モータ駆動装置及びモータの駆動制御方法
【課題】安価な回路構成で一般的な制御方法による起動を行うとともに、エラー発生時には適切なリカバリー動作を実現する。
【解決手段】モータの駆動開始時には、第1の駆動手段によってモータを駆動した後、第2の駆動手段によってモータを駆動するように、第1の駆動手段と第2の駆動手段とを切り替える制御手段と、を有し、第1の駆動手段は、所定の駆動周波数でオープンループ制御をしている際に、判定手段が検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、所定の駆動周波数よりも低い駆動周波数でモータを駆動し、第2の駆動手段は、所定の加速度でフィードバック制御をしている際に、判定手段が検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、所定の加速度よりも低い加速度でモータを駆動する。
【解決手段】モータの駆動開始時には、第1の駆動手段によってモータを駆動した後、第2の駆動手段によってモータを駆動するように、第1の駆動手段と第2の駆動手段とを切り替える制御手段と、を有し、第1の駆動手段は、所定の駆動周波数でオープンループ制御をしている際に、判定手段が検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、所定の駆動周波数よりも低い駆動周波数でモータを駆動し、第2の駆動手段は、所定の加速度でフィードバック制御をしている際に、判定手段が検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、所定の加速度よりも低い加速度でモータを駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ駆動装置及びモータの駆動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを起動するときは先ず決められた駆動周波数に同期させて駆動制御を行うオープンループ制御を行った後、回転子の回転位相を検出する検出センサからの検出信号を元に駆動制御を行うフィードバック制御に切り替える。この際、モータの外乱など何らかの要因により回転ムラが生じるとオープンループ制御からフィードバック制御への切り替えがスムーズに行われないという問題が発生する。そこで、このような問題を解決するために特許文献1のようなブラシレスモータの制御装置が開示されている。このブラシレスモータの制御装置では、オープンループ制御である同期モード運転のための駆動信号とフィードバック制御である位相検出モード運転のための駆動信号との位相を比較回路で比較し、その位相差がほぼ零になったときに同期モード運転から位相検出モード運転に移行する。そして、同期モード運転時に制御部からの駆動信号に位相検出回路からの位相検出信号の情報を加味し、この駆動信号と位相検出モード運転のための駆動信号との位相差を比較回路で比較し、その位相差が小さくなるようしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−87783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に開示された従来技術では、同期モード運転時の駆動信号と位相検出モード運転のための駆動信号とを比較し、その差が小さくなる様に同期モード運転を制御しているので、比較回路追加によるコスト増大を招いてしまう。また、起動時の同期モード運転時にその切り替えタイミングも変化させることが必要になるため、制御が複雑化してしまうという問題点も発生する。更に、同期運転モードにも関わらず、位相検出モード運転に同期するように駆動すること自体が、既に位置検出運転モードと同じ制御を行うことになっている。そのため、一般的な制御方法である一定速度の同期運転から位置フィードバック運転に切り替える切り替え制御の概念から逸脱する制御となり、速度変動の影響を受けて脱調を起こすなどの問題が発生しやすくなる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、安価な回路構成にて一般的な制御方法による起動を行うととともに、エラー発生時には適切なリカバリー動作を実現することができるモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一側面としてのモータ駆動装置は、ロータマグネットと前記ロータマグネットの回転位置を検出する検出器を備えたモータと、前記検出器からの出力が所定の範囲内であるか否かを判定する判定手段と、前記モータをオープンループ制御により駆動する第1の駆動手段と、前記モータをフィードバック制御により駆動する第2の駆動手段と、前記モータの駆動開始時には、前記第1の駆動手段によって前記モータを駆動した後、前記第2の駆動手段によって前記モータを駆動するように、前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを切り替える制御手段と、を有し、前記第1の駆動手段は、所定の駆動周波数でオープンループ制御をしている際に、前記判定手段が前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の駆動周波数よりも低い駆動周波数で前記モータを駆動し、前記第2の駆動手段は、所定の加速度でフィードバック制御をしている際に、前記判定手段が前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の加速度よりも低い加速度で前記モータを駆動することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他の側面としてのモータの駆動制御方法は、駆動時にオープンループ制御を行った後、フィードバック制御を行うモータの駆動制御方法であって、前記モータをオープンループ制御により駆動する第1の駆動ステップと、所定の駆動周波数でオープンループ制御をしている際に、ロータマグネットの回転位置を検出する検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の駆動周波数よりも低い駆動周波数で前記モータを駆動するステップと、オープンループ制御とフィードバック制御とを切り替える制御ステップと、前記モータをフィードバック制御により駆動する第2の駆動ステップと、所定の加速度でフィードバック制御をしている際に、前記検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の加速度よりも低い加速度で前記モータを駆動するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安価な回路構成で一般的な制御方法による起動を行うとともに、エラー発生時には適切なリカバリー動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に用いられるステッピングモータの分解斜視図である。
【図2】本発明のモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ヨークと位置センサとロータの位相関係を示す軸方向断面図である。
【図4】ロータの回転位置とモータトルクとの関係及びロータ位置と位置センサの出力の関係を示す図である。
【図5】進角回路の構成を示す回路図である。
【図6】フィードバック駆動の動作を示す軸方向断面図である。
【図7】進角回路から出力される進角信号が所定の進角αを有する場合のロータの回転角度とモータトルクおよび各信号の出力との関係を示す図である。
【図8】進角を変えたときのトルクと回転数の関係を示す図である。
【図9】モータを起動するときの様子を示す速度線図である。
【図10】本発明の起動時のフローチャートである。
【図11】本発明のモータ制御装置を用いた撮像装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に用いられるステッピングモータ101の分解斜視図である。
【0011】
まず、ステッピングモータ101の部品構成について説明する。ロータ202は、ロータマグネット202aとシャフト部202bを有する。第1の軸受403と第2の軸受404は、それぞれシャフト部202bを軸支する。第1のコイル203は、非導電部材で形成されたボビン401に巻かれている。第2のコイル204は、非導電部材で形成されたボビン402に巻かれている。第1のヨーク205と第2のヨーク206は、電磁鋼板等で形成されている。リング部材405は、第1のヨーク205、第2のヨーク206、ボビン401およびボビン402をそれぞれ位置決めする。フレキシブルプリント基板406は、第1のコイル203と第2のコイル204と電気的に接続される。フレキシブルプリント基板406には、ロータマグネット202aの回転位置検出器である第1の位置センサ207および第2の位置センサ208がロータの周方向に実装されている。なお、ロータマグネット202aは、外周が多極着磁された円筒形状の永久磁石である。角度位置に対し、径方向の磁力の強さが正弦波状に変化する着磁パターンを有する。
