説明

ラテックス被膜を有する徐放性剤形単位及びその製造方法

【課題】1つ以上の有効物質を流体(例えば、液体経腸栄養製品)に送達するための剤形単位およびその製造法の提供。
【解決手段】該剤形単位は流体中に分散し得る少なくとも1つの有効物質(好ましくは、マーカー染料)を含有するコア。該コアは前記有効物質を結合するための相容性結合剤をも含有し、コアの別の成分には、可塑剤、一般流動剤、滑沢剤、追加の錠剤化助剤及び少なくとも1つの親水性物質も含まれ得る。ラテックス被膜がコアを包囲し、該ラテックス被膜はマトリックス型膜を規定し得る実質的に疎水性の基材及び少なくとも1つの流体中に分散可能な親水性成分を含有する混合物を含み、該疎水性基材は好ましくは酢酸セルロース微小球のエマルションから形成される。分散可能な有効物質が、そこから有効物質を直ちに放出し得るようにラテックス被膜の親水性成分の1つとして好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は有効物質を剤形から徐放するための被膜系に関し、具体的には有効物質(例えば、マーカー染料)を液体経腸栄養製品に徐放するためにラテックス被膜を有する剤形単位に関する。本発明は更に、前記徐放性剤形単位を形成、使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
有効物質、例えば栄養素、薬、プロバイオティック、診断薬及びマーカー染料を患者に経腸、非経口または経口送達するための各種デバイス及び方法が公知である。例えば、胃造瘻術または空腸造瘻術により患者に挿入した経鼻胃管または栄養補給管につながる可撓性チューブまたは管腔に連結されている滴注チャンバに接続している出口を有する吊下げ式ビンまたはバッグから流体(例えば、液体経腸栄養製品)を重力流または順流(positive flow)により供給することは公知である。液体経腸栄養製品は無菌的に処理されたり最終的にレトルト殺菌され得、予備充填された直ぐに吊り下げられる容器に供給されたり、介護者により前記容器に配置され得る。しかしながら、現在市販されているかなり多数の液体経腸栄養製品の中から食物、特に治療食を選択することはかなり制限される。
【0003】
更に、各種有効物質、例えば栄養素、薬、プロバイオティック、診断薬及びマーカー染料を同時に投与することがしばしば望ましい。しかしながら、前記した各種成分はしばしば熱殺菌中安定でなく、使用するまでの長い時間、例えば数日または数ヶ月にわたり他の望ましい成分と相互に相容性でないことがあり得る。よって、有効物質の組合せを大規模製造及び製品を取引のために移動させるようにその後の貯蔵に適合させることは容易でない。
【0004】
例えば診断目的で送達後患者において液体経腸栄養製品を検出可能とすること及び経腸栄養製品が胃または腸の外部に不適切に流れたときを同定することも有利である。液体経腸栄養製品をより検出可能性とするための1つの方法は、適当な生理学的に許容され得るマーカー染料を液体製品に溶解させることである。前記マーカー染料と他の有効物質の相容性を考慮しなければならないので、熱殺菌または長期間貯蔵する前にマーカー染料を導入しないことが推奨される。
【0005】
上記した理由で、患者の胃腸管に経腸栄養補給中に栄養製品を変化、修飾またはマークすることが望ましいとされてきた。前記要求に向けてある新規な装置及び方法が開発されており、米国特許第5,531,681号明細書、同第5,531,682号明細書、同第5,531,734号明細書、同第5,533,973号明細書、同第5,549,550号明細書、同第5,738,651号明細書、同第5,741,243号明細書、同第5,746,715号明細書、同第5,755,688号明細書及び同第5,755,689号明細書を含めた幾つかの最近の特許の主題である。概して、上記特許は、供給デバイスと流体連通している調剤チャンバ及び該調剤チャンバ内に配置される剤形単位を使用する各種装置及び方法に関する。前記剤形単位は液体経腸栄養製品に添加すべき所望の有効物質を含有する。上記特許に記載されているように、各種剤形単位は、有効物質の徐放送達のための慣用されている浸透作動送達デバイスを含めた装置及び方法と一緒に使用される。
【0006】
1つの浸透性送達デバイスは米国特許第5,318,558号明細書に記載されており、この特許はポンプ型徐放性剤形単位または送達デバイスに関する。通常、前記デバイスは一端に有効物質、他端に浸透エンジンにより駆動するピストンを有する円筒形閉鎖容器を含む。前記容器には、浸透エンジンの対向端部に好ましくはレーザービームドリルにより小さなオリフィスが形成されている。このようにして、有効物質は浸透ピストンが作動したときにオリフィスを介して容器から放出される。
【0007】
徐放性剤形を有する別の浸透性投与システムは米国特許第5,324,280号明細書に記載されており、ここでは外壁内に完全に閉じこめられているハイドロ活性物質の層により包囲されている内壁内に有効物質は収容されている。ハイドロ活性物質が膨張すると生ずる浸透圧により、レーザードリル等により外壁に形成された流路を介して有効物質は放出される。
【0008】
上記したように、慣用の浸透性薬物送達デバイスはいずれもオリフィスまたは類似の流路をドリルによりまたは他の方法で外膜に予備形成しなければならない。しかしながら、精密機械加工方法は実施するのが困難であり、費用もかかる。また、前記した従来の浸透性薬物送達デバイスは、特にマーカー染料等を送達するために使用するときに特に有効でないことが判明した。
【0009】
更に、液体経腸栄養製品と最初に接触したときに有効物質を迅速に放出させることがしばしば望ましい。この迅速放出のために、従来の浸透性送達システムでは通常所望の有効物質の外層またはフィルムを設けなければならない。このようにすると、初期量の有効物質が液体栄養製品内に分散したときに迅速に放出され、その後有効物質は剤形単位から持続的に放出され得る。しかしながら、有効物質の外フィルムを更に設けることは薬物送達システムの製造及び材料コストを上昇させる。
【0010】
よって、中に含有されている有効物質を持続的に送達し得る改良された剤形単位が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,531,681号明細書
【特許文献2】米国特許第5,531,682号明細書
【特許文献3】米国特許第5,531,734号明細書
【特許文献4】米国特許第5,533,973号明細書
【特許文献5】米国特許第5,549,550号明細書
【特許文献6】米国特許第5,738,651号明細書
【特許文献7】米国特許第5,741,243号明細書
【特許文献8】米国特許第5,746,715号明細書
【特許文献9】米国特許第5,755,688号明細書
