説明

ラピッドエクスチェンジ型ステント搬送システム

医療器具、ならびに医療器具の製造方法及び使用方法。医療器具(10)は長尺上の管状部材(12)、管状部材の外面上に配置される内視鏡下ステント(20)、管状部材の外面に沿って摺動可能に配置される押圧チューブ(24)、及び管状部材の管腔内に摺動可能に配置される押圧部材(24)を備える。押圧部材は押圧チューブに連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具及び医療器具の製造方法に関し、より詳細には、胆道及び膵道の少なくともいずれかにステントを搬送する医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療において例えば胆道内にて用いられる管内医療器具は様々な種類のものが開発されている。これらの管内医療器具には、ガイドワイヤ、カテーテル、及びステント等が含まれる。また、これらの器具の製造方法及び使用方法は様々である。そして、このような器具及び方法にはそれぞれ長所と短所がある。従って、より良い医療器具、ならびに医療器具の製造方法及び使用方法が継続的に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、胆道及び膵道の少なくともいずれかにステントを搬送するラピッドエクスチェンジ型ステント搬送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従い、医療器具及びその部品の構成、材料、製造方法、及び使用例が提供される。本発明の一実施形態は医療器具に関する。この医療器具は、長尺状の管状部材、管状部材の外面上に配置された内視鏡下ステント、管状部材の外面に沿って摺動可能に配置された押圧チューブ、及び管状部材に形成された管腔内に摺動可能に配置された押圧部材を備える。押圧部材は押圧チューブに連結される。
【0005】
上記の記載は一実施形態について述べたものであり、本発明のすべての実施形態を説明するものではない。他の実施形態について、図面を参照して以下に詳細を述べる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態による医療器具の一部を示す側断面図。
【図2A】図1の器具の一部分を示す上面図。
【図2B】図1の器具の別の部分を示す上面図。
【図3】内部にガイドワイヤランプが形成された、本発明の一実施形態による医療器具の一部を示す断面図。
【図4】本発明の一実施形態による医療器具及び内視鏡下ステントを示す分解斜視図。
【図5】内視鏡下ステントが連結された、本発明の一実施形態による医療器具を示す斜視図。
【図6】管状部材に対する接合部材の配置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は様々な実施形態にて実施可能であるが、特定の実施形態を例示的に図示して以下に説明する。しかし、本発明は以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲内にある代替、変更、及び変形のすべてや、その均等物が含まれることが意図される。
【0008】
本明細書のすべての数値は、記載の有無に関わらず、「約」という単語により修飾されていると理解されたい。「約」という用語は、記載の数値と同等である(機能や結果が同じである)と当業者が判断する数値範囲を表す。多くの場合、「約」は、四捨五入された数値を含むことを表す。
【0009】
始まりと終わりの数値により示された数値範囲は、その範囲内に包括されるすべての数値を含むものとする(例えば、「1〜5」には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5が含まれる)。
【0010】
本明細書及び添付の特許請求の範囲においては、単数形で表された要素は、特に断らない限り、すべて複数である場合も含むものとする。また、「又は」という表現は、特に断らない限り「及び/又は」という意味を含むものとする。
【0011】
以下の記載においては図を参照するが、異なる図における類似する構成要素には同一の符号が付されている。発明の詳細な説明及び図面は必ずしも縮尺どおりではなく、例示的実施形態を示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0012】
胆道及び/又は膵道に沿った領域の治療、診断、及び撮像を行うための様々な胆管処置、内視鏡的処置、及び/又は内視鏡下外科処置が開発されている。「胆道」及び「膵道」という用語は、消化器系の様々な部位を指し、例えば、肝臓と十二指腸との間に位置する胆道系の様々な管、及び膵臓と十二指腸との間に位置する様々な管を指す。胆道及び/又は膵道に沿った領域の治療、診断、及び撮像を行うための様々な内視鏡的器具及び内視鏡下外科器具が開発されている。このような器具及び方法には、胆管カテーテル、胆管ガイドワイヤ、及び胆管ステント搬送システム等が含まれる。一般的に、これらの器具は、十二指腸に配置された内視鏡(及び/又は十二指腸内視鏡)を用いて胆道及び/又は膵道に搬送される。器具が配置されると、患者の容態や器具の種類に応じた様々な処置が実施可能となる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による医療器具10の一部を示す断面図である。この医療器具10は、人工器官又はステントの搬送システムである。いくつかの実施形態においては、システム10は胆道又は膵道に沿ってステントを搬送するために用いられる。しかし、システム10の用途はこれに限定されない。例えば、システム10は排液(例えばステントを介した排液)等を含む様々な用途に用いることができる。これらの用途の例としては、泌尿器医療及び婦人科医療が挙げられる。
