説明

ラクトバシラス−カゼイKE01株から得られたプロバイオティック化合物

【課題】抗腸管病原体のプロバイオティック活性を有するラクトバシラス種の新菌株、および該菌株を含有するプロバイオティック組成物の提供。
【解決手段】ラクトバシラス−カゼイKE01株を含むプロバイオティック組成物。開示されたプロバイオティック組成物は、動物における腸管病原体による病気の阻害、および、動物の健康の維持に有用である。また、ラクトバシラス−カゼイKE01株プロバイオティック組成物の製造方法および使用方法も、これらプロバイオティック組成物を用いる方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本出願は、2000年12月18日付けで出願された米国特許仮出願60/256528の優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に含める。
【技術分野】
【0002】
本発明は、プロバイオティック性(probiotic)ラクトバシラス−カゼイ(Lactobacillus casei)調製物を開示する。詳しくは、新規に特徴付けられたKE01と指定されるラクトバシラス−カゼイ株から得られた、抗感染性で抗下痢性の調製物を開示する。また、ラクトバシラス−カゼイKE01株を用いたプロバイオティック化合物を調製するための関連方法、および、KE01プロバイオティック組成物を用いるための関連方法も開示する。
【背景技術】
【0003】
本明細書において記載される新規に認識されたプロバイオティック性ラクトバシラス−カゼイ株はKE01と指定されている。以前は、これと同じ生物をラクトバシラス−カゼイKE99と指定していた(例えば、米国仮出願第60/256528号、および、A.S. Naidu, X. Xie, D.A. Leumer, S. Harrison, M.J. Burrill and E.A. Fonda. 2001. Reduction of sulfide、Ammonia Compounds and Adhesion Properties of Lactobacillus casei strain KE99 In Vitoro. Curr. Microbiol. 43: In pressを参照)。
【0004】
乳酸菌(LAB)は、宿主のミクロ生態学において重要な役割を果たす哺乳動物の消化管に固有のマイクロフローラであり、治療および予防特性の目覚しい一覧をもって信用されている。これら治療および予防特性としては、これらに限定されないが、腸の微生物生態学の維持、生理学的効果、免疫変調効果および抗菌効果が挙げられる。他のLAB関連性状としては、腸管腔への酵素放出が挙げられ、これはLAB付着と相乗的に作用し、腸の吸収不良の症状を緩和することができる。その上、LAB酵素は腸のpH調節を助け、それにより芳香族アミノ酸分解を増すことができる。[Fuller, R. Probioticfoods - current use and future developments. IFI NR 3:23-26 (1993); Mitsuoka, T. Taxonomy and ecology of Bifidobacteria. Bifidobacteria Microflora 3:11 (1984); Gibson, G.R. et al., Probiotics and intestinal infections, p.10-39. In R. Fuller (ed.), Probiotics 2: Applications and practical aspects. Chapman and Hall, London, U.K (1997); Naidu AS, et al., probiotic spectra of lactic acid bacteria(LAB). Crit Rev Food Sci Nutr 39:3-126 (1999); Naidu, A.S, Clemens, R.A. Probiotics. p.431-462. In A.S. Naidu (ed.), Natural Food Antimicrobial Systems. CRC Press, Boca Raton, FL (2000)]。
【0005】
また、乳酸菌は、動物の糞廃棄物中の硫化物およびアンモニア含有化合物を顕著に減少させることにより、動物の排泄物による匂いと毒性とを減少させる能力を示した。農業ビジネスが発展し、地域社会が見た限り際限無く未使用の農業地域への進出が続くにつれ、このエキソビボ(ex vivo)でのLABの用途はますますより重要になりつつある。例え
ば、雄鶏の雛鳥や貝の廃棄物と、15%の炭水化物およびLABを含む混合物とを混合すれば、LABは、不快な匂いを除去し、孵化場の廃棄物に関する硫化水素生成物を減少させることが示されている。その上、LAB組成物は、孵化場の廃棄物中の大腸菌およびサルモネラ菌含量を無視できるレベルに減少させる効能が示されている。加えて、ラクトバシラス−アシドフィルス(L. acidophilus)が媒介する乳酸発酵により、ブロイラー処理
廃棄物のような家禽廃物の匂いや粘度が顕著に減少する。その上、LAB含有調製物は、分解困難な炭水化物の破壊を促進し、ブタの盲腸の細菌によるアンモニア生成物を減少させることが報告されている。最終的に、エキソビボでのラクトバシラス−カゼイFG1およびラクトバシラス−プランタルム(L. plantarum)FG10の貯蔵生牧草の発酵は、尿素分解生物を抑制することによって顕著にアンモニア量を減少させる。[Deshmukh, A.C.,
Patterson, P.H. Preservation of hatchery wastes by lactic acid fermentation. 1.
Laboratory scale fermentation. Poult Sci 76:1212-1219 (1997); Russell, S.M. et al., Lactic acid fermentation of broiler processing waste: physical properties and chemical analyses. Poult Sci 71:765-770 (1992); Tibbetts, G.W. et al., Poultry offal ensiled with Lactobacillus acidophilus for growing and finishing swine diets. J Anim Sci 64:182-190 (1987); Sakata, T. et al., Probiotic preperations dose-dependentty increase net production rates of organic acids and decrease that of annmonia by pig cecal bacteria in batch culture. Dig Dis Sci 44:1485-1493 (1999); Cai, Y. et al., Effect of applying lactic acid bacteria isolated from forage crops on fermentation characteristics, aerobic deterioration of silage. J Dairy Sci 82:520-526 (1999); Modler, H.W. et al., Bifidobacteria and bifidogenic factors. Can Inst Food Sci Tech 23:29-41 (1990)]。
【0006】
しかしながら、LABがヒトおよび家畜の生命の質を向上させる最も高い可能性は、LABのインビボでのプロバイオティック用途にある。LABがインビボでの有益なプロバイオティック効果を示すためには、生物は、消化管で長い時間生存しなければならない。それゆえに、腸の収縮による迅速な除去を防ぐような量を保持できるプロバイオティックLAB株を選択することが重要である。有効なプロバイオティック細菌は、胃の環境での生存が可能であり、腸上皮に付着することによって少なくとも一時的に腸で定着することが可能でなければならない。その結果として、粘膜表面に付着するための高められた能力を示し、それゆえに改善された細菌の維持、および、持続的な消化管での滞留時間を示すLABは、それらを示さないLABに対して競争力のある利点を有する。[Salminen, S. et al., Clinical uses of probiotics for stabilizing the gut mucosal barrier: successful strains and future challenges. Antonie Van Leeuwenhoek 70:347-358 (1996); Conway, P. Selection criteria for probiotic microorganisms. Asia Pacific J Clin Nutr 5:10-14 (1996); Havenaar, R. et al., Selection of strains for probiotic use, p.209-224. In R. Fuller (ed.), Probiotics, the scientific basis. Chapman and
Hall, London, U.K. (1992)]。
【0007】
