説明

ラチェット機構及び発電機を駆動するための発電機駆動装置

【課題】打音の発生を抑制でき、使用環境を問わない汎用性の高いラチェット機構及発電機用駆動装置を提供する。
【解決手段】外周部にギア部が刻設され、回転可能に支持されるラチェットギア組立体と、前記ラチェットギア組立体の回転を一方向に規制するように前記ギア部と噛み合う爪部を有するストッパと、前記ギア部と爪部とが衝突することで生じる打音を抑制する打音抑制手段と、を備え、前記打音抑制手段は、樹脂材料から形成されることを特徴とするラチェット機構及び発電機を駆動するための発電機駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてラチェット機構及び発電機を駆動するための発電機駆動装置に関し、ストッパとラチェットギア組立体とが衝突する際に生じる打音の発生を抑制できるラチェット機構及び発電機を駆動するための発電機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ラチェット機構は、工具、計測器、工作機械、原動機、発電機といった種々の技術分野で利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、発電機を駆動するための発電機駆動装置に適用された従来のラチェット機構を開示する。錘昇降用チェーンが二次シャフトに支持されたスプロケットに掛け回されている。スプロケットは、回転可能なハウジングに設けられた金属製のストッパと金属製のラチェットギアとを備えるラチェット機構によって、二次シャフトに対して錘が上昇する方向にのみ回転するように支持されている。
【0004】
上記構成の発電機駆動装置では、錘を上昇させるときにラチェット機構のハウジングが回転する方向では、ストッパがラチェットギアに噛み合わず、ラチェットギアは回転せず二次シャフトに対して回転力が伝達されない。反対に、錘が下降するときには、ラチェット機構のハウジングが回転する方向では、ストッパがラチェットギアに噛み合い、ラチェットギアの回転力が二次シャフトに伝達され、二次シャフトに連結された発電機により発電がなされる。
【0005】
【特許文献1】特開2007−205266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のラチェット機構では、ラチェットギアとストッパとが噛み合う方向に回転する際には、その噛み合う時の打音が生じ、そして、ラチェットギアとストッパとが噛み合わない方向に互いに相対回転するとき、ラチェットギアのギア部とストッパの爪部とが衝突することにより打音が発生する。この打音の大きさによっては、場所や時間といった観点から、ラチェット機構及び発電機駆動装置の使用が制限される可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、打音の発生を抑制でき、使用環境を問わない汎用性の高いラチェット機構及びラチェット機構を備える発電機用駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明のラチェット機構の第1の態様は、外周部にギア部が刻設され、回転可能に支持されるラチェットギア組立体と、前記ラチェットギア組立体の回転を一方向に規制するように前記ギア部と噛み合う爪部を有するストッパと、前記ギア部と爪部とが衝突することで生じる打音を抑制する打音抑制手段と、を備え、前記打音抑制手段は、樹脂材料から形成されること特徴とする。
【0009】
さらに、本発明のラチェット機構の第2の態様によれば、前記打音抑制手段は、前記ギア部及び前記爪部の少なくとも一方の所定領域に形成され、前記所定領域とは、前記ギア部と爪部とが互いに接触する領域であることを特徴とする。
また、本発明のラチェット機構の第3の態様によれば、前記打音抑制手段は、前記ラチェットギア組立体と同心で回転可能に支持される打音抑制ギアであり、前記打音抑制ギアは、前記ラチェットギア組立体の外周部と相似形状で僅かに大きく寸法づけされた外周部を有し、前記ストッパの爪部は、前記ラチェットギア組立体のギア部より先に、前記打音抑制ギアのギア部に衝突すること特徴とする。
【0010】
さらに、本発明のラチェット機構の第4の態様によれば、前記ラチェット組立体は同心で一体的に回転する2つのラチェットギアを有し、前記打音抑制ギアは前記2つのラチェットギアに挟まれるように配置されることを特徴とする。
【0011】
