説明

ラジカル重合性樹脂組成物及び繊維強化成形品

【課題】 ラジカル重合し硬化する時に発生するホルムアルデヒドの捕捉機能を有し、硬化成形物の物性、硬化性を損なうことなく、硬化物からのホルムアルデヒドの放散を抑えたラジカル重合性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】 前記エチレン尿素が、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)の合計100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、かつ1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)、又は1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)との混合物に、35〜250℃の温度下に前記エチレン尿素を添加し溶融させてなる前記樹脂(A)、前記単量体(B)及びエチレン尿素を含んでなるラジカル重合性樹脂組成物及び繊維強化成形品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒド捕捉機能を有するラジカル重合性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に用いられるラジカル重合性樹脂は、機械的物性、耐水性、耐薬品性等が良好であるため、繊維強化プラスチック成形品(FRP)、ゲルコート材、ライニング材、木工用塗料、シーリング材、接着剤等の様々な用途に幅広く用いられている。またガラス繊維強化材等の繊維強化材とラジカル重合性樹脂を積層硬化せしめた、所謂繊維強化プラスチック(FRP)として、その優れた機械的強度、性能を活かし、防水パン、浴槽、カウンター、仕切板、壁材、車両部材、室内部材等、室内外の用途を含め、幅広く用いられている。
また、かかるラジカル重合性樹脂は、フィラー、顔料等の充填剤、添加剤を混合して、ゲルコート材、ライニング材、接着剤等として用いることができ、幅広い応用用途を有している。
しかしながら、かかるラジカル重合性樹脂を重合硬化させるラジカル硬化剤により、重合性不飽和二重結合を有するラジカル重合性不飽和樹脂と反応性不飽和単量体とを反応させ硬化物を得る際に、硬化物からホルムアルデヒドが発生することが知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
ホルムアルデヒドは、シックハウス等環境問題の原因物質とされ、その放散量が平成15年7月より建築基準法により規制された。
このため、硬化の際に発生するホルムアルデヒドをいかに削減させるかが、大きな問題となっている。
この規制に対して、ホルムアルデヒドの放散量がある値より減少するまで硬化後の放置時間を長くする方法、高温での後硬化を行いホルムアルデヒドを強制的に揮散させ、硬化物中のホルムアルデヒドを放出させる方法、またホルムアルデヒド捕捉材を後添加しホルムアルデヒドの放散を抑える方法が考えられる。
しかしながら、各種ホルムアルデヒド捕捉材をそのままラジカル重合性樹脂に添加せしめても、その溶解性が不十分であるため、ホルムアルデヒド捕捉効果が十分でない。またホルムアルデヒド捕捉材を溶解させるためにメタノール等の希釈溶剤を用い、捕捉材を一端溶解させ添加するとその効果は確認されるが、物性の低下、硬化性不良等の問題が発生し問題であった。
【非特許文献1】Stanford Research Institute Volume1 Number 7 July,1968; Frank R. Mayo
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ラジカル重合し硬化する時に発生するホルムアルデヒドの捕捉機能を有し、硬化成形物の物性、硬化性を損なうことなく、硬化物からのホルムアルデヒドの放散を抑えたラジカル重合性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題について鋭意検討を行った結果、特定の添加量のエチレン尿素を、特定の温度状態のラジカル重合性樹脂に直接添加、溶融させることで、物性および硬化性を損なうことなく、ホルムアルデヒドの放散を抑えたラジカル重合性樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成させるに至ったものである。
【0006】
即ち、本発明は、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)及びエチレン尿素を含んでなるラジカル重合性樹脂組成物であって、前記エチレン尿素が、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)の合計100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、かつ1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)、又は1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)との混合物に、35〜250℃の温度下に前記エチレン尿素を添加し溶融させてなることを特徴とするラジカル重合性樹脂組成物を提供するものである。また本発明は、前記ラジカル重合性樹脂組成物と繊維強化材とを含む成形材料を成形してなる繊維強化成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、物性、硬化性を損なうことなく、硬化重合の際に発生するホルムアルデヒドの揮散を抑制でき、シックハウス対応型環境樹脂として非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に使用する1分子中に2個以上のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性樹脂(A)としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの樹脂の数平均分子量は、300以上であるが、硬化物の物性の点で、500〜5,000のものが好ましい。これらの樹脂は単独で使用しても良いし、必要に応じ2種以上併用しても良い。