ラクトバシラス種は、多数の異なるメカニズムを介して哺乳動物の消化管にうまく定着することができる。例えば、いくつかの細菌種は、様々な上皮下部の(sub-epithelial)マトリックスタンパク質、および、腸の粘膜上の特定の受容体に結合する。他の種は、細菌および宿主の真核細胞表面上で、炭水化物とタンパク質因子との異なる組み合わせを必要とするメカニズムを介して、哺乳動物の腸の細胞に付着することができる。しかしながら、付着のメカニズムに関係なく、ヒト消化管にうまく定着するLABの能力により、LABはプロバイオティック特性が与えられる。[Greene. J.D.. Klaenhammer, T.R. Factors involved in adherence of lactobacilli to human Caco-2 cell. Appl Environ Microbiol 60:4487-4494 (1994); Sarem, F. et al., Comparison of the adherence of three Lactobacillus strains to Caco-2 and Int-407 human intestinal cell lines. Lett Appl Microbiol 22:439-442 (1996); Naidu, A.S., et al., Particle agglutination assays for rapid detection of fibronectin, fibriogen, and collagen receptors on Staphylococcus aureus. J Clin Microbiol 26:1549-1554 (1988); Wadstrom, T. et al., Surface properties of lactobacilli isolated from the small intestines of pigs. J
Appl Bacteriol 62:513-520 (1987); Bernet, M.F. et al., Lactobacillus acidophilus LA 1 binds to cultured human intestinal cell lines and inhibits cell attachmen
t, invasion by entero-virulent bacteria. Gut 35:483-489 (1994); Jin, L.Z. et al., Effect of adherent Lactobacillus spp. on in vitro adherence of salmonellae to the intestinal epithelial cells of chichen. J Appl Bacteriol 81:201-206 (1996); Reid, G. et al., Influence of lactobacilli on the adhesion of Staphylococcus aureus and Candida albicans to fibers and epithelial cells, J Ind Microbiol 15:248-253 (1995)]。
【0008】
一般的に言えば、競合的な結合プロセスで侵襲性または毒素産生の病原性の腸細菌(腸管病原体)を腸の粘膜から退去させることにより、プロバイオティック細菌は自身の有益な効果を働かせる。腸管病原体、例えば、これらに限定されないが、腸管病原性大腸菌(EPEC)、毒素原性大腸菌(ETEC)、サルモネラ−エンテリティディス(Salmonella enteritidis)、エルシナ−シュードツベルクローシス(Yernia psudotuberculosis)、および、リステリア−モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)は、病気を引き起こすために動物の腸管にうまく定着することができなければならない。
【0009】
有効に腸に定着するのにこれら生物が用いるメカニズムは様々である。例えば、CFA/IまたはCFA/II付着因子を有するETECは、特に、培養中の、分裂したヒトの腸
上皮のCaco−2細胞の刷子縁に付着する。サルモネラ−チフィムリウムおよびEPECは、培養中の、分化したヒトの腸上皮のCaco−2細胞の刷子縁に付着し、それに反して、エルシナ−シュードツベルクローシスおよびステリア−モノサイトゲネスは、未分化のCaco−2細胞の末梢に結合する。
【0010】
近年、熱で殺したラクトバシラス−アシドフィルス調製物が有効なプロバイオティック組成物であることが証明された。熱で殺したラクトバシラス−アシドフィルス調製物が、用量に応じて、既知の腸管病原体を試験動物の腸壁の内層から退去させることが示された。その結果として、腸管病原体は動物の消化管に定着できなくなり、病気が防がれた。例えば、ラクトバシラス−アシドフィルス(Lacteol(登録商標)株)が、この大腸菌のB41株(ECB41)の付着を用量に応じて阻害することが見出された。他の実験において、生きたラクトバシラス−アシドフィルスLB株、および、熱で殺したラクトバシラス−アシドフィルスLB株が、Caco−2細胞の結合(association)と、腸管病
原体の侵入との両方をうまく阻害した。さらに他の研究において、熱で殺したラクトバシラス−アシドフィルスLB株が、Caco−2細胞へのETEC付着を完全に阻害することが示された。[Fourniat, J. et al., Heat- kilted Lactobacillus acidophilus inhibits adhesion of Escherichia coli B41 to HeLa cells. Ann Rech Vet 23:361-370 (1992); Chauviere, G. et al., competitive exclusion of diarrheagenic Escherichia coli (ETEC) from human enterocyte-like Caco-2 cells by heat-killed Lactobacillus. FEMS Microbiol Lett 70:213-217 (1992)]. Coconnier, M.H. et al., Inhibition of adhesion of enteroinvasive pathogens to human intestinal Caco-2 cells by Lactobacillus acidophilus strain LB decreases bacterial invasion. FEMS Microbiol Lett 110:299-305 (1993)]。
【0011】
上述したように、プロバイオティック組成物とは、一般的に、腸の微生物バランスを改善することによって宿主に有益に作用する微生物栄養補助食品と定義される。一般的にプロバイオティックに関連する微生物の2つの主要な属としては、ラクトバシラス種と、ビフィドバクテリア種(Bifidobacteria sp)とがある。プロバイオティックによる有益な
効果としては、感染症への耐性の増加、より健全な免疫系、過敏性腸症候群の軽減、血圧の減少、血清コレステロールの減少、アレルギー緩和、および、腫瘍後退が挙げられる。しかしながら、近年の科学進歩や、プロバイオティック組成物の効能を支持する限定されたインビボおよびインビトロでの実験上の証拠が公開されているにもかかわらず、これらの利益および他の利益を報告する主な研究は解毒面での証拠に頼ってきた。
【0012】
解毒性に依存する刊行物および限定されたインビトロのデータの例としては、米国特許(USPAN)第3,957,974号、第4,210,672号、第4,314,995号、第4,345,032号、第4,579,734号、第4,871,539号、第4,879,238号および第5,292,362号(「Hata」の特許)。Hataの特許は、ラクトバシラス種の様々な亜種を開示しており、有益なプロバイオティック様効果を報告している。しかしながら、Hataの特許は、上皮下部のマトリックスへの貪欲な結合、および、競合的な排除、および、微生物による細菌性の腸管病原体への妨害を示すラクトバシラス種を、開示または説明していない。
【0013】
米国特許第6,060,050号(「’050特許」)は、貯蔵中に生物を保護するのに用いられる培地を含むスターチ含有培地中に懸濁されたプロバイオティック微生物からなる調製物を開示しており、生物を大腸に移送するのに役立ち、成長促進基質を提供する。しかしながら、’050特許は、腸管病原体に対するプロバイオティック活性を直接示すデータを提供していない。
【0014】
米国特許第号5,965,128(「’128特許」)は、大腸菌O157:H7(腸管出血性大腸菌)が原因の腸の病気の治療を開示する。しかしながら、’128特許のプロバイオティック組成物は非病原性株の大腸菌しか含んでおらず、ラクトバシラス種は開示されていない。その結果として、’128特許の非病原性の腸内生物が、腸管出血性大腸菌に対する「プロバイオティック様」の保護をレシピエントに与えることができる一方で、ラクトバシラス種およびビフィドバクテリア属に関連する他の有益な特色が欠けている。
【0015】
米国特許第4,839,281号、第5,032,399号および第5,709,857号(’857特許)は、腸粘膜細胞に付着する数種のラクトバシラス−アシドフィルス株を開示している。その上、’857特許は、ある種の腸管病原体の成長を阻害するラクトバシラス−アシドフィルス株を開示している。しかしながら、’857特許は、’857特許のラクトバシラス−アシドフィルス培養物に関して証明された有益な特色を有するラクトバシラス−カゼイ株を開示していない。
【0016】
それゆえに、プロバイオティック活性を示すラクトバシラス種の新菌株に対する必要性が残る。特に、腸管病原体による病気を減少させ、動物の生命力と健康を増進する証明された能力を有するより多くのラクトバシラス種の株に対する必要性がある。
【発明の開示】
【発明の要旨】
【0017】
本発明の目的は、プロバイオティック特性が実証されたラクトバシラス種の新菌株を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、抗腸管病原体のプロバイオティック活性を有するラクトバシラス種の新菌株を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、動物の健康および生命力を維持するラクトバシラス種の新菌株を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、実証されたプロバイオティック特性を有するラクトバシラス種から製造された栄養補助食品および医薬配合物を提供することである。
