ヨー角制御機構
【課題】本発明は、ヨー角を接線方向に一定に維持することができるヨー角制御機構を実現することを目的としている。
【解決手段】スライダ25と、該スライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するMA33と、前記スライダ25とサスペンションアームを回転駆動させるVCM22とを有し、前記MA制御系は、検出したトラックナンバと、ヨー角を一定にするバイアス電流を格納しているヨー角補正テーブル32を有し、MA33でのFB系を構成し、前記VCM制御系は、位置誤差制御器21の出力電流をVCM22への入力とし、検出した位置誤差を出力とするFB制御系を構成し、更に、発生した外乱を補償するための外乱補償電流を格納する外乱補償テーブル31を有し、前記再生ヘッドで検出したトラックナンバに基づいた外乱補償電流を前記位置誤差制御器21の出力電流にFFで加算することで、位置決めを行なうように構成する。
【解決手段】スライダ25と、該スライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するMA33と、前記スライダ25とサスペンションアームを回転駆動させるVCM22とを有し、前記MA制御系は、検出したトラックナンバと、ヨー角を一定にするバイアス電流を格納しているヨー角補正テーブル32を有し、MA33でのFB系を構成し、前記VCM制御系は、位置誤差制御器21の出力電流をVCM22への入力とし、検出した位置誤差を出力とするFB制御系を構成し、更に、発生した外乱を補償するための外乱補償電流を格納する外乱補償テーブル31を有し、前記再生ヘッドで検出したトラックナンバに基づいた外乱補償電流を前記位置誤差制御器21の出力電流にFFで加算することで、位置決めを行なうように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヨー角制御機構に関し、更に詳しくは磁気ディスク装置におけるヘッドスライダのヨー角を制御するヨー角制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直磁気記録方式においては、単磁極型記録ヘッドと裏打ち層を持つ媒体によって磁気回路が構成され、データが記録される。この場合、記録ヘッドのヨー角がトラックの接線方向に対して大きく傾くと、隣接トラックに記録痕跡(サイドフリンジ)が残り、トラック密度を詰めることができなくなり、問題となる。
【0003】
図7は垂直磁気記録方式の説明図である。(a)は垂直断面図、(b)は平面図である。(a)において、Sは磁界のS極、Nは磁界のN極である。1は記録痕跡である。(b)において、Sは磁界のS極、Nは磁界のN極である。この記録痕跡1のために、トラック密度をこれ以上詰めることができないため、トラック密度を 詰めることができなくなる。
【0004】
このため、記録ヘッドの主磁極形状を逆台形になるように、±10〜20度程度テーパ状にカットしている。通常、カットした分だけ出力が出なくなる。今後、狭コア幅が進むと、主磁極の形状は逆三角形になり、一層出力が出なくなり、記録できなくなることが懸念されている。
【0005】
また、高速アクセスに対応してアーム長が短かくなる傾向にあり、ますますヨー角が大きくなることが予想され、記録ヘッドにテーパカットによる出力ダウンが大きな問題に発展する可能性がある。
(受動型)
この種の受動型の装置としては、スライダの後端部に垂直尾翼を設け、ジンバルバネで支持されることにより、ヨー角を自己補正するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。また、スライダ側面をカットして風受け面を設け、ベアリングなどの回転機構を介してサスペンションと結合することによりヨー角を自己補正する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
(能動型)
一方、この種の能動型の装置としては、マイクロアクチュエータ(MA)により、トラック方向に対してヨー角が一定(0度の場合は、接線方向に向く)になるようにする。ヨー角は、ディスク上に記録されているトラックナンバを再生ヘッドにより検知して、MAへの電流をフィードフォワード(FF)で与えてヨー角の一定制御を実現している。例えば、スライダ流入端が風上(トラックの接線方向)に向くのに十分な一定電流を与え続ければ、ヨー角をゼロに維持することができる。
【0006】
従来のこの種の装置としては、MAとしてサスペンションの根元にアクチュエータを設けることでヨー角を制御している(例えば特許文献2,特許文献3参照)。また、スライダとサスペンションの結合部にアクチュエータを設ける(スライダ駆動型)でヨー角を制御している(例えば特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平3−119581号公報(第3頁左上欄第1行〜同頁左下欄第6行、第1図〜第3図)
【特許文献2】特開2001−101633号公報(段落0002〜0032、図1〜図5)
【特許文献3】特開平6−314479号公報(段落0011〜0018、図1〜図6)
【特許文献4】特開平9−231538号公報(段落0022〜0027、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(受動型の装置の場合)
前記受動型の装置の場合、ヘッドと回転軸との位置関係については、何も言及されておらず、回転軸がヘッドコア幅の中心線からオフセットしていると、サーボパターンへのオントラック状態では、オフセット分だけ外乱となり、数10ナノオーダの位置決めを達成しようとしている状況において、精度に悪影響を及ぼす。
【0008】
図8はスライダとディスクとの関係を示す図である。図において、2はディスク、3はアーム、4は該アーム3の先端部に取り付けられたスライダである。この時、スライダ4はアーム3により、図の矢印で示す方向に回転させられる。図9はスライダの動作を真上から見た図である。(a)はスライダが回転していない状態を示している。図8と同一のものは、同一の符号を付して示す。3はアーム、4は該アーム3の先端に取り付けられたスライダ、5は垂直尾翼、6はスライダ4の回転軸、7はアーム3の回転軸である。8はディスクの回転により発生する風である。9はスライダ4に設けられたヘッドである。
【0009】
アーム3が(b)のように回転すると、垂直尾翼5及び側面カット部(図示せず)は、ディスクの回転により発生する風を受け、スライダ4は回転軸6を中心に回転して流入端が風上に向いて(c)に示すように、ヨー角を0(トラックの接線方向)に維持する。(b)において、10はヘッドコア幅の中心線である。
【0010】
図10はスライダの動作を真上から見た図である。(a)はアーム3の垂直2等分線とヘッドコア幅の中心線10とが一致している状態を示している。(b)はアーム3とスライダ4が一緒に傾いた状態を示している。(c)はアーム3が更に回転し、ヘッドコア幅の中心線10と回転軸6との間にオフセットΔが発生した状態を示している。この不具合を直すため、図の(c)に示すように、矢印方向の力を与えてやると、スライダ4の回転軸6がヘッドコア幅の中心線に一致している。
【0011】
図11はスライダの動作を上から見た図である。図は、ヘッドコア幅の中心線とアームの中心線との間にオフセットがある場合を示している。(a)はヘッドコア幅の中心線とアーム3の中心線との間(左側)に一定のオフセットΔがあり、停止した状態を示している。これが(b),(c)と変化していく。この場合において、風8の力によりスライダ4は(c)に示すように傾いていない状態となる。この時のアーム3の一辺に矢印で示すような力を加えることにより、(d)に示すように回転軸6はヘッドコア幅の中心線10に近づく。
【0012】
図12はスライダの動作を上から見た図である。図11と同一のものは、同一の符号を付して示す。この図は、ヘッドコア幅の中心線とアーム3の中心線との間(右側)に一定のオフセットΔがある場合を示している。アーム3が図に示すように回転している間に風8の作用により、スライダ4は力を受け、最終的には(d)に示すような位置状態となる。
(能動型装置の場合)
この場合は、アクチュエータによりヨー角を一定にする具体的な制御手段について、全く言及していない。また、MAへの電流をフィードフォワード(FF)してヨー角を接線方向に一定に維持する場合、回転軸がヘッドコア幅の中心線上からオフセットしていると、サーボパターンへのオントラック状態では、オフセット分だけ外乱となり、数10ナノオーダの高精度位置決めを実現することはできない。即ち、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとの2つの仕様とを両立させることができないという問題があった。
【0013】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとを両立させることができるヨー角制御機構を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)請求項1記載の発明は、記録ヘッドと再生ヘッドとによりなるヘッド部と、風受け部を有するヘッドスライダと、該ヘッドスライダは回転部を介してサスペンションアームに結合している磁気ディスク装置において、前記ヘッドスライダの回転軸は再生ヘッドコア幅中心の真上に配置されてサスペンションアームに結合していることを特徴とする。
