説明

ヨーグルト系製品の製造方法

本発明は、ヨーグルト系製品の製造方法に関する。乳原料は通常、低温殺菌、脱気、均質化、及び場合によっては乾物調整によって前処理する。安定剤、及び場合によっては香味料を添加する。第1の菌培養物を乳原料に添加し、この乳原料を、培養期間の間、温度37〜45℃で保持する。その後、この製品を所定の期間の間、温度75〜110℃で加熱処理する。その後、第2の菌培養物を、この加熱処理したヨーグルト系製品に添加する。第2の菌培養物は、所与のpHを下回ると活性化しない種類のものでなければならない。完成品を無菌パックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーグルト系製品の製造方法であって、好ましくは低温殺菌、脱気、均質化、及び場合によっては乾物(DM)調整、並びに必要な安定剤、及び場合によっては香味料の添加によって乳原料を前処理し、その後第1の菌培養物を添加する際に乳原料を温度37〜45℃で保持し、その製品を培養期間置き、その後その製品を所定の期間の間、温度75〜110℃で加熱処理する、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルトは、世界中で販売されている、最も広く普及し、且つ最も人気のある発酵製品、又は培養製品の1つである。ヨーグルトは、多種多様なものが市販され、こうしたバリエーションは、地域によって幾分異なり得る。ヨーグルトの最も一般的な主流タイプは、パッケージ内部で発酵させた、いわゆる「セット・タイプ」ヨーグルトと、タンク内で発酵させ、その後パックした、いわゆる「撹拌タイプ」ヨーグルトである。別の大きなグループは、ドリンク・ヨーグルトである。果実、液果類、又は他の香味料を添加することによって、おおよそ無限に多様な種類を得ることができる。
【0003】
ヨーグルトは、前処理した乳原料から製造され、こうした乳原料に、菌培養物が37から45℃の間の温度で添加されている。培養期間後、上記で概略的に示したタイプのうち1つのヨーグルト完成品が得られる。ヨーグルト完成品はその後、冷却され、冷蔵保存しなければならない。このことは、最終製品が生きたヨーグルト菌を含むことを意味する。ある国では、用語「ヨーグルト」は、生きたヨーグルト菌を含む製品、すなわち最終製品が加熱処理されていないものだけに使用されることがある。かかるヨーグルトは、保存期間が限られ、冷蔵で保存し、流通させなければならない。
【0004】
発酵後、加熱処理されたヨーグルトは通常、ヨーグルト系製品と呼ばれる。製品を約60℃で加熱処理した場合、恐らくはヨーグルト菌の全てが死滅するわけではないが、保存期間が長期化することになり、それでもやはり、冷蔵保存が必要となる。75から110℃の間の加熱処理では、製品中に生きたヨーグルト菌がもはや存在しなくなるが、製品の保存期間は、室温保存でも大幅に長くなっている。
【0005】
生きたヨーグルト菌の好ましい作用からの利益を享受することができ、それと同時に保存期間が長期のヨーグルト系製品を供給することができるように、生きたヨーグルト菌を含む飲用ストロー、ライフ・トップ(Life Top)(登録商標)が長らく販売されてきている。この飲用ストローは、ヨーグルトを飲むためのものであり、この製品を吸い込むと、ユーザは、飲用ストロー内部に保護されていた有益なヨーグルト菌もやはり吸い込むことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、保存期間が長期の、ヨーグルト菌等の生きた乳酸菌をパッケージ内に既に含有したヨーグルト系製品の製造方法を実現することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、「撹拌タイプ」ヨーグルト、及びドリンク・ヨーグルトのヨーグルト系製品のどちらの製造にも使用することができる方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記及びその他の目的は、前置きとして説明した方法において、ある所定のpHを下回ると活性化しない種類の第2の菌培養物を、加熱処理したヨーグルト系製品に添加し、その後、この製品を無菌パックするという特有の特徴を有することで、本発明によって達成される。
【0009】
本発明の好ましい実施例は、添付の従属請求項に記載の特有の特徴をさらに有する。
【0010】
次に、本発明による方法の好ましい一実施例を、添付の図面を参照しながら以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】「撹拌タイプ」のヨーグルト系製品を製造する流れ図である。