本発明は、KE01と指定されたラクトバシラス−カゼイの新菌株を提供することによってこれらの目的および他の目的を実現し、当該新菌株は、実証されたインビボでの抗腸管病原体活性などの、科学的に証明されたプロバイオティック特性を有する。その上、本
発明は、ラクトバシラス−カゼイKE01株からなる栄養補助食品および医薬配合物を提供し、当該栄養補助食品および医薬配合物は、その生物に長期間の保護を提供し且つそれの証明されたプロバイオティック特性の維持を補助するトレハロースおよびフルクトオリゴ糖類からなる糖複合物に配合される。
【0020】
腸管病原体感染を治療および予防し、ヒトおよび家畜の健康および生命力の維持を補助するのに用いることが出来る新規のプロバイオティック配合物の必要がある。近年、米国食品薬品管理局(FDA)は、抗生物質の過剰な処方および臨床上の乱用に対する運動をを強めてきた。過剰な抗生物質使用は、第一選択抗生物質に耐性のあるヒトおよび動物病原体の数に応じて増加し、それにより従来の抗菌療法に反応しない感染症が増加してしまう。その上、動物飼料における予防的な抗生物質使用により家畜の腸の感染が驚くほど増加し、栄養素の吸収不良により群れの大きさや動物の体重が減少してしまう。その結果として、ヒトが摂取するのに適した健康な動物の数は減少し、市場に出すのに十分な程長く生存した動物は顕著に体重が減少し、結果的に肉の品質が低下する。
【0021】
ヒトおよび家畜における薬剤耐性の腸管病原体の迅速な蔓延を防ぐ一つの手段は、抗生物質の使用を著しく減らすことである。しかしながら、飼育場および都市が過剰に込み合っているために、腸の感染などの伝染病の蔓延は不可避である。その結果として、予防的な抗生物質使用を完全に中断する前に、適切な抗菌の代案が利用可能でなければならない。近年の研究によれば、プロバイオティック微生物の特定の株を含む食料品および栄養補助食品を使用することにより、腸管病原体による病気の予防を補助し、多くの場合、実際に治癒するということが示されている。しかしながら、現在市販されている多くのプロバイオティック処方は、ラクトバシラス種およびビフィドバクテリア種(および他の属)を含む生物に依拠し、これらは、プロバイオティック効能を評価する承認された方法を用いた科学的な調査が行われていない。その結果として、現在利用可能な「プロバイオティック」処方のあまりにも多くが、インビボでの抗腸管病原体の活性が証明されていない。その上、市販の臨床上有効なプロバイオティック配合物の多くは貯蔵に適しておらず、それゆえに、有効量の生存性プロバイオティック細菌が使用者に渡されない。本発明者は、多くの市販の調製物を試験し、微生物の生存率が表示されていた濃度よりかなり低いことを見つけ、多くの場合において、本発明者は、これら市販の調製物が生存性細菌を少しも含まないことを発見している。
【0022】
本発明者は、KE01と指定されるラクトバシラス−カゼイの新菌株を調製およびパッケージング方法を開発した。本発明者は、もともとは、このラクトバシラス−カゼイの新菌株を伝統的な発酵したヨーグルト様のアジアの乳製品から得た。その後、本発明者は、単離物を特徴づけ、その株をアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC, MD, USA
)に寄託した。ラクトバシラス−カゼイKE01株は、ATCC受託番号PTA−3945を与えられた。その上、本発明者は、生存性プロバイオティック微生物の臨床上有効な量が宿主に達するようなラクトバシラス−カゼイKE01の生存率を維持する調製物を開発した。
【0023】
本発明は、腸管病原体の細菌付着を阻止する(微生物の妨害)ラクトバシラス−カゼイ株(KE01)を提供し、当該腸管病原体としては、例えば、これらに限定されないが、多様な哺乳動物細胞タイプに対する、腸管病原性および腸管毒素原性大腸菌、ヘリコバクター−ピロリ(Helicobacter pylori)、カンピロバクター−ジェジュニ(Campylobacter
jejuni)、サルモネラ−チフィムリウム(S. typhimurium)、およびサルモネラ−エン
テリティディスが挙げられる。その上、本発明のラクトバシラス菌はまた、これら細菌性病原体および他の細菌性病原体を、多くの哺乳動物細胞に競合的に結合させないようにする(競合的な排除)。本発明の新規ラクトバシラス株に関する有益な特性により、全般的なヒトおよび動物の健康を支持する改善されたプロバイオティック栄養補助食品が得られ
た。その上、本発明は、例えば、これらに限定されないが、旅行者下痢症、胃腸感染症、溶血尿毒症症候群、および胃潰瘍などの状態に対して、予防薬、治療薬および苦痛緩和薬(本明細書においては、まとめて「プロバイオティック」と称する)を提供するのに用いることができる。
【0024】
この新規ラクトバシラス−カゼイKE01株の追加的な新しい特徴および特色としては、これらに限定されないが、約2000ppmの硫化物を含む増殖培地に晒した場合、48時間以内に、硫化物濃度を300ppmを超過する係数(factor)で減少させるラクトバシラス−カゼイKE01の能力、および、上皮下部のマトリックス、例えばバイオコート(登録商標)(コラーゲンI型、コラーゲンIV型、ラミニン、およびフィブロネクチン)、マトリゲル(登録商標)およびCaco−2細胞の単分子層などへ強い結合を示すこと、が挙げられる。最も重要には、本発明のラクトバシラス−カゼイの再生した凍結乾燥調製物が、コラーゲンに付着した大腸菌を効果的に引き離すことが示された。
【0025】
本発明のラクトバシラス−カゼイの生存率を維持し、その大腸菌置換特性を保持するのに用いられた方法としては、これらに限定されないが、糖トレハロースおよび水分の使用、ならびに、最終組成物を耐酸素ポリマー(例えばMylar(登録商標))で内張りした箔膜小包(foil pouch)にパッケージングすること、が挙げられる。
【0026】
ラクトバシラス種の新菌株の、これらの、および他の有益なプロバイオティック特性は、以下の、非限定的な本発明の詳細な説明によりさらに証明される。
発明の詳細な説明
本発明の一実施形態は、1グラム当たり約10〜1011コロニー形成単位の生存性ラクトバシラスを含む栄養補助食品である。本発明の他の実施形態において、本栄養補助食品は、1グラム当たり約10〜1011個の不生存性ラクトバシラスを含む。本発明のラクトバシラス種は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)受託番号PTA−3945のラクトバシラス−カゼイKE01株である。ラクトバシラス−カゼイKE01のコロニー形成単位(CFU)は、1個の細菌細胞と同等である。また、コロニー形成単位またはCFUという用語は、一般的に生存性細菌を述べる場合にのみ用いられるが、不生存性ラクトバシラス組成物で構成される本発明の実施形態を述べる場合には、1個の不生存性細菌細胞も定義される。
【0027】
本発明の一実施形態において、本栄養補助食品は、乾燥ラクトバシラス種組成物で充填したゼラチンカプセルを含む。他の実施形態において、本栄養補助食品は、液体調製物の形態である。本発明のさらに他の実施形態において、本栄養補助食品は、肛門または膣用の坐剤の形態である。坐剤として用いる場合、本栄養補助食品を手ごろな巨丸剤に成形することができ、投与を容易にするための非毒性の潤滑剤、安定剤、ワックス等を含ませることができる。本発明の他の実施形態において、本ラクトバシラス種栄養補助食品は、食物、例えば、これらに限定されないが、乳製品、穀物、パン、肉、果物、野菜、米等と混合することができる。本発明のラクトバシラス種栄養補助食品が想定する形態は、重要ではなく、非限定的である。
【0028】
本明細書を通して、本発明は、プロバイオティック組成物、ラクトバシラス種含有組成物、栄養補助食品、凍結乾燥粉末、または、ラクトバシラス種組成物と称することができる。これら全ての上述の用語は、形態または他の成分の存在もしくは非存在に関係なく、ATCC受託番号PTA−3945の生存性または不生存性ラクトバシラス−カゼイKE01株、または、本明細書で説明される方法を用いて決定された遺伝的に同等なものを含む組成物を意味する。
【0029】
本発明の一実施形態において、そのラクトバシラス組成物は、食品科学分野の当業者に
既知の標準的な方法を用いて凍結乾燥される。本発明のラクトバシラス組成物の他の実施形態において、本ラクトバシラス組成物は風乾される。さらに他の実施形態において、そのラクトバシラス組成物はペーストである。さらに他の実施形態において、本発明のラクトバシラス組成物は液体である。
【0030】
本発明のラクトバシラス組成物は、追加の成分と混合してもよいし、混合しなくてもよい。例えば、本発明の一実施形態において、そのラクトバシラス組成物は、トレハロース、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、および、それらの組み合わせからなる群より選択された炭水化物と混合される。当該炭水化物は、組成物全体の約50%〜98%で含まれ得る。他の実施形態において、タンパク質、例えばアルブミンおよび/またはホエーは、本発明のラクトバシラス組成物に添加しても、しなくてもよい。
【0031】
本発明のラクトバシラス種杆菌組成物を、ゼラチンカプセル、圧縮錠剤、またはジェルカップの形態で、巨丸剤として経口的に摂取することができる。他の実施形態において、本発明のラクトバシラス組成物を、液体飲料の形態で経口的に摂取することができる。液体飲料は、他の成分、例えば、これらに限定されないが、フレーバー増強剤、甘味料、粘度増強剤および他の食品添加剤を含ませることができる。また、本発明を、他の食品と共に、別々に、または、それらと混合して摂取することができる。
【0032】
本発明の一実施形態において、動物は、プロバイオティック組成物の1回の用量(1グラム当たり約10〜1011個のラクトバシラスを含む)を与えられる。総摂取量は、動物の個々の必要性、ならびに、動物の体重および大きさに依存する。いずれの所定の用途のための好ましい投与量は、滴定で簡単に決定することができる。滴定は、一連の標準重量用量(それぞれ1グラム当たり約10〜1011個のラクトバシラスを含む)を調製することによって達成される。一連の用量を投与し、0.5グラムから始めて動物のサイズおよび用量形態により決定された理論的な終了点に達するまで上げ続ける。適切な用量は、所望の結果が得られるラクトバシラス組成物の最小限の量が投与される場合に達成される。また、適切な用量は、本発明のプロバイオティック組成物の「有効量」として当業者に知られている。
