説明

モルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤

【課題】散布後の初期乾燥抑制効果の高いモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤を提供すること。
【解決手段】(A)下記一般式(I)で表される化合物、(B)0.1重量%水溶液の20℃における表面張力が10〜45mN/mを示す界面活性剤、及び(C)水を含有するモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤。
R1−CO−(AO)p−O−R2 (I)
[式中のR1は、Cm2m+1(m=13〜19)の直鎖状飽和炭化水素基、R2はCn2n+1(n=1〜5)の飽和炭化水素基、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基、pは平均付加モル数で、0〜3の数である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル又はコンクリートの養生方法のうちの保水養生に使用する乾燥抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
保水養生は、乾燥によるモルタルやコンクリートの強度低下を防止することを目的とする。従来技術では、樹脂エマルジョン(特許文献1)、水溶性高分子(特許文献2)等の保水剤や、パラフィン等の油膜(特許文献3)などにより、打設後のコンクリート等の表面を被覆し、膜を形成することで水分蒸発を抑制している。しかし、樹脂エマルジョンや水溶性高分子は樹脂膜形成前の初期の抑制効果が著しく低く、保水剤の大量使用が必要であり、油膜の場合、完全被覆するための必要使用量が多量である上に、後で残存油膜の除去を要し、除去が不十分な場合、打ち継ぎ部の接着強度が低下する問題が発生する。
打設されたコンクリートの表面平滑性の向上や乾燥収縮によるひび割れ防止を目的とするものとして、特許文献4には特定の高級アルコールまたはそのアルキレンオキシド付加物を有効成分とするコンクリート表面仕上剤組成物が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−86372
【特許文献2】特開平3−279280
【特許文献3】特開平6−87113
【特許文献4】特開2006-111683
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、散布後の初期乾燥抑制効果の高いモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤を提供することを目的とする。
本発明はまた、散布後の初期乾燥抑制効果の高い、モルタル又はコンクリートの乾燥を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の脂肪酸アルキルエステル又はそのアルキレンオキシド付加物と界面活性剤とを併用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、(A)下記一般式(I)で表される化合物、(B)0.1重量%水溶液の20℃における表面張力が10〜45mN/mを示す界面活性剤、及び(C)水を含有するモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤を提供する。
R1−CO−(AO)p−O−R2 (I)
[式中のR1は、Cm2m+1(m=13〜19)の直鎖状飽和炭化水素基、R2はCn2n+1(n=1〜5)の飽和炭化水素基、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基、pは平均付加モル数で、0〜3の数である。]
本発明はまた、上記乾燥抑制剤をモルタルまたはコンクリート表面に散布することを含む、モルタルまたはコンクリートの乾燥抑制方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、散布後の初期乾燥抑制効果の高い乾燥抑制剤を提供することができる。本発明の乾燥抑制剤は、残存油膜除去を行わなくても打ち継ぎ部で十分な接着強度が得られる。本発明の乾燥抑制剤はまた、少量で十分な乾燥抑制効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<(A)成分>
(A)成分は、下記一般式(I)で表される化合物の1種以上である。
R1−CO−(AO)p−O−R2 (I)
[式中のR1は、Cm2m+1(m=13〜19)の直鎖飽和炭化水素基、R2はCn2n+1(n=1〜5)の飽和炭化水素基、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基、pは平均付加モル数で、0〜3の数である。]
式(I)におけるR1は炭素数13〜19の直鎖飽和炭化水素基である。炭素数が19以下とすると乳化性が良好となり、13以上とすると乾燥抑制性が良好となる。炭素数13〜17のものが好ましく、更に炭素数15〜17のものがより好ましい。このような範囲内とすることにより乾燥抑制性がさらに良好となる。R1は直鎖飽和炭化水素基であることで乾燥抑制効果が良好となり、分岐鎖や直鎖であっても不飽和炭化水素基では乾燥抑制効果は十分には発揮されない。
式(I)におけるR2は炭素数1〜5の飽和炭化水素基である。炭素数が5以下とすると乳化の安定性が良好となり、1以上とすると乾燥抑制性が良好となる。炭素数1〜4のものが好ましく、更に炭素数1〜2のものがより好ましい。このような範囲内とすることにより乾燥抑制性がさらに良好となる。
【0008】
(A)成分のうち、一般式(I)中のpが0の化合物は、炭素数14〜20の直鎖飽和脂肪酸と炭素数1〜5の飽和脂肪族アルコールのエステルであり、動植物油脂から容易に製造できる。具体的には、ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステル等が挙げられ、中でもステアリン酸エステルが好ましい。
