説明

ラジカル硬化性樹脂組成物

【課題】 ホルムアルデヒド発散量が充分に低減され、スチレンのような揮発性の高い重合性単量体を用いた場合の発散量も充分に低減できることにより、化学物質の発散に対する衛生上の支障を生じるおそれが充分に抑制され、建築分野等における建築材料の仕上げ材等に好適であるラジカル硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリロイル基及びアセトアセチル基を必須とするラジカル硬化性樹脂を含有するラジカル硬化性樹脂組成物であって、該(メタ)アクリロイル基の総含有量は、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、1重量部以上、40重量部以下であり、該アセトアセチル基の総含有量は、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、30重量部以下であるラジカル硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル硬化性樹脂組成物に関する。より詳しくは、ライニング材、塗り床材、繊維強化プラスチック、レジンコンクリート、化粧板、塗料、パテ、ゲルコート、注型、接着剤等の各種用途に好適なラジカル硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル硬化性樹脂は、建築分野等における建築材料の仕上げ材等として用いられ、例えば、常温で硬化する常温硬化システムに適応できるものが広く採用されている。このようなラジカル硬化性樹脂としては、常温でラジカル重合可能であり、その硬化物が靱性、強度、耐久性、防水性等の性能を有することから、例えば、防水材(防水ライニング用材料)、塗り床材、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)材料、レジンコンクリート、化粧板、塗料、パテ、ゲルコート、注型、接着剤、家具材、防食材、WPC(Wood Plastic Combination)、バスタブ(浴槽)、人大(人工大理石)、包装品等の様々な分野において用いられている。
【0003】
ところで、建築材料から放散するVOC(揮発性有機化合物)に対するシックハウス対策として、国土交通省では建築基準法等の一部改正があり、居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置に関する技術的基準の整備に関し、発散により衛生上の支障を生じるおそれのある化学物質としてホルムアルデヒドが挙げられている。例えば、内装仕上げ材の発散速度に関し、夏季においてその表面積1平方メートルにつき毎時0.12ミリグラムを超える量のホルムアルデヒドを発散するものが第一種ホルムアルデヒド発散建築材料(内装の仕上げには用いないものとする)等とされることから、ホルムアルデヒドの発散量を基準値より低くして、内装仕上げ材等の分野において建築基準に適合させることができる技術が求められている。
その他の化学物質に関し、厚生労働省が室内濃度指針値として定めた13化学物質にスチレンが指定物質として含まれていること、及び、文部科学省の学枚環境衛生基準の改訂で、新たにスチレンが測定対象物質となったことから、ラジカル硬化性樹脂の重合性単量体として広く使用されているスチレンが、住宅、建築の内装材分野での使用に今後、制限を受ける可能性が大きいと考えられる。そのため、スチレンの発散量を低減させる技術もまた急務となっている。
【0004】
従来のラジカル硬化性樹脂組成物に関し、アセトアセチル基含有不飽和ポリエステル系樹脂からなるアルデヒド吸着剤が開示されており(例えば、特許文献1、2参照。)、基材から発生するホルムアルデヒドを低減することを可能としている。しかしながら、特許文献1においては、当該樹脂に重合性単量体としてスチレンモノマーを使用しており、厚生労働省のスチレンの室内濃度指針値に適合するための工夫の余地があった。また、特許文献2においては、当該樹脂は(メタ)アクリロイル基を重合させたポリマーであり、該樹脂には(メタ)アクリロイル基が残存しておらず、硬化形態がラジカル重合ではない。
【特許文献1】特開平11−197502号公報
【特許文献2】特開平11−89920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ホルムアルデヒド発散量が充分に低減され、スチレンのような揮発性の高い重合性単量体を用いた場合の発散量も充分に低減できることにより、化学物質の発散に対する衛生上の支障を生じるおそれが充分に抑制され、建築分野等における建築材料の仕上げ材等に好適であるラジカル硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ラジカル硬化性樹脂組成物について種々検討したところ、ラジカル硬化性樹脂の樹脂骨格にアセトアセチル基を導入することにより、ホルムアルデヒドの発散を充分に抑制する効果を発揮できることを見いだし、このようなラジカル硬化性樹脂を、(メタ)アクリロイル基及びアセトアセチル基を必須とするものとすると、機械的強度や密着性等の物性に優れた被膜層を形成できるとともに、該樹脂の硬化時や硬化後においてホルムアルデヒド発散量を充分に低減できることを見いだした。そして、樹脂骨格中に含まれる(メタ)アクリロイル基やアセトアセチル基の総含有量を特定することにより、ホルムアルデヒド発散量の低減効果を更に充分に発揮することが可能となることを見いだし、上記課題をみごとに解決できることに想到し、本発明に到達したものである。なお、本発明のラジカル硬化性樹脂組成物は、その施工後において、平成15年7月1日に施行された改正建築基準法における「シックハウス対策に係る建築基準法等の一部を改正する法律」を受け、建築分野等における建築材料等の最終製品がホルムアルデヒド発散量を充分に低減することを可能とするものである。また、厚生労働省の室内濃度指針値に対しては、本発明のラジカル硬化性樹脂組成物のスチレンモノマーの使用量を減らす、あるいは使用しないことで指針値に適合することが可能である。
【0007】
すなわち本発明は、(メタ)アクリロイル基及びアセトアセチル基を必須とするラジカル硬化性樹脂を含有するラジカル硬化性樹脂組成物であって、上記(メタ)アクリロイル基の総含有量は、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、1重量部以上、40重量部以下であり、上記アセトアセチル基の総含有量は、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、30重量部以下であるラジカル硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物において、ラジカル硬化性樹脂は、(メタ)アクリロイル基及びアセトアセチル基を必須とするものであり、該ラジカル硬化性樹脂中のアセトアセチル基の総含有量が、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、30重量部以下であることが適当である。0.01重量部未満であると、ホルムアルデヒドの発散を充分に抑制することができないおそれがあり、30重量部を超えると、液状樹脂の貯蔵安定性に問題が生じ、また、樹脂硬化物の機械的強度や乾燥性、耐水性、耐熱性等に満足できる物性が得られないおそれがある。好ましい下限値は0.03重量部であり、より好ましくは、0.05重量部である。また、好ましい上限値は15重量部であり、より好ましくは、10重量部である。また、範囲としては、0.01〜30重量部であることが適当であるが、好ましくは0.03〜15重量部、より好ましくは0.05〜10重量部である。