【0033】
例えば、動物における過敏性腸症候群に関する症状を軽減することが望ましい場合、上述の1つの測定用量を、症状が静まるまで用量をそれぞれ連続的に1日0.5グラムずつ増加させて段階的に上げながら毎日投与する。本発明の一実施形態において、好ましい用量は、体重(動物レシピエントの重量)1キログラム当たり、1日当たり、約10〜10個の生存性ラクトバシラスの範囲である。これは、平均的な健康な成人に関して、1日当たり約100億個の生存性ラクトバシラス−カゼイKE01株と同等である。全ての体重の全ての動物に適したおよその用量を外挿法により計算することは、簡単である。これは、上述の滴定方法により、プロバイオティック組成物を処方する当業者により適切に変えることができる非限定的な例である、と認識される。
【0034】
本発明のプロバイオティック組成物は、それを必要とする全ての動物に投与することができる、当該動物としては、これらに限定されないが、哺乳動物、鳥類、爬虫類、および、魚類が挙げられる。典型的な用途としては、本発明のプロバイオティック組成物を、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、ニワトリ、シチメンチョウ、キジ、ウズラ、インコ、オウム、ならびに、他の野生動物および家畜動物に投与することが挙げられる。
【0035】
特に、本発明のプロバイオティック組成物は、本明細書に記載の方法を用いてそれを必要とする動物に投与する場合、腸管病原体関連病を阻害または治療するのに用いることができる。腸管病原体による病気としては、例えば下痢、過敏性腸症候群および腸の出血な
どの病原体により発症する病気が挙げられる。これら病気に関する腸管病原体の例としては、これらに限定されないが、腸管病原性大腸菌(EPEC)、毒素原性大腸菌(ETEC)、サルモネラ−エンテリティディス、エルシナ−シュードツベルクローシス、および、リステリア−モノサイトゲネスが挙げられる。競合的な結合プロセスを介して腸管病原体による病気の阻害および治療が本発明のプロバイオティック組成物により達成されることが、本発明者により理論化されるが、限定として提供されることではない。すなわち、本発明のプロバイオティック性ラクトバシラスは、腸の粘膜上の結合部位で腸管病原体と競合する。本発明のプロバイオティック性ラクトバシラスがこれら結合部位に対して腸管病原体よりも高い親和性および結合活性を有するために、本発明のプロバイオティック性ラクトバシラスは、正常な代謝プロセスにより無害に腸から流出して、腸内環境に腸管病原体を置換する。腸管病原体による病気の阻害および治療におけるこの上述の競合的な結合およびその効能のインビボでの例は、下記の詳細な実施例および添付の図面で提供される。
【0036】
以下の技術的な考察は、詳細な技術を提供する。セクションIにおいて、当業者は、プロバイオティック性ラクトバシラス、特に、本発明のプロバイオティック性ラクトバシラス種、ラクトバシラス−カゼイKE01株をどのように単離し同定するかを学ぶ。セクションIIにおいて、本発明のプロバイオティック組成物をどのように調製するか、および、本発明のプロバイオティック組成物により示されるプロバイオティックの特色を科学的に確認するために行われた試験を教示する特定の実施例が提供される。これら詳細な実施例は限定を意図しないと理解される。
【0037】
I.ラクトバシラス−カゼイKE01株の単離および特徴付け
A.候補のプロバイオティック細菌の単離
伝統的な発酵ヨーグルト様のアジアの乳製品から本発明のプロバイオティック生物を単離した。スクリーニング方法は,安全なヒトの消費の少なくとも10年の歴史を有する伝統的な発酵ヨーグルト様のアジアの乳製品に限定された。プロバイオティック細菌の単離は、3種の選択的な微生物用培地を用いて、微生物学の当業者既知の方法を用いて行われた。ラクトバシラス選択的培地としては0.05%システインを添加したSL培地が挙げられ、ビフィドバクテリウム属は抗生物質を含むトリプチケースフィトンイーストエクストラクト培地を用いて選択され、ストレプトコッカス属に関してはトリプチケースイーストエクストラクトシステイン培地を用いて単離された。
【0038】
候補のプロバイオティックラクトバシラス種杆菌は、カタラーゼ陰性の、グルコースホモ発酵型の、グラム陽性の非胞子形成杆菌であり、これは、低いpH、胃酸および胆汁耐性を示した。ラクトバシラス単離物が酢酸塩含有培地で成長する能力に加えて、ラクトバシラス単離物がpH9.0で成長できないことは、それらをCarnobacterium種から区別するのに役立った。トータルで81個の単離物が、これらの基準に基づき候補のプロバイオティック性ラクトバシラスとして分類され、さらに以下の基準、すなわち:i)低い膵液への耐性;ii)上皮下部のマトリックス、例えばバイオコート(登録商標)マトリゲル(Becton Dickinson, Bedford, MA)への付着能力、および、培養した腸上
皮細胞(Caco−2細胞系)への付着能力;iii)コラーゲンマトリックスに付着する
腸管出血性大腸菌血清型O157:H7を競合的に排除するそれらの能力;および、iv)アンモニアおよび硫化物含有化合物を減少させるそれらの能力に関して特徴付けられた。
【0039】
全ての81個の候補のプロバイオティック性ラクトバシラスを分析した後、全ての上述した特徴を有する2つの株を同定した。これらの株は、KE97株およびKE99株(再指定されたKE01)と指定された。最後に、成長増殖速度(BioMerieux(登録商標)バクトメーターシステムを用いたインピーダンス検出によって決定された世代時間)、連続培養における株の安定性、凍結乾燥および再生の特徴、および芳香/フレーバ
ー特性を各株で確認した。
【0040】
本発明のプロバイオティック組成物の調製に用いるための実質的に純粋な培養物中で、単離されたラクトバシラス−カゼイKE01株生物を維持する。本明細書で用いられるように、「実質的に純粋な培養物」とは、固体または半固体の微生物用培地上で培養された場合、識別可能な一つの生物のみが生じる細菌学上の培養物を意味する。他の細菌種の細胞が極めて低い量で存在してもよいが、しかしながら、これらの細胞は、生存不可能、培養不可能であるか、または、典型的なゲノムに基づかない微生物学的技術を用いた検出の限界値より低いか、のいずれかである、ということが理解される。「ゲノムに基づかない」という用語は、微生物のDNAまたはRNAを検出するのに用いられるPCR検出または類似方法のような方法が排除されていることを意図する。
【0041】
その上、ラクトバシラス−カゼイKE01株(または、単にKE01とも称される)の粉末、ペースト、ゲル、巨丸剤、または、他のプロバイオティック組成物のいずれも本発明の教示に従って製造されることが本明細書で説明されており、そのラクトバシラス−カゼイKE01株は実質的に純粋な培養物から得られたものと理解される。
【0042】
B.ランダム増幅多型DNA(RAPD)分析によるDNAフィンガープリンティング
RAPDプロトコールにおいて、細菌の同定のための独特なフィンガープリントを作製するためにPCRが用いられる。PCRによる分析は、迅速かつ信頼できる方法で行うことができる。従って、RAPD分析が、KE01株の分子同定およびフィンガープリンティングに用いられた。ATCCコレクションからの全ての12種のラクトバシラス種タイプの株をフィンガープリンティングし、KE01と比較した。DNAフィンガープリンティングのために、全てのラクトバシラス種株をMRSブロス(Difco)で一晩培養した。
DNAフィンガープリントに関して分析されたラクトバシラス種株を表1に列挙する。
【0043】
【表1】

DNA抽出方法
WizardゲノムDNA精製キット(Promega, WI, USA)を用いてラクトバシラスからDNAを抽出した。簡単に言えば、1mLの24時間成長させたMRSブロスの各ラクトバシラス種の培養物を遠心分離により回収し、細胞を50mMのEDTA中で再懸濁し、10mg/mLリゾチーム(Sigma, MO, USA)で37℃で60分間処理した。ラクトバ
シラス種杆菌細胞を遠心分離でペレット化し、上清を除去した。細菌のペレットを核溶解溶液中で再懸濁し、80℃で5分間インキュベートした。細胞懸濁液を室温に冷却し、RNアーゼをその溶液に混合した。その懸濁液を37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、タンパク質沈殿溶液をその混合物に加えた。溶液をボルテックスで混合し、氷上で5分間インキュベートした。その混合物を3分間15K×gで遠心分離し、上清を新しいチューブに移し、DNAをイソプロピルアルコールで沈殿させた。DNAを遠心分離し、イソプロピルアルコールを吸引した。DNAペレットを70%エタノールで洗浄し、遠心分離で回収した。エタノールを除去し、ペレットを乾燥させた。DNAをトリス−EDTA緩衝液中で再懸濁した。
【0044】
抽出されたDNAのPCR増幅
Cocconcelli等(1995)に従い、1マイクロリッターの抽出されたDNAを用いて
、単一の任意のヌクレオチド配列を用いてiCycler(Bio-Rad, CA, USA)でPCR反応を行った。2×PCR溶液−Premix Taq(Takara, Shiga, Japan)を各反応に用いた。各反応は、総量50μL、1.25ユニットのTakara Ex Taq
DNAポリメラーゼ、1×緩衝液、200μMのdNTPミックス(それぞれ2.5mM)を含んでいた。プライマーの最終濃度を4μMとし、増幅に用いられたプライマーは、5’−AgCAgCgTgg−3’であり(Operon Technologies. Inc., CA, USA)、テンプレートDNAを含む反応混合物を、以下の温度プロフィールでサイクル反応させた:94℃で5分間を1サイクル;94℃で1分間、29℃で1分間、1.5分間で72℃まで上昇させ、72℃で1.5分間維持を40サイクル;72℃で2分間を1サイクル;および、4℃で維持。[Cocconcelli, PS et al., Development of RAPD protocol for typing of strains of lactic acid bacteria and entercocci. Lett. Appl. Microbiol. 21:376-379 (1995)]。
