説明

ラニチジン含有被覆粒子及びその製造方法

【課題】ラニチジンのマスキング効果に優れたラニチジン含有被覆粒子、ラニチジン含有被覆粒子の製造方法、及びこのラニチジン含有被覆粒子を含む粒状医薬製剤を提供する。
【解決手段】ラニチジンが担持体内部に担持されたラニチジン担持粒子の表面が、融点45℃以上のポリエチレングリコールで被覆されたラニチジン含有被覆粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラニチジン含有被覆粒子、ラニチジン含有被覆粒子の製造方法、及びこのラニチジン含有被覆粒子を含む粒状医薬製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラニチジンはH2ブロッカーであり、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、胃炎、上部消化管出血等の治療に有効である。しかしながら、ラニチジンには特有の苦味がある。通常苦味マスキングは、マスキング対象成分を含む粒子又は錠剤に、水性コーティング基材を噴霧しつつ乾燥してコーティングすることにより行われる。ところが、ラニチジンは水への溶解性が高く、上記コーティング操作中にコーティング液中に成分が溶けだしてしまい、苦味マスキングが不十分になるという問題があった。以上のことから、予めコーティング基材と薬剤を乾式造粒し密着させた後、長時間熱処理をしてコーティングする技術が開示されているが、この方法では薬剤の溶出が極端に遅延すると言う問題があった(特許文献1:特開平4−300821号公報参照)。また一度コーティングを行った後、さらにその粒子を別のコーティング基材でコーティングする方法も開示されているが、この方法ではマスキングは完全となるが、工程が複雑であり、溶出遅延の問題は避けられない(特許文献2:WO2005/039538号参照)。また、苦味のある水溶性薬剤を多孔性担持体に含浸させ、苦味マスキング剤と混合し、通常の造粒を行う方法が提案されているが(特許文献3:特開2005−82594号公報参照)、苦味マスキング剤を混合しただけでは被覆は不完全で有り、また、実施例に示されているようにその後水溶液で造粒を行うとラニチジン塩酸塩のように水溶性の極めて高い薬剤は粒子表面に移動してしまい、マスキングが不十分となってしまう。以上のことから、上記課題を克服し、ラニチジンのマスキング効果に優れたラニチジン含有被覆粒子が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−300821号公報
【特許文献2】WO2005/039538号
【特許文献3】特開2005−82594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ラニチジンのマスキング効果に優れたラニチジン含有被覆粒子、ラニチジン含有被覆粒子の製造方法、及びこのラニチジン含有被覆粒子を含む粒状医薬製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ラニチジンが担持体内部に担持されたラニチジン担持粒子の表面が、融点45℃以上のポリエチレングリコールで被覆されたラニチジン含有被覆粒子とすることで、ラニチジンの苦味マスキング効果が向上することを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は下記ラニチジン含有被覆粒子、粒状医薬製剤及びラニチジン含有被覆粒子の製造方法を提供する。
[1].ラニチジンが担持体内部に担持されたラニチジン担持粒子の表面が、融点45℃以上のポリエチレングリコールで被覆されたラニチジン含有被覆粒子。
[2].ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール6000である[1]記載のラニチジン含有被覆粒子。
[3].[1]又は[2]記載のラニチジン含有被覆粒子を含む粒状医薬製剤。
[4].下記(1)〜(4)の工程を含む[1]記載のラニチジン含有被覆粒子の製造方法。
下記(1)〜(4)の工程を含む請求項1記載のラニチジン含有被覆粒子の製造方法。
(1)担持体にラニチジン又はその塩の溶液又は分散液を含浸させ、乾燥して担持体内部にラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子を得る工程
(2)得られたラニチジン担持粒子と、融点45℃以上のポリエチレングリコールとを、粉体混合する工程
(3)得られた粉体混合物を、流動又は攪拌状態にて加温する加温処理工程