(A)成分としては、一般式(I)中のpが0超の化合物を使用することもできる。該化合物は、炭素数14〜20の直鎖飽和脂肪酸と炭素数1〜5の飽和脂肪族アルコールのエステルの炭素数2〜4のアルキレンオキシド(AO)付加物であり、AOとしては、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド(BO)が使用できる。これらの二種以上の組合せでもよい。AOとしては、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)が乾燥抑制性の点でより好ましい。pが0超の化合物としては、ステアリン酸エステルのEO付加物、パルミチン酸エステルのEO付加物等が挙げられ、中でもパルミチン酸エステルのEO付加物が好ましい。
【0009】
一般式(I)において、AOの平均付加モル数pは0〜3であり、0〜2が好ましく、特に0が好ましい。(A)成分は、pが0である脂肪酸エステルとそのAO付加物とでは、pが0である脂肪酸エステルの方が乾燥抑制性が良好であるため好ましい。
一般式(I)において、pが0超の場合、AOはエチレンオキシド(EO)を含むことが好ましく、全AO中、エチレンオキシド(EO)のモル%が50モル%以上、更に70モル%以上、特に80モル%以上であることが好ましい。
【0010】
<(B)成分>
(B)成分は、0.1重量%水溶液の20℃における表面張力が10〜45mN/mを示す界面活性剤である。(B)成分となる界面活性剤は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等から選ばれる。なお、この表面張力は、デュヌイ法(測定機:日本油試験機工業製AN−526P、20℃で測定)によるものである。表面張力が10〜40mN/mのものが、本発明の乾燥抑制剤をモルタル又はコンクリートに適用したときに油膜が薄く均一にひろがり乾燥抑制効果がより良好に発揮される点でより好ましい。(B)成分となる界面活性剤は単独で使用しても良く、二種以上を併用してもよいが、二種以上を併用するほうが乳化状態がより安定したものとなる点で好ましい。
【0011】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(又はアルキルアリール)硫酸エステル塩等が挙げられる。このうち乳化安定性及び乾燥抑制性の点からポリオキシエチレンアルキル硫酸エステルが好ましく、特にポリオキシエチレンステアリル硫酸エステルが乾燥抑制性の点で更に好ましい。
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(又はアルキルアリール)エーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。このうち乳化安定性及び乾燥抑制性の点からポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、特にポリオキシエチレンステアリルエーテルが乾燥抑制性の点で更に好ましい。
陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等が、また、両性界面活性剤としては、例えばアルキルベタイン等が挙げられる。
【0012】
(B)成分としては、陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる一種以上が好ましく、中でも非イオン界面活性剤が好ましく、特にポリオキシアルキレンアルキルエーテルが乳化安定性に優れるため好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、下記一般式(II)のものが好ましい。
R3−O−(AO)q−H (II)
〔式中、R3は炭素数14〜20の炭化水素基、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基、qは平均付加モル数であり、4〜35の数である。〕
【0013】
一般式(II)において、R3の炭素数は、乳化安定性の点で14〜18であることがより好ましく、16〜18であることがさらに好ましい。
一般式(II)において、AOは、乳化安定性の点で2〜3であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
一般式(II)において、qは、乳化安定性の点で4〜35であることが好ましく、5〜30であることがより好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられ、このうちポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルが乳化安定性の点で好ましく、ポリオキシエチレンステアリルエーテルがより好ましい。
【0014】
<(C)成分>
(C)成分は、水である。水としては精製水、上水道水、工業用水、井戸水等を使用でき、精製水、上水道水が防腐性の点で好ましい。
如何なる理論にも拘束されるものではないが、モルタル又はコンクリート表面に浮いている水の上に本発明の乾燥抑制剤を散布等により適用すると、A成分が水面に疎水基(式(I)中、R1及びR2)を空気に向ける形で整列し、単分子膜のような油膜を水面に形成するものと推定される。この油膜が、水面に薄く均一にひろがることで、油膜の下にある水の蒸発を抑制すると考えられる。
本発明の組成物はさらに、(D)成分として揮発性油剤を含有することができる。
【0015】
<(D)成分>
本明細書において揮発性とは、標準沸点が100〜260℃のものと定義する。(D)成分の沸点は150〜250℃のものが、乾燥抑制効果が適度に持続する一方で、モルタルやコンクリートが硬化した後には本発明品を適用した表面への油剤の残存量を減らすことができる点でより好ましい。
本明細書において油剤とは、25℃における水100gに対しての溶解度が35g以下、好ましくは15g以下、より好ましくは1g以下のものをいう。溶解度が低いほど、乾燥抑制効果が大きく、残存する油剤の量を減らすことができるので好ましい。
揮発性油剤としては具体的には石油系炭化水素、例えばノルマルパラフィンや、シリコーンオイル等が挙げられ、このうちシリコーンオイルが臭気の点で特に好ましい。
シリコーンオイルとは、分子構造内にシロキサン結合を有する化合物であるものをいう。シリコーンオイルの沸点は、分子量により異なるが、大略150〜250℃である。具体的にはジメチコン、トリシロキサン、シクロペンタシロキサン、カプリリルメチコン等が挙げられ、このうちジメチコン、シクロペンタシロキサンが好ましい。