なお、上記アセトアセチル基の含有形態としては、樹脂骨格の両末端にアセトアセチル基を有する形態であってもよく、樹脂骨格中に含まれるヒドロキシル基とアセトアセチル基とが結合した形態であってもよいが、片末端にアセトアセチル基を有する形態であることが好適である。
【0009】
上記ラジカル硬化性樹脂としてはまた、該ラジカル硬化性樹脂中の(メタ)アクリロイル基の総含有量が、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、1重量部以上、40重量部以下であることが適当である。これにより、機械的強度や密着性、乾燥性、耐水性、耐熱性等により優れたラジカル硬化性樹脂を得ることができることとなる。好ましい下限値は3重量部、上限値は30重量部であり、より好ましい下限値は5重量部、上限値は20重量部である。また、範囲としては、1〜40重量部であることが適当であるが、好ましくは3〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部である。
【0010】
上記ラジカル硬化性樹脂の好ましい形態としては、分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物と分子中にアセトアセチル基を有する化合物とを反応させて得られる化合物を含んでなる形態である。このような化合物において、分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物と分子中にアセトアセチル基を有する化合物とが互いに反応しうる基を有することにより、本発明において好ましい形態である骨格中に(メタ)アクリロイル基及びアセトアセチル基を有する化合物を含有するラジカル硬化性樹脂を得ることができる。
上記分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物と分子中にアセトアセチル基を有する化合物とを反応させて得られる化合物のより好ましい形態としては、下記一般式(1);
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、nは、0又は1以上の整数を表す。)で表される形態である。このような化合物を含むラジカル硬化性樹脂を本発明のラジカル硬化性樹脂組成物に用いることにより、機械的強度や密着性等の物性に優れた被膜層を形成するとともに、該樹脂組成物の硬化物からのホルムアルデヒド発散量をより充分に低減することが可能となる。
【0013】
上記分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物と分子中にアセトアセチル基を有する化合物とを反応させて得られる化合物を得る反応方法には次の方法が例示される。
すなわち、例えば、(1)分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が更にカルボキシル基を有しており、分子中にアセトアセチル基を有する化合物が更にヒドロキシル基を有しており、これら化合物のカルボキシル基とヒドロキシル基とを縮合反応して該化合物を得る方法、(2)分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が更にヒドロキシル基を有しており、分子中にアセトアセチル基を有する化合物が更にアルキルエステル基を有しており、これら化合物のアルキルエステル基をヒドロキシル基でエステル交換反応して該化合物を得る方法、(3)分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が更にヒドロキシル基を有しており、分子中にアセトアセチル基を有する化合物が更にイソシアネート基を有しており、これら化合物のヒドロキシル基とイソシアネート基とをウレタン化反応して該化合物を得る方法、(4)分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が更にエポキシ基を有しており、分子中にアセトアセチル基を有する化合物が更にカルボキシル基を有しており、これら化合物のエポキシ基をカルボキシル基で開環付加反応して該化合物を得る方法等が挙げられるが、本発明はこれらの反応方法に特に限定されるものではない。
【0014】
上記分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されず、その化合物の形態としては、重合体や架橋性重合体(オリゴマー)の形態であってもよく、単量体の形態であってもよい。中でも、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の架橋性重合体であることが好適である。また、このような(メタ)アクリロイル基を有する架橋性重合体としては、数平均分子量が350〜7000であることが好ましい。より好ましくは、400〜5000である。
なお、これらの分子量解析条件は、分子量が350以上のピークから解析したものである。また、これらの分子量測定は、汎用のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用い、カラムは東ソー社製のTSK guard column SuperH−H、TSK gel SuperH2000、TSK gel SuperHM−Hを使用し、分子量既知のポリスチレンを標準物質として、示差屈折率計を検知器として測定することで、容易に測定することができる。
上記分子中にアセトアセチル基を有する化合物としては、1分子中に少なくとも1つのアセトアセチル基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、或いは水酸基を有する化合物をジケテンでアセトアセチル化した化合物等が好適に用いられる。
【0015】
上記ラジカル硬化性樹脂としてはまた、ラジカル重合性単量体を含有することが好適であり、該ラジカル重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、パラメチルスチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の1官能アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等の分子内に環状構造を有する1官能(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、ラジカル重合性単量体の好適な形態としては、分子量が350未満、25℃における粘度が100mPa・s以下のものである。粘度が100mPa・sを超えると、樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性が充分なものとはならないおそれがある。
【0016】
なお、スチレンやメチル(メタ)アクリレートのような沸点200℃以下の重合性単量体を用いる場合は、ラジカル硬化性樹脂の総量100重量部に対して、1〜30重量部にすることが好ましい。該重合性単量体が30重量部を超えると、現場施工時等における臭気が強く作業環境が悪化し、また、硬化物からの該重合性単量体の発散量を充分に低減できないおそれがある。更に好ましくは1〜15重量部であるが、使用しないのが最も好ましい。
【0017】