(4)加温処理工程後、流動又は攪拌状態にて冷却する冷却処理工程
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラニチジンの苦味マスキング効果を有するラニチジン含有被覆粒子、ラニチジン含有被覆粒子の製造方法、及びこのラニチジン含有被覆粒子を含む粒状医薬製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のラニチジン含有被覆粒子は、ラニチジンが担持体内部に担持されたラニチジン担持粒子の表面が、融点45℃以上のポリエチレングリコールで被覆されたものである。以下、I.ラニチジン担持粒子、II.ラニチジン含有被覆粒子、III.粒状医薬製剤の順に説明する。
【0009】
I.ラニチジン担持粒子
[ラニチジン]
ラニチジンとしては、ラニチジン及びその薬学的に許容される塩が利用できる。具体的にはラニチジン塩酸塩が好ましく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ラニチジン含有被覆粒子に対するラニチジン含有量は、ラニチジン塩酸塩量として5〜20質量%が好ましい。また、粒状医薬製剤に対するラニチジン含有量は、ラニチジン塩酸塩として通常治療で用いられる摂取範囲となるように適宜選定される。例えば、1日摂取量が50〜300mg程度、好ましくは150〜300mgとなるように適宜選定される。
【0010】
[担持体]
ラニチジンを担持する担持体としては、担持体内部にラニチジンを担持できるものであれば特に限定されないが、水難溶性又は水不溶性の多孔質体(粒子)、繊維同士の絡みの間にラニチジンを担持できる繊維粒子、層状粘土鉱物等が挙げられる。多孔質体としては、合成ヒドロタルサイト、含水二酸化ケイ素(無水ケイ酸)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水燐酸カルシウム、ゼオライト等が挙げられ、繊維粒子としては、結晶セルロース等が挙げられ、層状粘土鉱物としてはスメクタイトが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、水難溶性又は水不溶性の多孔質体が好ましく、ラニチジン塩酸塩の安定化効果の点から、合成ヒドロタルサイトが好ましい。なお、本発明において、水難溶性とは、水1000mL中の溶解量が1g未満であるものをいう。
【0011】
担持体のJIS K5101法に準じた吸水量は、100mL/100g以上が好ましく、上限は特に限定されないが700mL/100g以下である。具体的には、合成ヒドロタルサイト(協和化学工業(株)製アルカマックSN)145mL/100g、結晶セルロース(旭化成工業(株)製セオラスPH101)150mL/100g、含水二酸化ケイ素(無水ケイ酸)(富士シリシア化学(株)製サイリシア740)700mL/100g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業(株)製ノイシリンUS2)270mL/100gである。
【0012】
担持体のラニチジンに対する割合は、ラニチジンを担持できる範囲であれば特に限定されないが、例えば、ラニチジン塩酸塩1質量部に対し1〜5質量部が好ましく、2.5〜4.0質量部がより好ましい。
【0013】
[ラニチジン担持粒子の製造方法]
本発明の担持粒子は、上記担持体内部にラニチジンを担持させたものであり、例えば、担持体に、ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液を含浸させ、乾燥することにより得ることができる。含浸の方法としては、担持体に、ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液を噴霧する方法が挙げられる。ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液の溶媒としては、水、エタノール、水−エタノール混合溶液等が挙げられる。噴霧後又は噴霧乾燥後に、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルファ化でんぷん又はゼラチン等の分散液を別途噴霧してさらに造粒してもよい。結合剤の中でも、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。溶液又は分散液中のラニチジン塩酸塩の濃度は10〜75質量%が好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルファ化でんぷん又はゼラチン等の溶液又は分散液中の濃度は1〜20質量%が好ましい。