【特許文献10】米国特許第5,755,689号明細書
【特許文献11】米国特許第5,318,558号明細書
【特許文献12】米国特許第5,324,280号明細書
【発明の概要】
【0012】
(発明の要旨)
本発明の目的及び作用効果は以下に記載されており、以下の記載から明らかであり、また発明の実施から分かるであろう。本発明の別の作用効果は詳細説明及び請求の範囲に特に指摘されている方法及びシステムにより発揮され、達成される。
【0013】
上記及び他の作用効果並びに本発明の目的を達成するために、本明細書に包括的及び具体的に記載されているように、本発明は有効物質を流体に送達するための剤形単位を包含する。特に、本明細書に具体的に記載されているように、剤形単位の所期の使用は1つ以上の有効物質を患者の胃腸管に供給すべき液体経腸栄養製品に送達するためである。
【0014】
本発明の剤形単位は、流体(例えば、液体経腸栄養製品)中に分散可能である有効物質を少なくとも1つ含有するコアを含む。本明細書に具体的に記載されているように、有効物質は栄養素、薬、プロバイオティック、診断薬、及び好ましくはマーカー染料からなる群から選択される。特に、食用青色1号及びメチルアントラニレートが2つの好ましいマーカーである。
【0015】
前記コアは有効物質を結合するための相容性結合剤をも含有する。各種結合剤が使用され得るが、酢酸セルロースが好ましい。好ましい実施態様では、トリアセチンのような可塑剤または冷溶媒を酢酸セルロースを軟化させ、よって結合性を高めてより強いコアを構築するために使用する。所望乃至所要により、コアを構築するために慣用の滑沢剤及び一般流動剤をも配合することができる。コアの構造を高めるために他の公知の錠剤化助剤(例えば、リン酸ジカルシウム)を使用してもよい。本明細書に具体的に記載されているコアは所望により少なくとも1つの親水性物質(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を含み、有効物質を送達するための浸透系を形成するために1つ以上の浸透的に有効な化合物をも含む。
【0016】
更に、本発明によれば、剤形単位はコアを包囲するラテックス被膜をも含む。前記ラテックス被膜は、半多孔性マトリックス型膜を規定し得る実質的に疎水性の基材及び少なくとも1つの流体中に分散可能な親水性成分を含有する混合物を含む。好ましくは、ラテックス被膜の基材は酢酸セルロース微小球のエマルションから形成される。
【0017】
種々の親水性成分を、ラテックス被膜の基材により規定されたマトリックス型膜中に流路を形成または開放するよう、この成分が当該流体中に分散可能であるならば、ラテックス被膜のために使用することができる。好ましい親水性成分は、流路の形成を容易にするだけでなく、ラテックス被膜により形成される壁の可撓性を高め、そこを介する流体フラックスを増加させるポリエチレングリコールである。剤形を流体と接触させたときに有効物質が直ぐに放出されることを所望するならば、有効物質をラテックス被膜の成分として配合することが更に好ましい。このラテックス被膜の有効物質は栄養素、薬、プロバイオティック、診断薬及びマーカー染料からなる群から選択される。
【0018】
剤形単位は経腸栄養補給システムの調剤チャンバ内に配置されるように構成され得る。好ましくは、剤形単位は、正方形錠剤の形のような経腸栄養補給システムの封鎖を防止するように形成される。
【0019】
本発明はまた、流体(例えば、液体経腸栄養製品)に有効物質を送達するための剤形単位の形成方法に関する。前記方法は、少なくとも1つの流体中に分散可能な有効物質及び該有効物質を結合するための相容性結合剤を含有するコアを形成するステップを含む。上記したように、有効物質は栄養素、薬、プロバイオティック、診断薬、及び好ましくはマーカー染料からなる群から選択され、結合剤はトリアセチンで軟化される酢酸セルロースである。また、形成ステップはコアに一般流動剤、滑沢剤または他の錠剤化助剤を添加することを含む。好ましい実施態様では、前記方法は所望により更にコアに対して少なくとも1つの親水性物質(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)及び1つ以上の浸透的に有効な化合物を添加することを含む。
【0020】
更に、本発明によれば、前記方法はマトリックス型膜を規定し得る実質的に疎水性の基材のエマルション及び少なくとも1つの流体中に分散可能な親水性成分を含有する混合物を含むラテックス組成物を調製するステップをも含む。このステップが基材としての酢酸セルロースのエマルションと親水性成分を混合することを含むことが好ましい。他の親水性成分を配合することもできるが、本発明の別の態様は、剤形単位を流体と接触させたときの有効物質の迅速放出を促進するようにラテックス組成物の成分として流体中に分散可能な有効物質を配合することを含む。このラテックス組成物用有効物質を栄養素、薬、プロバイオティック、診断薬及びマーカー染料からなる群から選択することが好ましい。
【0021】
最後に、本発明の方法はコア上にラテックス被膜を形成するためにコア上にラテックス組成物を適用することを含む。好ましくは、このステップは当業界で公知のように従来のパンコーターまたはバッチ流動床コーター中のWursterカラムを用いてコア上にラテックス組成物を噴霧した後塗布した被膜を乾燥して外壁を規定することにより実施される。
【0022】
本発明の他の特徴及び作用効果は以下の詳細説明、添付図面及び請求の範囲から容易に明らかとなるであろう。
【0023】
本明細書に含まれ、本明細書の一部をなす添付図面は本発明の方法及びシステムを示し、更に理解するために含まれている。本明細書中の説明と一緒に、図面は本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0024】
(図面の説明)
本発明は添付図面を参照して十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、患者に対して経鼻胃栄養補給するための液体経腸栄養製品を修飾またはマークするための装置の概略図である。
【図2】図2は、患者に対して胃造ろう栄養補給するための液体経腸栄養製品を修飾またはマークするための装置の概略図である。
【図3】図3は、患者に対して空腸造ろう栄養補給するための液体経腸栄養製品を修飾またはマークするための直列に設置した2つの調剤チャンバを有する装置の概略図である。
【図4】図4は、液体経腸栄養製品を修飾またはマークするための並列に接続した2つの調剤チャンバを有する装置の部分概略図である。
【図5】図5は、本発明の剤形単位が調剤チャンバ中に配置されている患者に対して液体経腸栄養製品を供給するための調剤チャンバの拡大部分図である。
