説明

ユニットパネルを用いた壁面工法

【課題】 誰でも簡単に施工することができ、かつ、立体的な表面模様による斬新な装飾性を表現することができ、しかも、種々の室内環境機能をも付加することができるユニットパネルの壁面工法を提供すること。
【解決手段】 メッシュネット11を、漉き和紙から成る裏打ち紙材12の表面に接合一体化し、当該裏打ち紙材12を透視可能で、かつ立体模様を呈する紙製シート材1を構成する一方、フレーム本体2の表面には、天然物接着剤Sによって前記紙製シート材1を貼着するとともに、同フレーム本体2の裏面の少なくとも一部には、止着部材3Aを配設することによってユニットパネル材Pを構成した後、壁面Wにおいて、前記止着部材3Aに対応して一組の着脱自在な止着機構を形成する止着具3Bを固定する一方、これら止着部材3Aと止着具3Bとを止着することによって、前記ユニットパネル材Pを壁面Wに設置するという技術的手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内装飾を醸成する工法に関し、更に詳しくは、誰でも簡単に施工することができ、かつ、立体的な表面模様による斬新な装飾性を表現することができ、しかも、種々の室内環境機能をも付加することができるユニットパネルの壁面工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、室内の雰囲気を醸し出すためには様々な室内装飾が施されており、例えば、壁面に壁紙材を貼り付ける方法が代表的であって、かかる装飾方法に用いられる材料には、塩化ビニルなどの樹脂製フィルムより成る壁紙材が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、かかる材料を用いる場合には、当該材料が表面にプリント柄を施したものに過ぎなかったため、平面的かつ単調であって、装飾性を演出するには今一つ物足りなさがあった。また、吸湿性や通気性の悪化、あるいはシックハウスの原因となったり、更に、質感や風合いまでも犠牲にしてしまうという問題があった。
【0004】
更にまた、かかる方法にあっては、部屋を模様替えする度に、壁紙を新たに張り替える必要があり、この際の剥がし作業や張り込み作業には、熟練した技巧が必要であって、非常に煩わしかったため、模様替えの意欲を低下させ、室内雰囲気のマンネリ化を生ぜしめるという問題もあった。
【特許文献1】特開2003−328278号公報(第3−7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来、室内装飾を醸成するにあたり、上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、誰でも簡単に施工することができ、かつ、立体的な表面模様による斬新な装飾性を表現することができ、しかも、種々の室内環境機能をも付加することができるユニットパネルの壁面工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0007】
即ち、本発明は、紙製撚糸11aを単独あるいは他の天然素材製糸11Yと複合的に組み合わせてメッシュネット11を織成または編成し、このメッシュネット11を漉き和紙から成る裏打ち紙材12の表面に接合一体化し、当該裏打ち紙材12を透視可能で、かつ立体模様を呈する紙製シート材1を構成する一方、
ハニカム構造から成る紙製のペーパーコア21を外枠体22により包囲して平板状のフレーム本体2を作製し、その表面には、天然物接着剤Sによって前記紙製シート材1を貼着するとともに、同フレーム本体2の裏面の少なくとも一部には、止着部材3Aを配設することによってユニットパネル材Pを構成した後、
壁面Wにおいて、前記止着部材3Aに対応して一組の着脱自在な止着機構を形成する止着具3Bを固定する一方、
これら止着部材3Aと止着具3Bとを止着することによって、前記ユニットパネル材Pを壁面Wに設置するという技術的手段を採用した。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、止着部材3Aおよび止着具3Bをベルベット式ファスナーに構成し、各々突設された掛止突起31A・31Bを掛合止着するという技術的手段を採用することができる。
【0009】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、複数の配色からなる裏打ち紙材12を使用して紙製シート材1を構成するという技術的手段を採用することができる。
【0010】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、フレーム本体2のペーパーコア21のハニカム間隙に、木炭、竹炭、籾殻、酸化チタン、ゼオライト、トルマリン、セラミック、ゲルマニウム、黒体から選択される少なくとも一種を配設するという技術的手段を採用することができる。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、フレーム本体2の外枠体22を塩化ビニルやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック材料、あるいは、アルミニウムなどの軽量金属により作製するという技術的手段を採用することができる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、複数のユニットパネル材P・P…を壁面Wに敷き詰めて覆設するという技術的手段を採用することができる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、天然素材製糸11Yにミネラル成分を含有する綿糸を用いてメッシュネット11を織成または編成するという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、天然物接着剤Sとして、にかわ、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、大豆グルーなどのタンパク質系接着剤、あるいは、デンプン系、セルロース系、複合多糖類などの炭水化物系接着剤を用いるという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の壁面工法にあっては、紙製撚糸を単独あるいは他の天然素材製糸と複合的に組み合わせてメッシュネットを織成または編成し、このメッシュネットを漉き和紙から成る裏打ち紙材の表面に接合一体化し、当該裏打ち紙材を透視可能で、かつ立体模様を呈する紙製シート材を構成する一方、ハニカム構造から成る紙製のペーパーコアを外枠体により包囲して平板状のフレーム本体を作製し、その表面には、天然物接着剤によって前記紙製シート材を貼着するとともに、同フレーム本体の裏面の少なくとも一部には、止着部材を配設することによってユニットパネル材を構成した後、壁面において、前記止着部材に対応して一組の着脱自在な止着機構を形成する止着具を固定する一方、これら止着部材と止着具とを止着することによって、前記ユニットパネル材を壁面に設置することができる。