【0010】
これらラジカル重合性樹脂は、性能、用途面より好適な樹脂を選択することができるが、不飽和ポリエステルが好ましい。かかる不飽和ポリエステルは、α,β−不飽和二塩基酸及び飽和二塩基酸を含む二塩基酸類と多価アルコ−ル類、必要によりジシクロペンタジエン系化合物との縮合反応で得られるものであり、好ましくは分子量500〜5,000の範囲のものである。
【0011】
不飽和ポリエステルを調製するにあたって使用されるα,β−不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等を挙げることができる。また、飽和二塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等を挙げることができる。これらは、単独でも2種類以上組み合わせて使用しても良い。
【0012】
多価アルコ−ル類としては、例えばエチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、水素化ビスフェノ−ルA、1,4−ブタンジオ−ル、ビスフェノ−ルAとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、1,3−プロパンジオ−ル、1,2−シクロヘキサングリコ−ル、1,3−シクロヘキサングリコ−ル、1,4−シクロヘキサングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、パラキシレングリコ−ル、ビシクロヘキシル−4,4'−ジオ−ル、2,6−デカリングリコ−ル、2,7−デカリングリコ−ル等を挙げることができる。
【0013】
本発明で用いられるエポキシ(メタ)アクリレートとは、エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレートをいい、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを反応させることにより得ることができる。具体的には、例えば、ビスフェノール・タイプのエポキシ樹脂、ビスフェノール・タイプのエポキシ樹脂及びノボラック・タイプのエポキシ樹脂、1,6−ナフタレン型エポキシ樹脂等、その平均エポキシ当量が、好ましくは150〜450なる範囲内にあるようなエポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸とを、エステル化触媒の存在下で、反応せしめることにより得られる。
【0014】
ビスフェノール・タイプのエポキシ樹脂として特に代表的なものを挙げれば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド付加型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート、1,6−ナフタレン型エポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0015】
また、前記したノボラックタイプのエポキシ樹脂としては、特に代表的なものを挙げれば、フェノール・ノボラック又はクレゾール・ノボラックと、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂などである。
【0016】
さらに、前記した不飽和一塩基酸として特に代表的なものを挙げれば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、ソルビン酸、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート、又はモノ(2−エチルヘキシル)マレートなどがある。
【0017】
なお、これらの不飽和一塩基酸は、単独使用でも2種以上の併用でもよい。
前記したエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応は、好ましくは、60〜140℃、特に好ましくは、80〜120℃なる範囲内の温度において、エステル化触媒を用いて行われる。
【0018】
エステル化触媒としては、公知慣用の化合物が、そのまま使用できるが、そのうちでも特に代表的なもののみを挙げるにとどめれば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリンもしくはジアザビシクロオクタンの如き、各種の3級アミン類;又はジエチルアミン塩酸塩などである。
【0019】
かかるエポキシ(メタ)アクリレートの数平均分子量としては、好ましくは、450〜2,500、特に好ましくは500〜2,200なる範囲内が適切である。数平均分子量がこの範囲であれば、得られる硬化物に粘着性が生じたりすることなく、強度物性が低下せず、硬化時間が適正で、生産性の低下も起こらない。
【0020】
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリル化合物とを反応させることにより得ることができる。
