説明

モータ電力制御装置

【課題】相対的に低い電流制御により相対的に高い電流制御に相当する電力を発電機から電動モータへ供給することを可能とする。
【解決手段】エンジン3側に連動して発電を行ないバッテリィ5に充電する第1の発電機7以外にエンジン3側に連動して発電を行ない電動モータ13に電力供給を行う第2の発電機9を設け、第2の発電機9に界磁電流を制御する電流制御部11を接続し、電流制御部11による相対的に低い界磁電流の制御により相対的に高い電流制御に相当する電力を前記第2の発電機9から電動モータ13へ供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを駆動源とする自動車駆動系のトルク伝達制御を行うクラッチ等に供されるモータ電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1のような自動車駆動系のトルク伝達制御を行う摩擦クラッチが知られており、その締結制御の駆動源として電動モータが用いられている。この電動モータへの供給電力を制御するモータ電力制御装置としては、一般に図4のようなものである。
【0003】
この図4のように、摩擦クラッチ締結制御の駆動源である電動モータ101は、電流制御部103の出力側に接続され、電流制御部103の入力側にバッテリィ105が接続されている。
【0004】
バッテリィ105は、エンジン107に連動する発電機109に接続され、自動車の走行中に発電機109を介してバッテリィ105が充電されるようになっている。
【0005】
バッテリィ105から電動モータ101への供給電力の制御は、電流制御部103により行われる。
【0006】
従って、電流制御部103による電動モータ101への供給電力制御を行いクラッチ締結制御を行わせることができる。
【0007】
しかし、前記摩擦クラッチの締結制御に用いられる電動モータ101の電力制御は、オーディオ等の通常の2〜3Amの低い電流制御に比較して50〜60Amの高い電流制御を行わなければならず、電流制御部103の容量が大きくなり、高価になるという問題があった。
【0008】
また、ワイパーやドア・ウィンドウのモータ等も、20〜30Amの高い電流制御を行わなければならず、同様の問題を有していた。
【特許文献1】特開2007−170667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、電動モータへ高い電力供給を行うとバッテリィから電動モータへの高い電流制御を行わなければならず、制御部の容量が大きく、高価になる点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、相対的に低い電流制御により相対的に高い電流制御に相当する電力を発電機から電動モータへ供給するために、エンジン側に連動して発電を行ないバッテリィに充電する第1の発電機以外に前記エンジン側に連動して発電を行ない電動モータに電力供給を行う第2の発電機を設け、前記第2の発電機に界磁電流を制御する電流制御部を接続し、前記電流制御部による相対的に低い界磁電流の制御により相対的に高い電流制御に相当する電力を前記第2の発電機から前記電動モータへ供給することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のモータ電力制御装置は、エンジン側に連動して発電を行ないバッテリィに充電する第1の発電機以外に前記エンジン側に連動して発電を行ない電動モータに電力供給を行う第2の発電機を設け、前記第2の発電機に界磁電流を制御する電流制御部を接続し、前記電流制御部による相対的に低い界磁電流の制御により相対的に高い電流制御に相当する電力を前記第2の発電機から前記電動モータへ供給することができる。
【0012】
そして、電流制御部による界磁電流の制御は、相対的に低い電流制御とすることができ、電流制御部の容量を大きくする必要がなく、安価にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
相対的に低い電流制御により相対的に高い電流制御に相当する電力を発電機から電動モータへ供給するという目的を、発電機の界磁電流の制御により実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係るモータ電力制御装置のブロック図、図2は、発電機の断面図である。
【0015】
図1のように、モータ電力制御装置1には、エンジン3に連動して発電を行ないバッテリィ5に充電する第1の発電機7以外に、第2の発電機9が設けられている。
【0016】
第2の発電機9に界磁電流を制御する電流制御部11を接続し、第2の発電機9に電動モータ13を接続して第2の発電機9の発電電力を電動モータ13に供給する。
【0017】
前記第1,第2発電機7,9は、図1,図2のように直列に結合され、プーリ15とエンジン3側のプーリ17との間にベルトが掛け回され、第1,第2発電機7,9がエンジン3に連動回転する構成となっている。
【0018】
前記電流制御部11は、第2の発電機9のステータ・コイル19に付与する電流(界磁電流)を制御し、ステータ・コア21とからなる電磁石の界磁を制御する構成となっている。
【0019】
電流制御部11の制御によりステータ・コイル19に付与する電流を小さく(大きく)制御すると発生する磁界も弱く(強く)、出力側のヨーク23に生じる起電力も小さく(大きく)、ブラシ25から出力される電流も小さく(大きく)なる。
【0020】