【0016】
このように、簡単に着脱ができるので、時と場合に応じて手軽に部屋の模様替えを行うことができるし、定期的な清掃メンテナンスも簡単にすることができる。また、立体的な表面装飾が斬新であるとともに、組み合わせにより多彩な装飾バリエーションを作出して部屋の雰囲気を醸し出すことができる。
【0017】
また、表面のシート材が天然素材の紙製であるので、保湿性、通気性、カビにも強く、自然にもやさしい。そして、模様替えの度に張り替え作業をする必要がないので、剥がした壁紙を廃棄しなくても良く、非常に経済的でもある。
【0018】
更に、付加機能によりシックハウス症候群の原因となっているホルマリンなどの化合物質を吸着したり、アンモニアなどの低分子化合物をも防止することができることから、室内における壁面工法としての実用的利用価値は頗る高いものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0020】
本発明の実施形態を図1から図8に基づいて説明する。図1中、符号1で指示するものは紙製シート材であり、また、符号2で指示するものはフレーム本体である。更にまた、符号3A・3Bで指示するものはそれぞれ止着部材および止着具であり、これら一組で着脱自在な止着機構を形成している。
【0021】
しかして、本発明における壁面の施工方法を以下に説明する。まず、紙製撚糸11aを単独あるいは他の天然素材製糸11Yと複合的に組み合わせてメッシュネット11を織成または編成する。本実施形態では、合撚機で縒りをかけた紙製撚糸11aを天然素材製糸11Y(例えば、レーヨン)の平織物に挿入して一体に織成したものを用いる(図2(a)参照)。
【0022】
このメッシュネット11を作製する際には、公知の織機(例えば、レピア織機)を用いることができる。また、メッシュネット11は、経編機や緯編機を用いて編物にしても良く、同様にして、紙製撚糸11aを天然素材製糸11Yの編物に挿入して一体に編成することもできる(図2(b)参照)。
【0023】
そして、このメッシュネット11を、漉き和紙から成る裏打ち紙材12の表面に接合一体化する。この接合剤には、天然物から成る接着剤を使用する。かかる天然物接着剤Sとしては、にかわ、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、大豆グルーなどのタンパク質系接着剤、あるいは、デンプン系、セルロース系、複合多糖類などの炭水化物系接着剤を用いることができる。
【0024】
このようにして構成された紙製シート材1は、当該裏打ち紙材12を透視可能であるとともに、メッシュネット11による立体模様を呈する。したがって、裏打ち紙材12に独自の図柄に加え、表面のメッシュネット11の織物地(編物地)の立体模様が相俟って、相乗的な装飾効果を醸し出すことができるのである。また、複数の配色からなる裏打ち紙材12を使用して、より装飾的な紙製シート材1を構成することができる。
【0025】
また、前記裏打ち紙材12の漉き和紙は、セルロースを主成分とする植物繊維のみが複雑に絡み合って水素結合により形成されており、かかる水素結合の「OH基」の吸着性により、水分子を吸着して調湿効果を奏したり、また、アンモニアなどの低分子化合物を吸着して脱臭効果を奏したり、更に、シックハウスの原因となるホルムアルデヒド(ホルマリン)などを吸着することもできる。
【0026】
また、漉き和紙は負に帯電しやすいので、正に帯電しているホコリや花粉、ダニなども吸着することができるし、有害な紫外線から皮膚を護ることや、血圧を降下させる鎮静作用もある。
【0027】
次いで、ハニカム構造から成る紙製のペーパーコア21を外枠体22により包囲して平板状のフレーム本体2を作製する(図3参照)。このペーパーコア21は紙製であるので、通気性や吸湿性に優れている一方、ハニカム構造は軽量化および断熱性、遮音性を向上する。また、必要に応じて、このペーパーコア21のハニカム間隙に、木炭、竹炭、籾殻、酸化チタン、ゼオライト、トルマリン、セラミック、ゲルマニウム、黒体(ホワイトシリカ、ブラックシリカなど)から選択される少なくとも一種を配設することにより、マイナスイオンの放出や、脱臭、浄化効果などの機能を付加することもできる。
【0028】
また、フレーム本体2の外枠体22は、塩化ビニルやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック材料、あるいは、アルミニウムなどの軽量金属により作製することができ、材料の収縮や変質などを防止するとともに、軽量化することができる。
【0029】
こうして作製したフレーム本体2において、表面には、前記天然物接着剤Sによって前記紙製シート材1を貼着するとともに(図4参照)、同フレーム本体2の裏面の少なくとも一部には、止着部材3Aを(本実施形態では、図5に示すように四隅に)配設するメッシュネット11のことによってユニットパネル材Pを構成する。
【0030】
そして、壁面Wにおいて、前記止着部材3Aに対応して一組の着脱自在な止着機構を形成する止着具3Bを固定する。本実施形態では、止着部材3Aおよび止着具3Bをベルベット式ファスナーに構成し、各々突設された掛止突起31A・31Bを掛合止着することができる(図6参照)。
【0031】