【0012】
次に、各部品の相関について説明する。ロータ202は、長軸側が第1の軸受403に、短軸側が第2の軸受404により軸支されている。第1の軸受403は、ボビン401に設けられた穴部(第1のコイル203の内径部)401aに挿通される。第2の軸受404は、ボビン402に設けられた穴部(第2のコイル204の内径部)402aに挿通される。第1の軸受403の外径部は、第1のヨーク205の穴部205aに圧入により固定される。第2の軸受404の外径部は、第2のヨーク206の穴部206aに圧入により固定される。その際、第1のヨーク205の歯部205bは、ボビン401に設けられた穴部401bに挿通される。第2のヨーク206の歯部206bは、ボビン402に設けられた穴部402bに挿通される。
【0013】
以上によりボビン(コイル含む)401と第1のヨーク205と第1の軸受403は、一体となる。同様に、ボビン(コイル含む)402と第2のヨーク206と第2の軸受404は、一体となる。そして、ボビンの内径部401c、402cをリング部材405の外径部405aにそれぞれ嵌合させる。このときに第1のヨーク205の歯部205bおよび第2のヨーク206の歯部206bの先端付近がロータ202のマグネット面に対向するように配置される。
【0014】
図2は、本実施形態のモータ駆動装置の構成を示すブロック図である。位置センサ信号処理回路(判定手段)301は、前述のステッピングモータ101と、ステッピングモータ101に含まれる第1の位置センサ207および第2の位置センサ208の出力を処理する。位置センサ信号処理回路301からの出力は、制御部302およびフィードバック駆動回路(第2の駆動手段)303に入力される。制御部302は、フィードバック制御による駆動、オープンループ制御による駆動のいずれかを選択して、駆動パルス数と回転方向を出力する制御手段として機能する。フィードバック駆動回路303は、制御部302により選択され、ステッピングモータ101の駆動信号を生成するフィードバック駆動手段として機能する。オープンループ駆動回路(第1の駆動手段)304は、制御部302により選択され、ステッピングモータ101の駆動信号を生成するオープンループ駆動手段として機能する。フィードバック駆動回路303から出力される駆動パルスおよびオープンループ駆動回路304から出力される駆動パルスは、モータドライバ305を介してステッピングモータ101に供給される。
【0015】
次に、ステッピングモータ101のオープンループ制御による駆動(以下、オープンループ駆動という)について説明する。
【0016】
制御部302がオープンループ駆動を選択すると、制御部302はオープンループ駆動回路304に駆動パルス数と回転方向を出力する。オープンループ駆動回路304は、入力された駆動パルス数と回転方向にしたがって、予め設定される時間間隔の駆動パルスをモータドライバ305に出力する。モータドライバ305は、予め設定される時間間隔の駆動パルスにしたがって、第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンを順次切り替える。オープンループ駆動では、オープンループ駆動回路304が出力する駆動パルスの時間間隔を変更することによって、ロータ202の回転速度を変更することが可能である。また、オープンループ駆動回路304は、制御部302から入力された駆動パルス数だけ駆動パルスを出力するので、ロータ202の回転量を制御することが可能である。
【0017】
オープンループ駆動では、予め設定される時間間隔で第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンを切り替える。
【0018】
オープンループ駆動の際に、駆動パルスの時間間隔を短くしていくと、第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンの切り替えに対してロータが応答できなくなり、脱調をおこす可能性がある。このため、オープンループ駆動における高速駆動は、第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンの切り替えに対してロータが応答できる範囲内となる。
【0019】
次に、ステッピングモータ101のフィードバック制御による駆動(以下、フィードバック駆動という)について説明する。
【0020】
制御部302がフィードバック駆動を選択すると、制御部302はフィードバック駆動回路303に駆動パルス数と回転方向を出力する。フィードバック駆動回路303は、入力された駆動パルス数と回転方向にしたがって、所定の時間間隔の駆動パルスをモータドライバ305に出力する。フィードバック駆動回路303から出力される駆動パルスの時間間隔は、第1の位置センサ207および第2の位置センサ208の出力によって変化する。モータドライバ305は、第1の位置センサ207および第2の位置センサ208の出力によって変化する時間間隔の駆動パルスにしたがって、第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンを順次切り替える。フィードバック駆動では、フィードバック駆動回路303は、制御部302から入力された駆動パルス数だけ駆動パルスを出力するので、ロータ202の回転量を制御することが可能である。また、フィードバック駆動回路303は進角回路を含み、進角回路は、第1の位置センサ207および第2の位置センサ208の出力から進角信号を生成する。フィードバック駆動回路303は進角量を制御することで、ステッピングモータ101のトルク−回転数特性を変化させることが可能となる。進角制御については後述する。
【0021】
フィードバック駆動では、第1の位置センサ207および第2の位置センサ208の出力によって変化する時間間隔で第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンを切り替える。ロータ202の位置に応じて、第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンの切り替えを行うため、ロータ202の応答遅れによる脱調の発生を低減でき、オープンループ駆動よりも高速駆動が可能になる。
【0022】
次に、ステッピングモータ101におけるヨークと位置センサの位相関係について説明する。
【0023】
図3は、ヨークと位置センサとロータの位相関係を示す軸方向断面図である。図中で時計回りを正の方向とする。205b1〜b4は第1のヨーク205の磁極歯、206b1〜b4は第2のヨーク206の磁極歯である。本実施例では、マグネットの極数は8極、着磁角Pは45°である。また、第1のヨークを基準とすると、第2のヨークの位相P/2は−22.5°、第1の位置センサ207の位相β1は+22.5°、第2の位置センサ208の位相β2は−45°である。
【0024】
以下の説明では、電気角を用いてモータの動作を説明する。電気角とは、マグネット磁力の1周期を360°として表したものであり、ロータの極数をM、実際の角度をθ0とすると、電気角θは以下の式で表せる。
【0025】
θ=θ0×M/2 (式1−1)
第1のヨーク205と第2のヨーク206の位相差、第1の位置センサ207と第2の位置センサ208の位相差、第1のヨーク205と第1の位置センサ207の位相差は全て電気角で90°である。なお、図3において、第1のヨークの磁極歯の中心とロータマグネット202aのN極中心が対向している。この状態をロータの初期状態とし、電気角0°とする。
(ロータ位置とモータトルクの関係、ロータ位置とセンサ出力の関係)
ここで、ステッピングモータ101におけるロータ位置とモータトルクとの関係、ロータ位置とセンサ出力の関係について説明する。
【0026】
図4は、ロータの回転位置とモータトルクとの関係、ロータの回転位置と位置検出センサ出力との関係を示すグラフである。
【0027】
図4(a)は、ロータの回転角度とモータトルクの関係を示すグラフであり、横軸は電気角を、縦軸はモータトルクを示す。モータトルクは、ロータを時計回りに回転させるトルクを正とする。
【0028】
第1のコイル203に正方向の電流を流すと、第1のヨーク205がN極に磁化し、ロータマグネット202aの磁極との間に電磁気力が発生する。また、第2のコイル204に正方向の電流を流すと、第2のヨーク206がN極に磁化し、マグネットの磁極との間に電磁気力が発生する。2つの電磁気力を合成すると、ロータ202の回転にともなって概略正弦波状のトルクが得られる(トルク曲線A+B+)。他の通電状態においても、同様に、概略正弦波状のトルクが得られる(トルク曲線A+B−、A−B−、A−B+)。また、第1のヨーク205は第2のヨーク206に対して電気角で90°の位相をもって配置されるため、4つのトルクは互いに電気角で90°の位相差を持っている。
【0029】
図4(b)は、ロータの回転角度と各信号の出力との関係を示すグラフであり、横軸は電気角を、縦軸は各信号の出力を示す。
【0030】