【図6】図6は、図5に示した本発明の剤形単位の代表的具体例の拡大断面図である。
【0026】
定義
本明細書及び請求の範囲に関して、以下の語句は次のように定義される。
【0027】
「液体経腸栄養製品」は患者の胃腸管に供給され、そこで利用されると一般的に理解されている液体組成物を指す。前記経腸栄養製品は1〜約300cps、より好ましくは少なくとも約3cpsの粘度を有するが、最も多くは約5〜約150cpsの粘度を有する。
【0028】
「経腸栄養製品媒体」は液体経腸栄養製品の液体部分、主に水を指すが、しばしば少量乃至微量の非水性液体物質、例えば植物油や海洋油のような脂質を含む。
【0029】
本明細書中、用語「胃腸管」は胃及び小腸を指す。胃腸管への栄養補給は、鼻道及び食道を介し、そこから胃まで延びている経鼻胃管を使用して、または腹壁を介して胃または小腸に延びている栄養補給管を使用して実施される。
【0030】
「生理学的有用物質」または「有効物質」は、栄養素及び薬のような患者にとって栄養学的または医薬的に重要であるかまたは重要であると考えられている物質または成分、またはプロバイオティックまたは診断薬の場合のようにマーカー染料のような医学的に重要である物質または成分である。
【0031】
「プロバイオティック」は胃腸管中の各微生物バランスを改善することによりヒト宿主に好ましい影響を与える生きた微生物フードサプリメント、例えばLacobacillus reuteriであると理解されたい。
【0032】
「流体または液体経腸栄養製品中に分散可能な有効物質または成分」は、流体または液体栄養製品中に分散し得るように経腸栄養補給中該製品に添加するのが生理学的に有効であるかまたは診断薬やマーカー染料のように通常有効である物質または成分である。有効物質または成分は、液体経腸栄養製品と一緒に患者の胃腸管に運ばれるように栄養補給中修飾される前記栄養製品中に分散可能である。
【0033】
液体経腸栄養製品の媒体中に分散可能である有効物質の「有用量」は、患者にとって「生理学的に有効なまたは診断上検出可能な」量、すなわち液体経腸栄養製品の一部として供給したときに短期間または長期間で患者に対して検出可能な効果を生ずるかまたは生ずると合理的に予測されるかまたは症状または病気の診断の際に検出可能である量である。通常、約5g以下の有効物質が1つの徐放性剤形単位またはデバイス中に含有され、所与の有効物質を含有する単位を複数使用すると供給する栄養製品中の有効物質レベルは所望レベルになる。
【0034】
「液体経腸栄養製品の媒体中に分散可能な、少なくとも1つの有効物質」は、その内容から判断されるように単一または複数の有効物質を指し、成分、物質または因子の組合せも含まれる。
【0035】
有効物質または成分に関して本明細書中に使用するとき、用語「分散可能な」は流体、例えば1つ以上の徐放性剤形単位を収容している調剤チャンバを介して流れる液体経腸栄養製品により容易に吸収され、運ばれるように可溶性である物質及び十分に懸濁性である物質に適用すると理解されたい。
【0036】
用語「栄養補給セット」は1つ以上の調剤チャンバ(例えば、滴注チャンバ)及び経腸栄養補給のために栄養補給管につながる流体連通手段の組合せを指す。各調剤チャンバには少なくとも1つの有効物質(例えば、マーカー染料)の有用量を含有している剤形単位が少なくとも1つ充填され得るかまたは前記剤形単位と一緒に充填され得る。
【0037】
「注入」のプロセスは、経腸−可溶性有効成分を患者の胃腸管に少なくとも1分間〜約30時間、より一般的には少なくとも2〜約24時間にわたり供給する過程を指す。
【0038】
用語「送達システム」または「送達デバイス」は、有効成分、物質またはその混合物を保存し、その後それを流体、例えば調剤チャンバを介して流れる液体経腸栄養製品に送達または放出するための手段またはシステムを包括的に指す。
【0039】
本発明に関して本明細書中で使用する場合、用語「徐放性剤形」は、有用量の有効物質を保存し、その後それを室温で流体(例えば、液体経腸栄養製品)の媒体に、同じ媒体及び同じ温度で非被覆または未処理粒状形態中において有効物質の溶解性特性により通常示される速度よりもゆっくりと放出または分散する形態のデバイスを指す。通常、徐放性剤形は流れている流体または液体経腸栄養製品と接触している少なくとも30分間、好ましくは少なくとも2時間の間に溶解または分散する。本質的に液体経腸栄養製品の媒体に直ぐに溶解しない有効物質に関して、徐放性剤形単位は有効物質の送達を液体経腸栄養製品の媒体への可溶化または分散のための通常時間の少なくとも20%遅らす。好ましくは、徐放性剤形単位はその内容物の放出を供給する栄養素、薬または他の有効物質に適当な時間延長させる。
【0040】
「徐放性剤形単位」は上記した有効物質(例えば、マーカー染料)を持続的に送達することができる個別に被覆された錠剤またはデバイスを指す。
【0041】
「液体経腸栄養製品が装置中を流れる」は容器からの重力流の使用、及び栄養補給管を介する液体経腸栄養製品の流れを促進するために任意に重力流下でポンプを使用することを包含する。
【0042】
(発明の詳細説明)
本発明の剤形単位を使用し得る方法をより深く理解するために、米国特許第5,531,681号明細書、同第5,531,682号明細書、同第5,531,734号明細書、同第5,533,973号明細書、同第5,549,550号明細書、同第5,738,651号明細書、同第5,741,243号明細書、同第5,746,715号明細書、同第5,755,688号明細書及び同第5,755,689号明細書に記載されているような液体経腸栄養製品等を修飾し、マークする装置及び方法を説明する。上記した各特許の明細書及び図面は援用により本明細書に含まれるとする。上記した各特許の装置及び方法はマーカー染料を含めた有効物質を徐放性または非徐放性の各種剤形から送達し得ると理解すべきである。しかしながら、本発明のために徐放性剤形を特に参照する。本明細書に記載されている装置及び方法の各種具体例を非限定的例示の目的で以下に要約する。
【0043】
図1は、包括的に図番20で図示する栄養補給セットを示す。このセットは吊下げ式供給容器22の出口21は、患者の鼻道24を通って食道25を下がり、胃26まで延びている経鼻胃栄養補給管23に連結されている。この栄養補給セットは滴注チャンバの形態の調剤チャンバ27及び包括的に図番28で図示されている流体連通手段から構成されている。「流体連通手段(fluid communication means)」は、滴注チャンバの出口29から栄養補給管(例えば、経鼻胃栄養補給管23)へのコネクション30まで連続して利用される流体連通構成成分すべてを含むと理解される。前記構成成分は、可撓性チューブ54の一部の他に、図3に示すように直列に、図4に示すように並列に連結した別の滴注チャンバまたは他の調剤チャンバをも含む。前記構成成分はまた、ポンプを利用するために必要な特別のチューブ部分及びそれぞれ他のすべての構成成分の間にあるコネクタ素子(例えば、コネクタ素子31またはアダプタ30)をも含み得る。
