説明

ラジエータコアサポートのアッパカバー構造

【課題】 アッパカバーにおけるパンパフェイシアとの固定部付近の必要剛性を確保できると同時に、アッパカバーをラジエータコアサポートに対して治具を用いることなく精度良く組み付けることでき、これにより、アッパカバーとパンパフェイシアを安定した状態で精度良く組み付けることができるラジエータコアサポートのアッパカバー構造の提供。
【解決手段】 アッパカバー2の位置決め穴30をラジエータコアサポート1のピンP1(衝)に対して位置決めすることにより、第2固定穴20の少なくとも上下方向位置を位置決めした状態で第1固定穴10(第1固定部)をラジエータコアサポートアッパ3に対して上下方向に固定した後、第2固定穴20(第2固定部)をパンパフェイシアに対して上下方向に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器のキャリアとしてのラジエータコアサポートにおけるラジエータコアサポートアッパに装着されるラジエータコアサポートのアッパカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器のキャリアとしてのラジエータコアサポートのラジエータコアサポートアッパには、バンパフェイシアとの隙間を塞ぐようにアッパカバーが装着されており、エンジンルーム内の見栄えの向上が図られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−146158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、アッパカバーをバンパフェイシアに固定した場合、アッパカバーにおけるパンパフェイシアとの固定部付近が剛性不足に陥る上、両者の組み付け精度、特に、両者の高さ方向の組み付け精度が悪いという問題点があった。
【0004】
また、アッパカバーは予めラジエータコアサポートアッパに装着された状態で車両の組立工場に搬送されてパンパフェイシアと固定されるため、アッパカバーとバンパフェイシアの組み付け精度は、主にラジエータコアサポートアッパとアッパカバーの組み付け精度によって決定される。
そこで、ラジエータコアサポートアッパとアッパカバーを一体的に形成することが考えられるが、この場合、熱交換器を上方から脱着させることができなくなり、熱交換器の整備・交換時のメンテナンス性が損なわれるため、好ましくない。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、アッパカバーにおけるパンパフェイシアとの固定部付近の必要剛性を確保できると同時に、アッパカバーをラジエータコアサポートに対して治具を用いることなく精度良く組み付けることでき、これにより、アッパカバーとパンパフェイシアを安定した状態で精度良く組み付けることができるラジエータコアサポートのアッパカバー構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明では、熱交換器のキャリアとしてのラジエータコアサポートにおけるラジエータコアサポートアッパに装着されるラジエータコアサポートのアッパカバー構造であって、前記アッパカバーの本体を車幅方向に伸びる板状に形成し、前記本体に第1固定部を形成し、前記本体の前端縁を略L字型断面形状に屈折して形成すると共に、該略L字断面形状の水平部に第2固定部を形成し、前記略L字断面形状の垂直部に位置決め部を形成し、前記アッパカバーの位置決め部をラジエータコアサポートの衝に対して位置決めすることにより、第2固定部の少なくとも上下方向位置を位置決めした状態で第1固定部をラジエータコアサポートアッパに対して上下方向に固定した後、第2固定部をパンパフェイシアに対して上下方向に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明にあっては、アッパカバーの本体を車幅方向に伸びる板状に形成し、前記本体に第1固定部を形成し、前記本体の前端縁を略L字型断面形状に屈折して形成すると共に、該略L字断面形状の水平部に第2固定部を形成し、前記略L字断面形状の垂直部に位置決め部を形成し、前記アッパカバーの位置決め部をラジエータコアサポートの衝に対して位置決めすることにより、第2固定部の少なくとも上下方向位置を位置決めした状態で第1固定部をラジエータコアサポートアッパに対して上下方向に固定した後、第2固定部をパンパフェイシアに対して上下方向に固定したため、アッパカバーにおけるパンパフェイシアとの固定部付近の必要剛性を確保できると同時に、アッパカバーをラジエータコアサポートに対して治具を用いることなく精度良く組み付けることでき、これにより、アッパカバーとパンパフェイシアを安定した状態で精度良く組み付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