かかるポリオールとしては、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物等のポリエーテルポリオール、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0021】
ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体又は異性体の混合物(以下TDIと略す)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。また市販品としては、バーノックDー750、クリスボンNX(大日本インキ化学工業(株)製品)、デスモジュールL(住友バイエル(株)社製品)、コロネートL(日本ポリウレタン社製品)、タケネートD102(武田薬品工業(株)社製品)、イソネート143L(三菱化学(株)社製)等を挙げることができる。前記ポリイソシアネートを単独又は2種以上で使用することができる。これらのポリイソシアネートのうちジイソシアネート、特にTDIが好ましく用いられる。
【0022】
水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。かかる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の様な水酸基を2個有するアルコールのモノ(メタ)アクリレート類;α−オレフィンエポキサイドと(メタ)アクリル酸の付加物、カルボン酸グリシジルエステルと(メタ)アクリル酸の付加物;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の様な3個以上の水酸基を有するアルコールの部分(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0023】
また水酸基含有(メタ)アクリル化合物の一部を、本発明の効果を損なわない程度の範囲で、水酸基含有アリールエーテルや高級アルコール等の化合物で置換しても良い。
【0024】
水酸基含有アリールエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールモノアリールエーテル、トリエチレングリコールモノアリールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリールエーテル、プロピレングリコールモノアリールエーテル、ジプロピレングリコールモノアリールエーテル、トリプロピレングリコールモノアリールエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリールエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリールエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリールエーテル、ヘキシレングリコールモノアリールエーテル、オクチレングリコールモノアリールエーテル、トリメチロールプロパンジアリールエーテル、グリセリンジアリールエーテル、ペンタエリスリトールトリアリールエーテル等の多価アルコール類のアリールエーテル化合物等が挙げられるが、これらのうち、水酸基を1個有するアリールエーテル化合物が好ましい。
【0025】
高級アルコールとしては、公知慣用のものが使用できるが、中でも代表的なものは、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0026】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートの製造方法としては、例えばポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを、好ましくは数平均分子量が500〜30,000、特に好ましくは700〜5,000になるように、当量比NCO/OH=2〜1.5で反応させ、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを生成し、次いでそれに水酸基含有アクリル化合物を該プレポリマーのイソシアネート基に対して水酸基がほぼ当量となるように反応させる方法が挙げられる。
【0027】
さらに、まず水酸基含有アクリル化合物とポリイソシアネートとを反応させ、次いで得られたイソシアネート基含有化合物とポリエーテルポリオールとを反応させて、好ましくは数平均分子量500〜30,000、より好ましくは700〜5,000のウレタン(メタ)アクリレートを製造する方法が挙げられる。
【0028】
本発明に使用する反応性不飽和二重結合を有する単量体とは、ラジカル重合性不飽和結合を分子内に有する所謂反応性希釈モノマーをいい、具体的に一例を挙げれば、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ジアリールフタレ-ト、トリアリールシアヌレ-ト、さらにアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2ーエチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2ーエチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ2ーエチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、PTMGのジメタアクリーレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAEO変性(n=2)ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性(n=3)ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート等の、重合性不飽和単量体或いは不飽和オリゴマー等が挙げられる。これら重合性不飽和単量体等は、単独でも2種類以上組み合わせて使用しても良い。
