説明

ライトセンサ

【課題】応答性を早くすることができるライトセンサを提供する。
【解決手段】センサ信号をデジタル信号に変換する制御部30に、センサ信号と所定の閾値とを比較する比較手段32と、比較手段32の比較結果に基づいてAD変換開始信号を出力する処理手段33と、センサ信号を第1デジタル信号に変換する第1AD変換手段31とを備える。そして、処理手段33に、受光素子が所定期間露光したときの所定期間経過時のセンサ信号を出力制御回路から比較手段32に入力させ、比較手段32の比較結果に基づき、センサ信号が閾値以上のときは第1AD変換手段31にAD変換開始信号を入力してセンサ信号を第1デジタル信号に変換させ、センサ信号が閾値未満のときは出力制御回路に受光素子の出力期間を延長させ、延長期間経過時のセンサ信号を比較手段32に入力させて比較手段32の比較結果に基づいた処理を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ部から出力されるアナログ信号のセンサ信号をデジタル信号に変換して出力するライトセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、露光量に応じてアナログ信号であるセンサ信号を出力するセンサ部と、センサ部の露光期間を制御する受光素子駆動回路と、AD変換回路を有する信号処理回路と、下限値が設定されたコンパレータとを備えたライトセンサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。なお、露光量は、センサ部にて検出される測定光の照度と露光期間との積で求められるものであり、測定光が太陽光である場合には局所時間的には照度を一定とみなすことができるため、露光期間に比例して大きくなる。
【0003】
このようなライトセンサでは、センサ部は、測定光に所定期間露光されると、露光量に応じたアナログ信号であるセンサ信号を出力する。そして、センサ信号は信号処理回路およびコンパレータに入力され、コンパレータにてセンサ信号と下限値とが比較される。下限値は任意に設定されるものであり、センサ信号とノイズとの比、つまりSN比が十分に大きくなる値に設定されている。そして、センサ信号が下限値より大きい場合には、信号処理回路にてセンサ信号がデジタル信号に変換される。また、センサ信号が下限値より小さい場合には、受光素子駆動回路にてセンサ信号が下限値より大きくなるようにセンサ部の露光期間が再度設定され、センサ部が再度設定された所定期間露光された後、センサ部から出力されるセンサ信号が信号処理回路にてデジタル信号に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−247847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ライトセンサでは、センサ信号が下限値より小さい場合には、露光期間を再度設定し直し、センサ部を再度設定された所定期間露光させた後にセンサ信号をデジタル信号に変換するため、応答性が悪くなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、応答性を早くすることができるライトセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、露光量に応じた電気的信号を出力する受光素子(11)と、受光素子(11)の出力期間を制御して所定時における電気的信号をアナログ信号であるセンサ信号として出力する出力制御回路(12)と、を有するセンサ部(10)と、アナログ信号であるセンサ信号をデジタル信号に変換する制御部(30)と、を備え、以下の点を特徴としている。
【0008】
すなわち、制御部(30)は、センサ信号が入力され、センサ信号と所定の閾値とを比較する比較手段(32)と、比較手段(32)の比較結果に基づいてAD変換開始信号を出力する処理手段(33)と、センサ信号が入力され、処理手段(33)からAD変換開始信号が入力されるとセンサ信号を第1デジタル信号に変換する第1AD変換手段(31)と、を有している。そして、処理手段(33)は、出力制御回路(12)に受光素子(11)が所定期間出力したときの所定期間経過時の電気的信号をセンサ信号として比較手段(32)に入力させ、比較手段(32)の比較結果に基づき、センサ信号が閾値以上のときは第1AD変換手段(31)にAD変換開始信号を入力してセンサ信号を第1デジタル信号に変換させ、センサ信号が閾値未満のときは出力制御回路(12)に受光素子(11)の出力期間を延長させ、延長期間経過時の電気的信号を比較手段(32)に入力させて比較手段(32)の比較結果に基づいた処理を行うことを特徴としている。