ロータマグネット202aの径方向磁力の強さは、電気角に対しておおよそ正弦波状になるように着磁している。そのため、第1の位置センサ207からは概略正弦波状の信号が得られる(位置センサ信号A)。なお、本実施例では、第1の位置センサ207は、ロータマグネット202aのN極と対向するときに正の値を出力する。
【0031】
また、第2の位置センサ208は第1の位置センサ207に対して電気角で90°の位相をもって配置されるため、第2の位置センサ208からは余弦波状の信号が得られる(位置センサ信号B)。なお、本実施例では、第2の位置センサ208は、第1の位置センサ207に対して極性を反転してあるため、ロータマグネット202aのS極と対向するときに正の値を出力する。
【0032】
フィードバック駆動回路303に含まれる進角回路は、位置センサ信号処理回路301にて処理された、第1の位置センサ207の出力と第2の位置センサ208の出力をもとに所定の演算を行う。そして、進角回路によって第1の進角信号と第2の進角信号を出力する。以下、進角信号の演算方法について述べる。
【0033】
電気角θ、第1の位置センサ207の出力をHE1、第2の位置センサ208の出力をHE2とすると、各信号は次のように表される。
【0034】
HE1=sinθ、HE2=cosθ (式2−1)
また、HE1を進角αだけ進めた第1の進角信号をPS1、HE2を進角αだけ進めた第2の進角信号をPS2とすると、HE1、HE2、αを用いて、次のように演算することが可能である。
【0035】
PS1=sin(θ+α)=HE1×cosα+HE2×sinα (式3−1)
PS2=cos(θ+α)=HE2×cosα−HE1×sinα (式3−2)
本実施例ではこの演算式をもとに進角回路を構成する。
【0036】
図5は、進角回路の構成を示す回路図である。本実施例における進角回路を、例えば図5に示すようなアナログ回路で構成することで上記の演算が実現可能である。まず、各位置センサ出力を所定の増幅率Aだけ増幅した信号と、さらにそれらを反転させた信号を生成する。それらに適切な抵抗値R1、R2をかけて加算することにより、進角信号を生成する。第1の進角信号PS1、第2の進角信号PS2は次のように表される。
【0037】
PS1=A×(R/R1)×sinθ+A×(R/R2)cosθ (式4−1)
PS2=A×(R/R1)×cosθ−A×(R/R2)sinθ (式4−2)
回路中の可変抵抗R、R1、R2を次のように選ぶことで、任意の進角αだけ進めた進角信号を生成することができる。
【0038】
R/R1=cosα、R/R2=sinα (式5−1)
さらに、第1の進角信号PS1、第2の進角信号PS2に対してコンパレータを用いて2値化した2値化信号を出力する。
【0039】
以上に説明した進角信号の生成方法は、本発明を実現するための一例であり、この方法のみに限定されない。上記の演算を行うデジタル回路によって進角信号を生成してもよいし、高分解能のエンコーダを用いて通電を切り替えるパルス間隔を調整することで進角信号を生成してもよい。これら周知の方法を用いても上記進角信号の生成方法と同様の効果が得られる。
【0040】
ここで、フィードバック駆動における通電切り替えについて説明する。まず、進角回路から出力される進角信号が有する進角がゼロの場合についてフィードバック駆動の動作を説明する。
【0041】
図4(b)において、位置センサ信号A、Bは、それぞれ第1及び第2の位置センサ207、208の出力である。2値化信号A、Bは、位置センサ信号A、Bに対し、コンパレータを用いて2値化を行った信号である。
【0042】
フィードバック駆動では、2値化信号Aをもとに第1のコイル203の通電を切り替え、2値化信号Bをもとに第2のコイル204の通電を切り替える。すなわち、2値化信号Aが正の値を示すとき第1のコイル203に正方向の電流を流し、負の値を示すとき第1のコイル203に逆方向の電流を流す。また、2値化信号Bが正の値を示すとき第2のコイル204に正方向の電流を流し、負の値を示すとき第2のコイル204に逆方向の電流を流す。
【0043】
図6は、フィードバック駆動の動作を示す軸方向断面図である。
【0044】
図6(a)は、ロータが電気角で135°回転した状態を示している。位置センサ信号A、Bは図4(b)の(A)で示した値を示しており、2値化信号Aは正、2値化信号Bは負の値を示している。従って、第1のコイル203には正方向の電流が流れて第1のヨーク205はN極に磁化し、第2のコイル204には逆方向の電流が流れて第2のヨーク206はS極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A+B−に対応する時計回りのトルクがはたらき、ロータ202はθ方向の回転力を受けて回転する。
【0045】
図6(b)は、ロータ202が電気角で180°回転した状態を示している。第1の位置センサ207はロータマグネット202aのN極とS極の境界に位置する。そのため、電気角180°を境に2値化信号Aは正の値から負の値に切り換わり、第1のコイル203の通電方向が正方向から逆方向へ切り換わる。この電気角は、トルク曲線A+B−とトルク曲線A−B−との交点の電気角と一致する。
【0046】
図6(b’)は、ロータが電気角で180°回転し、第1のコイル203の通電方向が切り換わった状態を示している。第1のコイル203には逆方向の電流が流れて第1のヨーク205はS極に磁化し、第2のコイル204には逆方向の電流が流れて第2のヨーク206はS極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A−B−に対応する時計回りのトルクがはたらき、ロータ202はθ方向の回転力を受けて回転する。
【0047】
図6(c)はロータ202が電気角で225°回転した状態を示している。各進角信号は図4(b)の(C)で示した値を示しており、2値化信号A、Bはともに負の値を示している。従って、第1のコイル203には逆方向の電流が流れて第1のヨーク205はS極に磁化し、第2のコイル204には逆方向の電流が流れて第2のヨーク206はS極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A−B−に対応する時計回りのトルクがはたらき、ロータ202はθ方向の回転力を受けて回転する。
【0048】
図6(d)はロータ202が電気角で270°回転した状態を示している。第2の位置センサ208はロータマグネット202aのN極とS極の境界に位置する。そのため、電気角270°を境に2値化信号Bは負の値から正の値に切り換わり、第2のコイル204の通電方向が逆方向から正方向へ切り換わる。この電気角は、トルク曲線A−B−とトルク曲線A−B+との交点の電気角と一致する。
【0049】
図6(d’)はロータが電気角で270°回転し、第2のコイル204の通電方向が切り換わった状態を示している。第1のコイル203には逆方向の電流が流れて第1のヨーク205はS極に磁化し、第2のコイル204には正方向の電流が流れて第2のヨーク206はN極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A−B+に対応する時計回りのトルクがはたらき、ロータ202はθ方向の回転力を受けて回転する。
【0050】
以上の動作を繰り返すことで、ロータ202を連続的に回転させることが可能となる。また、2値化信号Aまたは2値化信号Bの正負を反転させれば、逆回転も可能である。
【0051】
次に、進角回路から出力される進角信号が所定の進角αを有する場合についてフィードバック駆動の動作を説明する。
【0052】
図7は、進角回路から出力される進角信号が所定の進角αを有する場合のロータの回転角度とモータトルクおよび各信号の出力との関係を示すグラフである。
【0053】
図7(b)は、ロータの回転角度と各信号の出力との関係を示すグラフであり、横軸は電気角を、縦軸は各信号の出力を示す。図7(b)において、センサ信号A、Bに対して進角信号A、Bがそれぞれ所定の進角αだけ進んでいる。また、進角信号をもとに生成された2値化信号A、Bもそれぞれセンサ信号A、Bに対して進角αだけ進んでいる。フィードバック駆動では、2値化信号Aをもとに第1のコイルの通電を切り替え、2値化信号Bをもとに第2のコイルの通電を切り替えるため、コイルの通電切り替えタイミングは進角がゼロのときに比べて進角αだけ早いことになる。
【0054】
図8は、進角を変えたときのトルクと回転数の関係を示すグラフである。横軸はモータのトルクを、縦軸はモータの回転数を示す。
【0055】
グラフから、進角αによってトルクと回転数の関係が変化する性質がわかる。この性質を用いて、フィードバック駆動では駆動条件によって進角αを変える進角制御を行っている。一定の負荷条件下でフィードバック駆動を行う場合、進角αを制御することで駆動速度を制御することも可能である。
【0056】
上述したオープンループ駆動とフィードバック駆動とを組み合わせて制御することによって、通常のステップモータと同等の精度で目標位置に停止可能であるとともに、通常のステップモータに比べ、より高速に目標位置に到達可能となる。そして、オープンループ駆動時若しくはフィードバック駆動における加速制御時に外乱負荷の影響を受けて脱調エラーを起こしたときには、以下のような制御を行うことでより確実な起動を行うことが可能となる。
