説明

ラベル剥離機構およびプリンタ

【課題】 ラベルの種類を問わず、ラベルを台紙から確実に剥離させるラベル剥離機構およびこのラベル剥離機構を備えたプリンタを提供する。
【解決手段】 ラベル剥離機構の剥離部は、回転可能に設置された円柱状の剥離ローラ23であり、円周に沿って溝部31が設けられている。剥離ローラ23へ搬送されてきた印刷用紙4は、溝部31において凹状部32が形成され、剥離ローラ23の軸方向へ波形の形状をなす。そして、剥離ローラ23において、印刷用紙4を屈曲させて、ラベル6を台紙から剥離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の台紙に貼付されているラベルを台紙から剥がすためのラベル剥離機構およびラベル剥離機構を搭載したプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台紙(基材)とラベルとを有する印刷用紙(媒体)へ印刷可能なプリンタは、ラベルへの印刷後、搬送している印刷用紙の台紙だけを剥離部に巻きつけるようにして搬送方向を屈曲方向に変えさせ、台紙に追随せず慣性(コシの強さ)によって搬送方向を変えずに進もうとするラベルを台紙から剥離させている。台紙から剥離したラベルは、プリンタから排出される。剥離部は、例えば特許文献1に図示されているように、鋭角部を有する異形断面をなしており、その鋭角部を所定位置に設けて印刷用紙の搬送方向を変えさせる構成が知られている。
【0003】
また、剥離部は、特許文献2に示されているように、小径の円柱状であっても良く、この場合、剥離部を回転可能な構成にすることも可能である。円柱状の剥離部は、特許文献1のように鋭角部を所定位置に設けるような特定の設定が不要である。
【0004】
【特許文献1】特開平8−295323号公報
【特許文献2】特開2001−18936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術において、ラベルが柔軟性に富んでおりいわゆるコシの弱い場合や、ラベルを台紙に貼付している接着剤が強力である場合や、高温高湿環境下でラベルが水分を吸収してコシの強さが低下した場合などでは、台紙が剥離軸に巻きついて搬送方向を変えると、ラベルも台紙に追随して貼付されたまま搬送方向を変えてしまい、ラベルが台紙から剥離しないことがある。この場合、未剥離ラベルは、手作業で台紙から剥離しなくてはならず、作業能率が著しく低下する。また、未剥離のラベル、もしくは途中まで剥がれたラベルが搬送経路の途中で剥がれて紙ジャム(紙詰まり)を起こしてプリンタの動作が停止するおそれもある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、ラベルの種類を問わず、ラベルを台紙から確実に剥離させるラベル剥離機構およびこのラベル剥離機構を搭載したプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のラベル剥離機構は、基材にラベルが貼付されている媒体を前記基材と前記ラベルとに剥離するためのラベル剥離機構であって、基材側を案内し、媒体が搬送される方向と交差する方向に配置されている剥離部と、ラベルが基材から剥離するように、媒体を剥離部で屈曲させて搬送する搬送部とを有し、剥離部は、媒体と接する面に少なくとも1つの凸部又は凹部を含むことを特徴とする。
【0008】
このラベル剥離機構によれば、剥離部において、搬送されている帯状用紙(媒体)の台紙(基材)をラベル貼付面と反対面方向に屈曲させるなどして、ラベルを台紙から剥離させる。剥離部には、剥離部で屈曲させられる帯状用紙が接する面に溝部(凸部又は凹部)が設けられており、溝部まで搬送された帯状用紙は、溝部に接する部分が溝部に倣って凹状となる。つまり、帯状用紙は、凹状部が谷である波形となって搬送される。このような波形になった帯状用紙は、搬送方向に対してコシが強くなっており、搬送方向を変えるような屈曲がし難い状態である。そのため、剥離部で台紙だけを強制的に屈曲させて搬送すると、搬送方向に対してコシが強くなっているラベルは、台紙に追随して屈曲できずに台紙から剥離する。このように剥離部に溝部を設けてラベルのコシを強くすることにより、ラベルにコシのない場合や、ラベルを台紙に貼付している接着剤が強力であっても、ラベルを台紙から確実に剥離することが可能である。
【0009】