【0015】
(2)請求項2記載の発明は、前記回転部において、回転軸がボールベアリング或いはドライベアリングで支持されていることを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、記録ヘッドと再生ヘッドを有するヘッドスライダと、該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転駆動させるボイスコイルモータと、を有する磁気ディスク装置において、前記マイクロアクチュエータ制御系は、再生ヘッドで検出したトラックナンバと、それに応じてヨー角を一定にするバイアス電流を格納しているヨー角補正テーブルを有し、そのバイアス電流を入力として駆動されるマイクロアクチュエータで構成し、前記ボイスコイルモータ制御系は、位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とし、再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードバック制御系を構成し、更に、ヨー角を一定にすることで発生した外乱を補償するための外乱補償電流を格納する外乱補償テーブルを有し、前記再生ヘッドで検出したトラックナンバに基づいた外乱補償電流を前記位置誤差制御器の出力電流に加算することを特徴とする。
【0016】
(4)請求項4記載の発明は、記録ヘッドと再生ヘッド及び垂直尾翼を有するヘッドスライダと、該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、目標値とフィードバック信号との差をとり、ボイスコイルモータの位置誤差を制御する位置誤差制御器と、前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転移動させるボイスコイルモータとを有する磁気ディスク装置において、前記垂直尾翼の両面に各々圧力センサが貼り付けられ、マイクロアクチュエータ制御系は、圧力差制御器の出力電流をマイクロアクチュエータへの入力とし、左右の圧力センサの差を出力とするフィードバック制御系と、前記位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とし、前記再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードバック制御系とを有し、更にヨー角を一定にすることで発生した外乱を補償するための外乱補償電流を格納する外乱補償テーブルを有し、再生ヘッドで検出したトラックナンバに基づいた外乱補償電流を位置誤差制御器の出力電流に加算することを特徴とする。
【0017】
(5)請求項5記載の発明は、記録ヘッドと再生ヘッド及び垂直尾翼を有するヘッドスライダと、該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転駆動させるボイスコイルモータと、を有する磁気ディスク装置において、前記垂直尾翼の両面に各々圧力センサが貼り付けられ、圧力差補正制御器の出力電流を入力とし、位置誤差制御器の出力電流をマイクロアクチュエータへの入力とし、かつ左右の圧力センサの差と再生ヘッドの位置誤差を2出力とし、マイクロアクチュエータ系とボイスコイルモータ系への電流値を係数Sで重み付けして制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
(1)請求項1記載の発明によれば、ヘッドスライダの回転軸を、再生ヘッドコア幅中心の真上に配置されてサスペンションアームに結合していることにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとを両立させることができる。
【0019】
(2)請求項2記載の発明によれば、前記回転軸がボールベアリングで支持されているようにすることで、ヘッドスライダを滑らかにスライドさせることができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、再生ヘッドで検出したトラックナンバと、それに応じてヨー角を一定にするバイアス電流を格納しているヨー角補正テーブルと、ヨー角を一定にすることで発生した外乱を補償する外乱補償電流を格納する外乱補償テーブルを用いて、前記ヨー角補正テーブルを用いたマイクロアクチュエータによる制御と、外乱補償テーブルを用いたボイスコイルモータによる位置決めを行なうことにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとを両立させることができる。
【0020】
(4)請求項4記載の発明によれば、垂直尾翼の両面に貼り付けられた圧力センサの差を出力とするフィードバック制御系と、再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードバック制御を組み合わせることで、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めを両立させることができる。
【0021】
(5)請求項5記載の発明は、ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータを設け、このマイクロアクチュエータにより、該マイクロアクチュエータは、圧力差補正制御器の出力電流を入力とし、位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とすると共に、マイクロアクチュエータサーボ系とボイスコイルモータ系への電流値を係数Sで重み付けすることにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めを両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(受動型)
ヘッドコア幅の中心線と回転軸とのオフセットによる外乱をなくすために、回転軸をヘッドコア幅の中心線の真上に配置する。
(能動型)
再生ヘッドを用いて、ディスクのサーボ領域に記憶されているトラックナンバを読み取り、その半径位置でヨー角をゼロにするためのバイアス電流をヨー角ゼロ補正テーブルから参照してMA(マイクロアクチュエータ)に与える。ここで、ヘッドスライダ(以下単にスライダと略す)の位置決め制御系として、ボイルコイルモータ(VCM)を1入力とし、位置誤差を1出力とするフィードフォワード制御系を構成する。VCM制御系では、位置誤差を打ち消す電流をトラックナンバに応じた値を外乱補償テーブルから参照して、フィードフォワード(以下単にFFと略する)で重畳する。これによって、ヨー角をゼロにすることで発生した外乱を補償する。
(能動型+圧力センサ)
スライダ上に風を受ける部分(垂直尾翼、スライダ側面、左右張り出し)を設ける。また、風受け部の左右に圧力センサを貼り付ける。そして、圧力センサの差が0となるように、MAをフィードバック制御する。MAとしては、サスペンション駆動型、スライダ駆動型、ヘッド駆動型等が考えられる。
1)左右圧力センサの差が0となるように、スライダが回転軸を中心に回転して流入端が風上(トラックの接線方向)に向いてヨー角をゼロに維持することと、
2)数10ナノオーダの高精度位置決めを実現することの2つの仕様の両立を図るために、一つの手段として、圧力差についてはMAで、位置誤差についてはVCMで補償するフィードバック系を構成する。他の手段としては、MAとVCMを2入力とし、圧力差と位置誤差を2出力とするハイブリッド・制御系を構成する。そして、1)と2)の仕様のバランスを重み係数Sで調節する。
【0023】
次に、実施例について説明する。
(受動型)
以下、実施の形態について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。図において、20は目標値とフィードバック信号との差分を偏差として取り出す第1の演算器、21は該演算器20の偏差出力を受けて位置誤差を制御するための補正信号(VCM電流信号)を出力する位置誤差制御器、22はVCM電流信号を受けるVCM(ボイス・コイル・モータ)、23は該VCM22で回転させられるアーム系である。
【0024】
24はスライダに取り付けられ、スライダのヨー角を制御する垂直尾翼である。25は該アーム系23の出力で回転させられるスライダとヘッド(以下単にスライダという)である。26は接線方向信号とスライダ25から出力されるヨー角信号を受けて差信号をとる第2の演算器で、その出力は前記垂直尾翼24に風外乱として与えられる。
【0025】
スライダ25からはヘッド位置信号が出力される。27はこのヘッド位置信号と外乱との信号を演算する第3の演算器である。該演算器27の出力は、前記演算器20にフィードバック信号として与えられるようになっている。スライダ25には、再生ヘッドコア幅の垂直2等分線上に垂直尾翼が取り付けられている。また、スライダ25は、風外乱を風受け部(図示せず)を介して受けるようになっている。
【0026】
このスライダ25は、ジンバルを介してサスペンションに結合している。ここで、スライダ25の回転軸は、再生ヘッドコア幅中心の真上に配置され、回転軸はジンバルの十字バネの中心に結合している構成とする。ここで、回転軸にはボールベアリングが組み込まれている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0027】
