説明

ライン光源の良否判定方法

【課題】 スキャナ等の撮像ユニットに使用されるのに適したライン光源の良否判定方法を提供する。
【解決手段】 複数の発光素子が配列されたライン光源と、撮像素子と、該撮像素子からの出力を増幅するための第1ゲイン手段と、前記撮像素子からの出力を部分的に増幅するための第2ゲイン手段とを備える撮像ユニットを用い、ライン光源を発光させるステップと、検査用撮像素子によってライン光源の発光を受光してその発光量分布を検出するステップと、前記第1ゲイン手段と前記第2ゲイン手段とを用いて、前記検査用撮像素子によって求められた発光量分布に対応する出力のバラツキを補正しつつ目標発光量に対応する出力にまで増幅したと仮想した場合に必要となる第1仮想ゲイン値及び各第2仮想ゲイン値を算出するステップと、前記算出された第1仮想ゲイン値及び各第2仮想ゲイン値に基づいてライン光源の良否を判定するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナ等の撮像ユニットにおいて使用されるのに適したライン光源の良否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照明光学システムを採用したスキャナ等の撮像ユニットにおいて、例えば、写真フィルム(以下、単に「フィルム」と言う。)のコマ画像のデジタル画像データを得るためには、複数の発光ダイオード(以下、単に「LED(Light Emitting Diode)」と言うことがある。)を用いたライン光源から出た光線を、通常シリンドリカルレンズとして構成されている集光手段によってさらに幅の狭いライン状の光線にした後、フィルムのコマ画像に照射して、このフィルムの透過したライン状の透過光を撮像光学系を通じて主走査方向に延びたラインCCD(Charge Coupled Device)センサ(撮像素子ユニット)に受光させ、この受光プロセスを副走査方向に連続的に行うことによって、フィルムのコマ画像はデジタル画像データ化される。
【0003】
このような撮像ユニットにおいて、ライン光源は、ライン状の照射光線の強度分布(光量分布)が照射するコマ画像の主走査方向の幅にわたって一様でないと高品質のデジタル画像データを得ることができない。そのため、ライン光源における各LEDの発光量(発光特性)は、ほぼ一様に揃っている必要がある。
【0004】
しかし、量産された多数のLEDの中には発光特性の異なるものが存在するため、ライン光源に同一の電源を用いて発光させたとしても、各LEDの発光量が一様にはならない場合や全体的に発光量が低い場合が生じる。また、長期の使用によるLEDの劣化によって発光量の低下が生じる場合がある。
【0005】
従来より、このような場合には、まず、各LEDに流す電流値を上げることによって発光量を調整していた。しかし、電流値を上げるのには上限があり、この上限値まで電流値を上げても発光量が足りない場合には、電流値を上げるだけでは調整できなかった。そこで、ラインCCDセンサから出力されるアナログ信号を、適正なゲインで増幅し、A/D変換装置を経てデジタル信号化された後、各画素値に対して適正なゲインで増幅することで所定の出力となるように補正していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、各LEDの光量のバラツキが大きすぎたり、全体の光量が少ないライン光源を使用すると、上記補正を行うためのゲインが大きくなる。そうするとラインCCDセンサからの出力に含まれていたノイズも増幅されて極めて大きくなり、得られたデジタル画像内に表れてくるようになって画質が劣化するため、高品質なデジタル画像データを得ることができなくなるという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、高品質な画像データを得るためのスキャナ等の撮像ユニットに使用されるのに適したライン光源を選別するための好適なライン光源の良否判定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るライン光源の良否判定方法は、複数の発光ダイオードが配列されたライン光源と、撮像素子と、該撮像素子からの出力を増幅するための第1ゲイン手段と、前記撮像素子からの出力を部分的に増幅するための第2ゲイン手段とを備える撮像ユニットに用いられる前記ライン光源の良否判定方法であって、ライン光源を発光させるステップと、検査用撮像素子によってライン光源の発光を受光してその発光量分布を検出するステップと、前記第1ゲイン手段と前記第2ゲイン手段とを用いて、前記検査用撮像素子によって求められた発光量分布に対応する出力のバラツキを補正しつつ発光量分布に対応する出力を一定の目標発光量に対応する出力にまで増幅したと仮想した場合に必要となる第1仮想ゲイン値と各第2仮想ゲイン値とを算出するステップと、前記算出された第1仮想ゲイン値及び各第2仮想ゲイン値に基づいてライン光源の良否を判定するステップとを備えることを特徴とする。