【0057】
図9は、ステッピングモータ101が起動するときの様子を示す速度線図であり、横軸が時間、縦軸が速度である。通常の起動に際しては、最初に予め決められた速度V1までオープンループ駆動により加速駆動された後に時刻t1(P1ポイント)において、フィードバック駆動に切り替えが行われる。その後、フィードバック駆動により速度V2まで加速された後、時刻t2に於いて定速駆動に入る。
【0058】
図9(a)において、フィードバック駆動途中の時間t4(速度V3)において何らかの要因によりモータの同期が取れなくなり、901に示すような速度カーブで脱調停止したとする。このとき、モータ101には前述の通り二つの位置センサ207、208が備えられているので、モータが何らかの要因で起動途中に脱調停止したことが判別可能である。このとき、時間t4(速度V3)において異常が発生したことから、フィードバック駆動による加速途中にエラー停止したことも判別できる。
【0059】
モータの再起動において、まず前回の起動ではオープンループ駆動からフィードバック駆動切り替えまでに異常は発生していないので、オープンループ駆動自体は前回と同じく時刻t1において速度V1になる様にオープンループ駆動による加速を行う。その後、フィードバック駆動による加速においては、前回の加速度よりも低い加速度になる様にフィードバック駆動における加速駆動を行う。具体的には図9(a)の902に示すように時刻t1からt3までの間に速度V1からV2となる様に前回よりも低加速の起動を行うものである。このように低加速度によるフィードバック駆動における加速駆動を行うことで脱調エラーを回避したフィードバック駆動を行うことが可能となる。
【0060】
次に、図9(b)において、オープンループ駆動による加速途中の時間t5(速度V4)において何らかの要因によりモータの同期が取れなくなり、903に示すような速度カーブに沿って回転が停止したとする。このときも前述と同じく二つの位置センサ207、208により、モータが何らかの要因で起動途中に脱調停止したことが判別可能である。このとき、時間t5(速度V4)において不具合が発生したことから、オープンループ駆動による加速途中にエラーが発生したことも判別可能である。したがって、モータを再起動させる場合には、通常のオープンループ駆動からフィードバック駆動への切り替え点P1よりも回転数の低い切り替え点P2(時刻t1、速度V5)を設定する。このとき、図9(b)においては加速度が前回と同じ加速度で制御しているが、この加速度が低くなる様に制御しても良い。言い換えると速度V5に到達する時間をt1よりも長くなる様に、すなわちグラフの傾きが少なくなるように、ゆっくり加速することも可能である。そしてオープンループ駆動により速度V5に確実に同期させた後、切り替え点P2でフィードバック駆動に切り替えて加速駆動を行う。
【0061】
このとき、フィードバック駆動の加速度を通常より低くなる様に設定してより確実に加速制御することも可能である。このような再起動制御を行うことで、図9(b)の904に示すような速度曲線にしたがって再起動を行い、エラーを回避したオープンループ駆動からフィードバック駆動への切り替え及びフィードバック駆動による加速駆動を行うことが出来る。
【0062】
図10は、上述の駆動制御内容をフローに示した起動フローチャートである。
フローに沿って再度起動制御に関して簡単に説明を行う。まずメインの起動フローはS101において、起動サブルーチンが開始されると、S102においてステップ駆動であるオープンループ駆動による加速が行われる。このとき脱調エラー判別を二つの位置センサ207、208からの検出信号で行う。具体的には、正転及び逆転において時系列で検出されるべき信号は決まっているので、この検出されるべき信号の順番や、駆動周期に対する検出信号の値の食い違いを監視し脱調及び停止判別を行う。このとき、検出信号が所定の範囲内であれば問題が無く、予め決められたフィードバック駆動への切り替え周波数に達するとS104でフィードバック駆動に切り替えられてフィードバック駆動による加速駆動が行われる。そしてフィードバック駆動時にも前述と同じく検出信号が所定の範囲内であるか否かをS105で行った後問題が無ければ、S106において起動制御ルーチンから抜け出す。
【0063】
次に、エラー発生時の制御に関して説明する。オープンループ駆動による加速中S103において検出信号が所定の範囲外であるとして回転異常が検出されると、S201においてエラー回数の確認が行われる。ここで予め決められた回数のエラーが発生したときには、起動制御を中止してS202においてエラーストップする。もし規定回数に達していなかったときにはS203において、オープンループ駆動周波数を前回よりも低い値にセットしてS102へ戻り再度起動を試みる。このとき図11に示すように、たとえばデジタルカメラ1201などの光学機器に備え付けられた表示部1201aに“ERROR”を表示させて機器の動作をストップさせる。次に、フィードバック駆動による加速駆動時にS105において検出信号が所定の範囲外であるとして異常が検出されたときには、S301において、前述と同じくエラー発生回数の確認が行われる。ここでも、予め決められた回数のエラーが発生したときは起動制御を中止しS302においてエラーストップする。このときも上述と同様、たとえばデジタルカメラ1201などの光学機器に備え付けられた表示部1201aに“ERROR”を表示させて機器の動作をストップさせる。もしエラー発生回数が規定回数に達していなかったときはS303に移行してフィードバック駆動の加速度を前回よりも低く設定した後、S102へ戻って再起動が行われる。
【0064】
上述したようにオープンループ駆動からフィードバック駆動による切り替え加速時に何らかの要因によりモータがエラーストップしても夫々のパラメーターを適宜変更しながら最適な起動制御を行うことが出来るので、モータの駆動信頼性を向上させることが出来る。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、オープンループ駆動若しくはフィードバック駆動のどちらのエラーストップであっても、再起動時にはオープンループ駆動の同期速度を前回よりも下げるとともに、フィードバック駆動の加速度を前回よりも低くして駆動することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
安価で簡単な駆動制御方法により、ブラシレスモータの起動信頼性を向上させることが出来る。
【符号の説明】
【0067】
101 ステッピングモータ
301 位置センサ信号処理回路
302 制御部
303 フィードバック駆動回路
304 オープンループ駆動回路
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ駆動装置及びモータの駆動制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを起動するときは先ず決められた駆動周波数に同期させて駆動制御を行うオープンループ制御を行った後、回転子の回転位相を検出する検出センサからの検出信号を元に駆動制御を行うフィードバック制御に切り替える。この際、モータの外乱など何らかの要因により回転ムラが生じるとオープンループ制御からフィードバック制御への切り替えがスムーズに行われないという問題が発生する。そこで、このような問題を解決するために特許文献1のようなブラシレスモータの制御装置が開示されている。このブラシレスモータの制御装置では、オープンループ制御である同期モード運転のための駆動信号とフィードバック制御である位相検出モード運転のための駆動信号との位相を比較回路で比較し、その位相差がほぼ零になったときに同期モード運転から位相検出モード運転に移行する。そして、同期モード運転時に制御部からの駆動信号に位相検出回路からの位相検出信号の情報を加味し、この駆動信号と位相検出モード運転のための駆動信号との位相差を比較回路で比較し、その位相差が小さくなるようしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−87783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に開示された従来技術では、同期モード運転時の駆動信号と位相検出モード運転のための駆動信号とを比較し、その差が小さくなる様に同期モード運転を制御しているので、比較回路追加によるコスト増大を招いてしまう。また、起動時の同期モード運転時にその切り替えタイミングも変化させることが必要になるため、制御が複雑化してしまうという問題点も発生する。更に、同期運転モードにも関わらず、位相検出モード運転に同期するように駆動すること自体が、既に位置検出運転モードと同じ制御を行うことになっている。