ジメチコンとはメチルシロキサンを有する化合物である。ジメチコンとしては直鎖型ジメチコンと環状ジメチコンが使用できる。このうち直鎖型ジメチコンは3〜6量体を使用できる。環状ジメチコンは、3〜6量体までが揮発性油剤として使用できる。これらのうち4〜6が揮発性と乾燥抑制効果が両立する点で好ましい。
【0016】
揮発性油剤としては、市販のものとしてシクロペンタシロキサン(例えば、SH245 Fluid、東レ・ダウコーニング社製、沸点205℃)やジメチコン(例えば、SH200C Fluid 2CS、東レ・ダウコーニング社製、沸点230℃)が挙げられる。
如何なる理論にも拘束されるものではないが、本発明の乾燥抑制剤が成分(D)を含有する場合、上記の単分子膜のような油膜を形成する成分(A)の間に揮発性油剤(D)が入り込むことで、水面に薄く均一にひろがる膜がより密になり、油膜の下にある水の蒸発をさらに抑制するものと推定される。そのために、本発明の乾燥抑制剤中の(A)成分の量を減らすことができ、揮発性油剤(D)は乾燥後にはモルタル又はコンクリート表面からは揮発して消失するため、モルタル又はコンクリート上への残存油分を減らすことができる。
本発明のモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤は、水中油型(O/W型)の乳化物の状態で適用する。O/W型の乳化物であることにより、(A)成分や(D)成分が(C)水と分離せずに低粘度で均一な液体となり、モルタル又はコンクリートの表面に均一にひろがることから乾燥抑制効果が良好に発揮される点で優れたものとなる。また作業現場での散布が容易となる。
【0017】
<配合量、量比>
本発明のモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤において、(A)成分の配合量は本乾燥抑制剤中、0.1〜10質量%、更に0.1〜5質量%、特に0.1〜3質量%であることが好ましい。(A)成分と(B)成分の重量比は、(A)/(B)=4/1〜1/4、更に3/1〜1/4、特に2/1〜1/3であることが、乾燥抑制性の面から好ましい。残部は(C)成分の水である。(A)〜(C)成分の量がこのような範囲にある本発明の乾燥抑制剤は液状の剤型であり、作業現場で使用しやすいので好ましい。
【0018】
(D)成分の配合量は本乾燥抑制剤中、0〜10質量%、更に0.05〜5質量%、特に0.1〜4質量%であることが好ましい。(A)成分と(D)成分の合計配合量は本乾燥抑制剤中、0.1〜20質量%、更に0.15〜10質量%、特に0.2〜7質量%とすることが、乾燥抑制性の面から好ましい。
本発明のモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤は、各原料を混合し攪拌し乳化するなど公知の方法によって製造することができる。
【0019】
<任意成分>
任意成分として一般式(I)に含まれない脂肪酸アルキルエステルを含むことができる。具体的には、ラウリン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、イソステアリン酸メチルなどがあげられる。その場合、一般式(I)に含まれる脂肪酸アルキルエステルの全脂肪酸アルキルエステル中の含有量は70質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。一般式(I)に含まれない脂肪酸アルキルエステルとしては、炭素数が6〜12の脂肪酸のアルキルエステルや不飽和脂肪酸アルキルエステル、分岐脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。
その他の任意成分として、高級アルコール、例えばラウリルアルコールやステアリルアルコールなど、またグリコールエーテル系溶剤、例えばポリオキシプロピレン・オキシエチレン(2)モノブチルエーテルなどを含むことができる。その他に防腐剤、消泡剤、pH調整剤、増粘剤、着色剤、早強剤、遅延剤等を含有することができる。
【0020】
<使用方法>
本発明の乾燥抑制剤の好ましい使用方法としては、打設直後のモルタル又はコンクリートに100〜300g/m2程度、一回で又は複数回に分けて、噴霧器、ジョウロ等で散布する方法が挙げられる。
本発明の乾燥抑制剤は、濃縮液を作業現場で水で希釈して使用することもできるが、その場合、成分(A)と成分(D)の合計量が0.2〜20質量%となるように乾燥抑制剤を調製し、これを成分(A)と成分(D)の合計量が0.1〜15質量%となるように水で希釈して使用することが好ましい。
コンクリート二次製品(工場で作るコンクリート製品)に対して使用する場合は、原液または希釈液を刷毛などで塗布、噴霧器などで散布して使用してもよい。
【実施例】
【0021】
乾燥抑制剤の調製方法
成分(A)〜(D)として、表−1のA−2、表−2のB−1とB−2、表−3のC、表−4のD−1を使用し、これらを乳化、希釈して調製した。具体的な調製方法は、次のような手順で行った。
21.0重量部の水(成分(C))に、3.0重量部のミリスチン酸メチル(成分(A−2))、1.5重量部のポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(成分(B−1))、及び1.5重量部のポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル(成分(B−2))を加え、80℃まで加熱し溶解させた。これをミキサー(IKA社製LABORTECHNIK T25Basic)を用いて8000〜10000rpmで攪拌しながら80℃で乳化し、80℃に加熱した水(成分(C))70.0重量部を徐々に添加しながら引き続き攪拌し、乳化した。次に同ミキサーで8000〜10000rpmで攪拌しながら40℃まで徐冷した後に、3.0重量部のシクロペンタシロキサン(成分(D−1))を加えさらに乳化した。その後、常温まで徐冷し、乾燥抑制剤を得た。ここで得られた乾燥抑制剤を、後述する乳化安定性の評価に用いた。
水分損失量及び乾燥抑制性、圧縮強度、接着強度、破断面分布及び接着性の評価には、上で得られた乾燥抑制剤を水で10倍に希釈したものを用いた。
他の実施例及び比較例の乾燥抑制剤も、同様に、表−1、表−2a、表−2b、表−3、表−4に示す成分を、表−7及び表−8に示す量で配合することにより調整した。













