説明

ラチェット式伸縮杖

【課題】ラチェット式の伸縮杖でありながら、外パイプの穴は常にボタンにより塞がれるようにするとともに、外パイプに不要な穴を開けないようにし、係合穴からパイプ内にゴミや埃が入るのを防ぐとともに、多数の係合穴がパイプに施した装飾の邪魔とならないようにする。
【解決手段】外パイプとその外パイプ内を摺動する内パイプにより伸縮可能とした杖において、内パイプに所望間隔でパイプ内からパイプ外にバネの力により出没可能なボタンをパイプ長手方向に複数配設するとともに、外パイプに一個のみ前記内パイプのボタンと係合する係合穴を形成し、また内パイプのボタンを配設した箇所の内パイプの外周に目印となるライン又は(及び)記号を付した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長さ調整が可能な伸縮式の杖に関するものであり、特に内パイプと外パイプの固定を内パイプに設けた出没可能なボタンを使用するラチェット式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、出没可能なボタンを使用したラチェット式の伸縮杖においては、図8に示すように外パイプAに多数の係合穴Bを形成し、内パイプCには出没可能なボタンDを一個配設し、内パイプCのボタンDを外パイプAの任意位置の係合穴Bに係合させるようにして杖の長さを調整している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の外パイプに多数の係合穴を形成したものの場合、使用していない穴(ボタンが係合していない穴)からゴミや埃が入り、これが内パイプと外パイプの間に入り込んでしまい、結果として内パイプに傷がついたり内パイプのスムーズな摺動の妨げとなっている。
【0004】
また、最近の杖はパイプの外側に各種装飾を施したものがあり、このようなものの場合外パイプに多数の穴が開けられていると、せっかくの装飾の邪魔をすることにもなっている。
【0005】
すなわち、ラチェット式の伸縮杖でありながら、外パイプの穴は常にボタンにより塞がれるようにするとともに、外パイプに不要な穴を開けないようにできれば上記課題が解決できるとともに、表面がシンプルなものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこでこの発明に係るラチェット式伸縮杖は上記課題を解決するために、外パイプとその外パイプ内を摺動する内パイプにより伸縮可能とした杖において、内パイプに所望間隔でパイプ内からパイプ外にバネの力により出没可能なボタンをパイプ長手方向に複数配設するとともに、外パイプに一個のみ前記内パイプのボタンと係合する係合穴を形成した(請求項1)ものである。
【0007】
さらに、内パイプのボタンを配設した箇所の内パイプの外周に目印となるライン又は(及び)記号を付した(請求項2)ものである。
【0008】
また上記に加え、内パイプに配設したボタンは、相隣接するボタンが円周方向で反対位置となるようにした(請求項3)ものである。
【発明の効果】
【0009】
外パイプには係合穴を一個しか形成せず、しかもこの穴は常時ボタンと係合することにより塞がれているので、この穴からパイプ内にゴミや埃が入ることがない。また、外パイプには係合穴が一個しかないので、外パイプの装飾を阻害することがなく、杖の外観をシンプルなものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
内パイプに所望間隔でパイプ内からパイプ外にバネの力により出没可能なボタンをパイプ長手方向に複数配設する。一方、外パイプには一個のみ前記した内パイプのボタンと係合する係合穴を形成する。また内パイプのボタンを配設した箇所の内パイプの外周には、ボタン位置を示す目印となるようにラインや記号を付しておく。
【実施例1】
【0011】
次に、本発明に係るラチェット式伸縮杖の一実施例を図1〜図3に基づいて説明する。内パイプ1は外パイプ2に対して摺動可能となっていてストッパー3を緩めることにより杖の長さが調整可能なところは従来のものと同じであるので詳しい説明は省略する。
【0012】
内パイプ1には図2に示すようにパイプ長手方向に所望間隔でパイプ内からパイプ外にバネ4の力により出没可能なボタン5が複数配設してある。図示した例ではボタン5の数は四個としてあるが、いくつでもよい。また、外パイプ2には一個のみ前記した内パイプ1のボタン5と係合する係合穴6が形成してある。なお、ボタン5やバネ4は従来のものとその構造は格別変わるものではなく、バネとしては図示したもののほか板バネやコイルスプリング等でもよい。