第1の演算器20は、目標値とスライダ25のヘッド位置を示す信号とを受けて、その差分を演算する。位置誤差制御器21は、この差分(偏差)を受けてVCM22を制御するためのVCM電流を出力する。VCM22は、このVCM電流信号に応じてアーム系23を回転移動させる。この結果、スライダ25の位置が移動し、移動後のヘッド位置を出力する。
【0028】
第3の演算器27は、スライダ25からのヘッド位置信号を受けて、その出力を制御信号として第1の演算器20にフィードバックする。また、垂直尾翼24には、風の外乱が当たり、垂直尾翼24がヨー角を0になるような動作を行なう。この結果、スライダ25の回転軸を、再生ヘッドコア幅中心の真上に配置されてサスペンションアームに結合していることにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとを両立させることができる。
【0029】
また、本発明によれば、スライダの回転軸にボールベアリングを用いることで、該ボールベアリングで支持されているようにすることで、スライダを滑らかにスライドさせることができる。
(能動型)
図2は本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、20は目標値と演算器27からのフィードバック信号とを受けてその差分(偏差)を演算する第1の演算器である。21は該演算器20の出力(偏差出力)を受けて、位置誤差を制御するための補正信号(VCM電流信号)を出力する位置誤差制御器、22はVCM電流信号を受けるVCM(ボイス・コイル・モータ)、23は該VCM22で回転させられるアーム系である。
【0030】
25は前記アーム系23により回転させられるスライダとヘッド(以下単にスライダという)である。26は接線方向信号とスライダ25から出力されるヨー角信号を受けて差信号をとる第2の演算器である。スライダ25からはヘッド位置信号が出力される。27はこのヘッド位置信号と外乱との信号を演算する第3の演算器である。該演算器27の出力は、前記演算器20にフィードバック信号として与えられるようになっている。
【0031】
32はヨー角と該ヨー角を0にするためのバイアス電流が記憶されているヨー角補正テーブル、33は該ヨー角補正テーブル32の出力を受けるMA(マイクロアクチュエータ)で、その出力はスライダ25を駆動するようになっている。該ヨー角補正テーブル32は、スライダ25からのトラックナンバをアドレスとして受けている。31は位置誤差と該位置誤差を打ち消すための電流を記憶する外乱補償テーブルである。この外乱補償テーブル31は、スライダ25からトラックナンバをアドレスとして受けている。
【0032】
30は位置誤差制御器21の出力と、外乱補償テーブル31の出力とを受けて所定の演算を行なう第4の演算器である。27はスライダ25の出力と外乱とを受けて前記第1の演算器20にフィードバック信号を与える第3の演算器である。このように構成された装置の動作を図3に示すフローチャートを参照しながら説明すれば、以下の通りである。
【0033】
図3のフローチャートは、ヨー角ゼロ制御と、外乱補償制御とから構成されている。先ず、ヨー角ゼロ制御について説明する。先ず、再生ヘッド(図示せず)を用いて、ディスクのサーボ領域に記録されているトラックナンバを読み取る(S0)。続いて、ヨー角をゼロにするためのバイアス電流をヨー角補正テーブル32をトラックナンバによりアクセスして読み取り(S2)、補正電流をMA駆動アンプ(図示せず)に入力する(S2)。MA33は、スライダ25を回転させ、ヘッドが接線方向に向くように動作する(S3)。
【0034】
次に、外乱補償制御について説明する。VCM制御系の動作は、ヘッドスライダの位置決め制御系として、VCMへの電流を1入力とし、位置誤差を1出力とするフィードバック制御系を構成する。このため、VCM制御系(外乱補償制御系)では、位置誤差を打ち消す電流を外乱補償テーブル31をトラックナンバでアクセスして読み出し(S4)、この読み出した外乱補償データを第2の演算器4にフィードフォワードで入力し、位置誤差制御器21の出力に重畳してやる(S5)。そして、VCM駆動アンプに補償電流を入力してやり(S6)、サスペンションアームを回転させ、位置誤差を修正する(S7)これによって、ヨー角を0にすることで発生した外乱を補償する。
【0035】
図4はスライダの動作を真上から見た図である。ここで、(a)は静止状態における図を示している。3はアーム、4はスライダ、6はスライダ4の回転軸、7はアーム3の回転軸、8は風、33はスライダ回転軸6とヘッド9間に設けられたマイクロアクチュエータ(MA)である。
【0036】
(b)は回転の開始状態、(c)はスライダ4が回転を終了し、アーム3の回転軸とスライダ4の回転軸6との間にオフセットが発生した状態を示している。Aがアーム3の回転軸、Bがスライダ4の回転軸である。この点AとBの間のオフセットが外乱になる。図中スライダの回転軸6が正しい位置に回転され、アーム3の回転軸はこのような場合は、アーム3を回転させて、(d)に示すような中心線10が一致する配置関係となる。
【0037】
ここで、ヨー角補正テーブル32では、ヨー角φをゼロにするためのMA33へのバイアス電流Imaは、トラックナンバからその半径位置rを算出し、その時のヨー角φを計算する。ヨー角φはrの関数φ=f(r)になる。ここで、
MAへのバイアス電流Ima(φ)=Ima(f(r))
として、予め計算してテーブルを作成することができる。
【0038】
また、外乱補償テーブル31では、ヨー角をゼロにしたことによって発生する外乱量dは、やはりφの関数となる。φはrの関数φ=f(r)でもあることから、dによる位置誤差を打ち消す外乱補償電流Ivcmは、VCM22への
外乱補正電流Ivcm(d(φ))=Ivcm(d(f(r)))
として、予めテーブルを作成しておくことができる。
【0039】
この実施の形態によれば、再生ヘッドで検出したトラックナンバと、それに応じてヨー角を一定にするバイアス電流を格納しているヨー角補正テーブル32と、ヨー角を一定にすることが発生した外乱を補償する外乱補償電流を格納する外乱補償テーブル31を用いて、前記ヨー角補正テーブル32を用いたマイクロアクチュエータ33によるフィードフォワードバック制御と、外乱補償テーブル31を用いたフィードフォワードによる位置決めを行なうことにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとを両立させることができる。
(能動型+圧力センサ)
図5は本発明の第3の実施の形態を示す構成図である。図1,図2と同一のものは、同一の符号を付して示す。図に示す実施の形態は、ヘッド位置調整系に、垂直尾翼に基づくヨー角制御調整系を設けたものである。図において、20は目標値とフィードバック信号とを受けてその差分をとる第1の演算器、21は該演算器20の出力を受けて位置誤差に基づく制御信号(VCM電流)を出力する位置誤差制御器、30は該位置誤差制御器21と外乱補償テーブル31の出力を受けて、所定の演算を行なう第2の演算器である。
【0040】
22は該演算器30の出力に基づいてアームを回転駆動するVCM、23は該VCM22によって回転駆動されるアーム系、25は該アーム系23の出力を受けるスライダヘッドである。27はスライダ25の出力であるヘッド位置信号を受けて、外乱の影響を加味したフィードバック信号を前記第1の演算器20に与える第3の演算器である。スライダ25からは外乱補償テーブル31にトラックナンバがアドレスとして入力される。外乱補償テーブル31には、発生した外乱を補償する外乱補償電流が格納される。
【0041】
40は垂直尾翼24の右面に貼り付けられた右圧力センサ、41は垂直尾翼24の左面に貼り付けられた左圧力センサである。これら圧力センサとしては、例えば歪ゲージ等が用いられる。45は右圧力センサ40と左圧力センサ41の出力の差分をとる第4の演算器である。42は演算器45の出力を受けて、圧力差に応じた制御信号を出力する圧力差制御器、33は該圧力差制御器42により駆動されるマイクロアクチュエータ(MA)であり、該MA33はスライダ25を所定の方向に回転させる。この実施の形態では、MA33を用いてスライダ25を回転させるループと、ヘッド位置に基づいてVCM22を回転させるループの2つのフィードバックループが形成されている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0042】
先ず、スライダ25上に風を受ける部分(例えば垂直尾翼、スライダ側面、左右張り出し)を設ける。例えば、垂直尾翼は、再生ヘッドコア幅の垂直2等分線上のスライダ流出端部に取り付けられている。このスライダ25は、ジンバルを介してサスペンションに結合している。スライダ25の回転軸は、再生ヘッドコア幅中心の真上に配置して、回転軸はジンバルの十字バネの中心に結合している構成とする。ここで、回転軸にはボールベアリング又はドライベアリングで組み込まれている。この結果、滑らかな回転が可能となる。
【0043】
そして、垂直尾翼の左右に歪みゲージ等の圧力センサ40,41を貼り付け、左右の圧力センサ40,41の出力の差が0になるように、MA33を制御する。結果的にスライダ流入端が風上(トラックの接線方向)に向いてヨー角が0になる。ここで、MA33としては、例えばサスペンション駆動型、スライダ駆動型、ヘッド駆動型等が用いられる。この実施の形態によれば、垂直尾翼の両面に貼り付けられた圧力センサの差を出力とするフィードバック制御系と、再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードフォワード制御を組み合わせることで、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めを両立させることができる。