さらに、上記課題を解決するための本発明の発電機を駆動するための発電機駆動装置の第1の態様は、2つの錘と、前記2つの錘にそれぞれ連結される牽引部材と、駆動源からの駆動力により回転する駆動端と、前記駆動端に対する従動端と、前記駆動端と前記従動端との間に架け渡され往復運動する無端移動部材と、を有する2つの無端搬送手段と、前記無端移動部材に連結され、前記牽引部材に引張力を付与することにより前記2つの錘を上昇させる錘上昇手段と、前記錘上昇手段により前記2つの錘が交互に上昇するように前記駆動源からの駆動力を前記駆動端に伝達する駆動力伝達機構と、前記発電機を駆動するために前記発電機の入力部と前記従動端とに連結され、回転自在に支持される出力側シャフトと、前記出力側シャフトを所定方向にのみ回転させるように、前記出力側シャフトと前記2つの従動端との間に介在する、第1乃至第4の態様のいずれかに記載のラチェット機構と、を備えることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の発電機を駆動するための発電機駆動装置の第2の態様によれば、前記錘上昇手段は、一端部と他端部との間で支持され、前記一端部に前記牽引部材を介して前記錘が連結されている2つのアームを有し、前記2つのアームの他端部が前記無端移動部材に連結されることで、てこの作用を利用して前記錘を上昇させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、打音発生防止手段を備えているので、ラチェット機構の作動時に生じる打音の発生を抑制できる。よって、使用環境を問わず汎用性の高いラチェット機構及び発電機を駆動するための発電機駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態に係るラチェット機構の実施形態について、図1乃至図4を参照しつつ説明する。図1は、実施形態に係るラチェット機構1の正面一部断面図、図2は、図1の線I−Iに沿った断面図、図3は、ラチェットギア組立体5及び打音抑制ギア11の正面図、図4は、図3の線IV−IVに沿った断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、実施形態のラチェット機構1は、主として、外周部にギア部3が刻設され、回転可能なラチェットギア組立体5と、ラチェットギア組立体5の回転を一方向に規制するようにギア部3と噛み合う爪部7を有するストッパ9と、ギア部3と爪部7とが衝突することで生じる打音を抑制する打音抑制手段、すなわち打音抑制ギア11と、を備える。
【0016】
まず、ラチェットギア組立体5及び打音抑制ギア11について図3、図4を参照しつつ説明する。
【0017】
ラチェット組立体5は、第1のラチェットギア13と第2のラチェットギア15とを備える。打音抑制ギア11は、第1のラチェットギア13と第2のラチェットギア15との間に挟まれるようにして配置される。第1のラチェットギア13と、第2のラチェットギア15とは、互いに同形状、同寸法の円盤状であるので、第2のラチェットギア15について説明する。第2のラチェットギア15は、その外周部に等間隔で刻設された複数の歯により構成されるギア部3を有する。
【0018】
ギア部3の各歯は、直径方向に所定長さで延在する係合面17aと、係合面17aの頂点(歯先部)23aから隣りの歯の係合面17bの最下点(歯底部)23bまで延在し、半径方向外方に凸状に湾曲する湾曲面25と、により画成されている。
【0019】
打音抑制ギア11は、第2のラチェットギア15の外周部とほぼ相似形状で、わずかに大きく寸法付けされた外周部を有する。すなわち、打音抑制ギア11の外周部には、等間隔で複数刻設された歯により構成されるギア部27を有する。また、先に説明した第2のラチェットギア15のギア部3と同様に、ギア部27の各歯は、径方向に延在する係合面29aと、歯先部から隣りの歯の歯底部まで延在する湾曲面31と、から画成される。
【0020】
さらに、第1のラチェットギア13、第2のラチェットギア15及び打音抑制ギア11のそれぞれには、その中心に回転軸39(図1、2参照)を収容するための軸方向に貫通する貫通穴33、35、37が穿孔されている。また、打音抑制ギア11は、第1のラチェットギア13と第2のラチェットギア15との間に幅方向に挟んだ状態で、回転軸39に固定される。従って、第1のラチェットギア13と第2のラチェットギア15、打音抑制ギア11は、同心で一体的に回転する。
【0021】
また、ラチェットギア組立体5と打音抑制ギア11とが回転軸39に固定された状態は、図3、4に示されるように、打音抑制ギア11のギア部27が、第1のラチェットギア13、第2のラチェットギア15より半径方向外方に突出している。
