説明

ライニング施工方法

【課題】 帯状部材を巻回して更生管を形成する製管機に対し、帯状部材の供給状態を安定化させて、既設管内に作業者を立ち入らせなくとも効率よくライニング施工できるようにする。
【解決手段】 既設管200の内面を周方向に回転しつつ既設管200の軸心方向に移動して製管する製管機1に対し、帯状部材100を螺旋状に供給する送り装置10を製管機1に到るまでの経路に設ける。そして、送り装置10を製管機1の製管動作に対応させて駆動し、この送り装置10から帯状部材100を既設管200の軸心方向に送りつつ軸心周りに回転させて供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水管、下水道管、上水道管、ガス管などの既設管の内面に長尺の帯状部材を螺旋状に巻回して更生する、ライニング施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用水管、下水道管、上水道管などの既設管が、ひび割れや腐食などを生じたり、老朽化したりした場合の対策の一つとして、既設管の内面を合成樹脂材にてライニングして更生する方法がある。
【0003】
この種の方法は、両側縁部に接合部を備えた長尺の帯状部材を用い、この帯状部材を既設管内において螺旋状に巻回して、ライニング用の更生管を形成するものである。例えば、特許文献1には、帯状部材を巻いた輸送ドラムを地上に設置し、既設管内に製管機を配置して、前記輸送ドラムから帯状部材を製管機に連続的に供給するとともに螺旋状に巻回し、巻回すことで隣接した帯状部材の接合部同士を接合し、管状に形成する方法が記載されている。更生管はそのまま既設管内に残置されるとともに、新たに帯状部材を供給して巻回及び接合していくことで、順次、更生管が付加形成される。
【0004】
例えば図17に示すように、製管機300は、複数の案内ローラ320が軸支された環状の成形フレーム310と、帯状部材600の両側縁部の接合部同士を接合する接合機構部330とを備える。接合機構部330は、アウターローラ331とインナーローラ332とを備え、帯状部材600を挟み込み、接合部を接合することによって管状に形成していく。製管機300は、帯状部材600を接合機構部330から送り出す反作用によって、既設管200の内面に沿って周回移動する。
【0005】
帯状部材600は、硬質塩化ビニル等の可撓性を有する合成樹脂系材料を用いて押出成形されている。既設管200の更生を行う現場へは、長尺の帯状部材600が輸送ドラムに巻き重ねられて輸送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−342915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ライニング施工過程では、製管機が既設管内を周方向に回転しながら軸心方向へ進行して製管するので、輸送ドラムから引き出した帯状部材を、製管機に対して螺旋状に送り込むことで円滑に製管させることが可能となる。このとき、製管機に対する帯状部材の送り量に過不足が生じると帯状部材の螺旋形状が変形する不具合を生じる。つまり、製管機に対する帯状部材の送り量が不足すると、地上の輸送ドラムから製管機までの間で螺旋状の帯状部材の螺旋の径が小さくなるとともに螺旋のピッチが大きくなり、ついには破断してしまうおそれがある。また、製管機に対して帯状部材の送り量が過剰であると、螺旋状の帯状部材の螺旋の径が大きくなるとともに螺旋のピッチが小さくなり、帯状部材に捩れや反転を生じたりするおそれがあった。
【0008】
特に、製管作業が進行し、地上の輸送ドラムから製管機までの距離が長くなると、帯状部材の螺旋形状に不具合を生じやすくなり、製管機への供給状態を安定させることが困難となってしまう。このため、マンホールを臨む地上に作業者を配置し、作業者が輸送ドラムから引き出された螺旋状の帯状部材の流れを観察し、螺旋の径及び螺旋のピッチを略一定に維持するように調整しながらマンホールに供給するようにしていた。また、既設管内に配置した作業者が帯状部材の供給状態を確認し、調整することによって捩れや反転等を未然に防止したり、手作業で元の状態に修正したりしなければならかった。
【0009】
この結果、更生管の製管作業に際して多くの作業者が必要となり、手間と工数がかかり、作業効率を低下させるという問題点があった。また、既設管の径が一定以下の場合、作業者が内部で作業することができず、更生管を製管することができないという欠点もあった。また、既設管内での作業者の安全性を考慮すれば、帯状部材の供給状態を安定化させることによって捩れ等を生じないようにし、既設管内に作業者を配備しないで済むライニング施工方法が望まれた。
【0010】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、製管機への帯状部材の供給状態を安定化して、老朽化した既設管の更生作業に係る省力化を図り、既設管内に作業者を立ち入らせなくとも効率よく施工することのできるライニング施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、両側縁部に接合部を備える長尺の帯状部材を既設管内の製管機に供給し、製管機により螺旋状に巻回するとともに、巻回により隣接した帯状部材の接合部同士を接合して更生管を形成し、既設管の内面を更生するライニング施工方法を前提とする。前記製管機は、既設管の内面を周方向に回転するとともに既設管の軸心方向に移動しながら製管する。そしてライニング施工方法として、製管機に対し帯状部材を螺旋状に供給する送り装置を、前記製管機に到るまでの経路に設け、前記帯状部材を、既設管の軸心周りに回転させ、かつ既設管の軸心方向又は該軸心方向と交差する方向に角度をつけて送り出すために、前記製管機の管軸方向の移動速度又は移動量に対応するように前記送り装置を駆動する構成としている。
【0012】
このような特定事項により、更生管を形成する製管機に対し、その製管動作すなわち製管機の管軸方向の移動速度又は移動量に対応させて帯状部材を過不足なく螺旋状に供給することができ、帯状部材の供給状態を安定的に維持することが可能となる。帯状部材を既設管の軸心周りに回転させる動作と、既設管の軸心方向又は該軸心方向と交差する方向に角度をつけて送る動作とは、製管機の製管動作に対応して、同時に行ってもよいし、どちらかから順に行ってもよい。このようにして帯状部材を螺旋状に供給することにより、製管機から送り装置までの経路に送られた帯状部材は、ほぼ同じ径の螺旋形状を維持して、あたかも静止しているかのように見える状態で動く。そのため、帯状部材を製管機に対して安定した螺旋形状で送り込むことができ、極めて円滑な製管作業が可能となる。
【0013】
かかるライニング施工方法により、作業者が担ってきた帯状部材の供給作業を、送り装置によって代行することができ、手間と工数を削減することができるとともに、既設管の管径の大小にかかわらず、作業者が進入できないような小径の既設管であっても、更生管を効率よく製管することが可能となる。
【0014】
前記ライニング施工方法のより具体的な構成として次のものが挙げられる。まず、前記送り装置から製管機へ供給する帯状部材を、当該製管機の周方向の回転及び軸心方向の移動に対応した螺旋の径及び螺旋のピッチを有する螺旋状とする構成である。
【0015】
つまり、更生管を形成する際、製管機の周方向の回転及び軸心方向の移動によって、当該製管機が帯状部材を螺旋状に引き込みつつ製管動作を行うような状態となる。前記送り装置においては、これに対応させて、帯状部材を当該製管機の周方向の回転及び軸心方向の移動に対応した螺旋の径及び螺旋のピッチを有する螺旋状に送り出すようにする。その結果、製管機と送り装置との間で、帯状部材の適正な螺旋形状が安定的に維持されて、帯状部材に捩れや反転等が生じるのを防止することができる。
【0016】
また、前記送り装置から供給する帯状部材の量を、更生管の製管に使用した帯状部材の量に相当する量とする構成であってもよい。
【0017】
つまり、製管過程で、製管機は製管した更生管の長さ分だけ、既設管の軸心方向に移動するので、送り装置と製管機との間隔が徐々に拡大する。送り装置からは、この更生管の製管に使用した単位時間当たりの帯状部材の長さ分に対応させて、帯状部材を送り出すようにする。これにより、製管機に対して螺旋状の帯状部材を安定的に供給することができる。
【0018】
また、前記製管機又は送り装置に撮像手段を付設し、当該撮像手段から得られる映像により帯状部材の螺旋形状を観察し、帯状部材の供給状態を調整する構成としてもよい。
【0019】
これにより、前記製管機に対応して駆動する送り装置が、帯状部材を安定的に供給する様子を既設管の外部から確認することができ、撮像手段から得られた映像に基づき、必要に応じて帯状部材の供給状態を調整することが可能である。
【0020】