【0009】
このようなライトセンサでは、受光素子(11)を所定期間出力(露光)させた後、センサ信号が閾値未満のときは受光素子(11)の出力期間を延長してそのまま受光素子(11)の出力(露光)を継続させている。そして、延長した期間が経過した後に再び比較手段(32)の比較結果に基づいた処理を行っている。このため、センサ部の露光量が下限値より小さい場合には再度露光期間を設定し直してセンサ部の露光を行う従来のものと比較して、センサ信号が閾値未満のときの露光期間を有効に利用することができ、応答性を早くすることができる。
【0010】
この場合、請求項2に記載の発明のように、制御部(30)に、受光素子(11)の出力期間に応じ、第1デジタル信号を所定の出力期間に対する露光量を示す第2デジタル信号に変換する第2AD変換手段(33)を備えることができる。
【0011】
これによれば、第1AD変換手段(31)で変換された第1デジタル信号を第2AD変換手段(33)にて受光素子(11)の出力期間に応じて所定の出力(露光)期間に対する露光量を示す第2デジタル信号に変換することができるため、ライトセンサからの出力信号が入力される側の構造を複雑にすることを抑制することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明のように、第2AD変換手段(33)は、受光素子(11)の出力期間に応じて第1デジタル信号の最上位ビット側または/および最下位ビット側に0を追加することにより、所定の出力期間に対する露光量を示す第2デジタル信号に変換するものとすることができる。
【0013】
このように、第1デジタル信号の最上位ビット側または/および最下位ビット側に0を追加することにより、第1デジタル信号を1/2(n=0、1、2…)の値となる第2デジタル信号に変換することができる。
【0014】
そして、請求項4に記載の発明のように、閾値を比較手段(32)に入力されるセンサ信号が取り得る最大値の1/2の値とし、処理手段(33)は、センサ信号が閾値未満のとき、出力制御回路(12)に受光素子(11)の出力期間を2倍に延長させ、延長期間が経過したときの比較手段(32)の比較結果に基づいた処理を行うものとすることができる。
【0015】
これによれば、第1AD変換手段(31)にてセンサ信号を第1デジタル信号に変換するとき、センサ信号が飽和信号であることを抑制することができ、検出精度が低下することを抑制することができる。
【0016】
さらに、請求項5に記載の発明のように、第2AD変換手段(33)は、受光素子(11)の出力期間を延長した後のセンサ信号が閾値未満の場合であって、最上位ビット側および最下位ビット側に0を追加できる合計の数をn、受光素子(11)の最初の出力期間をTとしたとき、受光素子(11)の出力期間が2Tとなったとき、センサ信号が閾値未満の場合であってもその時点におけるセンサ信号を第1AD変換手段(31)にて第1デジタル信号に変換させるものとすることができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明のように、受光素子(11)と接続される増幅手段を備え、第1AD変換手段(31)および比較手段(32)には、増幅手段にて増幅されたセンサ信号が入力されるようにすることができる。
【0018】
そして、請求項7に記載の発明のように、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のライトセンサは、車両に搭載されて用いられ、太陽光を検出するのに用いられるものとすることができる。
【0019】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態におけるライトセンサのブロック図である。
【図2】図1に示すセンサ部の回路図である
【図3】センサ部の作動を示すタイミングチャートである。
【図4】センサ信号と受光素子の出力期間との関係を示すタイミングチャートである。
【図5】受光素子の出力期間と第2デジタル信号の関係を示す図である。
