説明

モータ

【課題】実装強度を高め、耐衝撃性を向上させることができるモータを提供する。
【解決手段】 振動モータ1は、一側が開放された扁平な外筒部2と、外筒部2の開放側を塞ぐ蓋部3とを備える。蓋部3は、給電用の電極25a,25bを配した円板状の回路基板8と、回路基板8を取り囲む金属製のブラケット24とを有する。ブラケット24の実装面の外周には、錫メッキが施されたリング状の実装部Sが設けられている。ブラケット24には、回路基板8の切欠部8cに嵌め込む突起部24cが配置されている。実装部Sと電極25a,25bとの間であって突起部24cを含むリング状の領域Tは、メッキが施されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種携帯通信機器(例えば、携帯電話機)、携帯情報端末機器、遊戯機器等に搭載されるモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2000−166173号公報がある。この公報に記載されたモータは、底面と側面と上面とからなる外殻、底面側に携帯通信機器の基板と電気的に接続されるランド、及び外殻の内部に配置されたステータと軸受装置とロータを備えている。そして、基板に一括リフロー半田付けすることにより、実装の高能率化及び高密度化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−166173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、携帯通信機器等の耐衝撃性能の向上に伴い、使用されるモータの実装強度が要求されている。しかしながら、前述したモータでは、数箇所のランドと携帯通信機器の基板とを半田付けすることで両者を接合するため、モータの実装強度が弱く、耐衝撃性が低いといった問題点がある。
【0005】
本発明は、実装強度を高め、耐衝撃性を向上させることができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るモータは、マグネットと外部から給電されるコイルとを収容し一側が開放された扁平な外筒部と、外筒部の開放側を塞ぐ蓋部とを有する表面実装用のモータにおいて、蓋部の実装面の外周には、メッキが施されたリング状の実装部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るモータでは、蓋部の実装面の外周にメッキが施されたリング状の実装部が設けられているので、モータの表面実装時に、実装部と外部基板等とを半田付けすることにより、モータは蓋部の実装面の外周にわたって外部基板等に接合することができる。その結果、モータの実装強度を高めることができ、耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0008】
本発明に係るモータにおいて、蓋部は、給電用の電極を配した円板状の回路基板と、回路基板を取り囲んで保持する金属製のブラケットとを有し、実装部は、ブラケットの外周に配置されていることが好適である。
【0009】
この場合にあっては、モータの実装強度を高めることができると共に、給電用の電極を有する回路基板を有するので、外部基板等との電気的な接続を容易に行うことができる。
【0010】
本発明に係るモータにおいて、回路基板には、切欠部が設けられ、ブラケットには、実装部から電極に向けて突出し、切欠部に嵌め込む突起部が設けられ、実装部と電極との間であって突起部を含む少なくともリング状の領域は、メッキが施されていない領域であることが好適である。
【0011】
この場合にあっては、回路基板側に切欠部と、ブラケット側に突起部とをそれぞれ設けることにより、回路基板をブラケットに取り付ける際に、両者の位置決めを容易に行うことができ、作業性の向上を図ることができる。また、突起部を含む少なくともリング状の領域にメッキが施されていないので、半田濡れ性が低下し、表面実装時に突起部と電極との間に半田がブリッジしショートすることを確実に防止することができる。
【0012】
本発明に係るモータにおいて、ブラケットには、回路基板をモータの内部に露出させるための貫通穴が設けられ、貫通穴の外端部は、メッキが施されていない領域内にあることが好適である。
【0013】
この場合にあっては、表面実装時に半田が実装部から貫通穴に流れ込むことを確実に抑制し、半田の流れ込みによるショートの発生を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実装強度を高め、耐衝撃性を向上させることができるモータを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るモータの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示されたモータの断面図である。
【図3】図1に示されたモータの底面図である。
【図4】ブラケットと回路基板との位置関係を示す分解斜視図である。
【図5】ブラケットの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るモータの好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、本発明に係るモータを携帯通信機器に搭載される振動モータに適用したものである。
【0017】