また、前記ライニング施工方法において、前記送り装置は、多様な形態で設置することが可能である。つまり、前記送り装置を、既設管に接続するマンホール内に設置する構成としてもよいし、また、形成した更生管内に設置する構成としてもよい。送り装置の配置形態は、更生対象となる既設管の長さや管径等の諸条件に応じて決定される。
【0021】
さらに、前記送り装置は、製管作業の進行に伴って、前記製管機に到るまでの経路に新たな送り装置を追加して設置し、各送り装置を相互に対応させて駆動する構成としてもよい。
【0022】
つまり、更生対象の既設管の長さが長いような場合、製管過程で製管機までの間に滞留する帯状部材の長さが長くなり、その重量も増大する。そこで、当初に設置した送り装置に加え、設定間隔ごとに順次、送り装置を設置し、複数の送り装置を経由して帯状部材を供給する。これらの複数の送り装置は、相互に対応させて駆動させることによって、既設管の長さが長い場合であっても、帯状部材を製管機に対して安定した状態で円滑に供給することが可能となる。
【0023】
また、前記のライニング施工方法において、更生管内に設置する送り装置に走行手段を設け、当該送り装置を前記製管機の軸心方向の移動に対応させて、更生管内を軸心方向に移動させるようにしてもよい。
【0024】
つまり、更生管内に設置する送り装置を更生管に固定する方法だけでなく、走行手段を設けて更生管内を走行させるようにしてもよい。この場合、既設管の軸心方向に移動する製管機と、この送り装置との間隔を一定の範囲内に保ち、帯状部材の良好な供給状態を維持することが可能となる。これにより、当該送り装置を既設管の軸心方向に移動させつつ安定的に帯状部材を供給することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、帯状部材により更生管を形成する製管機に対し、帯状部材を螺旋状に供給する送り装置を設け、当該送り装置を前記製管機の製管動作に対応させて駆動し、前記帯状部材を既設管の軸心方向へ送り、及び既設管の軸心周りに回転させて供給する構成としている。このため、製管機への帯状部材の供給状態を安定化させ、老朽化した既設管の更生作業に係る省力化を図って、既設管内に作業者を立ち入らせなくとも効率よく施工することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係るライニング施工方法を模式的に示す説明図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は前記ライニング施工方法に用いる帯状部材の一例を示し、図2(a)が帯状部材の接合部を接合する様子を示す説明図、図2(b)が帯状部材の接合部が接合された様子を示す説明図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は帯状部材の他の例を示し、図3(a)は帯状部材の断面図、図3(b)は帯状部材の接合部部分の斜視図である。
【図4】前記ライニング施工方法に用いる製管機の一例を示す正面図である。
【図5】前記製管機における接合機構部を拡大して示す説明図である。
【図6】前記製管機の成形フレームを構成するリンク体を示し、図6(a)は正面図、図6(b)は平面図である。
【図7】前記製管機の接合機構部の駆動部を一部断面により示す側面図である。
【図8】前記製管機の接合機構部の嵌合部を一部断面により示す側面図である。
【図9】前記製管機の支持車輪及びその周囲を示す平面図である。
【図10】前記ライニング施工方法に用いる送り装置の一例を示す正面図である。
【図11】前記送り装置を構成する支持フレームおよび回転フレームを一部省略して示す分解斜視図である。
【図12】前記送り装置の動力伝動機構を一部省略して示す拡大斜視図である。
【図13】前記送り装置の他の形態を示し、動力伝動機構を一部省略して示す拡大斜視図である。
【図14】前記送り装置のさらに他の形態を示し、支持フレームおよび回転フレームを一部省略して示す分解斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態に係るライニング施工方法の他の例を模式的に示す説明図である。
【図16】本発明の実施の形態に係るライニング施工方法のさらに他の例を模式的に示す説明図である。
【図17】従来の製管機の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係るライニング施工方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1は、実施の形態に係るライニング施工方法を模式的に示す説明図である。なお、以下の説明において、説明の便宜上、製管機によって更生管を製管する際の管路における製管機の進行方向を前方、その反対方向を後方とする。
【0029】
一実施形態としてのライニング施工方法では、両側縁部に接合部を備える長尺の帯状部材100を既設管200の製管機1に供給し、製管機1により螺旋状に巻回するとともに、巻回により隣接した帯状部材100の接合部同士を接合して更生管130を形成し、既設管200の内面を更生する。製管機1は、既設管200の内面を周方向に回転しつつ既設管200の軸心方向に移動して製管する。
【0030】
ここで、製管機1及び送り装置10の説明に先立ち、製管機1に供給されて、更生管130を形成するものとなる帯状部材100について説明する。その後、製管機1並びに送り装置10、及びこれらを用いたライニング施工方法について説明する。
【0031】
−帯状部材−
図2(a)及び図2(b)は前記ライニング施工方法に用いる帯状部材の一例を示し、図2(a)が帯状部材の接合部を接合する様子を示す説明図、図2(b)が帯状部材の接合部が接合された様子を示す説明図である。
【0032】
帯状部材100は、硬質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂材料を用いて押出成形により形成され、可撓性を有する。
【0033】
図2(a)に示すように、帯状部材100は、帯板状の基板101の長手方向に沿って、複数条のリブ102を備えている。例示の形態では、リブ102は3本であり、先端部が断面略T字状に形成されている。
【0034】
帯状部材100の両側縁部には、接合部として、接合凸部103と接合凹部104とが設けられている。基板101の一方の側縁部(図2(a)における右側)には、接合凸部103が立設されている。基板101の他方の側縁部(図2(a)における左側)には、接合凸部103が嵌入し得る接合凹部104が設けられている。接合凸部103の近傍には、これらの接合部同士を接合したとき、相互の滑りを防止して密着させるエラストマー等の軟質弾性体が配設されていてもよい。
【0035】
帯状部材100は、接合凹部104に隣接して、側縁部に傾斜リブ105を備える。また、帯状部材は、接合凹部104の設けられた部分が、基板101の厚み分ほど凹ませた凹部106とされている。凹部106には、隣接した帯状部材100の基板101が重ね合わされるとともに、接合凹部104に、隣接した帯状部材100の接合凸部103が嵌め込まれる。
【0036】
このような帯状部材100は、基板101のリブ面側、すなわち、複数条のリブ102等が立設された面が、更生管130の外面側となるように、製管機1に供給される。製管過程では、帯状部材100が螺旋状に巻回されることで、図2(a)に示すように、帯状部材100の一方の側縁部と他方の側縁部とが、互いに隣接する状態となる。そして、図2(b)に示すように、帯状部材100は、一方の接合凸部103を他方の接合凹部104に嵌め込んで接合される。
【0037】
このとき、後続する帯状部材100の接合凸部103、及び基板101の側縁部が、先行する帯状部材100の凹部106に配置される。また、後続する帯状部材100には、接合凸部103寄りのリブ102の略T字状の先端部に、先行する帯状部材100の傾斜リブ105が係止する。これにより、図2(b)に示すように、帯状部材100の隣接した接合部同士が接合される。
【0038】
また、後述する図7及び図10に示す例では、帯状部材100に補強材108が装着されている。補強材108は、長手方向に連続した帯板状の鋼板を断面略W字状に折曲形成したものであり、帯状部材100の隣り合うリブ102、102間に装着されて、形成する更生管130の強度を高める。
【0039】
帯状部材100は、接合凸部103と接合凹部104との嵌合と、傾斜リブ105とリブ102との係止によって接合強度が高められ、更生管130としての止水性も高められる。帯状部材100は、図1に示すように、輸送ドラム91に巻き取られて施工現場に用意され、この輸送ドラム91から既設管200へ繰り出される。
【0040】