【0014】
ラニチジンを担持する上記担持体の平均粒径は0.5〜500μmが好ましく、ラニチジン担持後のラニチジン担持粒子の平均粒径は0.5〜850μmがより好ましく、75〜400μmがさらに好ましい。本発明でいう平均粒径は、セイシン企業製ロボットシフターRPS−95を用いて、篩い上質量累積を求め、試料質量に対する篩い上質量50%位置の目開きとして算出した中位径(D50)である。
【0015】
さらに、上記ラニチジン担持粒子を、流動層造粒、攪拌造粒、押出造粒、転動造粒、乾式造粒又はこれらを組み合わせた方法により造粒してもよい。乾燥は流動層乾燥、ドライオーブン、又はフリーズドライ等が挙げられる。造粒及び乾燥まで一貫して行なえ、効率的であることから、流動層造粒が好ましい。乾燥温度(流動層乾燥の場合は排気温度)時間は特に限定されず、40〜80℃で、5〜30分程度行うことが好ましい。
【0016】
II.ラニチジン含有被覆粒子
本発明のラニチジン含有被覆粒子は、上記ラニチジン担持粒子の表面が、融点45℃以上のポリエチレングリコールで被覆されたものである。
【0017】
[融点45℃以上のポリエチレングリコール]
融点45℃以上のポリエチレングリコールは上記ラニチジン担持粒子を被覆するものである。このような特定のポリエチレングリコールで被覆することにより、担持体内部の水溶性のラニチジン溶出性を維持したままで、ラニチジンの苦味マスキング効果が向上する。被覆剤として油脂成分等を用いた場合には溶出性が悪くなる。本発明においては、融点45℃以上のポリエチレングリコールであり、常温で固体のポリエチレングリコールで粉末(好適には平均粒径D50は20〜200μm)が好ましい。融点45℃以上のポリエチレングリコールとしては、具体的には、ポリエチレングリコール4000(融点53〜57℃)、ポリエチレングリコール6000(融点56〜61℃)、ポリエチレングリコール20000(融点56〜64℃)等が挙げられる。中でも、ポリエチレングリコール6000が好ましい。なお、ポリエチレングリコール6000等は日本薬局法に基づくものであり、融点は示差走査熱量計を用いて測定された値である。
【0018】
融点45℃以上のポリエチレングリコールは、ラニチジン担持粒子1質量部に対し0.5質量部以上が好ましく、1.2質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、過剰の被覆による溶出遅延や粒子が造粒され大きくなることより服用性が低下する等の点から、2質量部以下が好ましい。
【0019】
本発明のラニチジン含有被覆粒子には、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて適量配合することができる。配合方法としては、例えば、ラニチジン担持粒子を製造する際に、ラニチジン又はその塩の溶液又は分散液に配合してもよいし、ラニチジン担持粒子の造粒時に配合してもよいし、ラニチジン含有被覆粒子を製造する際に、ポリエチレングリコールを溶融させる前後いずれでもよいが、ラニチジン担持粒子表面には、ポリエチレングリコールのみが被覆されていることが好ましい。
【0020】
上記任意成分としては、例えば、マスキング処理の必要性が低い成分又は粒粉体、乳糖、デンプン、マルトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の賦形剤、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、硬化ヒマシ油、タルク、マクロゴール等の滑沢剤、軽質無水ケイ酸等の流動促進剤等が挙げられ、その他、必要に応じて崩壊補助剤、緩衝剤、保存剤、香料、色素、矯味剤等を使用することができる。
【0021】
ラニチジン含有被覆粒子の平均粒径は、0.5〜850μmが好ましく、75〜450μmがより好ましい。なお、ラニチジン担持粒子と、これをポリエチレングリコールで被覆した粒子との平均粒径との差は50μm以下が好ましい。
【0022】
[ラニチジン含有被覆粒子の製造方法]
本発明のラニチジン含有被覆粒子は、上記ラニチジン担持粒子の表面が、融点45℃以上のポリエチレングリコールで被覆されたものであり、例えば、下記工程により得ることができる。
(1)担持体にラニチジン又はその塩の溶液又は分散液を含浸させ、乾燥して担持体内部にラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子を得る工程