【0044】
本発明の実施の形態では、左右の圧力センサ40,41の出力の差が0となるように、スライダ25が回転軸6(図4参照)を中心に回転して流入端が風上(トラックの接線方向)に向いてヨー角を維持すること(仕様1)と、数10ナノオーダの高精度位置決めを実現する(仕様2)ことの2つの仕様の両立を図るため、以下に示すような方法が用いられる。
【0045】
図6は本発明の第4の実施の形態を示す構成図である。図5と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施の形態も、圧力差制御器42でMA33を制御するループと、ヘッド位置でVCM22を制御するループの2系統のフィードバックループが形成されている。この実施の形態では、MA33とVCM22への電流を2入力とし、圧力と位置誤差を2出力とするハイブリッド制御系を構成している。45は右圧力センサ40と左圧力センサ41の出力の差分をとる演算器である
図6において、50は第1の演算器20の出力の後に挿入された係数設定器であり、演算器20の出力をS倍する。この係数設定器50の出力は、位置誤差制御器21に入力される。
【0046】
51は第4の演算器45の出力を受けて(1−S)を演算する演算器、42は該演算器51の出力を受ける圧力差制御器で、その出力でMA33を制御するようになっている。前記した左右の圧力センサ40,41の出力の差が0となるように、スライダ25が回転軸6(図4参照)を中心に回転して流入端が風上(トラックの接線方向)に向いてヨー角を維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めを実現することの仕様のバランスをとるために、Sという重み係数を挿入するようにしている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0047】
この実施の形態は、圧力センサ40,41の出力の圧力差についてはMA33で補償し、位置誤差についてはVCM22で補償する。VCM制御系では、位置誤差を打ち消す電流を外乱補償テーブル31から読み出し、第2の演算器30にFF(フィードホワード)で重畳させる。これによって、ヨー角を0にすることで、発生した外乱を補償することができる。
【0048】
ここで、外乱補償テーブル31において、ヨー角をゼロにしたことで発生する外乱量dは、φの関数となる。φは前述したようにrの関数φ=f(r)でもあることから、dによる位置誤差を打ち消す外乱補正電流Ivcmは、次式で表される。
【0049】
Ivcm(d(φ))=Ivcm(d(f(r)))
Sは前述の仕様1と仕様2をバランスさせるべく0<S<1の値をとる重みであり、Sを大きくすればヘッドの位置決めを重視することになり、小さくすれば圧力差を重視してヨー角をゼロにすることが重視される。
【0050】
この実施の形態によれば、ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータを設け、このマイクロアクチュエータにより、該マイクロアクチュエータは、圧力差補正制御器の出力電流を入力とし、位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とすると共に、マイクロアクチュエータサーボ系とボイスコイルモータ系への電流値を係数Sど重み付けすることにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めを両立させることができる。
【0051】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
(受動型)
回転軸がヘッドコア幅の中心線の真上に配置されることにより、スライダのヨー角がゼロの場合に発生する制御系への外乱を抑制することができるため、ナノオーダの位置決めが可能となる。
(能動型)
ヨー角についてはMAによるフォトダイオード(FF)系とし、また位置決めについてはVCMへの電流を1入力とし、位置誤差を1出力とするヘッドスライダの位置決め制御系として構成し、MAにはヨー角ゼロ補正電流を与え、一方VCMには外乱補償電流をフィードホワードで重畳させることで、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとの2つの仕様を両立させることができる。
(能動型+圧力センサ)
VCMとMAを2入力とし、位置誤差と圧力差を2出力とするフィードバック制御系を構成し、位置誤差についてはVCMに外乱補正電流をFFで重畳することで、また、圧力差についてはMAで補償することにより、数10ナノオーダの高精度位置決めとヨー角を接線方向に一定に維持することとの2つの仕様を両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す構成図図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。
【図3】本発明の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】スライダの動作を真上から見た図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示す構成図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態を示す構成図である。
【図7】垂直磁気記録方式の説明図である。
【図8】スライダとディスクとの関係を示す図である。
【図9】スライダの動作を真上から見た図である。
【図10】スライダの動作を真上から見た図である。
【図11】スライダの動作を真上から見た図である。
【図12】スライダの動作を真上から見た図である。
【符号の説明】
【0053】
20 演算器
21 位置誤差制御器
22 VCM
23 アーム系
24 垂直尾翼
25 スライダ
26 演算器
27 演算器
【技術分野】
【0001】
本発明はヨー角制御機構に関し、更に詳しくは磁気ディスク装置におけるヘッドスライダのヨー角を制御するヨー角制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直磁気記録方式においては、単磁極型記録ヘッドと裏打ち層を持つ媒体によって磁気回路が構成され、データが記録される。この場合、記録ヘッドのヨー角がトラックの接線方向に対して大きく傾くと、隣接トラックに記録痕跡(サイドフリンジ)が残り、トラック密度を詰めることができなくなり、問題となる。
【0003】
図7は垂直磁気記録方式の説明図である。(a)は垂直断面図、(b)は平面図である。(a)において、Sは磁界のS極、Nは磁界のN極である。1は記録痕跡である。(b)において、Sは磁界のS極、Nは磁界のN極である。この記録痕跡1のために、トラック密度をこれ以上詰めることができないため、トラック密度を 詰めることができなくなる。
【0004】
このため、記録ヘッドの主磁極形状を逆台形になるように、±10〜20度程度テーパ状にカットしている。通常、カットした分だけ出力が出なくなる。今後、狭コア幅が進むと、主磁極の形状は逆三角形になり、一層出力が出なくなり、記録できなくなることが懸念されている。
【0005】
また、高速アクセスに対応してアーム長が短かくなる傾向にあり、ますますヨー角が大きくなることが予想され、記録ヘッドにテーパカットによる出力ダウンが大きな問題に発展する可能性がある。
(受動型)
この種の受動型の装置としては、スライダの後端部に垂直尾翼を設け、ジンバルバネで支持されることにより、ヨー角を自己補正するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。また、スライダ側面をカットして風受け面を設け、ベアリングなどの回転機構を介してサスペンションと結合することによりヨー角を自己補正する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
(能動型)
一方、この種の能動型の装置としては、マイクロアクチュエータ(MA)により、トラック方向に対してヨー角が一定(0度の場合は、接線方向に向く)になるようにする。ヨー角は、ディスク上に記録されているトラックナンバを再生ヘッドにより検知して、MAへの電流をフィードフォワード(FF)で与えてヨー角の一定制御を実現している。例えば、スライダ流入端が風上(トラックの接線方向)に向くのに十分な一定電流を与え続ければ、ヨー角をゼロに維持することができる。
【0006】
従来のこの種の装置としては、MAとしてサスペンションの根元にアクチュエータを設けることでヨー角を制御している(例えば特許文献2,特許文献3参照)。また、スライダとサスペンションの結合部にアクチュエータを設ける(スライダ駆動型)でヨー角を制御している(例えば特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平3−119581号公報(第3頁左上欄第1行〜同頁左下欄第6行、第1図〜第3図)
【特許文献2】特開2001−101633号公報(段落0002〜0032、図1〜図5)
【特許文献3】特開平6−314479号公報(段落0011〜0018、図1〜図6)