なお、更生管を形成する帯状部材としては、図3(a)及び図3(b)に示すように、コネクタ120を介して接合される帯状部材100Aであってもよい。図3(a)は、帯状部材100Aを示す断面図であり、図3(b)は帯状部材100Aの接合部及びコネクタ120の斜視図である。
【0041】
この帯状部材100Aは、帯状体110と、隣接する帯状体110の側縁部同士を接合するコネクタ120とからなる。帯状体110は、基板111に複数条のリブ112を備え、長尺の帯板状に成形された部材である。帯状部材100Aの両側縁部には、凹形状の接合部113が、長手方向に沿って連続的に設けられている。接合部113は、巻回により帯状体110の側縁部同士が隣接すると、2つの接合部113、113は突き合わされて凸形状となる。
【0042】
コネクタ110は、一対の接合凸部121、121を備える。一対の接合凸部121は、121は、長手方向に沿って連続的に形成され、突き合わされた帯状体110の接合部113、113の凸形状に対応して形成されている。
【0043】
帯状部材100Aは、製管過程で帯状体110、110が互いに隣接し、その両側縁部の接合部113、113にまたがってコネクタ120が嵌め込まれ、相互に接合される。
【0044】
−製管機−
次に、実施の形態に係る製管機1について説明する。
【0045】
図4は、製管機の一例を示す正面図であり、図5は図4の製管機の接合機構部を拡大して示す説明図である。なお、図5では、接合機構部が既設管の下方(管底部)に移動した状態を示している。
【0046】
また、図6(a)及び図6(b)は、製管機の成形フレームを構成するリンク体を示し、図6(a)は正面図、図6(b)は平面図である。図7は、接合機構部の駆動部を示す側面図、図8は接合機構部の嵌合部を示す側面図である。図9は、製管機の接合機構部及びその周囲を示す平面図である。
【0047】
製管機1は、帯状部材100を螺旋状に案内する成形フレーム2と、成形フレーム2に回転自在に設けられた複数個の案内ローラ3と、成形フレーム2に取り付けられて、隣接する帯状部材100を互いに接合する接合機構部4とを備えている。
【0048】
<成形フレーム2>(図4、図6参照)
成形フレーム2は、一定の幅を有して環状に形成されている。例示の形態の成形フレーム2は、回転自在に連結された複数個のリンク体21を備える。
【0049】
図6(a)に拡大して示すように、成形フレーム2は、一組のリンクフレーム22、23が軸部24を介して回動自在に連結されて一つのリンク体21を構成し、複数個のリンク体21…21が相互に連結されて略環状をなすように形成されている。
【0050】
図6(b)に示すように、各リンク体21を構成するリンクフレーム22、23は、対向する一対のリンクプレート221,231と、これらの対向する一対のリンクプレート221,231の一端部間に架設された連結プレート222,232とからコ字状に形成したものである。そして、リンクフレーム22における一対のリンクプレート221,221の各他端部に、リンクフレーム23における一対のリンクプレート231,231の各他端部をそれぞれ重ね合わせ、軸部24を介して回転自在に連結することにより、リンク体21が形成されている。
【0051】
また、隣接するリンク体21,21は、リンクフレーム22,23の連結プレート222同士又は連結プレート232同士を突き合わせ、ボルトナット等により着脱自在に連結されている。つまり、成形フレーム2は、リンク体21の連結を外すことで分解が可能であり、これを連結することで既設管200内での組み立ても可能である。
【0052】
このようなリンク体21は、成形フレーム2を直線状に形成するために特定の隣接するリンク体21,21間が着脱できるならば、残りのリンク体21の連結プレート222,232については、溶接などによって着脱不能に結合されていてもよい。
【0053】
リンクフレーム22の一対のリンクプレート221、221の各他端部には、回動規制片26が設けられている。また、リンクフレーム23の一対のリンクプレート231、231の各他端部には、回動規制片26に対応する切欠部27が設けられている。切欠部27は、軸部24の回転中心を中心とする設定半径上の一定範囲にわたって形成されている。これにより、リンクフレーム22、23の相互の回動動作を、回動規制片26と切欠部27とが当接するまでの角度範囲に規制し、リンク体21が内方或いは外方へ屈曲することを防止している。
【0054】
・案内ローラ3(図4参照)
成形フレーム2の各軸部24には、案内ローラ3が装着されている。複数個の案内ローラ3は、リンク体21の軸部24を介して成形フレーム2に回転自在に支持されている。各案内ローラ3は、例えば硬質の合成樹脂体又は金属体からなる。成形フレーム2に設けたこれらの複数個の案内ローラ3は、巻回される帯状部材100の内面に当接する。
【0055】
・屈折リンク5(図4参照)
成形フレーム2には、屈折リンク5も設けられている。図4に示すように、屈折リンク5は、リンク体21のリンクフレーム23に対し、一端部が回動可能に連結されたリンク部材51,51を備える。このリンク体51の一端部には、リンクプレート231の切欠部27に対応する回動規制片52が設けられ、リンク体21に対する屈折リンク5の回動範囲が規制されている。また、屈折リンク5は、リンク部材51、51の他端部同士が、屈曲状態で回動可能に連結されている。
【0056】
また、屈折リンク5はリンクアーム53、53を備える。リンクアーム53、53は基端部が回動自在に連結され、他端部がそれぞれリンク部材51、51に回動自在に連結されている。リンクアーム53、53の基端部には、ねじ軸54がリンク部材51の連結軸を通してねじ結合されている。ねじ軸54には、成形フレーム2の内側にハンドル55が備えられている。これにより、ハンドル55を回転させると、ねじ軸54を介してリンクアーム53、53のなす角度が増減し、リンク部材51、51のなす角度が増減して、成形フレーム2を拡径又は縮径させることができる。
【0057】
なお、屈折リンク5にはその屈曲形状を開閉変化させることのできる手段であればこれに限られず、上記のように機械的作用により屈折リンク5を開閉調整するもののほか、油圧シリンダや空気圧により伸縮作動させるエアシリンダ等が用いられてもよい。
【0058】
<接合機構部4>(図4、図5、図7、図8参照)
接合機構部4は、リンク体21に回動自在に連結された連結フレーム29,29を介して成形フレーム2に設けられている。連結フレーム29は、剛性を有して長さのあるフレーム体であって、図4に示すように、接合機構部4を既設管200の内面に対して弧を描く直線状に配設されている。接合機構部4は、案内ローラ3aおよび更生管130を介して既設管200に支持された連結フレーム29によって、成形フレーム2と一体化され、既設管200の内周面から一定距離だけ離隔した状態で支持される。
【0059】
接合機構部4は、既設管200の内面に沿って成形フレーム2を周回移動させるように作用する駆動部48と、帯状部材100の接合部同士を嵌合させて接合する嵌合部49とを備える。駆動部48及び嵌合部49は、それぞれ、インナーローラとアウターローラとが組となったピンチローラを主体として構成されている。
【0060】
図5に示すように、駆動部48は、インナーローラ42aとアウターローラ43aとからなるピンチローラ41aを備えている。嵌合部49は、インナーローラ42bとアウターローラ43bとからなるピンチローラ41bを備えている。
【0061】
駆動部48及び嵌合部49においては、ピンチローラ41a,41bが、既に巻回された2周目以降の帯状部材100(更生管130)に対応する部分と、新たな1周目の帯状部材100に対応する部分とが、それぞれ異なる構造を有することにより、更生管130への帯状部材100の送り速度を一定に保持する仕組みとなっている。これにより帯状部材100,100の接合部同士を緩みなく接合させるようにしている。
【0062】
・駆動部48(図7参照)
駆動部48は、ピンチローラ41aとしてインナーローラ42aとアウターローラ43aとを備える。
【0063】
インナーローラ42aは、径の異なる2つの円筒状のローラ(第1ローラ部421、第2ローラ部422)を同軸上に備え、第1ローラ部421よりも第2ローラ部422の方が、大きい径で形成されている。第1ローラ部421及び第2ローラ部422の外周面は、ともに、硬質ウレタンゴム、シリコン樹脂等の弾性を有する合成樹脂系材料又は合成ゴム系材料により形成されている。
【0064】
アウターローラ43aは、基部寄りの略半部(1周目の帯状部材100の幅に相当)に小径の円筒体432を備え、先端寄りの略半部(2周目の帯状部材100の幅に相当)には、複数の円盤状のローラ部431…431を円筒本体433の外周に備えた構成とされている。ローラ部431…431は、帯状部材100のリブ102、102間の溝に嵌り込む間隔で設けられ、既に巻回して接合された帯状部材100の外周面に接触して回転する。複数のローラ部431のうち、補強材108の装着されたリブ102、102間に対応するローラ431aには、帯状部材100の補強材108の凸部に嵌り合う溝が周面に凹設されている。円筒本体433の表面にはローレット加工が施され、帯状部材100の略T字状のリブ102の先端部に接し、帯状部材100との滑りを防ぐ。
