モータ駆動システム
【課題】コストの上昇を招くことなく、大容量のモータ出力を得ることができるモータ駆動システムを提供する。
【解決手段】2組の巻線L1,L2を有するモータ20を採用し、そのモータ20に対する駆動電力を出力するスイッチング回路5を設け、このスイッチング回路5の出力端とモータ20の巻線との間を2組の配線8u,8v,8wおよび配線9u,9v,9wによって分配配線する。
【解決手段】2組の巻線L1,L2を有するモータ20を採用し、そのモータ20に対する駆動電力を出力するスイッチング回路5を設け、このスイッチング回路5の出力端とモータ20の巻線との間を2組の配線8u,8v,8wおよび配線9u,9v,9wによって分配配線する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和機等に用いられるモータ駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機等に用いられるモータ駆動システムでは、商用電源の交流電圧が直流電圧に変換され、その直流電圧がスイッチング回路で交流電圧に変換され、その交流電圧が駆動電力としてモータの巻線に供給される。そして、モータの巻線に流れる電流が検出され、その検出電流に応じてスイッチング回路における各スイッチング素子がオン,オフ制御される(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平2003−230286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大容量のモータ駆動にはインバータと巻線との間に流れる電流も大きくなり、その大電流容量の配線が必要となる。また、配線だけでなくモータと配線及びインバータと配線の接続部分についても大電流容量の接続部品を用いなければならない。
【0004】
一方、大容量のモータ出力が必要な場合、複数のモータを複数のスイッチング回路で駆動するなどの対応も考えられるが、コストの上昇を招くという問題がある。
【0005】
この発明は上記の事情を考慮したもので、その目的は、モータとインバータ間の配線の容量が小さくて済み、複数のモータや複数のスイッチング回路を用いることなく、よってコストの上昇を招くことなく、大容量のモータ出力が可能なモータ駆動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明のモータ駆動システムは、複数組の三相巻線を有するモータと、交流電圧を直流電圧に変換しその直流電圧をスイッチングにより三相交流に変換して出力する単一のスイッチング回路と、このスイッチング回路の出力と上記モータの各三相巻線との間を並列接続する複数組の配線と、を備える。
【0007】
また、請求項3に係る発明のモータ駆動システムは、各相ごとに複数の並列巻線からなる三相巻線を有するモータと、交流電圧を直流電圧に変換しその直流電圧をスイッチングにより三相交流に変換して出力する単一のスイッチング回路と、このスイッチング回路の出力と上記モータの各三相巻線との間を並列接続する複数組の配線と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明のモータ駆動システムによれば、コストの上昇を招くことなく、大容量のモータ出力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[1]以下、この発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、三相交流商用電源1の交流電圧が整流回路3に入力され、その整流回路3から出力される直流電圧がインダクタ2、平滑コンデンサ4を介してスイッチング回路5に入力される。スイッチング回路5は、入力される直流電圧をスイッチングにより三相の交流電圧に変換して出力するもので、2つのスイッチング素子(例えばMOSFET)Tu1,Tu2を直列に接続してなるU相直列回路(第1直列回路)、2つのスイッチング素子Tv1,Tv2を直列に接続してなるV相直列回路(第2直列回路)、2つのスイッチング素子Tw1,Tw2を直列に接続してなるW相直列回路(第3直列回路)を有し、この各直列回路における2つのスイッチング素子の相互接続点を通して各相電流が流れる。これら整流回路3、平滑コンデンサ4、およびスイッチング回路5により、インバータが構成されている。
【0010】
そして、スイッチング回路5の各直列回路における2つのスイッチング素子の相互接続点に、3電流センサ方式の電流検出部6を介して出力端子7が接続される。電流検出部6は、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する相電流Iu,Iv,Iwを検出する。出力端子7は、U相用、V相用、W相用の3つの接続端子を有する。
【0011】
20は容量の大きい直流ブラシレスモータで、複数組たとえば2組のY型結線された三相巻線L1,L2を有する。この2組の三相巻線の仕様は、ほぼ同一となっている。三相巻線L1は星形結線されたU相巻線U1、V相巻線V1、W相巻線W1からなり、三相巻線L2は星形結線されたU相巻線U2、V相巻線V2、W相巻線W2からなる。この巻線L1の相巻線U1,V1,W1の非結線端にモータ端子11の3つの接続端子が接続され、巻線L2の相巻線U2,V2,W2の非結線端にモータ端子12の3つの接続端子が接続される。そして、出力端子7の各端子とモータ端子11及びモータ端子12との間に各々3本の各相配線8u,8v,8wからなる配線8と3本の各相配線9u,9v,9wからなる配線9とが接続される。この際、インバータの出力端子7の端子とモータ端子11、12の各UVW相が一致するように接続される。すなわち、出力端子7の各端子には同相の2つの配線が共通して接続される。
【0012】
30は主制御部であるMCUで、電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwに応じてスイッチング回路5の各スイッチング素子をオン,オフ制御するもので、さらに、主要な機能として次の(1)(2)の手段を有する。
(1)電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwの互いの比較により、上記配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出する接続外れ検出手段。
(2)上記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、スイッチング回路5のスイッチングを停止する制御手段。
【0013】
なお、接続外れは、主に端子7,11,12位置での配線8,9の外れ、いわゆる配線抜けが主であるが、発生の可能性は極めて低い配線8.9途中の断線も含まれる。
【0014】
続いて第1の実施形態の作用を説明する。
MCU30によってスイッチング回路5の各スイッチング素子がオン,オフ駆動されることにより、スイッチング回路5から三相の交流電圧が出力される。この出力電圧が出力端子7、配線8u,8v,8w,9u,9v,9w、モータ端子11,12を介してモータ20の三相巻線L1,L2に印加される。これにより、モータ20が回転する。
【0015】
このモータ20の動作時、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する相電流Iu,Iv,Iwが電流検出部6で検出されており、その検出電流に応じてモータ20のロータ位置が推定され、推定された位置に応じてスイッチング回路5の各スイッチング素子に対するオン,オフ駆動が制御される。この結果、モータ20が回転する。ここで、モータ20の2組の巻線にはほぼ同じ電流が流れる。したがって、配線8,9それぞれに流れる電流もほぼ同じとなる。このため、モータ20内で、巻線L1,L2の同相となる各巻線、例えばU1とU2を内部で結線し、U,V,Wの三相分の3接続端子のコネクタとし、これをインバータの出力端子7の各々と1本の配線で接続した場合に比べ、各配線に流れる電流はほぼ半分となる。このため、低い電流容量の配線を用いて大容量のモータ駆動が可能となる。
【0016】
また、このモータが空気調和機等に用いられる密閉型圧縮機駆動用モータである場合には、図1に示すようにモータ20は、耐圧密閉容器である圧縮機ケース20a内に収納され、外部にあるインバータとの接続は圧縮機ケース20aの外表面に取り付けられた気密接続端子11,12で行なわれる。この密閉容器の接続端子11,12は、流れる電流が多くなるにしたがって大きな端子が必要となり、さらに取り付けには高圧冷媒に対する気密性が要求されるため、圧縮機ケース20aへの取り付けが難しくなる。また、例えば40Aを超えるような電流が流れる場合にはねじ止め端子となり、その接続に手間がかかる。これに対して、本実施形態のように配線8、9を2組にするとともに圧縮機側の接続端子11、12も2組にすれば、それぞれに流れる電流は半分となり、例えばモータに40Aを流す必要がある場合でも、それぞれの配線経路に流れる電流は半分の20Aとなるため、配線8、9のみならず、接続端子11、12も小形化でき、かつねじ止め端子ではなく、差込接続できる平型(ファストン)端子を用いることが可能となり、製造性も向上する。
【0017】
続いて、配線8,9の接続外れ検出のために、MCU30では、電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwの実効値の最大値と最小値との差及び検出される相電流Iu,Iv,Iwの実効値の平均値が求められ、この平均値に対する上記求められた差の比率がモータ電流最大偏差比(%)として求められる。そして、このモータ電流最大偏差比(%)と予め定められている配線外れ判定値(%)、例えば20%、とが比較され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)未満であれば配線外れなしと判定され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)以上の場合に配線外れありと判定される。
