説明

ユニット型光ファイバテープ心線

【課題】 本発明の目的は、分岐性に優れ、かつPMD値をより小さくできるユニット型光ファイバテープ心線を提供することにある。
【解決手段】 本発明のユニット型光ファイバテープ心線6は、隣接する光ファイバ素線1間の窪みに凹部4が形成されるように一括被覆2を施した光ファイバテープ心線3を平面状に並行に並べ、これを連結用樹脂5で連結せしめたユニット型光ファイバテープ心線6において、光ファイバテープ心線3間には連結凹部7が形成されていて、光ファイバ素線1の外径をd、連結凹部7での光ファイバテープ心線3の厚さをg、テープ心線3の上下面における一括被覆3の厚さをa、側面部における厚さをbとしたとき、d−g≧40μmであって、かつa、bが共に25μm以下であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバ素線を平面状に並行に並べ、これに一括被覆を施した光ファイバテープ心線同士を複数本平面状に並行に並べ、これを連結用樹脂で連結したユニット型光ファイバテープ心線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、ガラス光ファイバの外周に紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂等からなる被覆を施した、いわゆる光ファイバ素線を複数本、平面状に並行に並べ、これに紫外線硬化性樹脂等からなる一括被覆を施した光ファイバテープ心線が知られている(特許文献1)。
さらにはこの光ファイバテープ心線を複数本平面状に並行に並べ隣接する光ファイバテープ心線同士を連結用樹脂で連結したユニット型光ファイバテープ心線も種々提案され、製造されている(特許文献2)。
【0003】
前記特許文献1に記載されている光ファイバテープ心線は、光ファイバテープ心線を個々の光ファイバ素線に分岐する際の分岐作業性(以下単に分岐性という)に優れ、かつその際に光ファイバ素線の伝送損失の増加をも抑制できる光ファイバテープ心線を提案している。同時に、特許文献1は偏波モード分散値(以下単にPMDという)を低くすることのできる光ファイバテープ心線の構造についても言及している。
具体的には、一括被覆の厚さを薄くし、かつ一括被覆に光ファイバテープ心線を構成する各光ファイバ素線間の窪みに対応した所定深さの凹部を形成した光ファイバテープ心線を提案している。
【0004】
また、特許文献2には、光ファイバテープ心線同士を平面状に並行に並べ、連結用樹脂で連結せしめたユニット型光ファイバテープ心線が提案されている。
この発明もユニット型光ファイバテープ心線を各光ファイバテープ心線に分離する分岐性に優れ、しかもその際に伝送損失増加の少ないユニット型光ファイバテープ心線を提案している。さらにはユニット型光ファイバテープ心線においてもPMDを小さくすることが望ましい、との言及も見られる。
【0005】
【特許文献1】特許第3664254号公報
【特許文献2】特開2005−352510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1には、光ファイバテープ心線のPMDを低減する構造については言及しているものの、そのような光ファイバテープ心線を複数本、平面状に並行に並べて連結用樹脂で連結してユニット型光ファイバテープ心線を形成した場合の、PMDの低減については開示がない。
【0007】
また、特許文献2には、ユニット型光ファイバテープ心線として、PMDが小さく、高速長距離伝送可能な光ファイバケーブルが望まれる、として、ユニット型光ファイバテープ心線を束状にしたときのPMDQの値が、0.2(ps/km1/2)以下であると伝送速度が40Gbpsで伝送可能距離は625kmになり、伝送速度が80Gbpsなら伝送可能距離は156kmとなる旨の記載がある。
しかしながら、PMDQの値を0.2(ps/km1/2)以下にするためにはユニット型光ファイバテープ心線をどのような構造にすれば良いのかについては、具体的には何も示していない。
【0008】
そこで本発明の目的は、複数本の光ファイバテープ心線を平面状に並行に並べ、隣接するユニット型光ファイバテープ心線同士の互いの側部を連結用樹脂で連結せしめたユニット型光ファイバテープ心線において、分岐性にも優れ、しかもこのユニット型光ファイバテープ心線のPMDの値をより小さくすることのできるユニット型光ファイバテープ心線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく本発明の請求項1記載のユニット型光ファイバテープ心線は、複数本の光ファイバ素線を平面状に並行に並べ、隣接する前記光ファイバ素線間の窪みに対応して凹部が形成されるように一括被覆を施してなる光ファイバテープ心線を複数本平面状に並行に並べ、隣接する前記光ファイバテープ心線間を連結用樹脂で連結せしめたユニット型光ファイバテープ心線において、前記隣接する前記光ファイバテープ心線間にはその窪みに対応して連結凹部が形成されていて、前記光ファイバ素線の外径をd、前記凹部での光ファイバテープ心線の厚さをg、前記光ファイバテープ心線の上下面における前記一括被覆の厚さをa、前記光ファイバテープ心線の側面部における前記一括被覆の厚さをbとしたとき、d−g≧40μmであって、しかもa、bが共に25μm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