(2)得られたラニチジン担持粒子と、融点45℃以上のポリエチレングリコールとを、粉体混合する工程
(3)得られた粉体混合物を、流動又は攪拌状態にて加温する加温処理工程
(4)加温処理工程後、流動又は攪拌状態にて冷却する冷却処理工程
以下、(1)の工程は上記ラニチジン担持粒子で説明したとおりであり、以下(2)〜(4)について詳述する。
【0023】
(2)ラニチジン担持粒子と、融点45℃以上のポリエチレングリコールとを、粉体混合する工程
本工程は、ラニチジン担持粒子と被覆物となるポリエチレングリコールとを、粉体状態で均一に混合し、粉体混合物を得る工程である。混合は、ラニチジン担持粒子と、粉体のポリエチレングリコールとを、該ポリエチレングリコールの融点以下で混合する。このように、両者を粒子又は粉体状態で混合せず、ポリエチレングリコール水溶液等の溶液を用いた場合、ラニチジンが溶媒に溶解し被覆膜表面に出てくるため、苦味マスキング効果が不十分となる。また融点を超えた温度で溶融した状態のポリエチレングリコールを、ラニチジン担持粒子と混合すると、局在化が起こりラニチジン担持粒子の被覆が不十分となりやすく、充分なマスキング効果を得るためにポリエチレングリコール量が多く必要となり、結果としてラニチジンの溶出遅延が起こるおそれがある。
【0024】
(3)得られた粉体混合物を、流動又は攪拌状態にて加温する加温処理工程
本工程は、粉体状態で均一に混合された粉体混合物を、流動又は攪拌させて均一性を保ちながら、加温してポリエチレングリコールを溶融させ、これをラニチジン担持粒子表面に付着させて被覆する工程である。粉体状態で均一に混合した後、加温することで、溶融したポリエチレングリコールがラニチジン担持粒子表面に均一に付着し、被覆する。
【0025】
なお、本発明の「加温処理」とは、ポリエチレングリコールの融点以上の温度で粉体混合物に熱を供給することを意味し、必ずしも粉温と同一ではない。即ち、本発明の「加温処理温度」は供給する熱源の温度を意味する。例えば、攪拌造粒機等造粒機自体を熱して加温する場合は、造粒機(具体的には粉体が接触、離脱を繰り返す壁面等)の温度であり、流動層造粒機等加熱した気体により熱を供給する場合は、流動用気体の給気温度である。
【0026】
上記「加温処理温度」は、使用するポリエチレングリコールの融点以上、ラニチジンの分解点である140℃以下で行うことが好ましい。上記ポリエチレングリコールの融点は、示差走査熱量計を用いて測定することができる。例えば、(株)リガク製示差走査熱量計DSC8230Dを用いて測定したポリエチレングリコール6000(三洋化成工業(株)製)の融点は58℃である。融点より低い温度ではポリエチレングリコールが液化しないため十分なマスキング効果が得られず、140℃を超えるとラニチジンが分解するおそれがある。好適な加温処理温度は、ポリエチレングリコールの液化のしやすさの点で、用いたポリエチレングリコールの融点の5℃以上、より好適には10℃以上である。また、ラニチジンの安定性の点から、135℃以下とすることがより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
【0027】
加温処理工程の昇温速度は特に制限はないが、毎分5℃以上、好ましくは毎分10℃以上の速度で昇温させることが好ましい。加温処理温度に達してからの温度維持時間は、加温処理温度により調整されるが、1分以上とするのが好ましく、2分以上がより好ましい。温度維持時間が1分未満だと、ポリエチレングリコールの液化が不十分で良好なマスキング効果が得られないおそれがある。温度維持時間の上限は特に制限はないが、処理時間を長くすると、造粒された粒径が大きな粒子が得られる場合がある。これは、加温処理により、経時で粉体自体の温度(粉温)が上昇するが、粉温がポリエチレングリコールの融点に達しその状態で処理を続けると、液化したポリエチレングリコールが結合剤の機能を発揮し造粒が起こるためである。より速い溶出性が得られる点から、得られる被覆粒子は被覆前のラニチジン担持粒子の平均粒子径の2倍以下となるように、加温処理時間を設定することが好ましい。具体的な時間は、加温処理温度、ポリエチレングリコール処理量、処理機械により調整をするが、粉温がポリエチレングリコールの融点に達するまでを加温処理時間の上限とすることが特に好ましい。この目安として、攪拌造粒機等の造粒機自体を加温するタイプの機械を使用する場合は、造粒機内部の粉体の温度がポリエチレングリコールの融点の温度となるまでの時間、流動層造粒機等の流動気体が加温されるタイプの機械を使用する場合は、粉温を測定するか、あるいは排気温度を粉温と見なし、その温度がポリエチレングリコールの融点の温度となるまでの時間である。