【0022】
なお、第1のラチェットギア13と第2のラチェットギア15は、その厚さ寸法(図4の横方向長さ)を同じとし、打音抑制ギア11の厚さ寸法は第1のラチェットギア13と第2のラチェットギア15より大きくしているが、寸法はギアに必要な剛性、負荷等を考慮して適宜変更できることは言うまでもない。
【0023】
第1のラチェットギア13、第2のラチェットギア15及びストッパ9の材料としては、剛性、負荷等を考慮して鉄などの金属を適宜使用できる。特に、高負荷、高回転といった厳しい条件下で使用する場合には、炭素鋼及び合金鋼などを使用できる。
【0024】
また、打音抑制ギア11は、樹脂を用いることができる。特に摩擦係数が小さく、適度な剛性を有する、超高分子量ポリエチレン材(UHMW−PE)、MCナイロン材、テフロン(登録商標)と称されるポリフッ化エチレン系材料等を使用できる。
【0025】
再度、図1、2を参照して、ラチェット機構1のその他の構成要素について説明する。ラチェットギア組立体5及び打音抑制ギア11を収容するハウジング21は、中空円盤状のハウジング本体部22と、ハウジング本体部22に設けられストッパ9を収容するストッパ収容部41と、を有する。
【0026】
ハウジング本体部22には、その回転中心に沿って回転軸39をハウジング本体部22の内部に延在させるための軸穴19が設けられている。ハウジング本体部22の軸穴19が設けられている面にはチェーンを巻回できるスプロケット47が設けられている。
【0027】
ラチェットギア組立体5及び打音抑制ギア11は、ハウジング21に対して相対回転可能に支持される回転軸39に固定される。ハウジング本体部22の外周部には、ストッパ収容部41が径方向外方に突出して設けられている。ストッパ収容部41内には、ストッパ9がハウジング本体部22の径方向(図1、2の上下方向)に移動可能に配置されている。
【0028】
ストッパ9は、四角柱状の基部43と、基部43の一端部に設けられ、ラチェットギア組立体5を係止する爪部7と、を有する。爪部7は、ハウジング本体部22の径方向に沿って延びラチェット組立体5のギア部3の係合面17a(図3、4参照)に当接する係止面7aと、ハウジング本体部22の径方向に対して傾斜し、係止面7aに接続する傾斜面7bと、を有する。
【0029】
ストッパ9は、爪部7に対向する基部43の端部において、ばね45の一端部が装着されている。また、ばね45の他端部は、ストッパ収容部41の頂部41aに装着されている。さらに、ストッパ9がストッパ収容部41内からハウジング本体部22内に突出するように、ストッパ9に付勢力が掛かった状態になっている。従って、ストッパ9の爪部7は常に打音抑制ギア11のギア部27の外周に接触する方向に移動する。
【0030】
ハウジング21を矢印R方向に回転させると、爪部7の係止面7aと、ラチェットギア組立体5の係合面17a(14a)及び打音抑制ギア11の係合面29aとが噛み合い、ハウジング21の回転力がラチェットギア組立体5に伝達され、最終的に回転力は回転軸39に伝達される。反対に、ハウジング21を矢印R方向に対向する方向に回転させると、ストッパ9の係止面7aは、ラチェット組立体5の係合面17a(14a)及び打音抑制ギアの係合面29aに噛み合うことなく空転し、ハウジング21の回転力は、ラチェットギア組立体5に伝達されない。
【0031】
ところで、図1のR方向の回転力がハウジング21に伝達されると、ラチェットギア組立体5及び打音抑制ギア11にストッパ9が噛み合う。この時、爪部7の係止面7aは、まず、第1ラチェットギア13及び第2のラチェットギア15より外径の大きい打音抑制ギア11の係合面29aに係合する。そして、打音抑制ギア11が、ストッパ9による荷重により撓むことで、最終的に第1ラチェットギア13の係合面14a及び第2のラチェットギア15の係合面17aに係合する。
【0032】
このように、金属製であるストッパ9からの衝撃を打音抑制ギア11が吸収した後に、ストッパ9が金属製である両ラチェットギア13、15に衝突する際には、衝撃が和らいでいるので、ストッパ9とラチェットギア組立体5との間で発生する打音を抑制することができる。
【0033】
また、図1において、R方向に対向する方向にハウジング21が回転すると、爪部7を画成する傾斜面7bが打音抑制ギア11の湾曲面31(図3参照)を摺動し、係合面17aを飛び越え、隣の湾曲面に衝突することになる。この場合でも、ストッパ9の爪部7が、打音抑制ギア11上を摺動するか、第1のラチェットギア13及び第2のラチェットギア15に当接するにしても、打音抑制ギア11により衝撃が和らいでいるので、ラチェットギア組立体5とストッパ9との間で生じる打音を格段に抑制することができる。