この場合、剥離部は円柱状であり、円周に沿って溝部が設けられていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、剥離部は円周全体が帯状用紙と接するため、円周に沿って溝部が設けられている。溝部によって帯状用紙は、搬送方向のコシが強くなり、剥離部で台紙だけを強制的に屈曲させて搬送すれば、台紙からラベルの剥離が可能となる。同時に、剥離部が円柱状であるため、帯状用紙と剥離部とによる摩擦等の負荷がほとんどなく、剥離部におけるラベル剥離によって生じる搬送負荷の増加を抑制可能である。また、円柱の形状は、加工し易くコストの抑制も可能である。
【0011】
また、剥離部は、台紙を屈曲させるために断面が角状の突起部を有し、突起部には、帯状用紙の搬送方向に沿って溝部を含むことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、剥離部は、帯状用紙の台紙の搬送方向を、屈曲させるような突起部を有し、突起部には、溝部が設けられており、この溝部によって帯状用紙のコシを強くすることが可能である。従って、剥離部において台紙だけ屈曲させて搬送方向を変えさせると、搬送方向にコシが強くなっているラベルの剥離が可能となる。同時に、突起部は、台紙を屈曲させる部分の断面が鋭角状であり、この角度を鋭くするほど急激に台紙を屈曲でき、より確実なラベルの剥離が可能である。
【0013】
本発明のプリンタは、台紙にラベルが貼付されている印刷用紙のラベルへ印刷を実行する印刷ヘッドと、印刷ヘッドに対して印刷用紙が搬送される下流側にあって、台紙側を案内し印刷用紙が搬送される方向と交差する方向に配置されている剥離部と、ラベルが台紙から剥離するように印刷用紙の台紙を剥離部で屈曲させて搬送する搬送部とを有し、剥離部には、印刷用紙(印刷媒体)と接する面に少なくとも1つの凸部又は凹部(溝部)を含むことを特徴とする。
【0014】
このプリンタによれば、剥離部において、搬送されている印刷用紙の台紙をラベル貼付面と反対面方向に屈曲させるなどして、印刷ヘッドで印刷がなされているラベルを台紙から剥離させる。剥離部には、剥離部で屈曲させられる印刷用紙が接する面に溝部が設けられており、溝部まで搬送された印刷用紙は、溝部に接する部分が溝部に倣って凹状となる。つまり、印刷用紙は、凹状部が谷である波形となって搬送される。このような波形になった印刷用紙は、搬送方向にコシが強くなっており、搬送方向を屈曲させ難い状態である。そのため、剥離部で台紙だけを強制的に屈曲させて搬送すると、搬送方向にコシが強くなっているラベルは、台紙に追随して屈曲できずに台紙から剥離する。このように剥離部に溝部を設けてラベルのコシを強くすることにより、ラベルにコシのない場合や、ラベルを台紙に貼付している接着剤が強力であっても、ラベルを台紙から確実に剥離することが可能である。
【0015】
この場合、剥離部は円柱状であり、円周に沿って溝部が設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、回転可能な剥離部は、円周全体が印刷用紙と接するため、円周に沿って溝部が設けられている。溝部によって印刷用紙は、搬送方向のコシが強くなり、剥離部で台紙だけを強制的に屈曲させて搬送すれば、台紙からラベルの剥離が可能となる。また、円柱の形状は、加工し易くコスト抑制ができ、剥離に関してプリンタの対費用効果が大である。
【0017】
また、剥離部は、台紙を屈曲させるために断面が角状の突起部を有し、突起部には、印刷用紙の搬送方向に沿って溝部が設けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、剥離部は、印刷用紙の台紙の搬送方向を屈曲させるような突起部を有し、突起部には、溝部が設けられており、この溝部によって印刷用紙のコシを強くすることが可能である。従って、剥離部において台紙を屈曲させて搬送方向を変えさせると、搬送方向にコシが強くなっているラベルの剥離が可能となる。同時に、突起部は、台紙を屈曲させる部分の断面が角状であり、この角度を鋭くするほど急激に台紙を屈曲でき、より確実なラベルの剥離が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面に従って説明する。実施形態では、台紙とラベルとからなる印刷用紙へサーマルヘッドで印刷し、印刷がなされたラベルを台紙から剥離して排出する携帯型のプリンタを例に説明する。
(実施形態1)