【0028】
(4)加温処理工程後、流動又は攪拌状態にて冷却する冷却処理工程
本発明の冷却処理工程は、ポリエチレングリコールを固化できれば特に限定されず、その冷却速度も特に限定されない。「冷却処理温度」は粉温であり、流動層造粒機等の流動気体が加温されるタイプの機械を使用する場合は、粉温を直接測定するか、あるいは排気温度を粉温とみなすことができる。本発明の冷却処理工程は単に熱源を切るだけでも可能である。冷却処理工程終了温度としては、ポリエチレングリコールが固化していれば良く、具体的には30℃以下が好ましい。
【0029】
上記(2)〜(4)の工程で用いる装置としては特に限定されず、流動層造粒機、転動流動造粒機、転動造粒機、攪拌造粒機、熱風対流型乾燥機等が挙げられ、中でも、流動層造粒機、転動流動造粒機が好ましい。
【0030】
III.粒状医薬製剤
本発明の粒状医薬製剤は、上記ラニチジン含有被覆粒子を含むものであり、上記ラニチジン含有被覆粒子のみで、あるいは他の有効成分や添加剤と混合して得ることができる。 ラニチジン含有被覆粒子の粒状医薬製剤に対する含有量は、上記ラニチジン塩酸塩の服用量となるように、1〜100質量%の範囲で適宜選定される。粒状医薬製剤は、胃腸薬、特に、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎又は胃炎治療剤として好適である。剤型は特に限定されないが、散剤、細粒剤、顆粒剤等の経口投与形態の製剤に調製することができる。配合は特に限定されず、公知の混合法、乾式造粒法を用いることができる。
【0031】
上記他の有効成分としては、胃腸薬に配合される薬物、例えば、粘膜修復剤、制酸剤、健胃剤、鎮痛痙攣薬等が挙げられる。
【0032】
粘膜修復剤としては、例えば、アズレンスルホン酸ナトリウム、アルジオキサ、アルジオキサ・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、グリチルリチン酸又はその塩、甘草又はその抽出物、L−グルタミン、銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、塩酸ヒスチジン、メチルメチオニンスルホニウムクロライド、赤芽柏、延胡索、ショ糖オクタ硫酸エステルアルミニウム塩(スクラルファート)、塩酸セトラキサート、ソファルコン、オルノプロスチル、スルピリド、塩酸セトラキサート、ゲファルナート、テプレノン、プラウノトール、アセグルタミドアルミニウム、メチルメチオニンスルフォニウムクロリド、ソファルコン等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でもスクラルファートが好ましい。スクラルファートはそのまま配合することができるが、造粒した粒子を使用してもよい。造粒は、流動層造粒、転動造粒又は混練造粒等の公知の造粒方法であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール等のバインダーとスラリー化して噴霧乾燥したもの等を用いることができる。このような市販品としては、「ストマクシン:富士化学工業(株)製」等が挙げられる。粒度は特に限定されないが、目開き1000μm及び850μmの篩を用いて、1000μmオンが0質量%、850μmオンが3質量%以下であることが好ましい。
【0033】
制酸剤としては、例えば、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈物、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化マグネシウム、沈降炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0034】
健胃剤としては、例えば、アニス実、アロエ、ウイキョウ、ウコン、ウヤク、オウゴン、オウバク、オウレン、ガジュツ、キジツ、ケイヒ、ゲンチアナ、コウジン、コウボク、ゴシュユ、コショウ、サンショウ、ショウキョウ、センブリ、ソウジュツ、ソヨウ、ダイウイキョウ、ダイオウ、チクセツニンジン、チョウジ、チンピ、トウガラシ、トウヒ、ニクズク、ニンジン、ハッカ、ヒハツ、ビャクジュツ、ホップ、ホミカエキス、リュウタン、リョウキョウ等の健胃生薬等が挙げられる。
【0035】
鎮痛鎮痙薬としては、例えば、ロートエキス、ブチルスコポラミン臭化物、チキジウム臭化物、スコポラミン臭化水素酸塩、パパベリン塩酸塩、メチルオクタトロピン臭化物、ジサイクロミン塩酸塩、メチルベナクチジウム臭化物、アミノ安息香酸エチル、オキセサゼイン等が挙げられる。
