説明

ラベル巻き取り装置

【課題】時間という要素を用いることなく、ラベルシートの巻き取りの進行状況に応じて巻き取りロールの回転速度を適切に制御可能なラベル巻き取り装置を得る。
【解決手段】ラベル巻き取り装置1は、テンションローラ8とラベルシート50との当接位置が、テンションローラ8の可動域内に設定された複数の領域R1〜R4のうちのどの領域に含まれるかを検出する位置検出手段31と、上記当接位置を含む領域の遷移パターンを検出するパターン検出手段34と、上記遷移パターンに基づいて巻き取りロール2の駆動を制御する制御手段35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル発行装置から発行されたラベルシートを巻き取るラベル巻き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラベル巻き取り装置では、巻き始めの段階と巻き終わりの段階とで、巻き取りロールに巻かれているラベルシートの巻き径が相違する。従って、ラベルシートの巻き取り速度を一定に保つためには、巻き始めの段階(巻き径が小さい段階)から巻き終わりの段階(巻き径が大きい段階)に進むにつれて、巻き取りロールの回転速度を徐々に小さくする制御が必要となる。
【0003】
かかる制御を実現可能な従来のラベル巻き取り装置が、例えば下記特許文献1,2に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された装置では、ラベルシートに張力を付与するためのローラが設けられており、ローラとラベルシートとの当接位置に応じて、ローラの可動域内に複数の領域が規定されている。そして、ある特定の領域内のローラの滞在時間に基づいて、ラベルシートの巻き径が推定される。例えば、可動域の下死点を含む領域内に所定時間以上継続してローラが滞在している場合には、ラベルシートの巻き径が小さいと判定され、巻き取りロールの回転速度がデフォルト値よりも大きい値に補正される。
【0005】
特許文献2に開示された装置では、ラベルシートに張力を付与するためのテンションアームが設けられており、テンションアームとラベルシートとの当接位置に応じて、テンションアームの可動域内に複数の領域が規定されている。そして、最下部の領域から最上部の領域までテンションアームを移動させた際の所要時間に基づいて、ラベルシートの巻き径が推定される。例えば、その所要時間が所定の基準時間よりも短ければ、ラベルシートの巻き径が大きいと判定され、巻き取りロールの回転速度が小さい値に補正される。
【0006】
【特許文献1】特開2003−261121号公報(第0043段落乃至第0046段落)
【特許文献2】特開2006−117421号公報(第0024段落乃至第0029段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2に開示された装置ではいずれも、何らかの時間を計測して、その計測された時間に基づいて巻き取りロールの回転速度を補正している。従って、時間をリアルタイムで計測するための手段が必要となって、装置構成や処理内容が複雑となる。また、時間の計測誤差が直接的に補正量の誤差となって現れるため、計測誤差に対する寛容度が低い。さらに、計測された時間と回転速度の補正量との対応関係を予め規定しておく必要があり、しかも、機種や製品毎に別個の対応関係を規定する必要があるため、その作業が煩雑である。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、時間という要素を用いることなく、従来よりも簡単な方法で、ラベルシートの巻き取りの進行状況に応じて巻き取りロールの回転速度を適切に制御可能なラベル巻き取り装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係るラベル巻き取り装置は、ラベルシートを巻き取る巻き取り部と、前記巻き取り部よりも上流で前記ラベルシートに当接することにより、当該ラベルシートに張力を付与する張力付与手段と、前記張力付与手段と前記ラベルシートとの当接位置が、前記張力付与手段の可動域内に設定された複数の領域のうちのどの領域に含まれるかを検出する位置検出手段と、前記当接位置を含む領域の遷移パターンを検出するパターン検出手段と、前記遷移パターンに基づいて前記巻き取り部の駆動を制御する制御手段と
を備えるものである。
【0010】