【実施例】
【0034】
次に、上記説明した実施形態に係るラチェット機構1を発電機駆動装置に適用した実施例について図5、6を参照して説明する。図5は、実施例に係る発電機駆動装置101の概略構造を示す平面図であり、図6は、実施例に係る発電機駆動装置101の概略構造を示す正面図である。なお、図5では、一部構成を別個に示し、図6では、発電機駆動装置101の構成を明確にするため第2の揺動アーム211、移動ピン167、錘昇降チェーン207を一点鎖線で示している。また、構造の明瞭化のため、フレームや軸受などは、図面から割愛している。
【0035】
発電機駆動装置101は、駆動源である駆動モータ109の駆動力を発電機103に伝達するために用いるものである。発電機駆動装置101は、主として、2つの錘105、205と、それぞれ一端部が錘105、205に連結された錘昇降チェーン(牽引部材)107、207と、駆動モータ109からの駆動力により回転する駆動端である第6のスプロケット147と、第6のスプロケット147に対する従動端である第7のスプロケット47と、第6のスプロケット147と第7のスプロケット47との間に架け渡され往復運動する無端移動部材である第3のチェーン151と、を有する2つの無端搬送手段と、第3のチェーン151に連結され、各錘昇降チェーン107、207に外力を作用させることで各錘105、205を吊り上げるように動作させる錘昇降手段である第1及び第2の揺動アーム111、211と、第1及び第2の揺動アーム111、211により2つの錘105、205が交互に上昇するように駆動モータ109からの駆動力を第6のスプロケット147に伝達する駆動力伝達機構と、発電機103を駆動するためにその入力部であるシャフト159と第7のスプロケット47とに連結され、回転自在に支持される出力側シャフト39と、出力側シャフト39を所定方向にのみ回転させるように、出力側シャフト39と第7のスプロケット47との間に介在するラチェット機構1と、を備える。
【0036】
駆動力伝達機構は、2つの錘105、205が、それぞれ連結されている揺動アーム111、211を揺動させる無端搬送手段に対して、駆動力を伝達する駆動力伝達経路を有している。2つの錘105、205を揺動させる構成は、図5に示すように左右対称であり、その動作は多くの場合共通するので、駆動力がモータ109から第1の揺動アーム111まで伝わる経路を中心として説明する。
【0037】
まず、駆動モータ109の回転力は、駆動モータ109のシャフト110に連結された第1のスプロケット113に伝達される。さらに、回転力は、第1のスプロケット113に巻回されている第1のチェーン117を介して、第2のスプロケット115に伝達される。第2のスプロケット115は、回転可能に支持される分岐シャフト119の外周面に固定され、分岐シャフト119は、第2のスプロケット115と一体的に回転する。
【0038】
分岐シャフト119の軸方向における両端部には、それぞれ第3のスプロケット121、第4のスプロケット123が固定されている。従って、分岐シャフト119が回転すると、第3及び第4のスプロケット121、123が回転する構成である。この分岐シャフト119により、モータ109からの回転力は、第1の揺動アーム111及び第2の揺動アーム211それぞれへ分岐されることになる。
【0039】
第3のスプロケット121の回転力は、第2のチェーン125を介して、第5のスプロケット127に伝達される。第5のスプロケット127は、回転自在に支持される第1のシャフトの外周部に固定されている。また、シャフトには、回転を一方向にのみ伝達するための公知のラチェット部材131が連結されている。
【0040】
具体的には、ラチェット部材131は、シャフトに固定され回転自在に支持されるハウジングと、ハウジング内でハウジングに対して相対回転可能に配置されるラチェットギアと、ハウジングが一方向に回転するとラチェットギアに噛み合い、反対方向に回転するとラチェットギアの外周面を摺動する、ハウジングに固定されたストッパと、を備える。ハウジングが一方向に回転すると、ハウジングとハウジング内のラチェットギアが一体的に回転し、当該ラチェットギアを回転自在に支持する図示しないシャフトに回転力が伝達される。
【0041】