【図6】マイコンが実行するプログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態におけるライトセンサのブロック図である。なお、本実施形態のライトセンサは、車両に搭載されて太陽光を検出するのに用いられると好適である。
【0022】
図1に示されるように、ライトセンサは、露光量に応じたアナログ信号のセンサ信号を出力するセンサ部10とセンサ信号をデジタル信号に変換する制御部30とを備えて構成されている。なお、露光量は、後述する受光素子にて検出される測定光の照度と露光期間との積で求められるものであり、測定光が太陽光である場合には局所時間的には照度を一定とみなすことができるため、露光期間に比例して大きくなる。
【0023】
まず、センサ部10の構成について説明する。図2は、本実施形態におけるセンサ部10の回路図である。図2に示されるように、センサ部10は、露光量に応じた電気的信号を出力するフォトダイオード等で構成される受光素子11と、制御部30からリセット信号や出力制御信号が入力されて受光素子11の出力を制御する出力制御回路12とを備えている。
【0024】
出力制御回路12は、Pチャネル型で構成される第1〜第4PMOSトランジスタ(以下では単に、第1〜第4トランジスタという)13〜16と、第1、第2、第4トランジスタ13、14、16のゲート端子に接続され、駆動信号RST、TG、BIASを入力して第1、第2、第4トランジスタ13、14、16のオン、オフを制御する駆動回路17とを備えている。
【0025】
第1トランジスタ13は、ソース端子が受光素子11と接続されていると共に第2トランジスタ14のドレイン端子と接続されている。また、第1トランジスタ13のドレイン端子はグランドと接続されている。第2トランジスタ14は、ソース端子が第3トランジスタ15のゲート端子と接続されている。第3トランジスタ15は、ドレイン端子がグランドと接続されており、ソース端子が第4トランジスタ16のドレイン端子と接続されている。第4トランジスタ16は、ソース端子が電源18に接続されている。また、第3トランジスタ15のソース端子と第4トランジスタ16のドレイン端子との接続点が端子19と接続されており、端子19からセンサ信号が出力されるようになっている。駆動回路17は端子20と接続されており、制御部30からの信号に応じて各駆動信号RST、TG、BIASを第1、第2、第4トランジスタ13、14,16に入力するようになっている。なお、第3トランジスタ15は、増幅率が1倍のアンプとして機能するものであり、第4トランジスタ16は第3トランジスタ15を駆動させるための定電流素子として機能するものである。
【0026】
次に、上記センサ部10の作動について説明する。図3は、センサ部10の作動を示すタイミングチャートである。なお、センサ部10が作動している期間は、駆動回路17は制御信号BIASとしてロー信号を入力して第4トランジスタ16を常にオンしている。また、以下では、図2に示されるように、第1トランジスタ13のソース端子と第2トランジスタ14の接続点をA点、第2トランジスタ14のドレイン端子と第3トランジスタ15のゲート端子との接続点をB点として説明する。
【0027】
まず、センサ部10は、時点T0において制御部30からリセット信号が入力されると、受光素子11の電荷をリセットするために駆動回路17から制御信号RSTとしてロー信号を入力して第1トランジスタ13をオンし、受光素子11に蓄積されている電荷をグランドに放出する。このとき、第2トランジスタ14がオフしているとB点の電位が不定になってセンサ信号が不定になるため、駆動回路17から制御信号TGとしてロー信号を入力して第2トランジスタ14もオンする。
【0028】
続いて、時点T1では、制御部30から出力(露光)開始信号が入力され、駆動回路17から駆動信号RSTとしてハイ信号を入力して第1トランジスタ13をオフする。これにより、時点T1以降では、受光素子11には露光量に応じた電荷が蓄積されていき、A点の電位が露光量に応じて高くなっていく。このとき、駆動回路17の制御信号TGをロー信号のままにして第2トランジスタ14のオン状態を維持することにより、A点とB点との電位が同電位となる。したがって、第3トランジスタ15は増幅率が1倍のアンプとして機能するため、端子19からA点の電位(電圧)がセンサ信号として出力される。
【0029】