【0044】
図1を参照すると、調剤チャンバ27には本発明の徐放性剤形単位100が配置されている。剤形単位100は流体(例えば、供給容器22から調剤チャンバ27に流れる液体経腸栄養製品33)中に分散可能な少なくとも1つの有効物質を生理学的に有効な量または診断上検出可能な量含有している。本明細書に具体的に記載されているように、液体経腸栄養製品は通常水性ベースであり、徐放性剤形単位100と接している。流体または液体経腸栄養製品に接触すると、有効物質は流体に放出または送達される。液体経腸栄養製品の流れは通常慣用の調節可能な圧縮クランプ34を用いて調節し得る。
【0045】
図2は液体経腸栄養製品33を調剤チャンバ27に、更に胃造瘻栄養補給管デバイス23aにつながる栄養補給セット20aの可撓性チューブ54に供給する吊下げ式供給容器22を示している。図2に示す胃造瘻栄養補給管は市販されており、本発明で使用するのに適した多くのデバイスの1例にすぎない。
【0046】
図3は、栄養補給セット20bが患者の小腸26aにつながる栄養補給管23bへの順流のためのポンプ35と併用するように改造されている点を除いて図1の装置とほぼ同一の空腸造瘻術用栄養補給装置に関する。適当なポンプの例は米国特許第4,927,411号明細書に記載されている。図示するように、第2の調剤チャンバ27aも、供給容器22から調剤チャンバ27に流れ、更に連通手段28bの残部及び栄養補給セット20bの調剤チャンバ27aを通って空腸造瘻栄養補給管23bに流れる液体経腸栄養製品33のような流体中にいずれも分散可能な追加のまたは別の有効物質を添加するために栄養補給セット20bの一部として使用し得る。追加の有効物質は徐放性または非徐放性剤形のいずれであってもよい。
【0047】
添付図面に例示されている本発明の現在好ましい実施態様について詳細に検討する。本発明の方法及び対応するステップは剤形単位の詳細説明と共に記載されている。
【0048】
本発明には各種形態の実施態様が包含されるが、現在好ましい実施態様が図示されており、以下に説明する。なお、本明細書の開示内容は本発明の例として見做されるにすぎず、本発明をここに記載されている特定具体例に限定するものではない。
【0049】
図5の拡大部分図では、本発明の徐放性剤形単位100が調剤チャンバ27内の液体経腸栄養組成物33中に配置されている。図示するように、徐放性剤形単位は調剤チャンバを介する液体経腸栄養製品33の流れが阻止されるのを防止するのに適当な幾何学的形状(例えば、長方形)を有する。通常正方形錠剤が示されているが、各種の代替形状も使用し得る。更に、調剤チャンバに、前記阻止を更に防止するためにメッシュスリーブまたは類似のデバイスを設けてもよい。
【0050】
非限定的例示の目的で、図6は本発明の剤形単位の代表的具体例の断面図を示す。本発明によれば、図6に示すように、剤形単位100は少なくとも1つの流体中に分散可能な有効物質及び前記有効物質を結合するための相容性結合剤を含有するコア110を含む。前記剤形単位100は更にコア110を包囲するラテックス被膜をも有し、このラテックス被膜はマトリックス型膜を規定し得る実質的に疎水性の基材及び少なくとも1つの流体中に分散可能な親水性成分を含有する混合物を含む。本明細書に具体的に記載されている本発明の徐放性剤形単位の構造を以下に詳記する。
【0051】
コアの構造
本発明によれば、徐放性剤形単位は通常少なくとも1つの有効物質を含有するコアを含む。わかりやすくするために、用語「有効物質」は特記しない限り単一または複数の有効物質を指すと理解されたい。各有効物質は該有効物質が接触すべき流体(例えば、液体経腸栄養製品)中で分散性、好ましくは親水性または可溶性であるならば、各種有効物質を本発明の範囲で使用することができる。
【0052】
例えば、一般的な経腸栄養組成物に添加されそうな有効物質には、栄養素(例えば、グルタミン、アルギニン)、発酵性食物繊維、非発酵性食物繊維、酵素(例えば、リパーゼ)、アミノ酸の組合せ、オリゴサッカライド(例えば、フラクト−オリゴサッカライド)、ビタミン、短鎖(C3−4)脂肪酸、ピルバミドまたはピルビル−アミノ酸(例えば、ピルビル−グリシン、ピルビル−アラニン、ピルビル−ロイシン、ピロビル−バリン、ピルビル−サルコサミン)、及びそのアミド、エステル及び塩の形態のピルベート前駆体、構造化脂質、d−シロイノシトール、ラクトフェリン、海洋油並びに酸味剤(例えば、アスコルビン酸)が含まれる。優れた栄養サポートを与える構造化脂質の例は、少なくとも1つのγ−リノレン酸またはジホモγ−リノレン酸残基と、α−リノレン酸、ステアロドン酸及びエイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸から選択される中鎖(C5−22)脂肪酸残基とC8−22n−3脂肪酸残基を有するグリセロール骨格である。
【0053】
十分に分散性であるならば通常本発明に従って投与され得る薬には、抗ヒスタミン剤、抗感染薬(例えば、抗生物質、抗ウィルス薬及び抗尿路感染薬)、抗新生物薬、自律神経薬(例えば、アドレナリン作動薬及び骨格筋弛緩薬)、血液形成及び凝固薬、心血管作用薬、中枢神経系作用薬、診断薬、電解質、カロリー・水バランス薬、酵素、鎮咳薬、去痰・ムコ多糖類加水分解薬、胃腸薬(例えば、制酸剤)、金化合物、ホルモン及び合成代替ホルモン、平滑筋弛緩薬並びに非分類治療薬が含まれる。他の例はHブロッカー(例えば、Tagamet(登録商標))、プロカイネティック剤、生物活性ペプチド、糖尿病薬、化学療法剤、または胃腸管に供給する栄養組成物と好ましくない反応を起こさない経口投与用医薬である。
【0054】
十分に分散性であるならば通常本発明に従って投与され得るプロバイオティックには、例えば米国特許第4,839,281号明細書に記載されている好酸性乳酸桿菌GG、Lactobacillus reuteriLactobacillus animalis、及び国際特許出願公開第93/02558号パンフレットに記載されているLactobacillus salivariusが含まれる。プロバイオティックは食物の消化を助ける生微生物または腸内中の有害微生物の数を制御するのを助ける生微生物である。
【0055】
本発明の好ましい実施態様において、コア内に含有される有効物質は生理学的に許容され得るマーカー染料または染料混合物である。例えば、本発明で有用なマーカー染料または染料混合物は患者に対して生理学的に許容され得且つ一緒に供給される他の有効物質と相容性である着色染料、蛍光染料またはその混合物である。好ましくは、前記染料または染料混合物は液体経腸栄養製品が調剤チャンバーを介して流れている間前記製品に検出可能な濃度でコアから送達され得る。染料が調剤チャンバーにおいて検出可能であるとき、染料は患者の口腔に何とか達するならば検出可能であると予測され得る。
