説明

モータ駆動装置

【課題】外部からアナログの制御電圧によって、PWM出力電圧デューティの演算を行い、そのPWM演算器のオフセット、ゲインばらつきの影響に対して、モータ速度を一定とするモータ駆動装置を提供すること。
【解決手段】モータ制御端子の電圧がV「V」〜V「V」の範囲の時に前記PWM演算器の出力電圧デューティをD%とし、同様にV「V」〜V「V」の範囲の時にD%、・・・、V「V」〜VN+1「V」の範囲の時にD%とするモータ駆動装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空調機器(エアコン)、燃焼用ファンモータを搭載した給湯器、空気清浄器などに使用される三相ブラシレスDCモータ(以下、モータという)の駆動装置に関するものであり、特にモータ制御端子電圧をPWM出力電圧デューティに変換するPWM演算器のばらつき及びモータ制御端子電圧の変動に対して、安定したPWM演算器の出力電圧デューティを出力するモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空調機器、給湯器、空気清浄器等に使用されるファンモータは省エネルギー化のニーズによってインダクションモータからブラシレスDCモータが用いられるようになってきた。それにともないインダクションモータから容易に置き換えが可能なブラシレスDCモータの制御に強く望まれている。
【0003】
ブラシレスDCモータの駆動は、モータの速度を制御するために、一般的に電圧型PWM(パルス幅変調)駆動方式が用いられている。PWMはモータの巻線に接続されたパワースイッチング素子(IGBT、MOSFET等)のオン時間とオフ時間の割合(以下、デューティという)を変え、モータへ供給する電圧を制御する方式である。
【0004】
このPWM駆動のデューティを変えることによりモータの速度制御を行うことができる。このPWM演算器へのデューティ指令は、小型のブラシレスDCモータの場合、モータ駆動装置の外部からアナログ制御電圧信号の電圧にて指令される場合が多い。
【0005】
従来のモータ駆動装置は特開2007−306752号に記載のものがある。図5はこの従来のモータ駆動装置の回路構成図であり、図6は図5に示すモータ駆動装置のアナログ制御電圧とPWM演算器の出力電圧のデューティの関係を示した図である。
【0006】
図5において、モータ1のU相、V相およびW相には、直流電源2からインバータ20を介して駆動電力が供給される。インバータ20は、IGBT、MOSFET等のパワースイッチング素子21、22、23、24、25、26を備える。制御器30は波形生成器およびPWM演算器B32Bを備える。外部より、アナログ制御電圧信号VspをPWM演算回路に入力する。
【0007】
モータ駆動装置10は、インバータ20、制御器30および速度検出器40から構成されている。
【0008】
次に図5におけるモータ駆動装置の駆動方法を以下に説明する。
【0009】
モータ1の回転位置信号CSに応じて波形生成器31が生成するモータ駆動波形信号が、PWM演算器B32Bに入力される。PWM演算器B32Bは、モータ駆動波形信号と外部から入力されるアナログ制御電圧信号Vspに基づき、パルス幅変調を行い、ドライブ信号UH、VH、WH、UL、VLおよびWLをインバータ20の各パワースイッチング素子(21,22,23,24,25,26)に対して出力する。各パワースイッチング素子(21,22,23,24,25,26)はドライブ信号UH、VH、WH、UL、VLおよびWLにて各々の素子がオンまたはオフ動作される。
【0010】
アナログ制御電圧信号Vspは外部機器3からPWM演算器B32Bの出力電圧デューティ指令として電圧が印加される。
【0011】
アナログ制御電圧信号VspとPWM演算器B32Bの出力電圧デューティは、図6に示すように、ノイズによる誤動作を防止するためゼロ電圧付近にオフセットを設け、オフセット電圧以上になると比例関係(以下、ゲインという)とし、オフセットおよびゲインのばらつきによって、最大電圧が印加されないことを防止するため、最大電圧より低い電圧でデューティが100%になるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−306752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来技術におけるモータ駆動装置は、安価なアナログICのプロセスを用いて構成されることが多く、PWM演算器のオフセットばらつき、ゲインばらつきによって、外部より同じ値の電圧を印加しても、デューティが一定とならず、モータの回転数がばらつくという課題がある。
【0014】
図6の点線はデューティDの最小ばらつき、最大ばらつきを示したものであり、Cはばらつきによって大きな値となる時で、オフセットが大さくゲインが小さい場合であり、aはばらつきによって小さな値となる時で、オフセットが小さくゲインが大きい場合である。
【0015】
したがって同じ値のアナログ制御電圧信号Vspが入力されても、デューティがばらつくため、例えば、空調機器において、微風、弱風、中風、強風のモータの速度が一定にならないという課題があった。デューティのばらつきを抑制するためには高精度の変換器を搭載する。また、外部機器に速度フィードバックループ機能を持たせてモータの速度を一定にする方法がとられることがあるが、コストの増加を伴う。
