説明

ラジエータコアサポート構造

【課題】 熱交換器の搭載時における配管の端部とラジエータコアサポートとの接触を回避しつつ、貫通穴と配管との隙間を従来の発明よりも小さくでき、エンジン側の熱気の吹き返しや貫通穴周辺の剛性不足を防止できるラジエータコアサポート構造の提供。
【解決手段】 固定穴5,6を前後方向に長い長穴形状に形成し、搭載ピンP3,P4を固定穴5,6の前方側に斜めから挿入してラジエータ1を後方側へ回動させることにより、入出力ポート3,4とラジエータコアサポート2との接触を回避しつつラジエータ1を起立させた後、搭載ピンP3,P4を固定穴5,6にスライドさせながらラジエータ1を後方側に移動させることにより、入出力ポート3,4をラジエータコアサポート2の貫通穴7,8に貫通させた状態に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラジエータコアサポート構造に関し、特に、熱交換器の配管がラジエータコアサポートの貫通孔を貫通した状態で該熱交換器が搭載されるラジエータコアサポート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器のキャリアとしてのラジエータコアサポート構造は、車室内の広さを拡大するためにエンジンルーム内の見直しが進められ、その一例として熱交換器をラジエータコアサポートの前方側に搭載することが提案されている。
【0003】
このようなラジエータコアサポート構造にあっては、ラジエータコアサポートに近接してエンジンや補器類等を搭載できるというメリットがあるが、レイアウトの制約等からラジエータコアサポートに熱交換器の配管を貫通させた状態で配置するための貫通穴が必要になる(特許文献1参照)。
【0004】
そして、このようなラジエータコアサポートに熱交換器を搭載する際には、図6、7に示すように、熱交換器01の下部から下方側へ突出した搭載ピンP03,P04をラジエータコアサポート02の固定穴05,06に斜めから挿入して該熱交換器01を後方側へ回動させて起立させることにより、該熱交換器01の配管03,04をラジエータコアサポート02のそれぞれ対応する貫通穴07,08に貫通させた状態に配置している。
【0005】
また、熱交換器01を後方側へ回動させて起立させる際における配管03,04とラジエータコアサポート02との接触を回避するために、通常、ラジエータコアサポート02の貫通穴07,08は上下方向に長い長穴形状に形成されている。
なお、熱交換器01の回動中心に近い貫通穴08のみ長穴形状に形成する場合もある。
【特許文献1】特開2000−18874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のラジエータコアサポート構造にあっては、貫通穴が上下方向に長い長穴形状に形成されているため、貫通穴と配管との隙間O(図6(c)、及び図7参照)を介してエンジン側の熱気が熱交換器側へ吹き返してしまう上、貫通穴周辺の剛性が低下する虞があるという問題点があった。
【0007】
そこで、熱交換器を搭載後のラジエータコアサポートにおける貫通穴と配管との隙間に防風部材を設けたり、貫通穴周辺の板厚を他の部位に比べて厚く形成することが考えられるが、これらは部品点数、組付け工数、重量、製造コストが増加するため、好ましくない。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ラジエータコアサポートの貫通穴を従来の発明よりも小さくしつつ、熱交換器の搭載時における配管の端部とラジエータコアサポートとの接触を回避でき、これによって、エンジン側の熱気の吹き返しや貫通穴周辺の剛性不足を防止できるラジエータコアサポート構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1記載の発明では、熱交換器の少なくとも下部から後方側へ突出した配管をラジエータコアサポートの貫通穴に貫通させた状態とし、且つ、熱交換器の下部から下方側に突出した搭載ピンをラジエータコアサポートのラジエータコアサポートロアの固定穴に挿入した状態で該熱交換器が搭載されるラジエータコアサポート構造において、前記固定穴を前後方向に長い長穴形状に形成し、前記熱交換器の搭載ピンを固定穴の前方側に斜めから挿入して該熱交換器を後方側へ回動させることにより、該熱交換器の配管とラジエータコアサポートとの接触を回避しつつ該熱交換器を起立させた後、該熱交換器の搭載ピンを固定穴にスライドさせながら該熱交換器を後方側に移動させることにより、該熱交換器の配管をラジエータコアサポートの貫通穴に貫通させた状態に