第2の発明に係る巻き取り装置は、第1の発明に係る巻き取り装置において特に、前記複数の領域には、第1領域と、前記第1領域に隣接し、前記当接位置が前記第1領域よりも下方にある第2領域と、前記第2領域に隣接し、前記当接位置が前記第2領域よりも下方にある第3領域とが含まれ、前記パターン検出手段は、前記当接位置が前記第1領域、前記第2領域、及び前記第3領域の順に遷移した場合には、前記巻き取り部に巻かれている前記ラベルシートの巻き径は比較的小さいと判定し、前記当接位置が前記第1領域、前記第2領域、及び前記第1領域の順に遷移した場合には、前記巻き径は比較的大きいと判定することを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明に係る巻き取り装置は、第2の発明に係る巻き取り装置において特に、前記制御手段は、前記当接位置が前記第1領域にある場合には、前記巻き取り部の駆動を停止し、前記当接位置が前記第1領域から前記第2領域に遷移した場合には、所定の初速度で前記巻き取り部の回転を開始した後、前記巻き取り部の回転速度を、現在の回転速度から徐々に減速し、前記当接位置が前記第3領域から前記第2領域に遷移した場合には、前記巻き取り部の回転速度を、現在の回転速度から徐々に減速することを特徴とするものである。
【0012】
第4の発明に係る巻き取り装置は、第3の発明に係る巻き取り装置において特に、前記当接位置が前記第1領域及び前記第2領域を交互に遷移する場合において、前記制御手段は、前記当接位置が前記第1領域から前記第2領域に遷移した場合の前記巻き取り部の回転の初速度を、前回のものよりも今回のものを遅く設定することを特徴とするものである。
【0013】
第5の発明に係る巻き取り装置は、第2の発明に係る巻き取り装置において特に、前記複数の領域には、前記第3領域に隣接し、前記当接位置が前記第3領域よりも下方にある第4領域がさらに含まれ、前記制御手段は、前記当接位置が前記第2領域から前記第3領域に遷移した場合には、前記巻き取り部の回転速度を、現在の回転速度から、第1の変化率で徐々に加速し、前記当接位置が前記第3領域から前記第4領域に遷移した場合には、前記巻き取り部の回転速度を、現在の回転速度から、前記第1の変化率よりも大きい第2の変化率で徐々に加速し、前記当接位置が前記第4領域から前記第3領域に遷移した場合には、前記巻き取り部の回転速度を急減速した後、現在の回転速度から、前記第1の変化率で徐々に加速することを特徴とするものである。
【0014】
第6の発明に係る巻き取り装置は、第5の発明に係る巻き取り装置において特に、前記当接位置が前記第3領域及び前記第4領域を交互に遷移する場合において、前記制御手段は、前記当接位置が前記第3領域から前記第4領域に遷移した場合の前記第2の変化率を、前回のものよりも今回のものを小さく設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
第1乃至第6の発明に係るラベル巻き取り装置によれば、パターン検出手段は、張力付与手段とラベルシートとの当接位置を含む領域の遷移パターンを検出し、制御手段は、検出された遷移パターンに基づいて、巻き取り部の駆動を制御する。従って、何らかの時間を計測して巻き取り部の制御に利用する必要がないため、時間をリアルタイムで計測するための手段が不要となって、装置構成や処理内容の簡単化を図ることができる。また、時間の計測とは異なり遷移パターンの検出には誤差がないため、誤差が制御に及ぼす悪影響を回避することができる。さらに、計測時間と巻き取り部の回転速度の補正量との対応関係を予め規定しておく必要がないため、煩雑な作業を回避できるとともに、他の機種や他の製品への応用も容易となる。
【0016】
特に第2の発明に係るラベル巻き取り装置によれば、パターン検出手段は、張力付与手段とラベルシートとの当接位置を含む領域の遷移パターンに基づいて、巻き取り部に巻かれているラベルシートの巻き径の大小を正確に判定することができる。
【0017】
特に第3の発明に係るラベル巻き取り装置によれば、張力付与手段とラベルシートとの当接位置が第2領域内にある場合には、制御手段は、巻き取り部の回転速度を、現在の回転速度から徐々に減速する。これにより、ラベルシートの巻き径が徐々に大きくなることに起因して巻き取り速度が徐々に大きくなるという影響を、巻き取り部の回転速度を意図的に徐々に減速するという制御によって、効果的にキャンセルすることができる。
【0018】
特に第4の発明に係るラベル巻き取り装置によれば、張力付与手段とラベルシートとの当接位置が第1領域及び第2領域を交互に遷移する場合(つまり巻き終わりの段階)において、制御手段は、巻き取り部の回転の初速度を徐々に遅く設定する。これにより、ラベルシートの巻き径が大きくなっても、巻き取り部が回転駆動されている時間をある程度長く保つことができる。その結果、巻き取り部の回転及び停止が頻繁に繰り返されることを回避でき、それに伴って発生する振動がラベルシートの巻き取りやラベルへの印字等に与える悪影響を回避することができる。
【0019】
特に第5の発明に係るラベル巻き取り装置によれば、巻き取り部による巻き取りが不十分でラベルシートが弛んできた場合、第3領域及び第4領域に対応する加速制御によって、ラベルシートの弛みを解消することができる。その結果、張力付与手段とラベルシートとの当接位置が張力付与手段の可動域の下限に到達することを回避でき、ラベルシートに対して均一な張力を付与し続けることが可能となる。
【0020】