【0014】
システム10は、第1管腔14、第2管腔16、及び外面18を有するカテーテル又は管状部材12を備える。いくつかの実施形態においては、管状部材12がさらに追加の管腔を有する。管状部材12は、基端に流体連結ポートを有していてもよい(図示しない)。内視鏡下人工器官(胆道人工器官及び膵道人工器官等)すなわちステント20は、外面18上に配置される。押圧チューブ22も外面18に沿って配置される。一般的に、押圧チューブ22はステント20の基端側に配置される。押圧部材24は管腔14内に摺動可能に配置される。押圧部材24は例えば連結部材26により押圧チューブ22に連結される。連結部材26は、管状部材12のまわりに(及び押圧チューブ22の下に)延在して押圧部材24と押圧チューブ22とを連結するリングを有する。
【0015】
管状部材12はさらにガイドワイヤポート28(図2Aにも図示される)を含む。ガイドワイヤポート28は、ガイドワイヤ等の別の器具が第1管腔14に到達できるように管状部材12の壁に形成された開口である。ガイドワイヤ(図示しない)は、処置の前後及び処置時において、医療器具10の外側に沿って延び、ポート28を通って第1管腔14に入って第1管腔14内を延びることができる。ガイドワイヤポート28がこのような位置(すなわち管状部材12の先端に近い位置)に配置されることにより、システム10が、医療器具分野において用いられる典型的なラピッドエクスチェンジ型システムと同様のラピッドエクスチェンジ型のシステムとして機能することができる。この特徴は、他の技術分野における典型的なラピッドエクスチェンジシステムでみられるように、ガイドワイヤ上の器具又はシステム(システム10等)の迅速かつ簡単な交換が可能であるという利点を供する。
【0016】
システム10は、システム10からの流体の漏れを防止もしくは低減するシール又はシール部材(図示しない)を適宜な位置に備えていてもよい。このようなシールは管状部材12、押圧チューブ22、押圧部材24、これらの構造及び/又は他の構造の間の連結部分、及び他の好適な位置に配置することができる。
【0017】
図2Aに、押圧チューブ22が取り除かれた状態のシャフト12を示す。ここに示す管状部材12は、ガイドワイヤポート28に近接するガイドワイヤポート間隙スロット又は連結部材スロット32を有する。連結部材間隙スロット32は管状部材12の壁に開口を供し、これにより、押圧チューブ22が押圧部材24に連結されたまま外面18に沿って摺動し得る。押圧部材24、連結部材26、又は押圧チューブ22と押圧部材24との間の他の介在部材の一部も、ステント20の留置時にこのスロット32内を通ることができる。同様に、図2Bに示すように押圧チューブ22にもガイドワイヤポートスロット30を形成してもよい。このガイドワイヤポートスロット30を形成することにより、ステント20の留置時にガイドワイヤ(例えば、管腔14及び/又はポート28内に配置されたガイドワイヤ)の位置及び構成を変えることなく押圧チューブ22がガイドワイヤに沿って摺動できる。
【0018】
図3に示すように、いくつかの実施形態においては第1管腔14内にガイドワイヤランプ34が配置される。ランプ34は、管状部材12を削ることや、ランプ34を形成する構造を第1管腔14内に配置することなど、適宜な方法にて形成可能である。図3には、ランプ34をより明瞭に示すべく図示を簡略化するため、押圧チューブ22が取り除かれた状態の管状部材12が示されている。ガイドワイヤランプ34は、ガイドワイヤ36が第1管腔14から出て、ガイドワイヤポート28及びガイドワイヤポートスロット30を通ってシステム10の外側に沿って延びるべくガイドワイヤ36を導く。一実施形態においては、ガイドワイヤランプ34は第1管腔14の一部分をふさぐ。このような構成には多くの利点がある。例えば、第1管腔14をふさぐことにより、ガイドワイヤ36が確実にポート28を経て外に出ることでき、さらに、ガイドワイヤランプが押圧部材24や他の構造と干渉することがない。また、第1管腔14をふさぐことにより、処置時に押圧部材24が先端側に移動しすぎることを防止する物理的障壁が形成されることになる。つまり、ランプ34は先端側ストッパとして機能し得る。ランプ34が第1管腔14をふさいでいる場合、第1管腔14はランプ34により2つの区分すなわち「副管腔」に分割されていることになる。したがって、この場合管状部材12には合計3つの管腔が形成されることになる。
【0019】