【0029】
本発明に使用するエチレン尿素は、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)との合計100重量部に対し0.01〜5重量部の範囲で添加することが好ましい。添加量が0.01重量部未満であるとホルマリン捕捉能力が十分でなく、また5重量部を越えると、得られる硬化物の物性および硬化性に悪影響を及ぼすことになる。
本発明は、エチレン尿素を、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)に、35〜250℃の温度にて添加し溶融するか、又1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)に、35〜250℃の温度にて直接添加するものである。これらの添加方法のうち、前者の方法が好ましい。後者の方法では、エチレン尿素を添加した後にエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)を添加し溶融することが好ましい。また前記温度範囲のうち、50〜250℃の温度範囲が好ましい。
【0030】
エチレン尿素を室温でエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)等に添加しただけでは、溶解性が悪くホルマリン捕捉効果が得られない。温度が35℃未満では、溶解性が十分でなく、また250℃を越えると、エチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)の熱安定性の観点より、ゲル化等の不具合が発生する場合があり、前記温度範囲内にて添加し溶融させることが必要である。
またエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)の物性を維持するためには、エチレン尿素を他の物質と混合することなく、これ単独でエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)に添加することが好ましい。
【0031】
エチレン尿素は、室温では、ラジカル重合性樹脂組成物に対する溶解性が低く、メタノール等の極性溶媒に一端溶解させてから添加することができるが、エチレン尿素を溶解させるために用いるメタノール等の溶剤は、ラジカル重合性樹脂組成物の硬化性、物性に悪影響を及ぼすため問題である。本発明は、これらの溶剤等と事前に混合することなく、エチレン尿素を直接、35〜250℃の温度で、エチレン性不飽和二重結合を有する樹脂又はエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂およびエチレン性不飽和単量体に溶融溶解させるものである。かかる操作を行うことにより、硬化性、物性を損なうことなく、硬化の際のホルムアルデヒドの発生を抑制できるラジカル重合性樹脂組成物を提供することができる。
【0032】
前記エチレン尿素のエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂への溶融方法は、特に限定されないが、溶媒がエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂のみの場合は、エチレン性不飽和二重結合を有する樹脂を製造中あるいは製造後に、35〜250℃の温度にて樹脂に添加し、溶融溶解することが好ましい。250℃を越える温度では、ゲル化の懸念が考えられ好ましくない。また35℃に達しない場合は、通常、エチレン尿素の溶解性が乏しく、溶解に時間がかかる。
【0033】
またエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂をエチレン性二重結合を有する単量体、特にスチレンに希釈溶解させた後、エチレン尿素を溶融溶解させる場合は、35〜160℃の温度下で行うのが好ましい。特に使用するエチレン性二重結合を有する単量体の種類に応じて、必要な温度状態に保ちながら、エチレン尿素を添加溶融させることができる。スチレンを用いた場合、160℃を越える温度では、長時間この温度状態を保つと、ゲル化の懸念がある。このため、80℃付近の温度でできるだけ短時間で、溶融溶解させることが好ましい。この際、減圧条件下で溶融させることもできる。
【0034】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物を得るための装置は、特に制限されないが、通常のクッキング反応釜、あるいは、エチレン性不飽和二重結合を有する樹脂をエチレン性二重結合を有する単量体に希釈するためのシンニング釜を用いることができ、攪拌翼形状も含め、既存のエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂を製造する際の設備を用いることができる。
【0035】
ホルムアルデヒドを捕捉する能力を有する、所謂ホルムアルデヒド捕捉材としては、分子骨格中に尿素結合を有する化合物、ウレタン結合を有する化合物、ヒドラジド化合物等を添加することで効果があることが確認されているが、本発明者は、ラジカル重合・硬化に伴い発生するホルムアルデヒドを、効果的に捕捉し、樹脂への溶解性、原料汎用性、成形品への物性影響が少ない等を考慮すると、エチレン尿素が最適であることを見出したものである。