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタの外観を示す斜視図であり、図2は、プリンタの開閉フタおよび剥離ユニットが開けられた状態を示す斜視図である。プリンタ1は、プリンタ1の外観部を形成する上部外装2と、下部外装3と、下部外装3の長手方向の後部にあって、プリンタ1によって印刷される帯状の印刷用紙4を巻き回したロール部7を収容する収容部8と、下部外装3に設けられ収容部8の開口部分を覆う開閉蓋9と、開閉蓋9を開けるための開ボタン10と、上部外装2に開閉自在に一端を保持され閉じられている開閉蓋9と一部が重なるようにして閉じられる剥離ユニット11とを備えている。
【0021】
印刷用紙4は、図2に示すように、帯状の台紙5と、台紙5に等間隔に貼付され印刷に供されるラベル6とから成る。プリンタ1は、図1に示すように、開閉蓋9および剥離ユニット11が閉じられ、印刷用紙4のラベル6へ印刷がなされた後、ラベル6を排出するために、剥離ユニットへ設けられているラベル排出口12と、開閉蓋9と剥離ユニット11との間に形成され台紙5を排出するための台紙排出口13とを備えている。そして、下部外装3の長手方向前側部には、バッテリを脱着するためのバッテリ装着口14と、図示していない外部電源の受入口とを備えている。
【0022】
また、開閉蓋9は、台紙排出口13を形成する側に、回転自在な状態で取り付けられ印刷用紙4を搬送するためのプラテンローラ21と、プラテンローラ21の一端にプラテンローラ21と同軸固定されている従動歯車15と、プラテンローラ21へ印刷用紙4を案内するためプラテンローラ21より収容部8側に設けられているガイド部20と、プラテンローラ21に対して、ガイド部20と反対側に設けられ、印刷用紙4を台紙5とラベル6とに剥離するための剥離ローラ23(剥離部)と、を有している。剥離ユニット11は、上部外装2に保持されている一端の対極端に、プラテンローラ21と協働して印刷用紙4を挟持する押さえローラ24を有している。
【0023】
そして、上部外装2は、その上面に、電源ボタン17a、印刷ボタン17bおよび表示部17cからなる操作/表示部17を有している。さらに、プリンタ1は、開閉蓋9が閉じられた状態において、印刷用紙4を介してプラテンローラ21に接するように設けられているサーマルヘッド22(印刷ヘッド)を備えている。なお、ラベル6は、感熱紙であり、熱が加えられた部分が発色する性質を有している。この性質を利用して、サーマルヘッド22は、ラベル6の所定部分に熱を加えて発色させることにより、ラベル6への印刷を行う。
【0024】
このような構成のプリンタ1において、印刷用紙4の装着、ラベル6への印刷およびラベル6の剥離について詳細に説明する。まず、印刷用紙4の装着は、図2に示すように、開ボタン10を押して、開閉蓋9が開いている状態の時、印刷用紙4のロール部7を収容部8へ装着する。次に、印刷用紙4をロール部7から収容部8の外側まで引き出して、開閉蓋9を閉める。開閉蓋9を閉めた状態が図3に示されている。図3は、プリンタへ印刷用紙を装着する過程を示す断面図である。プリンタ1は、印刷用紙4を検出するために、下部外装3に設けられている透過検出器25aと、透過検出器25aに対向してガイド部20に設けられている反射検出器25bと、剥離ユニット11に設けられラベル排出口12におけるラベル6の検出をするラベル排出検出器25cとを備える。
【0025】
ロール部7が収容部8へ収容されて開閉蓋9が閉められると、プラテンローラ21は、プリンタ1の下部外装3側に設けられているサーマルヘッド22との間に、印刷用紙4を押圧状態にしてサーマルヘッド22と当接する。この時、印刷用紙4は、ガイド部20と下部外装3とで形成された搬送路26に沿って、ロール部7からサーマルヘッド22へ案内され、さらに、透過検出器25aと反射検出器25b、および剥離ローラ23を経て、プリンタ1の外側へ引き出されている。この状態で、印刷用紙4を剥離ローラ23へ巻きつけるようにして、剥離ユニット11を閉める。剥離ユニット11を閉めることにより、図示していないセンサが開閉蓋9および剥離ユニット11の閉状態を感知し、プリンタ1は、印刷可能な状態となる。図3では、剥離ユニット11が閉められる途中を示している。
【0026】
開閉蓋9が閉められると、プラテンローラ21と同軸である従動歯車15は、下部外装3側のモータ(図示せず)と連動している駆動歯車(図示せず)と噛み合い、モータの回転をプラテンローラ21へ伝達可能な状態となる。さらに、剥離ユニット11が閉められて、プリンタ1の印刷が可能になると、モータの駆動によりプラテンローラ21が回転し、プラテンローラ21とサーマルヘッド22の間に挟持されている印刷用紙4が搬送され、最初に印刷されるラベル6(6a)が印刷可能な位置へ送られる。