第2管腔16は第1管腔14と平行し、第1管腔14とは別に独立して形成することができる。つまり、管状部材12に沿って、第1管腔14と第2管腔16との間には開口又は通路が形成されず、第1管腔14と第2管腔16とは連通していない。したがって、第2管腔16は、第1管腔14とは分けて使用できる注入用管腔及び/又は吸引用管腔とすることもできる。つまり、ステントの留置時に、第1管腔14は押圧部材24を摺動させるとともにガイドワイヤを収容する空間として利用し、第2管腔16は、診断用又は治療用の物質の注入、物質の吸引、又は他の好適な用途に第1管腔とは分けて利用することができる。例えば、第2管腔16は、処置時にシステム10の視認性を向上させるコントラスト用物質の注入に用いることができる。また、第2管腔16(及び/又はシステム10に形成される他の管腔)を例えば括約筋切開刀、針、及びバスケット等の他の器具を目的の部位まで前進させるために用いてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態においては、管状部材12の基端(図示しない)にハブアセンブリ(Y型ハブアセンブリ等)が連結又は他の結合手段により結合される。このハブアセンブリにより、他の補助的器具が管状部材12に固定され、例えば第2管腔16に到達できるようになる。補助的器具の固定を容易にするため、標準的なルアーロックコネクタ等の好適なコネクタをハブアセンブリに追加してもよい。さらに、ガイドワイヤ36の位置を固定するための係止機構をハブアセンブリに追加してもよい。係止機構を設けることにより、例えば押圧部材24が前進又は後退しているとき、もしくは中間地点に位置するときにガイドワイヤ36を安定して保持することができる。
【0021】
使用時には、システム10は内視鏡又は十二指腸内視鏡(図示しない)内を通って目的部位付近の適宜な位置まで前進される。システム10が適宜な位置に配置されると、押圧部材24が先端方向に押されることにより、押圧チューブ22が管状部材12の外面18に沿って先端方向に摺動してステント20を押す。押されたステント20が外面18上から取り外されることによりステント20が留置される。もしくは、押圧部材24(及び押圧チューブ22)を動かないように保持したまま管状部材12を基端側に後退させることにより、ステント20を外面18上から取り外してもよい。さらに別の実施形態においてはこれら2つの方法を組み合わせてもよい。ステント20の留置後に、システム10が内視鏡から後退させられる。上記の使用方法や、これらの使用方法の変形例や追加例等の他の使用方法について以下に詳述する。
【0022】
押圧部材24やシステム10の他の構造の移動は、ハンドル(図示しない)を用いることにより容易に行うことができる。ハンドルは、システム10の基端に取り付けられたものであってもよいし、基端に形成されたものであってもよい。ハンドルは、熱可塑性エラストマー(TPE)又は熱可塑性ポリオレフィン(TPO)等を含む軟質コーティングが施されたハンドルであってよい。さらに、ハンドルは、システム10の様々な構造を使用者が容易に操作できるようにする1つ又は複数の構造(ダイアル、摺動部品、ホイール、及びボタン等)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、ラチェット又はラチェットシステムがハンドルに関連付けされており、使用者がシステム10の様々な部品を、制御されたラチェット方式により操作することができる。
【0023】
システム10の製造には、様々な方法工程が含まれる。このような工程のいくつかは、システム10の様々な部品の材料に応じて決定される。例えば、管状部材12、押圧部材24、又はシステム10の他の部品が押出成形可能なポリマーで形成される場合は、管状部材12の製造には、ポリマーを適宜な構造に押出成形する工程が含まれる。押出成形完了後には、様々な部品が適宜な方法により連結されてシステム10の製造が完成する。他にも、型成形(射出成形等)や鋳造等の様々な方法を用いることができる。
【0024】
製造方法は、例えばここに記載される材料又は他の材料等の、使用される材料に応じて様々である。通常の場合、システム10には、金属、金属合金、ポリマー(例は以下に記載する)、金属−ポリマー化合物、これらの組み合わせ、及び他の好適な材料等の様々な材料が含まれる。好適な金属及び金属合金の例としては、304V、304L及び316LV等のステンレス鋼、軟鋼、線形弾性及び/又は超弾性ニチノール等のニッケルチタン合金、ニッケルクロムモリブデン合金(INCONEL(登録商標)625等のUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C−22(登録商標)等のUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)等のUNS:N10276、HASTELLOY(登録商標)合金等)、ニッケル銅合金(MONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、及びNICORROS(登録商標)400等のUNS:N04400)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(MP35−N(登録商標)等のUNS:R30035)、ニッケルモリブデン合金(HASTELLOY(登録商標)及びALLOY B2(登録商標)等のUNS:N10665)、他のニッケルクロム合金、他のニッケル鉄合金、他のニッケル銅合金、他のニッケルタングステン合金、ならびに他のタングステン合金等のニッケル合金、コバルトクロム合金、コバルトクロムモリブデン合金(ELGILOY(登録商標)及びPHYNOX(登録商標)等のUNS:R30003)、白金を多く含むステンレス鋼、これらの組み合わせ、ならびに他の好適な材料が挙げられる。