以下、実施例1を説明する。
図1は本発明の実施例1におけるラジエータコアサポートのアッパカバー構造を示す全体分解斜視図、図2は本実施例1のラジエータコアサポートのアッパカバー構造を示す全体斜視図である。
図3はアッパカバーの正面図、図4はアッパカバーの前方斜視図、図5はアッパカバーを裏面から見た後方斜視図、図6は図4のS6−S6線における端面図である。
図7はアッパカバーとラジエータコアサポートアッパの組み付け前を示す斜視図、図8はアッパカバーとラジエータコアサポートアッパの組み付け後を示す斜視図である。
【0010】
先ず、全体構成を説明する。
図1、2に示すように、本実施例1のラジエータコアサポートのアッパカバー構造では、ラジエータコアサポート1とアッパカバー2が備えられている。
【0011】
前記ラジエータコアサポート1は、車幅方向に延在するラジエータコアサポートアッパ3と、このラジエータコアサポートアッパ3に並行するラジエータコアサポートロア4と、ラジエータコアサポートアッパ3とラジエータコアサポートロア4の両端部同士を結合するラジエータコアサポートサイド5,5と、ラジエータコアサポートアッパ3とラジエータコアサポートロア4の中央部同士を結合するフードロックステイ6を備え、このフードロックステイ6と、後述する一部の金属製部材を除く全ての構成部材が樹脂で一体的に形成されている。
【0012】
ラジエータコアサポートアッパ3は立体的な断面形状を有して車幅方向に延設されると共に、その上面には4箇所の螺子穴3aが形成されている。
【0013】
また、ラジエータコアサポートアッパ3の前面側中央部には、ボルトB1,B1によりフードロックステイ6の上部が固定されると共に、このフードロックステイ6の下部はボルトB2でラジエータコアサポートロア4に固定されている。
ラジエータコアサポートロア4は、前方側に開口した略コ字型断面に形成される他、その上面には図示を省略する熱交換器を載置した状態で設けるための平坦部4aが形成されている。
また、ラジエータコアサポートアッパ3は、平坦部4aの後方側上方にオフセットした状態で設けられている。
【0014】
両ラジエータコアサポートサイド5,5の中央部には、図示を省略するサイドメンバとバンパステイに連結固定するためのサイドメンバ取付部5a,5aが設けられる他、このサイドメンバ取付部5a,5aから車幅方向外側に突出してヘッドランプステイ7,7が形成されている。
また、各々のヘッドランプステイ7には、図示を省略するヘッドランプを固定するための固定ブラケット7a,7bがそれぞれ対応するボルトB5で固定されている。
両ラジエータコアサポートサイド5,5の上部には、金属製部材の1つである衝プレート8が固定ブラケット7cに対してボルトB3で固定されると共に、各々の衝プレート8には前方に突設されたピンP1が設けられている。
さらに、各々の衝プレート8には、図示を省略するヘッドランプを固定するための固定ブラケット7cがボルトB6で固定されている。
【0015】
そして、ラジエータコアサポートアッパ3の上部には、図3〜6に示すアッパカバー2が装着されている。
アッパカバー2は、車幅方向に長い板状の本体2aが樹脂で一体的に形成されると共に、この本体2aの後端部におけるラジエータコアサポートアッパ3の螺子穴3aと対応する位置には、上下方向に開口した挿通穴で構成される第1固定穴10(第1固定部に相当)が合計4箇所形成されている。
【0016】
また、本体2aの前端縁は、その略全長に亘って略L字型断面形状に屈折して形成されると共に、該略L字断面形状の水平部2bにおける図示を省略するパンパフェイシアの固定クリップと対応する位置には、前後方向に開口した挿通穴で構成される第2固定穴20(第2固定部に相当)が複数形成されている。
【0017】
さらに、上記略L字断面形状の垂直部2cの両端部には、後方側に三角柱形状に突出した突出部2dがそれぞれ設けられると共に、この突出部2dにおける衝プレート8のピンP1と対応する位置には、前後方向に開口した挿通穴で構成された位置決め穴30(位置決め部に相当)が形成されている。
【0018】
従って、アッパカバー2の垂直部2cはリブの役目を果たし、これにより水平部2bは本体2aに比べて剛性が高くなっている。