【0036】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物には、通常硬化剤、すなわちラジカル重合開始剤、及び硬化促進剤、すなわちラジカル重合促進剤が添加される。
【0037】
かかる硬化剤としては、熱硬化剤や光硬化剤が挙げられる。熱硬化剤としては、有機過酸化物が挙げられ、例えばジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等、公知公用のものが挙げられる。熱硬化剤の添加量は、本発明の目的を達成することのできる範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは本発明に用いられる樹脂の合計量100重量部に対して0.5〜5重量部であり、かかる範囲で使用することで可使時間、物性等の優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
かかる光硬化剤としては、例としてベンゾインアルキルエーテルのようなベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系等が挙げられる。光硬化剤の添加量は、好ましくは本発明に用いられる樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜3重量部である。
【0039】
また、硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等金属石鹸類、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4-(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4-(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられる。これらの硬化促進剤のうち、アミン類、金属石鹸系類が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独又は2種以上の組み合わせで使用しても良い。またこれらの硬化促進剤は、予め樹脂に添加しておいても良いし、使用時に添加しても良い。硬化促進剤の添加量は、本発明の目的を達成することのできる範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは本発明に用いられる樹脂の合計量100重量部に対して0.1〜5重量部である。
またアミン類は、本発明の効果を発現する上で併用することが好ましい。
【0040】
さらに硬化速度を調整するため、重合禁止剤などを使用することができる。
重合禁止剤としては、例えばトリハイドロベンゼン、トルハイドロキノン、14−ナフトキノン、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を挙げることができる。重合禁止剤の添加量は、本発明に用いられる樹脂に対して10〜1000ppm添加するのが好ましく、50〜200ppm添加するのがさらに好ましい。かかる範囲で使用することで貯蔵安定性、作業性、強度発現性の優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0041】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、所謂タレ止め樹脂として幅広い用途への展開が可能になる点で、チキソ付与材を含んでいることが好ましい。
かかるチキソ材付与材としては、例えばシリカ粉末、アスベスト、スメクタイト硫酸カルシウムウィスカー等が挙げられる。必要に応じて前記の2種以上を併用しても良い。
チキソ付与材の市販品としては、レオロシールQSシリーズ((株)トクヤマ製)、アエロジルシリーズ(日本アエロジル(株)社製)BENATHIXシリーズ(ウィルバーエリス社製、CABOSILシリーズ(CABOT社製)、HDKシリーズ(WACKER社製)、FRANKLIN FIBER(USG社製)等が使用できる。
【0042】
前記チキソ付与材は、本発明のラジカル重合性樹脂組成物100重量部に対し、0.5〜5重量部の範囲で添加することができる。チキソ付与材が前記範囲であれば、タレ止め効果が十分であり、樹脂の粘性が適正である。
【0043】
更に必要により顔料あるいは顔料を予めビヒクルとペースト状にした顔料ペーストを添加して着色することができる。着色は、単一色、透明、半透明、部分的に透明、部分的に半透明であってもよい。又、着色、デザイン、柄等の加飾手段の有無については特に限定するものではない。
【0044】
本発明の繊維強化成形品は、前記ラジカル重合性樹脂組成物と繊維強化材とを含む成形材料を成形してなるものである。
かかる繊維強化材としては、例えばガラス繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、カーボン繊維、金属繊維等が挙げられる。これらを単独又は2種以上組合せて使用することができる。また、繊維の形態は、クロス、ロービングクロス、ロービングをカットしたストランド、ショップドストランドマット、ロービングクロスとチョップドストランドを縫い合わしたペアマット等、繊維による補強硬化が得られるものであれば特に限定するものではない。
【0045】