【0027】
ここで、ラベル6を印刷開始位置へ送る過程を簡単に説明する。ラベル6の位置検出は、紙経路に設けられた透過検出器25aと反射検出器25bを使って行う。透過検出器25aおよび反射検出器25bは、印刷用紙4を介して互いに対向するように配置されている。まず、ラベル6の位置検出の原理を説明する。透過検出器25aおよび反射検出器25bは、印刷用紙4の透過率を検出することでラベル6とラベル6の間を検出する。印刷用紙4は、ラベル6+台紙5の部分と台紙5のみの部分から構成されており、これらは互いに透過率が異なるため、この透過率の差を使って台紙5のみの部分(ラベル6とラベル6の間。以降、ラベル間と記載する)を検出している。このラベル間を検出した位置から、所定の量を紙送りすることで印字開始位置までラベル6が搬送される。
【0028】
次に、印刷されたラベル6の剥離について説明する。図4は、印刷可能な状態のプリンタを示す断面図である。図4に示す状態は、図3において、剥離ユニット11が閉められた後、ラベル6aがプラテンローラ21の回転によりサーマルヘッド22へ搬送されて印刷が行われ、ラベル剥離後、所定の量搬送された後、搬送が停止されたところである。ラベル6aは、サーマルヘッド22によって印刷された後、台紙5と共に剥離ローラ23方向へ搬送される。そして、台紙5は、剥離ローラ23において、剥離ローラ23へ巻きつくように屈曲して搬送方向を変え、プラテンローラ21と同調して回転する押さえローラ24によって、台紙排出口13へ誘導される。
【0029】
台紙5が剥離ローラ23において搬送方向を変えるとき、台紙5に貼付されているラベル6aも、台紙5に追随して搬送方向を変えようとするが、台紙5が急激に屈曲しているために、追随できずに台紙5から剥離する。剥離したラベル6aは、サーマルヘッド22と剥離ローラ23とを結ぶ線の延長線上にある、ラベル排出口12へ向けて排出される。印刷後のラベル6aは、印刷開始位置への搬送以前に検出したラベル間位置情報もしくは、印字中に検出されるラベル間位置情報に基づいて、所定の量紙送りされることで、剥離停止位置まで搬送される。
【0030】
この場合、ラベル排出検出部25cはラベル排出口12において排出されたラベル6aの有無を検出するものであり、ラベル6aを検出している状態である。ラベル6aは、台紙5から剥離していないラベル6aの端部によって、台紙5に貼り付いて残っており、剥離した部分は、ラベル排出口12からプリンタ1の外へ向かって排出されている。また、ラベル排出口12にフッ素樹脂などを塗布しておけば、ラベル6の貼付面がラベル排出口12へ貼り付くことを防止可能である。
【0031】
ラベル排出口12から排出されているラベル6aは、容易に台紙5から剥がすことができ、プリンタ1から取り出して所定の印刷がなされたラベルとして使用される。ラベル6aが除去され、ラベル排出検出部25cによりラベル6aが検出されなくなったとき(検出解除)、ラベル6aが取り除かれたと判断できるため、プリンタ1は、次のラベル6bへの印刷が可能であると判断する。そして、ラベル6bへの印刷を実行する。以上のように、プリンタ1によって、ラベル6への印刷、印刷終了、ラベル6の剥離、搬送停止、ユーザーによるラベル6の除去、ラベル排出検出部25cによるラベル6の検出解除、次のラベル6への印刷、という一連のサイクルが実行され、印刷された所定数のラベル6を得ることが可能である。
【0032】
このようなプリンタ1に装着される印刷用紙4のラベル6には、薄くコシのないものや、台紙5に強力に貼付されているものがあり、これらのラベル6は、剥離ローラ23において台紙5から剥離せずに台紙5と共に台紙排出口13へ排出されてしまう場合がある。こうしたラベル6を確実に台紙5から剥離するために、剥離ローラ23は、複数の溝を有している。図5は、実施形態1における剥離ローラの詳細を示す斜視図である。剥離ローラ23は、溝部31を形成するための4個のリブ30を有している。
【0033】