【0025】
市販のニッケルチタン合金及びニッケル合金には、「線形弾性」又は「非超弾性」と分類されるものがある。これらの合金は、化学的には従来の形状記憶合金や超弾性合金に類似するものであるが、特有の有益な機械特性を有する場合もある。線形弾性及び/又は非超弾性のニチノールと超弾性ニチノールとの相違点のひとつは、線形弾性及び/又は非超弾性のニチノールは、応力/歪み曲線において、超弾性ニチノールにてみられる「超弾性プラトー(superelastic plateau)」すなわち「衰退領域(flag region)」を、実質的に有さないことである。線形弾性及び/又は非超弾性のニチノールにおいては、復元可能な歪みの増加につれて、塑性変形が始まるまで応力が実質的に直線的又はやや直線的に増加する。もしくは、少なくとも超弾性ニチノールの超弾性プラトー及び/又は衰退領域よりは直線的に増加する。したがって、本明細書においては、線形弾性及び/又は非超弾性のニチノールは、「実質的な」線形弾性及び/又は非超弾性のニチノールであるとも理解される。
【0026】
線形弾性及び/又は非超弾性のニチノールと超弾性ニチノールとの他の相違点は、線形弾性及び/又は非超弾性のニチノールは実質的に弾性である状態において(例えば塑性変形する前の状態において)約2〜5%の歪みを許容できるのに対し、超弾性ニチノールが塑性変形前に許容できる歪みは最大約8%であることである。これら両方の材料は、ステンレス鋼等の他の線形弾性素材とは区別される(組成によっても区別される)。ステンレス鋼が塑性変形する前に許容できる歪みは約0.2〜0.44%である。
【0027】
いくつかの実施形態においては、線形弾性及び/又は非超弾性のニッケルチタン合金はDSC及びDMTA分析により広範囲の温度域にわたって検出可能なマルテンサイト相/オーステナイト相変化を示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態においては、約−60〜120℃の温度域においてDSC及びDMTA分析により検出可能なマルテンサイト相/オーステナイト相変化が線形弾性及び/又は非超弾性のニッケルチタン合金に生じない。つまり、このような材料の機械的曲げ特性は、この非常に広い温度域にわたる温度の効果に対してほぼ不活性である。いくつかの実施形態においては、周囲温度又は室温における合金の機械的特性は、体温における機械的特性とほぼ同じであり、つまり、超弾性プラトー及び/又は衰退領域を呈しない。換言すると、線形弾性及び/又は非超弾性のニッケルチタン合金は、広い温度領域にわたってその線形弾性及び/又は非超弾性を維持し、降伏点を実質的に有しない。
【0028】
いくつかの実施形態においては、線形弾性及び/又は非超弾性のニッケルチタン合金は、約50〜60重量%のニッケルを含み、残りの重量がチタンである。いくつかの実施形態においては、約54〜57重量%のニッケルを含む。好適なニッケルチタン合金の一例としては、株式会社古河テクノマテリアル(神奈川県に所在)より販売されるFHP−NT合金が挙げられる。ニッケルチタン合金の例は、米国特許第5,238,004号明細書及び米国特許第6,508,803号明細書にも記載されている。他の好適な材料の例としてはULTANIUM(登録商標)(Neo−Metrics社より入手可能)及びGUM METAL(登録商標)(豊田中央研究所より入手可能)が挙げられる。他のいくつかの実施形態においては、所望する特性を得るために、超弾性ニチノール等の超弾性合金が用いられる。
【0029】
いくつかの実施形態においては、システム10の一部又は全体に放射線不透過性物質が注入されるか、システム10の一部又は全体が放射線不透過性物質から形成されるか、もしくは他の手段によりシステム10の一部又は全体が放射線不透過性物質を含むように形成される。放射線不透過性物質は、医療処置時に、放射線透視スクリーン又は他の撮像手段にて比較的明るい画像をもたらすことができる物質である。この比較的明るい画像により操作者がシステム10の位置を特定できる。このような放射線不透過物質の例としては、金、プラチナ、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過充填材を備えたポリマー材料等が挙げられるが、これらに限定されない。また、放射線不透過性マーカーバンドやコイルをシステム10に組み込んで同様の効果をもたらしてもよい。さらに、体内において管状部材12、押圧チューブ22、及び押圧部材24等の位置を確認するためのマーキングをシステム10の一部又は全体に含めてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態においては、ある程度のMRI適合性がシステム10に付与される。例えば、磁気共鳴映像(MRI)装置との適合性を向上させるために、ある程度のMRI適合性を備えるようにシステム10の一部又は全体を形成させてもよい。例えば、システム10の一部又は全体を、画像を歪めず、アーチファクト(artifacts)(アーチファクトとは画像における空隙のことである)を生み出さないような材料で形成することができる。例えば、特定の強磁性材料は、MRI画像においてアーチファクトをもたらす場合があるため適しない。また、システム10の一部又は全体は、MRI装置により画像を形成し得る材料から形成してもよい。そのような特性を示す材料の例としては、タングステン、コバルトクロムモリブデン合金(ELGILOY(登録商標)及びPHYNOX(登録商標)等のUNS:R30003等)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(MP35−N(登録商標)等のUNS:R30035等)、及びニチノールが挙げられる。
