ユーザ体感品質推定装置、方法、およびプログラム
【課題】メディア用パケットの遅延揺らぎに応じたフレーム再生間隔の変動による影響を考慮してユーザ体感品質値を高い精度で推定する。
【解決手段】品質解析部12により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出し、ユーザ体感品質推定部13により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル14から、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力する。
【解決手段】品質解析部12により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出し、ユーザ体感品質推定部13により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル14から、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質推定技術に関し、特にリアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パケット通信技術の飛躍的な発展に伴い、パケット網が音声や映像等のメディア(コンテンツ)を1対1あるいは多地点間で通信するリアルタイム系アプリケーションで利用されつつある。パケット網のインサービス品質管理では、このようなアプリケーションに対する品質管理も必要とされている。特にリアルタイム系アプリケーションでは、実際にアプリケーションを利用するユーザレベルでの主観的あるいは客観的な品質などのユーザ体感品質を用いた品質管理が重要視されており、ネットワーク品質からユーザ体感品質を推定する技術も提案されている(例えば、非特許文献1等参照)。
【0003】
従来、発明者らは、リアルタイム系アプリケーションの主観品質を推定する技術を提案した(例えば、特許文献1等参照)。この技術では、試験用パケットのうち受信側端末へ到着しなかった損失パケットと、直前到着パケットとの到着間隔がリアルタイム系アプリケーションの揺らぎ吸収許容時間を越えた遅着パケットとを無効パケットと判定してこれら無効パケット数を計数し、送信側から送信されたすべての試験用パケット数に対する無効パケット数の割合を無効パケット率として算出し、予め生成しておいた無効パケット率と主観品質評価値との関係を示す品質推定モデルを参照して、無効パケット率に対応する主観品質評価値を推定している。
【0004】
これに対して、従来、発明者らは、損失パケットから推定した映像品質劣化の度合いと映像品質劣化の継続時間長に基づいてリアルタイム系アプリケーションの主観品質を推定する技術を提案した(例えば、特許文献2等参照)。この技術では、ユーザ端末へ送る映像パケット毎にそのパケットが属する高能率圧縮符号化時のフレーム種別およびフレーム発生規則を埋め込む。ユーザ端末において、損失パケットの生成番号から1映像フレーム内の品質劣化の程度や割合などの度合いを推定し、損失パケットが属する高能率圧縮符号化時のフレーム種別およびフレーム発生規則から映像品質劣化の継続時間長を推定し、推定した映像品質劣化の度合いと映像品質劣化の継続時間長に基づいてユーザ端末において復号される映像の主観品質を推定している。これにより、簡単な構成で推定精度の改善が得られた。
【0005】
【特許文献1】特許第3579334号公報
【特許文献2】特開2006−033722号公報
【非特許文献1】ITU-T Recommendation G.107,"The E-Model, a computational model for use in transmission planning", May 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、映像通信に用いるメディア用パケットにより損失したメディアデータに基づいて主観品質を推定しているため、フレームの再生タイミングがずれるような現象が主観品質に与える影響については考慮されておらず、高い推定精度が求められる場合には十分ではないという問題点があった。
【0007】
リアルタイム系アプリケーションでは、高能率符号化した映像信号や音声信号などのメディア信号をフレームに分解した後、さらにメディア用パケットに変換してやり取りしている。このため、受信側アプリケーション端末でメディア信号を復号する際、受信したメディア用パケットからフレームを組み立て、さらに前後のフレーム情報を使用してメディア信号を復号する。
【0008】
この際、受信側端末で正常に受信できたメディア用パケットには、送信側端末と受信側端末とを結ぶ伝送路上での遅延揺らぎにより到着時刻が前後にずれてフレーム再生間隔に影響を与えるパケットも含まれる。したがって、このようなパケットに起因してフレームが時間的にずれて再生される現象が発生した場合、映像がぎくしゃくした動きとなり、ユーザが実感するユーザ体感品質の劣化を招くことになる。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、メディア用パケットの遅延揺らぎに応じたフレーム再生間隔の変動による影響を考慮して、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質値を高い精度で推定することができるユーザ体感品質推定装置、方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかるユーザ体感品質推定装置は、パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置であって、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報と、メディア用パケットに含まれている各種の時刻情報とを取得する品質情報取得部と、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析部と、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定部とを備えている。
【0011】
この際、品質解析部に、受信側アプリケーション端末におけるメディア全体のメディア再生開始時刻とメディア用パケットに含まれる当該フレームの再生時刻情報とから当該フレームの再生予定時刻を算出するとともに、メディア再生開始時刻とメディア用パケットの受信時刻とから当該フレームの実際の再生時刻を算出する時刻情報解析手段と、当該フレームの再生予定時刻と再生時刻との時刻差からなる再生誤差時間が許容値を上回った場合に当該再生誤差時間を無効再生時間に加算するとともに、当該フレームが無効フレームの場合は再生予定時刻から次のフレームの再生予定時刻との時刻差からなる無効フレーム再生時間を無効再生時間に加算する無効再生時間算出手段と、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する無効再生時間率算出手段とを設けてもよい。
【0012】
また、品質解析部に、送信品質情報と受信品質情報とに基づいてメディア用パケットのうち正常に受信できなかったパケットを無効パケットとして判定する無効パケット判定手段と、送信品質情報に基づいて無効パケットに対応するフレームを対象フレームとして識別するフレーム識別手段と、メディアの符号化に用いたフレーム構成と対象フレームとに基づいて、各フレームについて無効フレームか否かを判定する無効フレーム判定手段とを設けてもよい。
【0013】
また、無効パケット判定手段で、送信品質情報で送信が確認されたメディア用パケットのうち受信品質情報で受信が確認されていないメディア用パケット、および受信品質情報の各メディア用パケットの到着間隔を示す遅延揺らぎ時間がアプリケーションの許容パケット遅延時間を超えるメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしてもよい。
【0014】
また、無効パケット判定手段で、受信品質情報で受信確認されたメディア用パケットの送信順序と受信順序とが矛盾するメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしてもよい。
【0015】
また、フレーム識別手段で、送信品質情報に含まれる無効パケットのヘッダ情報から、対象フレームのフレーム番号およびフレーム種別を取得し、無効フレーム判定手段で、各フレームのうち対象フレームを無効フレームと判定するとともに、フレーム構成で規定されているフレーム種別の並びに従って当該フレームの復号に用いる他のフレームに無効フレームが含まれている場合には当該フレームを無効フレームと判定するようにしてもよい。
【0016】
また、品質情報取得部で、受信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信された送信側アプリケーション端末側からの品質情報を送信品質情報として取得するとともに、受信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信されたメディア用パケットから得られた品質情報を受信品質情報として取得するようにしてもよい。
【0017】
また、品質情報取得部で、送信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信された受信側アプリケーション端末側からの品質情報を受信品質情報として取得するとともに、送信側アプリケーション端末のパケット送信部で送信されたメディア用パケットから得られた品質情報を送信品質情報として取得するようにしてもよい。
【0018】
また、送信側アプリケーション端末のパケット送信部で得られた送信品質情報を受信側アプリケーション端末へ通知する品質情報通知部をさらに備えてもよい。
【0019】
受信側アプリケーション端末のパケット受信部で得られた受信品質情報を送信側アプリケーション端末へ通知する品質情報通知部をさらに備えてもよい。
【0020】
また、本発明にかかるユーザ体感品質推定方法は、パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置で用いられるユーザ体感品質推定方法であって、品質情報取得部により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、品質解析部により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析ステップと、ユーザ体感品質推定部により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップとを備えている。
【0021】
また、本発明にかかるプログラムは、パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置のコンピュータに、品質情報取得部により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、品質解析部により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析ステップと、ユーザ体感品質推定部により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップとを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、品質解析部により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計が無効再生時間として算出されて、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合が無効再生時間率として算出され、ユーザ体感品質推定部により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値が導出され、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力される。
【0023】
したがって、メディア用パケットの遅延揺らぎに応じてフレームの再生タイミングがずれてフレーム再生間隔が変動するような場合でも、このような現象によるユーザ体感品質への影響を考慮して、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質を推定することができる。
これにより、映像通信に用いるメディア用パケットにより損失したメディアデータに基づいてユーザ体感品質を推定する場合と比較して、高い精度でユーザ体感品質を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【0025】
ユーザ体感品質推定装置1は、通信機能を有する情報処理装置からなり、アプリケーション端末2さらにはパケット網5と接続されて、アプリケーション端末2で実行されるリアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質を推定する。
このユーザ体感品質推定装置1には、主な機能部として、品質情報取得部11、品質解析部12、ユーザ体感品質推定部13、推定結果通知部16、および品質情報通知部17が設けられている。
【0026】
本実施の形態は、品質情報取得部11により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディアデータの通信に用いるメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得し、品質解析部12により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出し、ユーザ体感品質推定部13により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル14から、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するようにしたものである。
【0027】