【0056】
使用されるマーカー染料は、白色光、例えば通常の昼光または病院や医院で出会う人工室内光の下で目に見える色を与える着色染料;紫外光の下で目に見える蛍光を発する蛍光染料;または着色染料と蛍光染料の混合物であり得る。着色染料と蛍光染料の混合物は、調剤チャンバーを介する流れは存在する着色染料により通常の光条件下で容易に感知されるが、適所(例えば口腔または鼻道)を外れた栄養製品はたとえ少量でも蛍光染料を含有しているならば紫外光でより容易に検出され得る点で特に有利であるようである。これは、たとえ非常に低濃度で存在しているときでも紫外光の下で特に目に見える蛍光染料の性質による。
【0057】
使用する染料または染料混合物は生理学的に許容され得なければならない。通常、米国食品医薬品化粧品局(FD&C)が認可している食用着色剤が適当である。下記する食用青色1号及び食用青色2号が好ましい。また、染料または染料混合物は供給する液体経腸栄養製品中に分散可能でなければならず、場合により栄養補給中に添加される他の有効物質と相容性でなければならない。液体経腸栄養製品に対して容易に目に見える色を与えるためには、通常前記製品1mlあたり約0.06mgの染料が望ましい。
【0058】
誤った方向に流れる液体経腸栄養製品を検出できることが重要な場合には、紫外光の下で非常に低濃度でも十分に目に見え、白色光条件下で液体栄養製品に目に見える色を与える蛍光染料、例えば食用赤色3号を使用し得る。他の好適な蛍光染料はキニン、食用赤色22号、食用赤色8号、フルオレセイン、及びオハイオ州シンシナティに所在のDaGloから入手可能であり、ケミカルアブストラクツシステムに蛍光増白剤として色度指数220を有する16470−24−9としても同定されているD 282 UV Blueである。上記したように、所望により着色染料と蛍光染料の混合物を使用し得る。通常液体栄養製品に約0.01〜0.05mg/mlの蛍光染料を添加するのに十分な量が紫外光の下で検出し得るのに十分である。
【0059】
本発明の別の態様によれば、好ましい有効物質はフレーバー化合物から作られる蛍光染料、すなわち蛍光性フレーバ化合物である。イソブチルアントラニレート、n−ブチルアントラニレート、アリルアントラニレート、イソブチルn−メチルアントラニレート、アリルアントラニレート、ブチルアントラニレート、イソブチルアントラニレート、シンナミルアントラニレート、シクロヘキシルアントラニレート、エチルアントラニレート、リナリルアントラニレート、メチルアントラニレート、メチルn−メチルアントラニレート、β−ナフチルアントラニレート、フェネチルアントラニレート、テルピニルアントラニレートを含めた各種化合物を使用することができる。しかしながら、FEMA No.2682として入手可能なメチルアントラニレートが好ましい化合物である。
【0060】
有効物質そのものが十分な結合性を有していない場合には、コアは結合物質または類似の賦形剤をも含有する。各種の好適であり且つ生理学的に相容性の結合剤が公知であり、入手可能であるが、好ましい結合剤はコアに含有される有効物質に依存する。結合剤または賦形剤の例には、セルロースアシレート、セルロースジアシレート、セルローストリアシレート、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、モノ−,ジ−及びトリセルロースを含めたセルロースポリマー、アルカニレート、アルケニレート、モノ−,ジ−及びトリセルロースアロイレート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルローストリアシレート(例えば、セルローストリバレート、セルローストリランレート、セルローストリパルミテート、セルローストリスクシネート及びセルローストリオクタノエート)、セルロースジエステル(例えば、セルロースジスクシネート、セルロースジパルミテー、セルロースジオクタノエートト及びセルロースジペンタノエート)、セルロースのコエステル(例えば、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースイソプロビルアセテート及びセルロースアセテートペンタノエート)、並びに或るポリプロピレンが含まれるが、これらに限定されない。食用青色1号の使用について本明細書に具体的に記載したように、Eastman Chemical ProductsからCA−398−10NFの呼称で販売されているセルロースアセテートが可溶性の不足のために高い耐久性及び耐崩壊性を有するコアを形成するために好ましい。
【0061】
選択される結合剤または賦形剤に応じて、結合剤を加工可能形態に軟化させるために通常可塑剤成分が必要である。公知の適当な可塑剤成分の例には、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸アセチルトリ−n−ブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、Eastman Chemical ProductsからEastman Triacetinの商標で入手可能なトリ酢酸グリセリル及びEastman Chemical ProductsからMyvacet(登録商標)9−45で製造されているアセチル化モノグリセリドが含まれる。選択した酢酸セルロースと併用するには、トリアセチンがコアに対して好ましい。
【0062】
コアの製造及び構造を高めるために追加の錠剤化助剤をも使用し得る。例えば、本明細書に具体的に記載されているように、一般流動剤、例えばタルク、コロイドシリカまたはカオリンが粘着を防止するために配合される。通常Cabot CorporationからCAB−O−SILの商標で入手可能なヒュームドシリカが好ましい。滑沢剤、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、または好ましくはステアリン酸マグネシウムもコアの性能及び構造を高めるために配合される。更に、安定剤または類似の実質的に疎水性の錠剤化助剤、例えばリン酸ジカルシウムまたはラクトースも配合され得る。
【0063】
本明細書に具体的に記載されているコアは、選択した有効物質の送達を助け得る許容し得る担体として作用するように親水性物質をも含む。各種親水性物質の例には、親水性ポリマーまたは浸透性ポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシプロピルエチルセルロースが含まれる。好ましい実施態様では、以下に詳記するように、膨潤性を有し、その結果曝される流体または溶媒を膨潤して有効物質の浸透性送達を促進するためにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使用している。