【0016】
本発明のモータ駆動装置は、上記課題に鑑みなされたものであり、アナログ制御電圧信号Vspと、PWM出力電圧のデューティの関係をある一定幅のアナログ制御電圧に対し、決められたある一定の値のデューティを出力することを特徴とし、PWM演算器のオフセット、ゲインばらつきに対してもモータの速度を一定にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のモータ駆動装置は、三相ブラスレスDCモータを駆動するパワースイッチング素子と、前記パワースイッチング素子を駆動するパルスを生成するPWM演算器と、前記三相ブラスレスDCモータの回転位置検出信号に基づく位相タイミングで変調波を生成する波形生成手段と、外部からの入力されるアナログ制御電圧信号に応じて前記PWM演算器のディーティ出力とするモータ制御端子を備え、前記モータ制御端子の電圧がV「V」〜V「V」の範囲の時に前記PWM演算器の出力電圧デューティをD%とし、同様にV「V」〜V「V」の範囲の時にD%、・・・、V「V」〜VN+1「V」の範囲の時にD%とする構成を具備する。
【0018】
また、本発明のモータ駆動装置は、上記構成において、前記モータ制御端子電圧に対して、前記PWM演算器の出力電圧デューティの変化点において、ヒステリシス特性を具備する。
【0019】
また、本発明のモータ駆動装置は、上記構成において、上記モータ制御端子電圧の入力電圧は、抵抗分圧方式による電圧が供給される構成を具備する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のモータ駆動装置は、モータ制御端子に入力されるアナログ制御電圧信号Vspと、PWM出力電圧のデューティの関係をある一定幅のアナログ制御電圧信号Vspに対し、決められたある一定の値のデューティを出力するようにし、かつ、ある一定電圧幅の値とデューティの値を複数個設けるようにすることによって、PWM演算器のオフセットばらつき、ゲインのばらつきに関係なく、決められたある一定の値のデューティを出力することで、モータの速度を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1におけるモータ駆動装置の回路構成図
【図2】図1に示すモータ駆動装置のアナログ制御電圧信号VspとPWM演算器Aの出力電圧デューティ関係の説明図
【図3】図2の関係図の各デューティ設定値の変化点に対し、アナログ制御電圧信号VspにΔV「V」のヒステリシス特性に関する説明図
【図4】図1のモータ駆動回路にて、アナログ制御電圧信号Vspを抵抗分圧方式にて印加する回路ブロック図
【図5】従来のモータ駆動装置の回路ブロック図
【図6】図6に示すモータ駆動装置のアナログ制御電圧信号VspとPWM演算器Bの出力電圧デューティに関する説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例1におけるモータ駆動装置の回路構成図。図2は図1に示すモータ駆動装置のアナログ制御電圧信号VspとPWM演算器の出力電圧デューティDの関係を示した図である。
【0024】
図1において、モータ1のU相、V相およびW相には、直流電源2からインバータ20を介して駆動電力が供給される。インバータ20は、パワースイッチング素子(IGBT、MOSFET等)21、22、23、24、25、26を備える。制御器30は波形生成器およびPWM演算器A32Aを備える。外部より、アナログ制御電圧信号VspをPWM演算回路A32Aに入力する。
【0025】
モータ駆動装置10は、インバータ20、制御器30および速度検出器40から構成されている。
【0026】
アナログ制御電圧信号Vspは外部機器3からPWM演算器A32Aの出力電圧デューティ指令として電圧が印加される。
【0027】
アナログ制御電圧信号VspとPWM演算器A32Aの出力電圧デューティDは、図2に示す。アナログ制御電圧信号Vspの値がV「V」〜V「V」の範囲の時にPWM演算器の出力電圧デューティDをD%、同様にV「V」〜V「V」の範囲の時にD%、・・・、V「V」〜VN+1「V」の範囲の時にD%とする。図2は説明を簡単にするためにN=5の時の場合を図示している。
【0028】
以上のように構成された本実施例におけるモータ駆動装置について、次にその動作を説明する。
【0029】
モータ1の回転位置信号CSに応じて波形生成器31が生成するモータ駆動波形信号が、PWM演算器A32Aに入力される。PWM演算器A32Aは、モータ駆動波形信号と外部から入力されるアナログ制御電圧信号Vspに基づき、パルス幅変調を行い、ドライブ信号UH、VH、WH、UL、VLおよびWLをインバータ20の各パワースイッチング素子(21,22,23,24,25,26)に対して出力する。
【0030】
各パワースイッチング素子(21,22,23,24,25,26)はドライブ信号UH、VH、WH、UL、VLおよびWLにて各々の素子がオンまたはオフ動作される。
【0031】