そして、時点T2、つまり時点T1から所定期間経過した後では、制御部30から第1出力制御信号が入力され、駆動回路17から駆動信号TGとしてハイ信号を入力して第2トランジスタ14をオフする。これにより、A点とB点とが電気的に分離されるため、時点T2以降ではB点の電位は時点T2の電位に維持される。つまり、時点T2以降ではこの電圧がセンサ信号として出力される。なお、A点の電位は、時点T2以降も露光期間に応じて高くなっていく。すなわち、受光素子11の出力(露光)期間とは、A点の電位が端子19から出力される期間のことであり、図3では時点T1から時点T2の期間のことである。
【0030】
その後、時点T3では、時点T0と同様に、制御部30からリセット信号が入力され、駆動回路17から駆動信号RST、TGとしてロー信号を入力して第1、第2トランジスタ13、14をオンし、受光素子11に蓄積された電荷をグランドに放出する。
【0031】
なお、具体的には、後述するが、制御部30は、時点T2から時点T3の期間にセンサ信号の閾値判定を行い、センサ信号が閾値未満のときには、第2出力制御信号をセンサ部10に入力する。そして、駆動回路17から駆動信号TGとしてロー信号を入力させて第2トランジスタ14をオンさせ、再びB点の電位をA点の電位と等しくさせる。その後、所定期間後に第1出力制御信号を再びセンサ部10に入力し、駆動信号TGとしてハイ信号を入力させて第2トランジスタ14をオフさせ、B点の電位を時点T1から時点T2の期間およびその後の所定期間経過後の受光素子11の出力(露光)期間に応じた電位に維持させる。そして、センサ信号の閾値判定を再び行う。すなわち、時点T3は可変であり、時点T3以降の作動は制御部30がセンサ信号の閾値判定を行って当該センサ信号をデジタル信号に変換した後に行われる。
【0032】
制御部30は、図1に示されるように、AD変換器31、コンパレータ32、マイクロコンピュータ(以下、単にマイコンという)33を備えている。なお、本実施形態では、AD変換器31は本発明の第1AD変換手段に相当しており、コンパレータ32は本発明の比較手段に相当しており、マイコン33は本発明の処理手段および第2AD変換手段に相当している。
【0033】
AD変換器31は、センサ部10およびマイコン33と接続されており、マイコン33からAD変換開始信号が入力されると、センサ信号を第1デジタル信号に変換して当該第1デジタル信号をマイコン33に出力する。なお、特に限定されるものではないが、本実施形態では、センサ信号を10ビットの第1デジタル信号に変換してマイコン33に出力する。
【0034】
コンパレータ32は、センサ部10およびマイコン33と接続され、センサ部10からセンサ信号が入力されると共に、基準電圧Vrefから抵抗R1、R2により分圧された閾値としての電圧が入力される。そして、センサ信号と閾値との大小に応じた比較信号をマイコン33に出力する。本実施形態では、基準電圧Vrefはコンパレータ32に入力されるセンサ信号の最大値、つまり飽和信号と等しくされている。また、抵抗R1と抵抗R2とは等しくされており、閾値として基準電圧の1/2の電圧が入力されるようになっている。
【0035】
マイコン33は、図示しないRAM、ROM等を有しており、記憶されたプログラムを実行する。具体的には、出力制御回路12に上記リセット信号、出力(露光)開始信号、第1、第2出力制御信号を出力し、出力制御回路12に第1出力制御信号を出力した時点(図3中では時点T2)におけるコンパレータ32の比較結果に基づいて、センサ信号と閾値との大小を判定する。そして、センサ信号が閾値以上のときはAD変換器31にAD変換開始信号を入力してセンサ信号を第1デジタル信号に変換させ、当該第1デジタル信号が入力されるとこの第1デジタル信号を受光素子11の出力(露光)期間に応じた第2デジタル信号に変換して出力する。また、センサ信号が閾値未満のときは出力制御回路12に第2出力制御信号を出力して受光素子11の出力(露光)期間を延長し、所定期間経過後に再び出力制御回路12に第1出力制御信号を出力してセンサ信号と閾値との大小を判定して判定結果に基づいた処理を行う。なお、受光素子11の出力(露光)期間を延長するとは、言い換えると、受光素子11の出力(露光)をそのまま継続させることであり、再度受光素子11の出力(露光)期間を設定し直すものではない。
【0036】