【0018】
なお、電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwのいずれかが零を継続した場合(欠相運転)にも、配線外れありと判定される。
【0019】
配線外れのない通常時、配線8uが外れたとき、配線8vが外れたとき、配線8wが外れたときの、相電流Iu,Iv,Iwの実効値、相電流Iu,Iv,Iwの実効値の平均値、モータ電流最大偏差比(%)の例を図2に示している。この図からわかるように配線の外れが生じるとその相に流れる電流は他の正常な相電流に比較し、大きく減少する。したがって、この電流の変化を各相電流との比較することで配線外れが検出できる。
【0020】
なお、配線外れの判断基準として偏差を用いているが、相電流Iu,Iv,Iwの実効値の最大値と最小値との差を用いて配線外れを判断することも可能であるが、この場合にはトータル電流が小さい状態では電流値の差も小さくなるため、トータル電流が所定値以上の場合のみ判定するとかトータル電流に比例して判定値を変更する等の処置が必要となり、設定が面倒になる。これに対して、モータ電流最大偏差比(%)等の各相電流間の相対値を用いれば、トータル電流が小さくとも設定が一律で済み、正確に判定ができる。なお、各モータ巻線は、抵抗、インダクタンスが同じに設定されているが、実際のモータでは若干の製造誤差が生じ、各相電流はわずかながら電流アンバランスを生じる場合もある。配線外れ判定値(%)をあまり小さな値にしてしまうとこのアンバランスによって生じた電流差を配線外れと判断してしまう可能性があるため、ある程度の余裕度をみて設定することが望ましい。
【0021】
判定の結果、配線外れありの場合には、スイッチング回路5のスイッチングが停止されるとともに、配線外れありの旨がMCU30によって外部に報知される。このスイッチング停止により、相電流Iu,Iv,Iwが定格を超えて異常上昇する不具合を回避することができて、巻線L1,L2、モータ端子11,12、各配線、出力端子7が故障する事態を未然に防ぐことができる。
【0022】
なお、配線外れありと判定された場合、スイッチング回路5のスイッチングを停止する代わりに、相電流Iu,Iv,Iwの最大値が1/nに低減するようにスイッチング回路5を制御してもよい。nは出力端子7とモータ20との間の配線の組数(分配数ともいう)であり、本実施形態の場合は配線が2組なので“n=2”となる。こうして、相電流Iu,Iv,Iwの最大値を1/2に制限することにより、たとえ配線外れが生じていても、上記のような故障を防ぎながら、モータ20の運転を継続することができる。
【0023】
また、モータ電流実効値による配線外れ判定について説明したが、それに代えて、モータ電流ピーク値による配線外れ判定を行ってもよい。すなわち、電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwのピーク値の絶対値の最大値と最小値との差が求められ、さらに、同検出される相電流Iu,Iv,Iwのピーク値の絶対値の平均値が求められ、この平均値に対する上記求められた差の比率がモータ電流最大偏差比(%)として求められる。そして、このモータ電流最大偏差比(%)と予め定められている配線外れ判定値(%)、例えば20%とが比較され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)未満であれば配線外れなしと判定され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)以上の場合に配線外れありと判定される。
【0024】
実際に配線外れが生じた場合に相電流Iu,Iv,Iwのピーク値がどのような状態になるかの例を図3に示している。すなわち、配線8wの接続が外れると、相電流Iwのピーク値が相電流Iu,Ivのピーク値に比べて低くなる。このため、各相電流ピーク値を用いた場合でも互いの比較により前記配線の接続外れが検出できる。
【0025】
なお、電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwのいずれかが零を継続した場合にも、配線外れありと判定される。
【0026】
以上のように、2組の巻線L1,L2を有するモータ20を採用し、そのモータ20に対する駆動電力を出力するスイッチング回路5を設け、このスイッチング回路5の出力端とモータ20の巻線L1との間を2組の配線8u,8v,8wおよび配線9u,9v,9wによって分配配線する構成としたので、複数のモータや複数のスイッチング回路を用いることなく、よってコストの上昇を招くことなく、大容量のモータ出力を得ることができる。
【0027】
しかも、相電流Iu,Iv,Iwに応じて配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れいわゆる配線外れの有無を検出する構成としたので、配線外れが生じた場合の保護が可能となる。実際の保護手段として、スイッチング回路5のスイッチングを停止または相電流Iu,Iv,Iwの最大値を低減する制御を実行するので、配線外れから生じる新たな故障を未然に防ぐことができて、安全である。
【0028】
[2]第2の実施形態について説明する。
図4に示すように、スイッチング回路5の各直列回路における2つのスイッチング素子の相互接続点に、2電流センサ方式の電流検出部6が接続される。電流検出部6は、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する相電流Iu,Iv,Iwのうち、2つの相電流Iu,Ivを検出する。相電流Iu+Iv+Iw=0であることから、2つの相電流Iu,Ivを検出すれば、Iw=−Iu−Ivの計算によって相電流Iwが算出できる。
【0029】
この電流検出部6で検出される相電流Iu,Ivの実効値またはピーク値に応じて配線外れが検出される点は、第1の実施形態と同じである。
これにより、相電流検出回路が簡素化でき、他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0030】
[3]第3の実施形態について説明する。
この実施形態においては、図5に示すように、スイッチング回路5の各直列回路にシャント抵抗Ru,Rv,Rwが挿入接続され、そのシャント抵抗Ru,Rv,Rwに生じる電圧が電流検出部6に入力される。電流検出部6は、シャント抵抗Ru,Rv,Rwに生じる電圧に基づき、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する3つの相電流Iu,Iv,Iwを検出する。この電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwの実効値またはピーク値に応じて配線外れが検出される点は、第1の実施形態と同じである。
他の構成、作用、効果についても、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0031】
[4]第4の実施形態について説明する。
図6に示すように、スイッチング回路5の各直列回路に対して1つのシャント抵抗Ruvwが接続され、そのシャント抵抗Ruvwに生じる電圧が電流検出部6に入力される。このシャント抵抗に流れる電流は、相電流Iu,Iv,Iwの合計となるが、インバータの各スイッチング素子Tu1〜Tw2は特定のPWMスイッチングを行なっている。このため、PWMの個々のスイッチングパターンに応じて特定タイミングでは、特定の1相または2相の相電流が流れている。したがって、各スイッチング素子Tu1〜Tw2のスイッチングタイミングに合わせて電流検出部6で、シャント抵抗Ruvwに生じる電圧を検出し、PWMのスイッチングパターンと関連付けて演算処理することで、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する3つの相電流Iu,Iv,Iwを検出する。この電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwの実効値またはピーク値に応じて配線外れが検出される点は、第1の実施形態と同じである。
他の構成、作用、効果についても、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0032】
[5]第5の実施形態について説明する。
図7に示すように、スイッチング回路5の各直列回路における2つのスイッチング素子の相互接続点に、2電流センサ方式の電流検出部6が接続される。電流検出部6は、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する相電流Iu,Iv,Iwのうち、2つの相電流Iu,Ivを検出する。
さらに、配線8u,8v,8wに流れる相電流Iu1,Iv1,Iw1および配線9u,9v,9wに流れる相電流Iu2,Iv2,Iw2のうち、電流検出部6の検出対象(Iu,Iv)から外れた1つの相電流Iw2が検知される。すなわち、1本の配線9wに電流センサ41が取付けられ、その電流センサ41によって巻線L2側の相電流Iw2が検知される。
【0033】
MCU30は、主要な機能として次の(11)(12)の手段を有する。
(11)電流検出部6で検出される2つの相電流Iu,Ivの互いの比較により配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出するとともに、電流検出部6で検出される2つの相電流Iu,Ivと電流センサ41で検知される1つの相電流Iw2との比較により配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出する接続外れ検出手段。
(12)上記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、スイッチング回路5のスイッチングを停止(または相電流Iu,Iv,Iwの最大値を低減)する制御手段。