【0065】
アウターローラ43aとインナーローラ42aとの相互間は、基部寄りの略半部(第1ローラ部421側)が、帯状部材100の厚みよりも広く離間しており、帯状部材100を挟み込む作用を備えない。これに対し、先端寄りの略半部(第2ローラ部422側)は、アウターローラ43aとインナーローラ42aとの相互間に帯状部材100を挟み込んで押圧する作用をなす。よって、新たに接合機構部4に供給された1周目の帯状部材100は、インナーローラ42aの第1ローラ部421とアウターローラ43aとの間を、挟まれることなくそのまま通り、隣接する嵌合部49へ移動する。
【0066】
また、インナーローラ42aの第2ローラ部422とアウターローラ43aとの間では、既設管200に沿って1周分巻回された帯状部材100が、接合部同士を接合した状態で送り込まれ、第2ローラ部422とアウターローラ43aとに挟み込まれる。インナーローラ42aが回転駆動され、アウターローラ43aにローレット加工がなされていることにより、挟み込まれた帯状部材100(更生管130)は滑ることなく挟持される。このように、インナーローラ42aの第2ローラ部422とアウターローラ43aとの間から帯状部材100を送り出す際の反力によって、接合機構部4及び成形フレーム2が、帯状部材100の送り込み方向とは逆方向に周回移動(公転)する。これにより、駆動部48は、製管機1を既設管200内に駆動させるものとなる。
【0067】
・嵌合部49(図8参照)
嵌合部49は、ピンチローラ41bとして、インナーローラ42bとアウターローラ43bとを備える。
【0068】
インナーローラ42bは、ともに同径の第1ローラ部423及び第2ローラ部424から形成されている。インナーローラ42bは、第1ローラ部423で帯状部材100の接合部同士を接合させ、第2ローラ部424で、既に接合された2周目以降の帯状部材100(更生管130の端部)に接する。
【0069】
第1ローラ部423は、インナーローラ42bの回転軸に対して軸受け機構を介して配設され、回転自在に軸支されている。これにより、帯状部材100との間で抵抗を生じることなく回転し、アウターローラ43bとの間に帯状部材100を挟み込む。
【0070】
アウターローラ43bは、帯状部材100のリブ形状に合わせた複数の円板状のローラ部431…431を備えている。アウターローラ43bにおいて、ローラ部431…431は、帯状部材100に格別当接することは必要なく、リブ102、102間の溝部に嵌り位置決めするように配設されている。アウターローラ43bのうち、インナーローラ42bの第2ローラ部424に対向する範囲には、円筒本体433の外周面にローレット加工が施されている。
【0071】
インナーローラ42b及びアウターローラ43bは、駆動部48を経た帯状部材100を挟み込み、その接合部同士を接合する。また、インナーローラ42bの第1ローラ部423は回転自在であるので、スムーズに帯状部材100を送りつつ接合部同士を接合させることができる。このとき、1周目の帯状部材100の接合凸部103を、隣接する2周目の帯状部材100の接合凹部104に嵌め込み、傾斜リブ105をリブ102の先端部に対して嵌め込む。これにより、帯状部材100の接合部同士が接合されて、更生管130が形成されていく。
【0072】
また、インナーローラ42bの第1ローラ部423は回転自在であることから、1周目の帯状部材100と2周目以降の帯状部材100との間に速度差を生じることがなく、更生管130の巻き太り現象を防ぐことができる。その結果、更生管130は一定の管径を保って接合部が密着されるので、高精度で止水性の高い管体とすることができる。
【0073】
このように、例示の形態において、接合機構部4は、駆動部48のピンチローラ41aのみに駆動をかける形式を採用し、1周目の帯状部材100と2周目以降の帯状部材100との間に速度差を生じさせることなく円滑な製管作業を可能としている。なお、接合機構部4の駆動部48及び嵌合部49の双方のピンチローラ41a,41bに駆動をかける形式を採用してもよく、この場合、製管開始用の数巻き分の更生管130を形成する際に有効であり、より一層スムーズに作業性よく初期製管を行うことができる。また、接合機構部4のピンチローラとしては、接合部の嵌合と成形フレームの駆動との作用を共に備えた従来構造のものを採用してもよい。
【0074】
・ギヤボックス40(図4、図5、図7、図8参照)
成形フレーム2には、連結フレーム29,29を介してギヤボックス40が固定されている。ギヤボックス40は、歯車機構46の軸部を保持している。ギヤボックス40の前面部には、油圧モータ45が取り付けられている。
【0075】
図5に示すように、ピンチローラ41a、41bは、ギヤボックス40に歯車機構46を介して軸支されている。インナーローラ42a、42bの回転軸、及びアウターローラ43a、43bの回転軸は、帯状部材100を螺旋状に供給しようとするリード角に対して軸線方向が直交するように配置される。油圧モータ45が回転駆動すると、その出力軸に固定された歯車及びこれに噛み合った歯車を介して、インナーローラ42a、42bの回転軸、及びアウターローラ43a、43bの回転軸が互いに逆方向に回転し、ピンチローラ41a、41bを作動させる。
【0076】
ギヤボックス40の外側にはスプリング402を有する衝撃吸収部材401が設けられており、既設管200の内面の凹凸等によっても、ギヤボックス40の外面を押圧してインナーローラ42a、42bとアウターローラ43a、43bの相互間隔を維持するように作用する。
【0077】
・油圧モータ45(図7、図8参照)
油圧モータ45は、ギヤボックス40に取り付けられ、油圧ユニット93から圧油ホースを介して供給される圧油によって駆動する。油圧ユニット93は、発電機92から供給される電力によって駆動している。油圧ユニット45から伸びる圧油ホースは、回転継手94を介して油圧モータ45に接続されている。
【0078】
<支持車輪>(図4、図5、図7、図8、図9参照)
図4、7に示すように、接合機構部4の側部には、支持車輪6、6が設けられている。支持車輪6、6は、ブラケット61がギヤボックス40の側面に取り付けられており、このブラケット61の下部に延設された支持部材62を介して回動自在に設けられている。
【0079】
支持車輪6、6は、アウターローラ43a、43bよりも大径であり、回転軸をアウターローラ43a、43bの回転軸と異なる位置に備えている。これにより、支持車輪6、6は、アウターローラ43a、43bを既設管200に接触させることなく、接合機構部4を既設管200の内面に支持する。
【0080】
例示の形態では、支持車輪6の各回転軸は、既設管200の径方向に対しては、アウターローラ43a、43bの回転軸よりも、既設管200の内面寄りに配設されている。また、アウターローラ43a、43bの軸方向(長さ方向)に対しては、接合機構部4の重心に可能な限り近づけて支持車輪6、6が配設されている。つまり、各支持車輪6は、アウターローラ43a、43bを軸支するギヤボックス40及び歯車機構46に近接して設けられている。また、2つの支持車輪6、6は、既設管200の周方向に対しては、アウターローラ43a、43bを既設管200に接触させない位置となるように、それぞれ配置されている。
【0081】
各支持車輪6は、ブラケット61に設けられた複数の長孔61aを介してギヤボックス40の側面に取り付けられている。支持車輪6は、これらの長孔61aを介した取着位置を調整することにより、既設管200の径方向に対する支持車輪6の回転軸の位置を変更することができる。
【0082】
かかる支持車輪6、6は、接合機構部4の周回移動に伴って既設管200の内面に接触して回転する。また、支持車輪6、6は、接合機構部4を既設管200の内面に支持するので、更生管130の製管に際してアウターローラ43a、43bと既設管200の内面とを接触させないように作用する。
【0083】
これにより、既設管200の径方向において、アウターローラ43a、43bを既設管200に接触させることなく回転させることができる。さらに、接合機構部4の両側部に延設されている連結フレーム29,29が、ギヤボックス40及び支持車輪6、6の軌道を既設管200に対して安定的に保持する。このように、アウターローラ43a、43bは、既設管200に接触しない配置形態で支持されているので、既設管200の内面の状況にかかわらず、駆動に影響するような摩擦力を生じることもなく、製管作業を極めてスムーズに進めることができる。
【0084】