次に、マイコン33が受光素子11の出力(露光)期間に応じて第1デジタル信号を第2デジタル信号に変換する方法について説明する。マイコン33は、センサ信号が閾値以上と判定したとき、受光素子11の出力(露光)期間に基づき、第1デジタル信号に対して、最上位ビット(以下、単にMSBという)側、または/および最下位ビット(以下、単にLSBという)側に0を追加して15ビットの第2デジタル信号に変換する。例えば、LSB側に0を5つ追加することにより第1デジタル信号をそのままの大きさ(1倍)の第2デジタル信号に変換することができ、MSB側に0を1つ追加すると共にLSB側に0を4つ追加することにより第1デジタル信号を1/2の値となる第2デジタル信号に変換することができ、MSB側に0を2つ追加すると共にLSB側に0を3つ追加することにより第1デジタル信号を1/4の値となる第2デジタル信号に変換することができる。そして、MSB側に0を3つ追加すると共にLSB側に0を2つ追加することにより第1デジタル信号を1/8の値となる第2デジタル信号に変換することができ、MSB側に0を4つ追加すると共にLSB側に0を1つ追加することにより第1デジタル信号を1/16の値となる第2デジタル信号に変換することができ、MSB側に0を5つ追加することにより第1デジタル信号を1/32の値となる第2デジタル信号に変換することができる。
【0037】
すなわち、本実施形態のマイコン33は、最初にセンサ信号と閾値との大小を判定したときの受光素子11の出力(露光)期間をTとしたとき、受光素子11の出力(露光)期間が2T(n=0〜5)であるときの第1デジタル信号を受光素子11の出力(露光)期間がTであるときの露光量を示す第2デジタル信号に変換する。
【0038】
図4は、センサ信号と受光素子11の出力(露光)期間との関係を示すタイミングチャートである。なお、図4において、Vccはセンサ信号が取り得る最大値であり、閾値は1/2Vccとされている。また、図4では、オフセットやノイズ等は無視している。
【0039】
図4に示されるように、AD変換器31およびコンパレータ32にセンサ信号1〜4が入力される場合を考える。上記のように、センサ信号は受光素子11の出力(露光)期間に依存するものである。この場合、例えば、時点Tでは、センサ信号1〜4をデジタル信号に変換することができるが、センサ信号2〜4は閾値を超えておらず、SN比が小さくなるためにセンサ信号2〜4をデジタル信号に変換しても検出精度が低い。一方、時点32Tでは、センサ信号1〜4の出力が全て閾値を越えているが、センサ信号1〜3は飽和状態になっているために正確な検出を行うことができず、センサ信号1〜3をデジタル信号に変換しても検出精度が低い。
【0040】
そして、マイコン33は、上記のように、MSB側または/およびLSB側に0を追加することにより、第1デジタル信号を1倍、1/2倍、1/4倍、1/8倍、1/16倍、1/32倍のいずれかの値とした第2デジタル信号に変換することができる。したがって、本実施形態のマイコン33は、2T(n=0〜5)の時点において、センサ信号が閾値を越えている場合にAD変換器31にセンサ信号を第1デジタル信号に変換させ、当該第1デジタル信号から受光素子11の出力(露光)期間Tにおける第2デジタル信号に変換する。
【0041】
図5は、受光素子11の出力(露光)期間と第2デジタル信号の構造の関係を示す図である。なお、図5において、AD(15)とは第2デジタル信号が15ビットであることを示しており、AD(10)とは10ビットの第1デジタル信号を示している。図4および図5に示されるように、例えば、センサ信号2のような場合には、時点Tではセンサ信号が閾値を超えていないため、マイコン33は、時点2Tにてセンサ信号をAD変換器31にて第1デジタル信号に変換させる。そして、第1デジタル信号に対してMSB側に0を1つ追加すると共にLSB側に0を4つ追加して第1デジタル信号の1/2の値となる第2デジタル信号に変換する。すなわち、マイコン33は、第1デジタル信号を受光素子11の出力(露光)期間がTであるときの露光量を示す第2デジタル信号に変換する。
【0042】
また、例えば、センサ信号3のような場合には、時点T、時点2T、時点4Tではセンサ信号が閾値を超えていない。このため、マイコン33は、時点8Tにてセンサ信号をAD変換器31にて第1デジタル信号に変換させ、当該第1デジタル信号に対してMSB側に0を3つ追加すると共にLSB側に0を2つ追加して第1デジタル信号の1/16の値となる第2デジタル信号に変換する。すなわち、マイコン33は、第1デジタル信号を受光素子11の出力(露光)期間がTであるときの露光量を示す第2デジタル信号に変換する。
【0043】