【0009】
上記の判定方法は、ライン光源の発光(照射光)を検査用撮像素子で受光し、この発光量分布に対応する検査用撮像素子からの出力を、該検査用撮像素子で目標発光量を受光したと仮想し、その場合に該検査用撮像素子から出力されると仮想される値にまで増幅するのに必要となる、撮像素子からの出力を増幅するための第1仮想ゲイン値と、撮像素子からの出力を部分的に増幅するための第2仮想ゲイン値とをそれぞれ算出し、この算出された第1仮想ゲイン値及び第2仮想ゲイン値に基づいてライン光源の良否を判定する。尚、ゲイン値とは、増幅前の出力に乗じる係数をいう。
【0010】
また、発光量分布に対応する出力のうちの最大値と最小値との差を求め、この差と第1所定値とを比較する第1判定ステップと、該第1判定ステップで、前記差が第1所定値以内の場合、前記第1仮想ゲイン値と第2所定値とを比較する第2判定ステップと、該第2判定ステップで、前記第1仮想ゲイン値が第2所定値より大きい場合、第1仮想ゲイン値を前記第2所定値と同一の値とした場合の各第2仮想ゲイン値を算出し直すステップと、前記第2所定値と同一の値とした第1仮想ゲイン値と、前記算出し直した各第2仮想ゲイン値のうち最大となる第2仮想最大ゲイン値との積を求め、この積と第3所定値とを比較する第3判定ステップとをさらに備えることができる。
【0011】
上記方法とすることで、詳細な判定を行うことができ、高品質なデジタル画像データを得るための撮像ユニットへの使用に適したライン光源を判定するための、より好適なライン光源の良否判定ができ、且つ良品と不良品との境界付近の品質のライン光源を判定することができるため、使用に適さない不良品率を最小に抑えることができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
上記判定方法によれば、高品質なデジタル画像データを得るためのスキャナ等の撮像ユニットにおけるライン光源として使用されるのに適した、好適なライン光源の良否判定方法を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
まず、良否が判定されるライン光源について説明すると、図1に示すように、ライン光源1は、所定光量の光を発光する複数のLEDチップ2,2,2,…が基盤3上に一定間隔の直線上に配列されている。
【0015】
図2は、前記ライン光源を使用する撮像ユニットの概略ブロック図を示す。撮像ユニット10は、撮像素子ユニット11と、第1ゲイン(アナログゲイン)調整部12と、A/D変換器13と、第2ゲイン(デジタルゲイン)調整部14とが順に接続されている。
【0016】
かかるユニットによれば、動作を説明すると、ライン光源1が発光され、フィルム(図示せず)を照射し、この照射光を撮像素子ユニット11で読み取る(受光する)。この撮像素子ユニット11に受光された発光は、光電変換によりアナログ電気信号に変換されて出力される。この出力(アナログ電気信号)は、第1ゲイン調整部12に送られ、任意のゲイン値で増幅される。この第1ゲイン調整部12でかけられるゲインをアナログゲインという。
【0017】
第1ゲイン調整部12から出力されたアナログゲインによって増幅されたアナログ電気信号は、A/D変換器13に入力され、ここでデジタル電気信号に変換される。この変換されたデジタル電気信号は、第2ゲイン調整部14に入力される。第2ゲイン調整部14では、入力されたデジタル電気信号から、撮像素子ユニット11の各画素に対応したデジタル電気信号を判別し、任意の画素値に対応するデジタル電気信号に対して任意のゲイン値で増幅できる。この各画素値に対して増幅するような、その一部分のみにかけられるゲインをデジタルゲインという。このようにして、アナログ及びデジタルゲインによって適宜増幅された電気信号は、出力されて使用される。
【0018】
図3は、前記ライン光源の良否を判定するための検査装置(検査治具)20の概略ブロック図を示す。この検査装置20は、検査用撮像素子としてのラインCCDセンサ(以下、単に「センサ」と言う。)21を備えている。この検査装置20に備えられるセンサ21は、複数の光電変換素子であるCCD素子がライン状に配列された、いわゆるリニアCCDセンサであり、受光した光を光電変換素子で光電変換することにより光量を測定(検出)することができる。本実施形態においては、センサの画素数は5340画素であり、各画素ごとに発光量を測定(検出)することができる。