【0064】
更に、本発明のコアは、浸透系の性能を高めるために或る浸透的に有効な化合物、例えば浸透的に有効な溶質またはオスマゲント(osmagent)を含み得る。考えられる浸透的に有効な化合物の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチアム、酸性リン酸カリウム、マンニトール、尿素、イノシトール、酒石酸、ラフィノース、スクロース、グルコース、ソルビトール及びフルクトースが含まれる。
【0065】
コアは上記成分を用いて一般的方法により製造され得る。例えば、複数の成分を通常の方法(例えば、混合、ブレンド、ボールミリング、カレンダリング、撹拌またはロールミリング)により混合して固体または半固体とし、次いで所定のコア形状にプレスする。本発明の剤形単位、よってコアを製造するための好ましい方法を以下に詳記する。
【0066】
ラテックス被膜の構造
上述したように、本発明に従うと、徐放性剤形単位はコアを包囲または封入するためのラテックス被膜をも含む。公知のように、ラテックスは天然に存在する炭化水素ポリマーの水性懸濁液としてまたは重合により得られる合成ゴムまたはプラスチックのエマルションとして通常認識されている。ラテックス被膜を乾燥すると、半連続構造体、すなわち同一ポリマーまたは材料を溶媒系を介して適用して形成したものに比して連続性が実質的に劣る構造体が形成される。これにより、被膜は、以下に詳記するように有効物質をコアから送達するための浸透系の外壁を規定する。
【0067】
本明細書に具体的に記載したラテックス被膜は、実質的に疎水性の基材及び少なくとも1つの流体(例えば、液体経腸栄養製品)中に分散可能な親水性成分の混合物を含む。このようにして、親水性成分は、本発明の剤形単位を液体栄養製品に接触させて配置したときにラテックス被膜から浸出されるかまたは別の方法で放出される。ラテックスの基材は半多孔性マトリックス型膜のままであり、コアの結合剤を含有しながら有効物質は該膜を介して送達され得る。
【0068】
本発明のラテックス被膜のために各種の実質的に疎水性の基材を使用することができる。前記材料は例えば水中に懸濁または乳化し得なければならず、乾燥したときに親水性成分が膜から浸出する前にもその後にも一体性を維持し得るマトリックス型膜を規定し得なければならない。可能な材料の例には、セルロースアシレート、セルロースジアシレート、セルローストリアシレート、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、モノ,ジ及びトリセルロースを含めたセルロースポリマー、アルカニレート、アルケニレート、モノ,ジ及びトリセルロースアロイレート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルローストリアシレート(例えば、セルローストリバレレート、セルローストリランレート、セルローストリパルミテート、セルローストリスクシネート及びセルローストリオクタノエート)、セルロースジエステル(例えば、セルロースジスクシネート、セルロースジパルミテート、セルロースジオクタノエート、セルロースジペンタノエート)、セルロースのコエステル(例えば、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースイソプロピルアセテート、セルロースアセテートペンタノエート)及び或るポリプロピレンが含まれる。本明細書に具体的に記載されているように、Eastman Chemical ProductsからCA−398−10NF及びCA−398−30NFのような酢酸セルロースが好ましい。特に、剤形単位の好ましい実施態様はFMC Corporationから入手可能な酢酸セルロースエマルションを含有する混合物で被覆されている。このエマルションには、約0.2〜0.6ミクロン(典型的には、約0.3ミクロン)のサイズを有する酢酸セルロース微小球を約22〜28重量%、好ましくは約24〜26重量%含む水性懸濁液が含まれる。微小球を、ラウレル硫酸ナトリウム(2重量%)等のような湿潤剤を含有する水中に懸濁させる。
【0069】
上記したように、少なくとも部分的に、有効物質をコアから送達し得る流路を形成するためにラテックス被膜の親水性成分を配合する。好適な親水性成分は、流体(好ましい実施態様では、液体経腸栄養製品)に接触または前記流体内に配置したときに溶解し得るかまたは基材のマトリックス型膜から浸出し得る。好適な親水性成分の例には、炭酸リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硝酸カリウム、アルカリ土類金属塩(例えば、リン酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム)、遷移金属塩(例えば、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸亜鉛、塩化第二銅、フッ化マグネシウム、フルオロケイ酸マグネシウム等)、有機化合物(例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、マンニトール、マンノース、ガラクトース、アルドヘキソース、アルトロース、タロース、ソルビトール等を含めた多糖;ジオール及びポリオールを含めた有機脂肪族油;ジオール及びポリオールを含めた芳香族油;多価アルコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール、ポリ(α,ω)−アルキレンジオール等を含めた他のポリオール)が含まれる。好ましい実施態様は親水性成分としてMALTRIN 100として入手可能なマルトデキストリンを含む。
【0070】
本明細書に具体的に記載されているラテックス被膜のための追加の親水性成分はポリエチレングリコール(PEG)3350であるが、異なる分子量を有する他の好適なPEG材料、例えばPEG 400を使用することもできる。非毒性親水性材料としてPEG材料を使用すると、有効物質の送達用流路の形成が容易になる他、ラテックス被膜により形成される壁の可撓性が高まり、流路を介する水性流体−フラックスが増加すると考えられる。すなわち、PEGはラテックス被膜により規定される外壁を介する流体透過性または液体フラックスを調節するのを助けるためのフラックス調節剤として作用する。
【0071】