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のラジエータコアサポート構造では、熱交換器の少なくとも下部から後方側へ突出した配管をラジエータコアサポートの貫通穴に貫通させた状態とし、且つ、熱交換器の下部から下方側に突出した搭載ピンをラジエータコアサポートのラジエータコアサポートロアの固定穴に挿入した状態で該熱交換器が搭載されるラジエータコアサポート構造において、前記固定穴を前後方向に長い長穴形状に形成し、前記熱交換器の搭載ピンを固定穴の前方側に斜めから挿入して該熱交換器を後方側へ回動させることにより、該熱交換器の配管とラジエータコアサポートとの接触を回避しつつ該熱交換器を起立させた後、該熱交換器の搭載ピンを固定穴にスライドさせながら該熱交換器を後方側に移動させることにより、該熱交換器の配管をラジエータコアサポートの貫通穴に貫通させた状態に配置したため、貫通穴を従来の発明よりも小さくしつつ、熱交換器の搭載時における配管の端部とラジエータコアサポートとの接触を回避でき、これにより、エンジン側の熱気の吹き返しや貫通穴周辺の剛性不足を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例1を説明する。
図1は本発明の実施例1のラジエータコアサポート構造を示す全体斜視図、図2は同分解斜視図、図3は本実施例1のラジエータコサポートの背面図、図4は本実施例1のラジエータコアサポートと熱交換器の要部拡大斜視図、図5は本実施例1のラジエータコアサポートにおける熱交換器の搭載を説明する図である。
【0013】
先ず、全体構成を説明する。
図1〜3に示すように、本発明の実施例1のラジエータコアサポート構造は、ラジエータ1(熱交換器に相当)とラジエータコアサポート2が備えられている。
【0014】
ラジエータ1は、タンク1a,1bと、これらタンク1a,1bの間に配置されたコア部1cが備えられている。
各タンク1a,1bは、樹脂で一体的に形成される他、タンク1aの左右両側には上方側に突出した円柱状の搭載ピンP1,P2が設けられ、一方、タンク1bの左右両側には下方側に突出した円柱状の搭載ピンP3,P4が設けられている。
また、タンク1aには、その内部に連通した状態で後方側に突出した入出力ポート3(熱交換器の配管に相当)が設けられ、一方、タンク1bには、その内部に連通した状態で後方側に突出した入出力ポート4(熱交換器の配管に相当)が形成されている。
なお、本実施例1の各入出力ポート3,4は、外形が円形状の筒状に形成されているが、円形状以外の四角形状、楕円形状などでも良い。
【0015】
コア部1cは、図示を省略するチューブとフィンが交互に複数配置されると共に、各チューブの両端部は、それぞれ対応するタンク1a,1bに装着されたチューブプレート1d,1eに嵌挿固定されている。
【0016】
なお、本実施例1のラジエータ1は、タンク1a,1b以外が全てアルミニウム製となっているが、ラジエータ1の各部材の素材は適宜選択して決定でき、例えば、全ての部材をアルミニウム製としても良い。
【0017】
ラジエータコアサポート2は、車幅方向に延設されたラジエータコアサポートアッパ2aと、このラジエータコアサポートアッパ2aと並行するラジエータコアサポートロア2bと、これらラジエータコアサポートアッパ2aとラジエータコアサポートロア2bの両端部同士を結合するラジエータコアサポートサイド2c,2dと、これらラジエータコアサポートアッパ2a、ラジエータコアサポートロア2b、ラジエータコアサポートサイド2c,2dの内側に設けられたシュラウド部2gから構成され、全体が樹脂で一体的に形成されている。
なお、本実施例1では、ラジエータコアサポート2全体を樹脂製としたが、全体を金属製、または全体の一部を金属製にすることもでき、各部材の素材については適宜選択して決定できる。
また、ラジエータコアサポートロア2bの上面におけるラジエータ1の搭載ピンP3,P4と対応する位置には、前後方向に長い長穴形状の固定穴5,6が上下方向に開口した状態でそれぞれ設けられている。
【0018】
シュラウド部2gの略中央には図示を省略するファンを配置するための開口部2hが設けられる他、ラジエータ1の入出力ポート3,4とそれぞれ対応する位置には、円形の貫通穴7,8が形成されている。
【0019】
また、図4に示すように、固定穴5(6)の径幅W1は、搭載ピンP3(P4)の直径W2よりも僅かに大きいか、同じとなるように形成されている。
さらに、貫通穴8(7)の直径W3は、ラジエータ1の入出力ポート4(3)の外形の直径W4よりも僅かに大きいか、同じとなるように形成されている。
【0020】