【特許文献4】特開平9−231538号公報(段落0022〜0027、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(受動型の装置の場合)
前記受動型の装置の場合、ヘッドと回転軸との位置関係については、何も言及されておらず、回転軸がヘッドコア幅の中心線からオフセットしていると、サーボパターンへのオントラック状態では、オフセット分だけ外乱となり、数10ナノオーダの位置決めを達成しようとしている状況において、精度に悪影響を及ぼす。
【0008】
図8はスライダとディスクとの関係を示す図である。図において、2はディスク、3はアーム、4は該アーム3の先端部に取り付けられたスライダである。この時、スライダ4はアーム3により、図の矢印で示す方向に回転させられる。図9はスライダの動作を真上から見た図である。(a)はスライダが回転していない状態を示している。図8と同一のものは、同一の符号を付して示す。3はアーム、4は該アーム3の先端に取り付けられたスライダ、5は垂直尾翼、6はスライダ4の回転軸、7はアーム3の回転軸である。8はディスクの回転により発生する風である。9はスライダ4に設けられたヘッドである。
【0009】
アーム3が(b)のように回転すると、垂直尾翼5及び側面カット部(図示せず)は、ディスクの回転により発生する風を受け、スライダ4は回転軸6を中心に回転して流入端が風上に向いて(c)に示すように、ヨー角を0(トラックの接線方向)に維持する。(b)において、10はヘッドコア幅の中心線である。
【0010】
図10はスライダの動作を真上から見た図である。(a)はアーム3の垂直2等分線とヘッドコア幅の中心線10とが一致している状態を示している。(b)はアーム3とスライダ4が一緒に傾いた状態を示している。(c)はアーム3が更に回転し、ヘッドコア幅の中心線10と回転軸6との間にオフセットΔが発生した状態を示している。この不具合を直すため、図の(c)に示すように、矢印方向の力を与えてやると、スライダ4の回転軸6がヘッドコア幅の中心線に一致している。
【0011】
図11はスライダの動作を上から見た図である。図は、ヘッドコア幅の中心線とアームの中心線との間にオフセットがある場合を示している。(a)はヘッドコア幅の中心線とアーム3の中心線との間(左側)に一定のオフセットΔがあり、停止した状態を示している。これが(b),(c)と変化していく。この場合において、風8の力によりスライダ4は(c)に示すように傾いていない状態となる。この時のアーム3の一辺に矢印で示すような力を加えることにより、(d)に示すように回転軸6はヘッドコア幅の中心線10に近づく。
【0012】
図12はスライダの動作を上から見た図である。図11と同一のものは、同一の符号を付して示す。この図は、ヘッドコア幅の中心線とアーム3の中心線との間(右側)に一定のオフセットΔがある場合を示している。アーム3が図に示すように回転している間に風8の作用により、スライダ4は力を受け、最終的には(d)に示すような位置状態となる。
(能動型装置の場合)
この場合は、アクチュエータによりヨー角を一定にする具体的な制御手段について、全く言及していない。また、MAへの電流をフィードフォワード(FF)してヨー角を接線方向に一定に維持する場合、回転軸がヘッドコア幅の中心線上からオフセットしていると、サーボパターンへのオントラック状態では、オフセット分だけ外乱となり、数10ナノオーダの高精度位置決めを実現することはできない。即ち、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとの2つの仕様とを両立させることができないという問題があった。
【0013】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとを両立させることができるヨー角制御機構を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)請求項1記載の発明は、記録ヘッドと再生ヘッドとによりなるヘッド部と、風受け部を有するヘッドスライダと、該ヘッドスライダは回転部を介してサスペンションアームに結合している磁気ディスク装置において、前記ヘッドスライダの回転軸は再生ヘッドコア幅中心の真上に配置されてサスペンションアームに結合していることを特徴とする。
【0015】
(2)請求項2記載の発明は、前記回転部において、回転軸がボールベアリング或いはドライベアリングで支持されていることを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、記録ヘッドと再生ヘッドを有するヘッドスライダと、該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転駆動させるボイスコイルモータと、を有する磁気ディスク装置において、前記マイクロアクチュエータ制御系は、再生ヘッドで検出したトラックナンバと、それに応じてヨー角を一定にするバイアス電流を格納しているヨー角補正テーブルを有し、そのバイアス電流を入力として駆動されるマイクロアクチュエータで構成し、前記ボイスコイルモータ制御系は、位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とし、再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードバック制御系を構成し、更に、ヨー角を一定にすることで発生した外乱を補償するための外乱補償電流を格納する外乱補償テーブルを有し、前記再生ヘッドで検出したトラックナンバに基づいた外乱補償電流を前記位置誤差制御器の出力電流に加算することを特徴とする。
【0016】
(4)請求項4記載の発明は、記録ヘッドと再生ヘッド及び垂直尾翼を有するヘッドスライダと、該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、目標値とフィードバック信号との差をとり、ボイスコイルモータの位置誤差を制御する位置誤差制御器と、前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転移動させるボイスコイルモータとを有する磁気ディスク装置において、前記垂直尾翼の両面に各々圧力センサが貼り付けられ、マイクロアクチュエータ制御系は、圧力差制御器の出力電流をマイクロアクチュエータへの入力とし、左右の圧力センサの差を出力とするフィードバック制御系と、前記位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とし、前記再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードバック制御系とを有し、更にヨー角を一定にすることで発生した外乱を補償するための外乱補償電流を格納する外乱補償テーブルを有し、再生ヘッドで検出したトラックナンバに基づいた外乱補償電流を位置誤差制御器の出力電流に加算することを特徴とする。
【0017】
(5)請求項5記載の発明は、記録ヘッドと再生ヘッド及び垂直尾翼を有するヘッドスライダと、該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転駆動させるボイスコイルモータと、を有する磁気ディスク装置において、前記垂直尾翼の両面に各々圧力センサが貼り付けられ、圧力差補正制御器の出力電流を入力とし、位置誤差制御器の出力電流をマイクロアクチュエータへの入力とし、かつ左右の圧力センサの差と再生ヘッドの位置誤差を2出力とし、マイクロアクチュエータ系とボイスコイルモータ系への電流値を係数Sで重み付けして制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
(1)請求項1記載の発明によれば、ヘッドスライダの回転軸を、再生ヘッドコア幅中心の真上に配置されてサスペンションアームに結合していることにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとを両立させることができる。
【0019】
(2)請求項2記載の発明によれば、前記回転軸がボールベアリングで支持されているようにすることで、ヘッドスライダを滑らかにスライドさせることができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、再生ヘッドで検出したトラックナンバと、それに応じてヨー角を一定にするバイアス電流を格納しているヨー角補正テーブルと、ヨー角を一定にすることで発生した外乱を補償する外乱補償電流を格納する外乱補償テーブルを用いて、前記ヨー角補正テーブルを用いたマイクロアクチュエータによる制御と、外乱補償テーブルを用いたボイスコイルモータによる位置決めを行なうことにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとを両立させることができる。
【0020】
(4)請求項4記載の発明によれば、垂直尾翼の両面に貼り付けられた圧力センサの差を出力とするフィードバック制御系と、再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードバック制御を組み合わせることで、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めを両立させることができる。
【0021】
