説明

ラジエータシール構造

【課題】従来よりもラジエータの冷却性能を向上し得るようにしたラジエータシール構造を提供する。
【解決手段】上下に離間配置されて相互間に放熱部を備えたアッパタンクとロアタンクの幅端部同士を上下方向に延びる一対のラジエータサポート8により連結し、該各ラジエータサポート8を介してシャシフレーム側からラジエータ3を支持する構造に関し、ラジエータ3の放熱部5とラジエータサポート8との間の隙間15を気密に塞ぐシール手段16を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2に車両左方向からの側面図で示す如く、一般的に、車両のシャシフレーム1に搭載されるエンジン2の前方位置には、該エンジン2の水冷系のクーラントを空冷するためのラジエータ3が設けられており、このラジエータ3越しにエンジン2前面の冷却ファン4により外気を強制的に吸引して冷却媒体であるクーラントの放熱を助け、ノッキングや潤滑不良の要因となるエンジンの過熱を防ぐようになっている。
【0003】
即ち、図3に正面図で示す如く、ラジエータ3の放熱部5(コア部)は、上下に離間配置されているアッパタンク6とロアタンク7との相互間に、放熱フィンを具備した多数の水管を林立させて構成されるようになっており、エンジン2を経由して暖まったクーラントを上部のアッパタンク6から放熱部5の各水管を流下させる間に、冷却ファン4で強制的に吸引した外気の流れに晒して空冷し、その空冷されたクーラントを下部のロアタンク7に回収してエンジン2へと再び循環させるようにしてある。
【0004】
ここで、前述の如きラジエータ3の放熱部5は、構造的に脆弱なもので十分な強度を備えていないため、アッパタンク6とロアタンク7の幅端部同士が、上下方向に延びる高強度のラジエータサポート8により連結されており、このラジエータサポート8を介してシャシフレーム1側からブラケット9によりラジエータ3全体が支えられるようになっている。
【0005】
また、図4に部分的に要部を破断した平面図で示す如く、ラジエータ3の放熱部5の背面には、冷却ファン4の効率を上げるための短筒状の導風筒部10を開口したファンシュラウド11(導風覆い)が配置され、左右のラジエータサポート8の背面に対しボルトや樹脂クリップ等で装着されている。
【0006】
尚、図中における符号の12は図示しないターボチャージャにより過給されて温度上昇した吸気を空冷するためのインタークーラ、13は該インタークーラ12の放熱部、14は該放熱部13の両側に配置されたインタークーラタンクを示しており、前記インタークーラ12は、ラジエータ3前面の下方位置に配置されるようになっている(図2参照)。
【0007】
また、この種のラジエータシール構造に関連する先行技術文献情報としては、本発明と同じ出願人による下記の特許文献1等が既に存在している。
【特許文献1】特開2003−129846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した如き従来構造においては、各ラジエータサポート8がアッパタンク6とロアタンク7との間を連結しているだけで脆弱な放熱部5を直接支えるようにはなっていなかったため、各ラジエータサポート8と放熱部5との間には隙間15が存在しており、この隙間15を通し外気の一部が放熱部5を迂回して冷却ファン4に吸引される流れが形成されたり、エンジン2にぶつかった風が熱風となって前記隙間15を通しラジエータ3の前に吹き返す流れが形成されたりして、ラジエータ3の冷却性能が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、従来よりもラジエータの冷却性能を向上し得るようにしたラジエータシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上下に離間配置されて相互間に放熱部を備えたアッパタンクとロアタンクの幅端部同士を上下方向に延びる一対のラジエータサポートにより連結し、該各ラジエータサポートを介してシャシフレーム側からラジエータを支持する構造において、ラジエータの放熱部とラジエータサポートとの間の隙間を気密に塞ぐシール手段を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、シール手段によりラジエータの放熱部とラジエータサポートとの間の隙間が気密に塞がれる結果、この隙間を通して外気の一部が放熱部を迂回して流れたり、エンジンにぶつかった風が熱風となってラジエータの前に吹き返すような事態が起こらなくなるので、ラジエータの冷却性能が従来よりも大幅に向上されることになる。
【0012】
また、本発明をより具体的に実施するに際しては、例えば、ラジエータの放熱部とラジエータサポートとの間の隙間の形状に合わせて型成形されたウレタンスポンジによりシール手段を構成することが可能である。
【0013】
更に、ラジエータの前面にインタークーラが装備されている場合には、該インタークーラの背面とラジエータサポートとの間の隙間を一緒に塞ぎ得るように前方に向けて張り出す張出部がシール手段に増設されていることが好ましく、このようにすれば、インタークーラの背面とラジエータサポートとの間の隙間からインタークーラを通過せずに外気が流入するような事態が起こらなくなり、冷却ファンの吸引により効率良くインタークーラを空冷することが可能となる。
【0014】
また、エンジンにぶつかった風が熱風となってラジエータサポートの外側を回り込み、インタークーラの背面とラジエータサポートとの間の隙間からラジエータの前に吹き返す流れも防止されるため、ラジエータの冷却性能がより一層確実に向上されることになる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明のラジエータシール構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)本発明の請求項1、2に記載の発明によれば、シール手段によりラジエータの放熱部とラジエータサポートとの間の隙間を気密に塞いでいるので、この隙間を通して外気の一部が放熱部を迂回して流れたり、エンジンにぶつかった風が熱風となって前記隙間を通しラジエータの前に吹き返すような事態を確実に防止することができ、ラジエータの冷却性能を従来よりも大幅に向上することができる。