そして、図3に示すように、ラジエータ1の入出力ポート3,4をラジエータコアサポート2のそれぞれ対応する貫通穴7,8に貫通させた状態とし、且つ、ラジエータ1の搭載ピンP3,P4をラジエータコアサポートロア2のそれぞれ対応する固定穴5,6に挿入させた状態でラジエータ1がラジエータコアサポート2に搭載されている。
【0021】
その他、ラジエータコアサポートアッパ2a及びラジエータコアサポートロア2bは、それぞれ後方側に開口したコ字状断面に形成されると共に、このコ字状の内部には複数のリブ2eが形成されている。
【0022】
次に、作用を説明する。
このように構成されたラジエータコアサポート2にラジエータ1を搭載する際には、先ず、図5(a)、(b)に示すように、ラジエータコアサポート2の前方側にラジエータ1を配置した後、搭載ピンP3,P4をそれぞれ対応する固定穴5,6の前方側に図示を省略する弾性素材からなるロアマウントを介して挿入する。なお、ロアマウントは予め対応する搭載ピンP3,P4にそれぞれ装着しておいても構わない。
【0023】
次に、図5(b)、(c)に示すように、搭載ピンP3,P4を中心としてラジエータ1を後方側へ回動させて起立した状態にする。
この際、前述したように、ラジエータ1の搭載ピンP3,P4は前後方向方向に長い長穴形状の固定穴5,6の前方側に挿入されるため、ラジエータ1の回動中心となる搭載ピンP3,P4の位置を、従来の発明に比べて前方側にでき、これによって、入出力ポート3,4、の回動軌跡を従来の発明に比べて前方側に移動させてラジエータコアサポート2との接触を回避できる。
【0024】
続いて、図5(c)、(d)に示すように、ラジエータ1の搭載ピンP3,P4を固定穴5,6にスライドさせながらラジエータ1を後方へ移動させることにより、ラジエータ1の入出力ポート3,4をラジエータコアサポート2の貫通穴7,8に貫通させた状態に配置できる。
【0025】
ここで、従来の発明にあっては、ラジエータコアサポートにおけるラジエータの搭載時に、入出力ポートとラジエータコアサポートとの接触を回避するために、貫通穴を上下方向に長い長穴形状に形成する必要があったため、貫通穴と入出力ポートとの隙間を介してエンジン側の熱気が熱交換器側へ吹き返してしまう上、貫通穴周辺の剛性が低下するという問題点があった。
【0026】
しかしながら、本実施例1のラジエータコサポート構造にあっては、前述したように、シュラウド部2hの貫通穴8(7)の直径W3は、ラジエータ1の入出力ポート4(3)の外形の直径W4よりも僅かに大きいか、同じとなるように形成されているため、貫通穴8(7)と入出力ポート4(3)の隙間を介してエンジン側の熱気が熱交換器側へ吹き返したり、貫通穴8(7)周辺の剛性が低下する虞がない。
【0027】
また、従来の発明に比べてラジエータ1の回動中心(搭載ピンP3,P4)に近い貫通穴8と入出力ポート4との隙間を特に小さくできる。
なお、貫通穴7,8と入出力ポート3,4との組付け精度の誤差を考慮した僅かな隙間は許容でき、この隙間によってエンジン側の熱気が熱交換器側へ吹き返したり、貫通穴周辺の剛性が不足することはない。
【0028】
最後に、ラジエータ1の搭載ピンP1,P2を、図示を省略するアッパブラケット及び弾性素材からなるアッパマウントを介してラジエータコアサポートアッパ2aに固定する。
【0029】
このように構成されたラジエータコアサポート2は、図示を省略するファン等の周辺部材が搭載された後、車両組立工場へ搬送されてラジエータ1のキャリアとして機能する。
【0030】
また、車両に搭載されたラジエータコアサポート2のラジエータ1の入出力ポート3,4には、それぞれ対応する車両側の接続管が接続される。
【0031】
そして、ラジエータ1の入出力ポート3からタンク1aに流入した高温な流通媒体は、コア部1cのチューブを流通する間にフィンを介してファンの強制風または車両走行風と熱交換して冷却された後、タンク1bに流入して入出力ポート4から排出され、熱交換器として機能する。
【0032】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1のラジエータコアサポート構造にあっては、ラジエータ1の少なくとも下部から後方側へ突出した入出力ポート4をラジエータコアサポート2の貫通穴8に貫通させた状態とし、且つ、ラジエータ1の下部から下方側に突出した搭載ピンP3,P4をラジエータコアサポート2のラジエータコアサポートロア2bの固定穴5,6に挿入した状態でラジエータ1が搭載されるラジエータコアサポート構造において、固定穴5,6を前後方向に長い長穴形状に形成し、搭載ピンP3,P4を固定穴5,6の前方側に斜めから挿入してラジエータ1を後方側へ回動させることにより、入出力ポート3,4とラジエータコアサポート2との接触を回避しつつラジエータ1を起立させた後、搭載ピンP3,P4を固定穴5,6にスライドさせながらラジエータ1を後方側に移動させることにより、入出力ポート3,4をラジエータコアサポート2の貫通穴7,8に貫通させた状態に配置したため、貫通穴7,8を従来の発明よりも小さくしつつ、ラジエータ1の搭載時における入出力ポート3,4とラジエータコアサポート2との接触を回避でき、これによって、エンジン側の熱気の吹き返しや貫通穴7,8周辺の剛性不足を防止できる。