【0031】
システム10及びシステム10の様々な部品の製造に好適なポリマーの例としては、テトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(DuPont社のARNITEL(登録商標)等のPOM)、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエステル(DSM Engineering Plastics社のARNITEL(登録商標)等)、エーテル系又はエステル系のエラストマー(ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレートや、DuPont社のHYTREL(登録商標)等のポリエステルエラストマー等)、ポリアミド(Bayer社のDURETHAN(登録商標)、及びElf Atochem社のCRISTAMID(登録商標)等)、弾性ポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えばPEBAX(登録商標)として販売されるPEBA)、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、マーレックス型(Marlex)高密度ポリエチレン、マーレックス型低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(REXELL(登録商標)等)、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(KEVLAR(登録商標)等)、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン−12(EMS American Grilon社のGRILAMID(登録商標)等)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリカーボネート、アイオノマー、生体適合性ポリマー、ポリ(Lーラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)(PLLA/PLA)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(PLLA/PGA)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLA/PGA)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)(PGA/PTMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシ酪酸(PHBT)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(D,L−ラクチド−co−カプロラクトン)(PLA/PCL)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)(PGA/PCL)、ポリ無水物(PAN)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(リン酸エステル)、ポリ(アミノ酸)、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタン、ポリシロキサン、及びこれらの共重合体、混合物、及び組み合わせが挙げられる。
【0032】
図4〜6に、システム10の他の特徴を示すとともに、ステント20を管状部材12に連結して管状部材12上に保持させる方法を示す。図4に示すステント20は、中央管腔を有するポリマー製の筒部材すなわちチューブを備える(ステント20は管状部材12の上に装着される)。チューブには、チューブの外面に1つ又は複数のフラップ38を形成する1つ又は複数のスロットが形成されている。例えば、ステント20は基端側フラップ38(図示するもの)、及び基端側フラップ38に類似した先端側フラップ(図示しない)を有する。ステント20にフラップ38を設けることには多くの利点がある。例えば、フラップ38(例えば先端側フラップ)を胆管又は膵管に配置すると、処置中にステント20が管の外に移動してしまうことを防止できる。別のフラップ(例えば基端側フラップ)は管の外、例えば十二指腸内に配置すると、処置中にステント20が管内に移動してしまうことを防止できる。ステントを搬送する前には、システム10を内視鏡内に挿入するために、適宜なシースによりフラップ38が平坦状に維持される。ステント20の搬送時には、フラップ38は内視鏡内において平坦状に維持される。内視鏡から出た後に、フラップ38は元の形状(例えば図4に示す形状)に戻る。
【0033】