【0019】
尚、本実施形態における検査装置20は、検査するライン光源1が使用される撮像ユニットでの、ライン光源1から撮像素子ユニット11までの光学的環境を同じにするため、光学経路上には各種のレンズ、ミラー等(全て図示せず)が配置されているものとする。また、前記ライン光源1が使用される撮像ユニットと、同じ光路長を確保するための取り付け機構(図示せず)も備えているものとする。また、デジタル画像データを得るために実際に使用される撮像ユニットにおいて、実際に検査するライン光源1をセットして、本実施形態と同様な良否判定を行えるようにしてもよい。
【0020】
次に、図4に示すフローチャートに基づいて、ライン光源の良否判定方法について説明する。
【0021】
ライン光源1は、発光量を検出(測定)するために検査装置20に固定される。その状態で電力を供給して、ライン光源1を発光させる(S1)。この発光をセンサによって受光し、センサ21の画素ごとに発光量を検出して、発光量分布を検出する(S2)。具体的には、センサ21にライン光源1からの発光(照射光)を読み取らせ(受光させ)、各画素に対する読み取りデータの出力値を基に発光量分布を検出する。
【0022】
続いて、S2において検出された発光量分布に対応するセンサ21からの出力を、各画素ごとに目標の一定発光量を受光した場合(目標発光量)にセンサ21から出力されると仮想される仮想出力とを対比する。そして、前記検出された発光量分布に対応する出力を目標発光量に対応する仮想出力と等しくするために必要なゲイン値(仮想ゲイン値)を算出する(S3)。
【0023】
具体的には、ライン光源1からの発光を受光したセンサ21は、各画素ごとに光電変換を行って電気信号として出力する。このセンサ21からの出力をグラフ化したものが、図5である。
【0024】
この図5に示されるグラフは、横軸をセンサ21の画素値とし、縦軸をセンサ21からの出力(この値は発光量と対応する)とする。グラフ内の一点鎖線は、センサ21が目標とする均一な発光量を受光(目標発光量)したと仮想した場合のセンサ21からの出力(目標出力)を示す。この各画素からの出力に対応するグラフ(実線でかかれた波形)が目標出力となるよう増幅するのに必要なゲイン値を算出する。
【0025】
まず、出力を増幅する、即ち、グラフ全体を底上げ(点線でかかれた波形の位置)するのに必要なゲイン値(アナログゲイン値:図5の矢印A)を算出する。この時、最も大きい出力が目標出力と同一となるようにする。次いで、各画素ごとの出力が目標出力となるように、各画素に対応する出力を増幅するのに必要なゲイン値(デジタルゲイン値:図5の矢印B,B,…)をそれぞれ算出する。このようにして求められたアナログゲインとデジタルゲインのゲイン値がそれぞれ仮想アナログゲイン値と各仮想デジタルゲイン値である。
【0026】
次に、図4に戻り、S2で求められた各画素に対応する発光量のうち、最大発光量と最小発光量とにそれぞれ対応する出力の差d(図5参照)を求め、その差が目標発光量に対応する出力に基づいて定められた第1所定値より大きいか否かを判断する(S4)。
【0027】
出力の差dが、第1所定値より大きい場合(S4がNO)は、補正に必要なゲインが大きくなり、撮像ユニットには適しないため、不良品と判断され、良否判定は終了する。
【0028】
これは、通常、センサ21からの出力には極わずかなノイズが含まれ、このセンサ21からの出力にゲインを乗じて増幅すると、含まれているノイズも同様に増幅されて極めて大きくなり、得られたデジタル画像内に表れてくるようになって画質が劣化する。そのため、高品質なデジタル画像データを得るための撮像ユニットにおいては、センサ21の出力にゲインを乗じることによって発光量分布の補正ができたとしても、一定のレベル以上のノイズが入ってしまうライン光源1は使用することができない。
【0029】
一方、出力の差dが、第1所定値以下の場合(S4がYES)は、S3で得られた仮想アナログゲイン値が第2所定値より大きいか否かを判断する(S5)。
【0030】
仮想アナログゲイン値が第2所定値以下の場合(S5がNO)は、高品質なデジタル画像データを得る撮像ユニットに適した(良品の)ライン光源1であると判定されて良否判定は終了する。
【0031】
一方、仮想アナログゲイン値が第2所定値より大きい場合(S5がYES)は、仮想アナログゲイン値を第2所定値と同一とした場合に、目標光量に対応する仮想出力と等しくするために必要となる各仮想デジタルゲイン値を、再度算出し直す。その後、第2所定値と同一とした仮想アナログゲイン値と、算出し直した各仮想デジタルゲイン値のうちの仮想最大デジタルゲイン値との積を求め、その積が第3所定値以下か否かを判断する(S6)。
【0032】