【0033】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0034】
例えば、固定穴、貫通穴、搭載ピン等の詳細な形状については適宜設定できる。
固定穴5,6は、その前方側がラジエータ1の搭載位置における搭載ピンP3,P4の位置よりも前方側に開口していれば、少なくとも入出力ポート3,4の回動軌跡を前方側に移動させて同様の効果を得ることができる。
さらに、本実施例1では、ラジエータコアサポートロア2bに2つの長穴形状の固定穴5,6を構成するようにしたが、一方だけ長穴形状とし、他方を従来の固定穴とすることも本発明に含まれる。このようにしても本発明の効果を得ることができる。
【0035】
また、本実施例1では、熱交換器をラジエータに適用し、入出力ポート3,4がシュラウド部2gの貫通穴7,8を貫通した状態で配置する場合について説明したが、熱交換器はコンデンサに適用しても良く、この場合、熱交換器の配管はコンデンサの冷媒配管やレシーバの接続配管等になる。
同様に、ラジエータコアサポート2の貫通穴7,8が設けられる位置は、シュラウド部2gに限らず、配管のレイアウトによって適宜選択して決定できる。
【0036】
さらに、本実施例1のラジエータ1では、コア部1cの上下にタンク1a,1bを配置して流通媒体を上下方向に流す場合について説明したが、コア部1cの左右両側にタンク1a,1bを配置して流通媒体を横方向に流しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1のラジエータコアサポート構造を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の実施例1のラジエータコアサポート構造を示す全体分解図である。
【図3】本実施例1のラジエータコサポートの背面図である。
【図4】本実施例1のラジエータコアサポートと熱交換器の要部拡大斜視図である。
【図5】本実施例1のラジエータコアサポートにおける熱交換器の搭載を説明する図である。
【図6】従来のラジエータコサポートの背面図である。
【図7】従来のラジエータコアサポートにおける熱交換器の搭載を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
P1、P2、P3、P4 搭載ピン
1 熱交換器
1a、1b タンク
1c コア部
1d、1e チューブプレート
2 熱交換器
2a ラジエータコアサポートアッパ
2b ラジエータコアサポートロア
2c、2d ラジエータコアサポートサイド
2e リブ
2g シュラウド部
2h 開口部
3、4 入出力ポート
5、6 固定穴
7、8 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器の少なくとも下部から後方側へ突出した配管をラジエータコアサポートの貫通穴に貫通させた状態とし、且つ、熱交換器の下部から下方側に突出した搭載ピンをラジエータコアサポートのラジエータコアサポートロアの固定穴に挿入した状態で該熱交換器が搭載されるラジエータコアサポート構造において、
前記固定穴を前後方向に長い長穴形状に形成し、
前記熱交換器の搭載ピンを固定穴の前方側に斜めから挿入して該熱交換器を後方側へ回動させることにより、該熱交換器の配管とラジエータコアサポートとの接触を回避しつつ該熱交換器を起立させた後、該熱交換器の搭載ピンを固定穴にスライドさせながら該熱交換器を後方側に移動させることにより、該熱交換器の配管をラジエータコアサポートの貫通穴に貫通させた状態に配置したことを特徴とするラジエータコアサポート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−273050(P2006−273050A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92572(P2005−92572)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】