前記電動モータ13は、例えば自動車駆動系のトルク伝達制御を行うクラッチの締結制御、又はワイパー、若しくはドア・ウィンドウの駆動源として用いられている。
【0021】
そして、前記電流制御部11によりステータ・コイル19に付与する相対的に低い界磁電流の制御により相対的に高い電流制御に相当する電力を前記第2の発電機9から前記電動モータ13へ供給し、トルク伝達制御を行うクラッチの締結制御等を確実に行わせることができる。
[実施例1の効果]
本発明実施例1のモータ電力制御装置1は、エンジン3側に連動して発電を行ないバッテリィ5に充電する第1の発電機7以外に前記エンジン3側に連動して発電を行ない電動モータ13に電力供給を行う第2の発電機9を設け、前記第2の発電機9に界磁電流を制御する電流制御部11を接続し、前記電流制御部11による相対的に低い界磁電流の制御により相対的に高い電流制御に相当する電力を前記第2の発電機9から前記電動モータ13へ供給することができる。
【0022】
そして、電流制御部11による界磁電流の制御は、相対的に低い電流制御とすることができ、電流制御部11の容量を大きくする必要がなく、安価にすることができる。
【0023】
前記電動モータ13は、自動車駆動系のトルク伝達制御を行うクラッチの締結制御、又はワイパー、若しくはドア・ウィンドウの駆動源として用いられている。
【0024】
このため、電流制御部11による相対的に低い界磁電流の制御で、第2の発電機9から電動モータ13へ確実な電力供給を行わせ、クラッチの締結制御、又はワイパー、若しくはドア・ウィンドウの駆動を確実に行わせることができる。
【実施例2】
【0025】
図3は、実施例2に係るモータ電力制御装置のブロック図である。なお、基本的な構成は、実施例1と同様であり、同一又は対応する構成部分には同符号又は同符号にAを付して説明する。
【0026】
図3のように、本実施例のモータ電力制御装置1Aは、電動モータ13を、切換スイッチ19を介して接続し、この切換スイッチ19に、他の電装品、例えばエア・コンディショナ21を接続している。切換スイッチ19の切り換えは、電流制御部11Aからの信号により行われるようになっている。
【0027】
従って、自動車駆動系のトルク伝達制御を行うクラッチの締結制御、又はワイパー、若しくはドア・ウィンドウの駆動が行われず、電動モータ13が動作しないとき、電流制御部11Aは、切換スイッチ19をエア・コンディショナ21側に切り換え、エア・コンディショナ21側への電力供給制御を行う。
【0028】
このため、本実施例では、実施例1の効果に加え、第2の発電機9を有効に稼働させることができる。
[その他]
前記第2の発電機9は、第1の発電機7に直列に結合させたが、第2の発電機9を、第1の発電機7とは別個に配置することもできる。
【0029】
また、電動モータは、車両に搭載されるものであれば、実施例に開示された以外の機構に用いる構成でも良く、同様に上述された効果を享授することができる。
【0030】
さらに、トルク伝達制御を行うクラッチとしては、多板クラッチのように、中間性御可能なものの他に、ドグクラッチのように断続作用を行うものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】モータ電力制御装置のブロック図である。(実施例1)
【図2】発電機の断面図である。(実施例1)
【図3】モータ電力制御装置のブロック図である。(実施例2)
【図4】モータ電力制御装置のブロック図である。(従来例)。
【符号の説明】
【0032】
1,1A モータ電力制御装置
3 エンジン
5 バッテリィ
7 第1の発電機
9 第2の発電機
11,11A 電流制御部
13 電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側に連動して発電を行ないバッテリィに充電する第1の発電機以外に前記エンジン側に連動して発電を行ない電動モータに電力供給を行う第2の発電機を設け、
前記第2の発電機に界磁電流を制御する電流制御部を接続し、
前記電流制御部による相対的に低い界磁電流の制御により相対的に高い電流制御に相当する電力を前記第2の発電機から前記電動モータへ供給する、
ことを特徴とするモータ電力制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータ電力制御装置であって、
前記電動モータは、自動車駆動系のトルク伝達制御を行うクラッチの締結制御、又はワイパー、若しくはドア・ウィンドウの駆動源である、
ことを特徴とするモータ電力制御装置。
【請求項3】
請求項2記載のモータ電力制御装置であって、
前記電動モータを、切換スイッチを介して接続し、
前記切換スイッチに、他の電装品を接続し、
前記切換スイッチの切り換えにより前記他方の発電機から前記電動モータ又は他の電装品へ切り換えて電力供給を可能とした、
ことを特徴とするモータ電力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−274629(P2009−274629A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128810(P2008−128810)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000225050)GKN ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 (409)
【Fターム(参考)】