【0034】
作用を説明する。
配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れ検出いわゆる配線外れ検出のために、電流検出部6で検出される相電流Iu,Ivの実効値(またはピーク値)の差が求められるとともに、同検出される相電流Iu,Ivの実効値(またはピーク値)の平均値が求められ、この平均値に対する上記求められた差の比率がモータ電流最大偏差比(%)として求められる。そして、このモータ電流最大偏差比(%)と予め定められている配線外れ判定値(%)とが比較され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)未満であれば配線外れなしと判定され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)以上の場合に配線外れありと判定される。
【0035】
なお、電流検出部6で検出される相電流Iu,Ivのいずれかが零を継続した場合にも、配線外れありと判定される。以上が相電流Iu,Ivに対応する配線8u,8v,9u,9vの配線外れ検出となる。一方、電流センサ41で検知される相電流Iw2の実効値(またはピーク値)が、電流検出部6で検出される2つの相電流Iu,Ivの実効値(またはピーク値)の平均値をIaとすると、“Ia*1/2+α”以上のとき、および“Ia*1/2−α”未満のとき、それぞれ相電流Iwに対応する配線8w,9wの配線外れありと判定される。“α”は固定値または変数である。なお、相電流Iw2が“Ia*1/2+α”以上のときは、配線8wの配線外れであり、相電流Iw2が0(“Ia*1/2−α”未満)の場合には、電流センサ41が取付けられた配線9wの外れである。
【0036】
他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0037】
[6]第6の実施形態について説明する。
図8に示すように、モータ20の巻線として、相巻線U1,U2の並列体、相巻線V1,V2の並列体、相巻線W1,W2の並列体を星形結線してなる巻線Lが採用される。この巻線Lは、上記各実施形態の巻線L1,L2に相当する。この実施形態では、相巻線U1,U2、相巻線V1,V2の並列体、相巻線W1,W2の並列体の入力側端部において、モータ内で再び配線を2組に2分して並列に設け、それぞれを接続端子11、12に接続している。このため、インバータの各スイッチング素子Tu1〜Tw2から接続端子11,12への配線8、9も2組としている。このため、それぞれに流れる電流は半分となり、低い電流容量の配線を用いて大容量のモータ駆動が可能となる。
【0038】
また、第1ないし第5実施形態においては、配線外れが生じた相の巻線電流が減少したが、この実施例においては、モータ巻線の形態が異なるため、配線外れが発生した場合でも相電流が大きく変化しない。例えば、配線8uが外れた場合、本来配線8uに流れていた電流は、同じ相のもう一方の配線9uに流れることになり、配線9uに流れる電流が2倍となって、合計された相電流Iuはほとんど変化しない。
【0039】
そこで、このモータ巻線を用いる場合には、スイッチング回路5の各直列回路における2つのスイッチング素子の相互接続点に、2電流センサ方式の電流検出部6が接続される。さらに、2組の配線8,9のいずれかの3つの相電流が検知される。ここでは、3本の配線9u,9v,9wに電流センサ42が取付けられ、その電流センサ42によって巻線L2側の3つの相電流Iu2,Iv2,Iw2が検知される。
【0040】
MCU30は、主要な機能として次の(21)(22)の手段を有する。
(21)電流検出部6で検出される2つの相電流Iu,Ivと電流センサ42で検知される3つの相電流Iu2,Iv2,Iw2との比較により配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出する接続外れ検出手段。
(22)上記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、スイッチング回路5のスイッチングを停止(または相電流Iu,Iv,Iwの最大値を低減)する制御手段。
【0041】
作用を説明する。
電流センサ42で検知される相電流Iu2,Iv2,Iw2の実効値(またはピーク値)のいずれかが、電流検出部6で検出される2つの相電流Iu,Ivの平均実効値をIa(または平均ピーク値)とすると、“Ia*1/2+α”以上のとき、および“Ia*1/2−α”未満のとき、それぞれ配線外れありと判定される。“α”は固定値または変数である。
【0042】
この場合、配線9u,9v,9wのいずれかが配線外れになると、その配線での電流は0となる。したがってその配線の電流が“Ia*1/2−α”未満になり、配線外れが検出される。一方、配線8u,8v,8wのいずれかが配線外れになると、配線外れが生じた配線と同じ相の配線9側において、電流が約2倍になる。したがってその配線の電流が“Ia*1/2+α”以上となり、配線外れが検出される。他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0043】
なお、電流検出部6を設けることなく、電流センサ42で検知される3つの相電流Iu2,Iv2,Iw2のみである程度の配線外れを検出することもできる。例えば、第1実施形態と同様の判定方法を用い、相電流Iu2,Iv2,Iw2のピーク値の絶対値の最大値と最小値との差と、相電流Iu2,Iv2,Iw2のピーク値の絶対値の平均値を求め、この平均値に対する上記求められた差の比率をモータ電流最大偏差比(%)として求める。そして、このモータ電流最大偏差比(%)と予め定められている配線外れ判定値(%)、例えば20%とが比較され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)未満であれば配線外れなしと判定し、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)以上の場合に配線外れありと判定する。この方式の問題点は、電流センサ42が取り付けられていない配線8u,8v,8wの接続がすべて外れていた場合には配線9のみでモータを駆動することになり、この配線9の各相配線9u,9v,9wを流れる相電流Iu2,Iv2,Iw2間には相違が生じない。この場合には配線外れを判定できないことになる。
【0044】
そこで、この場合には、インバータの出力に応じて予想される相電流Iu2,Iv2,Iw2の最大値を判定基準値として定めておき、基準値よりも相電流Iu2,Iv2またはIw2に大きな電流が流れている場合には配線8のすべての配線外れであるという別の判定を組み合わせて実行する必要がある。
【0045】
[7]第7の実施形態について説明する。
第1〜第6実施形態においては、モータ運転中に配線外れを検出するようにしたが、本実施形態においては、モータ運転開始前に配線外れをチェックする。この実施形態においては、図4に示した2電流センサ方式の電流検出部6と同じで図9に示すように、スイッチング回路5のU相直列回路の相互接続点に流れる相電流Iuを検知する電流センサ(第1電流センサ)51u、V相直列回路の相互接続点に流れる相電流Ivを検知する電流センサ(第2電流センサ)51vが採用される。
MCU30は、主要な機能として次の(31)〜(33)の手段を有する。
(31)モータ20の起動前、スイッチング回路5の各スイッチング素子をオン,オフ制御することにより、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってV相直列回路の相互接続点に相電流Iu_uvが流れる第1電流経路、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってW相直列回路の相互接続点に相電流Iu_uwが流れる第2電流径路、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってU相直列回路の相互接続点に相電流Iv_vuが流れる第3電流経路、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってW相直列回路の相互接続点に相電流Iv_vwが流れる第4電流径路を順に形成する制御手段。
【0046】
(32)上記制御手段による第1電流径路の形成時に電流センサ51uで検知される相電流Iu_uvと第2電流径路の形成時に電流センサ51uで検知される相電流Iu_uwとの差(=Iu_uv−Iu_uw)に基づいて配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出するとともに、上記制御手段による第3電流径路の形成時に電流センサ51vで検知される相電流Iv_vuと第4電流径路の形成時に電流センサ51vで検知される相電流Iv_vwとの差(=Iv_vu−Iv_vw)に基づいて配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出する接続外れ検出手段。
【0047】
(33)上記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、スイッチング回路5のスイッチングを停止(または相電流Iu,Iv,Iwの最大値を低減)する制御手段。
【0048】
作用を説明する。