【図2】ドリンク・ヨーグルト・タイプのヨーグルト系製品を製造する流れ図である。
【図3】菌培養物の成長を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面には、本発明の理解に重要である詳細しか示されていない。
【0013】
図1は、「撹拌タイプ」と呼ばれるタイプ、すなわちヨーグルトをタンク内で発酵させ、その後完成品をパックするタイプのヨーグルト系製品を製造する流れ図である。良質の乳から成る原料を、本発明による方法を実施するプラントに投入する。乳は、導管1を介してプラントに投入される。
【0014】
乳中の乾物(DM)を調整する必要がある場合には、粉乳、或いはタンパク質粉末をタンク2から混ぜることが可能である。乳と粉乳とは、ミキサ3内で共に混合され、タンク4を循環し、したがって粉乳との混合が継続して行われることになる。乾物(DM)含有量を調整する他の方法には、蒸発、或いは膜ろ過がある。通常、安定剤もやはりこの工程で添加される。
【0015】
約60℃に加熱した乳原料をその後、脱気容器5に通過させ、これは粉乳を添加する際に恐らく混入し得た空気を除去するためである。脱気工程によって、完成品の粘度及び安定性が向上し、また、乳原料を連続して処理し易くなる。
【0016】
その後、乳脂の凝固を防止し、且つ安定した均質な製品を得るために、乳原料をホモジナイザ6内で均質化する。
【0017】
均質化後、乳原料を90〜95℃までで5分間、或いは120℃で2分間加熱する。他の時間/温度の組合せもやはり可能である。加熱は通常、プレート熱交換器7で行うが、他のタイプの熱交換器もやはり使用することができる。加熱は、乳清タンパク質を変性させるために必要である。この結果、より安定した凝固物が得られ、また、完成品内での乳清分離を回避することができる。
【0018】
加熱処理後、乳原料を37〜45℃、好ましくは43℃まで冷却する。次に、ヨーグルト菌等の乳酸菌の第1の菌培養物を乳原料に添加する。菌培養物は、凍結乾燥させたものでも、又は急速冷凍したものでもよく、多種多様な菌培養物が市販されている。乳酸菌は、菌培養物を備えた小型容器8に乳原料を通過させてライン中で添加するか、又は菌培養物を1つ又は複数の培養タンク9に手動で添加する。菌培養物が添加された乳原料は、温度37〜45℃、好ましくは43℃で維持された培養タンク9内にある間、発酵する。培養時間は通常、3から5時間であり、使用する菌培養物に依存する。
【0019】
製品の所望のpHに達すると、冷却によって発酵を停止する。一般的なpHは、4.0〜4.5である。この製品を、熱交換器10内で約20℃まで冷却する。熱交換器10は、通常はプレート熱交換器であるが、他のタイプの熱交換器もやはり使用することができる。その後、製品は、1つ又は複数のバッファ・タンク11に搬送される。
【0020】
製造工程の次のステップは、製品の加熱処理である。製品を75〜110℃まで加熱し、この温度で、所与の所定期間の間保持する。好ましくは、90℃で20秒間保持する。製品がより酸性になるほど、必要となる温度はより低くなる。加熱は通常、プレート熱交換器12で行うが、他のタイプの熱交換器もやはり使用することができる。この最終の製品の加熱処理の結果、存在し得たいかなる酵母又は真菌胞子も死滅することになり、これらの菌は通常、保存期間の劣化の原因となる。ヨーグルト菌もやはり死滅し、結果として得られる製品は、いわゆるヨーグルト系製品である。この製品は、室温で保存することができ、或いは冷蔵で非常に長期間保存することができる。
【0021】
ヨーグルト加熱時に天然凝固剤が無効になり、保存すると乳清が製品から分離する。こうした分離を回避するために、安定剤、通常は澱粉を主原料とした安定剤を添加する必要がある。安定剤の混合は、乾物(DM)調整について上記で説明した形と同様に行うが、工程の後半で、最終の加熱処理の前に行ってもよい。
【0022】
場合によってはバッファ・タンク13内で中間保存した後、果実、ジャム、又は他の香味料を、タンク14からヨーグルト系製品に添加することができる。その後、添加した香味料が製品中で一様に分散するように、製品をミキサ15に通過させる。或いは、果実、ジャム、又は他の香味料を、最終の加熱処理前に添加してもよい。
【0023】
