロパントリアクリレート29gと混合した。この溶液を、窒素雰囲気を充填した加熱した液滴化塔(幅2m、並流でガス速度0.1m/s)中に滴加した。モノマー溶液の供給速度は16kg/hであった。液滴化プレートは170μmの穿孔を30個有していた。ガス予熱を、ガス出口温度が一定に125℃となるように調節した。モノマー溶液を、液滴化装置のすぐ上流で、スタティックミキサーを介して2つの開始剤溶液と混合した。
【0091】
開始剤1として、水中の2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドの4.8質量%溶液を使用した。開始剤溶液1の供給速度は0.577kg/hであった。
【0092】
開始剤2として、水中のペルオキソ二硫酸ナトリウム3.3質量%溶液を使用した。開始剤溶液2の供給速度は0.412kg/hであった。
【0093】
得られたポリマー粒子は17.8質量%の水含分を有しており、かつ乾燥棚中で160℃で1時間熱的に後処理した。
【0094】
次いで、得られた吸水性ポリマー粒子を分析した。結果を第1表にまとめる:
実施例3
アクリル酸ナトリウム14.356kg(水中の37.5質量%溶液)及びアクリル酸1.644kgを、架橋剤としての15個のエトキシ基を有するトリメチロールプロパントリアクリレート29gと混合した。この溶液を、窒素雰囲気を充填した加熱した液滴化塔(幅2m、並流でガス速度0.1m/s)中に滴加した。モノマー溶液の供給速度は16kg/hであった。液滴化プレートは170μmの穿孔を30個有していた。ガス予熱を、ガス出口温度が一定に125℃となるように調節した。モノマー溶液を、液滴化装置のすぐ上流で、スタティックミキサーを介して2つの開始剤溶液と混合した。
【0095】
開始剤1として、水中の2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドの4.8質量%溶液を使用した。開始剤溶液1の供給速度は0.577kg/hであった。
【0096】
開始剤2として、水中のペルオキソ二硫酸ナトリウム3.3質量%溶液を使用した。開始剤溶液2の供給速度は0.577kg/hであった。
【0097】
得られたポリマー粒子は18.4質量%の水含分を有しており、かつ乾燥棚中で160℃で1時間熱的に後処理した。
【0098】
次いで、得られた吸水性ポリマー粒子を分析した。結果を第1表にまとめる:
実施例4
アクリル酸ナトリウム14.356kg(水中の37.5質量%溶液)及びアクリル酸1.644kgを、架橋剤としての15個のエトキシ基を有するトリメチロールプロパントリアクリレート29gと混合した。この溶液を、窒素雰囲気を充填した加熱した液滴化塔(幅2m、並流でガス速度0.1m/s)中に滴加した。モノマー溶液の供給速度は16kg/hであった。液滴化プレートは170μmの穿孔を30個有していた。ガス予熱を、ガス出口温度が一定に125℃となるように調節した。モノマー溶液を、液滴化装置のすぐ上流で、スタティックミキサーを介して2つの開始剤溶液と混合した。
【0099】
開始剤1として、水中の2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドの6.1質量%溶液を使用した。開始剤溶液1の供給速度は0.444kg/hであった。
【0100】
開始剤2として、水中のペルオキソ二硫酸ナトリウム6.1質量%溶液を使用した。開始剤溶液2の供給速度は0.444kg/hであった。
【0101】
得られたポリマー粒子は17.8質量%の水含分を有しており、かつ乾燥棚中で160℃で1時間熱的に後処理した。
【0102】
次いで、得られた吸水性ポリマー粒子を分析した。結果を第1表にまとめる:
実施例5
アクリル酸ナトリウム14.356kg(水中の37.5質量%溶液)及びアクリル酸1.644kgを、架橋剤としての15個のエトキシ基を有するトリメチロールプロパントリアクリレート29gと混合した。この溶液を、窒素雰囲気を充填した加熱した液滴化塔(幅2m、並流でガス速度0.1m/s)中に滴加した。モノマー溶液の供給速度は16kg/hであった。液滴化プレートは170μmの穿孔を30個有していた。ガス予熱を、ガス出口温度が一定に125℃となるように調節した。モノマー溶液を、液滴化装置のすぐ上流で、スタティックミキサーを介して2つの開始剤溶液と混合した。
【0103】
開始剤1として、水中の2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリドの6.1質量%溶液を使用した。開始剤溶液1の供給速度は0.444kg/hであった。
【0104】
開始剤2として、水中のペルオキソ二硫酸ナトリウム9.1質量%溶液を使用した。開始剤溶液2の供給速度は0.444kg/hであった。
【0105】
得られたポリマー粒子は17.3質量%の水含分を有しており、かつ乾燥棚中で160℃で1時間熱的に後処理した。
【0106】
次いで、得られた吸水性ポリマー粒子を分析した。結果を第1表にまとめる:
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下
a)少なくとも1のエチレン系不飽和モノマー
b)選択的に、架橋剤
c)少なくとも1のアゾ化合物
d)少なくとも1の過硫酸塩、及び
e)水
を含有するモノマー溶液の液滴を周囲気相中で重合させることによって吸水性ポリマー粒子を製造するための方法において、得られたポリマー粒子が水含分少なくとも5質量%を有し、かつ少なくとも100℃の温度で少なくとも5分間熱的に後処理を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
ポリマー粒子の水含分が熱的な後処理の間に5〜40質量%の範囲内である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
モノマーa)の少なくとも50モル%がアクリル酸である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
モノマー溶液が、モノマーa)に対して少なくとも0.1質量%の架橋剤b)を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
モノマー溶液が、モノマーa)に対して少なくとも0.1質量%のアゾ化合物c)を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
モノマー溶液が、モノマーa)に対して少なくとも0.1質量%の過硫酸塩d)を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
液滴が、少なくとも200μmの平均直径を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
0.1質量%未満の残留モノマー含分を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法によって得られる吸水性ポリマー粒子。
【請求項9】
ポリマー粒子が少なくとも200μmの平均直径を有する、請求項8記載のポリマー粒子。
【請求項10】
ポリマー粒子が少なくとも15g/gの遠心分離保持能力を有する、請求項8又は9記載のポリマー粒子。

【公表番号】特表2010−518208(P2010−518208A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548672(P2009−548672)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051336
【国際公開番号】WO2008/095892
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】