内視鏡下ステント(胆管及び/又は膵管ステント等)として形成されるステント20は、血管用ステントとは異なる。例えば、ステント20は通常の場合ポリマー材から形成され、普通の状態、すなわち圧縮されていない状態で搬送される。これに対し、血管用ステントは圧縮された状態(例えばカテーテルやバルーンの上に圧縮された状態)で搬送された後、バルーン及び/又は自らの材料組成(例えばニチノール等の自己拡張式形状記憶材料により形成された場合)により拡張される。ステント20と血管用ステントとの他の相違点は当業者にとっては自明である。
【0034】
ステント20及び管状部材12の装着又は連結をより確実にするために接合部材40を用いることができる。接合部材40は、いかなる種類の糸、糸状構造、及びループを有する他の好適な構造であってもよい。接合部材40は押圧チューブ22の1つ又は複数の接合開口42に通されてループ状になされる。接合部材40の開放端(ループ等)は、図5に示すように、フラップ38に形成されたステント20の穴に配置される。管状部材12がステント20の管腔内に入り、接合部材40のループを通る。このような状態を図6に示す。図6にはステント20は示されていない。この状態においては、ステント20が管状部材12と押圧チューブ22との間に閉じ込められている。ステント20を留置するためには、押圧チューブ22の先端側へ前進、及び管状部材12の基端側への後退のいずれかもしくは両方を行う。これにより、管状部材12が接合部材40のループから引き出され、ステント20が接合部材40から解放される。
【0035】
システム10の様々な構造の配置は変更可能である。いくつかの実施形態においては、米国特許第5,334,185号明細書及び米国特許第5,152,749号明細書に記載される構造及び構造の配置のいずれかを含むようシステム10が構成される。本明細書における記載は例示的なものである。特許請求の範囲に記載された本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、形状、寸法、及び工程の順序等、詳細における別例が実施可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面、内部に形成される第1管腔、及び内部に形成される第2管腔を有し、同第1管腔及び第2管腔が互いに独立する長尺状の管状部材と、
前記管状部材の外面上に配置されるステントと、
前記管状部材の外面に沿って摺動可能に配置されるとともに前記ステントの基端側に配置される押圧チューブと、
前記第1管腔内に摺動可能に配置されるとともに前記押圧チューブに連結する押圧部材と、を備えるステント搬送システム。
【請求項2】
前記押圧チューブ及び押圧部材が連結部材により連結される請求項1に記載のステント搬送システム。
【請求項3】
前記管状部材が、前記連結部材が管状部材に沿って長手方向に摺動することを可能にする連結部材スロットを含む請求項2に記載のステント搬送システム。
【請求項4】
前記管状部材がガイドワイヤポートを含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載のステント搬送システム。
【請求項5】
前記第1管腔とガイドワイヤポートとの間においてガイドワイヤを導くガイドワイヤランプが第1管腔内に配置されている請求項4に記載のステント搬送システム。
【請求項6】
前記押圧チューブが、前記ガイドワイヤポートに近接するガイドワイヤポート間隙スロットを含む請求項4に記載のステント搬送システム。
【請求項7】
ガイドワイヤランプが前記第1管腔の少なくとも一部をふさぐ請求項4に記載のステント搬送システム。
【請求項8】
前記ガイドワイヤランプが、前記押圧チューブがガイドワイヤランプより先端側に移動することを防止する先端側ストッパを形成する請求項7に記載のステント搬送システム。
【請求項9】
前記第2管腔が注入用管腔である請求項1乃至8のいずれか一項に記載のステント搬送システム。
【請求項10】
前記ステントがポリマーを含む請求項1乃至9のいずれか一項に記載のステント搬送システム。
【請求項11】
前記ステントが排液用ステントである請求項1乃至10のいずれか一項に記載のステント搬送システム。
【請求項12】
1つ又は複数の接合用ループを有する請求項1乃至11のいずれか一項に記載のステント搬送システム。
【請求項13】
前記管状部材の外面上にステントを解放可能に保持する接合部材をさらに備える請求項1乃至12のいずれか一項に記載のステント搬送システム。
【請求項14】
前記押圧チューブに接合用開口が形成され、前記接合部材が同接合用開口を通って延びる請求項13に記載のステント搬送システム。
【請求項15】
前記管状部材が内視鏡の通路内に配置される請求項1乃至14のいずれか一項に記載のステント搬送システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−505081(P2013−505081A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529977(P2012−529977)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/049689
【国際公開番号】WO2011/035318
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】