ユーザ体感品質推定装置1の各機能部は、専用の回路部や演算処理部、さらには記憶部から構成されている。特に、演算処理部(コンピュータ)は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、周辺回路内のメモリや記憶部に格納されているプログラムを読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラムとを協働させて各機能部を実現する。記憶部は、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、各機能部での処理に用いる各種処理情報を記憶する。
【0028】
品質情報取得部11は、送信側アプリケーション端末から送信された、メディア(コンテンツのデータを含むメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報をアプリケーション端末2のパケット受信部21から取得する機能と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報をアプリケーション端末2のパケット受信部21から取得する機能とを有している。
【0029】
品質解析部12は、送信品質情報および受信品質情報に基づいて各フレームのうち正常再生できなかったフレームによる品質劣化が発生した期間を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する機能を有している。
品質解析部12を構成する主な機能手段としては、無効パケット判定手段12A、対象フレーム識別手段12B、無効フレーム判定手段12C、時刻情報解析手段12D、無効再生時間算出手段12E、および無効再生時間率算出手段12Fがある。
【0030】
無効パケット判定手段12Aは、送信品質情報と受信品質情報とに基づいてメディア用パケットのうち損失したパケットを無効パケットとして判定する機能を有している。
対象フレーム識別手段12Bは、送信品質情報に基づいて無効パケットに対応するフレームを対象フレームとして識別する機能を有している。
無効フレーム判定手段12Cは、メディアの符号化に用いたフレーム構成と対象フレームとに基づいて、各フレームについて無効フレームか否かを判定する機能を有している。
【0031】
時刻情報解析手段12Dは、受信側アプリケーション端末2において任意の評価期間におけるメディア全体のメディア再生開始時刻とその評価期間に受信したメディア用パケットに含まれる当該フレームの再生時刻情報とから当該フレームの再生予定時刻を算出する機能と、当該フレームのメディア再生開始時刻と当該メディア用パケットの受信時刻とから当該フレームの実際の再生時刻を算出する機能とを有している。
【0032】
無効再生時間算出手段12Eは、当該フレームの再生予定時刻と再生時刻との時刻差からなる再生誤差時間が許容値を上回った場合に当該再生誤差時間を無効再生時間に加算する機能と、当該フレームが無効フレームの場合は再生予定時刻から次のフレームの再生予定時刻との時刻差からなる無効フレーム再生時間を無効再生時間に加算する機能とを有している。
無効再生時間率算出手段12Fは、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する機能を有している。
【0033】
ユーザ体感品質推定部13は、無効フレーム率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル14から、品質解析部12で算出された無効フレーム率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションの品質推定値15として出力する機能を有している。
【0034】
推定結果通知部16は、パケット網5を介して対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)や品質管理サーバ(図示せず)に対し、制御パケットを用いて、当該装置で得られた品質推定値15さらにはこのユーザ体感品質値の算出に用いた送受信品質情報などの品質要因情報を含む推定結果情報を、定期的あるいは必要に応じて通知する機能を有している。
品質情報通知部17は、アプリケーション端末2のパケット送信部22で得られた送信品質情報を送信側アプリケーション端末へ通知する機能を有している。
【0035】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図2〜図6を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効再生時間算出処理を示すフローチャートである。図3は、再生予定時刻の算出動作を示す説明図である。図4は、再生時刻の算出動作を示す説明図である。図5は、無効再生時間の算出動作を示す説明図である。図6は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置のユーザ体感品質推定処理を示すフローチャートである。
【0036】
ここでは、アプリケーション端末2が受信側であり、送信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)から送信されパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定する場合を例として説明する。この際、対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)から、対向アプリケーション端末のパケット送信部で得られた送信品質情報がアプリケーション端末2へ制御用パケットにより通知される場合を例として説明する。
【0037】
ユーザ体感品質推定装置1の品質情報取得部11で取得した送信品質情報に含まれている主な品質情報としては、各送信メディア用パケットに関する、送信順序を示すシーケンス番号、映像フレーム種別、映像フレーム番号、送信パケット数、送信フレーム数、および時刻がある。また受信品質情報に含まれている主な品質情報としては、各受信メディア用パケットに関する、送信順序を示すシーケンス番号、直前メディア用パケットとの到着時刻差を示す遅延揺らぎ時間、および各種の時刻情報がある。
【0038】
受信メディア用パケットに関する時刻情報としては、映像メディアを符号化する際にフレームレートなどの品質情報に基づき設定された、対応するフレームの正常な再生開始タイミングを示す再生時刻情報、さらには当該フレームの正常な復号開始タイミングを示す復号時刻情報のほか、送受信アプリケーション端末間で計時している時刻を相互に同期させるための時刻合わせ情報などがある。これら時刻情報は、各メディア用パケットのペイロード部に格納されて送信され、品質情報取得部11で取得される。
【0039】
[無効再生時間算出処理]
まず、図2〜図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置1での無効再生時間算出処理について説明する。ここでは、品質情報取得部11により、アプリケーション端末2から送信側品質情報および受信側品質情報がすでに取得されているものとする。また、送受信アプリケーション端末間で計時している両時刻に誤差がある場合、送信側アプリケーション端末から送信された時刻合わせ情報に基づき受信側アプリケーション端末の時刻が送信側の時刻に同期させているものとする。なお、時刻合わせ情報に基づいて無効再生時間算出時にいずれか一方の端末での時刻情報を補正するようにしてもよい。
【0040】
ユーザ体感品質推定装置1の品質解析部12は、所望のユーザ体感品質を推定するための任意の評価期間に受信側アプリケーション端末2で受信されたメディア用パケットのうち、各フレームの先頭に位置するメディア用パケットごとに、図2の無効再生時間算出処理を実行する。なお、各フレームに対する無効フレーム判定については、品質解析部12の無効フレーム判定手段12Cにより、すでに判定済みであるものとする。また、フレーム構成は、MPEG(Moving Picture Exparts Group)のGOP(Group of Picture)構成を用いているものとする。
【0041】
まず、時刻情報解析手段12Dは、送信側品質情報および受信側品質情報に基づき選択したメディア用パケットが評価期間に最初に受信した先頭のメディア用パケットの場合(ステップ100:YES)、当該パケットの受信時刻RT0に遅れ時間αを加算することにより、評価期間に対応する映像メディア全体の再生開始タイミングを示すメディア再生開始時刻T0=RT0+αを算出する(ステップ101)。
【0042】
遅れ時間αは、メディア用パケットの受信から実際にフレームが復号されて再生がされるまでの時間であり、アプリケーションや端末などの処理性能に基づき予め設定される。なお、遅れ時間αとして、評価期間において最初に再生されるフレームの先頭メディア用パケットの再生時刻情報を用いてもよい。図3の例では、遅れ時間αとして、評価期間において最初に再生されるB(1)フレームの先頭メディア用パケットの再生時刻情報t1=00.002(sec)が用いられ、最初に受信したI(0)フレームのメディア用パケットの受信時刻RT0=59.998(sec)であることから、メディア再生開始時刻T0=RT0+t1=00.000(sec)が求められている。
【0043】
次に、時刻情報解析手段12Dは、再生開示時刻T0に当該メディア用パケットの再生時刻情報tnを加算することにより、当該パケットに対応するフレームの再生予定時刻PTn=T0+tnを算出する(ステップ102)。図3の例では、I(0)フレームの先頭パケットの再生時刻情報がt0=00.068(sec)であり、これがメディア再生開始時刻T0=00.000(sec)に加算されて、I(0)フレームの再生予定時刻PT0=00.068(sec)が求められている。
【0044】
次に、時刻情報解析手段12Dは、当該メディア用パケットに復号時刻情報が格納されていたか否か判断する(ステップ103)。この復号時刻情報は、通常、特定の種別のフレームにのみ格納されている。
ここで、当該メディア用パケットに復号時刻情報が格納されていない場合(ステップ103:NO)、メディア再生開始時刻T0に、当該メディア用パケットの受信時刻情報RTnを加算することにより、当該フレームが実際に再生される再生時刻ePTn=T0+RTnを算出する(ステップ104)。図4の例では、B(1)フレームの先頭パケットのパケット受信時刻がRT1=00.000(sec)であり、これがメディア再生開始時刻T0=00.000(sec)に加算されて、B(1)フレームの再生時刻ePT1=00.000(sec)が求められている。
【0045】
一方、当該メディア用パケットに復号時刻情報が格納されている場合(ステップ103:YES)、メディア再生開始時刻T0に、当該メディア用パケットの受信時刻情報RTnを加算するとともに、再生時刻情報tnと復号時刻情報dtnの時刻差を加算することにより、当該フレームが実際に再生される再生時刻(推定)ePTn=T0+RTn+tn−dtnを算出する(ステップ105)。図4の例では、I(0)フレームの先頭パケットのパケット受信時刻がRT0=59.998(sec)であり、同じく再生時刻情報t0=00.068(sec)、また復号時刻情報dt0=00.000(sec)であることから、I(0)フレームの再生時刻ePT0=00.066(sec)が求められている。
【0046】
このようにして、時刻情報解析手段12Dにより、当該メディア用パケットから当該フレームについて再生予定時刻PTnと再生時刻ePTnを算出した後、無効再生時間算出手段12Eにより、再生予定時刻PTnと再生時刻ePTnの時刻差から当該フレームの再生誤差時間ΔPTn=ePTn−PTnを算出する(ステップ106)。
ここで、再生誤差時間ΔPTnが許容値εを上回る場合(ステップ107:YES)、無効再生時間算出手段12Eは、その再生誤差時間ΔPTnを無効再生時間TSUMに加算し(ステップ108)、再生誤差時間ΔPTnが許容値ε以内であれば(ステップ107:NO)、無効再生時間TSUMに加算しない。
【0047】
図5の例では、B(1)フレームの再生予定時刻がPT1=00.002(sec)であり、再生時刻ePT1=00.000(sec)であることから、その再生誤差時間ΔPT2=-0.020は許容値ε=0.005(sec)以内となり、再生誤差時間ΔPT2は無効再生時間TSUMに加算されない。また、B(2)フレームの再生予定時刻がPT2=00.035(sec)であり、再生時刻ePT2=00.055(sec)であることから、その再生誤差時間ΔPT2=0.020が許容値ε=0.005(sec)を上回っているため、再生誤差時間ΔPT2は無効再生時間TSUMに加算される。
【0048】
次に、無効再生時間算出手段12Eは、当該メディア用パケットに対応するフレームが無効フレームと判定されているか確認し(ステップ109)、無効フレームと判定されている場合は(ステップ109:YES)、当該フレームと次のフレームの再生予定時間PTnの時刻差から、当該無効フレームが再生されるべき期間を示す無効フレーム再生時間FTnを算出する(ステップ110)。
図5の例では、B(4)フレームが無効フレームと判定されており、このB(4)フレームの再生予定時刻PT4=00.101(sec)と次のB(5)フレームの再生予定時刻PT5=00.134(sec)の時刻差からB(4)フレームの無効フレーム再生時間FT4=0.033(sec)が求められる。
【0049】
無効再生時間算出手段12Eは、当該フレームの無効フレーム再生時間FTnを算出した後、その無効フレーム再生時間FTnを無効再生時間TSUMに加算する(ステップ111)。
このようにして、ユーザ体感品質推定装置1の品質解析部12は、選択した所望のユーザ体感品質を推定するための任意の評価期間に受信側アプリケーション端末2で受信されたメディア用パケットのうち、各フレームの先頭に位置する先頭メディア用パケットごとに、図2の無効再生時間算出処理を実行し、評価期間におけるすべての先頭メディア用パケットについて無効再生時間算出処理を終了する。
【0050】
[ユーザ体感品質推定処理]
次に、図6を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置でのユーザ体感品質推定処理について説明する。
ここでは、アプリケーション端末2が受信側であり、送信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)から送信されパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定する場合を例として説明する。この際、対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)から、対向アプリケーション端末のパケット送信部で得られた送信品質情報がアプリケーション端末2へ制御用パケットにより通知される場合を例として説明する。