コアと同様に、本発明のラテックス被膜のために可塑剤または類似の軟化成分を配合することも有利である。公知の適当な可塑剤成分の例には、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸アセチルトリ−n−ブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、Eastman Chemical ProductsからEastman Triacetinの商標で入手可能なトリ酢酸グリセリル、及びEastman Chemical ProductsからMyvacet(登録商標)9−45で入手可能なアセチル化モノグリセリドが含まれるが、本明細書に具体的に記載されているラテックス被膜の酢酸セルロースに対してはクエン酸トリエチルが好ましい。
【0072】
ラテックス被膜を使用すると、従来の浸透性ドラッグ送達システムでは得られなかった幾つかの利点が得られる。例えば、ラテックス材料を使用すると、コアを被覆する前に親水性成分は水性エマルション中に迅速に溶解するかまたは別の方法で水性エマルションと混合され得る。よって、親水性成分により、従来の浸透性デバイスに対して通常実施されていたような固体外壁に孔またはオリフィスを精密機械加工またはレーザーで形成する必要がなくなる。更に、ラテックス被膜中の親水性成分及び量を変更することにより壁を介する有効物質のコアからの放出速度をより容易にコントロールすることができる。すなわち、親水性成分の分子の大きさ及び/または量を増加させることにより流路の大きさ及び数をそれぞれ増加させることができる。
【0073】
従来技術では認められない本発明の別の利点は、所望により有効物質が直ぐに放出されることである。迅速放出を調節するために有効物質の外層またはフィルムを必要とする従来の浸透性デバイスとは異なり、適当量の有効物質を本発明のラテックス被膜に混合し得る。よって、ラテックス被膜内の有効物質は複数の機能を発揮する。すなわち、流体(例えば、液体経腸栄養製品)と接触すると初期用量の有効物質がラテックス被膜から放出される。また、有効物質は分散可能であればよく、必ずしも親水性である必要はないが、有効物質は親水性成分として作用して、更なる有効物質をコアから持続的に送達するためにマトリックス型膜中に流路を形成または開放する。親水性成分として有効物質を使用すると、有効物質の送達のために十分な大きさの流路を確実に形成するのが助けられる。
【実施例】
【0074】
(実施例)
実施及び例示の目的で、非限定的に、代表的な剤形単位の組成を示す。特に、代表的な剤形単位のコアの構造を表1に示し、被膜の構造を表2に示す。代表的な剤形単位の製造に使用される成分はすべて当業界で公知の業者、例えばサンスターから入手可能である。
【0075】
【表1】

【0076】
通常、表1及び2の代表的な剤形単位は青色マーカー染料を液体医用栄養補給処方物に送達するためのものである。よって、この代表的な実施態様の有効物質は食用青色1号であり、コアのみは有効物質約120mgの目標含量を有し、全体として、すなわちラテックス被膜を含めると約127mgの目標含量を有する。表1及び2の代表的な剤形単位は、厚さ約6.5〜7.0mm、1辺約10.0mmの正方形の錠剤として製造される。
【0077】
非限定的例示として、下表3及び4は本発明の典型的剤形単位についての許容基準を示す。所要または所望により組成及び製造方法を修正することにより別の基準を達成し得ると理解されたい。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
製造方法
本発明は更に、本発明の剤形単位の製造方法に関する。例示及び実施の目的で、非限定的に、表1〜4に示した代表的な剤形単位の製造方法を説明する。別の所望の結果または基準を達成するために、所要乃至所望により材料、量及び方法を本発明の範囲内で修正し得ると理解されたい。更に、下記する本発明の方法についての規格はガイドラインとして提示しているにすぎず、必ずしも必須な要件でないことも理解されたい。
【0081】
本発明の剤形単位のコアの製造に関し、表5は代表的バッチの錠剤処方を示す。
【0082】
【表4】

【0083】
コアを製造するために、有効物質を結合剤と混合する。例えば、本明細書に記載の実施態様に関して、慣用されているシグマミキサーを使用してCA−398−10NF及び食用青色1号を適当な時間(例えば、10分間)混合する。所要により、初期混合ステップ中に可塑剤(例えば、トリアセチン)を混合物中に例えば本明細書に記載の実施態様では専用2流体アトマイザーを用いて添加する。次いで、この混合物を適当な時間(例えば、1時間)放置した後、例えば#109スクリーンを備えたFitzmillデバイスを用いて粉砕することが好ましい。次いで、本発明の実施態様のように、粉砕した混合物を慣用のリボンブレンダーに添加して、該ブレンダー中で親水性物質及び錠剤化助剤(例えば、それぞれHPMC及びリン酸二カルシウム)を混合する。この実施態様の混合のためには約10分が適当な時間である。混合物に混合する前に、一般流動剤(例えば、CAB−O−SIL)を適当な時間(例えば、5分間)予備混合し、例えば#120スクリーンを用いて篩い分けする。同様に、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)を適当な時間(例えば、5分間)混合物中に予備混合し、混合する。次いで、この混合物を所定のコア形状、例えば本明細書に記載されている実質的な正方形の錠剤にプレスする。
【0084】
本発明の剤形単位の被膜の製造に関し、表6は本明細書に具体的に記載されている錠剤に対する被膜組成物の典型的なバッチを示す。この代表的実施態様の各錠剤についての乾燥被膜の追加重量は錠剤重量の約10.0%に等しいことが好ましい。しかしながら、方法ロスを説明するために、被膜組成物の量は錠剤重量の約12.5%と同等増量する。この代表的実施態様の被膜を作成するために使用される1つの処理溶媒は飲料水である。
【0085】
【表5】

【0086】
被膜組成物は、まずほぼ半量(1/2)の溶媒水を疎水性基材及び所要により可塑剤と混合して調製する。このために、本発明の代表的実施態様では、可塑剤(例えば、TEC)を水に適当な時間(例えば、約2分間)混合した後、基材(例えば、FMC CAエマルション)をTEC/水混合物に迅速に添加する。この混合物を中程度に適当な時間(例えば、約30分間)撹拌し、コンシステンシーのためにスクリーン(例えば、50/009スクリーン)にかけて処理する。
【0087】
また、水の残り半量(1/2)を被膜組成物の親水性成分と混合する。例えば、本明細書に具体的に記載されているように、まずPEG 3350を水に中程度に適当な時間(例えば、約5分間)撹拌する。次いで、MALTRIN 100を添加し、中程度に更に5分間撹拌する。この混合物を代表的な実施態様では適当なスクリーン(例えば、50/009スクリーン)を介して濾過する。被膜に含有させる有効物質をこの時点で添加する。例えば、食用青色1号を添加し、中程度に10分間もしくは適当な時間撹拌する。