上記ラジカル重合性単量体の中でも、(メタ)アクリレート系単量体を用いることが好ましく、ラジカル硬化性樹脂の総量100重量部に対して、(メタ)アクリレート系単量体が1重量部以上、60重量部以下であることが好適である。これにより、ホルムアルデヒド発散量をより充分に抑制することができるとともに、床材や化粧板等の各種の用途において硬化物が充分な基本性能を発揮することが可能となる。下限値としては、5重量部であることがより好ましく、更に好ましくは、10重量部である。上限値としては50重量部であることがより好ましく、更に好ましくは、30重量部である。また、範囲としては、1〜60重量部であることが好適であるが、より好ましくは、5〜50重量部であり、更に好ましくは、10〜30重量部である。
このように上記ラジカル硬化性樹脂が、(メタ)アクリレート系単量体を含むラジカル重合性単量体を含有してなり、該(メタ)アクリレート系単量体が、ラジカル硬化性樹脂の総量100重量部に対して、1重量部以上、60重量部以下である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
なお、上記ラジカル重合性単量体において、スチレン系単量体を用いる場合には、ラジカル重合性単量体の総量100重量部に対して、1〜50重量部とすることが好ましい。
【0018】
本発明のラジカル硬化性樹脂において、分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物と分子中にアセトアセチル基を有する化合物とを反応させて得られる化合物と、ラジカル重合性単量体との重量比としては、化合物/重合性単量体が、(20〜90)/(80〜10)であることが好ましい。重合性単量体の重量比が80重量%を超えると、得られる樹脂の耐薬品性及び靭性が充分なものとならないおそれがあり、20重量%未満であると、硬化物の表面性を充分に向上することができず、また、粘度が大きいために作業性に優れたものとはならないおそれがある。
上記ラジカル硬化性樹脂においてはまた、安定剤として、ハイドロキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、クレゾール、t一ブチルハイドロキノン、フェルダジル、DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)等の安定ラジカルを使用することができる。
【0019】
以下では、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アセトアセチル基を有する化合物及びこれらの化合物を反応させた化合物を含むラジカル硬化性樹脂組成物等について更に説明する。
分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、上述したようにポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが好ましいが、これら(メタ)アクリロイル基を有する化合物の少なくとも一部が(メタ)アクリロイル基と共にアセトアセチル基を有する化合物と反応しうる官能基を有することが好ましい。このような(メタ)アクリロイル基を有する化合物をアセトアセチル基を有する化合物と反応させることにより、本発明に於いて好ましい形態である骨格中に(メタ)アクリロイル基とアセトアセチル基とを有する化合物を含有するラジカル硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0020】
ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、エーテル結合を有する2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られるエステル化物であり、該アルコールの少なくとも一部の水酸基を残して(メタ)アクリル酸とエステル化することによりアセトアセチル基を有する化合物と反応しうる官能基としての水酸基を有するポリエーテル(メタ)アクリレートが得られる。
【0021】
上記2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物とは、(メタ)アクリロイル基を分子内に少なくとも1つ有する化合物であり、例えば、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ビスフェノールF、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、ビスフェノールAF、ビスフェノールC、ビスフェノールF−D、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA等の2価アルコール及びこれらのアルキレンオキシド付加物等の1種又は2種以上と、(メタ)アクリル酸との反応によって得られるモノエステル類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ノボラックフェノール、クレゾールノボラック等の3価以上のアルコール及びこれらのアルキレンオキシド付加物等の1種又は2種以上と、(メタ)アクリル酸との反応によって得られるモノエステル類、ジエステル類、トリエステル類等の水酸基も有するエステル化物のみを含む形態であってもよく、(メタ)アクリロイル基のみを有する化合物、例えば、上述した2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるジエステル類との混合形態であってもよい。
【0022】
上記1以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、分子内にオキシアルキレン鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有する末端基を1〜3個有し、水酸基を1〜2個有する形態が好適である。なお、1つのオキシアルキレン鎖が有するオキシアルキレン単位の個数としては、1個以上、10個以下であることが好ましい。オキシアルキレン鎖が無いと、ラジカル硬化性樹脂組成物を用いて形成される皮膜の柔軟性や基材追従性が充分とはならないおそれがあり、10を超えると、硬化物が耐水性に優れたものとはならないおそれがある。より好ましくは、2個以上、8個以下であり、更に好ましくは、4個以下である。
上記オキシアルキレン単位としては、炭素数2〜4個のオキシアルキレン単位により構成されるものであることが好ましい。すなわち、上記オキシアルキレン単位としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位及びオキシブチレン単位からなる群より選択される少なくとも1種のオキシアルキレン単位により構成されるものが好ましい。オキシアルキレン単位の炭素数が4を超えると、ラジカル硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、効率的に作業を行うことができないおそれがある。より好ましくは、炭素数2〜3のオキシアルキレン単位により構成されるものであり、更に好ましくは、炭素数2のオキシアルキレン単位、すなわちオキシエチレン単位により構成されるものである。なお、オキシアルキレン単位を2個以上有する場合には、全て同じであってもよく、異なっていてもよい。また、分子内に有する2個以上のオキシアルキレン鎖は、それぞれが全く同じオキシアルキレン単位の構成であってもよいし、異なっていてもよい。
【0023】
上記1以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の(メタ)アクリロイル基は、全て同じであってもよく、アクリロイル基とメタクリロイル基とが組み合わされたものであってもよい。
上記1以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては更に、フェノールの残基を有する形態であることが好適である。フェノールの残基とは、フェノールが有する水酸基から活性水素を除いた構造をもつ残基を意味する。なお、このような残基を1分子内に1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。