図1及び図2に示すように、振動モータ1は、2極3スロットタイプの振動モータであって、直径約10mm、厚さ約2mmと小型化が図られ、携帯電話などに内蔵され振動発生源として利用される。この振動モータ1は、一側が開放された扁平な外筒部2と、外筒部2の開放側を塞ぐための蓋部3とから構成されたモータケースCを備え、モータケースC内には、コア5と外部から給電されるコイル12とを有するロータアッセンブリーRと、ステータとなるマグネット7とが収容されている。なお、外筒部2と蓋部3とは、スポット溶接により接合されている。
【0018】
外筒部2は、ステンレス等の非磁性材料からなり、その中央には、シャフト4の先端が挿入するための円孔2aが設けられている。外筒部2の外周壁には、外周壁を内側に押し出すことによって凹部2bが形成されている。外筒部2の内周面には、帯状のバックヨーク6を介し、リング状のマグネット7が固定されている。バックヨーク6は、軟磁性材料からなり、その両端が近接して離間され、C字状になっている。
【0019】
図3及び図4に示すように、蓋部3は、略円板状に形成され、金属製(例えば、SUS材)のブラケット24と、ブラケット24の中央に埋設された回路基板8とを有する。ブラケット24は、例えば一枚の金属板を絞り加工することにより略ハット形状に形成され、リング状のフランジ部24a、所定の深さを有する凹部24bとを有する。フランジ部24aの底面(実装面)は、錫メッキが施されており、外部の配線基板と実装する実装部Sになる。凹部24bの内部には、給電用の電極25a,25bを配した回路基板8が嵌め込まれ、接着等によりブラケット24に固定されている。
【0020】
ブラケット24の上面の中央には、ブラケット24と一体的に形成された円筒状の軸ホルダ9が立設されている。シャフト4は、軸ホルダ9内に圧入され固定されている。軸ホルダ9の上方には、ワッシャ10と軸受11が配置され、ロータアッセンブリーRは、軸受11を介してシャフト4に回転自在に支持されている(図2参照)。
【0021】
ロータアッセンブリーRは、コイル12が巻き付けられたコア5と、コイル12に電流を供給するコミテータ13と、コミテータ13を保持するためのコミテータホルダ14とから主として構成されている。コア5は、2極3スロットであって平板状に形成され、厚さ0.35mmの一枚の珪素鋼板を打ち抜き加工することにより作り出されている。そして、3つのスロットのうちの1つには、タングステンなどの高比重金属からなる分銅19が嵌め込まれている。
【0022】
このように分銅19がコア5のスロットに配置されることにより、分銅19の厚さによるモータケースCの厚さへの影響を抑制することでき、振動モータ1の薄型化が図り易くなる。さらに、分銅19は、コア5のコミテータ13側で周方向に延出させると、後述するブラシ20の径方向外側の空間を有効に利用でき、振動モータ1の振動の増大化と薄型化が両立できる。
【0023】
コミテータ13は、銅製薄板のプレス成形によって作られた3枚のコミテータセグメント16を有する。各コミテータセグメント16は、シャフト4の軸線方向に沿って延在すると共に断面円弧状の本体部16aと、本体部16aの端部から起立して、コア5の平面5aに平行に延在するライザ部16bとを備える。ライザ部16bの先端では、コイル12の電線が巻き付けられ、半田付けされている(図1参照)。
【0024】
コミテータホルダ14は、略三角形状のベース部15と、ベース部15の中央に立設された円筒部17とを有する。ベース部15には、貫通穴15aが3つ設けられている。これらの貫通穴15aは、円筒部17を中心にした円周上で等間隔に配置され、その内部にはコミテータセグメント16に接続して火花及びノイズの発生を防止するためのチップ型バリスタ18が嵌め込まれている。
【0025】
図1に示すように、ブラケット24の上面側には、コミテータセグメント16に摺動接触する一対のブラシ20が配置されている。この一対のブラシ20は、コア5を挟んでコミテータセグメント16のライザ部16bの反対側に配置されている(図2参照)。
【0026】
回路基板8は、円板状に形成され、ブラケット24により取り囲まれて保持されている。回路基板8の上面8aはブラケット24に覆われ、底面8bは外部に露出する。このように回路基板8の底面8bを露出させることで、回路基板8と外部の配線基板との接続を簡単に行うことが可能となるので、振動モータ1を携帯通信機器等に容易に組み込むことができる。
【0027】
図4に示すように、回路基板8の底面8bの中央には、金メッキが施された丸い領域が形成され、この領域は、給電用の電極の+端子25aになる。また、回路基板8の底面には、+端子25aを取り囲むようにリング状に形成され、金メッキが施された領域が設けられ、この領域は給電用の電極のグランド端子25bになる。
【0028】
+端子25aとグランド端子25bとは、回路基板8を形成する絶縁性の樹脂によって絶縁されている。また、+端子25aとグランド端子25bとは、それぞれスルーホール26、27を介して回路基板8の上面8aに配置された電極パターンと電気的に接続されている。
【0029】
回路基板8には、切欠部8cが設けられ、一方、ブラケット24にはこの切欠部8cに対応する突起部24cが設置されている。図3に示すように、突起部24cは、フランジ部24aから電極25a,25bに向けて突出し、切欠部8cに嵌め込まれている。これによって、回路基板8をブラケット24に取り付ける際に、両者の位置決めを容易に行うことができる。
【0030】