【0019】
また、アッパカバー2の中央部には、フードロックプレート6aを設置するための開口部2eが半円形状に開口された状態で形成されると共に、この開口部2eに近接して後述する固定穴2fが前後方向に開口されている。
その他、ラジエータコアサポートアッパ3、両ラジエータコアサポートサイド5,5、ラジエータコアサポートロア4の内側には、これらと一体的に形成されたシュラウド部9が設けられている。
【0020】
次に、作用を説明する。
このように構成されたラジエータコアサポート1とアッパカバー2を組付ける際には、先ず、ラジエータコアサポート1を射出成形して一体的に形成した後、固定ブラケット7a,7b,7cをそれぞれ対応するボルトB5,B6で、衝プレート8と固定ブラケット7cをボルトB3で固定する。
なお、固定ブラケット7a,7b,7cと衝プレート8はラジエータコアサポート1の射出成形時に樹脂モールドさせて固定しても良い。
【0021】
次に、ラジエータコアサポートロア4の平坦部4aの前方側に上方から図示を省略する熱交換器を挿入して載置した状態で固定する。
この際、前述したように、ラジエータコアサポートアッパ3は平坦部4aの後方側上方にオフセットした状態で配置されるため、熱交換器がラジエータコアサポートアッパ3に接触するのを回避できる。
【0022】
次に、フードロックステイ6をボルトB1,B2でラジエータコアサポート1に固定する。
【0023】
次に、図7、8に示すように、アッパカバー2をラジエータコアサポートアッパ3の上方に配置し、アッパカバー2の両端部において突出部2dの位置決め穴30に、対応するラジエータコアサポートサイド5,5の衝プレート8のピンP1を挿入させた状態とする。
これにより、アッパカバー2とラジエータコアサポート1、詳細にはラジエータコアサポート1と第2固定穴20との上下左右方向位置を精度良く決定できる。
次に、アッパカバー2の第1固定穴10とラジエータコアサポートアッパ3の螺子穴3aにボルトB4を上下方向に挿通させて固定することにより、ラジエータコアサポート1とアッパカバー2の組付けを終了する(図2参照)。
また、アッパカバー2の中央部に設けられた固定穴2fにはボルトB7でブラケット6bを介してフードロックステイ6に固定される。
【0024】
このように構成されたラジエータコアサポート1は、固定ブラケット7a,7b,7cを介してヘッドランプが固定される他、モータファン等の周辺部材が搭載された状態で車両の組立工場へ搬送され、熱交換器のキャリアとして機能する。
【0025】
そして、ラジエータコアサポート1は、衝プレート8のピンP1をラジエータコアサポート1全体の衝として車両に搭載されると共に、アッパカバー2の水平部2bは図示を省略するバンパフェイシアの後端部と重ねられた状態で、パンパフェイシアの固定クリップがアッパカバー2の第2固定穴20に挿通固定されることにより、ラジエータコアサポートアッパ3とアッパカバー2が固定される。
【0026】
従って、アッパカバー2は、ラジエータコアサポートアッパ3とパンパフェイシアとの隙間を覆うカバーとして機能し、エンジンルームの見栄えを向上できる。
【0027】
ここで、通常、アッパカバー2にパンパフェイシアを固定した場合には、アッパカバー2の第2固定穴20付近が剛性不足に陥るという問題が生じる。
なお、アッパカバー2は、エンジンルームの見栄えを向上させるための部材であるため、意匠性を損なうようなリブを多数設けることはできない。
【0028】
しかしながら、前述したように、アッパカバー2の垂直部2cはリブの役目を果たし、これにより水平部2bは本体2aに比べて剛性が高くなっているため、第2固定穴20付近の必要剛性を確保することができ、アッパカバー2とパンパフェイシアを安定した状態で固定することができる。
【0029】
また、位置決め穴30に衝プレート8のピンP1を挿入させた状態でアッパカバー2の第1固定穴10とラジエータコアサポートアッパ3の螺子穴3aにボルトを上下方向に挿通させて固定することにより、ラジエータコアサポート1とアッパカバー2を組付けたため、治具を用いることなくアッパカバー2とラジエータコアサポート1を精度良く位置決めした状態で両者を組付けることができ、換言すると、ラジエータコアサポート1の衝と第2固定穴20を精度良く位置決めした状態で組付けることができ、これによって、アッパカバー2とパンパフェイシアを精度良く組付けることができる。