なお、支持車輪6は、前記のような形態で構成するに限らず、アウターローラ43a、43bの周回軌道を既設管200の内面よりも内側に維持する構造であれば、どのように形成されていてもよい。例えば、支持車輪6はその軸方向に長さを増した車輪体であってもよく、製管機1の周回方向の前方に1つだけ設けられた構成であってもよい。
【0085】
よって、製管機1における更生管130の製管と同時に、更生管130と既設管200との間に裏込め材の充填作業を行っていくことも可能である。前記のように、既設管200と更生管130(帯状部材100)との間に存在するアウターローラ43bは回動自在である。このため、裏込め材注入用のノズルを、アウターローラ43bを経た帯状部材100(更生管130)の外面側に向けて配設することが好ましい。つまり、このように裏込め材注入用のノズルを設けることで、裏込め材がアウターローラ43bに付着してもピンチローラ41bの作動に影響を与えず、製管機1の駆動を停止させるおそれもない。
【0086】
さらに、製管機1は、略環状の構造を有しているため、製管する際に製管機1が既設管200を塞いでしまうことがなく、通水状態でも既設管200内に安定的に更生管130を製管することができる。
【0087】
製管機1は、以上のように構成されることによって、過大な負荷のかかる接合機構部4のアウターローラ43a、43b周辺における剛性を高めている。また支持車輪6を備えることで安定性が高く、アウターローラ43a、43bが既設管200の内壁の凹凸や障害物等と接触するのを回避させ、破損を防ぐ。したがって、かかる製管機1により作業効率が格段に高められ円滑な製管動作を可能としている。
【0088】
−送り装置−
次に、実施の形態に係る送り装置10について説明する。
【0089】
送り装置10は、更生管130を製管する製管機1に向けて帯状部材100を螺旋状に供給する装置であり、図1に示すように製管機1と併用される。
【0090】
図10は、実施の形態に係る送り装置10を一部省略して示す正面図である。図11は、送り装置10を構成する支持フレーム12および回転フレーム13を一部省略して示す分解斜視図であり、図12及び図13は、送り装置10の動力伝動機構17を一部省略して示す拡大斜視図である。
【0091】
送り装置10は、回転自在な走行車輪11w若しくは設置脚を設けた架台11を備える。架台11には、環状の支持フレーム12が固定され、支持フレーム12の内周側に環状の回転フレーム13が回転自在に支持されている。回転フレーム13には、取付ブラケット14を介して送りローラ15が回転自在に支持されている。また、取付ブラケット14には、案内部材16が着脱自在に設けられている。支持フレーム12には、回転フレーム13を回転させる回転用モータM1と、送りローラ15を回転させる送り用モータM2が設けられている。
【0092】
・支持フレーム12(図11参照)
支持フレーム12は、内周面側を開口した断面溝形状に形成されている。支持フレーム12の内方下部には駆動スプロケット123及び駆動ローラ126が回転自在に支持されるとともに、複数個の支持ローラ122が周方向に間隔をおいて回転自在に支持されており、回転する回転フレーム13の外周面を支持する。駆動ローラ126及び各支持ローラ122は、回転フレーム13の幅に対応するフランジを前後各端部に有する。これにより、回転フレーム13が駆動ローラ126及び各支持ローラ122に支持されて回転するとき、脱落を防止する。
【0093】
支持フレーム12には、その前面側に回転用モータM1及び送り用モータM2を固定したブラケット124が連結されている。回転用モータM1の出力軸は駆動ローラ126の回転軸に連結され、送り用モータM2の出力軸は駆動スプロケット123の回転軸に連結されている。これにより、回転用モータM1が駆動するとき、駆動ローラ126が回転し、また、送り用モータM2が駆動するとき、駆動スプロケット123が回転する。
【0094】
ここで、駆動スプロケット123は、回転フレーム13が支持フレーム12の駆動ローラ126及び各支持ローラ122に支持された際、その歯が後述する回転フレーム13の外周面に張設したベルトチェーン132の噛み合い穴132aに噛み合うように設定されている。
【0095】
なお、支持フレーム12の頂部には、支持プレート125がねじを利用して昇降自在に設けられており、ハンドルを回転操作して支持プレート125を上昇させることにより、更生管130の管頂部に突き当てることができ、走行車輪11wの図示しないブレーキ操作と併用して、更生管130に対して送り装置10が移動しないように停止することができる。また、支持プレート125を下降させて更生管130の管頂部から離脱させることにより、走行車輪11wを利用して更生管130内を移動させることができる。
【0096】
また、支持フレーム12は、図11に示すように、架台11に固定された下半部12Aと、該下半部12Aに連結可能な上半部12Bとから二つ割り可能に形成されており、フック金具などの連結金具18を取り外すことにより、上半部12Bを下半部12Aから離脱させ、あるいは、下半部12Aに上半部12Bを突き合わせて連結金具18で連結し、環状に形成することができる。
【0097】
・回転フレーム13(図10、図11、図12参照)
回転フレーム13は、内周面側を開口した断面溝形状に形成されている。回転フレーム13には、設定間隔をおいて噛み合い穴132aを形成したベルトチェーン132が周方向に移動自在に張設されるとともに、従動スプロケット133及び傘歯車134が同一軸心上に回転自在に支持されている。従動スプロケット133は、歯がベルトチェーン132の噛み合い穴132aと噛み合うように設定されている。回転フレーム13には、送りローラ15を回転自在に支持する取付ブラケット14が固定されるとともに、傘歯車134と噛み合う従動傘歯車135の回転軸を回転自在に支持する軸受136が固定されている。そして、送りローラ15の回転軸及び従動傘歯車135の回転軸は、ユニバーサルジョイント137によって連結されている。
【0098】
これにより、送り用モータM2が駆動して駆動スプロケット123が回転するとき、駆動スプロケット123を介してベルトチェーン132を駆動スプロケット123の回転方向と同じ方向に回転フレーム13の外周面に沿って周回移動させる。そして、ベルトチェーン132の周回移動は、ベルトチェーン132の噛み合い穴132aと噛み合う従動スプロケット133を回転させるとともに、傘歯車134を回転させ、さらに、傘歯車134と噛み合う従動傘歯車135を回転させ、ユニバーサルジョイント137を介して送りローラ15を回転させることができる。これらの駆動スプロケット123、ベルトチェーン132、従動スプロケット133、傘歯車134、従動傘歯車135及びユニバーサルジョイント137は、送り用モータM2の動力を送りローラ15に伝動する動力伝動機構17を構成している。
【0099】
なお、回転フレーム13は、動力伝動機構17が設けられた半周状の一半部13A及び該一半部13Aの一端部に対して一端部が連結軸13aを介して回動自在に連結された半周状の他半部13Bから形成されており、連結軸13aと180度隔てて対向する一半部13Aの他端部及び他半部13Bの他端部がフック金具などの連結金具18を介して連結されている。このため、連結金具18を外すことにより、一半部13Aに対して他半部13Bを連結軸13a回りに回動して一半部13Aに並設することができ(図11鎖線状態参照)、また、一半部13Aに対して他半部13Bを連結軸13a回りに回動し、他端部同士を突き合わせ、連結金具18で連結することにより、環状に形成することができる。
【0100】
・取付ブラケット14及び送りローラ15(図10、図12、図13参照)
取付ブラケット14には、従動ローラ161の回転軸及び従動ローラ161を挟んで前後一対のガイドローラ162の回転軸をそれぞれ回転自在に支持する案内部材16が着脱自在に設けられている。
【0101】
具体的には、取付ブラケット14に立設された連結ボルト141に対応して、案内部材16に挿通穴16aが形成されており、案内部材16を、挿通穴16aを通して取付ブラケット14の連結ボルト141に挿入し、図示しない蝶ナットを連結ボルト141にねじ込んで締め付けることにより、あるいは、蝶ナットを弛めて連結ボルト141から離脱させることにより、案内部材16を取付ブラケット14から抜き出すことができる。
【0102】
ここで、取付ブラケット14に案内部材16を連結することにより、送りローラ15の上方に帯状部材100の厚みに相当する間隔をおいて従動ローラ161が対向する。したがって、前述したように、送り用モータM2の動力が動力伝動機構17を介して送りローラ15に伝動されるとき、送りローラ15が設定方向に回転し、従動ローラ161との間で帯状部材100を挟み込んで送り出し、あるいは、逆方向に引き込むことができる。この際、ガイドトラフ151の上方にガイドローラ162が対向し、帯状部材100をガイドトラフ151を経て送りローラ15に向けて送り出すことができるとともに、送りローラ15及び従動ローラ161の間から帯状部材100をガイドトラフ151及びガイドローラ162を経て送り出すことができる。