モータ20の起動前に、先ず、スイッチング回路5のスイッチング素子Tu1,Tv2がt1時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってV相直列回路の相互接続点に相電流が流れる第1電流経路が形成される。次に、スイッチング回路5のスイッチング素子Tu1,Tw2がt1時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってW相直列回路の相互接続点に相電流が流れる第2電流径路が形成される。続いて、スイッチング回路5のスイッチング素子Tv1,Tu2がt1時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってU相直列回路の相互接続点に相電流が流れる第3電流経路が形成される。最後に、スイッチング回路5のスイッチング素子Tv1,Tw2がt1時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってW相直列回路の相互接続点に相電流が流れる第4電流径路が形成される。これら第1〜第4電流径路の形成が一定時間だけ繰り返される。
【0049】
そして、第1電流径路が形成されたときに電流センサ51uで検知される相電流Iu_uvの実効値(またはピーク値)と第2電流径路が形成されたときに電流センサ51uで検知される相電流Iu_uwの実効値(またはピーク値)との差が求められ、その差と予め定められている配線外れ判定値とが比較される。差が配線外れ判定値未満であれば配線外れなしと判定され、配線外れ判定値以上であれば配線外れありと判定される。
【0050】
また、第3電流径路が形成されたときに電流センサ51vで検知される相電流Iv_vuの実効値(またはピーク値)と第4電流径路が形成されたときに電流センサ51vで検知される相電流Iv_vwの実効値(またはピーク値)との差が求められ、その差と予め定められている配線外れ判定値とが比較される。差が配線外れ判定値未満であれば配線外れなしと判定され、配線外れ判定値以上であれば配線外れありと判定される。
【0051】
スイッチング回路5と巻線L1,L2との間の相電流の流れ方向を図9にA,B,C,Dの矢印で示し、この流れ方向と、各相の通電パターン、検出電流、各スイッチング素子のオン,オフの関係を図10に示している。
【0052】
他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0053】
[8]第8の実施形態について説明する。
本実施形態においては、第7実施形態と同様にモータ運転開始前に配線外れをチェックする。この実施形態においては、図1に示した3電流センサ方式の電流検出部6と同様に図11に示すように、スイッチング回路5のU相直列回路の相互接続点に流れる相電流Iuを検知する電流センサ(第1電流センサ)51u、V相直列回路の相互接続点に流れる相電流Ivを検知する電流センサ(第2電流センサ)51v、W相直列回路の相互接続点に流れる相電流Iwを検知する電流センサ(第3電流センサ)51wが採用される。
【0054】
MCU30は、主要な機能として次の(41)〜(43)の手段を有する。
(41)モータ20の起動前、スイッチング回路5の各スイッチング素子をオン,オフ制御することにより、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってV相直列回路の相互接続点およびW相直列回路の相互接続点へ予め設定された値の相電流が流れる第1電流径路、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってU相直列回路の相互接続点およびW相直列回路の相互接続点へ予め設定された値の相電流が流れる第2電流径路を順に形成する制御手段。
【0055】
(42)上記制御手段による第1電流径路の形成時に電流センサ51vで検知される相電流Ivと電流センサ51wで検知される相電流Iwとの差(=Iv−Iw)に基づいて配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出するとともに、第2電流径路の形成時に電流センサ51uで検知される相電流Iuと電流センサ51wで検知される相電流Iwとの差(=Iu−Iw)に基づいて配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出する接続外れ検出手段。
【0056】
(43)上記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、スイッチング回路5のスイッチングを停止(または相電流Iu,Iv,Iwの最大値を低減)する制御手段。
【0057】
作用を説明する。
モータ20の起動前に、先ず、スイッチング回路5のスイッチング素子Tu1,Tv2,Tw2が所定時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってV相直列回路の相互接続点およびW相直列回路の相互接続点へ予め設定された値の相電流が流れる第1電流径路が形成される。次に、スイッチング回路5のスイッチング素子Tv1,Tu2,Tw2が所定時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってU相直列回路の相互接続点およびW相直列回路の相互接続点へ予め設定された値の相電流が流れる第2電流径路が形成される。この場合、予め設定された値の相電流が流れるように、上記所定時間が適宜に調節される。これら第1および第2電流径路の形成が一定時間だけ繰り返される。
【0058】
そして、第1電流径路が形成されたときに電流センサ51vで検知される相電流Ivの実効値(またはピーク値)と電流センサ51wで検知される相電流Iwの実効値(またはピーク値)との差(=Iv−Iw)が求められ、その差と予め定められている配線外れ判定値とが比較される。差が配線外れ判定値未満であれば配線外れなしと判定され、配線外れ判定値以上であれば配線外れありと判定される。
【0059】
また、第2電流径路が形成されたときに電流センサ51uで検知される相電流Iuと電流センサ51wで検知される相電流Iwとの差(=Iu−Iw)が求められ、その差と予め定められている配線外れ判定値とが比較される。差が配線外れ判定値未満であれば配線外れなしと判定され、配線外れ判定値以上であれば配線外れありと判定される。
【0060】
スイッチング回路5と巻線L1,L2との間の相電流の流れ方向を図12にA,Bの矢印で示し、この流れ方向と、各相の通電パターン、検出電流、各スイッチング素子のオン,オフの関係を図12に示している。
【0061】
他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0062】
[9]変形例
なお、上記実施形態では、2組の巻線を有するモータを例に説明したが、その巻線の組数に限定はなく、例えば3組以上あってもよい。その他、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を代えない範囲で種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における配線外れの有無、各相電流の実効値、各相電流の実効値の平均値、モータ電流最大偏差比の例を示す図。
【図3】第1の実施形態において実際に配線外れが生じた場合に各相電流のピーク値がどのような状態になるかの例を示す図。
【図4】第2の実施形態の構成を示すブロック図。
【図5】第3の実施形態の構成を示すブロック図。
【図6】第4の実施形態の構成を示すブロック図。
【図7】第5の実施形態の構成を示すブロック図。
【図8】第6の実施形態の構成を示すブロック図。
【図9】第7の実施形態の構成を示すブロック図。
【図10】第7の実施形態における相電流の流れ方向、各相の通電パターン、検出電流、各スイッチング素子のオン,オフの関係を示す図。
【図11】第8の実施形態の構成を示すブロック図。
【図12】第8の実施形態における相電流の流れ方向、各相の通電パターン、検出電流、各スイッチング素子のオン,オフの関係を示す図。
【符号の説明】
【0064】
1…商用交流電源、3…整流回路、4…平滑コンデンサ、5…スイッチング回路、Tu1,Tu2,Tv1,Tv2,Tw1,Tw2…スイッチング素子、6…電流検出部、7…出力端子、8u,8v,8w…配線、9u,9v,9w…配線、11,12…モータ端子、20…モータ、L1,L2…巻線、30…MCU(主制御部)、41,42…電流センサ、51u,51v,51w…電流センサ
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和機等に用いられるモータ駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機等に用いられるモータ駆動システムでは、商用電源の交流電圧が直流電圧に変換され、その直流電圧がスイッチング回路で交流電圧に変換され、その交流電圧が駆動電力としてモータの巻線に供給される。そして、モータの巻線に流れる電流が検出され、その検出電流に応じてスイッチング回路における各スイッチング素子がオン,オフ制御される(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平2003−230286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大容量のモータ駆動にはインバータと巻線との間に流れる電流も大きくなり、その大電流容量の配線が必要となる。また、配線だけでなくモータと配線及びインバータと配線の接続部分についても大電流容量の接続部品を用いなければならない。
【0004】
一方、大容量のモータ出力が必要な場合、複数のモータを複数のスイッチング回路で駆動するなどの対応も考えられるが、コストの上昇を招くという問題がある。
【0005】
この発明は上記の事情を考慮したもので、その目的は、モータとインバータ間の配線の容量が小さくて済み、複数のモータや複数のスイッチング回路を用いることなく、よってコストの上昇を招くことなく、大容量のモータ出力が可能なモータ駆動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明のモータ駆動システムは、複数組の三相巻線を有するモータと、交流電圧を直流電圧に変換しその直流電圧をスイッチングにより三相交流に変換して出力する単一のスイッチング回路と、このスイッチング回路の出力と上記モータの各三相巻線との間を並列接続する複数組の配線と、を備える。