さらに、図示しないラチェットギアには、切り欠きギア135が同心に固定されている。従って、切り欠きギア135とラチェット部材131のギアは一体的に回転する。ここで、切り欠きギア135とは、ギアの外周部の一部に歯が刻設されているものである。
【0042】
また、切り欠きギア135からの回転力を伝達する第1のギア137が回転自在に支持されている。第1のギア137は、切り欠きギア135と噛み合うことにより、回転力が伝達される。
【0043】
前述したとおり、切り欠きギア135の外周部の一部には、周方向において歯135aが刻設されている。よって、切り欠きギア135が回転すると、歯135aが第1のギア137に噛み合っているときに、回転力が切り欠きギア135から第1のギア137に伝達され、歯135aが刻設されていない部分と第1のギア137とが対面すると、切り欠きギア135と第1のギア137との噛み合いは解放され、切り欠きギア135の回転力は第1のギア137に伝達されない。
【0044】
第2のギア139は、回転自在に支持されている第1のシャフト145の一端部に固定され、第6のスプロケット147が他端部に固定されている。さらに、第6スプロケット147とその回転軸が平行になるように第7のスプロケット47が回転自在に配置され、第6及び第7のスプロケット147、47には、第3のチェーン151が掛け回されている。この第6及び第7のスプロケット147、47及び第3のチェーン151が無端搬送手段を構成し、第6のスプロケット147の回転力が第7のスプロケット47へと伝達される。
【0045】
第3のチェーン151には、後述する移動ピン163が固定されている。第3のチェーン151の回動に伴って、移動ピン163が第6及び第7のスプロケット147、47間を移動する。移動ピン163は、揺動アームに111に連結されている。移動ピン163の構成及び動作は後述する。
【0046】
なお、第6のスプロケット147及び第7のスプロケット47は、同一形状であり、鉛直方向においてそれらの回転中心が互いに平行になるように配置されているので、図5中では、本来第6のスプロケット147は第7のスプロケット47に隠れて見えない。しかし、構造を明確に示すため、第3のチェーン151を切断し、第7のスプロケット47から発電機103まで駆動力を伝える構成を別個に一点鎖線の下に示している。
【0047】
また、第7スプロケット47を回転可能に支持する回転軸(出力側シャフト)39の一端部に、実施形態において説明したラチェット機構1が装着されている。回転軸39の他端部には、第2の揺動アーム211に関連するスプロケット48及びラチェット機構2が装着されている。ラチェット機構2及び従動スプロケット48は、ラチェット機構1及び第7のスプロケット47と向きが異なるのみで形状、動作は同じである。すなわち、第7のスプロケット47と従動スプロケット48の矢印R方向への回転力が回転軸39へ伝達される構成である。
回転軸39のほぼ中央部には、第8のスプロケット153が固定されている。第4のチェーン157を介して第8のスプロケット153の回転力が第9のスプロケット155へ伝達される。第9のスプロケット155は、発電機103のシャフト(入力部)159に固定されているので、発電機103へ回転力が伝達される。
【0048】
図6を参照して、錘105、205が錘昇降チェーン107、207を介して連結される第1の揺動アーム111と第2の揺動アーム211について説明する。なお、第1及び第2の揺動アーム111、211及びそれに関連する部材は、配置が異なるが、図5に示したように、両者は左右対称の構成であり、動作は互いに同じであるので、第1の揺動アーム111についてのみ説明する。
【0049】
第1の揺動アーム111は、所定長さを有する棒部材である。錘昇降チェーン107が連結されている一端部111aに対向する他端部111bには、長手方向に対向する曲面と短手方向に対向する平面により画成される貫通穴、すなわちピン用穴161が設けられている。また、第1の揺動アーム111は、他端部111bに近い部分を支点p(中心)として回動可能に支持されている。支点pをこのように位置決めすることで、錘105、205を持ち上げるためにてこの作用を利用できる。
【0050】
ピン用穴161には、第3のチェーン151に固定されている移動ピン163が摺動可能に装着されている。従って、第3のチェーン151が矢印S方向に移動すると、移動ピン163も第6のスプロケット147と第7のスプロケット47との間を往復運動することになる。
【0051】