ブラケット24には、回路基板8の上面8aの一部を露出させるための貫通穴24dが2つ設けられている。これらの貫通穴24dは、矩形状に形成され、シャフト4の中心軸に対して左右対称に配置され、貫通穴24dの中には、ブラシ20に固定されたターミナル21が収容されている。そして、ターミナル21は、半田によって回路基板8の上面8aに配置された電極パターンと電気的に接続されると共に、ターミナルホルダ22によって回路基板8に押し付けられている。ターミナルホルダ22は、接着等によってブラケット24に固定されている。そして、突起部24cと切欠部8cによるブラケット24と回路基板8の位置決めによって、貫通穴24dにはターミナル21へ接続される回路基板8の電極パターンを対向させるようにしている。
【0031】
図5はブラケットの底面図である。図5に示すように、錫メッキが施されたリング状の実装部Sの内側には、錫メッキが施されていない円環状の領域Tが形成されている。この領域Tは、実装部Sと回路基板8の電極25a,25bとの間に配置され、突起部24cを含むようになっている。そして、貫通穴24dの外端部は、領域T内に位置する。また、この領域Tの内側であって領域Tに取り込まれた領域はメッキが施されている。
【0032】
このように構成されたブラケット24は、例えばブラケット24全体に錫メッキを施した後に、領域T内の錫メッキを除去することにより形成してもよく、あるいは領域Tをマスキングしてからメッキ処理することにより形成してもよい。なお、錫メッキの除去方法としては、例えばレーザを利用して除去する方法、若しくはブラスト処理が挙げられる。
【0033】
なお、錫メッキを除去する場合、領域Tに酸化層を形成させ、領域Tの半田濡れ性を低下させることができる。従って、表面実装時に、突起部24cとグランド端子25bとの間に半田がブリッジしショートすることを確実に防止することができる。また、レーザを利用して錫メッキを除去する場合、レーザの照射によって領域Tの表面が凹凸になるので、ブラケット24と回路基板8との接着強度を高めることができると共に、リフロー時の錫溶融による接着強度の低下を抑制するので、振動モータ1の実装強度をさらに高める効果をもたらす。
【0034】
本実施形態に係る振動モータ1では、ブラケット24の実装面の外周にメッキが施されたリング状の実装部Sが設けられているので、振動モータ1の表面実装時に、実装部Sと外部の配線基板等とを半田付けすることにより、振動モータ1はブラケット24の実装面の外周にわたって外部の配線基板等に接合することができる。その結果、振動モータ1の実装強度を高めることができ、耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0035】
加えて、突起部24cを含む領域Tにメッキが施されていないので、半田濡れ性が低下し、表面実装時に突起部24cとグランド端子25bとの間に半田がブリッジしショートすることを確実に防止することができる。更に、貫通穴24dの外端部がメッキが施されていない領域T内にあるので、半田濡れ性が低下し、表面実装時に半田が実装部Sから貫通穴24dに流れ込むことを確実に抑制し、半田の流れ込みによるショートの発生を確実に防止することができる。
【0036】
上述した実施形態は本発明に係るモータの一例を説明したものであり、本発明に係るモータは実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係るモータは、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係るモータを変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。例えば、ブラケット24において、実装部Sのみに錫メッキを施してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…振動モータ、2…外筒部、3…蓋部、5…コア、7…マグネット、8…回路基板、8c…切欠部、12…コイル、24…ブラケット、24c…突起部、24d…貫通穴、25a,25b…電極、S…実装部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットと外部から給電されるコイルとを収容し一側が開放された扁平な外筒部と、前記外筒部の開放側を塞ぐ蓋部とを有する表面実装用のモータにおいて、
前記蓋部の実装面の外周には、メッキが施されたリング状の実装部が設けられていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記蓋部は、給電用の電極を配した円板状の回路基板と、前記回路基板を取り囲んで保持する金属製のブラケットとを有し、
前記実装部は、前記ブラケットの外周に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記回路基板には、切欠部が設けられ、
前記ブラケットには、前記実装部から前記電極に向けて突出し、前記切欠部に嵌め込む突起部が設けられ、
前記実装部と前記電極との間であって前記突起部を含む少なくともリング状の領域は、メッキが施されていない領域であることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ブラケットには、前記回路基板をモータの内部に露出させるための貫通穴が設けられ、
前記貫通穴の外端部は、前記メッキが施されていない領域内にあることを特徴とする請求項3に記載のモータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−259285(P2010−259285A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109418(P2009−109418)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】