然る後、これら止着部材3Aと止着具3Bとを止着することによって、前記ユニットパネル材Pを壁面Wに設置することができる(図7参照)。なお、本実施形態では、図8に示すように、複数のユニットパネル材P・P…を壁面Wに敷き詰めて、全体的に覆設することもできる。
【0032】
本発明は概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、メッシュネット11は、織物組織として、平織のほか、綾織、朱子織などが採用できるし、また、経編として、デンビー編み、アトラス編み、コード編み、鎖編みなどがあり、緯編組織として、平編み、ゴム編み、パール編みなどを適宜採用することができる。
【0033】
また、天然素材製糸11Yにミネラル成分(例えば、カルシウム・ナトリウム・カリウム・マグネシウム・リン・硫黄・鉄などの無機塩類)を含有する綿糸を用いてメッシュネット11を織成または編成することもでき、更にまた、止着機構3A・3Bは、ホックやファスナ、粘着テープなどに適宜変更することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態の壁面工法に用いるユニットパネル材の構造を表わす分解斜視図である。
【図2(a)】本発明の実施形態の壁面工法に用いるメッシュネットの構造を表わす拡大斜視図である。
【図2(b)】本発明の実施形態の壁面工法に用いるメッシュネットの構造を表わす拡大斜視図である。
【図3】本発明の実施形態の壁面工法に用いるフレーム本体の構造を表わす全体正面図である。
【図4】本発明の実施形態の壁面工法に用いるユニットパネル材の構造を表わす説明側面図である。
【図5】本発明の実施形態の壁面工法に用いるユニットパネル材の裏面を表わす全体斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の壁面工法における止着機構の構造を表わす説明斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の壁面工法を使用した壁面を表わす全体斜視図である。
【図8】本発明の実施形態の壁面工法を使用した壁面を表わす全体斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 紙製シート材
11 メッシュネット
11a 紙製撚糸
11Y 天然素材製糸
12 裏打ち紙材
2 フレーム本体
21 ペーパーコア
22 外枠体
3A 止着部材
3B 止着具
P ユニットパネル材
W 壁面
S 天然物接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製撚糸11aを単独あるいは他の天然素材製糸11Yと複合的に組み合わせてメッシュネット11を織成または編成し、このメッシュネット11を漉き和紙から成る裏打ち紙材12の表面に接合一体化し、当該裏打ち紙材12を透視可能で、かつ立体模様を呈する紙製シート材1を構成する一方、
ハニカム構造から成る紙製のペーパーコア21を外枠体22により包囲して平板状のフレーム本体2を作製し、その表面には、天然物接着剤Sによって前記紙製シート材1を貼着するとともに、同フレーム本体2の裏面の少なくとも一部には、止着部材3Aを配設することによってユニットパネル材Pを構成した後、
壁面Wにおいて、前記止着部材3Aに対応して一組の着脱自在な止着機構を形成する止着具3Bを固定する一方、
これら止着部材3Aと止着具3Bとを止着することによって、前記ユニットパネル材Pを壁面Wに設置することを特徴とするユニットパネルを用いた壁面工法。
【請求項2】
止着部材3Aおよび止着具3Bをベルベット式ファスナーに構成し、各々突設された掛止突起31A・31Bを掛合止着することを特徴とする請求項1記載のユニットパネルを用いた壁面工法。
【請求項3】
複数の配色からなる裏打ち紙材12を使用して紙製シート材1を構成することを特徴とする請求項1または2記載のユニットパネルを用いた壁面工法。
【請求項4】
フレーム本体2のペーパーコア21のハニカム間隙に、木炭、竹炭、籾殻、酸化チタン、ゼオライト、トルマリン、セラミック、ゲルマニウム、黒体から選択される少なくとも一種を配設することを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のユニットパネルを用いた壁面工法。
【請求項5】
フレーム本体2の外枠体22を塩化ビニルやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック材料、あるいは、アルミニウムなどの軽量金属により作製することを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のユニットパネルを用いた壁面工法。
【請求項6】
複数のユニットパネル材P・P…を壁面Wに敷き詰めて覆設することを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のユニットパネルを用いた壁面工法。
【請求項7】
天然素材製糸11Yにミネラル成分を含有する綿糸を用いてメッシュネット11を織成または編成することを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載のユニットパネルを用いた壁面工法。
【請求項8】
天然物接着剤Sとして、にかわ、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、大豆グルーなどのタンパク質系接着剤、あるいは、デンプン系、セルロース系、複合多糖類などの炭水化物系接着剤を用いることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載のユニットパネルを用いた壁面工法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−2609(P2007−2609A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186763(P2005−186763)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(505242633)有限会社和紙空間 (5)
【Fターム(参考)】