そのため、一般的な制御方法である一定速度の同期運転から位置フィードバック運転に切り替える切り替え制御の概念から逸脱する制御となり、速度変動の影響を受けて脱調を起こすなどの問題が発生しやすくなる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、安価な回路構成にて一般的な制御方法による起動を行うととともに、エラー発生時には適切なリカバリー動作を実現することができるモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一側面としてのモータ駆動装置は、ロータマグネットと前記ロータマグネットの回転位置を検出する検出器を備えたモータと、前記検出器からの出力が所定の範囲内であるか否かを判定する判定手段と、前記モータをオープンループ制御により駆動する第1の駆動手段と、前記モータをフィードバック制御により駆動する第2の駆動手段と、前記モータの駆動開始時には、前記第1の駆動手段によって前記モータを駆動した後、前記第2の駆動手段によって前記モータを駆動するように、前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを切り替える制御手段と、を有し、前記第1の駆動手段は、所定の駆動周波数でオープンループ制御をしている際に、前記判定手段が前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の駆動周波数よりも低い駆動周波数で前記モータを駆動し、前記第2の駆動手段は、所定の加速度でフィードバック制御をしている際に、前記判定手段が前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の加速度よりも低い加速度で前記モータを駆動することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他の側面としてのモータの駆動制御方法は、駆動時にオープンループ制御を行った後、フィードバック制御を行うモータの駆動制御方法であって、前記モータをオープンループ制御により駆動する第1の駆動ステップと、所定の駆動周波数でオープンループ制御をしている際に、ロータマグネットの回転位置を検出する検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の駆動周波数よりも低い駆動周波数で前記モータを駆動するステップと、オープンループ制御とフィードバック制御とを切り替える制御ステップと、前記モータをフィードバック制御により駆動する第2の駆動ステップと、所定の加速度でフィードバック制御をしている際に、前記検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の加速度よりも低い加速度で前記モータを駆動するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安価な回路構成で一般的な制御方法による起動を行うとともに、エラー発生時には適切なリカバリー動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に用いられるステッピングモータの分解斜視図である。
【図2】本発明のモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ヨークと位置センサとロータの位相関係を示す軸方向断面図である。
【図4】ロータの回転位置とモータトルクとの関係及びロータ位置と位置センサの出力の関係を示す図である。
【図5】進角回路の構成を示す回路図である。
【図6】フィードバック駆動の動作を示す軸方向断面図である。
【図7】進角回路から出力される進角信号が所定の進角αを有する場合のロータの回転角度とモータトルクおよび各信号の出力との関係を示す図である。
【図8】進角を変えたときのトルクと回転数の関係を示す図である。
【図9】モータを起動するときの様子を示す速度線図である。
【図10】本発明の起動時のフローチャートである。
【図11】本発明のモータ制御装置を用いた撮像装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に用いられるステッピングモータ101の分解斜視図である。
【0011】
まず、ステッピングモータ101の部品構成について説明する。ロータ202は、ロータマグネット202aとシャフト部202bを有する。第1の軸受403と第2の軸受404は、それぞれシャフト部202bを軸支する。第1のコイル203は、非導電部材で形成されたボビン401に巻かれている。第2のコイル204は、非導電部材で形成されたボビン402に巻かれている。第1のヨーク205と第2のヨーク206は、電磁鋼板等で形成されている。リング部材405は、第1のヨーク205、第2のヨーク206、ボビン401およびボビン402をそれぞれ位置決めする。フレキシブルプリント基板406は、第1のコイル203と第2のコイル204と電気的に接続される。フレキシブルプリント基板406には、ロータマグネット202aの回転位置検出器である第1の位置センサ207および第2の位置センサ208がロータの周方向に実装されている。なお、ロータマグネット202aは、外周が多極着磁された円筒形状の永久磁石である。角度位置に対し、径方向の磁力の強さが正弦波状に変化する着磁パターンを有する。
【0012】
次に、各部品の相関について説明する。ロータ202は、長軸側が第1の軸受403に、短軸側が第2の軸受404により軸支されている。第1の軸受403は、ボビン401に設けられた穴部(第1のコイル203の内径部)401aに挿通される。第2の軸受404は、ボビン402に設けられた穴部(第2のコイル204の内径部)402aに挿通される。第1の軸受403の外径部は、第1のヨーク205の穴部205aに圧入により固定される。第2の軸受404の外径部は、第2のヨーク206の穴部206aに圧入により固定される。その際、第1のヨーク205の歯部205bは、ボビン401に設けられた穴部401bに挿通される。第2のヨーク206の歯部206bは、ボビン402に設けられた穴部402bに挿通される。
【0013】
以上によりボビン(コイル含む)401と第1のヨーク205と第1の軸受403は、一体となる。同様に、ボビン(コイル含む)402と第2のヨーク206と第2の軸受404は、一体となる。そして、ボビンの内径部401c、402cをリング部材405の外径部405aにそれぞれ嵌合させる。このときに第1のヨーク205の歯部205bおよび第2のヨーク206の歯部206bの先端付近がロータ202のマグネット面に対向するように配置される。
【0014】
図2は、本実施形態のモータ駆動装置の構成を示すブロック図である。位置センサ信号処理回路(判定手段)301は、前述のステッピングモータ101と、ステッピングモータ101に含まれる第1の位置センサ207および第2の位置センサ208の出力を処理する。位置センサ信号処理回路301からの出力は、制御部302およびフィードバック駆動回路(第2の駆動手段)303に入力される。制御部302は、フィードバック制御による駆動、オープンループ制御による駆動のいずれかを選択して、駆動パルス数と回転方向を出力する制御手段として機能する。フィードバック駆動回路303は、制御部302により選択され、ステッピングモータ101の駆動信号を生成するフィードバック駆動手段として機能する。オープンループ駆動回路(第1の駆動手段)304は、制御部302により選択され、ステッピングモータ101の駆動信号を生成するオープンループ駆動手段として機能する。フィードバック駆動回路303から出力される駆動パルスおよびオープンループ駆動回路304から出力される駆動パルスは、モータドライバ305を介してステッピングモータ101に供給される。
【0015】
次に、ステッピングモータ101のオープンループ制御による駆動(以下、オープンループ駆動という)について説明する。
【0016】
制御部302がオープンループ駆動を選択すると、制御部302はオープンループ駆動回路304に駆動パルス数と回転方向を出力する。オープンループ駆動回路304は、入力された駆動パルス数と回転方向にしたがって、予め設定される時間間隔の駆動パルスをモータドライバ305に出力する。モータドライバ305は、予め設定される時間間隔の駆動パルスにしたがって、第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンを順次切り替える。オープンループ駆動では、オープンループ駆動回路304が出力する駆動パルスの時間間隔を変更することによって、ロータ202の回転速度を変更することが可能である。また、オープンループ駆動回路304は、制御部302から入力された駆動パルス数だけ駆動パルスを出力するので、ロータ202の回転量を制御することが可能である。
【0017】
オープンループ駆動では、予め設定される時間間隔で第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンを切り替える。
【0018】