【0103】
なお、送りローラ15は、帯状部材100の隣接するリブ102,102間に挿入可能な幅を有して補強リブ102,102間に配置され、ローレット加工された外周面を有する複数の大径部を軸部に設けて形成され、ローレット加工された大径部の外周面が更生管130の外周面となる側の帯状部材100の裏面に接することにより、帯状部材100を円滑に送り出し、あるいは、引き込むことができる。
【0104】
また、図13に示すように、取付ブラケット14にコイルスプリング142が備えられてもよい。この場合、取付ブラケット14は、各連結ボルト141にコイルスプリング142が装着され、連結ボルト141の上部のねじ部に蝶ナット143が螺合されている。この際、蝶ナット143を締め込むことにより、コイルスプリング142は取付ブラケット14に押し付けられる。
【0105】
このように取付ブラケット14にコイルスプリング142を介装して案内部材16を連結することにより、送りローラ15の上方に帯状部材100の厚みに相当する間隔をおいて従動ローラ161が対向する。したがって、送り用モータM2の動力が送りローラ15に伝動されるとき、送りローラ15が従動ローラ161との間に帯状部材100を挟み込んで送り出し、又は引き込む。この際、取付ブラケット14に装着されたコイルスプリング142の弾性により、取付ブラケット14と案内部材16との間の締め付け力が適宜調整され、帯状部材100を円滑に送り出し又は引き込み、帯状部材100が破損するのを防止することができる。
【0106】
また、取付ブラケット14は、水平面において、回転フレーム13の軸心に対して設定角度首を振るように傾斜角度を変更可能に固定されている。図12及び図13に示すように、例えば、取付ブラケット14の底板144を固定板138に対して、ボルト145を中心として、水平面上に角度を振って取り付けることができる。ボルト145は、同軸上にユニバーサルジョイント137が配設された位置に取り付けられている。また、このボルト145に対応する反対側の図示しないボルトは、固定板138に設けられた円弧状の長穴に挿通して固定されている。これにより、取付ブラケット14は、ボルト固定位置を調整することが可能であり、回転フレーム13の軸心に対して角度をつけて配設することができる。
【0107】
図10においては、上方から見て、送りローラ15の軸心が回転フレーム13の軸心と直角をなす配置関係におかれた状態を示している。また、図12及び図13においては、上方から見て、送りローラ15の軸心が回転フレーム13の軸心と、直角ではない角度をもって交差する配置関係にある状態を示している。このように、取付ブラケット14を固定する角度によって、送り装置10から送り出される帯状部材100の螺旋のリード角などを調整することができる。
【0108】
なお、かかる取付ブラケット14は、底板144が固定板138上を、ボルト145を中心として円弧状に自在に動く構成とされてもよい。この場合、取付ブラケット14は、帯状部材100の送り出しに伴って生じる抵抗力を、円弧状に自在に動くことによって吸収するので、帯状部材100をより一層円滑に供給することが可能となる。
【0109】
・送り装置10の変形例(図14参照)
また、送り装置10は、図14に示すような構成であってもよい。図14は、送り装置10を構成する支持フレーム12および回転フレーム13を一部省略して示す分解斜視図である。
【0110】
図10に示す前記送り装置10では、支持フレーム12の駆動スプロケット123を介して、ベルトチェーン132を回転フレーム13の外周面に沿って周回移動させていた。また、支持フレーム12の駆動ローラ126及び複数個の支持ローラ122は、回転する回転フレーム13の外周面を支持する構成であった。これに対し、図14に示す形態では、回転フレーム13、駆動ローラ126及び支持ローラ122に、相互に噛み合う歯車歯が設けられている。
【0111】
具体的に、支持フレーム12の内周側に回転自在に支持された回転フレーム13は、前端面若しくは後端面の一方の面、又は前端面及び後端面の両面に歯車板139が備えられている。図14に示す例では、歯車板139は回転フレーム13の後端面に設けられている。
【0112】
歯車板139は、外周に歯車歯を有する大径の円板体であり、回転フレーム13に固設されている。歯車板139は、上半部と下半部とで分割して形成されて、回転フレーム13の一半部13A及び他半部13Bに対して取付ボルト等を用いて固設されている。また、歯車板139は、回転フレーム13の外径と同等の外径寸法により形成されている。
【0113】
これに対し、回転フレーム13を下方から支持する駆動ローラ126と、回転フレーム13の側方及び上方を支持する各支持ローラ122には、前記歯車板139の歯車歯に噛み合うガイド歯車128が備えられている。ガイド歯車128は、駆動ローラ126及び各支持ローラ122の外周面における、後端部のフランジ寄りに一体に固定されている。また、ガイド歯車128は駆動スプロケット123よりも小径で形成されている。
【0114】
前記のとおり、駆動ローラ126の回転軸は回転用モータM1の出力軸に連結されている。このため、回転用モータM1が駆動するとき、駆動ローラ126が回転するとともに駆動ローラ126に一体のガイド歯車128が回転する。これにより、駆動ローラ126は、回転フレーム13に外周面に当接しつつ回転するとともに、ガイド歯車128が回転フレーム13の外周端の歯車歯に噛み合って回転し、回転フレーム13に回転力を付与する。
【0115】
なお、前記実施の形態においては、架台11に支持フレーム12の下半部12Aを一体に固定した場合を例示したが、図15に示すように、発進側マンホール201の底部に送り装置10を設置する場合、地上から発進側マンホール201内に引き込まれた帯状部材100を製管機1に向けて既設管200の軸心方向に導く必要がある。このため、発進側マンホール201に設置する送り装置10は、帯状部材100を垂直方向から水平方向に円滑に送り出すことができるように、支持フレーム12を架台11に対して水平軸回りに回動できるように連結することが好ましい。これにより、発進側マンホール201に引き込まれた帯状部材100を緩やかな角度で既設管200内に導くことが可能となる。
【0116】
・送り装置10の作動(図1、図10参照)
製管機1による更生管130の製管過程では、地上の輸送ドラム91から引き込まれた帯状部材100を、送り装置10から製管機1に向けて供給する。送り装置10は、製管機1の製管作業に対応させて駆動する。
【0117】
例えば、送り装置10を製管機1の製管動作すなわち製管機の管軸方向の移動速度又は移動量等に同期させて駆動することが可能である。つまり、製管機1が既設管200の軸心回りに回転して更生管130を製管するとき、製管機1は製管した更生管130の長さ分だけ製管方向に移動し、更生管130に設置した送り装置10との間隔が拡大する。送り装置10による帯状部材100の単位時間当たりの送り量としては、製管機1の周方向の移動速度に、製管機1が既設管200の軸心方向へ移動することにより送り装置10との間隔が増し、その増加分に相当する周方向の帯状部材100の長さを補充する速度を加えたものとする。
【0118】
また、製管機1が更生管130を製管することによって送り装置10との間隔が拡大すると、送り装置10から製管機1に対して螺旋状に供給する帯状部材100は、製管機1が移動した分、螺旋のピッチが大きくなる。したがって、送り装置10による帯状部材100の単位時間当たりの回転角としては、製管機1の角速度に、製管機1が既設管200の軸心方向へ移動することによる送り装置10との間隔の増加分に対応する周回移動角度分を補充する角速度を加えたものとする。
【0119】
このような条件を満足するように回転用モータM1及び送り用モータM2をそれぞれ駆動させ、駆動ローラ126を介して回転フレーム13を設定された角速度で回転させるとともに、動力伝動機構17を介して送りローラ15を設定された回転数で回転させ、製管機1の製管作業に同期して帯状部材100を製管機1に送り出すことができる。
【0120】
これにより更生管130を製管するとき、製管機1から送り装置10までの経路の帯状部材100を、ほぼ同じ径の螺旋を維持しつつ、製管機1が移動した分、螺旋のピッチをほぼ同じ螺旋のピッチで増加させ、あたかも静止しているかのように送り出すことができる。
【0121】
なお、かかる送り装置10は、次に説明するライニング施工方法で用いる送り装置の一例であって、上記の形態に限定されるものではなく、製管機1に対し帯状部材100を螺旋状に供給する手段を備えたものであれば、どのような装置であってもよい。