【0007】
また、請求項3に係る発明のモータ駆動システムは、各相ごとに複数の並列巻線からなる三相巻線を有するモータと、交流電圧を直流電圧に変換しその直流電圧をスイッチングにより三相交流に変換して出力する単一のスイッチング回路と、このスイッチング回路の出力と上記モータの各三相巻線との間を並列接続する複数組の配線と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明のモータ駆動システムによれば、コストの上昇を招くことなく、大容量のモータ出力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[1]以下、この発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、三相交流商用電源1の交流電圧が整流回路3に入力され、その整流回路3から出力される直流電圧がインダクタ2、平滑コンデンサ4を介してスイッチング回路5に入力される。スイッチング回路5は、入力される直流電圧をスイッチングにより三相の交流電圧に変換して出力するもので、2つのスイッチング素子(例えばMOSFET)Tu1,Tu2を直列に接続してなるU相直列回路(第1直列回路)、2つのスイッチング素子Tv1,Tv2を直列に接続してなるV相直列回路(第2直列回路)、2つのスイッチング素子Tw1,Tw2を直列に接続してなるW相直列回路(第3直列回路)を有し、この各直列回路における2つのスイッチング素子の相互接続点を通して各相電流が流れる。これら整流回路3、平滑コンデンサ4、およびスイッチング回路5により、インバータが構成されている。
【0010】
そして、スイッチング回路5の各直列回路における2つのスイッチング素子の相互接続点に、3電流センサ方式の電流検出部6を介して出力端子7が接続される。電流検出部6は、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する相電流Iu,Iv,Iwを検出する。出力端子7は、U相用、V相用、W相用の3つの接続端子を有する。
【0011】
20は容量の大きい直流ブラシレスモータで、複数組たとえば2組のY型結線された三相巻線L1,L2を有する。この2組の三相巻線の仕様は、ほぼ同一となっている。三相巻線L1は星形結線されたU相巻線U1、V相巻線V1、W相巻線W1からなり、三相巻線L2は星形結線されたU相巻線U2、V相巻線V2、W相巻線W2からなる。この巻線L1の相巻線U1,V1,W1の非結線端にモータ端子11の3つの接続端子が接続され、巻線L2の相巻線U2,V2,W2の非結線端にモータ端子12の3つの接続端子が接続される。そして、出力端子7の各端子とモータ端子11及びモータ端子12との間に各々3本の各相配線8u,8v,8wからなる配線8と3本の各相配線9u,9v,9wからなる配線9とが接続される。この際、インバータの出力端子7の端子とモータ端子11、12の各UVW相が一致するように接続される。すなわち、出力端子7の各端子には同相の2つの配線が共通して接続される。
【0012】
30は主制御部であるMCUで、電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwに応じてスイッチング回路5の各スイッチング素子をオン,オフ制御するもので、さらに、主要な機能として次の(1)(2)の手段を有する。
(1)電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwの互いの比較により、上記配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出する接続外れ検出手段。
(2)上記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、スイッチング回路5のスイッチングを停止する制御手段。
【0013】
なお、接続外れは、主に端子7,11,12位置での配線8,9の外れ、いわゆる配線抜けが主であるが、発生の可能性は極めて低い配線8.9途中の断線も含まれる。
【0014】
続いて第1の実施形態の作用を説明する。
MCU30によってスイッチング回路5の各スイッチング素子がオン,オフ駆動されることにより、スイッチング回路5から三相の交流電圧が出力される。この出力電圧が出力端子7、配線8u,8v,8w,9u,9v,9w、モータ端子11,12を介してモータ20の三相巻線L1,L2に印加される。これにより、モータ20が回転する。
【0015】
このモータ20の動作時、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する相電流Iu,Iv,Iwが電流検出部6で検出されており、その検出電流に応じてモータ20のロータ位置が推定され、推定された位置に応じてスイッチング回路5の各スイッチング素子に対するオン,オフ駆動が制御される。この結果、モータ20が回転する。ここで、モータ20の2組の巻線にはほぼ同じ電流が流れる。したがって、配線8,9それぞれに流れる電流もほぼ同じとなる。このため、モータ20内で、巻線L1,L2の同相となる各巻線、例えばU1とU2を内部で結線し、U,V,Wの三相分の3接続端子のコネクタとし、これをインバータの出力端子7の各々と1本の配線で接続した場合に比べ、各配線に流れる電流はほぼ半分となる。このため、低い電流容量の配線を用いて大容量のモータ駆動が可能となる。
【0016】
また、このモータが空気調和機等に用いられる密閉型圧縮機駆動用モータである場合には、図1に示すようにモータ20は、耐圧密閉容器である圧縮機ケース20a内に収納され、外部にあるインバータとの接続は圧縮機ケース20aの外表面に取り付けられた気密接続端子11,12で行なわれる。この密閉容器の接続端子11,12は、流れる電流が多くなるにしたがって大きな端子が必要となり、さらに取り付けには高圧冷媒に対する気密性が要求されるため、圧縮機ケース20aへの取り付けが難しくなる。また、例えば40Aを超えるような電流が流れる場合にはねじ止め端子となり、その接続に手間がかかる。これに対して、本実施形態のように配線8、9を2組にするとともに圧縮機側の接続端子11、12も2組にすれば、それぞれに流れる電流は半分となり、例えばモータに40Aを流す必要がある場合でも、それぞれの配線経路に流れる電流は半分の20Aとなるため、配線8、9のみならず、接続端子11、12も小形化でき、かつねじ止め端子ではなく、差込接続できる平型(ファストン)端子を用いることが可能となり、製造性も向上する。
【0017】
続いて、配線8,9の接続外れ検出のために、MCU30では、電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwの実効値の最大値と最小値との差及び検出される相電流Iu,Iv,Iwの実効値の平均値が求められ、この平均値に対する上記求められた差の比率がモータ電流最大偏差比(%)として求められる。そして、このモータ電流最大偏差比(%)と予め定められている配線外れ判定値(%)、例えば20%、とが比較され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)未満であれば配線外れなしと判定され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)以上の場合に配線外れありと判定される。
【0018】
なお、電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwのいずれかが零を継続した場合(欠相運転)にも、配線外れありと判定される。
【0019】
配線外れのない通常時、配線8uが外れたとき、配線8vが外れたとき、配線8wが外れたときの、相電流Iu,Iv,Iwの実効値、相電流Iu,Iv,Iwの実効値の平均値、モータ電流最大偏差比(%)の例を図2に示している。この図からわかるように配線の外れが生じるとその相に流れる電流は他の正常な相電流に比較し、大きく減少する。したがって、この電流の変化を各相電流との比較することで配線外れが検出できる。
【0020】
なお、配線外れの判断基準として偏差を用いているが、相電流Iu,Iv,Iwの実効値の最大値と最小値との差を用いて配線外れを判断することも可能であるが、この場合にはトータル電流が小さい状態では電流値の差も小さくなるため、トータル電流が所定値以上の場合のみ判定するとかトータル電流に比例して判定値を変更する等の処置が必要となり、設定が面倒になる。これに対して、モータ電流最大偏差比(%)等の各相電流間の相対値を用いれば、トータル電流が小さくとも設定が一律で済み、正確に判定ができる。なお、各モータ巻線は、抵抗、インダクタンスが同じに設定されているが、実際のモータでは若干の製造誤差が生じ、各相電流はわずかながら電流アンバランスを生じる場合もある。配線外れ判定値(%)をあまり小さな値にしてしまうとこのアンバランスによって生じた電流差を配線外れと判断してしまう可能性があるため、ある程度の余裕度をみて設定することが望ましい。
【0021】
判定の結果、配線外れありの場合には、スイッチング回路5のスイッチングが停止されるとともに、配線外れありの旨がMCU30によって外部に報知される。このスイッチング停止により、相電流Iu,Iv,Iwが定格を超えて異常上昇する不具合を回避することができて、巻線L1,L2、モータ端子11,12、各配線、出力端子7が故障する事態を未然に防ぐことができる。
【0022】
なお、配線外れありと判定された場合、スイッチング回路5のスイッチングを停止する代わりに、相電流Iu,Iv,Iwの最大値が1/nに低減するようにスイッチング回路5を制御してもよい。nは出力端子7とモータ20との間の配線の組数(分配数ともいう)であり、本実施形態の場合は配線が2組なので“n=2”となる。こうして、相電流Iu,Iv,Iwの最大値を1/2に制限することにより、たとえ配線外れが生じていても、上記のような故障を防ぎながら、モータ20の運転を継続することができる。