オープンループ駆動の際に、駆動パルスの時間間隔を短くしていくと、第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンの切り替えに対してロータが応答できなくなり、脱調をおこす可能性がある。このため、オープンループ駆動における高速駆動は、第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンの切り替えに対してロータが応答できる範囲内となる。
【0019】
次に、ステッピングモータ101のフィードバック制御による駆動(以下、フィードバック駆動という)について説明する。
【0020】
制御部302がフィードバック駆動を選択すると、制御部302はフィードバック駆動回路303に駆動パルス数と回転方向を出力する。フィードバック駆動回路303は、入力された駆動パルス数と回転方向にしたがって、所定の時間間隔の駆動パルスをモータドライバ305に出力する。フィードバック駆動回路303から出力される駆動パルスの時間間隔は、第1の位置センサ207および第2の位置センサ208の出力によって変化する。モータドライバ305は、第1の位置センサ207および第2の位置センサ208の出力によって変化する時間間隔の駆動パルスにしたがって、第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンを順次切り替える。フィードバック駆動では、フィードバック駆動回路303は、制御部302から入力された駆動パルス数だけ駆動パルスを出力するので、ロータ202の回転量を制御することが可能である。また、フィードバック駆動回路303は進角回路を含み、進角回路は、第1の位置センサ207および第2の位置センサ208の出力から進角信号を生成する。フィードバック駆動回路303は進角量を制御することで、ステッピングモータ101のトルク−回転数特性を変化させることが可能となる。進角制御については後述する。
【0021】
フィードバック駆動では、第1の位置センサ207および第2の位置センサ208の出力によって変化する時間間隔で第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンを切り替える。ロータ202の位置に応じて、第1のコイル203および第2のコイル204の通電パターンの切り替えを行うため、ロータ202の応答遅れによる脱調の発生を低減でき、オープンループ駆動よりも高速駆動が可能になる。
【0022】
次に、ステッピングモータ101におけるヨークと位置センサの位相関係について説明する。
【0023】
図3は、ヨークと位置センサとロータの位相関係を示す軸方向断面図である。図中で時計回りを正の方向とする。205b1〜b4は第1のヨーク205の磁極歯、206b1〜b4は第2のヨーク206の磁極歯である。本実施例では、マグネットの極数は8極、着磁角Pは45°である。また、第1のヨークを基準とすると、第2のヨークの位相P/2は−22.5°、第1の位置センサ207の位相β1は+22.5°、第2の位置センサ208の位相β2は−45°である。
【0024】
以下の説明では、電気角を用いてモータの動作を説明する。電気角とは、マグネット磁力の1周期を360°として表したものであり、ロータの極数をM、実際の角度をθ0とすると、電気角θは以下の式で表せる。
【0025】
θ=θ0×M/2 (式1−1)
第1のヨーク205と第2のヨーク206の位相差、第1の位置センサ207と第2の位置センサ208の位相差、第1のヨーク205と第1の位置センサ207の位相差は全て電気角で90°である。なお、図3において、第1のヨークの磁極歯の中心とロータマグネット202aのN極中心が対向している。この状態をロータの初期状態とし、電気角0°とする。
(ロータ位置とモータトルクの関係、ロータ位置とセンサ出力の関係)
ここで、ステッピングモータ101におけるロータ位置とモータトルクとの関係、ロータ位置とセンサ出力の関係について説明する。
【0026】
図4は、ロータの回転位置とモータトルクとの関係、ロータの回転位置と位置検出センサ出力との関係を示すグラフである。
【0027】
図4(a)は、ロータの回転角度とモータトルクの関係を示すグラフであり、横軸は電気角を、縦軸はモータトルクを示す。モータトルクは、ロータを時計回りに回転させるトルクを正とする。
【0028】
第1のコイル203に正方向の電流を流すと、第1のヨーク205がN極に磁化し、ロータマグネット202aの磁極との間に電磁気力が発生する。また、第2のコイル204に正方向の電流を流すと、第2のヨーク206がN極に磁化し、マグネットの磁極との間に電磁気力が発生する。2つの電磁気力を合成すると、ロータ202の回転にともなって概略正弦波状のトルクが得られる(トルク曲線A+B+)。他の通電状態においても、同様に、概略正弦波状のトルクが得られる(トルク曲線A+B−、A−B−、A−B+)。また、第1のヨーク205は第2のヨーク206に対して電気角で90°の位相をもって配置されるため、4つのトルクは互いに電気角で90°の位相差を持っている。
【0029】
図4(b)は、ロータの回転角度と各信号の出力との関係を示すグラフであり、横軸は電気角を、縦軸は各信号の出力を示す。
【0030】
ロータマグネット202aの径方向磁力の強さは、電気角に対しておおよそ正弦波状になるように着磁している。そのため、第1の位置センサ207からは概略正弦波状の信号が得られる(位置センサ信号A)。なお、本実施例では、第1の位置センサ207は、ロータマグネット202aのN極と対向するときに正の値を出力する。
【0031】
また、第2の位置センサ208は第1の位置センサ207に対して電気角で90°の位相をもって配置されるため、第2の位置センサ208からは余弦波状の信号が得られる(位置センサ信号B)。なお、本実施例では、第2の位置センサ208は、第1の位置センサ207に対して極性を反転してあるため、ロータマグネット202aのS極と対向するときに正の値を出力する。
【0032】
フィードバック駆動回路303に含まれる進角回路は、位置センサ信号処理回路301にて処理された、第1の位置センサ207の出力と第2の位置センサ208の出力をもとに所定の演算を行う。そして、進角回路によって第1の進角信号と第2の進角信号を出力する。以下、進角信号の演算方法について述べる。
【0033】
電気角θ、第1の位置センサ207の出力をHE1、第2の位置センサ208の出力をHE2とすると、各信号は次のように表される。
【0034】
HE1=sinθ、HE2=cosθ (式2−1)
また、HE1を進角αだけ進めた第1の進角信号をPS1、HE2を進角αだけ進めた第2の進角信号をPS2とすると、HE1、HE2、αを用いて、次のように演算することが可能である。
【0035】
PS1=sin(θ+α)=HE1×cosα+HE2×sinα (式3−1)
PS2=cos(θ+α)=HE2×cosα−HE1×sinα (式3−2)
本実施例ではこの演算式をもとに進角回路を構成する。
【0036】
図5は、進角回路の構成を示す回路図である。本実施例における進角回路を、例えば図5に示すようなアナログ回路で構成することで上記の演算が実現可能である。まず、各位置センサ出力を所定の増幅率Aだけ増幅した信号と、さらにそれらを反転させた信号を生成する。それらに適切な抵抗値R1、R2をかけて加算することにより、進角信号を生成する。第1の進角信号PS1、第2の進角信号PS2は次のように表される。
【0037】
PS1=A×(R/R1)×sinθ+A×(R/R2)cosθ (式4−1)
PS2=A×(R/R1)×cosθ−A×(R/R2)sinθ (式4−2)
回路中の可変抵抗R、R1、R2を次のように選ぶことで、任意の進角αだけ進めた進角信号を生成することができる。
【0038】
R/R1=cosα、R/R2=sinα (式5−1)
さらに、第1の進角信号PS1、第2の進角信号PS2に対してコンパレータを用いて2値化した2値化信号を出力する。
【0039】
以上に説明した進角信号の生成方法は、本発明を実現するための一例であり、この方法のみに限定されない。上記の演算を行うデジタル回路によって進角信号を生成してもよいし、高分解能のエンコーダを用いて通電を切り替えるパルス間隔を調整することで進角信号を生成してもよい。これら周知の方法を用いても上記進角信号の生成方法と同様の効果が得られる。
【0040】
ここで、フィードバック駆動における通電切り替えについて説明する。まず、進角回路から出力される進角信号が有する進角がゼロの場合についてフィードバック駆動の動作を説明する。
【0041】
図4(b)において、位置センサ信号A、Bは、それぞれ第1及び第2の位置センサ207、208の出力である。2値化信号A、Bは、位置センサ信号A、Bに対し、コンパレータを用いて2値化を行った信号である。
【0042】
フィードバック駆動では、2値化信号Aをもとに第1のコイル203の通電を切り替え、2値化信号Bをもとに第2のコイル204の通電を切り替える。すなわち、2値化信号Aが正の値を示すとき第1のコイル203に正方向の電流を流し、負の値を示すとき第1のコイル203に逆方向の電流を流す。また、2値化信号Bが正の値を示すとき第2のコイル204に正方向の電流を流し、負の値を示すとき第2のコイル204に逆方向の電流を流す。