【0045】
ゲル電気泳動
各RAPDで増幅された反応物のアリコート(10μL)を、Sambrook等(1989)に従って、トリス−ホウ酸−EDTA緩衝液中の1%(wt/vol)のアガロースゲル電気泳動により分析した。ゲルを冷却しないで120Vで2時間泳動させた。標準としてDNA分子量マーカーのHyperladder I(Bioline, Randolph, MA, USA)を用いた。電気泳動した後、ゲルをエチジウムブロマイド(5μg/mL)で10分間染色し、5分間洗浄し、可視化し、Fluor−S MultiImager(BioRad, CA, USA)で分析した。[Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T. Molecular Cloning - A Laboratory Manual, 2nd Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1989)]。
【0046】
単一の10−merプライマーを用いたRAPD分析により、様々なラクトバシラス種参照株およびKE01株のDNAサンプルを含む1%アガロースゲル上で、変化する強度の、多数の増幅産物のはっきりとした固定パターンが得られた。ゲル上での、異なる種の断片と参照ラクトバシラス種との比較を示した。図1および表2で示された説明文付きの固定パターンは、KE01株を一意的に同定し、ゲノムフィンガープリンティングライブラリーを提供するのに役立つ。ゲノムフィンガープリンティングに基づいて、図2で示されたようにデンドグラム(dendogram)を推測した。系統発生分析のワードのクラスター
方法を適用した。この方法は、各工程で形成され得る2種のクラスターのいずれかの平方和を最小化し、小さいサイズのダスター(duster)を作製した。系統発生分析に基づき、KE01株は、ラクトバチルス−ヘルヴェティクスATCC15009と13%相同性を示し、ラクトバシラス−カゼイ属の亜種ラムノーサスATCC7469と55%相同性を示した。
【0047】
ラクトバシラス−カゼイKE01株の純粋な培養物をアメリカンタイプカルチャーコレ
クション(Bethesda, MD)に寄託し、ATCC番号が付与された。
【0048】
【表2】

II.本発明の実施例
以下の実施例で用いられたバルク状ラクトバシラスKE01株を、発酵微生物学の当業者に既知の標準的な発酵方法を用いて大量生産した。次に、精製したラクトバシラス種K
E01株を、様々な送達システム、例えば、以下に示すような、微粉末、巨丸剤カプセル、ゲル、および乾燥動物飼料混合物の調製物に用いた。
【0049】
実施例1
本発明のラクトバシラスKE01株組成物の調製
凍結乾燥KE01の微粉末形態への調製
−22℃で凍結保存されたラクトバシラス種KE01の純粋な培養物(開始物)を、タンパク質、ビタミン、ミネラルおよび炭水化物源を含む発酵ブロス培地中で再生させた。NBS1500L発酵器に取り付けられた発酵槽で種培養を調製した。発酵プロセス中、微生物の純度を、所定の時間ポイントで(対数期と最終サイクルとを通して)モニターした。微生物の集団を殺菌した分離器で回収し、無水デキストロースおよびトレハロースの混合物を含む担体と混合した後、細胞濃縮物のスラリーを凍結乾燥した。凍結保護物質として、噴霧乾燥したグレードAの低温加熱した無脂肪低温殺菌乳を用いた。凍結乾燥したKE01濃縮物を、殺菌した製粉器具を用いて微粉末に粉砕した。使用前に、KE01粉末の品質の純度および生存率を確かめた。
【0050】
KE01粉末の混合物への混合
全ての操作を、温度(74〜76°F)および湿度(30〜40%)に制御した環境で行った。KE01粉末(約1011CFU/gのラクトバシラス)、および、下記の組成に列挙された他の成分を、混合するために閉鎖系に導入した。一連のジオメトリック希釈を行い、全ての成分が均質に分配されているかを確認した。水底の分流とクロスフローとを確実にするために、カスタマイズされたジオメトリーでマスフロー容器回転システム(mass flow bin tumbling system)内で混合した。混合したら、5lbの円筒型容器にパ
ッケージングするまでその粉末を閉鎖系で維持した。混合した粉末を、吸湿パックまたは内在の防湿特性を有し、気密蓋で密閉された適切な容器(円筒形容器、単位用量パックなど)に充填する。
【0051】
「約」という用語は、バルク材料を計量したり製造したりする際に固有のエラーの妥当な要素を与えるのに用いられることは、当業者に明白である。本明細書で用いられるように「約」とは、0.1〜0.5%の誤り要因を含み、さらに、最終組成物を配合するのに用いられた材料の量は、トータルで100%でなければならず、100%を超えることはできない、ということは当業者に明白である。全てのパーセントは、重量パーセントを基礎とする。例えば、限定を意図しないが、本発明の一実施形態において、本発明の教示に従って製造されたプロバイオティック組成物は、1グラム当たり約10〜1011CFUのKE01を含む約1〜5%のKE01粉末、および、95〜99%の不活性成分または活性成分を含み、当該不活性成分または活性成分は、これらに限定されないが、炭水化物、脂質、ポリペプチド、脂肪酸、植物性化学物質(phytochemical)、および、それら
の組み合わせからなる群より選択される。
【0052】
本発明の教示に従って用いることができる炭水化物としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、および、多糖類、例えば、これらに限定されないが、トレハロース、マルトース、スクロース、デキストロース、ラクトース、イヌリン、リボース、麦芽デキストリン等が挙げられる。本発明の一実施形態において、二糖類は、トレハロース二水和物であり、オリゴ糖はフルクトオリゴ糖であり、多糖類は麦芽デキストリンである。
【0053】
適切な脂質としては、これらに限定されないが、大豆油、オリーブ油、パーム核油、落花生油、クルミ油、キャノーラ油(cannola oil;菜種油)等が挙げられる。適切なポリ
ペプチドとしては、ホエータンパク質、卵アルブミン、ゼラチン、乳タンパク質、ならびに、他の動物タンパク質および植物タンパク質が挙げられる。最後に、本明細書で用いられる植物性化学物質としては、ポリフェノール類、サポニン類、フラボノイド類、モノテ
ルペン類、硫化アリル類、リコピン類、カロチノイド類、ポリアセチレン(polyactetylenes)、シリマリン、グリシルリジンカテキン類などのような化合物が挙げられる。
【0054】
本発明の一実施形態において、ラクトバシラス−カゼイKE01株プロバイオティックは、以下の重量パーセントの成分を含む。
【0055】
【表3】

KE01の巨丸剤カプセルへの調製
凍結乾燥KE01微粉末(約10〜1011CFU/gのラクトバシラス)、トレハロース二水和物(食品グレード)、および、デキストロース(食品グレード)または麦芽デキストリン(Grain Processing Corp., Muscatine, IA)を、それぞれ3%:67%:
30%で、徹底的に混合した。混合した混合物をゼラチンカプセルに充填した。使用前に、KE01巨丸剤カプセルの品質を純度および生存率に関して試験した。
【0056】
【表4】

ゲル形態のKE01の調製
凍結乾燥KE01微粉末(約10〜1011CFU/gのラクトバシラス)を、2.5%濃度でフルクトオリゴ糖(医薬品グレード)と徹底的に混合した。非GMO(遺伝子組換え生物)を押出/排除した大豆油を第一の担体としてを用いた。ゲルを徹底的に混合し、滅菌したへらを用いてバッチの上部、中心部および下部からサンプルを回収し、KE01の純度および生存率に関して分析した。KE01ゲルを、使用するための50/ccのチューブに充填した。
【0057】
【表5】

実施例2
細胞付着研究
インビトロでの放射付着分析(RAA)を行い、Cell Environments(登録商標)(Becton Dickinson, Bedford, Mass.)の、I型コラーゲン(Cn)、IV型Cn、
ラミニン、またはフィブロネクチンを含む24−ウェルプレート、および、Caco−2細胞単層を用いて、ラクトバシラス種KE01株の付着を測定した。
【0058】
ラクトバシラスKE01細胞の調製
Bacto(登録商標)ラクトバシラスMRSブロス(Difco)中で嫌気性条件下で一
晩培養したKE01の培養物の、50μlの接種材料を、10mlのMRSブロス(
−チミジン(20μci)を含む)中に再接種した。KE01細胞を、嫌気性条件下で、37℃で、対数期(約7時間)まで培養し、H−チミジンを細菌DNAへ最適に摂取させ、取り込まさせた。H−チミジンで標識したKE01を7,500×gでの遠心分離により回収し、洗浄し、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.2)中に再懸濁した。細菌細胞密度を、600nmで光学的に10個のラクトバシラス/mlになるように調節した。
【0059】
放射付着分析(RAA)
上皮下部のマトリックスの相互作用分析のために、Cell Environments(登録商標)の、I型コラーゲン(Cn)、IV型Cn、ラミニン、またはフィブロネクチンを含む24−ウェルプレートを用いて、KE01の付着を試験した。マトリックス成分を、平らで光学的に透明なコーティングとして塗布し、このコーティングは総表面積の1.75cmをカバーした。バイオコート(登録商標)マトリゲルマトリックス、Engelbreth−Holm−Swarmマウスの腫瘍から抽出した可溶性基底膜(室温で再生すると、ゲルを形成する)も、相互作用の研究に用いられた。2ミリリットルのKE01懸濁液(2×10個のラクトバシラス)を、マトリックス層を含む各ウェルに加え、室温でインキュベートした。1時間後、KE01懸濁液をウェルから吸引し、廃棄した。1ミリリットルのトリプシン1型(110酵素ユニット;Sigma Chemicals, St. Louis, MO.)を、各ウェルに加え、室温で30分間加水分解させ、マトリックスタンパク質