【0051】
ユーザ体感品質推定装置1の品質情報取得部11は、対向アプリケーション端末側からRTCP XR(RTP Control Protocol)などの制御用パケットで送信された送信品質情報が、アプリケーション端末2のパケット受信部21で受信されたものを取得する(ステップ120)。
また、アプリケーション端末2のパケット受信部21で対向アプリケーション端末からのメディア用パケットから得られた受信品質情報を取得する(ステップ121)。
【0052】
次に、品質解析部12は、無効パケット判定手段12Aにより、送信品質情報で送信が確認されている各メディア用パケットについて、無効パケットの判定を行う(ステップ122)。無効パケットとは、送信側のリアルタイム系アプリケーションから送信されたメディア用パケットのうち、受信側のリアルタイム系アプリケーションで正常に受信できず、メディアとして再生できないパケットのことである。具体的には、送信側アプリケーション端末と受信側アプリケーション端末とをパケット網5を介して結ぶ伝送路上で損失したパケット、受信側アプリケーションの持つ揺らぎ吸収バッファで到着間隔が調整できなかった遅着パケット、さらにはメディア用パケットの到着順序が規定されているリアルタイム系アプリケーションでメディア用パケットの到着順序が逆転したパケットなどが対象となる。
【0053】
次に、品質解析部12は、対象フレーム識別手段12Bにより、送信品質情報を参照して、無効パケット判定手段12Aで無効パケットと判定されたメディア用パケットのフレーム種別とフレーム番号を取得し、無効パケットを含む対象フレームを識別する(ステップ123)。
【0054】
続いて、品質解析部12は、無効フレーム判定手段12Cにより、送信品質情報および受信品質情報を参照して、対象フレーム識別手段12Bで識別された対象フレームのフレーム種別およびフレーム番号と評価対象となるリアルタイム系アプリケーションでメディアの符号化に用いたフレーム構成とに基づき、各フレームのうちメディア用パケットの損失すなわち無効パケットによる影響を受けた復号できない無効フレームを判定する(ステップ124)。
【0055】
例えば、映像メディアでは、基準フレームとの差分データで後続フレームを転送するMPEG(Moving Picture Exparts Group)などの圧縮符号化方式があり、このようなフレーム構成がGOP(Group of Picture)構成情報で予め規定されている。このような圧縮符号化方式を用いる場合、差分データが正常に受信されていても基準フレームが無効フレームとなれば後続フレームも復号できず、結果として後続フレームも無効フレームとなる。
【0056】
次に、品質解析部12は、時刻情報解析手段12Dおよび無効再生時間算出手段12Eを用いて、任意の評価期間に受信側アプリケーション端末2で受信されたメディア用パケットのうち、各フレームの先頭に位置するメディア用パケットごとに、図2の無効再生時間算出処理を実行することにより、評価期間における無効再生時間TSUMを算出する(ステップ125)。
この後、品質解析部12は、図2の無効再生時間算出処理により得られた無効再生時間TSUMを評価期間長TALLで除算することにより、評価期間における無効再生時間TSUMの割合を示す無効再生時間率RT=TSUM/TALLを算出する(ステップ126)。
【0057】
次に、ユーザ体感品質推定部13は、予め用意して記憶部(図示せず)に格納しておいた無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル14から、品質解析部12で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質の品質推定値15として記憶部へ出力する(ステップ127)。
【0058】
品質推定モデルの作成は、中間パラメータと実際にオピニオン評価を行って得られた主観評価値であるMOS値(Mean Opinion Score 平均オピニオン評点)からなるユーザ体感品質との関係を回帰曲線またはテーブルによって表すことでモデル化しておく。
図7は、無効再生時間率とMOS値との関係を示す品質推定モデルである。
実際にユーザ体感品質推定部13で用いる品質推定モデル14としては、図7の回帰曲線を用いてもよく、これをテーブル化した推定モデルを用いてもよい。
【0059】
具体的には、図7において、例えば入力パラメータの入力最小単位である最小刻(具体的には、無効再生時間率の入力最小単位)を0.01とした場合、0.01刻で、出力された値を平均することで表を作成する。つまり、最小刻の範囲内に入っているMOS値を平均することで、0から最小刻ごとに無効再生時間率とMOSの関係をテーブルを作成する。ただし、評価サンプル数が少ない場合、最小刻の中でデータがないものが存在する。その際には、前後にデータが存在するものを利用して補完を行う。この補完は、線形であっても、回帰を用いても構わない。このような現象が極力少なくなるように、モデル作成時には、多数のデータサンプルを取得することが望ましい。
【0060】
この後、推定結果通知部16は、ユーザ体感品質推定部13で推定された品質推定値15を記憶部から読み込んで、RTCP XRなどの制御用パケットに格納し、パケット網5を介して対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)や品質管理サーバ(図示せず)に対して送信し(ステップ128)、一連のユーザ体感品質推定処理を終了する。
この際、一定間隔ごとに品質推定値15の平均値やばらつきを示す分散などを求める統計処理した結果を推定結果通知部16で通知してもよい。
【0061】
このように、本実施の形態では、品質情報取得部11により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得し、品質解析部12により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出し、ユーザ体感品質推定部13により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル14から、品質解析部12で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値15として出力している。
【0062】
したがって、メディア用パケットの遅延揺らぎに応じてフレームの再生タイミングがずれてフレーム再生間隔が変動するような場合でも、このような現象によるユーザ体感品質への影響を考慮して、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質を推定することができる。
これにより、映像通信に用いるメディア用パケットにより損失したメディアデータに基づいてユーザ体感品質を推定する場合と比較して、高い精度でユーザ体感品質を推定することができる。
【0063】
[第2の実施の形態]
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効パケット判定処理を示すフローチャートである。
【0064】
本実施の形態では、前述した第1の実施の形態の無効パケット判定手段12Aにおける無効パケット判定処理の具体例について説明する。
無効パケット判定手段12Aは、まず、送信品質情報から未判定の送信メディア用パケットを任意に選択し(ステップ140)、そのシーケンス番号と同じメディア用パケットが受信されているか受信品質情報で確認する(ステップ141)。ここで、シーケンス番号と同じメディア用パケットが受信されていない場合には(ステップ141:NO)、当該メディア用パケットが途中の伝送路で損失した損失パケットであると判断できることから、無効パケットであると判定する(ステップ145)。
【0065】
一方、シーケンス番号と同じメディア用パケットが受信されている場合には(ステップ141:YES)、当該送信メディア用パケットの遅延揺らぎ時間を受信品質情報で確認し、リアルタイム系アプリケーションが持つ許容遅延時間と比較する(ステップ142)。ここで、遅延揺らぎ時間が許容遅延時間を上回っている場合には(ステップ142:NO)、当該メディア用パケットが途中の伝送路や端末内で遅延して到着した遅着パケットであると判断できることから、無効パケットであると判定する(ステップ145)。
【0066】
一方、遅延揺らぎ時間が許容遅延時間以下である場合には(ステップ142:YES)、当該リアルタイム系アプリケーションが到着順序逆転パケットを損失と見なす場合にのみ(ステップ143:YES)、かつ当該メディア用パケットの到着順とシーケンス番号とが一致するか受信品質情報により確認する。ここで、この一致が確認できず到着順序が逆転しているパケットである場合には(ステップ144:YES)、無効パケットであると判定する(ステップ145)。
【0067】
なお、到着順序が逆転していない場合(ステップ144:NO)や、当該リアルタイム系アプリケーションが到着順序逆転パケットを損失と見なさない場合(ステップ143:NO)、当該パケットは無効パケットではないと判定する(ステップ146)。
このようにして、選択した送信メディア用パケットに対して無効パケット判定を行った後、無効パケット未判定の送信パケットが残っている場合には(ステップ147:YES)、前述したステップ140へ戻って残りの受信メディア用パケットに対する無効パケット判定を繰り返し行う。一方、すべての送信メディア用パケットに対して無効パケット判定が終了した場合(ステップ147:NO)、一連の無効パケット判定処理を終了する。
【0068】
このように、本実施の形態では、無効パケット判定手段12Aにより、送信品質情報で送信が確認されたメディア用パケットのうち受信品質情報で受信が確認されていないメディア用パケット、および受信品質情報の各メディア用パケットの到着時刻から得た直前メディア用パケットとの到着時刻差がアプリケーションの許容パケット遅延時間を超えるメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしたので、途中の伝送路だけではなく遅着により損失したパケットについても無効パケットと判定することができ、受信側のリアルタイム系アプリケーションでメディアとして再生できないパケットを正確に判定できる。
【0069】
また、無効パケット判定手段12Aにより、受信品質情報で受信確認されたメディア用パケットの送信順序と受信順序とが矛盾するメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしたので、当該リアルタイム系アプリケーションが到着順序逆転パケットを損失と見なす場合、受信側のリアルタイム系アプリケーションでメディアとして再生できないパケットをさらに正確に判定できる。
【0070】
[第3の実施の形態]
次に、図9を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図9は、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効フレーム判定処理を示すフローチャートである。
【0071】
本実施の形態では、前述した第1の実施の形態の無効フレーム判定手段12Cにおける無効フレーム判定処理の具体例について説明する。
無効フレーム判定手段12Cは、まず、送信品質情報で送信確認されている各フレームのうち、対象フレーム識別手段12Bにより無効パケットを含むために対象フレームと識別されたフレームを無効フレームと判定する(ステップ150)。
【0072】
次に、受信品質情報を参照して、受信側に到着した順序にしたがって無効フレーム未判定のフレームを選択し(ステップ151)、当該リアルタイム系アプリケーションでメディアの符号化に用いたフレーム構成を示すフレーム構成情報と受信品質情報とを参照することにより、当該フレームの復号に用いる他のフレームに、無効フレームが含まれているか確認する(ステップ152)。フレーム構成情報は、予め記憶部に設定しておいてもよく送受信品質情報で取得してもよい。
【0073】
ここで、無効フレームが含まれている場合(ステップ152:YES)、当該フレームを正常に復号できないことから、当該フレームを無効フレームと判定する(ステップ153)。一方、無効フレームが含まれていない場合(ステップ152:NO)、当該フレームを正常に復号できることから、当該フレームを無効フレームではないと判定する(ステップ154)。
【0074】
図10は、無効フレームの判定処理例である。ここでは、例えば、MPEG符号化方式に基づいて、映像メディアが「IBB」のGOP構成で圧縮符号化されフレームに分割されている。フレーム種別Iフレームは基準となるフレームで、Iフレームだけで元のフレームを復号できる。フレーム種別BフレームはIフレームとの差分データからなり、その復号にはIフレームが必要となる。
【0075】
図10に示すように、フレーム「1〜9」が「IBB」のGOP構成にしたがってメディア用パケットに分割されて送信され、受信側で受信した際、このうちフレーム「2,4,7,8」に無効パケットが含まれていたとする。
この場合には、まず、無効パケットを含む対象フレームが無効フレームと判定され、さらに、これら無効フレームを復号時に用いるフレームについても無効フレームと判定される。
【0076】
具体的には、フレーム「5,6」の復号にフレーム「4」を用いるがフレーム「4」が無効フレームであるため、これらフレーム「5,6」も無効フレームと判定される。同様に、フレーム「9」の復号にフレーム「7」を用いるがフレーム「7」が無効フレームであるため、フレーム「9」も無効フレームと判定される。なお、フレーム「3」の復号にフレーム「1」を用いるがフレーム「1」が無効フレームではないため、フレーム「3」は無効フレームではないと判定される。
【0077】
このようにして、選択したフレームに対して無効フレーム判定を行った後、無効フレーム未判定のフレームが残っている場合には(ステップ155:YES)、前述したステップ151へ戻って残りのフレームに対する無効フレーム判定を繰り返し行う。一方、すべての送信メディア用パケットに対して無効パケット判定が終了した場合(ステップ155:NO)、一連の無効フレーム判定処理を終了する。