このような1以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の好ましい形態としては、ビスフェノールAから誘導される構造を有するものであり、中でも、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物であることが好適である。より好ましくは、下記一般式(2);
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。p及びmはそれぞれ0〜10の整数を表し、かつ、p+mは、1以上、10以下である。)で表される構造を有するビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリレートである。
このように上記エステル化物が、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物を含むものである形態もまた、本発明の好ましい形態の1つである。
【0026】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸と、必要に応じて多塩基酸とを付加反応させることにより得られる架橋性重合体(オリゴマー)であり、(メタ)アクリル酸との付加反応に於いてエポキシ化合物の少なくとも一部のエポキシ基を残すことによりアセトアセチル基を有する化合物と反応しうる官能基としてエポキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレートが得られ、残したエポキシ基に多塩基酸を付加反応することによりアセトアセチル基を有する化合物と反応しうる官能基としてカルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレートが得られる。また、(メタ)アクリル酸との開環付加反応により生じた水酸基により、アセトアセチル基を有する化合物と反応しうる官能基として水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレートが得られる。
【0027】
上記多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸等のα,β−不飽和二塩基酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、ダイマー酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の飽和二塩基酸の他、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリマー酸、カルボキシル基を有するポリブタジエン、カルボキシル基を有するブタジエン−アクリルニトリル共重合体、α,β−不飽和二塩基酸及び/又は飽和二塩基酸と多価アルコールとのエステル化により得られる末端にカルボキシル基を有する化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、上記多塩基酸を2種以上併用した場合は、柔軟性に富むビニルエステル化合物を得ることができる。
【0028】
上記エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート等の、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
上記エポキシ(メタ)アクリレートにおいて、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸と、必要に応じて多塩基酸とを付加反応させるためには、通常、付加反応触媒の存在下で、50〜150℃の範囲で加熱することが好ましい。付加反応触媒としては、通常用いられる合成触媒を使用することができるが、3級アミン類、オニウム塩類及び金属石鹸等を用いることが好適である。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートと、必要に応じてポリオールとをウレタン化させることにより得られる架橋性重合体(オリゴマー)であり、(メタ)アクリル酸との付加反応に於いてポリイソシアネートの少なくとも一部のイソシアネート基を残すことによりアセトアセチル基を有する化合物と反応しうる官能基としてイソシアネート基を有するウレタン(メタ)アクリレートが得られ、残したイソシアネート基にポリオールをウレタン化させることによりアセトアセチル基を有する化合物と反応しうる官能基として水酸基を有するウレタン(メタ)アクリレートが得られる。
【0031】
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類や、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類等の1種又は2種以上が好適である。
【0032】
上記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカ−ボネ−トポリオール、ポリブタジエンポリオール等の1種又は2種以上が好適であり、数平均分子量が200〜3000であるものが好ましい。より好ましくは、数平均分子量が400〜2000のものである。なお、ポリエーテルポリオールとは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイドの他に、ビスフェノールAやビスフェノールFにアルキレンオキサイドを付加させたポリオールも使用することができる。また、ポリエステルポリオールとは、二塩基酸成分と多価アルコール成分との縮合重合体、又は、ポリカプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合体である。
【0033】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水素添加されたトリレンジイソシアネート、水素添加されたキシリレンジイソシアネート、水素添加されたジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソフォロンジイソシアネートの三量体等のトリイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物を1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記ウレタン(メタ)アクリレートにおいて、ポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、更に必要に応じてポリオールとをウレタン化反応させるためには、水酸基とイソシアネート基との当量比がほぼ1となるように使用量を調整し、40〜140℃の範囲で加熱することが好ましい。ウレタン化反応を促進させるためには、通常用いられるウレタン化触媒を使用することができ、3級アミン類、ジブチル錫ジラウレート、塩化錫等の錫化合物類を用いることが好適である。
【0035】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと多塩基酸と(メタ)アクリレートとをエステル化反応させることにより得られる架橋性重合体(オリゴマー)であり、ポリエステルの少なくとも一部の末端に水酸基及び/又はカルボキシル基を残すことにより、アセトアセチル基を有する化合物と反応しうる官能基として水酸基及び/又はカルボキシル基を有するポリエステル(メタ)アクリレートが得られる。