(5)請求項5記載の発明は、ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータを設け、このマイクロアクチュエータにより、該マイクロアクチュエータは、圧力差補正制御器の出力電流を入力とし、位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とすると共に、マイクロアクチュエータサーボ系とボイスコイルモータ系への電流値を係数Sで重み付けすることにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めを両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(受動型)
ヘッドコア幅の中心線と回転軸とのオフセットによる外乱をなくすために、回転軸をヘッドコア幅の中心線の真上に配置する。
(能動型)
再生ヘッドを用いて、ディスクのサーボ領域に記憶されているトラックナンバを読み取り、その半径位置でヨー角をゼロにするためのバイアス電流をヨー角ゼロ補正テーブルから参照してMA(マイクロアクチュエータ)に与える。ここで、ヘッドスライダ(以下単にスライダと略す)の位置決め制御系として、ボイルコイルモータ(VCM)を1入力とし、位置誤差を1出力とするフィードフォワード制御系を構成する。VCM制御系では、位置誤差を打ち消す電流をトラックナンバに応じた値を外乱補償テーブルから参照して、フィードフォワード(以下単にFFと略する)で重畳する。これによって、ヨー角をゼロにすることで発生した外乱を補償する。
(能動型+圧力センサ)
スライダ上に風を受ける部分(垂直尾翼、スライダ側面、左右張り出し)を設ける。また、風受け部の左右に圧力センサを貼り付ける。そして、圧力センサの差が0となるように、MAをフィードバック制御する。MAとしては、サスペンション駆動型、スライダ駆動型、ヘッド駆動型等が考えられる。
1)左右圧力センサの差が0となるように、スライダが回転軸を中心に回転して流入端が風上(トラックの接線方向)に向いてヨー角をゼロに維持することと、
2)数10ナノオーダの高精度位置決めを実現することの2つの仕様の両立を図るために、一つの手段として、圧力差についてはMAで、位置誤差についてはVCMで補償するフィードバック系を構成する。他の手段としては、MAとVCMを2入力とし、圧力差と位置誤差を2出力とするハイブリッド・制御系を構成する。そして、1)と2)の仕様のバランスを重み係数Sで調節する。
【0023】
次に、実施例について説明する。
(受動型)
以下、実施の形態について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。図において、20は目標値とフィードバック信号との差分を偏差として取り出す第1の演算器、21は該演算器20の偏差出力を受けて位置誤差を制御するための補正信号(VCM電流信号)を出力する位置誤差制御器、22はVCM電流信号を受けるVCM(ボイス・コイル・モータ)、23は該VCM22で回転させられるアーム系である。
【0024】
24はスライダに取り付けられ、スライダのヨー角を制御する垂直尾翼である。25は該アーム系23の出力で回転させられるスライダとヘッド(以下単にスライダという)である。26は接線方向信号とスライダ25から出力されるヨー角信号を受けて差信号をとる第2の演算器で、その出力は前記垂直尾翼24に風外乱として与えられる。
【0025】
スライダ25からはヘッド位置信号が出力される。27はこのヘッド位置信号と外乱との信号を演算する第3の演算器である。該演算器27の出力は、前記演算器20にフィードバック信号として与えられるようになっている。スライダ25には、再生ヘッドコア幅の垂直2等分線上に垂直尾翼が取り付けられている。また、スライダ25は、風外乱を風受け部(図示せず)を介して受けるようになっている。
【0026】
このスライダ25は、ジンバルを介してサスペンションに結合している。ここで、スライダ25の回転軸は、再生ヘッドコア幅中心の真上に配置され、回転軸はジンバルの十字バネの中心に結合している構成とする。ここで、回転軸にはボールベアリングが組み込まれている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0027】
第1の演算器20は、目標値とスライダ25のヘッド位置を示す信号とを受けて、その差分を演算する。位置誤差制御器21は、この差分(偏差)を受けてVCM22を制御するためのVCM電流を出力する。VCM22は、このVCM電流信号に応じてアーム系23を回転移動させる。この結果、スライダ25の位置が移動し、移動後のヘッド位置を出力する。
【0028】
第3の演算器27は、スライダ25からのヘッド位置信号を受けて、その出力を制御信号として第1の演算器20にフィードバックする。また、垂直尾翼24には、風の外乱が当たり、垂直尾翼24がヨー角を0になるような動作を行なう。この結果、スライダ25の回転軸を、再生ヘッドコア幅中心の真上に配置されてサスペンションアームに結合していることにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとを両立させることができる。
【0029】
また、本発明によれば、スライダの回転軸にボールベアリングを用いることで、該ボールベアリングで支持されているようにすることで、スライダを滑らかにスライドさせることができる。
(能動型)
図2は本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、20は目標値と演算器27からのフィードバック信号とを受けてその差分(偏差)を演算する第1の演算器である。21は該演算器20の出力(偏差出力)を受けて、位置誤差を制御するための補正信号(VCM電流信号)を出力する位置誤差制御器、22はVCM電流信号を受けるVCM(ボイス・コイル・モータ)、23は該VCM22で回転させられるアーム系である。
【0030】
25は前記アーム系23により回転させられるスライダとヘッド(以下単にスライダという)である。26は接線方向信号とスライダ25から出力されるヨー角信号を受けて差信号をとる第2の演算器である。スライダ25からはヘッド位置信号が出力される。27はこのヘッド位置信号と外乱との信号を演算する第3の演算器である。該演算器27の出力は、前記演算器20にフィードバック信号として与えられるようになっている。
【0031】
32はヨー角と該ヨー角を0にするためのバイアス電流が記憶されているヨー角補正テーブル、33は該ヨー角補正テーブル32の出力を受けるMA(マイクロアクチュエータ)で、その出力はスライダ25を駆動するようになっている。該ヨー角補正テーブル32は、スライダ25からのトラックナンバをアドレスとして受けている。31は位置誤差と該位置誤差を打ち消すための電流を記憶する外乱補償テーブルである。この外乱補償テーブル31は、スライダ25からトラックナンバをアドレスとして受けている。
【0032】
30は位置誤差制御器21の出力と、外乱補償テーブル31の出力とを受けて所定の演算を行なう第4の演算器である。27はスライダ25の出力と外乱とを受けて前記第1の演算器20にフィードバック信号を与える第3の演算器である。このように構成された装置の動作を図3に示すフローチャートを参照しながら説明すれば、以下の通りである。
【0033】
図3のフローチャートは、ヨー角ゼロ制御と、外乱補償制御とから構成されている。先ず、ヨー角ゼロ制御について説明する。先ず、再生ヘッド(図示せず)を用いて、ディスクのサーボ領域に記録されているトラックナンバを読み取る(S0)。続いて、ヨー角をゼロにするためのバイアス電流をヨー角補正テーブル32をトラックナンバによりアクセスして読み取り(S2)、補正電流をMA駆動アンプ(図示せず)に入力する(S2)。MA33は、スライダ25を回転させ、ヘッドが接線方向に向くように動作する(S3)。
【0034】
次に、外乱補償制御について説明する。VCM制御系の動作は、ヘッドスライダの位置決め制御系として、VCMへの電流を1入力とし、位置誤差を1出力とするフィードバック制御系を構成する。このため、VCM制御系(外乱補償制御系)では、位置誤差を打ち消す電流を外乱補償テーブル31をトラックナンバでアクセスして読み出し(S4)、この読み出した外乱補償データを第2の演算器4にフィードフォワードで入力し、位置誤差制御器21の出力に重畳してやる(S5)。そして、VCM駆動アンプに補償電流を入力してやり(S6)、サスペンションアームを回転させ、位置誤差を修正する(S7)これによって、ヨー角を0にすることで発生した外乱を補償する。
【0035】
図4はスライダの動作を真上から見た図である。ここで、(a)は静止状態における図を示している。3はアーム、4はスライダ、6はスライダ4の回転軸、7はアーム3の回転軸、8は風、33はスライダ回転軸6とヘッド9間に設けられたマイクロアクチュエータ(MA)である。
【0036】
(b)は回転の開始状態、(c)はスライダ4が回転を終了し、アーム3の回転軸とスライダ4の回転軸6との間にオフセットが発生した状態を示している。Aがアーム3の回転軸、Bがスライダ4の回転軸である。この点AとBの間のオフセットが外乱になる。図中スライダの回転軸6が正しい位置に回転され、アーム3の回転軸はこのような場合は、アーム3を回転させて、(d)に示すような中心線10が一致する配置関係となる。
【0037】
ここで、ヨー角補正テーブル32では、ヨー角φをゼロにするためのMA33へのバイアス電流Imaは、トラックナンバからその半径位置rを算出し、その時のヨー角φを計算する。ヨー角φはrの関数φ=f(r)になる。ここで、