【0078】
このように、本実施の形態では、無効フレーム判定手段12Cにより、各フレームのうち対象フレームを無効フレームと判定するとともに、フレーム構成で規定されているフレーム種別の並びに従って当該フレームの復号に用いる他のフレームに無効フレームが含まれている場合には当該フレームを無効フレームと判定するようにしたので、単に無効パケットの有無により無効フレームを判定する場合と比較して、実際のフレーム構成に応じて正確に無効フレームを判定できる。
【0079】
[各実施の形態の拡張]
以上の各実施の形態では、アプリケーション端末2が受信側であり、送信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)から送信されパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定する場合を例として説明したがこれに限定されるものではない。すなわち、アプリケーション端末2が送信側であり、受信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)でパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定することもできる。
【0080】
この場合には、ユーザ体感品質推定装置1の品質情報取得部11により、アプリケーション端末2のパケット送信部22で得られた品質情報を前述した送信品質情報として用いるとともに、アプリケーション端末2のパケット受信部21で受信した対向アプリケーション端末からの品質情報を前述した受信品質情報として用いればよい。
この際、対向アプリケーション端末でも同様のユーザ体感品質を推定する場合には、前述した品質情報通知部17でアプリケーション端末2のパケット送信部22で得られた送信品質情報を送信する代わりに、パケット受信部21で得られた受信メディア用パケットに関する受信品質情報を対向アプリケーション端末へ送信すればよい。
【0081】
なお、これら送受信品質情報は、直接、送信側と受信側との間でやり取りしてもよいが、これら品質情報を管理する品質管理サーバを介してやり取りするようにしてもよい。また、ユーザ体感品質推定装置1で、品質情報を直接受信するようにしてもよい。
【0082】
また、以上の各実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置1をアプリケーション端末2とは別個の装置で実現した場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リアルタイム系アプリケーションと並行してアプリケーション端末2で実行される品質推定アプリケーションにより実現してもよい。これにより、アプリケーション端末2のハードウェア資源を共用して実現でき、極めて容易にユーザ体感品質を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効再生時間算出処理を示すフローチャートである。
【図3】再生予定時刻の算出動作を示す説明図である。
【図4】再生時刻の算出動作を示す説明図である。
【図5】無効再生時間の算出動作を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置のユーザ体感品質推定処理を示すフローチャートである。
【図7】無効再生時間率とMOS値との関係を示す品質推定モデルである。
【図8】本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効パケット判定処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効フレーム判定処理を示すフローチャートである。
【図10】無効フレームの判定処理例である。
【符号の説明】
【0084】
1…ユーザ体感品質推定装置、11…品質情報取得部、12…品質解析部、12A…無効パケット判定手段、12B…対象フレーム識別手段、12C…無効フレーム判定手段、12D…時刻情報解析手段、12E…無効再生時間算出手段、12F…無効再生時間率算出手段、13…ユーザ体感品質推定部、14…品質推定モデル、15…品質推定値、16…推定結果通知部、17…品質情報通知部、2…アプリケーション端末、21…パケット受信部、22…パケット送信部、5…パケット網。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質推定技術に関し、特にリアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パケット通信技術の飛躍的な発展に伴い、パケット網が音声や映像等のメディア(コンテンツ)を1対1あるいは多地点間で通信するリアルタイム系アプリケーションで利用されつつある。パケット網のインサービス品質管理では、このようなアプリケーションに対する品質管理も必要とされている。特にリアルタイム系アプリケーションでは、実際にアプリケーションを利用するユーザレベルでの主観的あるいは客観的な品質などのユーザ体感品質を用いた品質管理が重要視されており、ネットワーク品質からユーザ体感品質を推定する技術も提案されている(例えば、非特許文献1等参照)。
【0003】
従来、発明者らは、リアルタイム系アプリケーションの主観品質を推定する技術を提案した(例えば、特許文献1等参照)。この技術では、試験用パケットのうち受信側端末へ到着しなかった損失パケットと、直前到着パケットとの到着間隔がリアルタイム系アプリケーションの揺らぎ吸収許容時間を越えた遅着パケットとを無効パケットと判定してこれら無効パケット数を計数し、送信側から送信されたすべての試験用パケット数に対する無効パケット数の割合を無効パケット率として算出し、予め生成しておいた無効パケット率と主観品質評価値との関係を示す品質推定モデルを参照して、無効パケット率に対応する主観品質評価値を推定している。
【0004】
これに対して、従来、発明者らは、損失パケットから推定した映像品質劣化の度合いと映像品質劣化の継続時間長に基づいてリアルタイム系アプリケーションの主観品質を推定する技術を提案した(例えば、特許文献2等参照)。この技術では、ユーザ端末へ送る映像パケット毎にそのパケットが属する高能率圧縮符号化時のフレーム種別およびフレーム発生規則を埋め込む。ユーザ端末において、損失パケットの生成番号から1映像フレーム内の品質劣化の程度や割合などの度合いを推定し、損失パケットが属する高能率圧縮符号化時のフレーム種別およびフレーム発生規則から映像品質劣化の継続時間長を推定し、推定した映像品質劣化の度合いと映像品質劣化の継続時間長に基づいてユーザ端末において復号される映像の主観品質を推定している。これにより、簡単な構成で推定精度の改善が得られた。
【0005】
【特許文献1】特許第3579334号公報
【特許文献2】特開2006−033722号公報
【非特許文献1】ITU-T Recommendation G.107,"The E-Model, a computational model for use in transmission planning", May 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、映像通信に用いるメディア用パケットにより損失したメディアデータに基づいて主観品質を推定しているため、フレームの再生タイミングがずれるような現象が主観品質に与える影響については考慮されておらず、高い推定精度が求められる場合には十分ではないという問題点があった。
【0007】
リアルタイム系アプリケーションでは、高能率符号化した映像信号や音声信号などのメディア信号をフレームに分解した後、さらにメディア用パケットに変換してやり取りしている。このため、受信側アプリケーション端末でメディア信号を復号する際、受信したメディア用パケットからフレームを組み立て、さらに前後のフレーム情報を使用してメディア信号を復号する。
【0008】
この際、受信側端末で正常に受信できたメディア用パケットには、送信側端末と受信側端末とを結ぶ伝送路上での遅延揺らぎにより到着時刻が前後にずれてフレーム再生間隔に影響を与えるパケットも含まれる。したがって、このようなパケットに起因してフレームが時間的にずれて再生される現象が発生した場合、映像がぎくしゃくした動きとなり、ユーザが実感するユーザ体感品質の劣化を招くことになる。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、メディア用パケットの遅延揺らぎに応じたフレーム再生間隔の変動による影響を考慮して、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質値を高い精度で推定することができるユーザ体感品質推定装置、方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかるユーザ体感品質推定装置は、パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置であって、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報と、メディア用パケットに含まれている各種の時刻情報とを取得する品質情報取得部と、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析部と、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定部とを備えている。
【0011】
この際、品質解析部に、受信側アプリケーション端末におけるメディア全体のメディア再生開始時刻とメディア用パケットに含まれる当該フレームの再生時刻情報とから当該フレームの再生予定時刻を算出するとともに、メディア再生開始時刻とメディア用パケットの受信時刻とから当該フレームの実際の再生時刻を算出する時刻情報解析手段と、当該フレームの再生予定時刻と再生時刻との時刻差からなる再生誤差時間が許容値を上回った場合に当該再生誤差時間を無効再生時間に加算するとともに、当該フレームが無効フレームの場合は再生予定時刻から次のフレームの再生予定時刻との時刻差からなる無効フレーム再生時間を無効再生時間に加算する無効再生時間算出手段と、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する無効再生時間率算出手段とを設けてもよい。
【0012】
また、品質解析部に、送信品質情報と受信品質情報とに基づいてメディア用パケットのうち正常に受信できなかったパケットを無効パケットとして判定する無効パケット判定手段と、送信品質情報に基づいて無効パケットに対応するフレームを対象フレームとして識別するフレーム識別手段と、メディアの符号化に用いたフレーム構成と対象フレームとに基づいて、各フレームについて無効フレームか否かを判定する無効フレーム判定手段とを設けてもよい。
【0013】
また、無効パケット判定手段で、送信品質情報で送信が確認されたメディア用パケットのうち受信品質情報で受信が確認されていないメディア用パケット、および受信品質情報の各メディア用パケットの到着間隔を示す遅延揺らぎ時間がアプリケーションの許容パケット遅延時間を超えるメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしてもよい。
【0014】
また、無効パケット判定手段で、受信品質情報で受信確認されたメディア用パケットの送信順序と受信順序とが矛盾するメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしてもよい。
【0015】
また、フレーム識別手段で、送信品質情報に含まれる無効パケットのヘッダ情報から、対象フレームのフレーム番号およびフレーム種別を取得し、無効フレーム判定手段で、各フレームのうち対象フレームを無効フレームと判定するとともに、フレーム構成で規定されているフレーム種別の並びに従って当該フレームの復号に用いる他のフレームに無効フレームが含まれている場合には当該フレームを無効フレームと判定するようにしてもよい。
【0016】
また、品質情報取得部で、受信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信された送信側アプリケーション端末側からの品質情報を送信品質情報として取得するとともに、受信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信されたメディア用パケットから得られた品質情報を受信品質情報として取得するようにしてもよい。
【0017】
また、品質情報取得部で、送信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信された受信側アプリケーション端末側からの品質情報を受信品質情報として取得するとともに、送信側アプリケーション端末のパケット送信部で送信されたメディア用パケットから得られた品質情報を送信品質情報として取得するようにしてもよい。
【0018】
また、送信側アプリケーション端末のパケット送信部で得られた送信品質情報を受信側アプリケーション端末へ通知する品質情報通知部をさらに備えてもよい。
【0019】
受信側アプリケーション端末のパケット受信部で得られた受信品質情報を送信側アプリケーション端末へ通知する品質情報通知部をさらに備えてもよい。
【0020】
また、本発明にかかるユーザ体感品質推定方法は、パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置で用いられるユーザ体感品質推定方法であって、品質情報取得部により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、品質解析部により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析ステップと、ユーザ体感品質推定部により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップとを備えている。
【0021】