繊維強化成形品を得るための成形法は、特に制限されないが、例えばハンドレイアップ、スプレーアップ成形、RTM(レジントランスファーモールディング)成形、バキュームアシスト成形、連続成形、引き抜き成形等にて、所望の設計強度、弾性率が得られるまで、補強し用いることができる。具体的には、ハンドレイアップ法は、繊維長が約2インチのチョップドストランドマット及び又はロービングクロス等に、スプレーアップ成形法は、約1インチのチョップドストランド等の繊維強化材に硬化促進剤、硬化剤を配合したラジカル硬化性不飽和樹脂の含浸脱泡作業を繰り返し、常温あるいは加熱により硬化させるものである。また、RTM成形は、プリフォームガラスマット、ロービングクロス等をあらかじめ型にチャージし、硬化促進剤、硬化剤を配合したラジカル硬化性不飽和樹脂を注入成形するものである。連続成形法とは、キャリアフィルム上にラジカル硬化剤を配合したラジカル重合性樹脂組成物を塗布しチョップドストランドを供給した後、キャリアフィルムで樹脂を覆い、含浸、脱泡し硬化炉へ連続的に送り硬化させ成形させる方法である。引き抜き成形法とは、ラジカル硬化剤を配合したラジカル重合性樹脂組成物を含浸したガラス等の繊維基材を所望の形状の金型に通過させ、硬化、成形しながら連続的に所謂、引き抜く成形方法である。これらの成形法のうち、本発明のラジカル硬化性樹脂組成物にたれ止めを添加した、所謂チキソ樹脂として、ハンドレイアップ、スプレーアップによる成形法を用いる場合が好ましい。
このようにして得られる繊維強化成形品としては、特に制限されるものではないが、例えば、室内成形品、トップコート、ライニング材、接着剤、ボート、自動車部品、自動2輪車部品、屋内部材、バスタブ、防水パン、キッチンカウンター、洗面カウンター、洗面化粧台、各種人造大理石成形品、セパレート板、波板、平板等であり、特に製品、用途、を限定するものではない。
【実施例】
【0046】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本文に「部」、「%」とあるのは、重量部、重量%を示す。
【0047】
[ラジカル重合性樹脂の調製]
(参考例1)不飽和ポリエステル樹脂の調整
撹拌機、還流冷却塔、不活性ガス導入管、温度計、及び滴下装置を備えた2リットルの四口フラスコに、ジシクロペンタジエン746部、無水マレイン酸554部を仕込み、125℃まで昇温した後、水102部を1.5時間かけて滴下し、120〜130℃の温度で酸価が220となるまで反応した。次に、ジエチレングリコール300部を仕込み、徐々に205℃まで昇温し酸価が20KOHmg/gになったところで終了した。このものに安定剤としてトルハイドロキノノン、ターシャリーブチルカテコールを仕込み、スチレンにより希釈溶解させ、ラジカル重合性樹脂(1)を得た。
【0048】
(参考例2)
窒素ガス導入管、還流コンデンサ、攪拌機を備えた2Lのガラス製フラスコに、プロピレングリコール201g、ネオペンチルグリコール260g、イソフタル酸415g仕込み、窒素気流下、加熱を開始した。内温210℃にて、常法にて脱水縮合反応を行い、ソリッド酸価5KOHmg/gになるまで反応を行った。その後、樹脂温度を180℃まで冷却し、無水マレイン酸245gを同フラスコに仕込み、同様に窒素気流下、加熱を開始し、内温200℃にて、常法にて脱水縮合反応を行った。ガードナー粘度がQ〜R(ソリッド/スチレン=70/30重量比率で希釈しソリッドの縮合度を確認)、酸価が15KOHmg/gになったところで、180℃まで冷却し、トルハイドロキノン、ターシャリブチルカテコールを添加した。さらに150℃まで冷却し、不飽和ポリエステルが得られた。これをスチレンで希釈溶解させ、ラジカル重合性樹脂(2)を得た。
【0049】
(実施例1)
参考例1で得られたラジカル重合性樹脂(1)100部を、マントルヒーターに設置した攪拌機を備えた1Lフラスコに投入し、樹脂液の温度を80℃まで加熱した後、エチレン尿素を1.5部添加し、30分間樹脂液を良く攪拌し、エチレン尿素を溶解させ、完全な均一なラジカル重合性樹脂組成物を得た。その後、得られた樹脂液を冷却して、40℃以下とし、フラスコから取り出した。このラジカル重合性樹脂組成物100部に対し、硬化促進剤として6%ナフテン酸コバルト(大日本インキ化学工業製)0.5部、ジメチルアニリン0.2部、チキソ付与材としてアエロジル#200(日本アエロジル製)1部、消泡剤、禁止剤を添加調合し、ディスパー攪拌機により混練処理を行い、チキソ付与されたラジカル重合性樹脂組成物を得た。
このラジカル重合性樹脂組成物100部に対し、ラジカル硬化剤として、パーメックN(メチルエチルケトンパーオキサイド、日本油脂(株)製)1.0部を配合し、良く攪拌した後、ガラス板の上にラジカル重合性樹脂組成物を載せ、その上に繊維強化材であるチョップドストランドマット(日東紡(株)製)450g/m2を置き、含浸ローラーを用い、気泡を抜きながら通常言われるハンドレーアップ積層成形を行った。この操作を繰り返し行うことにより、厚さ約3mmに積層を行い、その後室温自然硬化させ、FRP成形品を得た。
この成形品を用い、後述する方法にてホルマリン放散量の測定、評価を行った。
【0050】
(実施例2)
参考例2で得られたラジカル重合性樹脂(2)100部を、マントルヒーターに設置した攪拌機を備えた1Lフラスコに投入し、樹脂液温度を80℃まで加熱後、更にエチレン尿素を1.5部添加し、30分間樹脂液を良く攪拌し、エチレン尿素を溶解させ完全な均一なラジカル重合性樹脂組成物を得た。その後、得られた樹脂液を冷却し、40℃以下とし、フラスコから取り出した。このラジカル重合性樹脂組成物100部に対し、硬化促進剤として6%ナフテン酸コバルト0.3部を添加調合攪拌し、ラジカル硬化剤として、パーメックN1.0部を配合し、良く攪拌した後、実施例1と同様に、ガラス板の上に、硬化剤の入ったラジカル重合性樹脂組成物を載せ、その上に繊維強化材であるガラスマット450g/m2チョップドストランドマットを置き、含浸ローラーを用い、気泡を抜きながら通常言われるハンドレーアップ積層成形を行い、この操作を繰り返し行い、厚さ約3mmに積層を行い、その後室温自然硬化させ、FRP成形品を得た。