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、トリメチロールプロパン、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)付加物等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸類以外の塩基酸としては、例えば、上述したα,β−不飽和二塩基酸及びその無水物、飽和二塩基酸及びその無水物等が挙げられる。
【0036】
上記ポリエステル(メタ)アクリレートにおいて、(メタ)アクリル酸類と、多価アルコールと、更に必要に応じて(メタ)アクリル酸類以外の塩基酸とをエステル化反応させる方法としては特に限定されず、反応温度や触媒等も特に限定されるものではない。
【0037】
上記アセトアセチル基を有する化合物としては、1分子中に少なくとも1つのアセトアセチル基を有する化合物が、更に水酸基を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物、アルキルエステル基を有する化合物、及びイソシアネート基を有する化合物等が挙げられる。
アルキルエステル基を有する化合物としては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、或いは水酸基を有する化合物をジケテンでアセトアセチル化した化合物等がある。
水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールモノアセト酢酸エステル、ジエチレングリコールモノアセト酢酸エステル、プロピレングリコールモノアセト酢酸エステル、ジプロピレングリコールモノアセト酢酸エステル等がある。
カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールモノアセト酢酸エステル、ジエチレングリコールモノアセト酢酸エステル、プロピレングリコールモノアセト酢酸エステル、ジプロピレングリコールモノアセト酢酸エステルと、二塩基酸、及び/又はその酸無水物との半エステル化物等がある。
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールモノアセト酢酸エステル、ジエチレングリコールモノアセト酢酸エステル、プロピレングリコールモノアセト酢酸エステル、ジプロピレングリコールモノアセト酢酸エステルと、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等のジイソシアネートとの半ウレタン化物等がある。
【0038】
なお、(メタ)アクリロイル基を有する化合物と分子中にアセトアセチル基を有する化合物との反応形態に関し、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としてポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートを用いた場合について、下記にそれぞれ例示するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではない。
【0039】
【化3】

【0040】
(式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。qは、0又は1以上の整数を表す。)
【0041】
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物は、放射線や紫外線の照射及び/又は硬化剤の添加により硬化させることができるものである。
上記硬化剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル、ビス(4−tーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0042】
上記硬化剤の使用量としては、硬化剤の種類やラジカル硬化性樹脂組成物の用途等により適宜設定すればよいが、ラジカル硬化性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上とすることが好ましく、また、10.0質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.2質量部以上であり、また、5質量部以下である。また、必要に応じて、硬化促進剤を併用することができる。硬化促進剤としては、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン等の金属石鹸;コバルトアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等の金属キレート化合物;ジメチルアニリン、ジメチルトルイジン等のアミン化合物;アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
上記ラジカル硬化性樹脂組成物としてはまた、パラフィンを含むことが好ましい。パラフィンとは、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックスであり、原油中に存在し、常温において固体又は半固体の炭化水素の混合物である。
上記パラフィンワックスとしては、例えば、パラフィンワックス150(商品名、日本精蝋社製、融点66℃)、パラフィンワックス140(商品名、日本精蝋社製、融点61℃)、パラフィンワックス130(商品名、日本精蝋社製、融点55℃)、パラフィンワックス115(日本精蝋社製、融点47℃)等が挙げられる。また、マイクロクリスタリンワックスとしては、例えば、Hi−Mic−2065(商品名、日本精蝋社製、融点75℃)、Hi−Mic−2045(商品名、日本精蝋社製、融点64℃)等が挙げられる。これらのパラフィンは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0044】
上記パラフィンを本発明のラジカル硬化性樹脂組成物に使用する場合には、パラフィンワックスの分散剤を併用することが好ましい。パラフィンワックスの分散剤としては、例えば、水酸基、カルボキシル基及びエステル結合部位から選択される少なくとも1種の構造を有するワックスであることが好ましい。具体的には、例えば、ドデカン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸オクタデシル等の、炭素数12以上の脂肪酸及びその誘導体;ノニポール160(商品名、三洋化成工業社製)、エマルミン200(商品名、三洋化成工業社製)等のアルキルフェノールや、高級アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加したアルコール類;NPS−9125、NPS−9210、NPS−6010、HAD−5080、NSP−8070、OX−020T、OX−1949(商品名、何れも日本精蝋社製)等のパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスから酸化反応等で誘導される変性ワックス;ダイヤモンドワックス(商品名、新日本理化社製)等の動植物油脂の誘導体;セラマー67(商品名、東洋ペトロライロ社製)、セラマー1608(商品名、東洋ペトロライロ社製)等のカルボキシル基含有単量体とオレフィンとの重合体等が挙げられる。これらパラフィンワックスの分散剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0045】