なお、本実施形態のコンパレータ32の閾値がセンサ信号が取り得る最大値の1/2の値とされているのは、上記のように、マイコン33は、受光素子11の出力(露光)期間が2Tであるときの第1デジタル信号であれば、当該第1デジタル信号を出力(露光)期間がTであるときの露光量を示す第2デジタル信号に変換することができるためである。つまり、センサ信号が閾値未満である場合には、その時点から受光素子11の出力(露光)期間が2倍経過した後であってもセンサ信号が飽和せず、正確な露光量を検出できるためである。
【0044】
次に、このようなライトセンサの作動について説明する。図6は、本実施形態におけるライトセンサのマイコン33が実行するプログラムのフローチャートである。マイコン33は、例えば、車両に搭載されて用いられる場合には、イグニッションスイッチがオンされて外部光の照度を要求する要求信号が入力されると以下の制御を実行する。
【0045】
図6に示されるように、ステップ100では、出力制御回路12にリセット信号を入力し(図2中時点T0)、受光素子11をリセットさせる。具体的には、上記で説明したように、駆動回路17から制御信号RST、TGとしてロー信号を入力させて受光素子11に蓄積された電荷を放出させる。
【0046】
ステップ101では、出力制御回路12に出力(露光)開始信号を入力し(図2中時点T1)、駆動回路17から制御信号RSTとしてハイ信号を入力させて図2中のA点の電位を受光素子11の露光量に応じた電位とすると共に図2中のB点の電位をA点の電位に等しくさせる。これにより、センサ部10から受光素子11の露光量に応じたセンサ信号がAD変換器31およびコンパレータ32に入力される。また、マイコン33は、受光素子11の露光期間を計測する。
【0047】
続いて、受光素子11に期間tとしての所定期間Tの露光を行わせた後(ステップ102)、ステップ103では、出力制御回路12に第1出力制御信号を入力し(図2中時点T2)、駆動回路17から制御信号TGとしてハイ信号を入力させてB点の電位を受光素子11の露光期間Tのときの露光量に応じた電位に維持させる。そして、この状態でコンパレータ32に入力されるセンサ信号と閾値との大小を判定し、センサ信号が閾値未満である場合にはステップ104に進む。またセンサ信号が閾値以上であるときにはステップ106に進む。
【0048】
ステップ104では、受光素子11の露光期間tが32T未満であるかを判定する。本実施形態におけるマイコン33は、MSB側または/およびLSB側に0を追加することにより10ビットの第1デジタル信号を15ビットの第2デジタル信号に変換するものであり、最大でMSB側に0を5つ追加して第1デジタル信号を1/32の値の第2デジタル信号に変換するものである。すなわち、受光素子11の出力(露光)期間が32T以上である場合には、マイコン33では入力された第1デジタル信号を受光素子11の出力(露光)期間がTであるときの露光量を示す第2デジタル信号に変換することができない。このため、センサ信号が閾値未満である場合であっても、露光期間が32T以上である場合には、ステップ106に進む。なお、ステップ104は、言い換えると、受光素子11の露光期間tが32Tであるか否かを判定するステップである。
【0049】
また、ステップ104にて受光素子11の出力(露光)期間が32T未満であると判定した場合には、ステップ105に進み、ステップ102における受光素子11の出力(露光)期間tを2倍にし、受光素子11の出力(露光)を継続させる。すなわち、例えば、ステップ102における受光素子11の出力(露光)期間tがTである場合には、受光素子11の出力(露光)期間を2Tにし、ステップ103の判定を行う際のセンサ信号が受光素子11の出力(露光)期間が2Tであるときの信号となるようにする。また、ステップ102における受光素子11の出力(露光)期間tが2Tである場合には、受光素子11の出力(露光)期間を4Tにし、ステップ103の判定を行う際のセンサ信号が受光素子11の出力(露光)期間が4Tであるときの信号となるようにする。具体的には、上記のように、出力制御回路12に第2出力制御信号を入力し、駆動回路17から制御信号TGとしてロー信号を入力させてB点の電位をA点の電位と等しくさせる。そして、延長期間経過後に再び出力制御回路12に第1出力制御信号を入力し、ステップ103の判定を行う。
【0050】
ステップ106では、AD変換器31にAD変換開始信号を入力し、センサ信号を第1デジタル信号に変換させて当該第1デジタル信号をマイコン33に入力させる。なお、本実施形態では、第1デジタル信号は10ビットのデジタル信号である。