【0051】
(比較例1)
実施例1で用いた樹脂(1)にホルムアルデヒド捕捉材を添加しない以外は、実施例1と同様にホルムアルデヒド放散量等の評価を行った。
(比較例2)
実施例2で用いた樹脂(2)にホルムアルデヒド捕捉材を添加しない以外は、実施例2と同様にホルムアルデヒド放散量等の評価を行った。
(比較例3)
実施例1で用いた樹脂(1)にエチレン尿素を25℃にて添加し攪拌したが、エチレン尿素の結晶が樹脂液の底に沈殿し、不均一な溶解していない状態であり、その後の測定を中止した。
(比較例4)
実施例1で用いた樹脂100部(1)に、エチレン尿素を予めメタノールに溶解させエチレン尿素(1.5g)の10%メタノール溶液とし、樹脂(1)に添加し、ラジカル重合性樹脂組成物として、以後、実施例1と同様、ホルムアルデヒド揮散量の評価、および物性の評価を行った。物性において、機械的強度および熱変形温度が低下してしまっていることが確認された。
【0052】
[評価方法]
前記実施例で得られたラジカル重合性樹脂組成物について、硬化状態、ホルムアルデヒド放散量について測定評価した。測定方法及び評価基準は以下のとおりである。実施例1、2および比較例1〜4の結果は、それぞれ表−1及び表−2に示す。
【0053】
<注型板物性評価>
前記実施例で得られたラジカル重合性樹脂組成物に、ラジカル硬化剤としてパーメックN1%添加混合し、ガラス板を用いて厚み3mmの樹脂注型板を作成し、常温で24時間放置して、硬化させた後、120℃で2時間後硬化を行い、物性評価用の試験片を作成した。
引張り強度物性は、注型板のJIS−K−7113に準じ測定し評価した。
また熱変形温度は、JIS−K−7207に準じ評価した。
物性は、エチレン尿素を添加する前の物性と比較し、強度および熱変形温度の保持率が70%以上であるものを○、それ未満のものを×として評価した。
【0054】
<硬化性評価>
前記実施例で得られたラジカル重合性樹脂組成物を試料として、ゲルタイムにより硬化状態を評価した。
ゲルタイムは、容量100mlのデスカップに、各実施例で得られたラジカル重合性樹脂組成物を50g計量し、実施例、比較例の配合比率にて6%ナフテン酸コバルトを添加して25℃温度に調整した後、パーメックNを添加した。これを25℃の恒温槽に浸漬し、ゲルが発生して攪拌棒から樹脂が糸切れ状態になるまでの時間をゲルタイムとした。
通常の樹脂である比較例でのゲルタイムに比較し100%を越えて著しいゲルタイムの延長がある場合を×として評価した。100%以内のゲル化時間の延長の起こらないものを○とした。
【0055】
<ホルムアルデヒド放散量評価>
前記実施例で得られたFRP成形品を150mm×150mmの大きさに切り出したFRP積層板(3mm厚み)を試料として、ホルムアルデヒド放散量を測定評価した。積層後、室温で24時間放置し、7日後のホルムアルデヒドの揮散量を測定した。測定法は、JIS K 5601−4−1デシケーター法に準じて行い、積層板の表面積により、測定値を除し、mg/リッターの単位として算出し比較を行った。測定は、室温(23℃)、湿度50%の環境試験室内で全て行った。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)及びエチレン尿素を含んでなるラジカル重合性樹脂組成物であって、前記エチレン尿素が、1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)の合計100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、かつ1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)、又は1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)との混合物に、35〜250℃の温度下に前記エチレン尿素を添加し溶融させてなることを特徴とするラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項2】
前記1分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)との混合物に、35〜250℃の温度下に前記エチレン尿素を添加し溶融させる請求項1記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)がスチレンであり、35〜160℃の温度下に前記混合物に、前記エチレン尿素を添加し溶融させる請求項1又は2記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項4】
さらにチキソ付与材を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項5】
チキソ付与材の含有量が、前記エチレン性不飽和二重結合を有する樹脂(A)及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(B)の合計100重量部に対し、0.1〜5重量部である請求項4記載のラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のラジカル重合性樹脂組成物と繊維強化材とを含む成形材料を成形してなる繊維強化成形品。



【公開番号】特開2006−282690(P2006−282690A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100610(P2005−100610)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】