【0036】
上記添加剤としては、例えば、内服薬に許容される各種の結合剤、崩壊剤、賦形剤、滑沢剤、界面活性剤、香料、矯味剤(甘味料、酸味料等)、着色料等を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、適量を配合することができる。
【0037】
結合剤としては、例えば、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、乳糖、コーンスターチ、タルク、結晶セルロース、粉糖、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0038】
香料としては、例えば、フルーツ系フレーバー、生薬系フレーバー、ハーブ系フレーバー等が挙げられる。甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア等が挙げられる。酸味料としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。着色料としては、例えば、顔料、タール系色素等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0040】
[調製例1]ラニチジン担持粒子Aの調製
日局精製水にラニチジン塩酸塩を入れてよく撹拌して溶解させ、30質量%のラニチジン塩酸塩水溶液を得た。次に、流動層造粒機マルチプレックスMP−01(パウレック社製)に、合成ヒドロタルサイト(協和化学製アルカマックSN:平均粒径240μm)250gを入れ、これに、給気温度80℃、風量0.6Nm3/min.の熱風を供給し、上記で調製した30質量%ラニチジン塩酸塩水溶液を10g/min.の速度で噴霧して、表1のA欄に記載の30質量%ラニチジン塩酸塩水溶液量になるように含浸を行った。この時の排気温度は30〜35℃であった。その後、給気80℃、風量0.6Nm3/min.で20分間乾燥し(20分間乾燥後の排気温度は50℃以上)、平均粒径240μmのラニチジン担持粒子Aを得た。得られたラニチジン担持粒子Aの組成を表1に併記する。
【0041】
[調製例2]ラニチジン担持粒子Bの調製
日局精製水にラニチジン塩酸塩入れてよく撹拌して溶解させ、30質量%のラニチジン塩酸塩水溶液を得た。次に、流動層造粒機マルチプレックスMP−01(パウレック社製)に、合成ヒドロタルサイト(協和化学製アルカマックSN)250gを入れ、これに、給気温度80℃、風量0.6Nm3/min.の熱風を供給し、上記で調製した30質量%ラニチジン塩酸塩水溶液を10g/min.の速度で噴霧して、表1のB欄に記載の30質量%ラニチジン塩酸塩水溶液量になるように含浸を行った。この時の排気温度は30〜35℃であった。その後、給気80℃で15分間乾燥した後、続けて7質量%のヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達(株))水溶液を給気温度80℃、風量0.6Nm3/min.の熱風を供給し、15g/min.の速度で噴霧した。この時の排気温度は30〜35℃であった。その後、給気80℃、風量0.6Nm3/min.で20分間乾燥し(20分間乾燥後の排気温度は50℃以上)、平均粒径320μmのラニチジン担持粒子Bを得た。得られたラニチジン担持粒子Bの組成を表1に併記する。
【0042】
【表1】

【0043】
[実施例1〜6]
流動層造粒機マルチプレックスMP−01(パウレック社製)に、表2に示すラニチジン担持粒子A,B及びポリエチレングリコール6000(融点58℃)を入れ、これを給気温度25℃、1.0Nm3の風量で1分間流動し混合した。続いて、給気の温度を80℃になるまで毎分10℃の速度で上昇させた。80℃に到達後その状態で3分間流動させた。このときの排気温度は39〜58℃(3分後)であった。その後、ヒーター電源を切り、給気を自然冷却した。排気温度が30℃になったところで流動を停止し、ラニチジン含有被覆粒子を得た。得られたラニチジン含有被覆粒子について、下記評価を行った。結果を表中に併記する。なお、上記加温処理前後の平均粒径は、セイシン企業製ロボットシフターRPS−95を用いて、篩い上質量累積を求め、試料質量に対する篩い上質量50%位置の目開きとして算出した。平均粒径の変化が50μm以下を許容とした。
【0044】
〈溶出率[%]〉