【0023】
また、モータ電流実効値による配線外れ判定について説明したが、それに代えて、モータ電流ピーク値による配線外れ判定を行ってもよい。すなわち、電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwのピーク値の絶対値の最大値と最小値との差が求められ、さらに、同検出される相電流Iu,Iv,Iwのピーク値の絶対値の平均値が求められ、この平均値に対する上記求められた差の比率がモータ電流最大偏差比(%)として求められる。そして、このモータ電流最大偏差比(%)と予め定められている配線外れ判定値(%)、例えば20%とが比較され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)未満であれば配線外れなしと判定され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)以上の場合に配線外れありと判定される。
【0024】
実際に配線外れが生じた場合に相電流Iu,Iv,Iwのピーク値がどのような状態になるかの例を図3に示している。すなわち、配線8wの接続が外れると、相電流Iwのピーク値が相電流Iu,Ivのピーク値に比べて低くなる。このため、各相電流ピーク値を用いた場合でも互いの比較により前記配線の接続外れが検出できる。
【0025】
なお、電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwのいずれかが零を継続した場合にも、配線外れありと判定される。
【0026】
以上のように、2組の巻線L1,L2を有するモータ20を採用し、そのモータ20に対する駆動電力を出力するスイッチング回路5を設け、このスイッチング回路5の出力端とモータ20の巻線L1との間を2組の配線8u,8v,8wおよび配線9u,9v,9wによって分配配線する構成としたので、複数のモータや複数のスイッチング回路を用いることなく、よってコストの上昇を招くことなく、大容量のモータ出力を得ることができる。
【0027】
しかも、相電流Iu,Iv,Iwに応じて配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れいわゆる配線外れの有無を検出する構成としたので、配線外れが生じた場合の保護が可能となる。実際の保護手段として、スイッチング回路5のスイッチングを停止または相電流Iu,Iv,Iwの最大値を低減する制御を実行するので、配線外れから生じる新たな故障を未然に防ぐことができて、安全である。
【0028】
[2]第2の実施形態について説明する。
図4に示すように、スイッチング回路5の各直列回路における2つのスイッチング素子の相互接続点に、2電流センサ方式の電流検出部6が接続される。電流検出部6は、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する相電流Iu,Iv,Iwのうち、2つの相電流Iu,Ivを検出する。相電流Iu+Iv+Iw=0であることから、2つの相電流Iu,Ivを検出すれば、Iw=−Iu−Ivの計算によって相電流Iwが算出できる。
【0029】
この電流検出部6で検出される相電流Iu,Ivの実効値またはピーク値に応じて配線外れが検出される点は、第1の実施形態と同じである。
これにより、相電流検出回路が簡素化でき、他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0030】
[3]第3の実施形態について説明する。
この実施形態においては、図5に示すように、スイッチング回路5の各直列回路にシャント抵抗Ru,Rv,Rwが挿入接続され、そのシャント抵抗Ru,Rv,Rwに生じる電圧が電流検出部6に入力される。電流検出部6は、シャント抵抗Ru,Rv,Rwに生じる電圧に基づき、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する3つの相電流Iu,Iv,Iwを検出する。この電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwの実効値またはピーク値に応じて配線外れが検出される点は、第1の実施形態と同じである。
他の構成、作用、効果についても、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0031】
[4]第4の実施形態について説明する。
図6に示すように、スイッチング回路5の各直列回路に対して1つのシャント抵抗Ruvwが接続され、そのシャント抵抗Ruvwに生じる電圧が電流検出部6に入力される。このシャント抵抗に流れる電流は、相電流Iu,Iv,Iwの合計となるが、インバータの各スイッチング素子Tu1〜Tw2は特定のPWMスイッチングを行なっている。このため、PWMの個々のスイッチングパターンに応じて特定タイミングでは、特定の1相または2相の相電流が流れている。したがって、各スイッチング素子Tu1〜Tw2のスイッチングタイミングに合わせて電流検出部6で、シャント抵抗Ruvwに生じる電圧を検出し、PWMのスイッチングパターンと関連付けて演算処理することで、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する3つの相電流Iu,Iv,Iwを検出する。この電流検出部6で検出される相電流Iu,Iv,Iwの実効値またはピーク値に応じて配線外れが検出される点は、第1の実施形態と同じである。
他の構成、作用、効果についても、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0032】
[5]第5の実施形態について説明する。
図7に示すように、スイッチング回路5の各直列回路における2つのスイッチング素子の相互接続点に、2電流センサ方式の電流検出部6が接続される。電流検出部6は、スイッチング回路5から流出および同スイッチング回路5に流入する相電流Iu,Iv,Iwのうち、2つの相電流Iu,Ivを検出する。
さらに、配線8u,8v,8wに流れる相電流Iu1,Iv1,Iw1および配線9u,9v,9wに流れる相電流Iu2,Iv2,Iw2のうち、電流検出部6の検出対象(Iu,Iv)から外れた1つの相電流Iw2が検知される。すなわち、1本の配線9wに電流センサ41が取付けられ、その電流センサ41によって巻線L2側の相電流Iw2が検知される。
【0033】
MCU30は、主要な機能として次の(11)(12)の手段を有する。
(11)電流検出部6で検出される2つの相電流Iu,Ivの互いの比較により配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出するとともに、電流検出部6で検出される2つの相電流Iu,Ivと電流センサ41で検知される1つの相電流Iw2との比較により配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出する接続外れ検出手段。
(12)上記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、スイッチング回路5のスイッチングを停止(または相電流Iu,Iv,Iwの最大値を低減)する制御手段。
【0034】
作用を説明する。
配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れ検出いわゆる配線外れ検出のために、電流検出部6で検出される相電流Iu,Ivの実効値(またはピーク値)の差が求められるとともに、同検出される相電流Iu,Ivの実効値(またはピーク値)の平均値が求められ、この平均値に対する上記求められた差の比率がモータ電流最大偏差比(%)として求められる。そして、このモータ電流最大偏差比(%)と予め定められている配線外れ判定値(%)とが比較され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)未満であれば配線外れなしと判定され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)以上の場合に配線外れありと判定される。
【0035】
なお、電流検出部6で検出される相電流Iu,Ivのいずれかが零を継続した場合にも、配線外れありと判定される。以上が相電流Iu,Ivに対応する配線8u,8v,9u,9vの配線外れ検出となる。一方、電流センサ41で検知される相電流Iw2の実効値(またはピーク値)が、電流検出部6で検出される2つの相電流Iu,Ivの実効値(またはピーク値)の平均値をIaとすると、“Ia*1/2+α”以上のとき、および“Ia*1/2−α”未満のとき、それぞれ相電流Iwに対応する配線8w,9wの配線外れありと判定される。“α”は固定値または変数である。なお、相電流Iw2が“Ia*1/2+α”以上のときは、配線8wの配線外れであり、相電流Iw2が0(“Ia*1/2−α”未満)の場合には、電流センサ41が取付けられた配線9wの外れである。
【0036】
他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0037】
[6]第6の実施形態について説明する。
図8に示すように、モータ20の巻線として、相巻線U1,U2の並列体、相巻線V1,V2の並列体、相巻線W1,W2の並列体を星形結線してなる巻線Lが採用される。この巻線Lは、上記各実施形態の巻線L1,L2に相当する。この実施形態では、相巻線U1,U2、相巻線V1,V2の並列体、相巻線W1,W2の並列体の入力側端部において、モータ内で再び配線を2組に2分して並列に設け、それぞれを接続端子11、12に接続している。このため、インバータの各スイッチング素子Tu1〜Tw2から接続端子11,12への配線8、9も2組としている。このため、それぞれに流れる電流は半分となり、低い電流容量の配線を用いて大容量のモータ駆動が可能となる。
【0038】