【0043】
図6は、フィードバック駆動の動作を示す軸方向断面図である。
【0044】
図6(a)は、ロータが電気角で135°回転した状態を示している。位置センサ信号A、Bは図4(b)の(A)で示した値を示しており、2値化信号Aは正、2値化信号Bは負の値を示している。従って、第1のコイル203には正方向の電流が流れて第1のヨーク205はN極に磁化し、第2のコイル204には逆方向の電流が流れて第2のヨーク206はS極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A+B−に対応する時計回りのトルクがはたらき、ロータ202はθ方向の回転力を受けて回転する。
【0045】
図6(b)は、ロータ202が電気角で180°回転した状態を示している。第1の位置センサ207はロータマグネット202aのN極とS極の境界に位置する。そのため、電気角180°を境に2値化信号Aは正の値から負の値に切り換わり、第1のコイル203の通電方向が正方向から逆方向へ切り換わる。この電気角は、トルク曲線A+B−とトルク曲線A−B−との交点の電気角と一致する。
【0046】
図6(b’)は、ロータが電気角で180°回転し、第1のコイル203の通電方向が切り換わった状態を示している。第1のコイル203には逆方向の電流が流れて第1のヨーク205はS極に磁化し、第2のコイル204には逆方向の電流が流れて第2のヨーク206はS極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A−B−に対応する時計回りのトルクがはたらき、ロータ202はθ方向の回転力を受けて回転する。
【0047】
図6(c)はロータ202が電気角で225°回転した状態を示している。各進角信号は図4(b)の(C)で示した値を示しており、2値化信号A、Bはともに負の値を示している。従って、第1のコイル203には逆方向の電流が流れて第1のヨーク205はS極に磁化し、第2のコイル204には逆方向の電流が流れて第2のヨーク206はS極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A−B−に対応する時計回りのトルクがはたらき、ロータ202はθ方向の回転力を受けて回転する。
【0048】
図6(d)はロータ202が電気角で270°回転した状態を示している。第2の位置センサ208はロータマグネット202aのN極とS極の境界に位置する。そのため、電気角270°を境に2値化信号Bは負の値から正の値に切り換わり、第2のコイル204の通電方向が逆方向から正方向へ切り換わる。この電気角は、トルク曲線A−B−とトルク曲線A−B+との交点の電気角と一致する。
【0049】
図6(d’)はロータが電気角で270°回転し、第2のコイル204の通電方向が切り換わった状態を示している。第1のコイル203には逆方向の電流が流れて第1のヨーク205はS極に磁化し、第2のコイル204には正方向の電流が流れて第2のヨーク206はN極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A−B+に対応する時計回りのトルクがはたらき、ロータ202はθ方向の回転力を受けて回転する。
【0050】
以上の動作を繰り返すことで、ロータ202を連続的に回転させることが可能となる。また、2値化信号Aまたは2値化信号Bの正負を反転させれば、逆回転も可能である。
【0051】
次に、進角回路から出力される進角信号が所定の進角αを有する場合についてフィードバック駆動の動作を説明する。
【0052】
図7は、進角回路から出力される進角信号が所定の進角αを有する場合のロータの回転角度とモータトルクおよび各信号の出力との関係を示すグラフである。
【0053】
図7(b)は、ロータの回転角度と各信号の出力との関係を示すグラフであり、横軸は電気角を、縦軸は各信号の出力を示す。図7(b)において、センサ信号A、Bに対して進角信号A、Bがそれぞれ所定の進角αだけ進んでいる。また、進角信号をもとに生成された2値化信号A、Bもそれぞれセンサ信号A、Bに対して進角αだけ進んでいる。フィードバック駆動では、2値化信号Aをもとに第1のコイルの通電を切り替え、2値化信号Bをもとに第2のコイルの通電を切り替えるため、コイルの通電切り替えタイミングは進角がゼロのときに比べて進角αだけ早いことになる。
【0054】
図8は、進角を変えたときのトルクと回転数の関係を示すグラフである。横軸はモータのトルクを、縦軸はモータの回転数を示す。
【0055】
グラフから、進角αによってトルクと回転数の関係が変化する性質がわかる。この性質を用いて、フィードバック駆動では駆動条件によって進角αを変える進角制御を行っている。一定の負荷条件下でフィードバック駆動を行う場合、進角αを制御することで駆動速度を制御することも可能である。
【0056】
上述したオープンループ駆動とフィードバック駆動とを組み合わせて制御することによって、通常のステップモータと同等の精度で目標位置に停止可能であるとともに、通常のステップモータに比べ、より高速に目標位置に到達可能となる。そして、オープンループ駆動時若しくはフィードバック駆動における加速制御時に外乱負荷の影響を受けて脱調エラーを起こしたときには、以下のような制御を行うことでより確実な起動を行うことが可能となる。
【0057】
図9は、ステッピングモータ101が起動するときの様子を示す速度線図であり、横軸が時間、縦軸が速度である。通常の起動に際しては、最初に予め決められた速度V1までオープンループ駆動により加速駆動された後に時刻t1(P1ポイント)において、フィードバック駆動に切り替えが行われる。その後、フィードバック駆動により速度V2まで加速された後、時刻t2に於いて定速駆動に入る。
【0058】
図9(a)において、フィードバック駆動途中の時間t4(速度V3)において何らかの要因によりモータの同期が取れなくなり、901に示すような速度カーブで脱調停止したとする。このとき、モータ101には前述の通り二つの位置センサ207、208が備えられているので、モータが何らかの要因で起動途中に脱調停止したことが判別可能である。このとき、時間t4(速度V3)において異常が発生したことから、フィードバック駆動による加速途中にエラー停止したことも判別できる。
【0059】
モータの再起動において、まず前回の起動ではオープンループ駆動からフィードバック駆動切り替えまでに異常は発生していないので、オープンループ駆動自体は前回と同じく時刻t1において速度V1になる様にオープンループ駆動による加速を行う。その後、フィードバック駆動による加速においては、前回の加速度よりも低い加速度になる様にフィードバック駆動における加速駆動を行う。具体的には図9(a)の902に示すように時刻t1からt3までの間に速度V1からV2となる様に前回よりも低加速の起動を行うものである。このように低加速度によるフィードバック駆動における加速駆動を行うことで脱調エラーを回避したフィードバック駆動を行うことが可能となる。
【0060】
次に、図9(b)において、オープンループ駆動による加速途中の時間t5(速度V4)において何らかの要因によりモータの同期が取れなくなり、903に示すような速度カーブに沿って回転が停止したとする。このときも前述と同じく二つの位置センサ207、208により、モータが何らかの要因で起動途中に脱調停止したことが判別可能である。このとき、時間t5(速度V4)において不具合が発生したことから、オープンループ駆動による加速途中にエラーが発生したことも判別可能である。したがって、モータを再起動させる場合には、通常のオープンループ駆動からフィードバック駆動への切り替え点P1よりも回転数の低い切り替え点P2(時刻t1、速度V5)を設定する。このとき、図9(b)においては加速度が前回と同じ加速度で制御しているが、この加速度が低くなる様に制御しても良い。言い換えると速度V5に到達する時間をt1よりも長くなる様に、すなわちグラフの傾きが少なくなるように、ゆっくり加速することも可能である。そしてオープンループ駆動により速度V5に確実に同期させた後、切り替え点P2でフィードバック駆動に切り替えて加速駆動を行う。
【0061】
このとき、フィードバック駆動の加速度を通常より低くなる様に設定してより確実に加速制御することも可能である。このような再起動制御を行うことで、図9(b)の904に示すような速度曲線にしたがって再起動を行い、エラーを回避したオープンループ駆動からフィードバック駆動への切り替え及びフィードバック駆動による加速駆動を行うことが出来る。
【0062】
図10は、上述の駆動制御内容をフローに示した起動フローチャートである。
フローに沿って再度起動制御に関して簡単に説明を行う。まずメインの起動フローはS101において、起動サブルーチンが開始されると、S102においてステップ駆動であるオープンループ駆動による加速が行われる。このとき脱調エラー判別を二つの位置センサ207、208からの検出信号で行う。具体的には、正転及び逆転において時系列で検出されるべき信号は決まっているので、この検出されるべき信号の順番や、駆動周期に対する検出信号の値の食い違いを監視し脱調及び停止判別を行う。このとき、検出信号が所定の範囲内であれば問題が無く、予め決められたフィードバック駆動への切り替え周波数に達するとS104でフィードバック駆動に切り替えられてフィードバック駆動による加速駆動が行われる。そしてフィードバック駆動時にも前述と同じく検出信号が所定の範囲内であるか否かをS105で行った後問題が無ければ、S106において起動制御ルーチンから抜け出す。