移動ピン163が移動すると、第1の揺動アーム111は、移動ピン163を介して第3のチェーン151に連結されているので、図6の上下方向に移動する。第1の揺動アーム111の他端部111bが、第7のスプロケット47近傍にあるときは、錘105が下がった状態となり、第6のスプロケット147近傍にあるときは、錘105が上がった状態となる。
【0052】
なお、図5に示すように、第2の揺動アーム211に関する駆動力伝達経路にも第1の揺動アーム111に関する駆動力伝達経路と同様に切り欠きギア235が配置されている。ここで、本実施例では、切り欠きギア135と、切り欠きギア235と、の間で回転位相を異ならせて配置し、前者と後者がそれぞれ第1ギア137、237に噛み合うタイミングをずらす構成としている。
【0053】
具体的には、第3のチェーン151の進行方向(矢印S方向)に関して、移動ピン163が第6のスプロケット147を少し越えた位置(図6上で移動ピン163が示されている位置)から第7のスプロケット47を少し越えた位置(図6上で移動ピン167が示されている位置に対応する位置)まで移動するのに必要なだけの歯数となるように、切り欠きギア135の外周部の一部に歯135aを刻設し、もう一方の切り欠きギア235も同様に歯を刻設する。そして、一方の切り欠きギア135と他方の切り欠きギア235との回転位相が180度異なるように配置しておくと、分岐シャフト119の回転力が切り欠きギア135、235それぞれに同じタイミングで伝達されても、第1のギア137、237には、異なるタイミングで回転力が伝達されることになる。よって、一方の錘105が最上点(最下点)にあるとき他方の錘205は最下点(最上点)にある。
【0054】
従って、第7のスプロケット47を少し越えた位置からは、錘105が落下するエネルギを第2の揺動アーム211を上昇させる際に利用でき、錘205が落下する際のエネルギを第1の揺動アーム111を上昇させることに利用できる。
【0055】
また、移動ピン163、167は、第3のチェーン151の進行方向に関して、移動ピン163が第6のスプロケット147を少し越えた位置(図6上で移動ピン163が示されている位置)及び第7のスプロケット47を少し越えた位置まで駆動されているので、切り欠きギア135からの回転力がなくても、矢印S方向に対向する方向には、移動ピン163、167は移動しない。これは、その位置では、揺動アーム111、211に対して錘105、205による引張力が作用しているためである。
【0056】
上記構成の発電機駆動装置101では、単一の駆動モータ109を駆動させることにより、発電機103により発電が行われ電力が得られる。発電を行うにあたり、一方の錘105を持ち上げる際に、他方の錘205が落下するときに生じるエネルギを利用することで、発電効率をより高めることができる。また2つの揺動アーム111、211を所定タイミングで同期して移動させることを、切り欠きギアを適用するという簡易な構成で実現できる。
【0057】
また、ラチェット機構1を利用しているので、発電機駆動装置101が作動する際に生じる騒音を格段に抑制することが可能である。
【0058】
なお、本実施形態及び実施例において、打音抑制手段を打音抑制ギアとして、2つのラチェットギアの間に挟む構成を採用したが、本発明のラチェット機構はこの構成に限定されない。
【0059】
以下に打音抑制手段の第1の変形例及び第2の変形例を適用したラチェットギア組立体205、305について説明する。図7(a)、(b)は、それぞれ打音抑制手段の第1及び第2の変形例を適用したラチェットギア組立体105、205の一部側面図である。
【0060】
単一の部材からなるラチェットギア組立体105のギア部203を構成する外周面の、爪部が接触する帯状の領域に樹脂材料211を装着する構成(図7(a)参照。)や、打音発生の原因となる、ラチェットギア組立体305のギア部303の段差及びその周辺領域に、樹脂材料311を装着する構成としてもよい(図7(b)参照)。
【0061】
また、ギア部に樹脂材料を装着するのではなく、爪部の、ストッパと接触する部分に樹脂材料を装着する構成としてもよい。さらに、上記実施形態、第1及び第2の変形例の構成いずれかとストッパに樹脂材料を装着する構成とを組み合わせた構成とすることもできる。すなわち、当接する2つの部材に関し、一方の部材の樹脂材料から形成されている部分が、金属材料等から形成されている他の部分より先に、他方の部材に衝突し衝撃を和らげることができる構成であればよい。
【0062】
また、上記実施例では、スプロケット間の回転力の伝達がチェーンにより行う構成としたが、ベルトでもよいことは言うまでもない。