【0022】
表−1

【0023】
※1;パルミチン酸メチルエステル(2EO)の製造方法
特許第2940852号「脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造方法」実施例1に記載の改質触媒A 3.6g、及びパルミチン酸メチル(ライオン(株)製パステルM−16)1354gをオートクレーブに仕込み、次いでオートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を行った。温度を180℃、圧力を3atmに維持しつつ、酸化エチレン(エア・ウォーター(株)製)442.2gを導入し、攪拌反応させてパルミチン酸メチルエステル(2EO)を得た。
※2;パルミチン酸メチルエステル(5EO)の製造方法
特許第2940852号「脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造方法」実施例1に記載の改質触媒A 3.6g、及びパルミチン酸メチル(ライオン(株)製パステルM−16)988.9gをオートクレーブに仕込み、次いでオートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を行った。温度を180℃、圧力を3atmに維持しつつ、酸化エチレン(エア・ウォーター(株)製)807.4gを導入し、攪拌反応させてパルミチン酸メチルエステル(5EO)を得た。







【0024】

【0025】
※表面張力:0.1%水溶液を20℃において協和科学(株)KYOWA CBUP SURFACE TENSIOMETER A3で測定。
カッコ内の数字はアルキレンオキシ基の数平均付加モル数pを表す。
【0026】
表−2b 界面活性剤混合物の界面張力(比は重量比)