【0063】
次に、エラー発生時の制御に関して説明する。オープンループ駆動による加速中S103において検出信号が所定の範囲外であるとして回転異常が検出されると、S201においてエラー回数の確認が行われる。ここで予め決められた回数のエラーが発生したときには、起動制御を中止してS202においてエラーストップする。もし規定回数に達していなかったときにはS203において、オープンループ駆動周波数を前回よりも低い値にセットしてS102へ戻り再度起動を試みる。このとき図11に示すように、たとえばデジタルカメラ1201などの光学機器に備え付けられた表示部1201aに“ERROR”を表示させて機器の動作をストップさせる。次に、フィードバック駆動による加速駆動時にS105において検出信号が所定の範囲外であるとして異常が検出されたときには、S301において、前述と同じくエラー発生回数の確認が行われる。ここでも、予め決められた回数のエラーが発生したときは起動制御を中止しS302においてエラーストップする。このときも上述と同様、たとえばデジタルカメラ1201などの光学機器に備え付けられた表示部1201aに“ERROR”を表示させて機器の動作をストップさせる。もしエラー発生回数が規定回数に達していなかったときはS303に移行してフィードバック駆動の加速度を前回よりも低く設定した後、S102へ戻って再起動が行われる。
【0064】
上述したようにオープンループ駆動からフィードバック駆動による切り替え加速時に何らかの要因によりモータがエラーストップしても夫々のパラメーターを適宜変更しながら最適な起動制御を行うことが出来るので、モータの駆動信頼性を向上させることが出来る。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、オープンループ駆動若しくはフィードバック駆動のどちらのエラーストップであっても、再起動時にはオープンループ駆動の同期速度を前回よりも下げるとともに、フィードバック駆動の加速度を前回よりも低くして駆動することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
安価で簡単な駆動制御方法により、ブラシレスモータの起動信頼性を向上させることが出来る。
【符号の説明】
【0067】
101 ステッピングモータ
301 位置センサ信号処理回路
302 制御部
303 フィードバック駆動回路
304 オープンループ駆動回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータマグネットと前記ロータマグネットの回転位置を検出する検出器を備えたモータと、
前記検出器からの出力が所定の範囲内であるか否かを判定する判定手段と、
前記モータをオープンループ制御により駆動する第1の駆動手段と、
前記モータをフィードバック制御により駆動する第2の駆動手段と、
前記モータの駆動開始時には、前記第1の駆動手段によって前記モータを駆動した後、前記第2の駆動手段によって前記モータを駆動するように、前記前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを切り替える制御手段と、を有し、
前記第1の駆動手段は、所定の駆動周波数でオープンループ制御をしている際に、前記判定手段が前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の駆動周波数よりも低い駆動周波数で前記モータを駆動し、
前記第2の駆動手段は、所定の加速度でフィードバック制御をしている際に、前記判定手段が前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の加速度よりも低い加速度で前記モータを駆動することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記判定手段が前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した回数が規定回数を越えた場合、前記第1の駆動手段及び前記第2の駆動手段は前記モータの駆動を停止することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
駆動時にオープンループ制御を行った後、フィードバック制御を行うモータの駆動制御方法であって、
前記モータをオープンループ制御により駆動する第1の駆動ステップと、
所定の駆動周波数でオープンループ制御をしている際に、ロータマグネットの回転位置を検出する検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の駆動周波数よりも低い駆動周波数で前記モータを駆動するステップと、
前記モータをフィードバック制御により駆動する第2の駆動ステップと、
所定の加速度でフィードバック制御をしている際に、前記検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の加速度よりも低い加速度で前記モータを駆動するステップと、を有することを特徴とするモータの駆動制御方法。
【請求項4】
前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した回数が規定回数を越えた場合、前記第1の駆動ステップ及び前記第2の駆動ステップにおいて前記モータの駆動を停止することを特徴とする請求項3に記載のモータの駆動制御方法。
【請求項1】
ロータマグネットと前記ロータマグネットの回転位置を検出する検出器を備えたモータと、
前記検出器からの出力が所定の範囲内であるか否かを判定する判定手段と、
前記モータをオープンループ制御により駆動する第1の駆動手段と、
前記モータをフィードバック制御により駆動する第2の駆動手段と、
前記モータの駆動開始時には、前記第1の駆動手段によって前記モータを駆動した後、前記第2の駆動手段によって前記モータを駆動するように、前記前記第1の駆動手段と前記第2の駆動手段とを切り替える制御手段と、を有し、
前記第1の駆動手段は、所定の駆動周波数でオープンループ制御をしている際に、前記判定手段が前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の駆動周波数よりも低い駆動周波数で前記モータを駆動し、
前記第2の駆動手段は、所定の加速度でフィードバック制御をしている際に、前記判定手段が前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の加速度よりも低い加速度で前記モータを駆動することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記判定手段が前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した回数が規定回数を越えた場合、前記第1の駆動手段及び前記第2の駆動手段は前記モータの駆動を停止することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
駆動時にオープンループ制御を行った後、フィードバック制御を行うモータの駆動制御方法であって、
前記モータをオープンループ制御により駆動する第1の駆動ステップと、
所定の駆動周波数でオープンループ制御をしている際に、ロータマグネットの回転位置を検出する検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の駆動周波数よりも低い駆動周波数で前記モータを駆動するステップと、
前記モータをフィードバック制御により駆動する第2の駆動ステップと、
所定の加速度でフィードバック制御をしている際に、前記検出器からの出力が所定の範囲外であると判定した場合、前記所定の加速度よりも低い加速度で前記モータを駆動するステップと、を有することを特徴とするモータの駆動制御方法。
【請求項4】
前記検出器からの出力が前記所定の範囲外であると判定した回数が規定回数を越えた場合、前記第1の駆動ステップ及び前記第2の駆動ステップにおいて前記モータの駆動を停止することを特徴とする請求項3に記載のモータの駆動制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−55767(P2013−55767A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191603(P2011−191603)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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