また、本発明にかかるプログラムは、パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置のコンピュータに、品質情報取得部により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、品質解析部により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析ステップと、ユーザ体感品質推定部により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップとを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、品質解析部により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計が無効再生時間として算出されて、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合が無効再生時間率として算出され、ユーザ体感品質推定部により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値が導出され、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力される。
【0023】
したがって、メディア用パケットの遅延揺らぎに応じてフレームの再生タイミングがずれてフレーム再生間隔が変動するような場合でも、このような現象によるユーザ体感品質への影響を考慮して、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質を推定することができる。
これにより、映像通信に用いるメディア用パケットにより損失したメディアデータに基づいてユーザ体感品質を推定する場合と比較して、高い精度でユーザ体感品質を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【0025】
ユーザ体感品質推定装置1は、通信機能を有する情報処理装置からなり、アプリケーション端末2さらにはパケット網5と接続されて、アプリケーション端末2で実行されるリアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質を推定する。
このユーザ体感品質推定装置1には、主な機能部として、品質情報取得部11、品質解析部12、ユーザ体感品質推定部13、推定結果通知部16、および品質情報通知部17が設けられている。
【0026】
本実施の形態は、品質情報取得部11により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディアデータの通信に用いるメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得し、品質解析部12により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出し、ユーザ体感品質推定部13により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル14から、品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するようにしたものである。
【0027】
ユーザ体感品質推定装置1の各機能部は、専用の回路部や演算処理部、さらには記憶部から構成されている。特に、演算処理部(コンピュータ)は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、周辺回路内のメモリや記憶部に格納されているプログラムを読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラムとを協働させて各機能部を実現する。記憶部は、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、各機能部での処理に用いる各種処理情報を記憶する。
【0028】
品質情報取得部11は、送信側アプリケーション端末から送信された、メディア(コンテンツのデータを含むメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報をアプリケーション端末2のパケット受信部21から取得する機能と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報をアプリケーション端末2のパケット受信部21から取得する機能とを有している。
【0029】
品質解析部12は、送信品質情報および受信品質情報に基づいて各フレームのうち正常再生できなかったフレームによる品質劣化が発生した期間を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する機能を有している。
品質解析部12を構成する主な機能手段としては、無効パケット判定手段12A、対象フレーム識別手段12B、無効フレーム判定手段12C、時刻情報解析手段12D、無効再生時間算出手段12E、および無効再生時間率算出手段12Fがある。
【0030】
無効パケット判定手段12Aは、送信品質情報と受信品質情報とに基づいてメディア用パケットのうち損失したパケットを無効パケットとして判定する機能を有している。
対象フレーム識別手段12Bは、送信品質情報に基づいて無効パケットに対応するフレームを対象フレームとして識別する機能を有している。
無効フレーム判定手段12Cは、メディアの符号化に用いたフレーム構成と対象フレームとに基づいて、各フレームについて無効フレームか否かを判定する機能を有している。
【0031】
時刻情報解析手段12Dは、受信側アプリケーション端末2において任意の評価期間におけるメディア全体のメディア再生開始時刻とその評価期間に受信したメディア用パケットに含まれる当該フレームの再生時刻情報とから当該フレームの再生予定時刻を算出する機能と、当該フレームのメディア再生開始時刻と当該メディア用パケットの受信時刻とから当該フレームの実際の再生時刻を算出する機能とを有している。
【0032】
無効再生時間算出手段12Eは、当該フレームの再生予定時刻と再生時刻との時刻差からなる再生誤差時間が許容値を上回った場合に当該再生誤差時間を無効再生時間に加算する機能と、当該フレームが無効フレームの場合は再生予定時刻から次のフレームの再生予定時刻との時刻差からなる無効フレーム再生時間を無効再生時間に加算する機能とを有している。
無効再生時間率算出手段12Fは、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する機能を有している。
【0033】
ユーザ体感品質推定部13は、無効フレーム率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル14から、品質解析部12で算出された無効フレーム率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションの品質推定値15として出力する機能を有している。
【0034】
推定結果通知部16は、パケット網5を介して対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)や品質管理サーバ(図示せず)に対し、制御パケットを用いて、当該装置で得られた品質推定値15さらにはこのユーザ体感品質値の算出に用いた送受信品質情報などの品質要因情報を含む推定結果情報を、定期的あるいは必要に応じて通知する機能を有している。
品質情報通知部17は、アプリケーション端末2のパケット送信部22で得られた送信品質情報を送信側アプリケーション端末へ通知する機能を有している。
【0035】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図2〜図6を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効再生時間算出処理を示すフローチャートである。図3は、再生予定時刻の算出動作を示す説明図である。図4は、再生時刻の算出動作を示す説明図である。図5は、無効再生時間の算出動作を示す説明図である。図6は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置のユーザ体感品質推定処理を示すフローチャートである。
【0036】
ここでは、アプリケーション端末2が受信側であり、送信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)から送信されパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定する場合を例として説明する。この際、対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)から、対向アプリケーション端末のパケット送信部で得られた送信品質情報がアプリケーション端末2へ制御用パケットにより通知される場合を例として説明する。
【0037】
ユーザ体感品質推定装置1の品質情報取得部11で取得した送信品質情報に含まれている主な品質情報としては、各送信メディア用パケットに関する、送信順序を示すシーケンス番号、映像フレーム種別、映像フレーム番号、送信パケット数、送信フレーム数、および時刻がある。また受信品質情報に含まれている主な品質情報としては、各受信メディア用パケットに関する、送信順序を示すシーケンス番号、直前メディア用パケットとの到着時刻差を示す遅延揺らぎ時間、および各種の時刻情報がある。
【0038】
受信メディア用パケットに関する時刻情報としては、映像メディアを符号化する際にフレームレートなどの品質情報に基づき設定された、対応するフレームの正常な再生開始タイミングを示す再生時刻情報、さらには当該フレームの正常な復号開始タイミングを示す復号時刻情報のほか、送受信アプリケーション端末間で計時している時刻を相互に同期させるための時刻合わせ情報などがある。これら時刻情報は、各メディア用パケットのペイロード部に格納されて送信され、品質情報取得部11で取得される。
【0039】
[無効再生時間算出処理]
まず、図2〜図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置1での無効再生時間算出処理について説明する。ここでは、品質情報取得部11により、アプリケーション端末2から送信側品質情報および受信側品質情報がすでに取得されているものとする。また、送受信アプリケーション端末間で計時している両時刻に誤差がある場合、送信側アプリケーション端末から送信された時刻合わせ情報に基づき受信側アプリケーション端末の時刻が送信側の時刻に同期させているものとする。なお、時刻合わせ情報に基づいて無効再生時間算出時にいずれか一方の端末での時刻情報を補正するようにしてもよい。
【0040】
ユーザ体感品質推定装置1の品質解析部12は、所望のユーザ体感品質を推定するための任意の評価期間に受信側アプリケーション端末2で受信されたメディア用パケットのうち、各フレームの先頭に位置するメディア用パケットごとに、図2の無効再生時間算出処理を実行する。なお、各フレームに対する無効フレーム判定については、品質解析部12の無効フレーム判定手段12Cにより、すでに判定済みであるものとする。また、フレーム構成は、MPEG(Moving Picture Exparts Group)のGOP(Group of Picture)構成を用いているものとする。
【0041】
まず、時刻情報解析手段12Dは、送信側品質情報および受信側品質情報に基づき選択したメディア用パケットが評価期間に最初に受信した先頭のメディア用パケットの場合(ステップ100:YES)、当該パケットの受信時刻RT0に遅れ時間αを加算することにより、評価期間に対応する映像メディア全体の再生開始タイミングを示すメディア再生開始時刻T0=RT0+αを算出する(ステップ101)。
【0042】
遅れ時間αは、メディア用パケットの受信から実際にフレームが復号されて再生がされるまでの時間であり、アプリケーションや端末などの処理性能に基づき予め設定される。なお、遅れ時間αとして、評価期間において最初に再生されるフレームの先頭メディア用パケットの再生時刻情報を用いてもよい。図3の例では、遅れ時間αとして、評価期間において最初に再生されるB(1)フレームの先頭メディア用パケットの再生時刻情報t1=00.002(sec)が用いられ、最初に受信したI(0)フレームのメディア用パケットの受信時刻RT0=59.998(sec)であることから、メディア再生開始時刻T0=RT0+t1=00.000(sec)が求められている。
【0043】
次に、時刻情報解析手段12Dは、再生開示時刻T0に当該メディア用パケットの再生時刻情報tnを加算することにより、当該パケットに対応するフレームの再生予定時刻PTn=T0+tnを算出する(ステップ102)。図3の例では、I(0)フレームの先頭パケットの再生時刻情報がt0=00.068(sec)であり、これがメディア再生開始時刻T0=00.000(sec)に加算されて、I(0)フレームの再生予定時刻PT0=00.068(sec)が求められている。
【0044】
次に、時刻情報解析手段12Dは、当該メディア用パケットに復号時刻情報が格納されていたか否か判断する(ステップ103)。この復号時刻情報は、通常、特定の種別のフレームにのみ格納されている。
ここで、当該メディア用パケットに復号時刻情報が格納されていない場合(ステップ103:NO)、メディア再生開始時刻T0に、当該メディア用パケットの受信時刻情報RTnを加算することにより、当該フレームが実際に再生される再生時刻ePTn=T0+RTnを算出する(ステップ104)。図4の例では、B(1)フレームの先頭パケットのパケット受信時刻がRT1=00.000(sec)であり、これがメディア再生開始時刻T0=00.000(sec)に加算されて、B(1)フレームの再生時刻ePT1=00.000(sec)が求められている。
【0045】
一方、当該メディア用パケットに復号時刻情報が格納されている場合(ステップ103:YES)、メディア再生開始時刻T0に、当該メディア用パケットの受信時刻情報RTnを加算するとともに、再生時刻情報tnと復号時刻情報dtnの時刻差を加算することにより、当該フレームが実際に再生される再生時刻(推定)ePTn=T0+RTn+tn−dtnを算出する(ステップ105)。図4の例では、I(0)フレームの先頭パケットのパケット受信時刻がRT0=59.998(sec)であり、同じく再生時刻情報t0=00.068(sec)、また復号時刻情報dt0=00.000(sec)であることから、I(0)フレームの再生時刻ePT0=00.066(sec)が求められている。