その後、第2の菌培養物を、導管16内でヨーグルト系製品に直接添加する。この混合は無菌状態で行われ、第2の菌培養物は、テトラ・フレックス・ドース(Tetra Flex Dose)(登録商標)等、何らかの形の無菌注入装置17によって添加することができる。第2の菌培養物は、あるpHを下回ると活性化しない、すなわち発酵しない種類のものでなければならない。pHが4.0〜4.5でその活動が停止するヨーグルト菌の種類は、マイルド・ヨーグルト菌と呼ばれるが、pHが4.0〜4.5で発酵が停止する他の菌培養物もやはり使用することができる。
【0024】
第2の菌培養物の注入後、完成品は充填機18に搬送され、無菌パッケージに無菌パックされる。
【0025】
このヨーグルト系製品は、第1の菌培養物の発酵が停止し、その後その製品を加熱処理した際に、pHが4.0〜4.5であったので、第2の菌培養物は、パッケージ内で発酵できないように選択しなければならない。言い換えれば、第2の菌培養物は、第2の菌培養物を添加する前のヨーグルト系製品のpH以下で活性化してはならない。
【0026】
図3は、2つの菌培養物の成長を経時的に示す。実線の曲線20は、第1の菌培養物の成長を示す。この成長は、鎖線21で示す所望のレベルで発酵が停止している点で、停止している。第2の菌培養物の成長もまた、破線の曲線22で示す。破線のpHと、第2の菌培養物がもはや活性化しなくなるpHとの間隔Aは、0〜0.5でよい。
【0027】
市販用に殺菌されていると考えることができるこのヨーグルト系製品完成品は、有益な、生きたヨーグルト菌を含む。この製品は、室温で保存することができ、或いは冷蔵で長期保存することができる。
【0028】
図2は、ドリンク・ヨーグルト・タイプのヨーグルト系製品を製造する流れ図である。良質の乳から成る原料を、本発明による方法を実施するプラントに投入する。乳は、導管1を介してプラントに投入される。
【0029】
乳中の乾物(DM)を調整する必要がある場合には、粉乳、或いはタンパク質粉末をタンク2から混ぜることが可能である。乳と粉乳とは、ミキサ3内で共に混合され、タンク4を循環し、したがって粉乳との混合が継続して行われることになる。乾物(DM)含有量を調整する他の方法には、蒸発、或いは膜ろ過がある。
【0030】
約60℃に加熱した乳原料をその後、脱気容器5に通過させ、これは粉乳を添加する際に恐らく混入し得た空気を除去するためである。脱気工程によって、完成品の粘度及び安定性が向上し、また、乳原料を連続して処理し易くなる。
【0031】
その後、乳脂の凝固を防止し、且つ安定した均質な製品を得るために、乳原料をホモジナイザ6内で均質化する。
【0032】
均質化後、乳原料を90〜95℃までで5分間、或いは120℃で2分間加熱する。他の時間/温度の組合せもやはり可能である。加熱は通常、プレート熱交換器7で行うが、他のタイプの熱交換器もやはり使用することができる。加熱は、乳清タンパク質を変性させるために必要である。この結果、より安定した凝固物が得られ、また、完成品内での乳清分離を回避することができる。
【0033】
加熱処理後、乳原料を37〜45℃、好ましくは43℃まで冷却する。次に、ヨーグルト菌等の乳酸菌の第1の菌培養物を乳原料に添加する。菌培養物は、凍結乾燥させたものでも、又は急速冷凍したものでもよく、多種多様な菌培養物が市販されている。乳酸菌は、菌培養物を備えた小型容器8に乳原料を通過させてライン中で添加するか、又は菌培養物を1つ又は複数の培養タンク9に手動で添加する。菌培養物が添加された乳原料は、温度37〜45℃、好ましくは43℃で維持された培養タンク9内にある間、発酵する。培養時間は通常、3から5時間であり、使用する菌培養物に依存する。
【0034】
製品の所望のpHに達すると、冷却によって発酵を停止する。一般的なpHは、3.8〜4.5である。この製品を、熱交換器10内で約20℃まで冷却する。熱交換器10は、通常はプレート熱交換器であるが、他のタイプの熱交換器もやはり使用することができる。その後、製品は、1つ又は複数のバッファ・タンク11に搬送される。ドリンク・ヨーグルトには、ほとんどの場合砂糖が添加されているので、ドリンク・ヨーグルトは、他のタイプのヨーグルトよりも低いpHを有することがある。
【0035】
この製品をバッファ・タンク11内に配置すると、安定剤が通常は添加される。ドリンク・ヨーグルトには通常、ペクチンが主原料の安定剤を水に溶解させたものが使用される。他の種類の安定剤もやはり使用することができる。安定剤は、例えば高速ミキサ19内で製品に混合する。それと同時に、砂糖、並びに芳香性物質又は果汁等の所望の香味料を添加する。
【0036】