【0063】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施形態に係るラチェット機構の正面一部断面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿った断面図である。
【図3】ラチェットギア組立体及び打音抑制ギアの正面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿った断面図である。
【図5】実施例に係る発電機駆動装置の概略構造を示す平面図である。
【図6】実施例に係る発電機駆動装置の概略構造を示す正面図である。
【図7】(a)、(b)は、それぞれ打音抑制手段の第1及び第2の変形例を適用したラチェットギア組立体の一部側面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ラチェット機構
3 ギア部
5 ラチェットギア組立体
7 爪部
9 ストッパ
11 打音抑制ギア
13 第1のラチェットギア
15 第2のラチェットギア
19 軸穴
21 ハウジング
22 ハウジング本体
39 回転軸
41 ストッパ収容部
45 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部にギア部が刻設され、回転可能に支持されるラチェットギア組立体と、
前記ラチェットギア組立体の回転を一方向に規制するように前記ギア部と噛み合う爪部を有するストッパと、
前記ギア部と爪部とが衝突することで生じる打音を抑制する打音抑制手段と、を備え、前記打音抑制手段は、樹脂材料から形成されることを特徴とするラチェット機構。
【請求項2】
前記打音抑制手段は、前記ギア部及び前記爪部の少なくとも一方の所定領域に形成され、前記所定領域とは、前記ギア部と爪部とが互いに接触する領域であることを特徴とする請求項1に記載のラチェット機構。
【請求項3】
前記打音抑制手段は、前記ラチェットギア組立体と同心で回転可能に支持される打音抑制ギアであり、前記打音抑制ギアは、前記ラチェットギア組立体の外周部と相似形状で僅かに大きく寸法づけされた外周部を有し、前記ストッパの爪部は、前記ラチェットギア組立体のギア部より先に、前記打音抑制ギアのギア部に当接することを特徴とする請求項1に記載のラチェット機構。
【請求項4】
前記ラチェット組立体は同心で一体的に回転する2つのラチェットギアを有し、前記打音抑制ギアは前記2つのラチェットギアに挟まれるように配置されることを特徴とする請求項3に記載のラチェット機構。
【請求項5】
発電機を駆動するための発電機駆動装置であって、
2つの錘と、
前記2つの錘にそれぞれ連結される牽引部材と、
駆動源からの駆動力により回転する駆動端と、前記駆動端に対する従動端と、前記駆動端と前記従動端との間に架け渡され往復運動する無端移動部材と、を有する2つの無端搬送手段と、
前記無端移動部材に連結され、前記牽引部材に引張力を付与することにより前記2つの錘を上昇させる錘上昇手段と、
前記錘上昇手段により前記2つの錘が交互に上昇するように前記駆動源からの駆動力を前記駆動端に伝達する駆動力伝達機構と、
前記発電機を駆動するために前記発電機の入力部と前記2つの従動端とに連結され、回転自在に支持される出力側シャフトと、
前記出力側シャフトを所定方向にのみ回転させるように、前記出力側シャフトと前記従動端との間に介在する、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のラチェット機構と、を備えることを特徴とする発電機を駆動するための発電機駆動装置。
【請求項6】
前記錘上昇手段は、一端部と他端部との間で支持され、前記一端部に前記牽引部材を介して前記錘が連結されている2つのアームを有し、前記2つのアームの他端部が前記無端移動部材に連結されることで、てこの作用を利用して前記錘を上昇させることを特徴とする請求項5に記載の発電機を駆動するための発電機駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−32014(P2010−32014A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196939(P2008−196939)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(500520042)
【出願人】(398023623)株式会社ジュエリー服部商会 (2)
【Fターム(参考)】