【0046】
このようにして、時刻情報解析手段12Dにより、当該メディア用パケットから当該フレームについて再生予定時刻PTnと再生時刻ePTnを算出した後、無効再生時間算出手段12Eにより、再生予定時刻PTnと再生時刻ePTnの時刻差から当該フレームの再生誤差時間ΔPTn=ePTn−PTnを算出する(ステップ106)。
ここで、再生誤差時間ΔPTnが許容値εを上回る場合(ステップ107:YES)、無効再生時間算出手段12Eは、その再生誤差時間ΔPTnを無効再生時間TSUMに加算し(ステップ108)、再生誤差時間ΔPTnが許容値ε以内であれば(ステップ107:NO)、無効再生時間TSUMに加算しない。
【0047】
図5の例では、B(1)フレームの再生予定時刻がPT1=00.002(sec)であり、再生時刻ePT1=00.000(sec)であることから、その再生誤差時間ΔPT2=-0.020は許容値ε=0.005(sec)以内となり、再生誤差時間ΔPT2は無効再生時間TSUMに加算されない。また、B(2)フレームの再生予定時刻がPT2=00.035(sec)であり、再生時刻ePT2=00.055(sec)であることから、その再生誤差時間ΔPT2=0.020が許容値ε=0.005(sec)を上回っているため、再生誤差時間ΔPT2は無効再生時間TSUMに加算される。
【0048】
次に、無効再生時間算出手段12Eは、当該メディア用パケットに対応するフレームが無効フレームと判定されているか確認し(ステップ109)、無効フレームと判定されている場合は(ステップ109:YES)、当該フレームと次のフレームの再生予定時間PTnの時刻差から、当該無効フレームが再生されるべき期間を示す無効フレーム再生時間FTnを算出する(ステップ110)。
図5の例では、B(4)フレームが無効フレームと判定されており、このB(4)フレームの再生予定時刻PT4=00.101(sec)と次のB(5)フレームの再生予定時刻PT5=00.134(sec)の時刻差からB(4)フレームの無効フレーム再生時間FT4=0.033(sec)が求められる。
【0049】
無効再生時間算出手段12Eは、当該フレームの無効フレーム再生時間FTnを算出した後、その無効フレーム再生時間FTnを無効再生時間TSUMに加算する(ステップ111)。
このようにして、ユーザ体感品質推定装置1の品質解析部12は、選択した所望のユーザ体感品質を推定するための任意の評価期間に受信側アプリケーション端末2で受信されたメディア用パケットのうち、各フレームの先頭に位置する先頭メディア用パケットごとに、図2の無効再生時間算出処理を実行し、評価期間におけるすべての先頭メディア用パケットについて無効再生時間算出処理を終了する。
【0050】
[ユーザ体感品質推定処理]
次に、図6を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置でのユーザ体感品質推定処理について説明する。
ここでは、アプリケーション端末2が受信側であり、送信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)から送信されパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定する場合を例として説明する。この際、対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)から、対向アプリケーション端末のパケット送信部で得られた送信品質情報がアプリケーション端末2へ制御用パケットにより通知される場合を例として説明する。
【0051】
ユーザ体感品質推定装置1の品質情報取得部11は、対向アプリケーション端末側からRTCP XR(RTP Control Protocol)などの制御用パケットで送信された送信品質情報が、アプリケーション端末2のパケット受信部21で受信されたものを取得する(ステップ120)。
また、アプリケーション端末2のパケット受信部21で対向アプリケーション端末からのメディア用パケットから得られた受信品質情報を取得する(ステップ121)。
【0052】
次に、品質解析部12は、無効パケット判定手段12Aにより、送信品質情報で送信が確認されている各メディア用パケットについて、無効パケットの判定を行う(ステップ122)。無効パケットとは、送信側のリアルタイム系アプリケーションから送信されたメディア用パケットのうち、受信側のリアルタイム系アプリケーションで正常に受信できず、メディアとして再生できないパケットのことである。具体的には、送信側アプリケーション端末と受信側アプリケーション端末とをパケット網5を介して結ぶ伝送路上で損失したパケット、受信側アプリケーションの持つ揺らぎ吸収バッファで到着間隔が調整できなかった遅着パケット、さらにはメディア用パケットの到着順序が規定されているリアルタイム系アプリケーションでメディア用パケットの到着順序が逆転したパケットなどが対象となる。
【0053】
次に、品質解析部12は、対象フレーム識別手段12Bにより、送信品質情報を参照して、無効パケット判定手段12Aで無効パケットと判定されたメディア用パケットのフレーム種別とフレーム番号を取得し、無効パケットを含む対象フレームを識別する(ステップ123)。
【0054】
続いて、品質解析部12は、無効フレーム判定手段12Cにより、送信品質情報および受信品質情報を参照して、対象フレーム識別手段12Bで識別された対象フレームのフレーム種別およびフレーム番号と評価対象となるリアルタイム系アプリケーションでメディアの符号化に用いたフレーム構成とに基づき、各フレームのうちメディア用パケットの損失すなわち無効パケットによる影響を受けた復号できない無効フレームを判定する(ステップ124)。
【0055】
例えば、映像メディアでは、基準フレームとの差分データで後続フレームを転送するMPEG(Moving Picture Exparts Group)などの圧縮符号化方式があり、このようなフレーム構成がGOP(Group of Picture)構成情報で予め規定されている。このような圧縮符号化方式を用いる場合、差分データが正常に受信されていても基準フレームが無効フレームとなれば後続フレームも復号できず、結果として後続フレームも無効フレームとなる。
【0056】
次に、品質解析部12は、時刻情報解析手段12Dおよび無効再生時間算出手段12Eを用いて、任意の評価期間に受信側アプリケーション端末2で受信されたメディア用パケットのうち、各フレームの先頭に位置するメディア用パケットごとに、図2の無効再生時間算出処理を実行することにより、評価期間における無効再生時間TSUMを算出する(ステップ125)。
この後、品質解析部12は、図2の無効再生時間算出処理により得られた無効再生時間TSUMを評価期間長TALLで除算することにより、評価期間における無効再生時間TSUMの割合を示す無効再生時間率RT=TSUM/TALLを算出する(ステップ126)。
【0057】
次に、ユーザ体感品質推定部13は、予め用意して記憶部(図示せず)に格納しておいた無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル14から、品質解析部12で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質の品質推定値15として記憶部へ出力する(ステップ127)。
【0058】
品質推定モデルの作成は、中間パラメータと実際にオピニオン評価を行って得られた主観評価値であるMOS値(Mean Opinion Score 平均オピニオン評点)からなるユーザ体感品質との関係を回帰曲線またはテーブルによって表すことでモデル化しておく。
図7は、無効再生時間率とMOS値との関係を示す品質推定モデルである。
実際にユーザ体感品質推定部13で用いる品質推定モデル14としては、図7の回帰曲線を用いてもよく、これをテーブル化した推定モデルを用いてもよい。
【0059】
具体的には、図7において、例えば入力パラメータの入力最小単位である最小刻(具体的には、無効再生時間率の入力最小単位)を0.01とした場合、0.01刻で、出力された値を平均することで表を作成する。つまり、最小刻の範囲内に入っているMOS値を平均することで、0から最小刻ごとに無効再生時間率とMOSの関係をテーブルを作成する。ただし、評価サンプル数が少ない場合、最小刻の中でデータがないものが存在する。その際には、前後にデータが存在するものを利用して補完を行う。この補完は、線形であっても、回帰を用いても構わない。このような現象が極力少なくなるように、モデル作成時には、多数のデータサンプルを取得することが望ましい。
【0060】
この後、推定結果通知部16は、ユーザ体感品質推定部13で推定された品質推定値15を記憶部から読み込んで、RTCP XRなどの制御用パケットに格納し、パケット網5を介して対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)や品質管理サーバ(図示せず)に対して送信し(ステップ128)、一連のユーザ体感品質推定処理を終了する。
この際、一定間隔ごとに品質推定値15の平均値やばらつきを示す分散などを求める統計処理した結果を推定結果通知部16で通知してもよい。
【0061】
このように、本実施の形態では、品質情報取得部11により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得し、品質解析部12により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出し、ユーザ体感品質推定部13により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル14から、品質解析部12で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値15として出力している。
【0062】
したがって、メディア用パケットの遅延揺らぎに応じてフレームの再生タイミングがずれてフレーム再生間隔が変動するような場合でも、このような現象によるユーザ体感品質への影響を考慮して、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質を推定することができる。
これにより、映像通信に用いるメディア用パケットにより損失したメディアデータに基づいてユーザ体感品質を推定する場合と比較して、高い精度でユーザ体感品質を推定することができる。
【0063】
[第2の実施の形態]
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効パケット判定処理を示すフローチャートである。
【0064】
本実施の形態では、前述した第1の実施の形態の無効パケット判定手段12Aにおける無効パケット判定処理の具体例について説明する。
無効パケット判定手段12Aは、まず、送信品質情報から未判定の送信メディア用パケットを任意に選択し(ステップ140)、そのシーケンス番号と同じメディア用パケットが受信されているか受信品質情報で確認する(ステップ141)。ここで、シーケンス番号と同じメディア用パケットが受信されていない場合には(ステップ141:NO)、当該メディア用パケットが途中の伝送路で損失した損失パケットであると判断できることから、無効パケットであると判定する(ステップ145)。
【0065】
一方、シーケンス番号と同じメディア用パケットが受信されている場合には(ステップ141:YES)、当該送信メディア用パケットの遅延揺らぎ時間を受信品質情報で確認し、リアルタイム系アプリケーションが持つ許容遅延時間と比較する(ステップ142)。ここで、遅延揺らぎ時間が許容遅延時間を上回っている場合には(ステップ142:NO)、当該メディア用パケットが途中の伝送路や端末内で遅延して到着した遅着パケットであると判断できることから、無効パケットであると判定する(ステップ145)。
【0066】
一方、遅延揺らぎ時間が許容遅延時間以下である場合には(ステップ142:YES)、当該リアルタイム系アプリケーションが到着順序逆転パケットを損失と見なす場合にのみ(ステップ143:YES)、かつ当該メディア用パケットの到着順とシーケンス番号とが一致するか受信品質情報により確認する。ここで、この一致が確認できず到着順序が逆転しているパケットである場合には(ステップ144:YES)、無効パケットであると判定する(ステップ145)。
【0067】
なお、到着順序が逆転していない場合(ステップ144:NO)や、当該リアルタイム系アプリケーションが到着順序逆転パケットを損失と見なさない場合(ステップ143:NO)、当該パケットは無効パケットではないと判定する(ステップ146)。
このようにして、選択した送信メディア用パケットに対して無効パケット判定を行った後、無効パケット未判定の送信パケットが残っている場合には(ステップ147:YES)、前述したステップ140へ戻って残りの受信メディア用パケットに対する無効パケット判定を繰り返し行う。一方、すべての送信メディア用パケットに対して無効パケット判定が終了した場合(ステップ147:NO)、一連の無効パケット判定処理を終了する。
【0068】
このように、本実施の形態では、無効パケット判定手段12Aにより、送信品質情報で送信が確認されたメディア用パケットのうち受信品質情報で受信が確認されていないメディア用パケット、および受信品質情報の各メディア用パケットの到着時刻から得た直前メディア用パケットとの到着時刻差がアプリケーションの許容パケット遅延時間を超えるメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしたので、途中の伝送路だけではなく遅着により損失したパケットについても無効パケットと判定することができ、受信側のリアルタイム系アプリケーションでメディアとして再生できないパケットを正確に判定できる。
【0069】
また、無効パケット判定手段12Aにより、受信品質情報で受信確認されたメディア用パケットの送信順序と受信順序とが矛盾するメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしたので、当該リアルタイム系アプリケーションが到着順序逆転パケットを損失と見なす場合、受信側のリアルタイム系アプリケーションでメディアとして再生できないパケットをさらに正確に判定できる。
【0070】
[第3の実施の形態]
