説明

モータ装置

【課題】FM帯及びDAB帯のノイズを低減する軽量のモータ装置を提供する。
【解決手段】
モータの駆動回路1において、モータブラシ6P及び6Mとヨーク5との間に、ノイズ除去装置として空芯コイル8とコンデンサ9とが接続される。空芯コイル8は、モータブラシ6P及び6Mとヨーク5との間のバスバー11を螺旋状に巻くことで形成され、コンデンサ9はバスバー11とヨーク5との間に誘電体12を配設することで形成される。コンデンサ9の自己共振周波数をFM帯とし、空芯コイル8の自己共振周波数をコンデンサの自己共振周波数よりも大きくすることで、FM帯及びDAB帯におけるノイズを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、モータ装置に関し、特に、ブラシ付きのモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付きモータが回転すると、ブラシとコンミテータと間の放電によりノイズが発生する。従来から、こうしたノイズを低減するブラシ付きモータ装置として、特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1に記載のモータ装置では、モータのブラシに接続されているチョークコイルと、一端が当該チョークコイルに接続されるとともに他端がヨークに接続されたコンデンサとによってノイズフィルタを構成し、当該ノイズフィルタによってノイズを低減している。
詳しくは、チョークコイルとして、フェライトコアに巻線を施したものを採用して、当該チョークコイルのインダクタンスを高く設定することにより、このチョークコイルを用いて約70〜110MHzの周波数領域(以下、FM帯と記す)のノイズを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭57−49571
【発明の概要】
【0004】
ところで、近年では、FM帯よりも高域の約174〜240MHzの周波数領域(以下、DAB帯と記す)のノイズ低減についても規格が増えてきた。しかしながら、上記従来のモータ装置では、チョークコイルの自己共振周波数がFM帯付近にあるため、DAB帯のノイズを十分に低減することができない。また、チョークコイルのフェライトコアが重く、モータ装置が重くなるという問題がある。
【0005】
本願は上記問題に鑑みてなされたものであり、FM帯及びDAB帯のノイズを低減する軽量のモータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、回転子を収容する導電性の筐体を有して構成され、前記回転子のコンミテータにブラシを接触させて供給される電力により当該回転子が前記筐体に対し回転するモータ装置において、前記ブラシと電源端子との間に設けられている空芯コイルと、前記空芯コイルの前記電源端子側の端部と前記筐体との間に設けられているコンデンサと、を備え、前記空芯コイルの自己共振周波数が、前記コンデンサの自己共振周波数よりも高く構成されている。このようにブラシと筐体との間にノイズフィルタを構成することにより、ブラシとコンミテータと間の放電により発生しモータの電源端子に重畳されるノイズを低減することができる。
特に、コイルとしてフェライトコアを用いない空芯コイルを採用しているため、モータ装置を軽量化することができる。
また、空芯コイルであるため、フェライトを用いたコイルよりも自己共振周波数を大きくすることができ、空芯コイルの自己共振周波数をコンデンサの自己共振周波数よりも高くして、コンデンサの自己共振周波数を例えばFM帯付近に設定することにより、FM帯及びDAB帯のノイズを効果的に低減することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、前記ブラシと前記電源端子とが、バスバーを介して接続されており、前記空芯コイルが、螺旋状に巻かれた前記バスバーにより構成されている。
このように、新たに空芯コイルを実装することなく、従来からモータを構成しているバスバーで空芯コイルを構成することにより、モータ装置の部品点数を削減することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明では、前記ブラシと前記筐体とが、バスバーを介して接続されており、前記コンデンサが、前記導電性の筐体と、前記バスバーと、前記筐体と前記バスバーとの間に配設されている誘電体とを有して構成されている。
このように、新たにコンデンサを実装することなく、従来からモータを構成しているバスバーや筐体でコンデンサを構成することにより、モータ装置の部品点数を削減することができる。
【0009】
請求項4に記載の発明では、前記筐体の外側に配設されている外部端子群を備え、前記電源端子が外部電源端子として前記外部端子群に含まれ、前記筐体が前記外部端子群に含まれる外部接地端子に接続され、前記コンデンサが前記外部電源端子と前記外部接地端子とに接続されている。