また請求項2記載のユニット型光ファイバテープ心線は、請求項1記載のユニット型光ファイバテープ心線において、前記連結凹部における前記ユニット型光ファイバテープ心線の厚さをgとしたとき、d−g≧40μmであることを特徴とするものである。
このようにしてなる本発明のユニット型光ファイバテープ心線によれば、光ファイバ素線間に凹部が存在し、しかも連結した光ファイバテープ心線間にも連結凹部が形成されているため、光ファイバテープ心線に分岐する場合も、個々の光ファイバ素線毎に分岐したり光ファイバ素線を複数本ずつ組にして分岐する場合も、分岐作業が極めて容易である。しかもそのPMDの値も小さくできる、具体的にはITU‐T G.650で規定するPMDQの値で0.2(ps/km1/2)以下にできるので高速伝送可能な伝送距離を延長することもできる。
【発明の効果】
【0011】
以上のようにしてなる本発明によれば、複数本の光ファイバテープ心線を平面状に並行に並べ、隣接するユニット型光ファイバテープ心線同士の互いの側部を連結用樹脂で連結せしめたユニット型光ファイバテープ心線において、分岐性にも優れ、しかもこのユニット型光ファイバテープ心線のPMDの値をより小さくできるユニット型光ファイバテープ心線を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図を用いて本発明のユニット型光ファイバテープ心線を詳細に説明する。
図1は、本発明のユニット型光ファイバテープ心線の一実施例を示す横断面図、図2はその一部拡大横断面図である。
図1、図2に示すように、本発明のユニット型光ファイバテープ心線を得るためには、まず、例えば、ガラス光ファイバの外周に紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂等からなる樹脂被覆を有する、いわゆる光ファイバ素線1を複数本用意する。これらの光ファイバ素線1を、例えば、4本平面状に並行に並べ、これに、例えば、紫外線硬化性樹脂からなる一括被覆2を施し、光ファイバテープ心線3を形成する。尚、光ファイバ素線1の本数は4本に限らず、例えば8本でもよく、またその本数は必要に応じてその都度適宜選択され得る。
尚、一括被覆2を施す際には、平面状に配した隣接する光ファイバ素線1、1間の窪み(谷部)に対応して一括被覆2に凹部4が形成されるようにする。
【0013】
このようにして得た光ファイバテープ心線3同士を、この実施例では2本用意して、この2本の光ファイバテープ心線3を平面状に並行に並べて、隣接する側面部同士を、例えば、紫外線硬化性樹脂からなる連結用樹脂5で連結し、8心のユニット型光ファイバテープ心線6を形成した。
但し、この連結に際しては、光ファイバテープ心線3同士の窪みに対応して連結凹部7が形成されるように連結した。因みに、このように連結凹部7を形成することにより、この窪みに充填される連結用樹脂5の樹脂量を少なくでき、それ故、ユニット型光ファイバテープ心線6を光ファイバテープ心線3、3に分岐するとき、分岐し易くなる。
【0014】
ところで本発明者等は、光ファイバテープ心線3のPMDの値は、概して光ファイバ素線1への一括被覆2の樹脂厚が薄い程小さくできる、との知見を得ており、その観点から、図1及び図2に示すユニット型光ファイバテープ心線6において、光ファイバテープ心線3の厚さT、厚さ方向の一括被覆2の厚さa、側面部における一括被覆2の厚さb、凹部4における光ファイバテープ心線の厚さg、光ファイバテープ心線3同士の窪みに形成された連結凹部7の位置におけるユニット型光ファイバテープ心線6の厚さをgとして、これらT、a、b、g及びg、さらに(d−g)や(d−g)とPMDとの関係を調べた。その結果を表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
表1が示すように、実験例1〜9の結果から、d−g≧40μmとし、かつa、bが共に25μm以下になるように一括被覆2や連結用樹脂5を施すと、ユニット型光ファイバテープ心線6のPMDQを0.2(ps/km1/2)以下にすることができることが判った。
さらに好ましい範囲として、PMDQを0.1(ps/km1/2)以下にするには、d−g≧40μm、d−g≧40μmとし、かつa、bが共に25μm以下になるように一括被覆2や連結用樹脂5を施すとよいことも判った。
また前述したように、このユニット型光ファイバテープ心線6においては、各光ファイバテープ心線3における光ファイバ素線1、1間に凹部4が、光ファイバテープ心線3、3間には連結凹部7が形成されているため、各光ファイバ素線1への分岐や、複数本毎に組にした光ファイバ素線1への分岐も、さらには光ファイバテープ心線3、3に分岐する場合も、極めて容易に行うことができた。