【0122】
例えば、上記の送り装置10では、回転しない支持フレーム12に送り用モータM2を設け、回転する回転フレーム13内で送りローラ15を回転させ、帯状部材100を螺旋状に送り出す。このため、送り用モータM2に動力を供給する動力ライン(例えば、油圧モータの場合は圧油ホース、電動モータの場合は電力ケーブルなど)を簡単に接続し、離脱させることができるが、これに限定されるものではない。つまり、例えば、送りローラ15のモータを回転フレーム13内に設けた構造であってもよく、送り装置としての構造を極めてシンプルなものとすることができる。
【0123】
−ライニング施工方法−
次に、前記製管機1及び送り装置10を用いて既設管200を更生するライニング施工方法について説明する。
【0124】
図1に示したように、地中に埋設された既設管200には所定スパンごとにマンホール201、202が設けられており、これらのマンホール201,202を利用して既設管200内に更生管130を製管する。更生管130は、既設管200の発進側マンホール201から到達側マンホール202に向けて形成されていく。
【0125】
まず、施工前の準備として、帯状部材100を巻き重ねた回転台付きの輸送ドラム91、発電機92、油圧ユニット93などを用意する。輸送ドラム91は、発進側マンホール201側の地上に設置し、発電機92は到達側マンホール202側の地上に設置する。また、製管機1及び油圧ユニット93は、発進側マンホール201を通して更生対象となる既設管200内の上流側端部に搬入して設置する。その際、製管機1は、案内ローラ3を設けた成形フレーム2、接合機構部4に連結する連結フレーム29等をそれぞれ分解して搬入し、既設管200内で組み立てることができる。油圧ユニット93からの圧油ホースは製管機1の接合機構部4の油圧モータ45に接続する。
【0126】
なお、成形フレーム2については、隣接する一対のリンク体21,21の連結を外し、複数個のリンク体21を1本の列にして搬入し、再び隣接する一対のリンク体21,21を連結して略環状に形成することが好ましい。また、製管機1は、必要な更生管130の管径に合わせて、成形フレーム2の周長、すなわち連結するリンク体21の数を調整しておく。製管機1は、更生する既設管200の内径及び使用する帯状部材100の幅に対応する螺旋のピッチとなるように調整しておく。
【0127】
また、発進側マンホール201には、送り装置10を設置し、架台11に対して支持フレーム12を水平軸回りに回動させ、支持フレーム12のなす角度を調整した後、支持フレーム12に固定ボルトを突き当てて支持フレーム12を傾斜状態に固定する。
【0128】
このような準備作業が完了すれば、地上に配置した輸送ドラム91の内周側から帯状部材100を引き出して発進側マンホール201に引き込み、送り装置10のガイドラフ151を経てローラ15,16間に挿通させる。さらに帯状部材100を、送り装置10から既設管200内に引込み、製管機1における接合機構部4のピンチローラ41a、41bに挿通し、成形フレーム2に設けた案内ローラ3の外側に送り出す。
【0129】
次いで、案内ローラ3の外側に送り出された帯状部材100を、既設管200の内面との間に挟み込んだ状態で、製管機1を既設管200の軸心回りに回転させ、帯状部材100を成形フレーム2の周囲に数回(1〜3回)巻き回し、製管開始用の更生管130を製管する。すなわち、製管機1(接合機構部4)が周回移動することにより、先行する螺旋状の帯状部材100の接合凹部104に、後続する螺旋状の帯状部材100の接合凸部103を内周側から嵌入するとともに、互いに隣接した帯状部材100、100の傾斜リブ105と、リブ102の略T字状の先端部とを係止させて、隣接する螺旋状の帯状部材100、100を互いに接合する。
【0130】
開始用更生管の製管が完了すれば、製管機1の接合機構部4を駆動させる。これにより、接合機構部4の油圧モータ45が回転駆動してピンチローラ41a、41bを回転させ、帯状部材100を挟み込んで送り出す。また、接合機構部4は、帯状部材100に沿って、相対的にその送り出し方向とは逆方向に周回移動(公転)する。
【0131】
この際、ピンチローラ41a、41bの回転によって周回移動する成形フレーム2と案内ローラ3…3に沿って、開始用更生管に隣接するように相対的に送り込まれる形となる帯状部材100は、図2(a)及び図2(b)に示したように、接合凸部103を開始用更生管の帯状部材100の接合凹部104に内周側から嵌入させるとともに、リブ102と傾斜リブ105とを係合させて、隣接する螺旋状の帯状部材100の接合部を相互に接合して更生管130を製管する。
【0132】
このとき、図4、7に示したように、ピンチローラ41a、41bのアウターローラ43a、43bは、既設管200の内周面から一定距離隔てた位置に支持されて周回移動する。すなわち、既設管200の内周面に接触するように、ブラケット61、61の固定位置を調整された支持車輪6、6は、既設管200の内周面を転動する際、接合機構部4のアウターローラ43a、43bを既設管200の内周面から設定距離浮上した状態に支持する。また、接合機構部4は、案内ローラ3aおよび更生管130を介して既設管200に支持された連結フレーム29によって成形フレーム2と一体化されて、既設管200の内周面から一定距離離隔した状態に支持される。アウターローラ43a、43bは、既設管200の内周面に接触することが防止される。さらに、ピンチローラ41a、41bも、衝撃吸収部材401の作用により安定的に支持されている。
【0133】
これにより、製管動作中に既設管200の内面に障害物や凹凸部等があっても、その影響を受けることなくインナーローラ42a、42b及びアウターローラ43a、43bの円滑な回転が維持され、一定の速度を保持しつつ周回移動を継続させることができ、アウターローラ43a、43bに過度の負荷をかけることなく製管作業を進めることができる。
【0134】
接合機構部4は、先行する螺旋状の帯状部材100に後続する螺旋状の帯状部材100を接合して更生管130を製管しつつ既設管200の内周面に沿って周回移動する。つまり、製管機1は、帯状部材100を更生管130に製管し、その際、既設管200の内周面に沿って移動(公転)するとともに、到達側マンホール202に向けて既設管200の軸心方向に移動する。
【0135】
このようにして、更生管130は回転することなく既設管200内に配置され、図1に示すように、更生管130の到達側マンホール側に向かって、さらに螺旋状の帯状部材100が供給されて更生管130が軸心方向に付加形成される。
【0136】
一方、製管機1が既設管200の軸心回りに公転し、更生管130の製管作業が遂行されると、製管機1は、到達側マンホール202方向、つまり発進側マンホール201に設置した送り装置10から離れていく。このため、製管機1による製管作業に同期して送り装置10を駆動させる。すなわち、回転用モータM1を駆動させることによって駆動ローラ126を回転させ、支持フレーム12に対して回転フレーム13を設定された角速度で回転させるとともに、送り用モータM2を駆動させることによって動力伝動機構17を介して送りローラ15を設定された回転数で回転させ、従動ローラ161との間で帯状部材100を挟み込んで送り出す。
【0137】
これにより、製管機1が既設管200の軸心回りに公転し、それに伴って到達側マンホールに向かって送り装置10から離れていっても、設定された螺旋の径および螺旋のピッチを維持するとともに、その設定された径およびピッチの螺旋を製管機1の移動分を埋めるために必要な螺旋のピッチ数だけ追加しながら螺旋状の帯状部材100を製管機1に供給することができる。すなわち、製管機1への帯状部材100の供給を、帯状部材100の折損や裏返りを発生させることなく安定的に供給することができる。
【0138】
また、更生管130の製管作業において、製管機1に、CCDカメラなどの図示しない撮像装置を付設しておくことが好ましい。これにより、製管機1に供給される螺旋状の帯状部材100を撮像装置により撮像し、撮影された映像から、帯状部材100の螺旋の径やピッチなどの螺旋状態を観察することができる。そして、適正な螺旋状及び供給量の帯状部材100を供給するように、送り装置10の回転フレーム13の回転や送りローラ15の回転を制御することができる。同様に、送り装置10にも撮像装置を付設して、送り装置10から送り出される螺旋状の帯状部材100を観察し、適正な螺旋状の帯状部材100を供給するように送り装置10の回転フレーム13の回転や送りローラ15の回転を制御してもよい。
【0139】
さらに、撮像装置は、これらの製管機1及び送り装置10に付設するだけでなく、管渠内の調査に汎用される自走式のカメラを用いてもよい。この場合、カメラを更生管130又は既設管200の内部に、製管機1に同調させながら走行させ、帯状部材100の螺旋形状や供給状態を撮影させる。