このように外部電源端子及び外部接地端子を外部端子群に含ませることにより、コンデンサを筐体の外部に配置することができる。この場合、例えば、プリント配線基板にコンデンサ実装用のパッドを設け、当該パッドにそれぞれ外部電源端子及び外部接地端子を接続することにより、コンデンサをプリント配線基板に実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態におけるモータの駆動回路を示した図
【図2】コイルとコンデンサとの接続部の詳細を示した図
【図3】第1実施形態の計算におけるノイズ低減結果を示した図
【図4】第1実施形態の実験結果におけるノイズ低減効果を示した図
【図5】第2実施形態におけるモータの駆動回路を示した図
【図6】第2実施形態におけるモータの外観を示した図
【図7】4ブラシモータの駆動回路を示した図
【図8】6ブラシモータの駆動回路を示した図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いながら、本願発明の複数の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるモータ装置2aの駆動回路1を示した図である。同図1では、モータ装置2aの電源4による駆動がスイッチ3のオンオフにより制御されることを想定している。詳しくは、モータ装置2aの+側ブラシ6Pは、スイッチ3を介して電源4の+極に接続され、−側ブラシ6Mは、電源4の−極に接続されて、駆動回路1が構成されている。
【0012】
モータ装置2aは、筐体としてのヨーク5と、当該ヨーク5の内部に+側ブラシ6P及び−側ブラシ6Mと、コンミテータ7aを有する回転子7とを備えたブラシを有して構成されている。そして、モータ装置2aの+側ブラシ6P及び−側ブラシ6Mとヨーク5との間にそれぞれ空芯コイル8が設けられ、当該2つの空芯コイル8の電源4側と当該ヨーク5との間にそれぞれコンデンサ9が設けられている。
【0013】
図2は、空芯コイル8とコンデンサ9との接続部の詳細を示した図である。同図2では、図1の+側ブラシ6P及び−側ブラシ6Mにそれぞれピグテール10が接続され、当該ピグテール10にバスバー11が接続され、バスバー11のピグテール10側の端部とは反対側の端部に図1のスイッチ3を介して電源4が接続されていることを想定している。
バスバー11は螺旋状に巻かれて、空芯コイル8を形成している。バスバー11とヨーク5との間には誘電体12が配設されており、バスバー11と誘電体12とヨーク5とでコンデンサ9を形成している。この場合、+側ブラシ6P及び−側ブラシ6Mは、それぞれバスバー11を介してヨーク5に接続される。
【0014】
このように、空芯コイル8を採用することによって、フェライトコアを用いたコイルよりも自己共振周波数を大きくしている。そして、空芯コイル8の自己共振周波数をコンデンサ9の自己共振周波数よりも高くし、例えば、コンデンサ9の自己共振周波数をFM帯付近に設定している。
【0015】
図3及び図4は、本実施形態におけるノイズ低減効果を説明するための図である。図3は、ノイズ周波数に対するノイズの電界強度の計算結果を、図4はその実測値を示している。図3において、細実線はコイルとコンデンサを用いていないモータ装置の場合の電界強度を、細点線は従来のモータ装置(自己共振周波数がFM帯のコンデンサとフェライトコアを有したコイルとを備えて構成されたモータ装置)を用いた場合の電界強度を、太実線は本実施形態のモータ装置(自己共振周波数をDAB帯とする空芯コイル8と自己共振周波数をFM帯としたコンデンサ9とを備えて構成されたモータ装置)を用いた場合の電界強度を示している。
【0016】
図3によれば、従来のモータ装置では、コイルとコンデンサを用いていないモータ装置の場合に比べて、FM帯においては電界強度が低減される一方で、DAB帯においては電界強度の低減が見られないことが分かる。要するに、従来のモータ装置では、FM帯のノイズは低減することができるものの、DAB帯のノイズは低減することができない。
【0017】
一方、本実施形態の空芯コイル8とコンデンサ9とを備えて構成したモータ装置では、FM帯及びDAB帯の両周波数帯における電界強度が低減されていることが分かる。要するに、本実施形態のモータ装置では、空芯コイル8の自己共振周波数をコンデンサ9の自己共振周波数よりも高くし、例えば、コンデンサ9の自己共振周波数をFM帯付近に設定し、空芯コイル8の自己共振周波数をDAB帯付近にすることにより、FM帯のノイズを低減することができることに加えて、DAB帯のノイズを低減することができる。フェライトコアを有していない空芯コイル8を採用しているため、そのインダクタンスはフェライトコアを有するコイルよりも小さくなり、上述の如く自己共振周波数をDAB帯付近まで大きくすることができる。
【0018】
さらに、本実施形態のモータ装置では、コイルとして空芯コイル8を採用しており、フェライトコアを有していない。空芯コイル8は、重いフェライトコアを有していないため、フェライトコアを有したコイルに比べて軽量化することができる。
【0019】
また、コイルに大電流が流れた場合でも、磁気飽和を起こすことがない。また、コイルの温度上昇によるノイズ低減効果の低下が少ない。
【0020】