層を解離させた。トリプシン加水分解産物をシンチレーションバイアルに吸引し、各ウェルからの追加の1mlを10分間室温でホモジナイズした(Scintigest(登録商標);Fisher Scientific, Fair Lawn, NJ)。ホモジネートを対応するシンチレーションバイアルに吸引した。10mlの量のシンチレーションカクテル(Scintisafe(登録商標)Get、Fisher Scientific)をバイアルに分注し、徹底的に混合した。
混合物を沈殿させ、清澄化した後、液体シンチレーション分析器(Tri−Carb2100TR(登録商標)、Packard Inc.)を用いて放射能を測定した。
【0060】
真核細胞の相互作用分析に関して、Caco−2、結腸癌腫細胞系を、24−ウェルの組織培養プレートで、72時間、CO2インキュベーターで、イーグル最小必須培地(1%非必須アミノ酸および10%ウシ胎仔血清が添加された)を用いて単層の集合になるまで培養した。完全な単層が得られた後、各プレートをリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.2)で2回洗浄した。2ml量(約2×10個の細菌)のH−チミジンで標識したラクトバシラス懸濁液を、約10個のCaco−2細胞を含む各ウェルに加えた。Caco−2細胞とラクトバシラスとの比率を1:200に維持した。37℃で1時間インキュベートした後、細菌l懸濁液を吸引し、ウェルをPBSで洗浄した。各ウェルを1型トリプシン、組織ホモジナイザーで処理し、上述したように放射能を測定した。結合をラクトバシラスの結合として示した、生物学的表面の面積1cmあたり(上皮下部のマトリックスタンパク質の相互作用のため)、または、細胞1個あたり(Caco−2細胞の相互作用のため)。
【0061】
また、KE01と異なるバイオマトリックス層との相互作用を、表6に記載の3つのATCC参照株、ラクトバシラス−カゼイATCC393、ラクトバシラス−ロイテリATCC23272、および、ラクトバシラス−ラムノーサスATCC7469の相互作用と比較した。有意性を決定するため、分散(variance)の4×6階乗(factorial)分析を
用いて結合データを分析した(SAS Inc., Raleigh, NC)。
【0062】
【表6】

KE01は、インビトロで、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、ラミニン、および、フィブロネクチン、および、マトリゲル(登録商標)層に強い結合を示した。Caco−2細胞単層に結合したKE01は、約54%(108個のラクトバシラス/細胞)であった。KE01と、上皮下部のマトリックス層およびCaco−2細胞単層とのインビトロでの相互作用の全ては、ATCC参照株、ラクトバシラス−カゼイATCC393(p<0.0001)、ラクトバシラス−ロイテリATCC23272(p<0.0001)、およびラクトバシラス−ラムノーサスATCC7469(p<0.0001)より顕著に高かった。
【0063】
実施例3
腸管病原体の細胞付着の妨害の研究
KE01の効能は、腸管病原体(表7に列挙)のバイオマトリックスへの付着を阻害し、病原体−バイオマトリックスの複合体を解離することである。
【0064】
【表7】

付着−解離の分析
tryptic soy broth(TSB)中で一晩培養した大腸菌O157:H7の培養物、または、適切な培地培養液中で培養された他の列挙された病原体の、10μlの接種材料を、3mlのTSBまたは対応する適切な培地(H−チミジン(20μci)を含む)中に再接種した。I型コラーゲン(Cn)、IV型Cn、ラミニン、フィブロ
ネクチンおよびマトリゲル表面を含むバイオコート(登録商標)プレートへの細菌性病原体の結合を、実施例1で説明されたように行った。これらのバイオコート(登録商標)−細菌病原体複合体に、2ml量の標識されていないKE01懸濁液(2.0×10個のラクトバシラス/ml)を各ウェルに対して加え、1時間室温でインキュベートした。ラクトバシラスKE01懸濁液をウェルから吸引した。以下の工程、すなわちウェル中の内容物の放出の工程、および、放射能測定の工程は、実施例2で説明されたプロトコールに従ってなされた。ウェル中の付着した病原体の細菌細胞数の差(KE01処理有り、および、無し)を、「Log10解離」値として示した。
【0065】
付着−阻害の分析
標識されていないKE01のバイオコート(登録商標)プレート(I型コラーゲン(Cn)、IV型Cn、ラミニン、フィブロネクチンおよびマトリゲル表面を含む)への結合を実施例2で説明されたように行った。これらのバイオコート(登録商標)−KE01複合体に、2ml量のH−チミジンで標識した大腸菌または他の細菌病原体の懸濁液(2.0×10個の細菌/ml)を各ウェルに対して加え、1時間室温でインキュベートし、懸濁液を吸引した。以下の工程、すなわちウェル中の内容物の放出の工程、および、放射能測定の工程は、実施例2で説明されたプロトコールに従ってなされた。KE01で処理されていないバイオコート(登録商標)ウェルは、大腸菌または他の病原体における付着のコントロールとして提供された。KE01で前処理された細菌性病原体のバイオマトリックスへの付着の減少を、「Log10阻害」値として示した。
【0066】
大腸菌O157:H7(ATCC43895株)とバイオマトリックスおよびマトリゲル(登録商標)バイオコート表面との相互作用における、KE01の阻害および解離効果の結果を表8に示す。
【0067】
【表8】

KE01は、試験された全てのバイオ表面への強い結合を示したが、I型コラーゲンおよびマトリゲル(登録商標)との相互作用は顕著に高かった。KE01は、大腸菌O157:H7のI型コラーゲンおよびマトリゲル(登録商標)へ付着の、>3−log阻害を引き起こした;その一方で、IV型コラーゲン、フィブロネクチンおよびラミニン相互作用については>2−log阻害を引き起こした。付着した大腸菌のKE01による解離の効能は、阻害値と同様のLog値であった。
【0068】
結合を阻害し付着した細菌を解離するKE01の効能の範囲を、表9で列挙された数種の腸管病原体を用いて試験した。
【0069】
【表9】

KE01は、2.8−log(エンテロコッカス-フェカーリスについて)〜4.2−
log(サルモネラ−エンテリティディスについて)の範囲で、腸管病原体の相互作用を効果的に阻害した。比較してみると、腸管病原体を解離するKE01の効能は、3.1−log(腸管出血性大腸菌ATCC43889について)〜4.4−log(腸管出血性大腸菌ATCC43890について)の範囲で、より高かった。
【0070】
実施例4
付着した腸管病原体を解離するKE01微粉末の効能
付着した腸管病原体を解離するKE01微粉末の効能を、Caco−2単層を用いた細胞系で試験した。腸管病原体に関するCaco−2細胞の付着分析を、実施例2でKE01について説明したように行った。付着−解離分析を、実施例3でバイオマトリックス層について説明したように行った。しかしながら、上記の2つのプロトコールにおいて、KE01粉末を、1%溶液(100mlの生理的食塩水、pH7.2中に再懸濁され、徹底的にボルテックスされた1gの微粉末)として用いた。生理食塩水での処理をコントロールとして用い、その値を結果を解釈する際にバックグラウンドとして差し引いた。データを表10に示す。
【0071】
【表10】

Caco−2細胞の腸管病原体の付着プロファイルは、1.1×10(腸管出血性大腸菌ATCC43888を有するCaco−2細胞1個あたり、15個の細菌)〜6.7×10(サルモネラ−プローラムATCC13036を有するCaco−2細胞1個あたり、89個の細菌)の範囲であった。KE01は、Caco−2細胞に付着した腸管病原体複合体を有効に解離し、その解離効能は、1.3−log(93.5%)〜3.1−
log(99.9%)(それぞれ大腸菌ATCC43888およびサルモネラ-プローラ
ムについて)の範囲であった。
【0072】
実施例5
新鮮なKE01および凍結乾燥KE01調製物がウシの腸管の上皮粘膜に付着および定着する能力の証明
ウシの腸の付着分析:
新しく屠殺した動物から腸サンプルを得て、冷蔵状態で研究所へ移送した。腸を切り開き、内腔の上皮粘膜を穏やかに洗浄し、糞の屑を除去した。以下の2種の異なるKE01調製物、すなわちA)実施例2で説明されたH−チミジンで標識したKE01(約10個のラクトバシラスを含む接種材料の0.1ml);および、B)実施例1で説明されたKE01粉末ブレンド混合物(生理食塩水で均一に懸濁され、懸濁された、約10個のラクトバシラスを含む接種材料の0.1ml)を、1インチの粘膜表面に接種した。2時間インキュベートした後、接種した領域を穏やかに生理食塩水で3回洗浄した。
【0073】
サンプル調製物−AをKE01付着に関して試験した。接種領域を切り出し、組織ホモジナイザーで消化(digested)し、液体シンチレーションフルイドを用いて増幅し、実施例2で説明された放射付着分析に従って放射能を測定した。KE01は、ウシの腸上皮粘膜への強い結合、すなわち、約2.5×10個のラクトバシラス/インチを示した。
【0074】
サンプル調製物−BのKE01定着を、走査型電子顕微鏡法(SEM)により評価した。試験片を2%OsOで30〜60分間処理し、水でリンスした。試験片を50%、70%および95%エタノールで各5分間で処理し、続いて2×10分間100%エタノールでリンスした。液体二酸化炭素で臨界点乾燥した後、試験片をマウントして、金、パラジウムでスパッタコーティングした。生検試験片をJEOL6300走査型電子顕微鏡を用いて試験した。顕微鏡観察を図3および4に示す。
【0075】
実施例6
子豚に投与されたKE01含有動物飼料−サプリメントのインビボでのプロバイオティック効果。KE01の腸の定着および糞放出の証明:ブタの糞臭(糞の硫化物およびアンモニア含量の減少)を減少させるKE01の能力:および、動物の体重増加へのKE01寄与率
飼料−サプリメント投与量