製造工程の次のステップは、製品の加熱処理である。製品を75〜110℃まで加熱し、この温度で、所与の所定期間の間保持する。好ましくは、90℃で20秒間保持する。製品がより酸性になるほど、必要となる温度はより低くなる。加熱は通常、プレート熱交換器12で行うが、他のタイプの熱交換器もやはり使用することができる。この最終の製品の加熱処理の結果、存在し得たいかなる酵母又は真菌胞子も死滅することになり、これらの菌は通常、保存期間の劣化の原因となる。ヨーグルト菌もやはり死滅し、結果として得られる製品は、いわゆるヨーグルト系製品である。この製品は、室温で保存することができ、或いは冷蔵で非常に長期間保存することができる。
【0037】
その後、第2の菌培養物を、導管16内でヨーグルト系製品に直接添加する。この混合は無菌状態で行われ、第2の菌培養物は、テトラ・フレックス・ドース(登録商標)等、何らかの形の無菌注入装置17によって添加することができる。第2の菌培養物は、あるpHを下回ると活性化しない、すなわち発酵しない種類のものでなければならない。pHが4.0〜4.5でその活動が停止するヨーグルト菌の種類は、マイルド・ヨーグルト菌と呼ばれるが、pHが4.0〜4.5で発酵が停止する他の菌培養物もやはり使用することができる。
【0038】
第2の菌培養物の注入後、完成品は充填機18に搬送され、無菌パッケージに無菌パックされる。
【0039】
このヨーグルト系製品は、第1の菌培養物の発酵が停止し、その後その製品を加熱処理した際に、pHが3.8〜4.5であったので、第2の菌培養物は、パッケージ内で発酵できないように選択しなければならない。言い換えれば、第2の菌培養物は、第2の菌培養物を添加する前のヨーグルト系製品のpH以下で活性化してはならない。
【0040】
市販用に殺菌されていると考えることができるこのヨーグルト系製品完成品は、有益な、生きたヨーグルト菌を含む。この製品は、室温で保存することができ、或いは冷蔵で長期保存することができる。
【0041】
前述の説明から明白となったように、本発明は、ヨーグルト菌等の生きた乳酸菌を有するヨーグルト系製品を製造する方法を実現する。この製品は、市販用に殺菌されており、室温保存、又は冷蔵で非常に長期間保存することができる。この製品は、第2の菌培養物を添加した結果、ヨーグルト菌等の生きた乳酸菌を含む。市販用に殺菌された、生きた乳酸菌を有するヨーグルト系製品の製造方法は、「撹拌タイプ」ヨーグルト、及びドリンク・ヨーグルトのどちらにも使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーグルト系製品の製造方法であって、好ましくは低温殺菌、脱気、均質化、及び場合によっては乾物(DM)調整、並びに必要な安定剤、及び場合によっては香味料の添加によって乳原料を前処理し、その後第1の菌培養物を添加する際に前記乳原料を温度37〜45℃で保持し、前記製品を培養期間置き、その後前記製品を所定の期間の間、温度75〜110℃で加熱処理する方法において、第2の菌培養物を、前記加熱処理したヨーグルト系製品に添加し、前記培養物が、所与の所定のpHを下回ると活性化しない種類のものであり、その後、前記製品を無菌パックすることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記所定のpHが、前記第2の菌培養物を添加する前の前記ヨーグルト系製品のpHと同じ、又はそれよりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の菌培養物が、pHが4.0〜4.5を下回ると活性化しないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の菌培養物が、いわゆるマイルド培養物から成ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱処理が、温度90℃で20秒間行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−530489(P2012−530489A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516031(P2012−516031)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【国際出願番号】PCT/SE2010/000139
【国際公開番号】WO2010/147530
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(591007424)テトラ ラバル ホールデイングス エ フイナンス ソシエテ アノニム (190)
【Fターム(参考)】