上述したとおり、従来からモータ装置内にあるバスバー11を螺旋状に巻くことで空芯コイル8を形成し、バスバー11とヨーク5と誘電体12とでコンデンサ9を形成している。そのため、新たにコイルやコンデンサを実装させることがなくノイズフィルタを形成することができ、部品点数を削減することができる。なお、コンデンサ9の容量は、バスバー11とヨーク5との向かい合う面積や距離、誘電体12の誘電率を調節することによって変化させることができる。
【0021】
(第2実施形態)
図5及び図6は、第2実施形態を説明するための図である。図5は、モータ装置2bの駆動回路を示し、図6はモータ装置2bの外観を示している。
モータ装置2bは、ヨーク5の外側に+端子13と−端子14と接地端子15とを含む外部端子群16を備えている。ヨーク5の内部において、+端子13と+側ブラシ6Pとが接続されており、+端子13と+側ブラシ6Pとの間に空芯コイル8が接続されている。同様に、−端子14と−側ブラシ6Mとが接続されており、−端子14と−側ブラシ6Mとの間に空芯コイル8が接続されている。
【0022】
モータ装置2bの外部において、+端子13と接地端子15との間、及び−端子14と接地端子15との間にそれぞれコンデンサ9が接続されている。
例えば図5では、モータ装置2bの外部に設けられたECU室17内に配設されたプリント配線基板18に形成されたコンデンサ実装用の複数のパッドやスルーホールにそれぞれ+端子13、−端子14及び接地端子15が接続され、コンデンサ9がプリント配線基板18に実装されている。
【0023】
本第2実施形態では、+端子13と−端子14と接地端子15とを含む外部端子群16をヨーク5の外部に備えているため、コンデンサをモータ装置2bの外部に設けることができる。
例えば、図5に示すようにプリント配線基板18にコンデンサ9を実装することができる。これにより、モータ装置2bを含むモータ駆動回路の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0024】
(他の実施形態)
上記実施形態では、2つのブラシ6P,6Mを有するモータ装置2aやモータ装置2bを例示したが、4つ以上のブラシを有するモータ装置にも適用可能である。
例えば、4つ以上のブラシを有するモータ装置では、複数の+側ブラシに共通する空芯コイルを接続し、複数の−側ブラシに共通する空芯コイルを接続する。
具体的には、図7に示すように、4ブラシを有するモータ装置2cでは、各+側ブラシ6Pに共通の空芯コイル8を接続し、各−側ブラシ6Mに共通の空芯コイル8を接続する。また、図8に示すように、6ブラシを有するモータ装置2dでは、各+側ブラシ6Pに共通の空芯コイル8を接続し、各−側ブラシ6Mに共通の空芯コイル8を接続する。
【符号の説明】
【0025】
1・・・駆動回路
2a,2b,2c,2d・・・モータ
3・・・スイッチ
4・・・電源
5・・・ヨーク
6P・・・+側ブラシ
6M・・・−側ブラシ
7・・・回転子
7a・・・コンミテータ
8・・・空芯コイル
9・・・コンデンサ
10・・・ピグテール
11・・・バスバー
12・・・誘電体
13・・・+端子
14・・・−端子
15・・・接地端子
16・・・外部端子郡
17・・・ECU室
18・・・プリント配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子を収容する導電性の筐体を有して構成され、前記回転子のコンミテータにブラシを接触させて供給される電力により当該回転子が前記筐体に対し回転するモータにおいて、
前記ブラシと電源端子との間に設けられている空芯コイルと、
前記空芯コイルの前記電源端子側の端部と前記筐体との接続経路の間に設けられているコンデンサと、を備え、
前記空芯コイルの自己共振周波数は、前記コンデンサの自己共振周波数よりも高いことを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
前記ブラシと前記電源端子とは、バスバーを介して接続されており、
前記空芯コイルは、螺旋状に巻かれた前記バスバーにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記ブラシと前記筐体とは、バスバーを介して接続されており、
前記コンデンサは、前記筐体と、前記バスバーと、前記筐体と前記バスバーとの間に配設されている誘電体とを有して構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記筐体の外側に配設されている外部端子群を備え、
前記電源端子は、外部電源端子として前記外部端子群に含まれ、
前記筐体は、前記外部端子群に含まれる外部接地端子に接続され、
前記コンデンサは、前記外部電源端子と前記外部接地端子とに接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のモータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−147544(P2012−147544A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2818(P2011−2818)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】