MAへのバイアス電流Ima(φ)=Ima(f(r))
として、予め計算してテーブルを作成することができる。
【0038】
また、外乱補償テーブル31では、ヨー角をゼロにしたことによって発生する外乱量dは、やはりφの関数となる。φはrの関数φ=f(r)でもあることから、dによる位置誤差を打ち消す外乱補償電流Ivcmは、VCM22への
外乱補正電流Ivcm(d(φ))=Ivcm(d(f(r)))
として、予めテーブルを作成しておくことができる。
【0039】
この実施の形態によれば、再生ヘッドで検出したトラックナンバと、それに応じてヨー角を一定にするバイアス電流を格納しているヨー角補正テーブル32と、ヨー角を一定にすることが発生した外乱を補償する外乱補償電流を格納する外乱補償テーブル31を用いて、前記ヨー角補正テーブル32を用いたマイクロアクチュエータ33によるフィードフォワードバック制御と、外乱補償テーブル31を用いたフィードフォワードによる位置決めを行なうことにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとを両立させることができる。
(能動型+圧力センサ)
図5は本発明の第3の実施の形態を示す構成図である。図1,図2と同一のものは、同一の符号を付して示す。図に示す実施の形態は、ヘッド位置調整系に、垂直尾翼に基づくヨー角制御調整系を設けたものである。図において、20は目標値とフィードバック信号とを受けてその差分をとる第1の演算器、21は該演算器20の出力を受けて位置誤差に基づく制御信号(VCM電流)を出力する位置誤差制御器、30は該位置誤差制御器21と外乱補償テーブル31の出力を受けて、所定の演算を行なう第2の演算器である。
【0040】
22は該演算器30の出力に基づいてアームを回転駆動するVCM、23は該VCM22によって回転駆動されるアーム系、25は該アーム系23の出力を受けるスライダヘッドである。27はスライダ25の出力であるヘッド位置信号を受けて、外乱の影響を加味したフィードバック信号を前記第1の演算器20に与える第3の演算器である。スライダ25からは外乱補償テーブル31にトラックナンバがアドレスとして入力される。外乱補償テーブル31には、発生した外乱を補償する外乱補償電流が格納される。
【0041】
40は垂直尾翼24の右面に貼り付けられた右圧力センサ、41は垂直尾翼24の左面に貼り付けられた左圧力センサである。これら圧力センサとしては、例えば歪ゲージ等が用いられる。45は右圧力センサ40と左圧力センサ41の出力の差分をとる第4の演算器である。42は演算器45の出力を受けて、圧力差に応じた制御信号を出力する圧力差制御器、33は該圧力差制御器42により駆動されるマイクロアクチュエータ(MA)であり、該MA33はスライダ25を所定の方向に回転させる。この実施の形態では、MA33を用いてスライダ25を回転させるループと、ヘッド位置に基づいてVCM22を回転させるループの2つのフィードバックループが形成されている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0042】
先ず、スライダ25上に風を受ける部分(例えば垂直尾翼、スライダ側面、左右張り出し)を設ける。例えば、垂直尾翼は、再生ヘッドコア幅の垂直2等分線上のスライダ流出端部に取り付けられている。このスライダ25は、ジンバルを介してサスペンションに結合している。スライダ25の回転軸は、再生ヘッドコア幅中心の真上に配置して、回転軸はジンバルの十字バネの中心に結合している構成とする。ここで、回転軸にはボールベアリング又はドライベアリングで組み込まれている。この結果、滑らかな回転が可能となる。
【0043】
そして、垂直尾翼の左右に歪みゲージ等の圧力センサ40,41を貼り付け、左右の圧力センサ40,41の出力の差が0になるように、MA33を制御する。結果的にスライダ流入端が風上(トラックの接線方向)に向いてヨー角が0になる。ここで、MA33としては、例えばサスペンション駆動型、スライダ駆動型、ヘッド駆動型等が用いられる。この実施の形態によれば、垂直尾翼の両面に貼り付けられた圧力センサの差を出力とするフィードバック制御系と、再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードフォワード制御を組み合わせることで、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めを両立させることができる。
【0044】
本発明の実施の形態では、左右の圧力センサ40,41の出力の差が0となるように、スライダ25が回転軸6(図4参照)を中心に回転して流入端が風上(トラックの接線方向)に向いてヨー角を維持すること(仕様1)と、数10ナノオーダの高精度位置決めを実現する(仕様2)ことの2つの仕様の両立を図るため、以下に示すような方法が用いられる。
【0045】
図6は本発明の第4の実施の形態を示す構成図である。図5と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施の形態も、圧力差制御器42でMA33を制御するループと、ヘッド位置でVCM22を制御するループの2系統のフィードバックループが形成されている。この実施の形態では、MA33とVCM22への電流を2入力とし、圧力と位置誤差を2出力とするハイブリッド制御系を構成している。45は右圧力センサ40と左圧力センサ41の出力の差分をとる演算器である
図6において、50は第1の演算器20の出力の後に挿入された係数設定器であり、演算器20の出力をS倍する。この係数設定器50の出力は、位置誤差制御器21に入力される。
【0046】
51は第4の演算器45の出力を受けて(1−S)を演算する演算器、42は該演算器51の出力を受ける圧力差制御器で、その出力でMA33を制御するようになっている。前記した左右の圧力センサ40,41の出力の差が0となるように、スライダ25が回転軸6(図4参照)を中心に回転して流入端が風上(トラックの接線方向)に向いてヨー角を維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めを実現することの仕様のバランスをとるために、Sという重み係数を挿入するようにしている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0047】
この実施の形態は、圧力センサ40,41の出力の圧力差についてはMA33で補償し、位置誤差についてはVCM22で補償する。VCM制御系では、位置誤差を打ち消す電流を外乱補償テーブル31から読み出し、第2の演算器30にFF(フィードホワード)で重畳させる。これによって、ヨー角を0にすることで、発生した外乱を補償することができる。
【0048】
ここで、外乱補償テーブル31において、ヨー角をゼロにしたことで発生する外乱量dは、φの関数となる。φは前述したようにrの関数φ=f(r)でもあることから、dによる位置誤差を打ち消す外乱補正電流Ivcmは、次式で表される。
【0049】
Ivcm(d(φ))=Ivcm(d(f(r)))
Sは前述の仕様1と仕様2をバランスさせるべく0<S<1の値をとる重みであり、Sを大きくすればヘッドの位置決めを重視することになり、小さくすれば圧力差を重視してヨー角をゼロにすることが重視される。
【0050】
この実施の形態によれば、ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータを設け、このマイクロアクチュエータにより、該マイクロアクチュエータは、圧力差補正制御器の出力電流を入力とし、位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とすると共に、マイクロアクチュエータサーボ系とボイスコイルモータ系への電流値を係数Sど重み付けすることにより、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めを両立させることができる。
【0051】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
(受動型)
回転軸がヘッドコア幅の中心線の真上に配置されることにより、スライダのヨー角がゼロの場合に発生する制御系への外乱を抑制することができるため、ナノオーダの位置決めが可能となる。
(能動型)
ヨー角についてはMAによるフォトダイオード(FF)系とし、また位置決めについてはVCMへの電流を1入力とし、位置誤差を1出力とするヘッドスライダの位置決め制御系として構成し、MAにはヨー角ゼロ補正電流を与え、一方VCMには外乱補償電流をフィードホワードで重畳させることで、ヨー角を接線方向に一定に維持することと、数10ナノオーダの高精度位置決めとの2つの仕様を両立させることができる。
(能動型+圧力センサ)
VCMとMAを2入力とし、位置誤差と圧力差を2出力とするフィードバック制御系を構成し、位置誤差についてはVCMに外乱補正電流をFFで重畳することで、また、圧力差についてはMAで補償することにより、数10ナノオーダの高精度位置決めとヨー角を接線方向に一定に維持することとの2つの仕様を両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す構成図図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。