ここで、積が第3所定値以下と判断された場合(S6がYES)は、良品のライン光源1であると判定されて良否判定は終了する。
【0033】
一方、積が第3所定値より大きいと判断された場合(S6がNO)は、前記同様、補正後の出力に含まれるノイズのレベルが高くなり、高品質なデジタル画像データを得ることができなくなる。従って、このようなライン光源1は不良品と判断され、良否判定は終了する。
【0034】
尚、種々の実験を行った結果、必要なゲインを乗じても、得られるデジタル画像データのノイズ量が許容量である値として、本実施形態においては、第1所定値は、目標光量に対応する出力の25%の値、第2所定値は1.2、第3所定値は、1.6が求まった。しかし、これらの値は、使用機器等の実施条件によって異なってくるため、実施条件の変更に伴って適宜変更するものとする。
【0035】
以上のように、仮想アナログゲイン値と仮想デジタルゲイン値との両方のゲイン値に基づいて判定(選別)することにより、より高品質なデジタル画像データを得るための撮像ユニットに適したライン光源1を好適に判定することができ、且つ使用に適さない不良品率を最小に抑えるように判定できるようになる。
【0036】
尚、本発明は、上記実施態様のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は可能である。
【0037】
例えば、S3において仮想アナログゲイン値及び各仮想デジタルゲイン値を算出する際、仮想アナログゲイン値が第2所定値以下となるように両ゲイン値を算出する。次に、S4において前記判断を行う。その結果、S4がYESであれば、S3で求めたアナログゲイン値と各仮想デジタルゲイン値のうちの仮想最大デジタルゲイン値との積を求め、その積が第3所定値以下か否かを判断し、第3所定値以下であれば良品とし、第3所定値より大きければ不良品と判定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係るライン光源の概略正面図を示す。
【図2】同実施形態に係る撮像ユニットの構成を示した概略ブロック図を示す。
【図3】同実施形態に係る検査装置の構成を示した概略ブロック図を示す。
【図4】同実施形態に係るライン光源の良否判定方法のフローチャートを示す。
【図5】同実施形態に係る検査装置のラインCCDセンサからの出力(発光量)分布のグラフを示す。
【符号の説明】
【0039】
1…ライン光源、2…LED、3…基盤、10…撮像ユニット、11…撮像素子ユニット、12…第1ゲイン調整部(アナログゲイン調整部)、13…A/D変換器、14…第2ゲイン調整部(デジタルゲイン調整部)、20…検査装置(検査治具)、21…ラインCCDセンサ(検出手段又は撮像素子)、A…アナログゲイン、B…デジタルゲイン、d…最大発光量と最小発光量とに対応する出力の差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が配列されたライン光源と、撮像素子と、該撮像素子からの出力を増幅するための第1ゲイン手段と、前記撮像素子からの出力を部分的に増幅するための第2ゲイン手段とを備える撮像ユニットに用いられる前記ライン光源の良否判定方法であって、
ライン光源を発光させるステップと、
検査用撮像素子によってライン光源の発光を受光してその発光量分布を検出するステップと、
前記第1ゲイン手段と前記第2ゲイン手段とを用いて、前記検査用撮像素子によって求められた発光量分布に対応する出力のバラツキを補正しつつ発光量分布に対応する出力を一定の目標発光量に対応する出力にまで増幅したと仮想した場合に必要となる第1仮想ゲイン値及び各第2仮想ゲイン値を算出するステップと、
前記算出された第1仮想ゲイン値及び各第2仮想ゲイン値に基づいてライン光源の良否を判定するステップとを備えることを特徴とするライン光源の良否判定方法。
【請求項2】
発光量分布に対応する出力のうちの最大値と最小値との差を求め、この差と第1所定値とを比較する第1判定ステップと、
該第1判定ステップで、前記差が第1所定値以内の場合、前記第1仮想ゲイン値と第2所定値とを比較する第2判定ステップと、
該第2判定ステップで、前記第1仮想ゲイン値が第2所定値より大きい場合、第1仮想ゲイン値を前記第2所定値と同一の値とした場合の各第2仮想ゲイン値を算出し直すステップと、
前記第2所定値と同一の値とした第1仮想ゲイン値と、前記算出し直した各第2仮想ゲイン値のうち最大となる第2仮想最大ゲイン値との積を求め、この積と第3所定値とを比較する第3判定ステップとをさらに備える請求項1記載のライン光源の良否判定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate