説明

ラパマイシンアナログを含む医療用具

薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含むかまたは支持することが可能である支持構造を含む医療用具であって、このキャリアまたは賦形剤は、1種以上の治療剤または治療物質を含んでもよく、このキャリアは、好ましくは、その表面にコーティングを含み、このコーティングは、例えば、薬物などの治療物質を含む。本発明における使用のために適切である医療用具のための支持構造には、脈管構造中で使用される、冠状動脈ステント、末梢ステント、カテーテル、動静脈移植片、バイパス移植片、および薬物送達バルーンが含まれるがこれらに限定されない。本発明における使用のために適切な薬物には(I)が含まれるがこれに限定されない。この薬物は、抗増殖剤、抗血小板剤、抗炎症剤、抗血栓剤、細胞毒性剤、サイトカインもしくはケモカイン結合を阻害する薬剤、細胞脱分化阻害剤、抗脂肪性浮腫剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、細胞増殖抑制薬物、またはこれらの薬物の組み合わせから選択されるものを含む、別の薬物と組み合わせて使用することができる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫調節活性および/または抗再狭窄活性を有する新規な化学化合物、ならびに当該新規化合物の調製のために有用な合成中間体、特にマクロライド免疫調節剤に関する。より詳細には、本発明は、ラパマイシンの半合成アナログ、その調製の方法、このような化合物を含む薬学的組成物、およびこれらを利用する治療の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物シクロスポリン(シクロスポリンA)は、その臓器移植および免疫調節の分野における導入が移植手順の成功率の有意な増加をもたらしてきたため、広範な用途が見い出されてきた。最近、強力な免疫調節活性を有する大環状化合物のいくつかのクラスが発見されてきた。1986年6月11日に公開されたOkuharaら、欧州特許出願第184,162号は、ストレプトマイセス属から単離された多数の大環状化合物を開示し、これには、S.ツクバエンシス(S.tsukubaensis)の株から単離された23員大環状ラクトンである免疫抑制剤FK−506が含まれる。
【0003】
C−21位においてそれらのアルキル置換基がFK−506とは異なる、FR−900520およびFR−900523などの他の関連する天然産物は、S.ハイグロスコピカス ヤクシムナエンシス(S.hygroscopicus yakushimnaensis)から単離された。S.ツクバエンシスによって産生された別のアナログFR−900525は、ピペコリン酸部分のプロリン基による置き換えによってFK−506とは異なる。シクロスポリンおよびFK−506には腎毒性などの不満足な副作用を伴うことから、局所的に有効であるが全身的には有効ではない免疫抑制剤を含む、改善された効力および安全性を有する免疫抑制化合物の継続的な探索が行われている(米国特許第5,457,111号)。
【0004】
ラパマイシンは、ストレプトマイセス ハイグロスコピカスによって産生される大環状トリエン抗生物質であり、インビトロとインビボの両方で、特に、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)に対する抗真菌活性を有することが見い出された(C.Vezina et al.,J.Antibiot.1975,28,721;S.N.Sehgal et al.,J.Antibiot.1975,28,727;H.A.Baker et al.,J.Antibiot.1978,31,539;米国特許第3,929,992号;および同第3,993,749号)。
【化1】

【0005】
ラパマイシンは、単独で(米国特許第4,885,171号)、またはピシバニールと組み合わせて(米国特許第4,401,653号)、抗腫瘍活性を有することが示されている。1977年に、ラパマイシンはまた、多発性硬化症のモデルである、実験的アレルギー性脳脊髄炎モデルにおいて;関節リウマチのモデルであるアジュバント関節炎モデルにおいて免疫抑制剤として有効であることが示され;そしてIgE様抗体の形成を効果的に阻害することが示された(R.Martel et al.,Can.J.Physiol.Pharmacol.,1977,55,48)。
【0006】
ラパマイシンの免疫抑制効果は、組織不適合な齧歯類における臓器移植の生存時間を延長する能力を有するとして、FASEB,1989,3,3411においてもまた開示されている(R.Morris,Med.Sci.Res.,1989,17,877)。ラパマイシンがT細胞活性化を阻害する能力は、M.Strauch(FASEB,1989,3,3411)によって開示された。ラパマイシンのこれらのおよび他の生物学的効果は、Transplantation Reviews,1992,6,39−87に概説されている。
【0007】
ラパマイシンは、動物モデルにおいて新生内膜増殖を減少すること、およびヒトにおいて再狭窄の割合を減少することが示されてきた。ラパマイシンがまた、関節リウマチの治療のための薬剤としてのその選択を補助する性質である、抗炎症性効果を示す証拠が公表されてきた。細胞増殖と炎症の両方は、バルーン血管形成およびステント留置後の再狭窄病変の形成における原因となる要因であると考えられているので、ラパマイシンおよびそのアナログは再狭窄の予防のために提案されてきた。
【0008】
ラパマイシンのモノエステルおよびジエステル(31位および42位でのエステル化)は、抗真菌剤として(米国特許第4,316,885号)、およびラパマイシンの水溶性プロドラッグとして(米国特許第4,650,803号)、有用であることが示されてきた。
【0009】
ラパマイシンおよび30−デメトキシラパマイシンの発酵および精製は文献に記載されてきた(C.Vezina et al.J.Antibiot.(Tokyo),1975,28(10),721;S.N.Sehgal et al.,J.Antibiot.(Tokyo),1975,28(10),727;1983,36(4),351;N.L.Pavia et al.,J.Natural Products,1991,54(1),167−177)。
【0010】
ラパマイシンの多くの化学修飾が試みられてきた。これらには、ラパマイシンのモノエステル誘導体およびジエステル誘導体(WO92/05179)、ラパマイシンの27−オキシム(EP0 467606);ラパマイシンの42−オキソアナログ(米国特許第5,023,262号);二環式ラパマイシン(米国特許第5,120,725号);ラパマイシンダイマー(米国特許第5,120,727号);ラパマイシンのシリルエーテル(米国特許第5,120,842号);ならびにアリールスルホン酸およびスルファミン酸(米国特許第5,177,203号)の調製が含まれる。ラパマイシンは、その天然に存在するエナンチオマー型で最近合成された(K.C.Nicolaou et al.,J.Am.Chem.Soc,1993,115,4419−4420;S.L.Schreiber,J.Am.Chem.Soc.,1993,115,7906−7907;S.J.Danishefsky,J.Am.Chem.Soc.,1993,115,9345−9346)。
【0011】
ラパマイシンは、FK−506と同様に、FKBP−12に結合することが知られてきた(Siekierka,J.J.;Hung,S.H.Y.;Poe,M.;Lin,C.S.;Sigal,N.H.Nature,1989,341,755−757;Harding,M.W.;Galat,A.;Uehling,D.E.;Schreiber,S.L.Nature 1989,341,758−760;Dumont,F.J.;Melino,M.R.;Staruch,M.J.;Koprak,S.L.;Fischer,P.A.;Sigal,N.H.J.Immunol.1990,144,1418−1424;Bierer,B.E.;Schreiber,S.L.;Burakoff,S.J.Eur.J.Immunol.1991,21,439−445;Fretz,H.;Albers,M.W.;Galat,A.;Standaert,R.F.;Lane,W.S.;Burakoff,S.J.;Bierer,B.E.;Schreiber,S.L.J.Am.Chem.Soc.1991,113,1409−1411)。最近、ラパマイシン/FKBP−12複合体が、FK−506/FKBP−12複合体が阻害するタンパク質であるカルシニューリンとは区別できるさらに別のタンパク質に結合することが発見された(Brown,E.J.;Albers,M.W.;Shin,T.B.;Ichikawa,K.;Keith,C.T.;Lane,W.S.;Schreiber,S.L.Nature 1994,369,756−758;Sabatini,D.M.;Erdjument−Bromage,H.;Lui,M.;Tempest,P.;Snyder,S.H.Cell,1994,78,35−43)。
【0012】
経皮的経管的冠状動脈形成術(PTCA)は、Andreas Gruntzigによって1970年代に開発された。最初のイヌの冠状動脈拡張は、1975年9月24日に実施された;PTCAの使用を示す研究は、翌年に米国心臓学会(American Heart Association)の年次大会において発表された。その後すぐに、最初のヒト患者がスイスのチューリヒにおいて研究され、続いて、最初の米国人の患者がサンフランシスコおよびニューヨークにおいて研究された。この手法は、閉塞性冠状動脈疾患を有する患者の治療に関して、介入性心臓病学の実務を変化させたが、この手法は、長期的な解決を提供するものではなかった。患者は、血管閉塞と関連する胸痛の一時的な軽減のみを受け;反復処置がしばしば必要であった。再狭窄病変の存在は、この新規な手法の有用性を厳しく制限することが確定された。1980年代の終わり頃、ステントは、血管形成術後に血管の強度を維持するために導入された。ステント留置術は、今日実施される血管形成術の90%に含まれる。ステントの導入前に、再狭窄の割合は、バルーン血管形成術で治療された患者の30%から50%までの範囲であった。ステント内再狭窄の拡張後の再発率は、選択された患者の小集団中の70%まで高い可能性があるのに対して、新規のステント配置における血管造影再狭窄割合は約20%である。ステントの配置は、再狭窄の割合を15%〜20%まで減少した。このパーセンテージは、純粋に機械的なステント留置術を用いて獲得可能な最良の結果を表している可能性がある。再狭窄病変は、主として、新生内膜過形成によって引き起こされ、これは、経時変化と組織病理学的外見の両方において、アテローム硬化性疾患と明確に異なっている。再狭窄は、血管内腔に有意に作用する新生内膜組織を用いる、損傷した冠状動脈壁の治癒プロセスである。血管近接照射療法は、ステント内再狭窄病変に対して有効であるようである。しかし、放射線療法は、実用性および費用、ならびに安全性および耐久性についての長引いている問題の制限を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、再狭窄の割合をその現在のレベルの少なくとも50%削減することが所望されている。介入性器具業界によって、薬物溶出ステントを製造および評価するための広範囲な取り組みが進行中であるのはこの理由のためである。このような機器は、成功するならば、多くの利点を有することができる。なぜなら、原理的には、このような系は、周辺の手法技術または長期的な経口薬物療法のいずれの形態においても、補助的な治療を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの態様において、構造式:
【化2】

によって表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグが開示される。
【0015】
本発明の別の目的は、発酵によって得られる出発物質からのこのような化合物を調製するのための合成プロセス、ならびにこのような合成プロセスにおいて有用である化学中間体を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、活性成分として上記の少なくとも1種の化合物を含む薬学的組成物を提供することである。
【0017】
本発明のなお別の目的は、再狭窄、移植後組織拒絶、免疫および自己免疫不全、真菌増殖、および癌を含む種々の疾患状態を治療する方法を提供することである。
【0018】
別の態様において、本発明は、その表面にコーティングを有する支持構造を含む医療用具を提供し、このコーティングは、例えば、薬物などの治療物質を含む。本発明における使用のために適切である医療用具のための支持構造には、脈管構造中で使用される、冠状動脈ステント、末梢ステント、カテーテル、動静脈移植片、バイパス移植片、および薬物送達バルーンが含まれるがこれらに限定されない。本発明における使用のために適切であるがこれらに限定されない薬物には
【化3】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグが含まれるが、これには以下が含まれる。
【化4】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグ(本明細書中以下では、代替的に、A−179578と呼ばれる)、および
【化5】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグ;
【化6】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグ(本明細書中以下では、代替的に、A−94507と呼ばれる)。
【0019】
本発明における使用のために適切なコーティングには、治療剤、すなわち、薬物が実質的に可溶性である任意のポリマー性材料を含むことができるポリマー性コーティングが含まれるがこれに限定されない。このコーティングは、親水性、疎水性、生物分解性、または非生物分解性であり得る。この医療用具は、脈管構造中の再狭窄を減少する。A−179578などの薬物の直接的冠状動脈送達は、約0%〜25%のレベルまで再狭窄の割合を減少することが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
用語の定義
「プロドラッグ」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、血液中での加水分解によって、上記の化学式の親の化合物にインビボで迅速に転換される化合物をいう。徹底的な議論はT.Higuchi and V.Stella,「Pro−drugs as Novel Delivery systems」the A.C.S.Symposium SeriesのVol.14、および Edward B.Roche,ed.,「Bioreversible Carriers in Drug Design」 American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987によって提供され、これらの両方は参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
「薬学的に許容可能なプロドラッグ」という用語は、本明細書で使用される場合、健康な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、およびアレルギー反応を伴うことなくヒトおよび下等哺乳動物の組織と接触させる使用のために適切であり、合理的な損益比率に見合っており、かつそれらの意図する用途のために有効である、本発明の化合物の上記のプロドラッグ、ならびに可能な場合、本発明の化合物の双性イオン型をいう。本発明の特に好ましい薬学的に許容可能なプロドラッグは、本発明の化合物のC−31ヒドロキシル基のプロドラッグエステルである。
【0022】
「プロドラッグエステル」という用語は、本明細書で使用される場合、生理学的条件下で加水分解される任意のいくつかのエステル形成基をいう。プロドラッグエステル基の例には、アセチル、エタノイル、ピバロイル、ピバロイルオキシメチル、アセトキシメチル、フタリジル、メトキシメチル、インダニルなど、ならびに本発明の化合物のC−31ヒドロキシル基への、天然に存在するアミノ酸または天然に存在しないアミノ酸のカップリングに由来するエステル基が含まれる。
【0023】
「支持構造」という用語は、薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含むかまたは支持することが可能であるフレームワーク(framework)を意味し、このキャリアまたは賦形剤は、1つ以上の治療剤または物質、例えば、1つ以上の薬物および/または他の化合物を含んでもよい。支持構造は、典型的には、金属またはポリマー材料から形成される。治療剤または物質を含むことが可能である、生物分解ポリマーを含むポリマー材料から形成される適切な支持構造には、非限定的に、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,413,272号および同第5,527,337号に開示されるものが含まれる。
【実施例】
【0024】
本発明の1つの実施形態には、化学式
【化7】

の化合物がある。
【0025】
本発明の別の実施形態には、化学式
【化8】

の化合物がある。
【0026】
本発明の化合物の調製
本発明の化合物およびプロセスは、本発明の化合物がそれによって調製されてもよい方法を例証する以下の合成スキームと関連してより良好に理解される。
【0027】
本発明の化合物は、種々の合成経路によって調製されてもよい。代表的な手順はスキーム1に示される。
【化9】

【0028】
スキーム1に示されるように、トリフルオロメタンスルホン酸またはフルオロスルホン酸遊離基へのラパマイシンのC−42ヒドロキシルの転換によりAが得られた。束縛(hindered)非求核塩基、例えば、2,6−ルチジン、または好ましくは、ジイソプロピルエチルアミンの存在下でのテトラゾールでの遊離基の置き換えは、エピマーBおよびCが得られ、これらを、フラッシュカラムクロマトグラフィーによって分離および精製した。
【0029】
合成方法
前述のものは、本発明の化合物がそれによって調製されてもよい方法を例証し、かつ添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲を限定することを意図しない、以下の実施例を参照してより良好に理解されてもよい。
【0030】
実施例1
42−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(極性がより小さい異性体)
実施例1A
ジクロロメタン(0.6mL)中のラパマイシン(100mg、0.11mmol)の溶液を、窒素雰囲気下、78℃で、2,6−ルチジン(53μL、0.46mmol、4.3等量)およびトリフルオロメタンスルホン酸無水物(37μL、0.22mmol)で連続的に処理し、その後15分間攪拌し、室温まで温め、そしてジエチルエーテルを用いてシリカゲル(6mL)のパッドを通して溶出した。トリフレートを含む画分をプールおよび濃縮して、琥珀色の泡状物として指定された化合物を提供した。
【0031】
実施例1B
42−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(極性がより小さい異性体)
酢酸イソプロピル(0.3mL)中の実施例1Aの溶液を、ジイソプロピルエチルアミン(87mL、0.5mmol)および1H−テトラゾール(35mg、0.5mmol)で連続的に処理し、その後18時間攪拌した。この混合物を水(10mL)とエーテル(10mL)の間で分配した。有機物質をブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させた(NaSO)。有機物質の濃縮は粘着性の黄色固体を提供し、これは、ヘキサン(10mL)、ヘキサン:エーテル(4:1(10mL)、3:1(10mL)、2:1(10mL)、1:1(10mL))、エーテル(30mL)、ヘキサン:アセトン(1:1(30mL))で溶出するシリカゲル(3.5g、70〜230メッシュ)上のクロマトグラフィーによって精製した。1種の異性体をエーテル画分中で収集した。
MS(ESI)m/e 966(M)
【0032】
実施例2
42−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(極性がより大きい異性体)
実施例2A
42−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(極性がより大きい異性体)
実施例1Bにおいてヘキサン:アセトン(1:1)移動相を使用する、クロマトグラフィーカラムからのより遅く移動するバンドの収集は、指定された化合物を提供した。
MS(ESI)m/e 966(M)
【0033】
生物学的活性のインビトロアッセイ
本発明の化合物の免疫抑制活性は、ラパマイシン、ならびに両方とも米国特許第5,527,907号に開示されている2つのラパマイシンアナログ:40−エピ−N−[2’−ピリドン]−ラパマイシンおよび40−エピ−N−[4’−ピリドン]−ラパマイシンと比較した。活性は、Kino,T.et al.Transplantation Proceedings,XIX(5):36−39,Suppl.6(1987)によって記載されたヒト混合リンパ球反応(MLR)アッセイを使用して測定した。アッセイの結果は、表1に示されるように、本発明の化合物がナノモル濃度で有効な免疫調節因子であることを実証する。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例1および実施例2の薬理学的挙動は、カニクイザル(群あたりn=3)における単回の2.5mg/kg静脈内用量後に特徴付けした。各化合物は、水媒体中の20%エタノール:30%プロピレングリコール:2%クレモフォール(cremophor)EL:48%デキストロース5%の2.5mg/mL溶液として調製した。1mL/kg静脈内用量は、サルの伏在静脈中のスローボーラス(約1〜2分間)として投与した。血液サンプルは、投薬の前、および投薬の0.1(IVのみ)、0.25、0.5、1、1.5、2、4、6、9、12、24、および30時間後に、各々の動物の大腿動脈または大腿静脈から得た。EDTA保存サンプルを徹底的に混合し、その後の分析のために抽出した。
【0036】
血液のアリコート(1.0mL)を、内部標準を含む水(0.5ml)中の20%メタノールとともに均質化した。均質化したサンプルを、酢酸エチルおよびヘキサンの混合物(1:1(v/v)、6.0mL)で抽出した。有機層を、室温にて窒素流を用いて乾燥するまで蒸発させた。サンプルを、メタノール:水(1:1、150μL)中で再構築した。表題の化合物(50μL注入)を、逆相HPLCを使用して、UV検出を用いて夾雑物から分離した。サンプルは、実行を通して低温(4℃)に保持した。各研究からのすべてのサンプルをHPLC上で単一バッチとして分析した。
【0037】
実施例1、実施例2、および内部標準の曲線下面積(AUC)測定は、Sciex MacQuan(商標)ソフトウェアを使用して決定した。検量線は、理論濃度に対する比率の最小二乗法直線回帰を使用して、急上昇(spiked)血液標準のピーク面積比率(親の薬物/内部標準)から導き出した。これらの方法は、0.1ng/mLの見積もられた定量限界を有する標準曲線の範囲(相関>0.99)にわたって両方の化合物について直線状であった。最大血液濃度(CMAX)および最大血液濃度に達する時間(TMAX)は、観察された血液濃度−時間データから直接的に読み取った。血液濃度データは、CSTRIPを使用する複数の指数曲線フィッティングに供し、薬理学的パラメーターの見積もりを得た。見積もられたパラメーターは、NONLIN84を使用してさらに規定した。投薬後の0からt時間(最後の測定可能な血液濃度時間点)までの血液濃度−時間曲線の下の面積(AUC0−t)は、血液−時間プロフィールの線形台形規則(linear trapeziodal rule)を使用して計算した。残りの面積は無限まで外挿し、末端排出速度定数(β)によって除算した最終測定血液濃度(C)として決定し、AUC0−tに加えて、曲線下の全体の面積(AUC0−t)を産生した。
【0038】
図1および図2に示されるように、実施例1と実施例2の両方が、ラパマイシンと比較した場合に、驚くべきことに実質的に短い末端排出半減期(t1/2)を有した。従って、本発明の化合物のみが、十分な効力(表1)とより短い末端半減期(表2)の両方を提供する。
【表2】

【0039】
治療の方法
実施例において特定されるものを含むがこれらに限定されない本発明の化合物は、哺乳動物(とりわけヒト)における免疫調節活性を保有する。免疫抑制剤として、本発明の化合物は、心臓、腎臓、肝臓、骨髄、皮膚、角膜、肺、膵臓、小腸(intestinum tenue)、肢、筋肉、神経、十二指腸、小腸(small−bowel)、膵島細胞などのような器官または組織の移植による抵抗性などの免疫媒介疾患;骨髄移植によって引き起こされる移植片対宿主病;自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病、ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎などの治療および予防のために有用である。さらなる使用には以下の治療および予防が含まれる。炎症性および過剰増殖性皮膚疾患および免疫学的に媒介される病気の皮膚症状、例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎およびさらなる湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎(seborrhoeis dermatitis)、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、じんま疹、血管性浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、紅斑性狼瘡、ざ瘡および円形脱毛症;種々の眼疾患(自己免疫疾患および他の疾患)、例えば、角結膜炎、春季カタル、ベーチェット病と関連するブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜、角膜上皮ジストロフィ(dystrophia epithelialis corneae)、角膜白斑、および眼天疱瘡(ocular pemphigus)。加えて、喘息(例えば、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、および塵埃喘息)、特に慢性または難治性喘息(例えば、遅発型喘息および気道過敏性)、気管支炎、アレルギー性鼻炎などの状態を含む、可逆的閉塞性気道疾患が本発明の化合物によって標的とされる。粘膜および血管の炎症、例えば、胃潰瘍、虚血性疾患および血栓症によって引き起こされる血管損傷。さらに、内膜性平滑筋細胞過形成、再狭窄、および血管閉塞などの過剰増殖性血管疾患は、特に生物学的または機械的に媒介される血管損傷後に、本発明の化合物によって治療または予防することができる。
【0040】
本明細書に記載される化合物または薬物は、ポリマー性化合物でコートされたステントに適用することができる。ステントのポリマー性コーティングへの化合物または薬物の取り込みは、化合物または薬物を含む溶液にポリマーコートされたステントを十分な時間の間(例えば、5分間など)浸漬すること、次いで、このコートされたステントを好ましくは十分な時間の間(例えば、30分間など)風乾によって乾燥させることによって実行することができる。次いで、化合物または薬物を含むポリマーコートされたステントは、バルーンカテーテルからの展開によって冠状動脈に送達することができる。ステントに加えて、脈管構造に本発明の薬物を導入するために使用することができる他の機器には、移植片、カテーテル、およびバルーンが含まれるがこれらに限定されない。加えて、本発明の薬物の代わりに使用することができる他の化合物または薬物には、A−94507およびSDZ RADが含まれるがこれらに限定されない。
【0041】
ポリマーコートされたステントにおける使用のための本明細書に記載の化合物は、他の薬理的薬剤と組み合わせて使用することができる。再狭窄を予防する際に最も有効である、本発明の化合物と組み合わせる薬理的薬剤は、抗増殖剤、抗血小板剤、抗炎症剤、抗血栓剤、および血栓溶解剤のカテゴリーに分類することができる。これらのクラスは、さらに細分することができる。例えば、抗増殖剤は抗有糸分裂剤であり得る。抗有糸分裂剤は、細胞分裂を阻害するかまたは影響を与え、それによって、通常は細胞分裂に関与するプロセスが起こらない。抗有糸分裂剤の1つのサブクラスにはビンカアルカロイドが含まれる。ビンカアルカロイドの代表的な例には、ビンクリスチン、パクリタキセル、エトポシド、ノコタゾール、インジルビン、ならびにアントラサイクリン誘導体、例えば、ダウノルビシン、ダウノマイシン、およびプリカマイシンなどが含まれるがこれらに限定されない。抗有糸分裂剤の他のサブクラスには、抗有糸分裂アルキル化剤、例えば、タウロムスチン、ボフムスチン、およびフォテムスチンなど、ならびに抗有糸分裂代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート、フルオロウラシル、5−ブロモデオキシウリジン、6−アザシチジン、およびシタラビンなどが含まれる。抗有糸分裂アルキル化剤は、DNA、RNA、またはタンパク質を共有結合的に修飾することによって細胞分裂に影響を与え、それによって、DNA複製、RNA転写、RNA翻訳、タンパク質合成、または前述の組み合わせを阻害する。
【0042】
抗血小板剤は、(1)表面、典型的には、血栓形成性表面への血小板の接着を阻害すること、(2)血小板の凝集を阻害すること、(3)血小板の活性化を阻害すること、または(4)前述の組み合わせによって作用する治療的実体である。血小板の活性化は、それによって血小板が、静止した休止状態から、血栓形成性表面との接触によって誘導される多数の形態学的変化を血小板が受けるものに転換されるプロセスである。これらの変化には、偽足の形成が付随する血小板の形状の変化、膜受容体への結合、ならびに低分子およびタンパク質、例えば、ADPおよび血小板因子4などの分泌が含まれる。血小板の接着の阻害剤として作用する抗血小板剤には、エプチフィバチド、チロフィバン、gpIIbIIIaまたはαvβ3への結合を阻害するRGD(Arg−Gly−Asp)ベースのペプチド、gpIIaIIIbまたはαvβ3への結合をブロックする抗体、抗P−セレクチン抗体、抗E−セレクチン抗体、それらのそれぞれのリガンドに対するP−セレクチンまたはE−セレクチンの結合をブロックするペプチド、サラチン(saratin)、および抗フォン−ビルブラント因子抗体が含まれるがこれらに限定されない。ADP−媒介性血小板凝集を阻害する薬剤には、ディスアルレジン(disagregin)およびシロスタゾールが含まれるがこれらに限定されない。
【0043】
抗炎症剤もまた使用することができる。これらの例には、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール、および非ステロイド性抗炎症剤、例えば、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、およびスリンダクなどが含まれるがこれらに限定されない。これらの薬剤の他の例には、コグネイト受容体へのサイトカインまたはケモカインの結合を阻害して、サイトカインまたはケモカインによって伝達される炎症誘発性シグナルを阻害するものが含まれる。これらの薬剤の代表的な例には、抗IL−1抗体、抗IL−2抗体、抗IL−3抗体、抗IL−4抗体、抗IL−8抗体、抗IL−15抗体、抗GM−CSF抗体、および抗TNF抗体が含まれるがこれらに限定されない。
【0044】
抗血栓剤には、凝固経路における任意の段階において介在することができる化学的および生物学的実体が含まれる。特定の実体の例には、Xa因子の活性を阻害する低分子が含まれるがこれに限定されない。加えて、FXaとトロンビンの両方を、直接的または間接的に、阻害することができるヘパリノイド型薬剤、例えば、ヘパリン、ヘパリン硫酸、低分子量ヘパリンなど、例えば、商標Clivarin(登録商標)を有する化合物など、および合成オリゴサッカリド、例えば、商標Arixtra(登録商標)を有する化合物などである。直接的なトロンビン阻害剤、例えば、メラガトラン、キシメラガトラン、アルガトロバン、イノガトラン(inogatran)、およびトロンビンについてのPhe−Pro−Argフィブリノーゲン基質の結合部位のペプチド模倣物もまた含まれる。送達することができる抗血栓剤の別のクラスは、VII/VIIa因子阻害剤、例えば、抗VII/VIIa因子抗体、rNAPc2、および組織因子経路阻害剤(TFPI)などである。
【0045】
血栓形成(血塊)を分解することを補助する薬剤として定義することができる血栓溶解剤もまた、補助剤として使用することができる。なぜなら、血塊を溶解する作用は、血栓のフィブリンマトリックス中にトラップされた血小板を分散させることを補助するからである。血栓溶解剤の代表的な例には、ウロキナーゼまたは組換えウロキナーゼ、プロウロキナーゼまたは組換えプロウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子またはその組換え型、およびストレプトキナーゼが含まれるがこれらに限定されない。
【0046】
本発明の化合物と組み合わせて使用することができる他の薬物は、細胞毒性剤、例えば、TGFなどのアポトーシス誘導剤など、ならびにトポイソメラーゼ阻害剤、例えば、10−ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、およびドキソルビシンである。本発明の化合物と組み合わせて使用することができる他のクラスの薬物は、細胞脱分化を阻害する薬物および細胞増殖抑制薬物である。
【0047】
本発明の化合物と組み合わせて使用することができる他の薬剤には、例えば、フェノフィブラート、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えば、バチミスタット(Batimistat)など、エンドセリン−A受容体のアンタゴニスト、例えば、ダルセンタンなど、およびαvβ3インテグリン受容体のアンタゴニストが含まれる。
【0048】
本発明において使用される場合、コーティングは、治療剤、すなわち、薬物が実質的に可溶性である任意のポリマー性材料を含むことができる。コーティングの目的は、治療剤のための制御放出媒体として、または病巣の部位に治療剤を送達するためのリザーバとして役立つことである。コーティングはポリマー性であり得、さらに親水性、疎水性、生物分解性、または非生物分解性であり得る。ポリマー性コーティングのための材料は、ポリカルボン酸、セルロースポリマー、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマー、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、グルコサミノグリカン、ポリサッカリド、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸吉草酸塩、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ならびに前述の混合物およびコポリマーからなる群より選択することができる。ポリウレタン分散物(BAYHYDROLなど)およびアクリル酸ラテックス分散物などのポリマー分散物から調製したコーティングもまた、本発明の治療剤とともに使用することができる。
【0049】
本発明において使用することができる生物分解性ポリマーには以下が含まれる。ポリ(L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリグリコリド、ポリ(ジアキサノン)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリオルトエステルなどのポリマー;ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリヒドロキシ(酪酸−コ−吉草酸)、ポリグリコリド−コ−トリメチレンカーボネート;ポリ無水物;ポリホスホエステル;ポリホスホエステル−ウレタン;ポリアミノ酸;ポリシアノアクリル酸などのコポリマー;フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、およびヒアルロン酸などの生体分子;ならびに前述の混合物。本発明における使用のために適切な生物安定性材料には、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、アクリルポリマーおよびコポリマー、ポリアクリロニトリル、オレフィンとのビニルモノマーのポリスチレンコポリマー(例えば、スチレンアクリロニトリルコポリマー、エチレンメチルメタクリレートコポリマー、エチレンビニルアセテート)、ポリエーテル、レーヨン、セルロース誘導体(例えば、酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロースなど)、パリレンおよびその誘導体;ならびに前述混合物およびコポリマーなどのポリマーが含まれる。
【0050】
本発明において使用することができる別のポリマーは、ポリ(MPC:LAM:HPMA:TSMA)であり、ここで、w、x、y、およびzは、ポリマーを調製するための仕込みにおいて使用されるモノマーのモル比を表し、MPCは単位2−メタクリオイルオキシエチルホスホリルコリンを表し、LMAは単位ラウリルメタクリレートを表し、HPMAは単位2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを表し、そしてTSMAは単位3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートを表す。薬物含浸ステントは、血栓および/またはアテローム斑によって以前に閉塞された冠状動脈の効力を維持するために使用することができる。抗増殖剤の送達は、ステント内再狭窄の割合を減少する。
【0051】
他の治療可能な状態には以下が含まれるがこれらに限定されない。虚血性腸疾患、炎症性腸疾患、壊死性腸炎、腸炎症/アレルギー、例えば、セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、および潰瘍性大腸炎;神経性疾患、例えば、多発性筋炎、ギラン−バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎(polyneuritis)、多発性神経炎(multiple neuritis)、単発神経炎、および神経根障害;内分泌疾患、例えば、甲状腺機能亢進症およびバセドウ病;血液疾患、例えば、真正赤血球性貧血、再生不良性貧血(aplastic anemia)、再生不良性貧血(hypoplastic anemia)、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、顆粒球減少症、悪性貧血、巨赤芽球性貧血、および赤血球形成不全;骨疾患、例えば、骨粗鬆症;呼吸器疾患、例えば、サルコイドーシス、肺線維症、および特発性間質性肺炎;皮膚病、例えば、皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光アレルギー性過敏症、および皮膚T細胞性リンパ腫;循環器疾患、例えば、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎、および心筋症;コラーゲン疾患、例えば、強皮症、ヴェーゲナー肉芽腫、およびシェーグレン症候群;脂肪過多症;好酸球性筋膜炎;歯周病、例えば、歯肉、歯周組織、歯槽骨、および歯のセメント質の病変;ネフローゼ症候群、例えば、糸球体腎炎;脱毛を予防することもしくは発毛を提供すること、ならびに/または発毛の発生および育毛を促進することによる、男性型脱毛症または老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症およびセザリー症候群;アジソン病;例えば、保存、移植、または虚血性疾患(例えば、血栓症および心筋梗塞)の際に起こる、器官(例えば、心臓、肝臓、腎臓、および消化管)の虚血性−再灌流損傷などの器官損傷としての活性酸素媒介性疾患;腸疾患、例えば、内毒素性ショック、偽膜性大腸炎、および薬物または放射線によって引き起こされる大腸炎;腎臓疾患、例えば、阻血性急性腎不全および慢性腎不全;肺疾患、例えば、肺酸素または薬物(例えば、パラコートまたはブレオマイシン)によって引き起こされる中毒症、肺癌、および肺気腫;眼疾患、例えば、白内障、鉄沈着症、網膜色素変性症、老人性黄斑変性症、硝子体(vitreal)瘢痕、および角膜アルカリやけど;皮膚炎、例えば、多形性紅斑、線状IgA水疱皮膚炎、およびセメント皮膚炎;ならびに歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、環境汚染(例えば、空気汚染)、加齢、発癌、癌の転移、および高山病によって引き起こされる疾患;ヒスタミンまたはロイコトリエン−C放出によって引き起こされる疾患;ベーチェット病、例えば、腸、血管、または神経のベーチェット病、およびまた、口腔、皮膚、眼、外陰部、関節、副睾丸、肺、腎臓などに影響を与えるベーチェット病。さらに、本発明の化合物は、肝臓疾患、例えば、免疫原性疾患(例えば、慢性自己免疫性肝疾患、例えば、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、および硬化性胆管炎)、部分肝臓切除、急性肝臓壊死(例えば、毒素、ウイルス性肝炎、ショック、または無酸素症によって引き起こされる壊死)、およびBウイルス肝炎、非A/非B肝炎、肝硬変(例えば、アルコール性肝硬変)、および肝不全、例えば、劇症肝不全、遅発性肝不全、および「慢性における急性」肝不全(慢性肝不全に対する急性肝不全)の治療および予防のために有用であり、さらに、それらの有用な活性、例えば、化学療法的効果の増加ゆえに、種々の疾患、サイトメガロウイルス感染、特にHCMV感染、抗炎症活性、硬化性疾患および線維性疾患、例えば、ネフローゼ、強皮症、肺線維症、動脈硬化症、鬱血性心不全、心室肥大、手術後接着および瘢痕、脳卒中、虚血に関連する心筋梗塞および損傷、ならびに再灌流などのために有用である。
【0052】
加えて、本発明の化合物は、FK−506アンタゴニスト特性を保有する。従って、本発明の化合物は、免疫抑制または免疫抑制を含む障害の治療において使用されてもよい。免疫抑制を含む障害の例には、AIDS、癌、真菌感染、老人性認知症、外傷(創傷治癒、外科手術、およびショック)、慢性細菌感染、および特定の中枢神経系障害が含まれる。治療されるべき免疫抑制は、免疫抑制性大環状化合物、例えば、12−(2−シクロヘキシル−1−メチルビニル)−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エンの誘導体、例えば、FK−506またはラパマイシンの過剰摂取によって引き起こされる可能性がある。患者によるこのような医薬の過剰摂取は、指示された時間にそれらの医薬を取ることを彼らが忘れたことを彼らが理解する際に全く一般的であり、深刻な副作用を引き起こし得る。
【0053】
本発明の化合物が増殖性疾患を治療する能力は、Bunchman ET and CA Brookshire,Transplantation Proceed.23 967−968(1991);Yamagishi,et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.191 840−846(1993);およびShichiri,et al.,J.Clin.Invest.87 1867−1871(1991)に記載された方法に従って実証することができる。増殖性疾患には、平滑筋増殖、全身性硬化症、肝臓の硬変、成人呼吸窮迫症候群、特発性心筋症、紅斑性狼瘡、糖尿病性網膜症または他の網膜症、乾癬、強皮症、前立腺肥大、心臓過形成、動脈損傷または他の血管の病理学的狭窄後の再狭窄が含まれる。加えて、これらの化合物は、いくつかの増殖因子に対する細胞の応答と拮抗し、したがって、抗血管形成特性を保有し、これらの薬剤を、特定の腫瘍の増殖、ならびに肺、肝臓、および腎臓の線維性疾患を制御または逆転するために有用な薬剤にする。
【0054】
本発明の水溶液組成物は、自己免疫疾患(例えば、円錐角膜、角膜炎、角膜上皮触覚不全(dysophia epithelialis corneae)、白斑、モーレン潰瘍、強膜炎およびグレーブス眼症を含む)、および角膜移植の拒絶などの種々の眼の疾患の治療および予防のために特に有用である。
【0055】
上記または他の治療において使用される場合、本発明の化合物の1つの治療有効量は、そのような形態が存在する場合に純粋な形態で、または薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはプロドラッグの形態で利用されてもよい。その代わりに、この化合物は、1種または複数の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせて目的の化合物を含む薬学的組成物として投与されてもよい。本発明の化合物の「治療有効量」という語句は、任意の医学的処置に対して適用可能である合理的な損益比率で障害を治療するために十分な化合物の量を意味する。しかし、本発明の化合物および組成物の全体の一日の使用は、健康な医学的判断の範囲内で、主治医によって決定される。任意の特定の患者のための特定の治療的に有効な用量レベルは、治療される障害および障害の重篤度;利用される特定の化合物の活性;利用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的健康、性別、および食事;利用される特定の化合物の投与の時間、投与の経路、および排出の速度;治療の期間;利用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;ならびに医学分野において周知の同様の要因を含む種々の要因に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも低いレベルで化合物の用量を開始すること、および所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることは、十分に当業者の範囲内である。
【0056】
ヒトまたは下等動物に投与される本発明の化合物の全体の1日の用量は、約0.01から約10mg/kg/日までの範囲であってもよい。経口投与の目的のために、より好ましい用量は、約0.001から約3mg/kg/日までの範囲であってもよい。ステントからの局所的投与の目的のために、患者が受容する1日の用量はステントの長さに依存する。例えば、15mm冠状動脈ステントは、約1から約120マイクログラムまでの範囲の量の薬物を含んでもよく、数時間から数週間までの範囲の時間の長さにわたってその薬物を送達してもよい。所望される場合、有効な1日の用量は、投与の目的のために複数用量に分割されてもよく;結果的に、単回用量組成物は、1日の用量を作製するために、このような量またはその約数を含んでもよい。局所的投与は、適用の部位に依存して、0.001から3%mg/kg/日の範囲の用量を含んでもよい。
【0057】
薬学的組成物
本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物および薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含み、これは、経口的、経直腸的、非経口的、槽内、膣内、腹腔内、局所的(散剤、軟膏、ドロップ、または経皮パッチによるように)、頬側、経口または鼻スプレーとして、または局所的に、脈管構造中に配置されたステント中におけるように、投与されてもよい。「薬学的に許容可能なキャリア」という語句は、非毒性固体、半固体または液体充填剤、希釈剤、任意の型のカプセル化物質または製剤化補助剤を意味する。「非経口的」という用語は、本明細書で使用される場合、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、および動脈内注射、注入、ならびに例えば、脈管構造中などのような配置を含む投与の様式を指す。
【0058】
非経口注射のための本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な滅菌水溶液または非水系溶液、分散剤、懸濁液、またはエマルジョン、ならびに使用直前の滅菌注射可能溶液または分散液への再構築のための滅菌粉末を含む。適切な水性および非水性キャリア、希釈剤、溶媒、または媒体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびその適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0059】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントを含んでもよい。微生物の作用の妨害は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確実にされてもよい。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることもまた所望されてもよい。注射可能な薬学的型の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることによって引き起こされてもよい。
【0060】
ある場合において、薬物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。このことは、乏しい水溶性を有する結晶物質またはアモルファス物質の液体懸濁物の使用を伴ってもよい。次いで、薬物の吸収の速度は、溶解の速度に依存し、これは、次には、結晶のサイズおよび結晶型に依存する可能性がある。代替的には、非経口的に投与された薬物型の吸収の遅れは、油性媒体中に薬物を溶解または懸濁することに付随する。
【0061】
注射可能なデポー型は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生物分解可能なポリマー中で薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比率および利用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度は制御することができる。他の生物分解可能なポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポー注射可能製剤はまた、身体組織と適合可能であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を包接することによって調製される。
【0062】
注射可能製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通しての濾過によって、または使用直前に滅菌水もしくは他の滅菌注射可能媒体に溶解もしくは分散することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌薬剤を取り込ませることによって、滅菌することができる。
【0063】
経口投与のための固形剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、散剤、および顆粒剤が含まれる。このような固形剤形において、活性化合物は、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容可能な賦形剤、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カリウム、ならびに/またはa)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシアなど、c)保湿剤、例えば、グリセロール、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸、および炭酸ナトリウム、e)溶液遅延剤、例えば、パラフィン、f)吸収加速剤、例えば、四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ、ならびにi)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物とともに混合される。カプセル、錠剤、および丸薬の場合において、剤形はまた緩衝剤を含んでもよい。
【0064】
類似の型の固形組成物はまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、ソフト、半固体、およびハード−充填カプセルまたは液体−充填カプセル中に充填剤として利用されてもよい。
【0065】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒剤の固形剤形は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶コーティングおよび薬学的製剤分野において周知である他のコーティングを用いて調製することができる。これらは任意に乳白剤を含んでもよく、また、任意に遅延様式で、腸管の特定の部分において、活性成分のみ、またはそれを優先的に放出する組成物の剤形であり得る。使用することができる包埋された組成物の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれる。薬物を含むこれらの包埋組成物は、ステント、移植片、カテーテル、およびバルーンなどの医療用具上に配置することができる。
【0066】
活性化合物はまた、適切な場合、上述の賦形剤の1種以上とともに、マイクロカプセル化型であり得る。
【0067】
経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当分野において一般に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒など、溶解剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油(germ)、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含んでもよい。
【0068】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、甘味料、香料、および芳香剤などのアジュバントを含むことができる。
【0069】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロオキサイド、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにこれらの混合物として、懸濁剤を含んでもよい。
【0070】
局所的投与は、肺および眼の表面を含む、皮膚または粘膜への投与を含む。吸入のためのそれを含む、局所的投与のための組成物は、加圧されるかまたは加圧されなくてもよい乾燥粉末として調製することができる。加圧されていない粉末組成物において、微細に分割された形態の活性成分は、例えば、直径100マイクロメートルまでのサイズを有する粒子を含む、より大きなサイズの薬学的に許容可能な不活性キャリアと混合して使用されてもよい。適切な不活性キャリアには、ラクトースなどの糖が含まれる。望ましくは、少なくとも重量で95%の活性成分の粒子は、0.01〜10マイクロメートルの範囲の有効粒子サイズを有する。皮膚上のでの局所的使用のための組成物にはまた、軟膏、クリーム、ローション、およびゲルが含まれる。
【0071】
代替的には、この組成物は、加圧されてもよく、圧縮ガス、例えば、窒素または液化ガス噴霧剤を含んでもよい。液化噴霧剤媒体、および実際に全体の組成物は、好ましくは、活性成分が、任意の実質的な程度までそこに溶解しないようなものである。加圧組成物はまた界面活性剤を含んでもよい。この界面活性剤は、液体もしくは固体の非イオン性界面活性であってもよく、または固体のアニオン性界面活性剤であってもよい。ナトリウム塩の形態で固体のアニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0072】
さらなる形態の局所的投与は、眼の免疫媒介状態、例えば、自己免疫疾患、アレルギー性または炎症性状態、および角膜移植の治療として、眼に対するものである。本発明の化合物は、この化合物が、十分な時間の間、眼の表面と接触させて維持され、この化合物が眼の角膜および内部の領域、例えば、前眼房、後眼房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体(cilary)、レンズ、脈絡膜/網膜、および強膜に浸透させられるように、薬学的に許容可能な眼媒体中で送達される。薬学的に許容可能な眼媒体は、例えば、軟膏、植物油、またはカプセル化物質であってもよい。
【0073】
直腸または膣投与のための組成物は、好ましくは、坐剤または保持浣腸剤であり、これは、室温では固体であるが体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔で融解して活性化合物を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックスなどの適切な非刺激性賦形剤またはキャリアと、本発明の化合物を混合することによって調製することができる。
【0074】
本発明の活性化合物はまた、リポソームの形態で投与することができる。当分野において公知であるように、リポソームは、一般的には、リン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒体中に分散される単層または多層の水和液体結晶によって形成される。任意の非毒性の、生理学的に許容可能であり、かつ代謝可能な、リポソームを形成可能である脂質を使用することができる。リポソーム型の本発明の組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤などを含むことができる。好ましい脂質は、天然と合成の両方である、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成するための方法は当分野において公知である。例えば、Prescott,Ed.,Methods in Cell Biology,Volume XIV,Academic Press,New York,N.Y.(1976),p.33 et seq.を参照のこと。
【0075】
本発明の化合物はまた、1種以上の免疫抑制剤とともに同時投与されてもよい。本発明の範囲内にある免疫抑制剤には以下が含まれるがこれらに限定されない。IMURAN(登録商標)アザチオプリンナトリウム、ブレキナー(brequinar)ナトリウム、SPANIDIN(登録商標)グスペリムス三塩酸塩(ジオキシスペルグアリン(deoxyspergualin)としても公知)、ミゾリビン(ブレディニンとしても公知)、CELLCEPT(登録商標)ミコフェノール酸モフェチル、NEORAL(登録商標)シクロスポリンA(SANDIMMUNE(登録商標)の商標の下で、シクロスポリンAの異なる製剤として市販されている)、PROGRAF(登録商標)タクロリムス(FK−506としてもまた公知)、シロリムスおよびRAPAMUNE(登録商標)、レフルノミド(HWA−486としても公知)、グルココルチコイド、例えば、プレドニゾロンおよびその誘導体、抗体治療剤、例えば、オルソクローン(OKT3)およびZenapax(登録商標)、ならびに抗胸腺細胞グロブリン、例えば、胸腺グロブリン。
【0076】
実施例3
本実施例の目的は、ステントを含むブタ冠状動脈における新生内膜形成に対するラパマイシンアナログの効果を決定することであった。本実施例は、ラパマイシンアナログA−179578が、調合され、生体適合性のBiodiviYsio PC冠状動脈ステントから送達された場合に、ブタ冠状動脈中の新生内膜過形成および内腔サイズに好ましい影響を与えることを説明する。この知見は、このような組み合わせが、適切にヒトに適用された場合、新生内膜過形成を制限することによって、実質的な臨床的利点があり得ることを示唆する。
【0077】
薬剤A−179578はラパマイシンアナログである。本実施例において示される研究は、ラパマイシンアナログA−179578がブタ冠状動脈ステントモデル中で新生内膜過形成を減少する能力を評価するように設計した。このモデルにおけるA−179578の効力は、経皮的血管再生後のステント中の冠状動脈再狭窄の制限および治療のためのその臨床的潜在能力を示唆する。家畜のブタを使用した。なぜなら、このモデルは、ヒト被験体における新生内膜過形成を制限することを追求している他の研究者に対して比較し得る結果を生じるらしいからである。
【0078】
本実施例は、農場の若いブタの中に配置した冠状動脈ステントから溶出したA−179578を試験し、これらの結果をコントロールステントと比較した。コントロールステントは、そのストラットを覆う単独のポリマーを有した。ポリマーそれ自体が、実質的な程度まで、新生内膜過形成を刺激してはいけないので、このことは重要である。溶出した薬物が消失するにつれて、ポリマーに対する炎症性応答が、遅発型の「キャッチアップ現象」をおそらく生じることができ、ここでは、再狭窄プロセスが停止しないが、その代わりに遅くなる。この現象は、ヒト被験体において遅い日付において再狭窄を生じる。
【0079】
ステントは、各々のブタにおいて2つの血管に移植した。このモデルにおいて使用したブタは、一般的に、2〜4ヶ月齢であり、30〜40Kg体重であった。このように、2つの冠状動脈ステントは、1.1〜1.2のAnormal@ステント:動脈比を目視的に評価することによって、各々のブタに移植した。
【0080】
手順の日の最初に、ブタに経口アスピリン(1日に325mg)を与え、これらの課程の残りの間継続した。一般的な麻酔を、筋肉内注射、続いて静脈内のケタミン(30mg/kg)およびキシラジン(3mg/kg)によって達成した。誘導の時点でのさらなる投薬は、筋肉内投与されるアトロピン(1mg)およびフロシリン(flocillin)(1g)を含んだ。ステント手順の間、10,000単位のヘパリンの動脈内ボーラスを投与した。
【0081】
動脈への接近は、右外頚動脈上での切開および8Fシースの配置によって得た。この手順後、動物は、コレステロールまたは他の特別の補充を有さない正常な食餌で維持した。
【0082】
3.0mmの名目上の血管標的サイズを有するBiodivYsioステントを使用した。図2を参照のこと。ブタあたり2つの冠状動脈を、ステントの配置に対してランダムに割り当てた。ステントは、薬物溶出ステント(ポリマーおよび薬物ステント)またはポリマーのみでコートしたステント(ポリマーのみのステント)のいずれかであった。ステントは、標準のガイドカテーテルおよびワイヤによって送達した。ステントバルーンは、30秒未満の間、適切なサイズまで膨張させた。
【0083】
各ブタは、別々の冠状動脈に配置された1種のポリマーのみのステントおよび1種のポリマーおよび薬物のステントを有し、その結果、各ブタは、薬物のための1つのステントおよびコントロールのための1つのステントを有した。
【0084】
全体で20匹のサンプルサイズを、0.2mmの突き出される新生内膜の厚さを0.15mmの標準偏差で、0.95およびベータ0.02の検出力で検出するために選択した。
【0085】
組織学的試験および定量のために、28日目に動物を安楽死させた。灌流ポンプ系からの心臓の取り出し後、近位の冠状動脈への接近のために左心耳を除去した。損傷を有する冠状動脈セグメントを、心外膜を含まないように解剖した。病変を含むセグメントを単離し、それによって、十分な組織がいずれかの末端で関係のない血管を含むことを可能にした。各々がほぼ2.5cmの長さである前述のセグメントを、標準的なプラスチック包埋技術によって、包埋および加工した。次に、組織を加工し、ヘマトキシリン−エオシンおよび弾性−van Gieson技術を用いて染色した。
【0086】
低出力および高出力光学顕微鏡を使用して、較正されたレチクル、および較正分析ソフトウェアを利用するコンピュータに接続されたデジタル顕微鏡システムによって、顕微鏡視野の平面において長さの測定を行った。
【0087】
血管損傷および新生内膜応答の重篤度を、較正したデジタル顕微鏡によって測定した。内弾性板の完全性の重要性は当業者に周知である。ステントを有する血管中の組織病理学的な損傷スコアは、新生内膜の厚さと密接に関連するとして確認された。このスコアは損傷の深さに関連し、以下の通りである。
スコア 損傷の説明
0 内弾性板はインタクト;内皮は典型的には剥がれており、中膜は圧縮されているが裂けてはいない。
1 内弾性板は裂けている;中膜は典型的には圧縮されているが裂けてはいない。
2 内弾性板は裂けている;中膜は目視では裂けている;外弾性板はインタクトであるが圧縮されている。
3 外弾性板は裂けている;典型的には中膜の大きな裂け目が外弾性板を通して広がる;オイルワイヤは時折外膜に存在する。
【0088】
この損傷の定量的測定は、各ステント切片のすべてのステントワイヤについて評価した。較正したデジタル画像もまた、各ステントワイヤの部位において新生内膜の厚さを測定するために使用した。内腔領域、内弾性板とともに含まれる領域、および外弾性板中の領域もまた測定した。
【0089】
所与の切片についての各ステントワイヤ部位において、新生内膜の厚さは、各切片についての平均損傷スコアを得るために平均した。新生内膜の厚さの測定は、すべての場合において新生内膜がこの厚さを含むので、ステントワイヤの反管腔側に対して行った。
【0090】
測定、分析、および比較のために、中間のステント切片を使用した。データを、近位および遠位の切片について記録した(この報告のデータの節において含まれる)。
【0091】
本研究のためのデータ分析方法は、治療/コントロール群を横切って変動する動脈損傷を考慮する必要はなかった。なぜなら、軽度から中程度の損傷は、治療の違いを検出するのに十分な感度があるからである。両側t−検定は、ポリマーのみのステント(コントロール群)およびポリマーおよび薬物のステント(治療群)を横切って変数を比較するために実施した。本研究において、スケジュールした時点の前に死んだ動物はいなかった。
【0092】
表3は使用したブタおよび動脈を示す。表3において、LCXは左冠状動脈の回旋枝を意味し、LADは左冠状動脈前下行枝を意味し、そしてRCAは左冠状動脈を意味する。
【0093】
【表3】

【0094】
表4は、近位、中間、および遠位の切片を含む各々のステントについての平均損傷および新生内膜の厚さについてのすべてのデータについての結果の要約を示す。表4はまた、内弾性板(IEL)および外弾性板(EEL)によって測定されるような、内腔サイズ、狭窄パーセント、および動脈サイズを示す。
【0095】
【表4】

【0096】
試験群(ポリマーおよび薬物ステント)またはコントロール群(ポリマーのみのステント)の中で、近位、中間、または遠位の切片を横切って新生内膜領域または厚さについて統計学的に有意な違いは存在しなかった。この観察は、以前の研究と完全に一致しており、従って、試験デバイス(ポリマーおよび薬物ステント)対コントロールデバイス(ポリマーのみのステント)の統計学的比較のための中間切片のみの使用を可能にする。
【0097】
表5は、試験群およびコントロール群を横切った統計学的t−検定比較を示す。新生内膜の厚さ、新生内膜領域、内腔サイズ、および内腔狭窄のパーセントの統計学的な違いが存在し、薬物溶出ステントが明確に好ましかった。逆に、平均損傷スコア、外弾性板、または内弾性板領域について、試験群(ポリマーおよび薬物ステント)とコントロール群(ポリマーのみのステント)の間で統計学的に有意な違いは存在しなかった。
【0098】
【表5】

【0099】
ステント切片に対して近位および遠位の参照動脈を観察および定量した。これらの血管はすべての場合において正常であるように見え、コントロール群(ポリマーのみのステント)と試験群(ポリマーおよび薬物のステント)の両方において損傷していなかった。図3Aおよび3Bを参照のこと。以下のデータは、コントロール群のステントと、試験群のステントの間で統計学的に有意なサイズの違いが存在しなかったことを示す。
【0100】
近位参照直径(mm) 遠位参照直径(mm)
コントロール 4.46±1.20 3.96±1.16
(平均±SD)
試験 4.26±1.26 3.41±0.96
(平均+SD)
【0101】
このデータは、統計学的に有意な違いが存在し、これらの違いは、A−179578を溶出するステントが好ましいことを示唆する。本発明のステントは、より少ない新生内膜領域、より少ない新生内膜の厚さ、およびより大きな内腔領域を生じる。新生内膜または損傷のパラメーターについては、試験群(ポリマーおよび薬物のステント)とコントロール群(ポリマーのみのステント)の中で有意な違いは存在しなかった。試験群と比較して、コントロール群について動脈サイズ(ステントを含む)の有意な違いは存在しなかった。これらの後者の知見は、薬物を含むポリマーコーティングの動脈再構築特性において有意な違いを示唆しない。
【0102】
最大でも、中程度の炎症がポリマーおよび薬物のステントと、ポリマーのみのステントの両方で見い出された。この知見は、ポリマーが、薬物負荷を伴わない場合においてさえ、満足な生体適合性を示すことを示唆する。他の研究は、薬物が完全にポリマーから遊離した場合に、ポリマーそれ自体が、新生内膜を引き起こすために十分な炎症を生じることを示す。この現象は、臨床的に後期の再狭窄の遅いキャッチアップ(Acatch−up@)現象の原因である可能性がある。本実施例におけるポリマーは冠状動脈中で炎症を引き起こさなかったので、薬物が消費された後のポリマーに関する後期の問題はありそうにない。
【0103】
結論として、ポリマーとともに化合物A−179578を含むステントは、冠状動脈中に配置された場合に、ブタモデルにおける新生内膜過形成の減少を示した。
【0104】
実施例4
本実施例の目的は、ホスホリルコリン側鎖を含む生体適合性ポリマーでコートされた316L Electropolished Stainless Steel CouponsからのA−179578薬物の放出の速度を決定することである。
【0105】
HPLCバイアルのふたからのゴム隔壁をバイアルから取り外し、「テフロン」側を上に向けるようにガラスバイアル中に配置する。これらの隔壁は、試験サンプルのための支持体として働く。試験サンプルは、ホスホリルコリン側鎖を含む生体適合性ポリマー(PCポリマー)で事前にコートした316Lステンレス鋼クーポンであった。冠状動脈ステントは、一般的に316Lステンレス鋼で作られ、PCポリマーでコートされて、負荷薬物のための貯蔵部位を提供することができる。ステントを刺激するように働くこのコートされたクーポンは、隔壁に配置した。ガラス製ハミルトンシリンジを使用することによって、A−179578およびエタノールの溶液(10μl)を、各クーポンの表面に適用した。A−179578(30.6mg)を含む溶液を100%エタノール(3.0ml)に溶解した。このシリンジを、各適用の間にエタノールで洗浄した。ガラスバイアルのキャップをバイアル上にゆるく配置し、それによって、適切な換気を保証した。このクーポンを最短で1.5時間乾燥させた。12個のクーポンをこのようにして負荷した−6個は、デバイスに負荷された薬物の平均量を決定するために使用し、6個はデバイスから薬物を放出するために必要とされる時間を測定するために使用した。
【0106】
ク−ポンに負荷されたA−179578の総量を決定するために、クーポンはバイアルから取り出し、50/50アセトニトリル/0.01M リン酸緩衝液(pH 6.0、5.0ml)に配置した。このクーポンを、5210 Bransonソニケーター中に1時間配置した。次いで、このクーポンを溶液から取り出し、この溶液をHPLCによってアッセイした。
【0107】
時間放出研究を、以下の時間間隔−5、15、30、および60分間後の各々において、0.01M リン酸緩衝液、pH 6.0の新鮮なアリコート(10.0ml)からの個々のクーポンを浸漬し取り出すことによって行った。120、180、240、300、360分間の残りの時点について、5.0mlの体積の緩衝液を使用した。薬物放出相の間に混合を容易にするために、サンプルは、低速に設定したEberbachシェーカーに配置した。すべての溶液アリコートを、最終サンプルの試験が完了した後でHPLCによってアッセイした。
【0108】
HPLC分析は、以下の設定を有するHewlett Packardシリーズ1100機器を用いて実施した。
注入体積=100μl
取り込み時間=40分間
流速=1.0ml/分
カラム温度=40℃
波長=278nm
移動相=65% アセトニトリル/35% H
カラム=YMC ODS−A S5μm、4.6×250mm 部品番号A12052546WT
【0109】
上記の実験からの結果は以下の放出データを示した。
【0110】
【表6】

【0111】
実施例5
本実施例の目的は、15mm BiodivYsio薬物送達ステントからのA−179578の負荷および放出を決定することであった。
【0112】
ステントに薬物を負荷するために、エタノール中の50mg/mlの濃度のA−179578の溶液を調製し、12本のバイアル中に分注した。12個の個別のポリマーコートしたステントを、垂直位置でステントを保持するように設計した固定具上に配置し、このステントを、5分間垂直方向で薬物溶液中に浸漬した。ステントおよび固定具をバイアルから取り出し、過剰の薬物溶液を、吸収材料とステントを接触させることによってブロットして除いた。次いで、ステントを、逆さまの垂直位置で、30分間風乾させた。
【0113】
ステントを固定具から取り外し、各々のステントを50/50アセトニトリル/リン酸緩衝液(pH 5.1、2.0ml)に配置し、1時間超音波処理した。ステントを溶液から取り出し、この溶液を、薬物の濃度についてアッセイし、これは、ステント上のもともとの薬物の量の計算を可能にした。この方法は、ステントコーティングからの薬物の少なくとも95%を除去することを独立して示した。平均して、ステントは、60マイクログラム±20マイクログラムの薬物を含んだ。
【0114】
薬物負荷ステントは固定具上に保持し、個別のバイアル中の0.01M リン酸緩衝液(pH=6.0、1.9ml)に配置した。これらのサンプルは、前後の攪拌を提供するために低速で設定されたEberbachシェーカーに配置した。緩衝液中での薬物の飽和に接近することを回避するために、ステントは、以下の時点:15、30、45、60、120、135、150、165、180、240、390分において新鮮な緩衝液バイアルに定期的に移した。この溶解緩衝液バイアルは、研究した薬物放出期間の最後に、薬物濃度についてHPLCによってアッセイした。時間の関数として、薬物の累積放出%として表されるデータは、以下の表の形式で示される。
【0115】
【表7】

【0116】
実施例6
本実施例の目的は、新生内膜形成に対する、異なる薬物投薬量の安全性および効力を評価することであった。薬物は、A−179578でコートしたBiodivYsio OCステント(15mm)から送達された。ステント内新生内膜形成は、成体小型ブタの冠状動脈中で、4つの時間間隔−3日間、1ヶ月、および3ヶ月間で測定した。40匹の動物を、各時間間隔(用量あたり10匹の動物)で研究した。各動物は、1つの薬物コートしたステントおよび1つのコントロールステントを受けた。コントロールステントは薬物を含まなかった。表8はブタ効力研究についての投薬スキームを示す。
【0117】
【表8】

【0118】
潜在的な局所的組織毒性を、ステント領域、隣接冠状動脈切片、血管周辺組織、および補助心筋組織における組織病理学的変化を試験することによってすべての時間間隔で評価した。致死率、血管造影用移植片および再研究データ、組織形態計測データ、およびステント部位組織病理学を研究した。
【0119】
3日間群
走査型電子顕微鏡と組み合わせた組織病理学は、移植されたステントに対する短期間の応答に関する情報を提供した。これらの応答は、コントロール群およびすべての投薬群において同様であって、これらの応答には、顕著な壊死を伴わない中膜の圧縮、大部分はステントストラットに局在する血栓および炎症細胞の蓄積、ならびに内皮の回復および薄い壁性血栓の平滑筋細胞侵入の初期の証拠が含まれた。広範な血栓または顕著な壁内出血は存在しなかった。いくつかのサンプルにおける外膜は、病巣の、または拡散しているかのいずれかの炎症性浸潤物を示し、時折、脈管の脈管の閉塞または鬱血が存在した。いかなるサンプルにおいても内側の壊死の証拠は存在しなかった。
【0120】
走査型電子顕微鏡は、すべての投薬群における冠状動脈ステントの移植後3日に、管腔側の類似の外見を示した。ステントの形状は、組織の薄層に明確に包埋された。内皮は、ストラットとストラットの上さえの間でインタクトであった;内皮様細胞のコンフルエントまたはほぼコンフルエントな層は、管腔側を覆った。ステントの上、およびストラット間の空間にインタクトな残余の内皮上に、散乱した接着血小板、微小血栓、および白血球が存在した。より重篤なステント誘導性の血管損傷を有する動脈において、より実質的に壁在血栓形成が存在したが、ステントのストラット上の内皮の回復の程度は、A−179578の投薬に関わらず、遅れているようには見えなかった。
【0121】
1ヶ月群
1ヶ月シリーズについての組織形態計測的データは、ブタのステント配置した冠状動脈中での新生内膜形成に対する局所的に溶出されたA−179578の有意な阻害効果を示した。損傷スコアに対して標準化した内膜領域は、コントロールと比較して、投薬群3および4について有意に減少した(10および27μg/mm);コントロールと比較して、投薬群3と4の両方について、絶対内膜領域および内膜厚の減少についての傾向、ならびにコントロールと比較して、投薬群3についての組織学的狭窄%の減少に向けた傾向もまた存在した。
【0122】
コントロールステントは、1ヶ月で、Yucatan小型ブタの冠状動脈に移植したステントに典型的な形態学を示した。中膜は、ステントストラットのプロフィールの下にある壊死を伴うことなく、圧縮されるかまたは薄くされた;時折の炎症性浸潤物のみが存在した;そして新生内膜は比較的薄いサイズから中程度に薄いサイズまでの範囲であり、豊富な細胞外マトリックス中に紡錘形形状および星状細胞から構成され、ステントストラットのプロフィールの周辺にフィブリン様物質のまれな小さな病巣のみを伴った。薬物コートされたステントは、任意の用量で任意の実質的な壊死を伴うことなく、中膜の同様な圧縮を示した;コントロールデバイスと同様に、炎症はほとんど存在しなかった。新生内膜は、投薬群3および4において顕著に薄く、ある場合においては、細胞のいくつかの層のみから構成された。すべての投薬群において、中程度のサイズのフィブリン様沈着物および濃縮された血栓形成が深い新生内膜で観察された実質的な数のサンプルが存在した。これらには、通常、ステントストラットが付随したが、時折、ストラットプロフィール間で広がった。しかし、いずれの場合においても、管腔側上の血栓の曝露は存在しなかった。なぜなら、沈着は線維細胞組織内でカプセル化され、管腔側周辺の内皮様細胞の扁平層で覆われるからであった。
【0123】
走査型電子顕微鏡は、内皮細胞または内皮様細胞のコンフルエント層が完全なステント表面を覆ったこと、および血液成分の接着によって、薬物コートされたステントと、コントロールステントとの間の違いが存在しなかったことを確認し;白血球は、すべての群でほぼ等しい数で存在した。これらの知見は、A−179578が新生内膜形成の減少および持続性の壁在血栓形成と関連したが、ステント損傷に応答した十分な血管壁治癒が、ステントが移植された後1ヶ月以内に起こったことを実証した。この血管壁治癒は、管腔表面を、血小板接着および血栓形成のために非反応性にし、白血球接着のために最小限反応性であった。加えて、最高用量においてさえ(27μg/mm)、血管壁毒性の証拠は存在しなかった。内側の壊死またはステントの不適切な併置が存在しなかったからである。
【0124】
3ヶ月群
研究の3ヶ月の期間において、ステントの冠状動脈寸法の任意の組織形態計測的パラメーターについての投薬群の間の有意な違いが存在した。しかし、新生内膜形成を説明する2つの主要な変数の減少についての弱い傾向が存在した。横断面の面積および内腔の狭窄面積%である。
【0125】
移植の3ヶ月後にブタ冠状動脈サンプル中のコントロールステントの組織病理学的外見は、1ヶ月群からのコントロールのそれと同様に見られ、および3ヶ月の期間においてすべての群のそれと同様に見られた。すべてのサンプルは、新生内膜中で大部分が紡錘形の平滑筋様細胞およびコンフルエント扁平管腔周囲細胞層を伴う線維細胞新生内膜形成を示した。新生内膜中での壁内出血または持続性のフィブリン様沈着は存在しなかった;しかし、あるサンプルは、特に、より厚い新生内膜を有するものは、以前の血栓の蓄積、およびその後の新生内膜中での新生脈管形成の型での引き続く組織化の証拠を示した。時折、サンプルは、中膜構造の破壊に関連する、ステントストラットに局在化した重篤な炎症性反応に対して中程度である証拠を示した。これらは、その上、より厚い新生内膜と最も頻繁に関連した。しかし、これらは数が少なく、コントロール群ならびに薬物コートしたステント群において見い出された。これらは、移植されたステントに対する動物特異的な一般化された反応、ステントの汚染の証拠、またはこれらの2つの要因のある組み合わせのいずれかを表していること、およびブタ冠状動脈におけるステント移植片の研究における約10〜15%の発生において共通して見い出されることが仮定される。任意のサンプルにおけるステントからの中膜の壊死または中膜の分離の証拠は存在しなかった。大部分の3ヶ月移植片の外膜は、1ヶ月移植片よりもいくぶん大きな新生脈管形成を有する量であったが、これはコントロール群または試験ステント群に関連して現れたのではなかった。走査型電子顕微鏡は、コントロール群およびすべての投薬群におけるまれな接着血液細胞を有するコンフルエント内皮を実証した。
【0126】
結論
A−179578でコートされたステントは、ブタ冠状動脈におけるステント内新生内膜形成を減少し、1ヶ月で生物学的薬物効果の明確な証拠(新生内膜の再吸収されない血栓/フィブリン沈着)を提供した。A−179578でコートしたステントについて、3ヶ月のより長い期間の間隔で持続性の阻害効果を示す弱い傾向が存在した。試験した任意の時間間隔において約27μg/mmのステント長の最高用量を含む、任意の用量群と関連した内側の壊死またはステントの不適切な併置の型である、局所的冠状動脈壁毒性は存在しなかった。すべてのステントは組織中に十分に組み込まれており、1ヶ月および3ヶ月の間隔で線維細胞の新生内膜の組み込みおよび内皮を覆う形態において安定な治癒応答の証拠は存在しなかった。ステントが動物に移植された3ヶ月後に持続した阻害効果に向かう傾向は驚くべきことであり、移植されたステントから生じる臨床的再狭窄を予防する際に、潜在的に持続性の効果の証拠を提供する。
【0127】
実施例6
ラパマイシンのテトラゾールアナログであるABT−578は、ブタ冠状動脈ステント誘導性損傷モデル(Robinson,KA,Dube,H.M.Efficacy Evaluation of ABT−578 Loaded Coronary Stents in Yucatan Miniswine−Preclinical Laboratory Study,09/20/2001およびSchwartz,R.S.Efficacy Evaluation of a Rapamycin Analog(A−179578)Delivered from the Biocompatibles BiodivYsio PC Coronary Stents in Porcine Coronary Arteries,Technical Report,Mayo Clinic and Foundation,Rochester,MN.)およびラットバルーン血管形成術モデル(Gregory,C.Summary of Study Evaluating Effects of ABT−578 in a Rat Model of Vascular Injury)において抗再狭窄活性を有することが示されてきた。本実施例の目的は、健常男性におけるABT−578の単回静脈内(IV)用量を増大させることの安全性および薬物動態学(PK)を評価することであった。
【0128】
現在の最初の男性における研究において、ABT−578の安全性および薬物動態学は、100〜900μg用量範囲にわたって、ABT−578の静脈内ボーラス投与後に研究した。静脈内ボーラス用量投与は、薬物コートしたステントからのインビボでのABT−578の最も迅速な予測不可能な放出を模倣する。
【0129】
これは、フェーズ1の、単回増大用量の、二重盲検の、ランダム化した、プラセボ制御した、単一施設研究であった。60例の成体健常男性を、100、300、500、700、および900μgの5つのIV用量群に分割した。被験体についての人口統計学的情報は表9に要約する。
【0130】
【表9】

【0131】
被験体は、表10に示される投薬スキームにおいて示されるように、絶食条件下で、ABT−578の単回静脈内用量または一致する静脈内プラセボを受容するようにランダムに割り当てた。
【0132】
【表10】

【0133】
より高い用量は、先行するより低い用量群からの安全性データを評価した後に投与した。治療群は、少なくとも7日間分離した。安全性の理由のため、各処理群を6例の被験体の2つのコホートに分割し、1つの群の2つのコホートの用量を少なくとも1日分離した。
【0134】
用量は、8例の被験体を用いて、IVボーラスとして3分間にわたって投与した。4例の被験体はABT−578を受容し、4例の被験体は各用量群においてプラセボを受容した。ABT−578の血液濃度は、168時間サンプリングし、0.20ng/mLのLOQを用いてLC−MS/MSを使用して測定した。
【0135】
7mLの血液サンプルを、投薬前(0時間)ならびに研究1日目の投薬後0.083(5分)、0.25、0.5、1、2、4、8、12、16、24、36、48、72、96、120、144、および168時間に、エデト酸(EDTA)を含む空にした収集チューブに、静脈穿刺によって収集した。
【0136】
ABT−578の血液濃度は、確証した液体/液体抽出HPLCタンデム質量スペクトル法(LC−MS/MS)を使用して決定した(Ji,QC,Reimer MT,El−Shourbagy,TA.:A 96−well liquid−liquid extraction HPLC−MS/MS method for the quantitative determination of ABT−578 in human blood samples,J.of Chromatogr.805,67−75(2004).)。ABT−578の定量の下限は、0.3mL血液サンプルを使用して0.20ng/mLであった。すべての検量線は、0.9923以上の決定係数(r)の値を有した。
【0137】
安全性は、有害事象、身体検査、生命徴候、ECG、注射部位、および臨床検査の評価に基づいて評価した。
【0138】
ABT−578の薬物動態学的パラメーター値は、非区画法を使用して見積もった。これらのパラメーターには以下が含まれた。ABT−578の投薬5分後の濃度(C)、用量標準化C、排出速度定数(β)、半減期(t1/2)、時間0から最後の測定可能な濃度の時間までの時間曲線に対する血液濃度の下の面積(AUC0−最後)、用量標準化したAUC0−最後、無限時間まで外挿した時間曲線に対する血液濃度の下の面積(AUC0−無限)、用量標準化AUC0−無限、全体のクリアランス(CL)、および分配の体積(Vdβ)。ABT−578の静脈内投与の後の平均血液濃度−時間プロットは、線形スケールおよびログ−線形スケールで、図4および5にそれぞれ提示される。
【0139】
2つのレジメンの各々の投与後のABT−578の平均±SD薬物動態学的パラメーターは表11に示す。
【0140】
【表11】

【0141】
用量の比例および線形薬物動態学の問題を検査するために、共分散の分析(ANCOVA)を実施した。被験体は用量レベルによって分類され、体重は共変量であった。分析した変数には、β、Vdβ、用量標準化C、ならびに用量標準化AUC0−最後および用量標準化AUC0−無限の対数が含まれた。用量を用いる不変性の仮説の最初の試験は、単調な用量の関数についての良好な検出力を有する用量レベル効果に対する試験であった。加えて、最大および最小の用量レベルは、ANCOVAのフレームワーク内で比較した。
【0142】
図6は、ABT−578 Cmax、AUC0−最後、およびAUC0−無限の用量比例を示す。この図から見ることができるように、これらのパラメーターにおける用量比例的な増加を示唆する用量標準化CmaxおよびAUC0−最後に伴って統計学的に有意な単調傾向は観察されなかった。用量に伴う統計学的に有意な単調傾向は、ABT−578の用量標準化AUC0−無限について観察された(p=0.0152)。しかし、すべての群にわたる用量標準化AUC0−無限の2つ一組の比較は、100μgの用量標準化AUC0−無限のみが900μgおよび300μgのそれとは統計学的に有意に異なったことを示した(それぞれ、p=0.0032およびp=0.0316)。統計学的に有意な単調傾向はまた、βとともに観察された。この逸脱は、100μg用量群とのβのわずかな過大評価に起因し得る。平均ABT−578 C(5分間における濃度)およびAUC0−無限は、表12に示されるように、用量と比例して増加した。
【0143】
【表12】

【0144】
平均半減期は、研究した用量にわたって26.0〜40.2時間の間の範囲であり、300〜900μgの用量範囲にわたって有意に異なっていなかった。ABT−578はすべての用量において十分に許容され、臨床的に有意な身体検査の結果、生命徴候、または検査室測定は観察されなかった。
【0145】
安全性
ABT−578と関連する最も一般的な治療によって現れる有害事象(任意の1つの治療群において2つ以上の被験体によって報告される)は、注射部位の反応および痛みであった。
【0146】
有害事象の大部分は、重篤度が中程度であり、自発的に回復した。
【0147】
本研究において報告された深刻な有害事象は存在しなかった。
【0148】
本研究の間で、身体検査の知見、生命徴候、検査室測定、またはECGパラメーターの臨床的に有意な変化は存在しなかった。
【0149】
結論:
IV ABT−578の薬物動態学は、CおよびAUC0−無限に関して、100〜900μgの用量範囲にわたって用量に比例する。全体として、ABT−578の薬物動態学は、C、AUC0−最後、およびAUC0−無限の用量比例的な増加によって例証されるように、100μg〜900μgの用量範囲にわたって本質的に直線状であった。900μgまでの単回IVボーラス用量は、安全性の懸念を伴うことなく投与された。
【0150】
ABT−578の平均排出半減期は、研究した用量範囲にわたって、26.0〜40.2時間の範囲であった。平均クリアランスおよび分布の体積は、それぞれ、2.90〜3.55L/hおよび113〜202Lの範囲であった。βについての線形反応速度論から、Vαβについての有意な程度までの観察された逸脱は、100μg用量群についてのβの過大評価に起因した。
【0151】
100〜900μgの単回用量のABT−578は、一般的に、被験体によって良好に許容された。
【0152】
実施例7
本研究は、複数投薬後のABT−578の薬物動態学を評価するため、および健常被験体の全身曝露を最大化しながら、その安全性を評価するために設計した。第1の目的は、コートされたステントから溶出する薬物の予測レベルより有意に上であるABT−578の全体の曝露を達成することであった。本研究は、健常被験体における14日間の連続日数の間の毎日の200、400、および800μg用量の複数の静脈内注入後、フェーズ1の複数用量増大研究において、ABT−578の薬物動態学および安全性を研究した。
【0153】
方法:
フェーズ1の、複数増大用量の、二重盲検の、プラセボ制御した、ランダム化した研究。1日1回(QD)の3つのレジメン(レジメンあたり16例の活性および8例のプラセボを有する200、400、または800μg QD)に等しく分割した72例の被験体に、14日間の連続した日数の間、ABT−578の60分間QD IV注入を投与した。血液サンプルを、最初の投薬後24時間にわたって収集し、その後10、11、12、13日目に投薬し、および14日目の投薬後168時間投薬した。尿サンプルを、1、14、16、18、および20日目に24時間にわたって収集した。血液および尿のABT−578濃度を、確証したLC/MS/MS法を使用して決定した。薬物動態学的パラメーターを区画化分析によって決定した。すべての日のAUC0−∞(14回の投薬すべてを含む時間0から無限大までの、血液濃度−時間曲線の下の面積)を計算した。用量および時間直線性および定常状態の達成を評価した。尿中に排出された薬物の画分を決定した。
【0154】
一般的な健康状態にある72例の男性および女性の被験体を本研究に加入させた。人口統計学的情報を表13に要約する。
【0155】
【表13】

【0156】
表14に示されるように、被験体は、3つのグループ(グループI、II、およびIII)に対して2つの異なる部位でランダム化した。各グループの中で、被験体は、2つの研究部位に等しく分割した。各部位は12被験体(ABT−578、8被験体;プラセボ4被験体)を含んだ。各用量グループ中での投薬スキームは以下に提示される。
【0157】
【表14】

【0158】
被験体は、絶食条件下で、研究1日目から14日目までに、単回の60分間の1日(QD)のABT−578の200、400、もしくは800μgの静脈内注入、またはグループI、II、およびIIIについては一致するプラセボの静脈内注入をそれぞれ受容した。薬物はy部位デバイスに接続したシリンジポンプを経由して投与し、これはまた、60分間にわたって5%デキストロース水溶液(D5W)の125〜150mLを注入した。これらのグループは連続して投薬され、先のグループの最後の投薬と、次のグループの最初の投薬は少なくとも7日間離され、その時間の間に、先のグループからの安全性データを分析した。用量の増大は、より少ない用量グループの安全性分析に依存した。
【0159】
5mLの血液サンプルは、EDTAカリウムを含むチューブ中に収集し、投薬前(0時間)、ならびに研究1日目および14日目に、注入開始後0.25時間、0.5時間、1.0時間、1時間5分、1.25時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間、18時間、および24時間に、ABT−578濃度を評価した。さらなるサンプルを、研究14日目の注入開始後、36時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間および168時間、ならびに10日目、11日目、12日目、および13日目の投薬前に収集した。尿は、以下の間隔にわたって、保存剤を含まない容器中に収集した。研究1日目、14日目、16日目、18日目、および20日目に注入を開始した後0〜6時間、6〜12時間、12〜18時間、および18〜24時間。
【0160】
ABT−578の血液および尿濃度は、確証した液体/液体抽出HPLCタンデム質量スペクトル測定法(LC−MS/MS)を使用して決定した。ABT−578の定量の下限は、0.3mL血液サンプルを使用して0.20ng/mLであり、0.3mL尿サンプルを使用して0.50ng/mLであった。
【0161】
安全性を、有害事象、身体検査、生命徴候、ECG、注射部位、および臨床検査の評価に基づいて評価した。
【0162】
結果:
すべての被験体についてのABT−578血液濃度−時間データは、一次除外を伴う3区画オープンモデルによって説明された。研究したレジメンにわたって、平均区画薬物動態学的パラメーターの範囲は、CL 4.0〜4.6 L/h;V 11.3〜13.1 L;Vss 92.5〜118.0 Lであり、末端排出t1/2 24.7〜31.0 hであった。ABT−578薬物動態学は、1日目および14日目において、研究したレジメンにわたって、用量直線性と一致した。薬物動態学モデルは、1日目および14日目についてのデータと同時にフィットし、時間−直線状薬物動態学を示した。研究したレジメンについてのすべての日−AUC0−∞は、677〜2395ng・hr/mlの範囲であった。平均して、0.1%のABT−578用量が、投薬後24時間の期間内に尿中で回収された。
【0163】
薬物動態学および統計学的分析
ABT−578の薬物動態学パラメーター値は、区画分析を使用して個々の被験体について見積もった。研究1日目の最初の投薬、研究14日目の最後の投薬、ならびに研究10日目、11日目、12日目、および13日目のトラフ濃度からのデータを、各個々の被験体について同時にモデル化した。決定したパラメーターは、中心区画の体積(V)、末端排出速度定数(ガンマ)、クリアランス(CL)、定常状態における分布の体積(Vss)、半減期(t1/2)、最大濃度(Cmax)、最大濃度の時間(Tmax)、14日目についての時間曲線に対する血液濃度の下の面積(AUCτ)、ならびに対応する用量標準化したCmaxおよびAUCτであった。研究期間にわたる長期的な曝露を見積もるために、各個体についての最適モデルを使用して、14日間の期間にわたって個体の濃度−時間プロフィール、すなわち、Cmaxおよびすべての日のAUC0−∞(本研究における14日のすべての投薬を考慮した、時間0から無限までの予測血液濃度−時間プロフィールの下の面積)を予測した。
【0164】
研究14日目について用量の比例を評価するために、用量標準化Cmax、用量標準化AUC、および末端排出速度定数の対数についての共分散分析(ANCOVA)を実施した。中心および用量は因数であり、体重は共変量であった。定常状態に達したか否かの問題に取り組むために、因数として中心および用量レベルを用いる反復測定分析を、研究の10日目から14日目の用量標準化された投薬前濃度に対して実施した。
【0165】
薬物動態学
すべての被験体についてのABT−578血液濃度−時間データを、一次除外を伴う3区画オープンモデルによって説明した。1日目、14日目、および1日目から14日目についてのABT−578の平均血液濃度は図7に提示する。
【0166】
ABT−578の薬物動態学的パラメーターの平均±SDは表15に提示する。
【0167】
【表15】

【0168】
研究したレジメンにわたって、予測診断プロットに対する観察診断プロットの偏りは観察されなかったので、研究した用量レジメンにわたる区画薬物動態学パラメーターの範囲は非常に狭く、二次パラメーターにおいて研究した用量レジメンにわたる意味のある傾向は観察されなかった;用量直線性は、研究した用量レジメンにわたって、ABT−578について推測された。
【0169】
以下の図面は、ABT−578 14日目CmaxおよびAUC0−24hにおける用量比例を示す。
【0170】
図8a、8b、および8cは、1日目、14日目、および1日目から14日目における、200、400、および800μg QD用量群についての平均ABT−578血液濃度−時間プロフィールをそれぞれ示す。各用量群について、このモデルは、図9において例示されるように、1日目および14日目、およびその間で、適切にデータを説明した(800μg QD用量群データにフィットさせる際の、時間プロットに対して、平均の観察された血液濃度および予測された血液濃度の例)。直線形反応速度論を仮定する3−区画モデルによる1日目から14日目にわたる観察されたABT−578濃度−時間データの優秀なフィットは、ABT−578が時間不変クリアランスを示すことを示す。
【0171】
図9に示されるように、統計学的な違いは、研究10日目〜14日目の用量−標準化投薬前濃度において観察されなかった。
【0172】
200、400、および800μg QD用量群についてのメジアンCmaxは、それぞれ、11.4、22.1、および38.9ng/mLであった。対応するすべての日のメジアン−AUC0−∞は、それぞれ、677、1438、および2395ng・h/mLであった。
【0173】
尿中に排出されたABT−578用量の画分は、800μg QD用量群について計算した。平均して、約0.1%のABT−578が、1日目および14日目に24時間以内に尿中で回収された。
【0174】
安全性
ABT−578に付随する最も一般的な治療によって現れる有害事象は、痛み、頭痛、注射部位の反応、乾燥肌、腹痛、下痢、および発疹であった。これらの有害事象の大部分は、重篤度が穏やかであり、自発的に回復した。本研究において報告される深刻な有害事象は存在しなかった。具体的には、被験体は、免疫抑制、QTc延長、または臨床的に有意な有害事象のいかなる臨床的または生化学的証拠も示さなかった。
【0175】
結論
ABT−578薬物動態学は、研究した用量レジメンにわたって、14日間の連続日数の間、静脈内投与された場合に、用量比例的でありかつ時間不変的であった。ABT−578のQD投与についての定常状態には10日目までに達し、その日に最初のトラフサンプルを測定した。
【0176】
腎排出はABT−578の排出の主要な経路ではない。なぜなら、1日あたり用量の約0.1%が、変化していない薬物として尿中に排出されたからである。
【0177】
ABT−578は、一般的に、14日間の連続日数の間、200、400、および800μgの複数用量で与えられた場合に、十分に耐容性であった。
【0178】
前述の詳細な説明および付随する実施例は単に例示であり、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ規定される本発明の範囲に対する限定として取られるべきではないことが理解される。開示された実施形態に対する種々の変更および改変は当業者には明らかである。非限定的に、化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、製剤、および/または本発明の使用方法を含む、このような変更および改変は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】サルに投薬したテトラゾール含有ラパマイシンアナログの血液濃度±SEM(n=3)を示す。
【図2】本発明における使用のために適切であるステントを示す前面の側面図である。
【図3A】ポリマーのみでコートしたステントを配置した血管セグメントの断面図である。
【図3B】ポリマーおよび薬物でコートしたステントを配置した血管セグメントの断面図である。
【図4】ヒトにおいてABT−578の静脈内用量を単独で増加させることを線形スケール平均血液濃度−時間プロットで示す。
【図5】ヒトにおいてABT−578の静脈内用量の単独での増加を追跡することをLOG−線形スケール平均血液濃度−時間プロットで示す。
【図6】ヒトにおける静脈内用量の単独での増加後の、ABT−578 CmaxおよびAUCパラメーターの用量の比例を示す。
【図7】ヒトにおける複数の静脈内用量後の、ABT−578の平均血液濃度−時間プロットを示す。
【図8】???????????。
【図9】800μg QD用量群について1日目〜14日目にわたって観察されたABT−578濃度−時間データを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造と、以下の治療物質
【化1】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグと、抗増殖剤、抗血小板剤、抗炎症剤、抗血栓剤、血栓溶解剤、細胞毒性剤、サイトカインまたはケモカイン結合を阻害する薬剤、細胞脱分化阻害剤、抗脂肪性浮腫剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、および細胞増殖抑制薬物からなる群より選択される少なくとも1種の他の治療物質とを含む、医療用具。
【請求項2】
前記抗増殖剤が抗有糸分裂剤である、請求項1に記載の医療用具。
【請求項3】
前記抗有糸分裂剤が、ビンカアルカロイド、抗有糸分裂性アルキル化剤、および抗有糸分裂性代謝産物からなる群より選択される、請求項2に記載の医療用具。
【請求項4】
前記抗血小板剤が、血小板の接着を阻害する薬剤、血小板の凝集を阻害する薬剤、および血小板の活性化を阻害する薬剤からなる群より選択される、請求項1に記載の医療用具。
【請求項5】
前記抗炎症性薬剤がエストラジオールである、請求項1に記載の医療用具。
【請求項6】
前記抗炎症性薬剤がデキサメタゾンである、請求項1に記載の医療用具。
【請求項7】
前記支持構造が、脈管構造中で使用される、冠状動脈ステント、末梢ステント、カテーテル、動静脈移植片、バイパス移植片、および薬物送達バルーンからなる群より選択される、請求項1に記載の医療用具。
【請求項8】
前記支持構造が治療物質を含むコーティングをさらに含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項9】
前記コーティングがポリマー性である、請求項8に記載の医療用具。
【請求項10】
前記治療物質が
【化2】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の医療用具。
【請求項11】
前記治療物質が
【化3】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の医療用具。
【請求項12】
その表面上にコーティングを有する支持構造を含む医療用具であって、前記コーティングは治療物質
【化4】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグと、抗増殖剤、抗血小板剤、抗炎症剤、抗血栓剤、血栓溶解剤、細胞毒性剤、サイトカインまたはケモカイン結合を阻害する薬剤、細胞脱分化阻害剤、抗脂肪性浮腫剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、および細胞増殖抑制薬物からなる群より選択される少なくとも1種の薬物とを含む、医療用具。
【請求項13】
前記抗増殖剤が抗有糸分裂剤である、請求項12に記載の医療用具。
【請求項14】
前記抗有糸分裂剤が、ビンカアルカロイド、抗有糸分裂性アルキル化剤、および抗有糸分裂性代謝拮抗剤からなる群より選択される、請求項13に記載の医療用具。
【請求項15】
前記抗血小板剤が、血小板の接着を阻害する薬剤、血小板の凝集を阻害する薬剤、および血小板の活性化を阻害する薬剤からなる群より選択される、請求項12に記載の医療用具。
【請求項16】
前記抗炎症性薬剤がエストラジオールである、請求項12に記載の医療用具。
【請求項17】
前記抗炎症性薬剤がデキサメタゾンである、請求項12に記載の医療用具。
【請求項18】
前記支持構造が、脈管構造中で使用される、冠状動脈ステント、末梢ステント、カテーテル、動静脈移植片、バイパス移植片、および薬物送達バルーンからなる群より選択される、請求項12に記載の医療用具。
【請求項19】
前記コーティングがポリマー性である、請求項12に記載の医療用具。
【請求項20】
前記ポリマー性コーティングが生物安定性である、請求項19に記載の医療用具。
【請求項21】
前記ポリマー性コーティングが生物分解性である、請求項19に記載の医療用具。
【請求項22】
前記治療物質が
【化5】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグである、請求項12に記載の医療用具。
【請求項23】
前記治療物質が
【化6】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグである、請求項12に記載の医療用具。
【請求項24】
薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含むかまたは支持することが可能である支持構造を含む医療用具であって、前記キャリアまたは賦形剤は以下の治療物質
【化7】

またはその薬学的に許容可能な塩もしくはプロドラッグと、抗増殖剤、抗血小板剤、抗炎症剤、抗血栓剤、血栓溶解剤、細胞毒性剤、サイトカインまたはケモカイン結合を阻害する薬剤、細胞脱分化阻害剤、抗脂肪性浮腫剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、および細胞増殖抑制薬物からなる群より選択される少なくとも1種の他の治療物質とを含む、医療用具。
【請求項25】
前記抗増殖剤が抗有糸分裂剤である、請求項24に記載の医療用具。
【請求項26】
前記抗有糸分裂剤が、ビンカアルカロイド、抗有糸分裂性アルキル化剤、および抗有糸分裂性代謝拮抗剤から選択される、請求項25に記載の医療用具。
【請求項27】
前記抗血小板剤が、血小板の接着を阻害する薬剤、血小板の凝集を阻害する薬剤、および血小板の活性化を阻害する薬剤からなる群より選択される、請求項24に記載の医療用具。
【請求項28】
前記抗炎症性薬剤がエストラジオールである、請求項24に記載の医療用具。
【請求項29】
前記抗炎症性薬剤がデキサメタゾンである、請求項24に記載の医療用具。
【請求項30】
前記支持構造が、ステントの形態のフレームワークを含む、請求項24に記載の医療用具。
【請求項31】
前記支持構造が、脈管構造中で使用される、冠状動脈ステント、末梢ステント、カテーテル、動静脈移植片、バイパス移植片、および薬物送達バルーンからなる群より選択される、請求項24に記載の医療用具。
【請求項32】
前記支持構造が治療物質を含むコーティングをさらに含む、請求項24に記載の医療用具。
【請求項33】
前記コーティングがポリマー性である、請求項32に記載の医療用具。
【請求項34】
前記ポリマー性コーティングが生物安定性である、請求項33に記載の医療用具。
【請求項35】
前記ポリマー性コーティングが生物分解性である、請求項34に記載の医療用具。
【請求項36】
前記支持構造が、治療物質を含むポリマー性フレームワークを含む、請求項24に記載の医療用具。
【請求項37】
前記ポリマー性フレームワークが生物分解性である、請求項24に記載の医療用具。
【請求項38】
前記抗脂肪性浮腫剤がフェノフィブラートである、請求項24に記載の医療用具。
【請求項39】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤がバチミスタットである、請求項24に記載の医療用具。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−518671(P2008−518671A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539203(P2007−539203)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/039097
【国際公開番号】WO2006/050170
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507140966)アボット ラボラトリーズ (3)
【Fターム(参考)】