【図3】本発明の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】スライダの動作を真上から見た図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態を示す構成図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態を示す構成図である。
【図7】垂直磁気記録方式の説明図である。
【図8】スライダとディスクとの関係を示す図である。
【図9】スライダの動作を真上から見た図である。
【図10】スライダの動作を真上から見た図である。
【図11】スライダの動作を真上から見た図である。
【図12】スライダの動作を真上から見た図である。
【符号の説明】
【0053】
20 演算器
21 位置誤差制御器
22 VCM
23 アーム系
24 垂直尾翼
25 スライダ
26 演算器
27 演算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドと再生ヘッドとによりなるヘッド部と、
風受け部を有するヘッドスライダと、
該ヘッドスライダは回転部を介してサスペンションアームに結合している磁気ディスク装置において、
前記ヘッドスライダの回転軸は再生ヘッドコア幅中心の真上に配置されてサスペンションアームに結合していることを特徴とするヨー角制御機構。
【請求項2】
前記回転部において、回転軸がボールベアリング或いはドライベアリングで支持されていることを特徴とする請求項1記載のヨー角制御機構。
【請求項3】
記録ヘッドと再生ヘッドを有するヘッドスライダと、
該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、
前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転駆動させるボイスコイルモータと、
を有する磁気ディスク装置において、
前記マイクロアクチュエータ制御系は、再生ヘッドで検出したトラックナンバと、それに応じてヨー角を一定にするバイアス電流を格納しているヨー角補正テーブルを有し、そのバイアス電流を入力として駆動されるマイクロアクチュエータで構成し、
前記ボイスコイルモータ制御系は、位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とし、再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードバック制御系を構成し、
更に、ヨー角を一定にすることで発生した外乱を補償するための外乱補償電流を格納する外乱補償テーブルを有し、
前記再生ヘッドで検出したトラックナンバに基づいた外乱補償電流を前記位置誤差制御器の出力電流に加算することで、ヨー角を一定に維持しつつ位置決めを行なうことを特徴とするヨー角制御機構。
【請求項4】
記録ヘッドと再生ヘッド及び垂直尾翼を有するヘッドスライダと、
該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、
目標値とフィードバック信号との差をとり、ボイスコイルモータの位置誤差を制御する位置誤差制御器と、
前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転移動させるボイスコイルモータと、
を有する磁気ディスク装置において、
前記垂直尾翼の両面に各々圧力センサが貼り付けられ、マイクロアクチュエータ制御系は、圧力差制御器の出力電流をマイクロアクチュエータへの入力とし、左右の圧力センサの差を出力とするフィードバック制御系と、
前記位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とし、前記再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードバック制御系と、
を有し、
更にヨー角を一定にすることで発生した外乱を補償するための外乱補償電流を格納する外乱補償テーブルを有し、再生ヘッドで検出したトラックナンバに基づいた外乱補償電流を位置誤差制御器の出力電流に加算することでヨー角を一定に維持しつつ位置決めを行なうことを特徴とするヨー角制御機構。
【請求項5】
記録ヘッドと再生ヘッド及び垂直尾翼を有するヘッドスライダと、
該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、
前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転駆動させるボイスコイルモータと、
を有する磁気ディスク装置において、
前記垂直尾翼の両面に各々圧力センサが貼り付けられ、圧力差制御器の出力電流を入力とし、位置誤差制御器の出力電流をマイクロアクチュエータへの入力とし、かつ左右の圧力センサの差と再生ヘッドの位置誤差を2出力とし、マイクロアクチュエータ系とボイスコイルモータ系への電流値を係数Sで重み付けして、スライダのヨー角を一定に維持しつつ、位置決めを行なうことを特徴とするヨー角制御機構。
【請求項1】
記録ヘッドと再生ヘッドとによりなるヘッド部と、
風受け部を有するヘッドスライダと、
該ヘッドスライダは回転部を介してサスペンションアームに結合している磁気ディスク装置において、
前記ヘッドスライダの回転軸は再生ヘッドコア幅中心の真上に配置されてサスペンションアームに結合していることを特徴とするヨー角制御機構。
【請求項2】
前記回転部において、回転軸がボールベアリング或いはドライベアリングで支持されていることを特徴とする請求項1記載のヨー角制御機構。
【請求項3】
記録ヘッドと再生ヘッドを有するヘッドスライダと、
該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、
前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転駆動させるボイスコイルモータと、
を有する磁気ディスク装置において、
前記マイクロアクチュエータ制御系は、再生ヘッドで検出したトラックナンバと、それに応じてヨー角を一定にするバイアス電流を格納しているヨー角補正テーブルを有し、そのバイアス電流を入力として駆動されるマイクロアクチュエータで構成し、
前記ボイスコイルモータ制御系は、位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とし、再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードバック制御系を構成し、
更に、ヨー角を一定にすることで発生した外乱を補償するための外乱補償電流を格納する外乱補償テーブルを有し、
前記再生ヘッドで検出したトラックナンバに基づいた外乱補償電流を前記位置誤差制御器の出力電流に加算することで、ヨー角を一定に維持しつつ位置決めを行なうことを特徴とするヨー角制御機構。
【請求項4】
記録ヘッドと再生ヘッド及び垂直尾翼を有するヘッドスライダと、
該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、
目標値とフィードバック信号との差をとり、ボイスコイルモータの位置誤差を制御する位置誤差制御器と、
前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転移動させるボイスコイルモータと、
を有する磁気ディスク装置において、
前記垂直尾翼の両面に各々圧力センサが貼り付けられ、マイクロアクチュエータ制御系は、圧力差制御器の出力電流をマイクロアクチュエータへの入力とし、左右の圧力センサの差を出力とするフィードバック制御系と、
前記位置誤差制御器の出力電流をボイスコイルモータへの入力とし、前記再生ヘッドで検出した位置誤差を出力とするフィードバック制御系と、
を有し、
更にヨー角を一定にすることで発生した外乱を補償するための外乱補償電流を格納する外乱補償テーブルを有し、再生ヘッドで検出したトラックナンバに基づいた外乱補償電流を位置誤差制御器の出力電流に加算することでヨー角を一定に維持しつつ位置決めを行なうことを特徴とするヨー角制御機構。
【請求項5】
記録ヘッドと再生ヘッド及び垂直尾翼を有するヘッドスライダと、
該ヘッドスライダがサスペンションアームに対して相対的な回転をするように駆動するマイクロアクチュエータと、
前記ヘッドスライダとサスペンションアームを回転駆動させるボイスコイルモータと、
を有する磁気ディスク装置において、
前記垂直尾翼の両面に各々圧力センサが貼り付けられ、圧力差制御器の出力電流を入力とし、位置誤差制御器の出力電流をマイクロアクチュエータへの入力とし、かつ左右の圧力センサの差と再生ヘッドの位置誤差を2出力とし、マイクロアクチュエータ系とボイスコイルモータ系への電流値を係数Sで重み付けして、スライダのヨー角を一定に維持しつつ、位置決めを行なうことを特徴とするヨー角制御機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【公開番号】特開2008−217945(P2008−217945A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56924(P2007−56924)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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