本発明において、上記パラフィンワックスの分散剤に対するパラフィンの使用比率は、用いるラジカル硬化性樹脂の種類や分子量、組成に応じて適宜設定すればよいが、質量比(パラフィンの質量/パラフィンワックスの分散剤の質量)が500〜1の範囲内であることが好ましい。この範囲よりパラフィンワックスの分散剤の比率が大きいと、乾燥性が充分なものとはならないおそれがあり、この範囲よりパラフィンワックスの分散剤の比率が小さいと、硬化物における積層樹脂層の被接着性が優れたものとはならないおそれがあることから、上記の範囲を逸脱すると、乾燥性及び上記積層樹脂層の被接着性をともに充分に満足し得るラジカル硬化性樹脂組成物を得ることができないおそれがある。より好ましくは、300〜2の範囲内であり、更に好ましくは、200〜2の範囲内である。このような範囲に設定することにより、乾燥性及び硬化物における積層樹脂層の被接着性を更に向上させることが可能となる。
【0046】
上記ワックス類の使用量、すなわち上記パラフィンとパラフィンワックスの分散剤との合計量としては、上記エステル化物や架橋性重合体、パラフィン類の種類や組成等に応じて適宜設定することが好ましく、硬化時に上記ラジカル硬化性樹脂組成物の硬化表面上にワックス薄膜(被膜)を形成することができるように設定すればよいが、例えば、ラジカル硬化性樹脂100質量部に対して、0.005〜2質量部用いることが好ましい。0.005質量部未満であると、得られるラジカル硬化性樹脂組成物の乾燥性が充分とはならないおそれがあり、2質量部を超えると、得られるラジカル硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物の強度物性が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、乾操性及び得られるラジカル硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物の強度物性の観点から、0.02〜0.6質量部である。
【0047】
上記ラジカル硬化性樹脂組成物としてはまた、必要に応じて、揺変性付与剤、充填剤、乾燥性向上剤、増粘剤、着色剤、繊維強化材等の添加剤(材)や骨材等を1種又は2種以上含んでいてもよい。また、他種の熱硬化性樹脂1種又は2種以上を混合してもよい。更に、粘度調整のため、溶剤、希釈剤を混合してもよい。これらの使用量としては、ラジカル硬化性樹脂組成物の用途等に応じて適宜設定することが好適である。
上記揺変性付与剤としては、無水微粉末シリカ、アスベスト、クレー等が挙げられる。充填剤としては、水酸化アルミ、タルク、珪砂、炭酸カルシウム、酸化アンチモン等が挙げられる。
上記充填剤としては、水酸化アルミニウム(ATH)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、クレー、タルク、ガラスパウダー、ミルドファイバー、クリストバライト、マイカ、シリカ、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、ガラス粉末等の無機充填剤;有機充填剤等が挙げられる。
上記乾燥性向上剤としては、乾性油、アリルグリシジルエーテル、ジエチレングリコール及び無水マレイン酸の付加重合体等等のアリルオキシ基を有する不飽和又は飽和ポリエステルオリゴマー等が挙げられる。
上記増粘剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;イソシアネート類;オキサゾリン類等が挙げられる。
【0048】
上記着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
上記繊維強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維;アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の有機繊維等が挙げられる。繊維強化材の形状としては、マット状、チョップ状、ロービング状等が挙げられる。
上記他種の熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記溶剤、希釈剤としては、公知のものが使用でき、例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル等が挙げられる。また、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等の重合性不飽和基を有する単量体を希釈剤として用いてもよい。臭気の面から、常圧での沸点が150℃以上のものが好ましい。より好ましくは、沸点が200℃以上のものである。
【0049】
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物においては、硬化物からのホルムアルデヒドの発生を充分に抑制することが可能となる。樹脂組成物の硬化物におけるホルムアルデヒド発散量としては、1.0mg/L以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5mg/L以下であり、更に好ましくは、0.1mg/L以下である。
【0050】
本発明においてはまた、上記ラジカル硬化性樹脂組成物を調整する工程や調整した後の工程において、樹脂組成物の原料や調整された樹脂組成物をバブリングしてもよい。これにより、例えば、原料等にホルムアルデヒドが混入したり、樹脂組成物の調整工程や調整した後の工程においてホルムアルデヒドが生成したりしても、樹脂組成物の硬化物におけるホルムアルデヒド発散量を充分に低減することができ、本発明の作用効果を更に充分に発揮することが可能となる。
【0051】
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物は、硬化物からのホルムアルデヒドの発散を充分に低減することができるものであるとともに、強度や伸び等の基本性能、柔軟性、基材追従性等に優れ、硬化物の亀裂や基材からの剥離が起こりにくいうえに、立て面の樹脂ダレが起こりにくいことから、各種の用途に好ましく用いることができるものである。また、スチレンのような揮発性の高い重合性単量体を用いた場合も、臭気を充分に抑制することも可能なものである。このようなラジカル硬化性樹脂組成物の用途としては、特に土木建築用被覆材として好適であり、各種の建造物の屋上や床面、壁面等に防水、防食、強度や美観の保持を目的として施されるライニング材、塗り床材等を形成する材料とすることができる。なお、このようなライニング材、塗り床材では一般的にプライマー層、中間層、トップコート層という多層構造を施工することとなるが、プライマー層とは、基材と被覆材とを充分付着させることを目的として設けられる層であり、プライマー層にはイソシアネートとグリコールとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを配合することが好適である。中間層とは、被覆材の主材となる層であり、耐久性、機械的強度を発現させるための層である。中間層には、骨材、モルタル、繊維強化材、揺変性付与剤、乾燥性向上剤等を含むことが好ましい。また、トップコートとは、中間層の保護、耐侯性、意匠性、防滑性等を目的として設けられる層であり、トップコートには顔料、乾燥性向上剤等を含むことが好ましい。上記ラジカル硬化性樹脂組成物としては、これらの土木建築用被覆材の中でも、特に中間層、トップコート層を形成する材料として好適なものであり、トップコート層を形成する材料として最も好適なものである。なお、中間層及び/又はトップコート層として用いる場合には、パラフィンを添加することが好ましい。
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物はまた、ライニング材、塗り床材等の土木建築用被覆材の他、車両、船体、浴槽、水タンク、電気部品等の繊維強化プラスチック、レジンコンクリート、ゲルコート、塗料、パテ、化粧板、接着剤、注型の材料;コンクリート、アスファルト、モルタル、鋼板、ガラス、熱可塑性プラスチック等の被覆材等のような各種用途にも好適に用いることができる。
【0052】
本発明のラジカル硬化性樹脂組成物により皮膜(塗膜)を形成する方法としては、例えば、該樹脂組成物を基材に塗布した後硬化させることにより皮膜を成形する方法や、また、マット状の繊維強化材を用いる場合には、該樹脂組成物をハンドレイアップ等により繊維強化材を含浸させて被覆材とし、硬化させることにより皮膜を形成する方法等が挙げられる。
上記基材としては、例えば、ガラス、スレート、コンクリート、モルタル、セラミック、石材等の無機質基材;アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、銅、チタン、ステンレス、ブリキ、トタン等からなる金属板、表面に亜鉛、銅、クロム等をメッキした金属、表面をクロム酸、リン酸等で処理した金属等の金属基材;ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、FRP(織維強化プラスチック)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、等のプラスチック基材;合成皮革;ヒノキ、スギ、マツ、合板等の木材;繊維、紙等の有機素材等が挙げられる。また、これらの基材は、本発明のラジカル硬化性樹脂組成物が塗装される前に、通常用いられるプライマーや、下塗り、中塗り、メタリックベース等の上塗り等塗装用塗料が塗装されていてもよい。
【0053】
上記ラジカル硬化性樹脂組成物を基材に塗布する方法、及び、硬化方法としては、該樹脂組成物が用いられる用途等により適宜選択すればよいが、塗布方法としては、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、バーコート、フローコート、静電塗装、ダイコート、フィルムラミネート、ゲルコート等による方法等が挙げられる。また、硬化方法としては、常温で硬化させる方法、加熱により硬化させる方法、紫外線等を照射して硬化させる方法等が挙げられ、また、これらを適宜組み合わせて行ってもよい。
なお、上記ラジカル硬化性樹脂組成物から形成される塗膜の膜厚としては、用いられる用途により適宜設定すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0055】
製造例1 アセトアセチル基含有ポリエーテルメタクリレート樹脂の調製<樹脂(1)>
(第一工程)
攪拌機、Dean−Sterk型水分離機、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、BA−8Uグリコール(商品名、ビスフェノールA8EO付加物、日本乳化剤社製)580g、フェノキシエタノール414g、アセト酢酸メチル81g、メタクリル酸444g、シクロへキサン97g、2−メチルハイドロキノン0.24g、フェノチアジン0.40g、パラトルエンスルホン酸8gを仕込み、空気を吹き込みながら加熱し、80〜90℃で3時間反応させ、その後120℃に加熱して、120℃に昇温してから6時間保持し、エステル交換反応と縮合反応を行った。
流出した縮合水とメタノールの混合物は、93g(理論流出量の94%)、そのうちのメタノールは22g(理論流出量の95%)となった。
その後、110℃に下げ、減圧下(0.06MPa以下)3時間でシクロヘキサンを留去した。
この時の反応混合物の酸価は39mgKOH/gであった。
(第二工程)
次いで、この反応物にフェニルグリシジルエーテル129g、2−メチルハイドロキノン0.09g、フェノチアジン0.23g、トリエチルアミン4.7gを加え、再度115℃に昇温し、空気を吹き込みながら反応を行った。115℃に昇温してから、6時間後に反応物の酸価が8.9mgKOH/gとなり、粘度が120mPa・sの樹脂(1)を得た。
【0056】
製造例2 アセトアセチル基含有ポリエーテルメタクリレート樹脂の調製<樹脂(2)>
(第一工程)
攪拌機、Dean−Sterk型水分離機、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、BA−8Uグリコール(商品名、ビスフェノールA8EO付加物、日本乳化剤社製)1160g、ジケテン118g、シクロヘキサン100g、パラトルエンスルホン酸4gを仕込み、温度を60〜65℃で2時間維持しながら、BA−8Uグリコールの水酸基の35%のアセトアセチル化反応を行った。
水酸価の測定の結果、水酸価は114mgKOH/gとなり、反応率は98%であることを確認した。
(第二工程)
次いで、この反応物にメタクリル酸291g、2−メチルハイドロキノン0.25g、フェノチアジン0.42g、パラトルエンスルホン酸4.34gを加え、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。120℃に到達してから6時間後に流出した縮合水が43g(理論出水量の91%)となった。
その後、110℃に下げ、減圧下(0.06MPa以下)3時間でシクロヘキサンを留去した。
この時の反応混合物の酸価は34mgKOH/gであった。
(第三工程)
次いで、この反応物にフェニルグリシジルエーテル117g、2−メチルハイドロキノン0.1g、フェノチアジン0.25g、トリエチルアミン5gを加え、空気を吹き込みながら再度115℃まで昇温してから、4時間反応させた。その後、ジエチレングリコールジメタクリレート412gを投入し、酸価が7.9mgKOH/g、粘度が110mPa・sの樹脂(2)を得た。
【0057】
製造例3 アセトアセチル基含有ポリエーテルメタクリレート樹脂の調製<樹脂(3)>
(第一工程)
攪拌機、Dean−Sterk型水分離機、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、BA−4グリコール(商品名、ビスフェノールA4EO付加物、日本乳化剤社製)808g、メタクリル酸224g、シクロへキサン77g、パラトルエンスルホン酸6.4g、2−メチルハイドロキノン0.19g、フェノチアジン0.32gを仕込み、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。120℃に到達してから、5時間後に流出した縮合水は45g(理論出水量の95%)となった。
(第二工程)
次いで、この反応物にアセト酢酸メチル179gを加え、空気を吹き込みながら温度80〜90℃で4時間、100〜110℃で2時間維持して、エステル交換反応を行った。その後、110℃に下げ、減圧下(0.06MPa以下)3時間でシクロヘキサンを留去した。流出したメタノール及び縮合水の混合物は42gで、水酸価は6.2mgKOH/g、酸価は3.9mgKOH/gの反応物(3)を得た。
(第三工程)
この反応物(3)80重量部を、フェノキシエチルメタクリレート20重量部で希釈して、粘度が110mPa・sの樹脂(3)を得た。
【0058】
製造例4 アセトアセチル基含有ポリエーテルメタクリレート樹脂の調製<樹脂(4)>
(第一工程)
攪拌機、Dean−Sterk型水分離機、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、BA−2グリコール(商品名、ビスフェノールA2EO付加物、日本乳化剤社製)632g、アセト酢酸メチル325g、パラトルエンスルホン酸3gを仕込み、温度140℃で2時間、その後、昇温し150℃で4時間維持しながら、BA−4Uグリコールの70%の水酸基のエステル交換反応を行った。流出したメタノールは85gで、水酸価の測定の結果、水酸価は192mgKOH/gとなり反応率は95%であることを確認した。