【0051】
続いて、ステップ107では、受光素子11の出力(露光)期間tに応じてAD変換器31から入力された第1デジタル信号を第2デジタル信号に変換する。例えば、受光素子11の出力(露光)期間tがTである場合には、第1デジタル信号をLSB側に0を5つ追加した第2デジタル信号に変換し、受光素子11の出力(露光)期間が2Tである場合には、第1デジタル信号をMSB側に0を1つ追加すると共にLSB側に0を4つ追加した第2デジタル信号に変換する。すなわち、第1デジタル信号から受光素子11を所定期間Tだけ出力(露光)させたときの露光量を示す第2デジタル信号に変換する。そして、ステップ108にて15ビットの第2デジタル信号を外部回路に出力する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、センサ信号が閾値未満の場合には、受光素子11の出力(露光)期間をそのまま延長している。すなわち、センサ部の露光量が下限値より小さい場合には再度露光期間を設定し直してセンサ部の露光を行う従来のものと比較して、露光量が閾値未満のときの露光期間を有効に利用することができ、応答性を早くすることができる。
【0053】
また、マイコン33では、AD変換器31で変換された第1デジタル信号に対してMSB側および/またはLSB側に0を追加することにより、第1デジタル信号を受光素子11の出力(露光)期間Tに応じた第2デジタル信号に変換しているため、第2デジタル信号が入力される側の構造を複雑にすることもない。
【0054】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、センサ部10からのセンサ信号がそのままAD変換器31およびコンパレータ32に入力される構成について説明したが、例えば、センサ部10からのセンサ信号が増幅手段としてのアンプで所定倍に増幅された後、増幅されたセンサ信号がAD変換器31およびコンパレータ32に入力されるようにしてもよい。
【0055】
また、上記第1実施形態では、10ビットの第1デジタル信号を15ビットの第2デジタル信号に変換して出力する例について説明したが、例えば、10ビットの第1デジタル信号を20ビットの第2デジタル信号に変換するようにしてもよい。すなわち、MSB側または/およびLSB側に追加する0の数を適宜変更することにより、第2デジタル信号のビット数を適宜変更することができる。そして、上記第1実施形態ではステップ104にて露光期間tが32T未満であるか否かを判定する例について説明したが、例えば、第2デジタル信号が20ビットである場合にはステップ104にて露光期間tが1024T未満であるか否かを判定するようにすることができる。
【0056】
さらに、上記第1実施形態では、受光素子11の出力(露光)期間に応じて第1デジタル信号を除算して第2デジタル信号に変換する例について説明したが、受光素子11の出力(露光)期間に応じて第1デジタル信号を乗算して第2デジタル信号に変換するようにしてもよい。すなわち、上記第1実施形態では、第2デジタル信号を受光素子11の出力(露光)期間がTであるときの露光量を示す信号とする例について説明したが、例えば、第2デジタル信号を受光素子11の出力(露光)期間が32Tであるときの露光量を示す信号とすることもできる。
【0057】
そして、上記第1実施形態では、コンパレータ32の閾値を入力されるセンサ信号が取り得る最大値の1/2の値とし、センサ信号が閾値未満の場合には受光素子11の出力(露光)期間を2倍にする例について説明したが、閾値や受光素子11の出力(露光)延長期間は適宜変更可能である。
【0058】
また、上記第1実施形態では、マイコン33は、本発明の処理手段と第2AD変換手段とを備えているものを説明したが、例えば、マイコン33は処理手段のみを有し、第2AD変換手段を行う別のAD変換器を新たに備えてもよい。また、マイコン33は、本発明の第1AD変換手段や比較手段を備えたものとすることもできる。
【0059】
さらに、上記第1実施形態では、第1デジタル信号を受光素子11の出力(露光)期間に応じて第2デジタル信号に変換する例について説明したが、例えば、マイコン33は第1デジタル信号を第2デジタル信号に変換せずにそのまま出力するようにしてもよい。このようなライトセンサを構成したとしても、制御部30はセンサ信号が閾値未満のときは受光素子11の出力(露光)期間をそのまま延長するため、本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 センサ部