【0030】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、熱交換器のキャリアとしてのラジエータコアサポート1におけるラジエータコアサポートアッパ3に装着されるラジエータコアサポートのアッパカバー構造であって、アッパカバー2の本体2aを車幅方向に伸びる板状に形成し、本体2aに第1固定穴10(第1固定部)を形成し、本体2aの前端縁を略L字型断面形状に屈折して形成すると共に、該略L字断面形状の水平部2aに第2固定穴20(第2固定部)を形成し、略L字断面形状の垂直部2bの突出部2dに位置決め穴30(位置決め部)を形成し、アッパカバー2の位置決め穴30をラジエータコアサポート1のピンP1(衝)に対して位置決めすることにより、第2固定穴20の少なくとも上下方向位置を位置決めした状態で第1固定穴10(第1固定部)をラジエータコアサポートアッパ3に対して上下方向に固定した後、第2固定穴20(第2固定部)をパンパフェイシアに対して上下方向に固定したため、第2固定穴20(第2固定部)周辺の必要剛性を確保できると同時に、治具を用いることなくアッパカバー2をラジエータコアサポート1に対して精度良く組み付けることができ、これによってアッパカバー2とパンパフェイシアを安定した状態で精度良く組み付けることができる。
【0031】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、第1固定穴10(第1固定部)、第2固定穴20(第2固定部)の締結手段はボルト以外の一般的な締結手段を用いても良い。
また、第1固定穴10、第2固定穴20、位置決め部30の形状、形成数については適宜設定できる。
さらに、アッパカバー2にバンパフェイシアやヘッドランプ以外の周辺部材を固定しても良く、この場合、これらの周辺部材を精度良く組み付けることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1におけるラジエータコアサポートのアッパカバー構造を示す全体分解斜視図である。
【図2】本実施例1のラジエータコアサポートのアッパカバー構造を示す全体斜視図である。
【図3】アッパカバーの正面図である。
【図4】アッパカバーの前方斜視図である。
【図5】アッパカバーを裏面から見た後方斜視図である。
【図6】図4のS6−S6線における端面図である。
【図7】アッパカバーとラジエータコアサポートアッパの組み付け前を示す斜視図である。
【図8】アッパカバーとラジエータコアサポートアッパの組み付け後を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7 ボルト
P1 ピン
1 ラジエータコアサポート
2 アッパカバー
2a 本体
2b 水平部
2c 垂直部
2d 突出部
2e 開口部
2f 固定穴
3 ラジエータコアサポートアッパ
3a 螺子穴
4 ラジエータコアサポートロア
4a 平坦部
5 ラジエータコアサポートサイド
5a サイドメンバ取付部
6 フードロックステイ
6a フードロックプレート
6b ブラケット
7 ヘッドランプステイ
7a、7b、7c 固定ブラケット
8 衝プレート
9 シュラウド部
10 第1固定穴(第1固定部)
20 第2固定穴(第2固定部)
30 位置決め穴(位置決め部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器のキャリアとしてのラジエータコアサポートにおけるラジエータコアサポートアッパに装着されるラジエータコアサポートのアッパカバー構造であって、
前記アッパカバーの本体を車幅方向に伸びる板状に形成し、
前記本体に第1固定部を形成し、
前記本体の前端縁を略L字型断面形状に屈折して形成すると共に、該略L字断面形状の水平部に第2固定部を形成し、
前記略L字断面形状の垂直部に位置決め部を形成し、
前記アッパカバーの位置決め部をラジエータコアサポートの衝に対して位置決めすることにより、第2固定部の少なくとも上下方向位置を位置決めした状態で第1固定部をラジエータコアサポートアッパに対して上下方向に固定した後、第2固定部をパンパフェイシアに対して上下方向に固定したことを特徴とするラジエータコアサポートのアッパカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−218930(P2006−218930A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32538(P2005−32538)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】