飼料−サプリメント投与用量を、実施例1で説明したようにゲル形態で調製した。簡単に言えば、凍結乾燥KE01微粉末(約10〜1011CFU/gのラクトバシラス)を、2.5%濃度のフルクトオリゴ糖(FOS)と共に徹底的に混合した。非GMO(遺伝子組換え生物)を押出/排除した大豆油を第一の担体としてを用いた。ゲルを徹底的に混合し、滅菌したへらを用いてバッチの上部、中心部および下部からサンプルを回収し、KE01の純度および生存率に関して分析した。KE01ゲルを、使用するための50/ccのチューブに充填した。また、担体のみ、KE01細胞を混合した担体、および、KE01細胞とFOSとを混合した担体を含むコントロール飼料投与量を調製した。
【0076】
動物飼料−サプリメント試験
研究には、40〜60lbの範囲の重量のトータルで20匹のブタ(6〜8週齢)を用いた。これら動物を4つのグループ(それぞれ5匹の動物を含む)に分配し、以下のように分類された。
【0077】
グループ1(コントロール):第一の担体のみを含むゲル10ccを与えた動物。
グループ2:第一の担体と混合した2.5%FOSのみを含むゲル10ccを毎日与えた動物。
【0078】
グループ3:第一の担体と混合した約1010cfu/ccのKE01株細胞のみを含むゲル10ccを毎日与えた動物。
グループ4:第一の担体と混合した、1010cfu/ccのKE01株細胞と、2.5%FOSとの組み合わせを含むゲル10ccを毎日与えた動物。
【0079】
動物をグループで分け、隔離されたおりに収容し、規則正しく高タンパク質のブタの食餌を与えた。4つの動物グループに、それらそれぞれの分類の飼料−サプリメント投与量(10cc)を毎日を与えた。実験を6週間行った。飼料−サプリメント試験中、糞分析および体重測定を毎週規則正しく行った。
【0080】
糞の回収
糞サンプル(動物当たり約20g)を滅菌50ccポリスチレンチューブに回収した。サンプルを正常生理的食塩水で1:1(w/v)の比率で希釈し、徹底的にボルテックスブレンダーでホモジナイズし、2K×gで5分間遠心分離した。上清を慎重にデカントし、微生物学的および化学的分析にかけた。
【0081】
ベースラインの微生物学的計数(大腸菌型の糞およびラクトバシラス型の糞)および糞中アンモニア含量および糞中硫化物含量のベースラインのレベルを得る実際の飼料−サプリメント試験の1日前に、糞サンプルを回収した。
【0082】
糞の微生物学的分析
糞溶液(1:1(w/v)のデカントされた上清)を、正常生理的食塩水で10倍まで連続的に希釈した。Autoplate(登録商標)4000装置(Spiral Biotech, Norwood, MA)を用いて、MRS寒天(Difco)上に(全てのラクトバシラス計数のため)、および、MacConkey寒天(Difco)上に(全ての大腸菌型計数のため)、選択さ
れた希釈物を二連でプレーティングした。Spiral社のオートプレーターを用いて指数対数希釈設定(exponential log dilution setting)でプレーティングを行った。寒天プレートを、それぞれ37℃(MacConkey寒天)および32℃(MRS寒天)で24〜48時間インキュベートした。自動化赤外線Q−計数装置(Spiral Biotech, Norwood, MA)を用いて総コロニー計数を概算した。データを糞1グラム当たりの細菌として示し、
結果を、ラクトバシラス計数については図5に、大腸菌型の糞の計数については図6に示した。
【0083】
KE01を含む飼料−サプリメント、および、KE01とFOSとの組み合わせを含む飼料−サプリメントを投与された動物は、図5で示すように、コントロールグループに比べて、ラクトバシラス種杆菌の糞放出において約2.5−logの増加を示し、ブタ消化管においてKE01株の増殖および定着を示した。その一方で、大腸菌型の糞の計数は、図6で示すように、コントロール動物と比べて、KE01を与えられた動物、および、KE01+FOSを与えられた動物において、約2.5−logの減少を示し、ブタ腸において、KE01株による有効な競合的な排除を示した。
【0084】
糞の硫化物およびアンモニア分析
糞における硫化物およびアンモニア量を、MP230 pH/イオンメーターを用いたイオン選択的電極で測定した(Mettler Toledo, Columbus, Ohio)。
【0085】
硫化物イオン選択的電極の標準化のために、75mlの希釈硫化物標準(10ppm)溶液を、25mlの硫化物抗酸化剤緩衝液に穏やかに撹拌しながら加えた。DX200参照電極と組み合わせたDX232銀選択的電極を用いて、溶液の電極電位(E1)を測定した。75mlの硫化物(100ppm)溶液、および、25mlの硫化物抗酸化剤緩衝
液を別々に用いて、E2を測定した。E1とE2との差により、硫化物電極のスロープが構成された。サンプル測定のために、100mlの標準(100ppm)銀溶液と、2mlの臭化物ISA(イオン強度調節)緩衝液と混合し、E1値を測定した。10mlの糞溶液と上記溶液とを混合することによって、E2値を測定した。E1とE2との差をΔEとみなした。濃度比率(Q)チャートに従い、方程式:C=C×Q(C=糞中の硫化物濃度;C=既知の硫化物濃度、すなわち100ppm標準;および、Q=濃度比率)を用いて、標準スロープとΔEとに基づき糞中の硫化物濃度を推定した。
【0086】
アンモニアイオン選択的電極の標準化のために、1mlのアンモニア標準(1000ppm)溶液を、2mlのアンモニアpH/ISA(イオン強度調節)緩衝液を予め混合した100mlの蒸留水に穏やかに撹拌しながら加えた。アンモニアDX217電極を用いて、溶液の電極電位(E1)を測定した。続いて、その溶液に10mlのアンモニア(1000ppm)標準を加え、電極電位(E2)の変化を測定した。E1とE2との差により、アンモニア電極のスロープが構成された。サンプル測定のために、10mlの糞溶液を、2mlのアンモニアpH/ISA緩衝液を予め混合した90mlの蒸留水に、穏やかに撹拌しながら加え、E1を測定した。糞溶液にアンモニア標準を加え、E2を測定した。糞中のアンモニア濃度を上述の方程式を用いて推定した。
【0087】
KE01を含む飼料−サプリメント、および、KE01とFOSとを含む飼料−サプリメントを投与された動物は、図7および8に示すように、コントロールグループ動物に比べて、顕著な、約35ppm/gmのアンモニア減少、および、約375ppm/gmの硫化物減少を示した。また、KE01を与えられた動物、および、KE01とFOSとを与えられた動物からの糞は、増殖したプロバイオティック性ラクトバシラスKE01による乳酸生成のために、酸臭(rancid)がする。
【0088】
動物体重増加測定
体重増加に関するベースライン測定を得るために実際に飼料−サプリメント試験を行う1日前に、動物の体重を測定した。全ての4つのグループからの動物の体重を、6週間の飼料試験を通して毎週1回測定した。実験の結果、図9で示したように、動物のコントロールグループに比べて、KE01を与えられた動物は約28lbの体重増加を示し、KE01とFOSとを与えられた動物グループは20lbの体重増加を示した。
【0089】
III.結果
最後に、本明細書で開示された本発明の実施形態は本発明の原理を説明していることが理解される。用いられ得る他の改変は、本発明の範囲に含まれる。従って、一例として、これらに限定されないが、本発明の教示に従って、本発明のその他の形状を用いてもよい。従って、本発明は、厳密に示されたもの、説明されたものに限定されない。
【0090】
本発明を説明する文章中(特に以下の請求項の文章中)で用いられた用語「a」および
「an」および「the(該)」ならびに類似の指示語は、明細書中に特に他の規定がない限
り、または、文章により明確に否定されない限り、単数および複数の両方を含むと解釈される。本明細書における値の範囲の記述は、その範囲内に含まれるそれぞれ別々の値を個別に意味する簡略的な方法として提供されることを単に意図する。明細書中に特に他の規定がない限り、それぞれの個々の値は、本明細書で個々に列挙されたかのように、本明細書に含まれる。本明細書に記載の全ての方法は、明細書中に特に他の規定がない限り、あるいは、文章により明確に否定されない限り、適切な順番のいずれかで行うことができる。本明細書で示されるありとあらゆる実施例または典型的な言葉(例えば「such as」)
の使用は、単に、本発明をより良く説明することを意図しており、本発明の範囲あるいは特許請求された範囲に限定を与えない。本明細書における言葉は、本発明の実施に必須な、特許請求されていない要素のいずれかを示すものと解釈されるべきではない。
【0091】
本明細書で開示された本発明の代替の要素または実施形態の分類は、限定とは解釈されない。各群の要素は、個々に、または、本明細書で見出される群または他の要素の他の要素との組み合わせのいずれかにおいて、言及され、特許請求され得る。便宜上および/または特許性の理由で、群の1またはそれ以上の要素が含まれてもよいし、または、群から削除されてもよいと予想される。このような包含または削除のいずれかがなされる場合、明細書は、ここに改変された群を含むものとみなされ、従って、添付の請求項で用いられた全てのマーカッシュ群の記載された説明を満たす。
【0092】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載されており、本発明者等が知る本発明を実施する最良の形態を含む。もちろん、その好ましい実施形態の改良型は、上述の説明を読めば当業者に明白である。本発明者は、当業者がこのような改良型を適切なものとして用いることを考慮しており、本発明者等は、本発明が特に本明細書に記載されたものとは異なって実施されることを意図する。従って、本発明は、準拠法により認可された本明細書に添付された請求項に記載の主題の全ての改変および同等物を含む。その上、全ての可能なそれらの改変型における上述した要素の組み合わせのいずれかは、明細書中に特に他の規定がない限り、あるいは、文章により明確に否定されない限り、本発明に含まれる。
【0093】
その上、本明細書を通して、特許および印刷された出版物に対して多数の参照がなされている。上記で引用された参考文献および印刷された出版物はそれぞれ、参照により個々に本明細書に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、ランダム増幅多型DNA(RAPD)分析に基づいて、12種の異なるラクトバシラス種タイプの株と比較した1%アガロースゲル上のラクトバシラス−カゼイKE01株のゲノムフィンガープリントを示す。