【0017】
ところで表1において、◎はPMDQが0.1ps/km以下を、○は0.1ps/km〜0.2ps/km以下を、△は0.2ps/km〜0.4ps/km以下を、そして×は0.4ps/km以上をそれぞれ示している。
尚、表1ではPMDをPMDQと表示しているが、これはITU−T G.650.2で規定されているモンテカルロ法で算出した値である。
また、単心分離性とは、ユニット型光ファイバテープ心線6から光ファイバ素線1を1本分離し、取出す際の難易性を示している。因みに、この単心分離性は、例えば、特開2006−30684に開示されている分離工具を用い、ユニット型光ファイバテープ心線6から光ファイバ素線1を分離する場合に要した時間の長さにより判定した。
【0018】
この分離工具は、具体的には、光ファイバテープ心線を押圧するヤスリ部と、このヤスリ部に隣接して設けられ光ファイバテープ心線を押圧する複数の小突起が立設された凹凸部とを有する一対のアームを、アームの根元部に設けられている支点で回動自在に軸支し、かつ両アームを板バネあるいはコイルバネで両アームが互いに開く方向に付勢してある。そして前記バネの付勢力に逆らって一対のアームを閉じることで光ファイバテープ心線を前記ヤスリ部や凹凸部で押圧するようになっている。
【0019】
このようにしてなる分離工具のヤスリ部で光ファイバテープ心線を擦り、さらに凹凸部で擦ることでそれぞれの光ファイバ素線に単心分離した場合に要した時間の長さにより単心分離性を判定した。
因みに、○は30秒以内、△は1分以内、×は1分より長くかかったことをそれぞれ示している。
また、各ユニット型光ファイバテープ心線6の製造が容易かどうかの製造性も調べたが、製造法に関してはあまり有意差は認められなかった。
【0020】
尚、言うまでもなく、単心分離性、すなわち、光ファイバ素線1を1本、光ファイバテープ心線3やユニット型光ファイバテープ心線6から分岐する分岐性は、各光ファイバ素線1間に凹部4が形成されていて、この凹部4の樹脂量が少ないため分岐が容易である。
加えて、光ファイバテープ心線3、3間にも樹脂量の少ない連結凹部7が形成されているため、ユニット型光ファイバテープ心線6からの光ファイバテープ心線3の分岐もまた極めて容易である。
また、前記実施例では一括被覆2や連結用樹脂5として紫外線硬化性樹脂を用いているが、具体的には、紫外線硬化性のエポキシアクリレート樹脂、ポリブタジエンアクリレート樹脂、あるいはシリコーンアクリレート樹脂等が使用できる。
【0021】
このように本発明によれば、複数本の光ファイバテープ心線を平面状に並行に並べ、隣接するユニット型光ファイバテープ心線同士の互いの側部を連結用樹脂で連結せしめたユニット型光ファイバテープ心線において、分岐性にも優れ、しかもこのユニット型光ファイバテープ心線のPMDの値をより小さくできる、具体的には、0.2(ps/km1/2)以下にすることができるユニット型光ファイバテープ心線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のユニット型光ファイバテープ心線の一実施例を示す横断面図である。
【図2】図1に示す本発明のユニット型光ファイバテープ心線の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0023】
1 光ファイバ素線
2 一括被覆
3 光ファイバテープ心線
4 凹部
5 連結用樹脂
6 ユニット型光ファイバテープ心線
7 連結凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ素線を平面状に並行に並べ、隣接する前記光ファイバ素線間の窪みに対応して凹部が形成されるように一括被覆を施してなる光ファイバテープ心線を複数本平面状に並行に並べ、隣接する前記光ファイバテープ心線間を連結用樹脂で連結せしめたユニット型光ファイバテープ心線において、前記隣接する前記光ファイバテープ心線間にはその窪みに対応して連結凹部が形成されていて、前記光ファイバ素線の外径をd、前記凹部での光ファイバテープ心線の厚さをg、前記光ファイバテープ心線の上下面における前記一括被覆の厚さをa、前記光ファイバテープ心線の側面部における前記一括被覆の厚さをbとしたとき、d−g≧40μmであって、しかもa、bが共に25μm以下であることを特徴とするユニット型光ファイバテープ心線。
【請求項2】
前記連結凹部における前記ユニット型光ファイバテープ心線の厚さをgとしたとき、d−g≧40μmであることを特徴とする請求項1記載のユニット型光ファイバテープ心線。

【図1】
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【図2】
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