(第二工程)
次いで、この反応物にシクロヘキサン70g、メタクリル酸134g、2−メチルハイドロキノン0.17g、フェノチアジン0.29g、パラトルエンスルホン酸3gを加え、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。
120℃に到達してから6時間後に流出した縮合水が20g(理論出水量の90%)となった。
その後、110℃に下げ、減圧下(0.06MPa以下)3時間でシクロヘキサンを留去した。
この時の反応混合物の酸価は24mgKOH/gであった。
(第三工程)
次いで、この反応物にフェニルグリシジルエーテル54g、2−メチルハイドロキノン0.07g、フェノチアジン0.17g、トリエチルアミン3.3gを加え、再度115℃に昇温し、空気を吹き込みながら反応を行った。115℃に昇温してから、4時間後に反応物の酸価が7.4mgKOH/gとなり、粘度が400mPa・sの樹脂(4)を得た。
【0059】
製造例5 ポリエーテルメタクリレート樹脂の調製<樹脂(5)>
(第一工程)
攪拌機、Dean−Sterk型水分離機、ガス導入管及び温度計を備えたフラスコに、BA−8Uグリコール(商品名、ビスフェノールA8EO付加物、日本乳化剤社製)580g、フェノキシエタノール414g、メタクリル酸516g、シクロヘキサン100g、パラトルエンスルホン酸1水和物8g、2−メチルハイドロキノン0.25g、フェノチアジン0.4gを仕込み、空気を吹き込みながら120℃に加熱した。120℃に到達してから、8時間後に流出した縮合水が81g(理論出水量の91%)となった。
その後、110℃に下げ、減圧下(0.06MPa以下)で3時間シクロヘキサンを留去した。この時の反応混合物の酸価は36mgKOH/gであった。
(第二工程)
次いで、この反応物にフェノチアジン0.25g、2−メチルハイドロキノン0.1g、N,N,N−トリエチルベンゼンアンモニウムクロライド8g、フェニルグリシジルエーテル150gを加え、再度115℃に昇温し、空気を吹き込みながら反応を行った。
115℃に昇温してから、4時間後に反応混合物の酸価が4.5mgKOH/gとなり、粘度が75mPa・sの架橋性重合体を60重量%含む樹脂(5)を得た。
【0060】
製造例1〜5で得られた樹脂(1)〜(5)について、粘度、酸価、アセトアセチル基含有量及び(メタ)アクリロイル基含有量を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1〜11、比較例1〜2
樹脂の二次接着性及び硬化物物性について、以下のように評価した。結果を表2及び3に示す。
<二次接着性>
1.使用樹脂
FRP層用樹脂:表2及び3の配合で混練し、揺変化して得た。
塗布用樹脂:樹脂(5)にアエロジル♯200(商品名、日本アエロジル社製)3重量部、BYK R605(商品名、ビッグケミー社製)0.3重量部を加え、ホモミキサーで攪拌し、パラフィン130F(商品名、日本精蝋社製)0.05重量部、パラフィン115F(商品名、日本精蝋社製)0.05重量部及びパラフィン分散剤NPS9125(品名、日本精蝋社製)0.001重量部を添加、混合して得た。
2.試験片の作製
ウレタンプライマーNS−YP(商品名、ジャパンコンポジット社製)を塗布後一晩放置した30cm×30cmのコンクリート板上に、100重量部の樹脂(FRP層用)、ジメチルアニリン、オクチル酸コバルト、パークミルH−80(商品名、日本油脂社製)を混合し、その樹脂80gをガラスマット(25cm×25cm)に含浸し積層した。室温で1週間放置した後、塗布用樹脂を刷毛で500g/mの割合で塗布した。
一晩放置後に塗布面に4cm角の鉄製ジグをエポキシ接着剤で接着し、建研式接着力試験機でFRP層と塗布層間の接着性を評価した。
3.評価
〇:コンクリートあるいはFRP層が破壊
△:FRP層と塗布層との間が部分的に剥離した状態
×:FRP層と塗布層の界面で剥離
【0063】
<硬化物物性>
上記樹脂(1)〜(5)に対して、アエロジル♯200(商品名、日本アエロジル社製)1重量部及びBYK R605(商品名、ビッグケミー社製)を加え、ホモミキサーで撹拌し、パラフィン135F、パラフィン120F及びパラフィン分散剤NPS−9125(いずれも全て商品名、日本精蝋社製)を表2及び3に示す割合で添加し、樹脂組成物を得た。
更に、予めウレタンプライマーNS−YP(商品名、日本触媒社製)を塗布後、一晩放置した30cm×30cmのコンクリート板上に、上記樹脂組成物、オクチル酸コバルト(金属分8重量%)、N,N−ジメチルアニリン、及び、パークミルH−80(商品名、日本油脂社製)を表2及び3に示す割合で混合し、得られた混合物80gをガラス繊維マットの25cm×25cmに含浸させて、ライニングした。
その後、コンクリート板を垂直に立てかけ、20℃雰囲気下で5時間放置後の表面乾燥性を指触にて評価した。
また得られた混合物のそれぞれについて、下記ホルムアルデヒド定量法を用いてホルムアルデヒド放散量を測定した。結果を表2及び3に示す。
【0064】
(ホルムアルデヒド定量)
1:試験板の作製
長さ75mm、幅50mmのガラス板片面に樹脂(得られた混合物)をウェット0.5mm厚で刷毛塗りし、常温硬化後、2日常温で養生し試験板とした。
2:試験方法
・密閉可能な内蓋付の容量900mlのガラス瓶を用意する。
・ガラス瓶に50gの水を入れる。
・図1のように、ガラス瓶内の内蓋に1枚の試験板を針金の先端に付けたクリップで支持する。一方、別のガラス瓶には、空試験用として試験板は装着しない。
・ガラス瓶に蓋をして、放散試験を開始する。
1回の放散試験の時間は24時間とし、JIS K5601−4−1に従いアセチルアセトン吸光光度法によって、ホルムアルデヒド濃度を測定した。
【0065】
(表面乾燥性の評価)
表面乾燥性の評価は、指触により以下のように評価した。
〇:ベタツキが全く無い。
△:僅かにベタツキがあり、表面に指紋が残る。
×:ベタツキが残る。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例におけるホルムアルデヒド発散量の測定時に用いたガラス瓶内の形態を例示する概念図である。
【符号の説明】
【0069】
1:900mlガラス瓶
2:クリップ
3:試験板
4:水50g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基及びアセトアセチル基を必須とするラジカル硬化性樹脂を含有するラジカル硬化性樹脂組成物であって、
該(メタ)アクリロイル基の総含有量は、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、1重量部以上、40重量部以下であり、
該アセトアセチル基の総含有量は、ラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、30重量部以下である
ことを特徴とするラジカル硬化性樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−28418(P2006−28418A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211880(P2004−211880)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(503090980)ジャパンコンポジット株式会社 (38)
【Fターム(参考)】