【図2】図2は、ゲノムフィンガープリンティングから推測された系統発生学的系統樹と、ラクトバシラス種KE01株とラクトバシラス種タイプの株の他の種との関連を示す。
【図3】図3は、ウシの腸上皮へのラクトバシラス−カゼイKE01株の付着を示す。
【図4】図4は、ウシの腸上皮粘膜に生体フィルムを形成した定着を示す。
【図5】図5は、本発明の教示に従って動物の食餌にラクトバシラス−カゼイKE01株を添加した結果として、強化されたラクトバシラスの腸での定着および糞放出をグラフで示す。
【図6】図6は、本発明の教示に従って動物の食餌にラクトバシラス−カゼイKE01株を添加した結果の、大腸菌型の糞の計数の減少をグラフで示す。
【図7】本発明の教示に従ってに動物の食餌にラクトバシラス−カゼイKE01株を添加した結果としての、動物の糞におけるアンモニア生成物の減少をグラフで示す。
【図8】図8は、本発明の教示に従って動物の食餌をラクトバシラス−カゼイKE01株に添加した結果としての、動物の糞における硫化物生成物の減少をグラフで示す。
【図9】図9は、本発明の教示に従って動物の食餌にラクトバシラス−カゼイKE01株を添加した結果としての、動物における体重増加の上昇をグラフで示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATCC受託番号PTA−3945を有するラクトバシラス−カゼイKE01株を含んでなるプロバイオティック組成物であって、前記ラクトバシラス−カゼイKE01株が実質的に純粋な培養物から由来するものであるプロバイオティック組成物。
【請求項2】
炭水化物、ポリペプチド、脂質、植物性化学物質、および、それらの組み合わせからなる群より選択された不活性成分または活性成分をさらに含む、請求項1に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項3】
前記炭水化物が、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、および、それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項4】
前記炭水化物が、トレハロース、マルトース、スクロース、デキストロース、ラクトース、イヌリン、リボース、および、それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項5】
前記二糖類がトレハロース二水和物である、請求項3に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項6】
前記オリゴ糖は、フルクトオリゴ糖である、請求項3に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項7】
前記多糖類が麦芽デキストリンである、請求項3に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、ホエータンパク質、卵アルブミン、ゼラチン、乳タンパク質、および、それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項9】
前記脂質は、大豆油、オリーブ油、パーム核油、落花生油、クルミ油、菜種油、および、それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項10】
前記植物性化学物質は、ポリフェノール類、サポニン類、フラボノイド類、モノテルペン類、硫化アリル類、リコペン類、カロチノイド類、ポリアセチレン、シリマリン、グリシルリジンカテキン類、および、それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項11】
さらにトレハロースを含む、請求項1に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項12】
さらに麦芽デキストリンを含む、請求項11に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項13】
さらにフルクトオリゴ糖を含む、請求項11に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項14】
前記ラクトバシラス−カゼイKE01株が、1グラム当たり約10〜1011コロニー形成単位(CFU)の量で存在する、請求項13に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項15】
前記プロバイオティック組成物が、動物に投与される巨丸剤、ゲルまたは液体である、請求項1〜14のいずれか一項に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項16】
前記動物が、哺乳動物、魚類、鳥類および爬虫類からなる群より選択される、請求項15に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項17】
前記哺乳動物が、ヒト、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ヒツジ、ブタおよびウシからなる群より選択される、請求項16に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項18】
前記鳥類が、ニワトリ、シチメンチョウ、キジ、ウズラ、インコおよびオウムからなる群より選択される、請求項16に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項19】
前記巨丸剤が、ゼラチンカプセル、圧縮錠剤およびジェルカプセルからなる群より選択される、請求項15に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項20】
前記巨丸剤が、ポリマーで内張りした箔膜小包にパッケージングされる、請求項19に記載のプロバイオティック。
【請求項21】
約1〜5重量パーセントの量のATCC受託番号PTA−3945を有する粉末状ラクトバシラス−カゼイKE01株;
約25〜95重量パーセントの量の二糖類;
約0〜10重量パーセントのオリゴ糖;および、
約0〜50重量パーセントの多糖類、
を含む、プロバイオティック組成物。
【請求項22】
ATCC受託番号PTA−3945を有する前記粉末状ラクトバシラス−カゼイKE01株が、1グラム当たり約10〜1011CFUを持ち、且つ約3重量パーセントの量で存在する、請求項21に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項23】
前記二糖類が、約62重量パーセントの量で存在する、請求項21に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項24】
前記オリゴ糖が、約5重量パーセントの量で存在する、請求項21に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項25】
前記多糖類が、約30重量パーセントの量で存在する、請求項21に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項26】
前記二糖類がトレハロースであり、前記オリゴ糖がフルクトオリゴ糖であり、前記多糖類が麦芽デキストリンである、請求項21に記載のプロバイオティック組成物。
【請求項27】
ATCC受託番号PTA−3945を有し且つ1グラム当たり約10〜1011CFUを有する、約3重量パーセントの粉末状ラクトバシラス−カゼイKE01株;
約62重量パーセントのトレハロース;
約5重量パーセントのフルクトオリゴ糖;および、
約30重量パーセントの麦芽デキストリン;
を含む、プロバイオティック組成物。
【請求項28】
請求項1、11、12、13、20または26のいずれか一項による有効量のプロバイオティック組成物を、それを必要とする動物に投与することを含む、動物における腸管病原体による疾患を抑制する方法。
【請求項29】
前記腸管病原体が、腸管病原性大腸菌(EPEC)、毒素原性大腸菌(ETEC)、サ
ルモネラ−エンテリティディス、エルシナ−シュードツベルクローシスおよびリステリア−モノサイトゲネスからなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記動物が、哺乳動物、魚類、鳥類および爬虫類からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物が、ヒト、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ヒツジ、ブタおよびウシからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記鳥類が、ニワトリ、シチメンチョウ、キジ、ウズラ、インコおよびオウムからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記投与する工程が、さらに、ゼラチンカプセル、圧縮錠剤、ジェルカプセル、動物飼料および液体飲料からなる群より選択されたプロバイオティック組成物を含む、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−195778(P2010−195778A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29974(P2010−29974)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【分割の表示】特願2002−559046(P2002−559046)の分割
【原出願日】平成13年12月17日(2001.12.17)
【出願人】(505113012)プロバイオヘルス・エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】