外部機器3からアナログ制御電圧信号Vspが印加されると、アナログ制御電圧信号VspとPWM演算器A32Aの出力電圧デューティは、図2の関係があり、アナログ制御電圧信号Vspの値がV「V」〜V2「V」の範囲の時、PWM演算器A32Aの出力電圧デューティDの値D%が出力される。例えば、空調機器の場合、PWM演算器A32Aの出力電圧デューティDはD%を微風(1速運転)とした時に、アナログ制御電圧信号VspがV「V」〜V「V」範囲の時、1速運転のデューティ出力が可能になる。
【0032】
次にアナログ制御電圧信号Vspの値がV「V」〜V「V」の範囲の時、PWM演算器A32Aの出力電圧デューティDはD%が出力される。例えば、空調機器の場合、PWM演算器の出力電圧デューティをD%を弱風(2速運転)とした時に、アナログ制御電圧信号VspがV「V」〜V「V」の範囲の時、2速運転のデューティ出力が可能になる。
【0033】
同様に、アナログ制御電圧信号Vspの値がV「V」〜V「V」の範囲の時、PWM演算器A32Aの出力電圧デューティDはD%が出力される。例えば、空調機器の場合、PWM演算器の出力電圧デューティDをD%を中風(3速運転)とした時に、アナログ制御電圧信号VspがV「V」〜V「V」の範囲の時、3速運転のデューティ出力が可能になる。
【0034】
同様に、アナログ制御電圧信号Vspの値がV「V」〜V「V」の範囲の時、PWM演算器の出力電圧デューティをDはD%が出力される。例えば、空調機器の場合、PWM演算器の出力電圧デューティDをD%を強風(4速運転)とした時に、アナログ制御電圧信号VspがV「V」〜V「V」の範囲の時、4速運転のデューティ出力が可能になる。
【0035】
同様に、アナログ制御電圧信号Vspの値がV5(N)「V」〜V6(N+1)「V」の範囲の時、PWM演算器の出力電圧デューティDは100%(D)が出力される。例えば、空調機器の場合、PWM演算器の出力電圧デューティDを100%(D)とし、最大風(5速運転)とした時に、アナログ制御電圧信号VspがV5(N)「V」〜V6(N+1)「V」の範囲の時、5速運転のデューティ出力が可能になる。
【0036】
したがって、PWM演算器のオフセットおよびゲインにばらつきがあっても、決められた一定の値のデューティを出力するため、モータの速度を安定させることが可能となる。
【0037】
なお、ディーティの設定は1速運転からn速運転まで機器の動作に応じて任意に設定することは言うまでもない。
【0038】
また、図3は図2のアナログ制御電圧信号VspとPWM演算器のデューティの関係の各デューティ設定値の変化点に対し、アナログ制御電圧信号VspにΔV「V」のヒステリシス特性を持たした図である。このようにヒステリシス特性を持つことによって、デューティ変化点にてモータの速度がばたつくことが防止できる。
【0039】
なお、図において、11は直流電源入力+端子であり、12は直流電源入力−端子であり、13はアナログ制御電圧信号端子であり、14はモータ速度出力端子である。
【実施例2】
【0040】
図4は図1に示すモータ駆動装置にて空調機器の室外ファン用として、一定速度で運転する場合の抵抗分圧方式によるアナログ制御電圧信号Vspの回路構成図である。抵抗分圧方式における抵抗のばらつき、電源電圧の変動・ばらつきによってアナログ制御電圧信号Vspが一定にならないが、図2のようにアナログ制御電圧信号VspとPWM演算器のデューティの関係を持つことによって、アナログ制御電圧信号Vspの値が多少変化しても、決められた一定の値のデューティを出力するため、モータの速度を安定させる効果がある。
【0041】
複数個の抵抗を用いた抵抗分圧方式にて多段速度運転する場合にも有効であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、外部機器に速度フィードバックループ機能を持たない空調機器(エアコン)の室外機、給湯器、空気清浄器などに搭載されるモータの駆動に有効である。
【符号の説明】
【0043】
1 モータ
2 直流電源
3 外部機器
20 インバータ
30 制御器
31 波形生成器
32A PWM演算器A
32B PWM演算器B
40 速度検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相ブラスレスDCモータを駆動するパワースイッチング素子と、前記パワースイッチング素子を駆動するパルスを生成するPWM演算器と、前記三相ブラスレスDCモータの回転位置検出信号に基づく位相タイミングで変調波を生成する波形生成手段と、外部からの入力されるアナログ制御電圧信号に応じて前記PWM演算器のディーティ出力とするモータ制御端子を備え、前記モータ制御端子の電圧がV「V」〜V「V」の範囲の時に前記PWM演算器の出力電圧デューティをD%とし、同様にV「V」〜V「V」の範囲の時にD%、・・・、V「V」〜VN+1「V」の範囲の時にD%とする構成を具備するモータ駆動装置。
【請求項2】
前記モータ制御端子電圧に対して、前記PWM演算器の出力電圧デューティの変化点において、ヒステリシス特性を具備する請求項1記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記モータ制御端子電圧の入力電圧は、抵抗分圧方式による電圧が供給される構成を具備する請求項1又は請求項2のいずれかに記載のモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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