【0027】
表−3

【0028】
表−4

【0029】
試料の評価方法
乳化安定性
実施例及び比較例の乾燥抑制剤の常温での静置安定性を乳化安定性とした。
乳化安定性の評価の区分は、○(1週間経過後も分離無し)、△(1週間以内に分離)、×(2日以内に分離)とした。
結果を表−7及び表−8に示す。
<水分損失量及び乾燥抑制量>
500重量部の普通ポルトランドセメントと250重量部の水を混合後、濾過して得られたろ液5重量部を、シャーレの上にのせたガラスフィルター(ADVANTEC製FILTER PAPER GA−100(φ70mm))全体に均等に染み込ませた。その同ガラスフィルター上全体に実施例及び比較例の乾燥抑制剤を200g/m2の割合で噴霧器を用いて均一に噴霧し、該ガラスフィルターに20℃、40RH%の環境下で、風速3km/hの風を3時間送った。送風前のガラスフィルターの質量と、送風開始から3時間後のガラスフィルターの質量とを測定し、両者の差である質量減少分を水分蒸発量とし、ガラスフィルター1m2あたりの蒸発量に換算したものを水分損失量(g/m2)とした。
乾燥抑制量は水分損失量の値に基づいて評価し、水分損失量の値が0〜400g/m2を◎、400超〜800g/m2を○、800超〜1000g/m2を△、1000g/m2超を×とした。
結果を表−7及び表−8に示す。
【0030】
<圧縮強度>
JIS A1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して測定した。即ち、φ100×200mmのコンクリート用モールドに表−6に示すコンクリートを充填し、実施例又は比較例の乾燥抑制剤をコンクリートの上面全体に200g/m2の割合で均一に噴霧器で噴霧後、20℃、40RH%の環境下で、風速3km/hの風を噴霧面に24時間送風し続けたのち、送風を停止し、そのまま同環境下で養生したものの圧縮強度を材齢1日、7日、28日で測定した。結果を表−7及び表−8に示す。
【0031】
表−6 評価用コンクリート調合

【0032】
W:上水道水
C:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社)
S:粗目砂(中国産40%、千葉県市原産60%、表乾比重:2.58)
S’:Sの体積
a:SとGの合計体積
G:砕石2005(北海道北斗市峩朗産、表乾比重:2.70)
混和剤:レオビルドSP-8SBM(高性能AE減水剤、株式会社ポゾリス物産)
【0033】
<接着強度、破断面分布、接着性>
接着強度は、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修 「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」に従った規格で、建研式接着試験器(山本扛重機株式会社製)を用いて測定した。即ち、300×300×130mmの容器内に表−6に示すコンクリートを下地として充填し、実施例及び比較例の乾燥抑制剤をコンクリートの上面全体に200g/m2の割合で均一に噴霧後、20℃、40RH%の環境下で、風速3km/hの風を噴霧面に24時間送風し続けたのち、送風を停止し、そのまま同環境下で通算7日養生したものに、モルタルとしてセメント系セルフレベリング材(太平洋セメント製)を流し込み、さらに同環境下で14日養生したものを試験片とした。該試験片に4cmの正方形の切り込みを下地であるコンクリートに届く深さに入れ、この切り込みの上面を上記試験機で引張って破断荷重を測定し、切り込み部分分の面積で割ることにより接着強度を求めた。
破断面分布は、接着強度測定の際、破断面(4cm×4cm)を目視し、破断面におけるモルタルの面積の割合、モルタルとコンクリートとの界面の面積の割合、コンクリートの面積の割合を目視判定で測定した。
接着性は、破断面分布測定により求めた界面の面積の割合が0〜10%を◎、11〜20%を○、21〜40%を△、41%以上を×とした。
結果を表−7及び表−8に示す。


【0034】
【表1】

【0035】
【表2】



【0036】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表される化合物、(B)0.1重量%水溶液の20℃における表面張力が10〜45mN/mを示す界面活性剤、及び(C)水を含有するモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤。
R1−CO−(AO)p−O−R2 (I)
[式中のR1は、Cm2m+1(m=13〜19)の直鎖状飽和炭化水素基、R2はCn2n+1(n=1〜5)の飽和炭化水素基、AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基、pは平均付加モル数で、0〜3の数である。]
【請求項2】
さらに(D)揮発性油剤を含有する請求項1記載のモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤。
【請求項3】
揮発性油剤(D)がシリコーンオイルである請求項2記載のモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤。
【請求項4】
界面活性剤(B)がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである請求項1〜3のいずれか1項記載のモルタル又はコンクリート用乾燥抑制剤。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の乾燥抑制剤を、モルタルまたはコンクリート表面に散布することを含む、モルタルまたはコンクリートの乾燥抑制方法。

【公開番号】特開2008−273765(P2008−273765A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117007(P2007−117007)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】