また、第1ないし第5実施形態においては、配線外れが生じた相の巻線電流が減少したが、この実施例においては、モータ巻線の形態が異なるため、配線外れが発生した場合でも相電流が大きく変化しない。例えば、配線8uが外れた場合、本来配線8uに流れていた電流は、同じ相のもう一方の配線9uに流れることになり、配線9uに流れる電流が2倍となって、合計された相電流Iuはほとんど変化しない。
【0039】
そこで、このモータ巻線を用いる場合には、スイッチング回路5の各直列回路における2つのスイッチング素子の相互接続点に、2電流センサ方式の電流検出部6が接続される。さらに、2組の配線8,9のいずれかの3つの相電流が検知される。ここでは、3本の配線9u,9v,9wに電流センサ42が取付けられ、その電流センサ42によって巻線L2側の3つの相電流Iu2,Iv2,Iw2が検知される。
【0040】
MCU30は、主要な機能として次の(21)(22)の手段を有する。
(21)電流検出部6で検出される2つの相電流Iu,Ivと電流センサ42で検知される3つの相電流Iu2,Iv2,Iw2との比較により配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出する接続外れ検出手段。
(22)上記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、スイッチング回路5のスイッチングを停止(または相電流Iu,Iv,Iwの最大値を低減)する制御手段。
【0041】
作用を説明する。
電流センサ42で検知される相電流Iu2,Iv2,Iw2の実効値(またはピーク値)のいずれかが、電流検出部6で検出される2つの相電流Iu,Ivの平均実効値をIa(または平均ピーク値)とすると、“Ia*1/2+α”以上のとき、および“Ia*1/2−α”未満のとき、それぞれ配線外れありと判定される。“α”は固定値または変数である。
【0042】
この場合、配線9u,9v,9wのいずれかが配線外れになると、その配線での電流は0となる。したがってその配線の電流が“Ia*1/2−α”未満になり、配線外れが検出される。一方、配線8u,8v,8wのいずれかが配線外れになると、配線外れが生じた配線と同じ相の配線9側において、電流が約2倍になる。したがってその配線の電流が“Ia*1/2+α”以上となり、配線外れが検出される。他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0043】
なお、電流検出部6を設けることなく、電流センサ42で検知される3つの相電流Iu2,Iv2,Iw2のみである程度の配線外れを検出することもできる。例えば、第1実施形態と同様の判定方法を用い、相電流Iu2,Iv2,Iw2のピーク値の絶対値の最大値と最小値との差と、相電流Iu2,Iv2,Iw2のピーク値の絶対値の平均値を求め、この平均値に対する上記求められた差の比率をモータ電流最大偏差比(%)として求める。そして、このモータ電流最大偏差比(%)と予め定められている配線外れ判定値(%)、例えば20%とが比較され、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)未満であれば配線外れなしと判定し、モータ電流最大偏差比(%)が配線外れ判定値(%)以上の場合に配線外れありと判定する。この方式の問題点は、電流センサ42が取り付けられていない配線8u,8v,8wの接続がすべて外れていた場合には配線9のみでモータを駆動することになり、この配線9の各相配線9u,9v,9wを流れる相電流Iu2,Iv2,Iw2間には相違が生じない。この場合には配線外れを判定できないことになる。
【0044】
そこで、この場合には、インバータの出力に応じて予想される相電流Iu2,Iv2,Iw2の最大値を判定基準値として定めておき、基準値よりも相電流Iu2,Iv2またはIw2に大きな電流が流れている場合には配線8のすべての配線外れであるという別の判定を組み合わせて実行する必要がある。
【0045】
[7]第7の実施形態について説明する。
第1〜第6実施形態においては、モータ運転中に配線外れを検出するようにしたが、本実施形態においては、モータ運転開始前に配線外れをチェックする。この実施形態においては、図4に示した2電流センサ方式の電流検出部6と同じで図9に示すように、スイッチング回路5のU相直列回路の相互接続点に流れる相電流Iuを検知する電流センサ(第1電流センサ)51u、V相直列回路の相互接続点に流れる相電流Ivを検知する電流センサ(第2電流センサ)51vが採用される。
MCU30は、主要な機能として次の(31)〜(33)の手段を有する。
(31)モータ20の起動前、スイッチング回路5の各スイッチング素子をオン,オフ制御することにより、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってV相直列回路の相互接続点に相電流Iu_uvが流れる第1電流経路、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってW相直列回路の相互接続点に相電流Iu_uwが流れる第2電流径路、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってU相直列回路の相互接続点に相電流Iv_vuが流れる第3電流経路、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってW相直列回路の相互接続点に相電流Iv_vwが流れる第4電流径路を順に形成する制御手段。
【0046】
(32)上記制御手段による第1電流径路の形成時に電流センサ51uで検知される相電流Iu_uvと第2電流径路の形成時に電流センサ51uで検知される相電流Iu_uwとの差(=Iu_uv−Iu_uw)に基づいて配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出するとともに、上記制御手段による第3電流径路の形成時に電流センサ51vで検知される相電流Iv_vuと第4電流径路の形成時に電流センサ51vで検知される相電流Iv_vwとの差(=Iv_vu−Iv_vw)に基づいて配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出する接続外れ検出手段。
【0047】
(33)上記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、スイッチング回路5のスイッチングを停止(または相電流Iu,Iv,Iwの最大値を低減)する制御手段。
【0048】
作用を説明する。
モータ20の起動前に、先ず、スイッチング回路5のスイッチング素子Tu1,Tv2がt1時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってV相直列回路の相互接続点に相電流が流れる第1電流経路が形成される。次に、スイッチング回路5のスイッチング素子Tu1,Tw2がt1時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってW相直列回路の相互接続点に相電流が流れる第2電流径路が形成される。続いて、スイッチング回路5のスイッチング素子Tv1,Tu2がt1時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってU相直列回路の相互接続点に相電流が流れる第3電流経路が形成される。最後に、スイッチング回路5のスイッチング素子Tv1,Tw2がt1時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってW相直列回路の相互接続点に相電流が流れる第4電流径路が形成される。これら第1〜第4電流径路の形成が一定時間だけ繰り返される。
【0049】
そして、第1電流径路が形成されたときに電流センサ51uで検知される相電流Iu_uvの実効値(またはピーク値)と第2電流径路が形成されたときに電流センサ51uで検知される相電流Iu_uwの実効値(またはピーク値)との差が求められ、その差と予め定められている配線外れ判定値とが比較される。差が配線外れ判定値未満であれば配線外れなしと判定され、配線外れ判定値以上であれば配線外れありと判定される。
【0050】
また、第3電流径路が形成されたときに電流センサ51vで検知される相電流Iv_vuの実効値(またはピーク値)と第4電流径路が形成されたときに電流センサ51vで検知される相電流Iv_vwの実効値(またはピーク値)との差が求められ、その差と予め定められている配線外れ判定値とが比較される。差が配線外れ判定値未満であれば配線外れなしと判定され、配線外れ判定値以上であれば配線外れありと判定される。
【0051】
スイッチング回路5と巻線L1,L2との間の相電流の流れ方向を図9にA,B,C,Dの矢印で示し、この流れ方向と、各相の通電パターン、検出電流、各スイッチング素子のオン,オフの関係を図10に示している。
【0052】
他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0053】
[8]第8の実施形態について説明する。
本実施形態においては、第7実施形態と同様にモータ運転開始前に配線外れをチェックする。この実施形態においては、図1に示した3電流センサ方式の電流検出部6と同様に図11に示すように、スイッチング回路5のU相直列回路の相互接続点に流れる相電流Iuを検知する電流センサ(第1電流センサ)51u、V相直列回路の相互接続点に流れる相電流Ivを検知する電流センサ(第2電流センサ)51v、W相直列回路の相互接続点に流れる相電流Iwを検知する電流センサ(第3電流センサ)51wが採用される。
【0054】
MCU30は、主要な機能として次の(41)〜(43)の手段を有する。