次に、図9を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図9は、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効フレーム判定処理を示すフローチャートである。
【0071】
本実施の形態では、前述した第1の実施の形態の無効フレーム判定手段12Cにおける無効フレーム判定処理の具体例について説明する。
無効フレーム判定手段12Cは、まず、送信品質情報で送信確認されている各フレームのうち、対象フレーム識別手段12Bにより無効パケットを含むために対象フレームと識別されたフレームを無効フレームと判定する(ステップ150)。
【0072】
次に、受信品質情報を参照して、受信側に到着した順序にしたがって無効フレーム未判定のフレームを選択し(ステップ151)、当該リアルタイム系アプリケーションでメディアの符号化に用いたフレーム構成を示すフレーム構成情報と受信品質情報とを参照することにより、当該フレームの復号に用いる他のフレームに、無効フレームが含まれているか確認する(ステップ152)。フレーム構成情報は、予め記憶部に設定しておいてもよく送受信品質情報で取得してもよい。
【0073】
ここで、無効フレームが含まれている場合(ステップ152:YES)、当該フレームを正常に復号できないことから、当該フレームを無効フレームと判定する(ステップ153)。一方、無効フレームが含まれていない場合(ステップ152:NO)、当該フレームを正常に復号できることから、当該フレームを無効フレームではないと判定する(ステップ154)。
【0074】
図10は、無効フレームの判定処理例である。ここでは、例えば、MPEG符号化方式に基づいて、映像メディアが「IBB」のGOP構成で圧縮符号化されフレームに分割されている。フレーム種別Iフレームは基準となるフレームで、Iフレームだけで元のフレームを復号できる。フレーム種別BフレームはIフレームとの差分データからなり、その復号にはIフレームが必要となる。
【0075】
図10に示すように、フレーム「1〜9」が「IBB」のGOP構成にしたがってメディア用パケットに分割されて送信され、受信側で受信した際、このうちフレーム「2,4,7,8」に無効パケットが含まれていたとする。
この場合には、まず、無効パケットを含む対象フレームが無効フレームと判定され、さらに、これら無効フレームを復号時に用いるフレームについても無効フレームと判定される。
【0076】
具体的には、フレーム「5,6」の復号にフレーム「4」を用いるがフレーム「4」が無効フレームであるため、これらフレーム「5,6」も無効フレームと判定される。同様に、フレーム「9」の復号にフレーム「7」を用いるがフレーム「7」が無効フレームであるため、フレーム「9」も無効フレームと判定される。なお、フレーム「3」の復号にフレーム「1」を用いるがフレーム「1」が無効フレームではないため、フレーム「3」は無効フレームではないと判定される。
【0077】
このようにして、選択したフレームに対して無効フレーム判定を行った後、無効フレーム未判定のフレームが残っている場合には(ステップ155:YES)、前述したステップ151へ戻って残りのフレームに対する無効フレーム判定を繰り返し行う。一方、すべての送信メディア用パケットに対して無効パケット判定が終了した場合(ステップ155:NO)、一連の無効フレーム判定処理を終了する。
【0078】
このように、本実施の形態では、無効フレーム判定手段12Cにより、各フレームのうち対象フレームを無効フレームと判定するとともに、フレーム構成で規定されているフレーム種別の並びに従って当該フレームの復号に用いる他のフレームに無効フレームが含まれている場合には当該フレームを無効フレームと判定するようにしたので、単に無効パケットの有無により無効フレームを判定する場合と比較して、実際のフレーム構成に応じて正確に無効フレームを判定できる。
【0079】
[各実施の形態の拡張]
以上の各実施の形態では、アプリケーション端末2が受信側であり、送信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)から送信されパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定する場合を例として説明したがこれに限定されるものではない。すなわち、アプリケーション端末2が送信側であり、受信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)でパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定することもできる。
【0080】
この場合には、ユーザ体感品質推定装置1の品質情報取得部11により、アプリケーション端末2のパケット送信部22で得られた品質情報を前述した送信品質情報として用いるとともに、アプリケーション端末2のパケット受信部21で受信した対向アプリケーション端末からの品質情報を前述した受信品質情報として用いればよい。
この際、対向アプリケーション端末でも同様のユーザ体感品質を推定する場合には、前述した品質情報通知部17でアプリケーション端末2のパケット送信部22で得られた送信品質情報を送信する代わりに、パケット受信部21で得られた受信メディア用パケットに関する受信品質情報を対向アプリケーション端末へ送信すればよい。
【0081】
なお、これら送受信品質情報は、直接、送信側と受信側との間でやり取りしてもよいが、これら品質情報を管理する品質管理サーバを介してやり取りするようにしてもよい。また、ユーザ体感品質推定装置1で、品質情報を直接受信するようにしてもよい。
【0082】
また、以上の各実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置1をアプリケーション端末2とは別個の装置で実現した場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リアルタイム系アプリケーションと並行してアプリケーション端末2で実行される品質推定アプリケーションにより実現してもよい。これにより、アプリケーション端末2のハードウェア資源を共用して実現でき、極めて容易にユーザ体感品質を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効再生時間算出処理を示すフローチャートである。
【図3】再生予定時刻の算出動作を示す説明図である。
【図4】再生時刻の算出動作を示す説明図である。
【図5】無効再生時間の算出動作を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置のユーザ体感品質推定処理を示すフローチャートである。
【図7】無効再生時間率とMOS値との関係を示す品質推定モデルである。
【図8】本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効パケット判定処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の無効フレーム判定処理を示すフローチャートである。
【図10】無効フレームの判定処理例である。
【符号の説明】
【0084】
1…ユーザ体感品質推定装置、11…品質情報取得部、12…品質解析部、12A…無効パケット判定手段、12B…対象フレーム識別手段、12C…無効フレーム判定手段、12D…時刻情報解析手段、12E…無効再生時間算出手段、12F…無効再生時間率算出手段、13…ユーザ体感品質推定部、14…品質推定モデル、15…品質推定値、16…推定結果通知部、17…品質情報通知部、2…アプリケーション端末、21…パケット受信部、22…パケット送信部、5…パケット網。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、前記受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置であって、
前記送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、前記受信側アプリケーション端末で受信した前記メディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報と、前記メディア用パケットに含まれている各種の時刻情報とを取得する品質情報取得部と、
前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて前記各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する前記無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析部と、
無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、前記品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、前記アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定部と
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記品質解析部は、
前記受信側アプリケーション端末における前記メディア全体のメディア再生開始時刻と前記メディア用パケットに含まれる当該フレームの再生時刻情報とから当該フレームの再生予定時刻を算出するとともに、前記メディア再生開始時刻と前記メディア用パケットの受信時刻とから当該フレームの実際の再生時刻を算出する時刻情報解析手段と、
当該フレームの前記再生予定時刻と前記再生時刻との時刻差からなる前記再生誤差時間が許容値を上回った場合に当該再生誤差時間を前記無効再生時間に加算するとともに、当該フレームが前記無効フレームの場合は前記再生予定時刻から次のフレームの再生予定時刻との時刻差からなる前記無効フレーム再生時間を前記無効再生時間に加算する無効再生時間算出手段と、
任意の評価期間に対する前記無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する無効再生時間率算出手段と
を有することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記品質解析部は、
前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて前記メディア用パケットのうち正常に受信できなかったパケットを無効パケットとして判定する無効パケット判定手段と、
前記送信品質情報に基づいて前記無効パケットに対応するフレームを対象フレームとして識別するフレーム識別手段と、
前記メディアの符号化に用いたフレーム構成と前記対象フレームとに基づいて、前記各フレームについて前記無効フレームか否かを判定する無効フレーム判定手段と
を有することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項4】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記無効パケット判定手段は、前記送信品質情報で送信が確認されたメディア用パケットのうち前記受信品質情報で受信が確認されていないメディア用パケット、および前記受信品質情報の各メディア用パケットの到着間隔を示す遅延揺らぎ時間が前記アプリケーションの許容パケット遅延時間を超えるメディア用パケットを前記無効パケットと判定することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記無効パケット判定手段は、前記受信品質情報で受信確認されたメディア用パケットの送信順序と受信順序とが矛盾するメディア用パケットを前記無効パケットと判定することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項6】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記フレーム識別手段は、前記送信品質情報に含まれる前記無効パケットのヘッダ情報から、前記対象フレームのフレーム番号およびフレーム種別を取得し、
前記無効フレーム判定手段は、前記各フレームのうち前記対象フレームを無効フレームと判定するとともに、前記フレーム構成で規定されているフレーム種別の並びに従って当該フレームの復号に用いる他のフレームに無効フレームが含まれている場合には当該フレームを無効フレームと判定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項7】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記品質情報取得部は、前記受信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信された前記送信側アプリケーション端末側からの品質情報を前記送信品質情報として取得するとともに、前記受信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信されたメディア用パケットから得られた品質情報を前記受信品質情報として取得することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項8】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記品質情報取得部は、前記送信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信された前記受信側アプリケーション端末側からの品質情報を前記受信品質情報として取得するとともに、前記送信側アプリケーション端末のパケット送信部で送信されたメディア用パケットから得られた品質情報を前記送信品質情報として取得することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項9】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記送信側アプリケーション端末のパケット送信部で得られた前記送信品質情報を前記受信側アプリケーション端末へ通知する品質情報通知部をさらに備えることを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項10】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記受信側アプリケーション端末のパケット受信部で得られた前記受信品質情報を前記送信側アプリケーション端末へ通知する品質情報通知部をさらに備えることを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項11】
パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、前記受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置で用いられるユーザ体感品質推定方法であって、
品質情報取得部により、前記送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、前記受信側アプリケーション端末で受信した前記メディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、
品質解析部により、前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて前記各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する前記無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析ステップと、
ユーザ体感品質推定部により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、前記品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、前記アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップと
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項12】
パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、前記受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置のコンピュータに、
品質情報取得部により、前記送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、前記受信側アプリケーション端末で受信した前記メディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、
品質解析部により、前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて前記各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する前記無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析ステップと、
ユーザ体感品質推定部により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、前記品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、前記アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップと
を実行させるプログラム。
【請求項1】
パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、前記受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置であって、
前記送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、前記受信側アプリケーション端末で受信した前記メディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報と、前記メディア用パケットに含まれている各種の時刻情報とを取得する品質情報取得部と、
前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて前記各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する前記無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析部と、
無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、前記品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、前記アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定部と
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記品質解析部は、
前記受信側アプリケーション端末における前記メディア全体のメディア再生開始時刻と前記メディア用パケットに含まれる当該フレームの再生時刻情報とから当該フレームの再生予定時刻を算出するとともに、前記メディア再生開始時刻と前記メディア用パケットの受信時刻とから当該フレームの実際の再生時刻を算出する時刻情報解析手段と、
当該フレームの前記再生予定時刻と前記再生時刻との時刻差からなる前記再生誤差時間が許容値を上回った場合に当該再生誤差時間を前記無効再生時間に加算するとともに、当該フレームが前記無効フレームの場合は前記再生予定時刻から次のフレームの再生予定時刻との時刻差からなる前記無効フレーム再生時間を前記無効再生時間に加算する無効再生時間算出手段と、
任意の評価期間に対する前記無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する無効再生時間率算出手段と
を有することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記品質解析部は、
前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて前記メディア用パケットのうち正常に受信できなかったパケットを無効パケットとして判定する無効パケット判定手段と、
前記送信品質情報に基づいて前記無効パケットに対応するフレームを対象フレームとして識別するフレーム識別手段と、
前記メディアの符号化に用いたフレーム構成と前記対象フレームとに基づいて、前記各フレームについて前記無効フレームか否かを判定する無効フレーム判定手段と
を有することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項4】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記無効パケット判定手段は、前記送信品質情報で送信が確認されたメディア用パケットのうち前記受信品質情報で受信が確認されていないメディア用パケット、および前記受信品質情報の各メディア用パケットの到着間隔を示す遅延揺らぎ時間が前記アプリケーションの許容パケット遅延時間を超えるメディア用パケットを前記無効パケットと判定することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記無効パケット判定手段は、前記受信品質情報で受信確認されたメディア用パケットの送信順序と受信順序とが矛盾するメディア用パケットを前記無効パケットと判定することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項6】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記フレーム識別手段は、前記送信品質情報に含まれる前記無効パケットのヘッダ情報から、前記対象フレームのフレーム番号およびフレーム種別を取得し、
前記無効フレーム判定手段は、前記各フレームのうち前記対象フレームを無効フレームと判定するとともに、前記フレーム構成で規定されているフレーム種別の並びに従って当該フレームの復号に用いる他のフレームに無効フレームが含まれている場合には当該フレームを無効フレームと判定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項7】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記品質情報取得部は、前記受信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信された前記送信側アプリケーション端末側からの品質情報を前記送信品質情報として取得するとともに、前記受信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信されたメディア用パケットから得られた品質情報を前記受信品質情報として取得することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項8】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記品質情報取得部は、前記送信側アプリケーション端末のパケット受信部で受信された前記受信側アプリケーション端末側からの品質情報を前記受信品質情報として取得するとともに、前記送信側アプリケーション端末のパケット送信部で送信されたメディア用パケットから得られた品質情報を前記送信品質情報として取得することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項9】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記送信側アプリケーション端末のパケット送信部で得られた前記送信品質情報を前記受信側アプリケーション端末へ通知する品質情報通知部をさらに備えることを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項10】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記受信側アプリケーション端末のパケット受信部で得られた前記受信品質情報を前記送信側アプリケーション端末へ通知する品質情報通知部をさらに備えることを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項11】
パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、前記受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置で用いられるユーザ体感品質推定方法であって、
品質情報取得部により、前記送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、前記受信側アプリケーション端末で受信した前記メディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、
品質解析部により、前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて前記各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する前記無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析ステップと、
ユーザ体感品質推定部により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、前記品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、前記アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップと
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項12】
パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像や音声などのメディアを符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、前記受信側アプリケーション端末で受信再生したメディアについてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置のコンピュータに、
品質情報取得部により、前記送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、前記受信側アプリケーション端末で受信した前記メディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、
品質解析部により、前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて前記各フレームに関する再生タイミングのずれを示す再生誤差時間と正常再生できなかった無効フレームに対応する再生期間を示す無効フレーム再生時間との合計を無効再生時間として算出し、任意の評価期間に対する前記無効再生時間の割合を無効再生時間率として算出する品質解析ステップと、
ユーザ体感品質推定部により、無効再生時間率とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、前記品質解析部で算出された無効再生時間率に対応するユーザ体感品質値を導出し、前記アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップと
を実行させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−329775(P2007−329775A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160330(P2006−160330)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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