剥離ローラ23へ搬送された印刷用紙4は、台紙5のみ剥離ローラ23に巻きつくように押さえローラ24の方向へ搬送方向を変えさせられる。印刷用紙4には、プラテンローラ21と押さえローラ24とによる搬送の張力がかかっており、印刷用紙4は、リブ30に押し付けられている。従って、リブ30の部分においては、印刷用紙4を受けてガイド可能であるが、溝部31の部分においては、印刷用紙4がガイドされずに溝部31へ凹状に窪んだ形状となる。これら窪んだ凹状部32は、溝部31の数だけ形成され、印刷用紙4の剥離ローラ23の軸方向は、凹状部32を谷とし、リブ30の部分を山とする波形を呈している。
【0034】
波形は、剥離ローラ23に対して搬送方向上流側および下流側の剥離ローラ23近傍に形成される。この場合、図5に示すように、溝部31に対応して、3本の凹状部32が、剥離ローラ23の軸方向に形成される。剥離ローラ23の上流側において、印刷用紙4の台紙5とラベル6とは、互いに貼り付いた状態で波形をなしている。一方、剥離ローラ23の下流側においては、台紙5が強制的に屈曲させられて搬送されるため、ラベル6も台紙5に追随して屈曲しようとする。しかし、ラベル6は、剥離ローラ23の軸方向に波形を呈しているため、軸方向と直角の搬送方向に対しては、屈曲し難く、コシが強い状態となっている。そのため、ラベル6は、台紙5に追随して屈曲することができず、搬送方向を変えられずに台紙5から剥離する。
【0035】
以上説明したように、プリンタ1は、剥離部である溝部31を有する剥離ローラ23によって、印刷用紙4のコシを強くし、また、プラテンローラ21と押さえローラ24とを有する搬送部によって、台紙5の搬送方向を剥離ローラ23において屈曲させるように変えてラベル6を剥離させる機能を備えている。剥離ローラ23、プラテンローラ21および押さえローラ24からなる剥離機構により、いかなるラベル6でも、確実に台紙5から剥離させることが可能である。
【0036】
以下、実施形態1の効果をまとめて記載する。
【0037】
(1)剥離ローラ23に溝部31を設けることにより、剥離ローラ23の近傍において、ラベル6は、搬送方向にコシが強くなるような波形の形状となる。従って、ラベル6が柔軟性に富みコシのない場合や、高温高湿環境下でラベルのコシが低下した場合や、ラベル6を台紙5に貼付している接着剤が強力であっても、台紙5の搬送方向を変えることにより、ラベル6が台紙5に追随せず、ラベル6を確実に台紙5から剥離することが可能である。
【0038】
(2)円柱状の剥離ローラ23は、加工し易い形状であり、溝部31の加工を加味してもコスト増を抑制することが可能である。
【0039】
(実施形態2)
【0040】
次に、本発明を具体化した実施形態2について説明する。実施形態1との相違点は、剥離部として、剥離ローラ23に替えて板状の剥離板を用いていることである。図6は、実施形態2における剥離板の詳細を示す斜視図である。剥離板35は、溝部37を形成するための4本の突起部36を有している。突起部36の突起方向は、印刷用紙4の搬送方向とほぼ平行であり、突起部36の先端が搬送方向の下流側を向いている。剥離板35の断面は、突起部36の先端が鋭角αに尖った形状である。
【0041】
剥離板35へ搬送された印刷用紙4は、台紙5のみ突起部36の先端に巻きつくように押さえローラ24の方向へ搬送方向を変えさせられる。印刷用紙4には、プラテンローラ21と押さえローラ24とによる搬送の張力がかかっており、印刷用紙4は、突起部36に押し付けられている。従って、突起部36の部分においては、印刷用紙4を受けてガイド可能であるが、溝部37の部分においては、印刷用紙4がガイドされずに溝部37へ凹状に窪んだ形状となる。これら窪んだ凹状部38は、溝部37の数だけ形成され、印刷用紙4の搬送方向と直交方向は、凹状部38を谷とし、突起部36の部分を山とする波形を呈している。
【0042】
波形は、溝部37および溝部37から搬送方向下流側の剥離板35近傍に形成される。この場合、図6に示すように、溝部37に対応して、3本の凹状部38が、印刷用紙4の搬送方向に沿って形成される。突起部36の先端より上流側において、印刷用紙4の台紙5とラベル6とは、互いに貼り付いた状態の波形となって搬送されている。一方、突起部36の先端より下流側においては、台紙5が屈曲して方向を変えるように強制搬送される。ラベル6は、台紙5に追随して屈曲しようとするが、搬送方向と直交方向に波形を呈しているため、搬送方向に対しては、屈曲し難く、コシが強い状態となっている。そのため、ラベル6は、台紙5に追随して屈曲することができず、搬送方向を変えずに台紙5から剥離する。
【0043】