【0017】
(II)本発明の請求項3に記載の発明によれば、インタークーラを通過しない外気の流入を確実に防止することができ、冷却ファンの吸引により効率良くインタークーラを空冷することができるので、該インタークーラの冷却性能を大幅に向上することができ、また、エンジンにぶつかった風が熱風となってラジエータサポートの外側を回り込み、インタークーラの背面とラジエータサポートとの間の隙間からラジエータの前に吹き返す流れも防止することができるので、ラジエータの冷却性能をより一層確実に向上することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図2〜図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0020】
図1に示す如く、本形態例においては、前述した図2〜図4のものと略同様に構成したラジエータシール構造に関し、ラジエータ3の放熱部5とラジエータサポート8との間の隙間15に、該隙間15の形状に合わせて型成形されたウレタンスポンジから成るシール手段16を押し込んで設置し、これにより前記ラジエータ3の放熱部5とラジエータサポート8との間の隙間15を気密に塞ぐようにしている。
【0021】
また、ここに図示している例においては、ラジエータ3の前面にインタークーラ12が装備されているので、該インタークーラ12の左右に装備されているインタークーラタンク14の背面とラジエータサポート8との間の隙間17を一緒に塞ぎ得るように前方に向けて張り出す張出部18を前記シール手段16に増設している。
【0022】
而して、このようにすれば、シール手段16によりラジエータ3の放熱部5とラジエータサポート8との間の隙間15が気密に塞がれる結果、この隙間15を通して外気の一部が放熱部5を迂回して流れるような事態が起こらなくなり、冷却ファン4に吸引される外気の全てがラジエータ3の放熱部5を通過して流れることになってラジエータ3の冷却性能が大幅に向上される。
【0023】
更に、インタークーラタンク14の背面とラジエータサポート8との間の隙間17を一緒に塞ぎ得るように前方に向けて張り出す張出部18がシール手段16に増設されているので、前記隙間17からインタークーラ12を通過せずに外気が流入するような事態が起こらなくなり、冷却ファン4の吸引により効率良くインタークーラ12を空冷することが可能となる。
【0024】
また、エンジン2にぶつかった風が熱風となってラジエータサポート8の外側を回り込み、インタークーラ12の背面とラジエータサポート8との間の隙間17からラジエータ3の前に吹き返す流れも防止されるため、ラジエータ3の冷却性能がより一層確実に向上されることになる。
【0025】
従って、上記形態例によれば、シール手段16によりラジエータ3の放熱部5とラジエータサポート8との間の隙間15を気密に塞いでいるので、この隙間15を通して外気の一部が放熱部5を迂回して流れたり、エンジン2にぶつかった風が熱風となって前記隙間15を通しラジエータ3の前に吹き返すような事態を確実に防止することができ、ラジエータ3の冷却性能を従来よりも大幅に向上することができる。
【0026】
また、シール手段16の張出部18によりインタークーラ12を通過しない外気の流入を確実に防止することができて、冷却ファン4の吸引により効率良くインタークーラ12を空冷することができるので、該インタークーラ12の冷却性能を大幅に向上することができ、また、エンジン2にぶつかった風が熱風となってラジエータサポート8の外側を回り込み、インタークーラ12の背面とラジエータサポート8との間の隙間17からラジエータ3の前に吹き返す流れも防止することができるので、ラジエータ3の冷却性能をより一層確実に向上することもできる。
【0027】
尚、本発明のラジエータシール構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、シール手段は図示例に限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を実施する形態の一例を部分的に破断した平面図である。
【図2】従来例を示す側面図である。
【図3】図2のラジエータの正面図である。
【図4】図2の従来例を部分的に破断した平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 シャシフレーム
3 ラジエータ
4 冷却ファン
5 放熱部
6 アッパタンク
7 ロアタンク
8 ラジエータサポート
12 インタークーラ
15 隙間
16 シール手段
17 隙間
18 張出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に離間配置されて相互間に放熱部を備えたアッパタンクとロアタンクの幅端部同士を上下方向に延びる一対のラジエータサポートにより連結し、該各ラジエータサポートを介してシャシフレーム側からラジエータを支持する構造において、ラジエータの放熱部とラジエータサポートとの間の隙間を気密に塞ぐシール手段を設けたことを特徴とするラジエータシール構造。
【請求項2】
ラジエータの放熱部とラジエータサポートとの間の隙間の形状に合わせて型成形されたウレタンスポンジによりシール手段が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のラジエータシール構造。
【請求項3】
ラジエータの前面にインタークーラが装備されている場合に、該インタークーラの背面とラジエータサポートとの間の隙間を一緒に塞ぎ得るように前方に向けて張り出す張出部がシール手段に増設されていることを特徴とする請求項1に記載のラジエータシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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