【0013】
また、場合によってはボタン5の位置を探し易くするために図7に示すように、内パイプ1のボタン5を配設した箇所の内パイプ1の外周には、ボタン位置を示す目印となるようにライン7や記号8を付しておく。ライン7や記号8をボタン5ごとに変えておくと、何番目のボタン5が外パイプの係合穴6と係合しているのかが分かり易くなる。また、図2に示すようにボタン5を直線状に配した場合は各ボタン5を結ぶような直線のラインを付しておいてもよい。
【0014】
そして、図3に示すように内パイプ1を外パイプ2に挿入し、任意のボタン5を外パイプ2の係合穴6と係合させる。すると、この位置において内パイプ1は外パイプ2に固定される。また、他の係合していないボタン5は内パイプ1内に引っ込み、外パイプ1の内周に対しバネ4の力により押しつけられた状態となり、内パイプ1が外パイプ2に対してがたつくのを防ぐ役割もする。
【実施例2】
【0015】
基本的には上記実施例1と同じであるが、本実施例は図4〜図7に示すようにボタン5は、相隣接するボタン5がパイプ円周方向で反対位置となるようにしてある。
【0016】
ボタン5を上記実施例1のように片側に一列に設けると、ボタン5が片側にのみあるためバネ4の力でボタン5が外パイプ2の内周を強く押すことにより、場合によってはボタン5と反対側の位置の内パイプ1の外周が外パイプ2の内周と擦れることにより、内パイプ1の外周に傷がつくとともに伸縮操作も固くなることがあるからである。内パイプ1の両側にボタン5を設けるようにしておくと、内パイプ1の外周が外パイプ2の内周と擦れることが防止できることになる。
【0017】
また、内パイプ1のスライド時にボタン5の配設位置が認識できるようにするために、図7に示すようにライン7や記号8(図示した例ではボタンの位置を示す数字)を内パイプの表面に付しておく。そうすると、図6に示すように内パイプ1スライド時に係合穴6からライン7や記号8が見えることによりボタン5の位置を容易に見つけ出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
従来のラチェット式伸縮杖と同等以上の操作性を確保しつつ、ゴミや埃の侵入防止と外観のシンプル化を可能とすることができる。そして、このような伸縮性を要するものについては、杖に限らず他のものについても応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のラチェット式伸縮杖の一例を示した斜視図である。
【図2】本発明の内パイプのボタン構造を示す断面図である。
【図3】図2の内パイプと外パイプの係合状態を示す断面図である。
【図4】本発明の内パイプのボタン構造の他例を示す断面図である。
【図5】図4の内パイプと外パイプの係合状態を示す断面図である。
【図6】外パイプの穴から内パイプの記号を見た状態を示す正面図である。
【図7】内パイプのボタン配設箇所付近の正面図である。
【図8】従来のラチェット式伸縮杖の一例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 内パイプ
2 外パイプ
3 ストッパー
4 バネ
5 ボタン
6 係合穴
7 ライン
8 記号
A 外パイプ
B 係合穴
C 内パイプ
D ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外パイプとその外パイプ内を摺動する内パイプにより伸縮可能とした杖において、内パイプに所望間隔でパイプ内からパイプ外にバネの力により出没可能なボタンをパイプ長手方向に複数配設するとともに、外パイプに一個のみ前記内パイプのボタンと係合する係合穴を形成したことを特徴とするラチェット式伸縮杖。
【請求項2】
内パイプのボタンを配設した箇所の内パイプの外周に目印となるライン又は(及び)記号を付した請求項1記載のラチェット式伸縮杖。
【請求項3】
内パイプに配設したボタンは、相隣接するボタンが円周方向で反対位置となるようにした請求項2記載のラチェット式伸縮杖。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−54896(P2008−54896A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234939(P2006−234939)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(502163797)有限会社テクノケア (1)
【Fターム(参考)】