以上説明したように、プリンタ1は、剥離部である突起部36と溝部37とを有する剥離板35によって、印刷用紙4のコシを強くし、また、プラテンローラ21と押さえローラ24とからなる搬送部によって、台紙5の搬送方向を剥離板35において屈曲させるように変えてラベル6を剥離させる機能を備えている。剥離板35、プラテンローラ21および押さえローラ24からなる剥離機構により、いかなるラベル6でも、確実に台紙5から剥離させることが可能である。
【0044】
以下、実施形態2の効果を記載する。
【0045】
(1)剥離板35に溝部37を設けることにより、剥離板35の溝部37において、ラベル6は、搬送方向にコシが強くなるような波形の形状となる。従って、ラベル6が柔軟性に富みコシのない場合や、ラベル6を台紙5に貼付している接着剤が強力であっても、台紙5の搬送方向を変えることにより、ラベル6が台紙5に追随せず、ラベル6を確実に台紙5から剥離することが可能である。
【0046】
(2)剥離板35の突起部36は、台紙5を屈曲させる部分の断面が鋭角状であり、この角度を鋭くするほど、急激に台紙5を屈曲でき、より確実にラベル6の剥離が可能である。
【0047】
(3)剥離板35は、突起部36を印刷用紙4の搬送方向上流側に向けて固定設置すれば良く、剥離ローラ23のように回転可能に取り付ける必要がない。従って、プリンタ1への設置が容易であり、稼動部分がなくメンテナンスも容易である。
【0048】
また、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、次のような変形例が挙げられる。図7(a)(b)(c)および、図8(d)(e)は、剥離部の形状に関する変形例を示す斜視図である。
【0049】
(変形例1)剥離ローラ23のリブ30の断面形状は、図7(a)に示すように、溝部31を形成するリブ30の側面が、溝部31の幅を広げるようにテーパー部40を有していても良い。テーパー部40を設けることにより、印刷用紙4と接する接触部41の幅が狭くなり、印刷用紙4の山部の盛り上がりが鋭い波形に形成することが可能である。これにより、ラベル6のコシがいっそう強くなり、より確実にラベル6の剥離が可能である。なお、剥離板35においても、溝部37を形成する突起部36の側面にテーパー部を設けることにより、同様な効果を得ることが可能である。
【0050】
(変形例2)剥離ローラ23のリブ30は、図7(b)に示すように、剥離ローラ23の軸方向の中央部に一個設ける設定でも良い。剥離ローラ23近傍において、印刷用紙4は、リブ30の接触部42を頂点とする山なりの形状をなす。このような形状は、平状態のラベル6よりラベル6のコシを強くすることができ、ラベル6の剥離に効果的である。また、剥離ローラ23の製造も簡単になる。なお、剥離板35においても、突起部36を中央部に一個設けることにより、同様な効果を得ることが可能である。
【0051】
(変形例3)剥離ローラ23のリブ30は、図7(c)に示すように、剥離ローラ23の軸方向の両端に設ける設定でも良い。剥離ローラ23近傍において、印刷用紙4は、両端のリブ30から溝部31へ凹状に窪んだ形状をなす。このような形状は、波形の形状および山なりの形状と同様にラベル6のコシを強くすることができ、ラベル6の剥離に効果的である。なお、剥離板35においても、突起部36を剥離板35の両端に設けることにより、同様な効果を得ることが可能である。
【0052】
(変形例4)剥離ローラ23のリブ30および剥離板35の突起部36は、4個に限定されない。図7(b)(c)に示す以外の複数個であっても良い。使用するラベル6に対応して最適な設定が可能である。また、それぞれの場合において、図7(a)に示す形状を適用することも可能である。
【0053】
(変形例5)剥離ローラ23は、図8(d)に示すように、剥離ローラ23の軸方向に沿って太鼓状部43を有する形状であっても良い。剥離ローラ23近傍において、印刷用紙4は、太鼓状部43に案内され山なりの形状をなす。このような形状により、平状態のラベル6よりラベル6のコシを強くすることができると共に、印刷用紙4の幅方向全体を安定して保持することが可能である。なお、剥離板35においても、太鼓状部43を設けることにより、同様な効果を得ることが可能である。
【0054】