(41)モータ20の起動前、スイッチング回路5の各スイッチング素子をオン,オフ制御することにより、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってV相直列回路の相互接続点およびW相直列回路の相互接続点へ予め設定された値の相電流が流れる第1電流径路、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってU相直列回路の相互接続点およびW相直列回路の相互接続点へ予め設定された値の相電流が流れる第2電流径路を順に形成する制御手段。
【0055】
(42)上記制御手段による第1電流径路の形成時に電流センサ51vで検知される相電流Ivと電流センサ51wで検知される相電流Iwとの差(=Iv−Iw)に基づいて配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出するとともに、第2電流径路の形成時に電流センサ51uで検知される相電流Iuと電流センサ51wで検知される相電流Iwとの差(=Iu−Iw)に基づいて配線8u,8v,8w,9u,9v,9wの接続外れを検出する接続外れ検出手段。
【0056】
(43)上記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、スイッチング回路5のスイッチングを停止(または相電流Iu,Iv,Iwの最大値を低減)する制御手段。
【0057】
作用を説明する。
モータ20の起動前に、先ず、スイッチング回路5のスイッチング素子Tu1,Tv2,Tw2が所定時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、U相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってV相直列回路の相互接続点およびW相直列回路の相互接続点へ予め設定された値の相電流が流れる第1電流径路が形成される。次に、スイッチング回路5のスイッチング素子Tv1,Tu2,Tw2が所定時間だけオンされて残りのスイッチング素子がオフされることにより、V相直列回路の相互接続点からモータ20の巻線L1,L2を通ってU相直列回路の相互接続点およびW相直列回路の相互接続点へ予め設定された値の相電流が流れる第2電流径路が形成される。この場合、予め設定された値の相電流が流れるように、上記所定時間が適宜に調節される。これら第1および第2電流径路の形成が一定時間だけ繰り返される。
【0058】
そして、第1電流径路が形成されたときに電流センサ51vで検知される相電流Ivの実効値(またはピーク値)と電流センサ51wで検知される相電流Iwの実効値(またはピーク値)との差(=Iv−Iw)が求められ、その差と予め定められている配線外れ判定値とが比較される。差が配線外れ判定値未満であれば配線外れなしと判定され、配線外れ判定値以上であれば配線外れありと判定される。
【0059】
また、第2電流径路が形成されたときに電流センサ51uで検知される相電流Iuと電流センサ51wで検知される相電流Iwとの差(=Iu−Iw)が求められ、その差と予め定められている配線外れ判定値とが比較される。差が配線外れ判定値未満であれば配線外れなしと判定され、配線外れ判定値以上であれば配線外れありと判定される。
【0060】
スイッチング回路5と巻線L1,L2との間の相電流の流れ方向を図12にA,Bの矢印で示し、この流れ方向と、各相の通電パターン、検出電流、各スイッチング素子のオン,オフの関係を図12に示している。
【0061】
他の構成、作用、効果については、第1の実施形態と同じである。よって、その説明は省略する。
【0062】
[9]変形例
なお、上記実施形態では、2組の巻線を有するモータを例に説明したが、その巻線の組数に限定はなく、例えば3組以上あってもよい。その他、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を代えない範囲で種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における配線外れの有無、各相電流の実効値、各相電流の実効値の平均値、モータ電流最大偏差比の例を示す図。
【図3】第1の実施形態において実際に配線外れが生じた場合に各相電流のピーク値がどのような状態になるかの例を示す図。
【図4】第2の実施形態の構成を示すブロック図。
【図5】第3の実施形態の構成を示すブロック図。
【図6】第4の実施形態の構成を示すブロック図。
【図7】第5の実施形態の構成を示すブロック図。
【図8】第6の実施形態の構成を示すブロック図。
【図9】第7の実施形態の構成を示すブロック図。
【図10】第7の実施形態における相電流の流れ方向、各相の通電パターン、検出電流、各スイッチング素子のオン,オフの関係を示す図。
【図11】第8の実施形態の構成を示すブロック図。
【図12】第8の実施形態における相電流の流れ方向、各相の通電パターン、検出電流、各スイッチング素子のオン,オフの関係を示す図。
【符号の説明】
【0064】
1…商用交流電源、3…整流回路、4…平滑コンデンサ、5…スイッチング回路、Tu1,Tu2,Tv1,Tv2,Tw1,Tw2…スイッチング素子、6…電流検出部、7…出力端子、8u,8v,8w…配線、9u,9v,9w…配線、11,12…モータ端子、20…モータ、L1,L2…巻線、30…MCU(主制御部)、41,42…電流センサ、51u,51v,51w…電流センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数組の三相巻線を有するモータと、
交流電圧を直流電圧に変換しその直流電圧をスイッチングにより三相交流に変換して出力する単一のスイッチング回路と、
前記スイッチング回路の出力と前記モータの各三相巻線との間を並列接続する複数組の配線と、
を備えることを特徴とするモータ駆動システム。
【請求項2】
前記スイッチング回路から流出および同スイッチング回路に流入する各相電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段で検出される各相電流の互いの比較により前記配線の接続外れを検出する接続外れ検出手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動システム。
【請求項3】
各相ごとに複数の並列巻線からなる三相巻線を有するモータと、
交流電圧を直流電圧に変換しその直流電圧をスイッチングにより三相交流に変換して出力する単一のスイッチング回路と、
前記スイッチング回路の出力と前記モータの各三相巻線との間を並列接続する複数組の配線と、
を備えることを特徴とするモータ駆動システム。
【請求項4】
前記複数組の配線のいずれかの組の配線に流れる3つの相電流を検知する電流センサと、
この電流センサで検知される3つの相電流により前記配線の接続外れを検出する接続外れ検出手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動システム。
【請求項5】
前記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、前記スイッチング回路のスイッチングを停止または前記各相電流の最大値を低減する制御手段、をさらに備えることを特徴とする請求項2または4に記載のモータ駆動システム。
【請求項6】
前記モータは、圧縮機の密閉容器内に収納された圧縮機駆動用モータであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のモータ駆動システム。
【請求項1】
複数組の三相巻線を有するモータと、
交流電圧を直流電圧に変換しその直流電圧をスイッチングにより三相交流に変換して出力する単一のスイッチング回路と、
前記スイッチング回路の出力と前記モータの各三相巻線との間を並列接続する複数組の配線と、
を備えることを特徴とするモータ駆動システム。
【請求項2】
前記スイッチング回路から流出および同スイッチング回路に流入する各相電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段で検出される各相電流の互いの比較により前記配線の接続外れを検出する接続外れ検出手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動システム。
【請求項3】
各相ごとに複数の並列巻線からなる三相巻線を有するモータと、
交流電圧を直流電圧に変換しその直流電圧をスイッチングにより三相交流に変換して出力する単一のスイッチング回路と、
前記スイッチング回路の出力と前記モータの各三相巻線との間を並列接続する複数組の配線と、
を備えることを特徴とするモータ駆動システム。
【請求項4】
前記複数組の配線のいずれかの組の配線に流れる3つの相電流を検知する電流センサと、
この電流センサで検知される3つの相電流により前記配線の接続外れを検出する接続外れ検出手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動システム。
【請求項5】
前記接続外れ検出手段で接続外れが検出された場合に、前記スイッチング回路のスイッチングを停止または前記各相電流の最大値を低減する制御手段、をさらに備えることを特徴とする請求項2または4に記載のモータ駆動システム。
【請求項6】
前記モータは、圧縮機の密閉容器内に収納された圧縮機駆動用モータであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のモータ駆動システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−55762(P2009−55762A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222687(P2007−222687)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
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