粒子1gを用いて第1液による日局溶出試験を行い、1分後のラニチジン塩酸塩の溶出量を液体クロマトグラフィーを用いて定量し、粒子中のラニチジン塩酸塩量に対する溶出率として算出した。
【0045】
〈苦味マスキング〉
健常な成人男子3名、女子2名で粒子1gを口に入れた初期の苦味について、下記5段階で評価を行い、結果を平均値で示す。3点以上を許容とした。
5:苦味を感じない
4:わずかに苦味を感じる
3:やや苦味を感じる
2:かなり苦味を感じる
1:非常に苦味を感じる
なお、苦味マスキング試験は、ラニチジン塩酸塩の含有量が実施例及び比較例の範囲内であれば、量による差はみられない。
【0046】
【表2】

【0047】
[比較例1]
ラニチジン塩酸塩63gと合成ヒドロタルサイト(協和化学製アルカマックSN)250gを流動層造粒機マルチプレックスMP−01(パウレック社製)に入れ、7質量%のヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達(株))水溶液243gを給気温度80℃、0.6Nm3の風量で20g/min.の速度で噴霧して造粒を行った。この時の排気温度は30〜35℃であった。これを給気80℃で15分間乾燥し、平均粒径340μmのラニチジン粒子を得た。次に流動層造粒機マルチプレックスMP−01(パウレック社製)を用い、ラニチジン粒子330gにポリエチレングリコール6000(協和化学工業(株)製マクロゴール6000)を330g入れ、これを給気温度25℃、0.6Nm3の風量で流動し混合した。続いて、給気の温度を80℃になるまで毎分5〜15℃の速度で上昇させた。80℃に到達後その状態で3分間流動させた。このときの排気温度は39℃であった。その後、ヒーター電源を切り、給気を自然冷却した。排気温度が30℃になったところで流動を停止し、平均粒径360μmのラニチジン含有被覆粒子を得た。なお、得られた粒子は、合成ヒドロタルサイト内部にラニチジンが担持されていないものであった。
【0048】
[比較例2]
ラニチジン塩酸塩63gと合成ヒドロタルサイト(協和化学製アルカマックSN)250g及びポリエチレングリコール6000(協和化学工業(株)製マクロゴール6000)313gを流動層造粒機マルチプレックスMP−01(パウレック社製)に入れ、これを給気温度80℃、0.6Nm3の風量で流動し混合した。続いて、7質量%のヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC−L:日本曹達(株))水溶液246gを給気温度80℃で、20g/min.の速度で噴霧して造粒を行った。この時の排気温度は30〜35℃であった。これを給気80℃で15分間乾燥し、平均粒径650μmのラニチジン含有被覆粒子を得た。得られた粒子は、合成ヒドロタルサイト内部にラニチジンが担持されておらず、7質量%のヒドロキシプロピルセルロースをポリエチレングリコール存在下で噴霧しているため、ラニチジンが溶けて、ラニチジンが粒子表面にも存在していた。
【0049】
比較例1,2で得られたラニチジン含有被覆粒子の実施例と同様の評価を行った。比較例1,2で得られたラニチジン含有被覆粒子の組成と評価結果を表3に示す。
【0050】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラニチジンが担持体内部に担持されたラニチジン担持粒子の表面が、融点45℃以上のポリエチレングリコールで被覆されたラニチジン含有被覆粒子。
【請求項2】
ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール6000である請求項1記載のラニチジン含有被覆粒子。
【請求項3】
請求項1又は2記載のラニチジン含有被覆粒子を含む粒状医薬製剤。
【請求項4】
下記(1)〜(4)の工程を含む請求項1記載のラニチジン含有被覆粒子の製造方法。
(1)担持体にラニチジン又はその塩の溶液又は分散液を含浸させ、乾燥して担持体内部にラニチジンを担持させたラニチジン担持粒子を得る工程
(2)得られたラニチジン担持粒子と、融点45℃以上のポリエチレングリコールとを、粉体混合する工程
(3)得られた粉体混合物を、流動又は攪拌状態にて加温する加温処理工程
(4)加温処理工程後、流動又は攪拌状態にて冷却する冷却処理工程

【公開番号】特開2011−132170(P2011−132170A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292743(P2009−292743)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】