【0140】
送り装置10の配置形態は、図1に示すように、更生対象の既設管200の長さが短い場合は、発進側マンホール201にのみ送り装置10を設置することで対応することができる。また、図16に示すように、更生管130の内部にのみ送り装置10を設置して対応してもよい。
【0141】
更生対象の既設管200の長さが長い場合には、製管機1との間に滞留する帯状部材100の長さも長くなって重量が大きくなるとともに、既設管200の内周面との摩擦力も大きくなり、円滑に帯状部材100を送ることが困難になることが予想される。このため、更生対象の既設管200の長さが長い場合には、図16に示すように、設定間隔をおいて送り装置10を追加して設置し、これらの送り装置10、10を同期して若しくは相互に対応させて駆動させることが好ましい。図16では、送り装置10を、発進側マンホール201に1台、また更生管130内に1台設置しているが、更生管130内に複数台の送り装置10を設置してもよい。
【0142】
このように、送り装置10を、当初の台数に追加して既設管200内に設置するには、送り装置10を更生管130内に引き込み、走行車輪11wを利用して設定位置まで移動させた後、連結部材18を外して支持フレーム12の上半部と下半部とを離脱させ、回転フレーム13の連結金具18を外して連結軸13a回りに回動させる。そして、案内部材16を取付ブラケット14から離脱させれば、先に発進側マンホール201に設置された送り装置10を経由して製管機1に供給されている螺旋状の帯状部材100を切断することなくガイドトラフ151に導入することができる。
【0143】
この後、取付ブラケット14に案内部材16を連結し、従動ローラ161によって送りローラ15との間に帯状部材100を挟み込む。次いで、回転フレーム13の他半部13Bを連結軸13a回りに回動させて他端部同士を突き合わせた後、連結金具18を介して連結し、支持フレーム12の上半部と下半部とを重ねた後、連結金具18を介して上半部12Bを連結する。さらに、支持プレート125を上昇させて更生管130の管頂部に突き当てれば、追加した送り装置10を更生管130に固定することができる。
【0144】
以下、同様に作業して、設定スパンをおいて順次送り装置10を追加して設置すればよい。
【0145】
なお、更生管130の製管に伴って製管機1との間隔が拡がる度に、先に設置した送り装置10の前方に新たな送り装置10を順次追加して設置する場合を説明したが、送り装置10に走行車輪11wの走行用モータを設け、製管機1の製管速度(既設管200の軸心方向への移動速度)に同期して、つまり、製管機1との間隔を一定に保つように送り装置10を既設管200の軸心方向に移動させ、先に配置した送り装置10の後方に送り装置10を順次追加して配置し、同様に、先の送り装置10との間隔を一定に保つように追加した送り装置10を、既設管200の軸心方向に移動させるようにしてもよい。
【0146】
この場合、製管機1と送り装置10との間隔および隣接する送り装置10,10間の間隔が一定となることから、製管機1の角速度と同じ角速度で各送り装置10の回転フレーム13を回転させるとともに、製管機1の周速と同じ速度で送りローラ15から帯状部材100を送り出せばよい。
【0147】
既設管200の施工対象領域(更生領域)の全長にわたって更生管130の製管が終了すれば、更生管130の管端部の帯状部材100を切断し、次いで、製管機1及び送り装置10を分解し、製管機1及び油圧ユニット93などを撤去する。成形フレーム2は、複数のリンク体21を相互に連結して形成されたものであるので、隣接する一対のリンク体21,21の連結を外すことで、成形フレーム2をリンク体21の1本の列として撤去することができる。
【0148】
以上のようなライニング施工方法により、製管機に対して帯状部材を安定的に供給することができるので、老朽化した既設管の更生作業に係る省力化が可能となる。つまり、作業者が担ってきた帯状部材の供給作業を、送り装置を利用して代行することができ、既設管内に作業者を立ち入らせなくとも、効率よく円滑にライニング施工することが可能となる。また、既設管の管径の大小にかかわらず、どのような既設管の構成においても、製管機に対する帯状部材の良好な供給状態を維持することが可能となる。さらに製管機が、前記のとおり既設管の内面を円滑に周回移動してスムーズに製管可能な構成であるので、各部の修理・交換のために製管工程を停止させることなく、少ない作業者で信頼性の高い更生作業を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、老朽化した既設管ライニング施工して更生する工法に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0150】
1 製管機
2 成形フレーム
29 連結フレーム
3 案内ローラ
4 接合機構部
40 ギヤボックス
42a、42b インナーローラ
43a、43b アウターローラ
48 駆動部
49 嵌合部
5 屈折リンク
6 支持車輪
91 巻取ドラム
92 発電機
93 油圧ユニット
10 送り装置
11 架台
12 支持フレーム
13 回転フレーム
14 取付ブラケット
15 送りローラ
16 案内部材
17 動力伝動機構
M1 回転用モータ
M2 送り用モータ
100 帯状部材
103 接合凸部
104 接合凹部
105 傾斜片
108 補強材
130 更生管
200 既設管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側縁部に接合部を備える長尺の帯状部材を既設管内の製管機に供給し、製管機により螺旋状に巻回するとともに、巻回により隣接した帯状部材の接合部同士を接合して更生管を形成し、既設管の内面を更生するライニング施工方法であって、
既設管の内面を周方向に回転しつつ既設管の軸心方向に移動して製管する製管機に対し、前記帯状部材を螺旋状に供給する送り装置を前記製管機に到るまでの経路に設け、
前記帯状部材を、既設管の軸心周りに回転させ、かつ既設管の軸心方向又は該軸心方向と交差する方向に角度をつけて送り出すために、前記製管機の管軸方向の移動速度又は移動量に対応するように前記送り装置を駆動することを特徴とするライニング施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のライニング施工方法において、
前記送り装置から製管機へ供給する帯状部材を、当該製管機の周方向の回転及び軸心方向の移動に対応した螺旋の径及び螺旋のピッチを有する螺旋状とすることを特徴とするライニング施工方法。
【請求項3】
請求項1に記載のライニング施工方法において、
更生管の製管に使用した帯状部材の量に相当する量の帯状部材を前記送り装置から供給することを特徴とするライニング施工方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載のライニング施工方法において、
前記製管機又は送り装置に撮像手段を付設し、当該撮像手段から得られる映像により帯状部材の螺旋形状を観察し、帯状部材の供給状態を調整することを特徴とするライニング施工方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のライニング施工方法において、
前記送り装置を、既設管に接続したマンホール内に設置することを特徴とするライニング施工方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載のライニング施工方法において、
前記送り装置を、形成した更生管内に設置することを特徴とするライニング施工方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載のライニング施工方法において、
製管作業の進行に伴って、前記製管機に到るまでの経路に新たな送り装置を追加して設置し、各送り装置を相互に対応させて駆動することを特徴とするライニング施工方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のライニング施工方法において、
更生管内に設置する送り装置に走行手段を設け、当該送り装置を前記製管機の軸心方向の移動に対応させて、更生管内を軸心方向に移動させることを特徴とするライニング施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−976(P2012−976A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79248(P2011−79248)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】