(変形例6)剥離ローラ23は、図8(e)に示すように、リブ30の形状がそろばん玉状部44であり、剥離ローラ23の軸と別体であっても良い。こうすれば、図7(a)に示す場合と同様、ラベル6のコシを強くでき、さらに、軸へのそろばん玉状部44の配置を任意に設定可能である。そろばん玉状部44の軸への取り付けは、所定間隔で、そろばん玉状部44を軸へEリングによって固定する構成や、そろばん玉状部44間に所定長さのスリーブを入れ、両端のそろばん玉状部44をEリングで固定する構成や、軸へ溝を加工しておき、この溝へゴム製のそろばん玉状部44を嵌め込む構成などが考えられる。
【0055】
(変形例7)プリンタ1は、感熱紙ラベルへ印刷するサーマル方式に限らず、インクリボンを用いるサーマル方式およびドットインパクト方式、または、インクジェット方式などであっても良い。感熱紙以外のラベル6が使用可能であり、また、剥離機構を搭載可能なプリンタ1の種類の拡大が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの外観を示す斜視図。
【図2】プリンタの開閉フタおよび剥離ユニットが開けられた状態を示す斜視図。
【図3】プリンタへ印刷用紙を装着する過程を示す断面図。
【図4】印刷可能な状態のプリンタを示す断面図。
【図5】実施形態1における剥離ローラの詳細を示す斜視図。
【図6】実施形態2における剥離板の詳細を示す斜視図。
【図7】剥離部の形状に関する変形例を示す斜視図。
【図8】剥離部の形状に関する変形例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0057】
1…プリンタ、4…帯状用紙としての印刷用紙、5…台紙、6…ラベル、9…開閉蓋、11…剥離ユニット、12…ラベル排出口、13…台紙排出口、17…操作/表示部、17b…印刷ボタン、20…ガイド部、21…プラテンローラ、22…サーマルヘッド、23…剥離部としての剥離ローラ、24…押さえローラ、25a…透過検出器、25b…反射検出器、25c…ラベル排出検出器、30…リブ、31…溝部、32…凹状部、35…剥離部としての剥離板、36…突起部、37…溝部、38…凹状部、40…テーパー部、41、42…接触部、43…太鼓状部、44…そろばん玉状部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材にラベルが貼付されている媒体を前記基材と前記ラベルとに剥離するためのラベル剥離機構であって、
前記基材側を案内し、前記媒体が搬送される方向と交差する方向に配置されている剥離部と、
前記ラベルが前記基材から剥離するように、前記媒体を前記剥離部で屈曲させて搬送する搬送部とを有し、
前記剥離部は、前記媒体と接する面に少なくとも1つの凸部又は凹部を含むことを特徴とするラベル剥離機構。
【請求項2】
請求項1に記載のラベル剥離機構において、
前記剥離部は円柱状であり、
円周に沿って前記凸部又は凹部が設けられていることを特徴とするラベル剥離機構。
【請求項3】
請求項1に記載のラベル剥離機構において、
前記剥離部は、前記媒体を屈曲させるために断面が角状の突起部を有し、
前記突起部は、前記媒体の搬送方向に沿って前記凸部又は凹部を含むことを特徴とするラベル剥離機構。
【請求項4】
基材にラベルが貼付されている印刷媒体の前記ラベルへ印刷を実行する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体が搬送される下流側にあって、前記基材側を案内し前記印刷媒体が搬送される方向と交差する方向に配置されている剥離部と、
前記ラベルが前記基材から剥離するように前記印刷媒体を前記剥離部で屈曲させて搬送する搬送部とを有し、
前記剥離部は、前記印刷媒体と接する面に少なくとも1つの凸部又は凹部を含むことを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリンタにおいて、
前記剥離部は円柱状であり、
円周に沿って前記凸部又は凹部が設けられていることを特徴とするプリンタ。
【請求項6】
請求項4に記載のプリンタにおいて、
前記剥離部は、前記基材を屈曲させるために断面が角状の突起部を有し、
前記突起部は、前記印刷媒体の搬送方向に沿って前記凸部又は凹部を含むことを特徴とするプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−76721(P2007−76721A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269730(P2005−269730)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】