【0088】
本明細書に記載の代表的実施態様の最終ステップとして、2つの別々の混合物を中程度に適当な時間(例えば、約5分間)撹拌して組み合わせる。次いで、被膜組成物を錠剤コア上に適用するための条件に置く。好ましくは、組み合わせた混合物を被膜の適用が終了するまで撹拌する。
【0089】
本発明に従って被膜を適用するためには各種の公知方法を使用し得る。本明細書に具体的に記載されているように、例えば被覆を公知の噴霧方法を用いて適用することが好ましい。特に、好ましい実施態様では、回転可能なパン内に収容されているコア上に被膜組成物を噴霧するためのアトマイザーを含むAccelacota製被膜パンとして公知の被覆装置を使用する。Accelacota装置は、約55〜65℃の入口温度及び約43〜44℃の出口温度を有し、約70〜90psigの噴霧圧力で作動する。回転可能なパンは最初(例えば、約15分間)約3rpmで回転し、次いで被覆が完了するまで約5〜7rpmに回転速度を速める。被覆が完了したら、回転可能なパンを停止し、回転可能なパンを定期的に(例えば、5分毎に)軽く揺り動かしながら、入口温度を適当な乾燥温度(例えば、約65℃)で約30分間維持する。次いで、錠剤を適当な乾燥ラックに移して、適当な条件(例えば、55〜57℃で48時間またはそれ以上)で完全に乾燥させる。
【0090】
上記した詳細説明は、本発明の新規な剤形単位の構造及び製造方法に向けられる。特に、詳細説明は、経腸栄養補給アセンブリ及び方法と組み合わせて使用するための剤形単位を説明している。更に、本発明の別の態様によれば、上に詳記した構造及び方法は適当に修正して、非経口ドラッグ送達システム用剤形単位及び経口送達用剤形単位に適用可能である。しかしながら、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく本発明の方法及びシステムに対して各種改変及び変更をなし得ることは当業者に自明である。従って、本発明は添付の請求の範囲及びその均等の範囲内の改変及び変更も含むと意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に分散可能な少なくとも一つの有効物質および前記有効物質を結合するための相容性結合材を含有するコア、ならびに
マトリックス型膜を規定し得る実質的に疎水性の基材および前記流体中に分散可能な少なくとも一つの親水性成分を含有する混合物を含む、前記コアを包囲するラテックス被膜
を含む、有効物質を液体中に送達するための剤形単位。
【請求項2】
有効物質が患者の胃腸管に供給する経腸栄養製品中に分散可能である請求の範囲第1項に記載の剤形単位。
【請求項3】
有効物質が栄養素、薬、プロバイオティック、診断薬及びマーカー染料からなる群から選択される請求の範囲第1項に記載の剤形単位。
【請求項4】
有効物質がマーカー染料である請求の範囲第3項に記載の剤形単位。
【請求項5】
有効物質が蛍光性フレーバー成分である請求の範囲第3項に記載の剤形単位。
【請求項6】
蛍光性フレーバー成分がメチルアントラニレートである請求の範囲第5項に記載の剤形単位。
【請求項7】
コアが更に少なくとも1つの親水性物質を含有する請求の範囲第1項に記載の剤形単位。
【請求項8】
コアの結合剤が酢酸セルロースであり、前記コアは更に可塑剤成分を含有する請求の範囲第1項に記載の剤形単位。
【請求項9】
ラテックス被膜の基材が酢酸セルロースのエマルションから形成される請求の範囲第1項に記載の剤形単位。
【請求項10】
ラテックス被膜が親水性成分を作用させるために流体中に分散可能な有効物質を含有する請求の範囲第1項に記載の剤形単位。
【請求項11】
剤形単位が経腸栄養補給システムの調剤チャンバー内に配置されるように構成されている請求の範囲第1項に記載の剤形単位。
【請求項12】
流体中に分散可能な少なくとも一つの有効物質および前記有効物質を結合するための相容性結合材を含有するコアを形成するステップ、
マトリックス型膜を規定し得る実質的に疎水性のエマルションおよび前記流体中に分散可能な少なくとも一つの親水性成分を含有する混合物を含むラテックス組成物を調製するステップ、ならびに
前記ラテックス組成物をコアに適用してコア上にラテックス被膜を形成するステップ
を含む、有効物質を液体中に送達するための剤形単位の形成方法。
【請求項13】
有効物質が患者の胃腸管に供給する経腸栄養製品中に分散可能である請求の範囲第12項に記載の方法。
【請求項14】
形成ステップが、栄養素、薬、プロバイオティック、診断薬及びマーカー染料からなる群から選択される有効物質を選択することを含む請求の範囲第12項に記載の方法。
【請求項15】
有効物質がマーカー染料である請求の範囲第14項に記載の方法。
【請求項16】
形成ステップが更にコア中に少なくとも1つの親水性物質を配合することを含む請求の範囲第12項に記載の方法。
【請求項17】
形成ステップがコアの結合剤として酢酸セルロースを配合することを含み、前記形成ステップは更にコアの構造を高めるために酢酸セルロースを可塑剤で軟化させることを含む請求の範囲第12項に記載の方法。
【請求項18】
軟化ステップの可塑剤がトリアセチンである請求の範囲第17項に記載の方法。
【請求項19】
調製ステップが基材としての酢酸セルロースのエマルションと少なくとも1つの親水性成分を混合することを含む請求の範囲第12項に記載の方法。
【請求項20】
調製ステップがラテックス組成物の親水性成分として作用するように流体中に分散可能な有効物質を配合することを含む請求の範囲第12項に記載の方法。
【請求項21】
調製ステップが更にラテックス組成物の有効物質を栄養素、薬、プロバイオティック、診断薬及びマーカー染料からなる群から選択することを含む請求の範囲第20項に記載の方法。
【請求項22】
適用ステップがラテックス組成物をコアに噴霧することを含む請求の範囲第12項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−144542(P2012−144542A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−47597(P2012−47597)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【分割の表示】特願2001−507461(P2001−507461)の分割
【原出願日】平成12年6月28日(2000.6.28)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】