11 受光素子
12 出力制御回路
30 制御部
31 AD変換器
32 コンパレータ
33 マイコン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光量に応じた電気的信号を出力する受光素子(11)と、前記受光素子(11)の出力期間を制御して所定時における前記電気的信号をアナログ信号であるセンサ信号として出力する出力制御回路(12)と、を有するセンサ部(10)と、
前記アナログ信号であるセンサ信号をデジタル信号に変換する制御部(30)と、を備え、
前記制御部(30)は、
前記センサ信号が入力され、前記センサ信号と所定の閾値とを比較する比較手段(32)と、
前記比較手段(32)の比較結果に基づいてAD変換開始信号を出力する処理手段(33)と、
前記センサ信号が入力され、処理手段(33)から前記AD変換開始信号が入力されると前記センサ信号を第1デジタル信号に変換する第1AD変換手段(31)と、を有し、
前記処理手段(33)は、前記出力制御回路(12)に前記受光素子(11)が所定期間出力したときの所定期間経過時の前記電気的信号を前記センサ信号として前記比較手段(32)に入力させ、前記比較手段(32)の比較結果に基づき、前記センサ信号が前記閾値以上のときは前記第1AD変換手段(31)に前記AD変換開始信号を入力して前記センサ信号を前記第1デジタル信号に変換させ、前記センサ信号が前記閾値未満のときは前記出力制御回路(12)に前記受光素子(11)の出力期間を延長させ、延長期間経過時の前記電気的信号を前記センサ信号として前記比較手段(32)に入力させて前記比較手段(32)の比較結果に基づいた処理を行うことを特徴とするライトセンサ。
【請求項2】
前記制御部(30)は、前記受光素子(11)の出力期間に応じ、前記第1デジタル信号を所定の出力期間に対する露光量を示す第2デジタル信号に変換する第2AD変換手段(33)を備えていることを特徴とする請求項1に記載のライトセンサ。
【請求項3】
前記第2AD変換手段(33)は、前記受光素子(11)の出力期間に応じて前記第1デジタル信号の最上位ビット側または/および最下位ビット側に0を追加することにより、前記所定の出力期間に対する露光量を示す前記第2デジタル信号に変換することを特徴とする請求項2に記載のライトセンサ。
【請求項4】
前記閾値は、前記比較手段(32)に入力される前記センサ信号が取り得る最大値の1/2の値とされており、
前記処理手段(33)は、前記センサ信号が前記閾値未満のとき、前記出力制御回路(12)に前記受光素子(11)の出力期間を2倍に延長させ、延長期間が経過したときの前記比較手段(32)の比較結果に基づいた処理を行うことを特徴とする請求項3に記載のライトセンサ。
【請求項5】
前記第2AD変換手段(33)は、前記受光素子(11)の出力期間を延長した後の前記センサ信号が前記閾値未満の場合であって、前記最上位ビット側および前記最下位ビット側に0を追加できる合計の数をn、前記受光素子(11)の最初の出力期間をTとしたとき、前記受光素子(11)の出力期間が2Tとなったとき、前記センサ信号が前記閾値未満の場合であってもその時点における前記センサ信号を前記第1AD変換手段(31)にて第1デジタル信号に変換させることを特徴とする請求項4に記載のライトセンサ。
【請求項6】
前記センサ部(10)と接続される増幅手段を備え、
前記第1AD変換手段(31)および前記比較手段(32)には、前記増幅手段にて増幅された前記センサ信号が入力されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のライトセンサ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載のライトセンサは、車両に搭載されて用いられ、太陽光を検出するのに用いられることを特徴とする車両用ライトセンサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−11449(P2013−11449A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142720(P2011−142720)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】