特に第6の発明に係るラベル巻き取り装置によれば、前回の第2の変化率よりも今回の第2の変化率を小さく設定することにより、ラベルシートの巻き径に応じて、第4領域における急加速の度合いを適度に調整することができる。その結果、ラベルシートの巻き取りがある程度進行した段階において巻き取り部が過剰に急加速されるという事態を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0022】
図1,2はそれぞれ、本発明の実施の形態に係るラベル巻き取り装置1の全体構成を示す斜視図及び側面図である。図1,2に示すようにラベル巻き取り装置1は、軸部3及びフランジ部4を有する巻き取りロール(巻き取り部)2と、液晶パネル等の表示部を有する本体ケース5と、本体ケース5に回転自在に取り付けられたローラ7と、同じく本体ケース5に回転自在に取り付けられたテンションローラ(張力付与手段)8と、ラベルプリンタから発行されたラベルシートをラベル巻き取り装置1内に取り込むための取り込み口9とを備えている。本体ケース5内には、巻き取りロール2を回転駆動するための駆動手段36(図9参照)や、ラベル巻き取り装置1の全体の動作を制御するためのコントローラ32(図9参照)等が配設されている。また、図2に示すように、テンションローラ8は、本体ケース5に設けられた弓状の案内溝10に沿って可動である。
【0023】
図3は、ラベル巻き取り装置1にラベルシート50がセットされた状態を示す側面図である。テンションローラ8は、ローラ7と取り込み口9との間で、上方からラベルシート50に当接している。ラベルシート50は、テンションローラ8の自重によって下方に押され、これによって、ラベルシート50に所定の張力が付与されている。ラベルシート50が張っているとテンションローラ8は上方に変位し、逆に、ラベルシート50が弛んでいるとテンションローラ8は下方に変位することとなる。
【0024】
図4は、案内溝10及びテンションローラ8を拡大して示す図である。本実施の形態では、案内溝10に沿ったテンションローラ8の可動域が、テンションローラ8の位置に応じて4つの領域に分割されている。具体的には、上方から順に、領域R1,R2,R3,R4が規定されている。
【0025】
図5〜8は、テンションローラ8の位置の検出方法を説明するための図である。テンションローラ8は、アーム21の一端に取り付けられている。アーム21の他端は軸Oに固定されており、アーム21は軸Oを中心として回動可能である。アーム21には、所定の箇所に遮光板22が取り付けられている。また、アーム21の回動に伴う遮光板22の移動経路に対応して、2組の光センサ23,24が配設されている。光センサ23,24はそれぞれ、投光部と受光部とを有している。
【0026】
図5を参照して、テンションローラ8が図4に示した領域R1内に存在する場合は、光センサ23の投光部から投じられた光は、遮光板22によって遮られることなく、光センサ23の受光部によって受光される。同様に、光センサ24の投光部から投じられた光は、遮光板22によって遮られることなく、光センサ24の受光部によって受光される。
【0027】
図6を参照して、テンションローラ8が図4に示した領域R2内に存在する場合は、光センサ23の投光部から投じられた光は、遮光板22によって遮られ、光センサ23の受光部によって受光されない。一方、光センサ24の投光部から投じられた光は、遮光板22によって遮られることなく、光センサ24の受光部によって受光される。
【0028】
図7を参照して、テンションローラ8が図4に示した領域R3内に存在する場合は、光センサ23の投光部から投じられた光は、遮光板22によって遮られ、光センサ23の受光部によって受光されない。同様に、光センサ24の投光部から投じられた光は、遮光板22によって遮られ、光センサ24の受光部によって受光されない。
【0029】
図8を参照して、テンションローラ8が図4に示した領域R4内に存在する場合は、光センサ23の投光部から投じられた光は、遮光板22によって遮られることなく、光センサ23の受光部によって受光される。一方、光センサ24の投光部から投じられた光は、遮光板22によって遮られ、光センサ24の受光部によって受光されない。
【0030】
このように、光センサ23,24の各受光部が光を受光するか否かの組合せによって、テンションローラ8の位置(テンションローラ8とラベルシート50との当接位置)を検出することができる。
【0031】
図9は、ラベル巻き取り装置1の全体の動作を制御するためのコントローラ32の機能構成を示すブロック図である。図9に示すように、コントローラ32は、不揮発性メモリ等の記憶手段33と、パターン検出手段34と、制御手段35とを備えて構成されている。図9において、位置検出手段31は、図5〜8に示した光センサ23,24を含む。つまり、位置検出手段31は、テンションローラ8とラベルシート50との現在の当接位置が、テンションローラ8の可動域内に設定された複数の領域R1〜R4のうちのどの領域に含まれるかを検出可能である。また、駆動手段36は、巻き取りロール2を回転駆動するためのモータ等である。
【0032】
位置検出手段31によって検出されたテンションローラ8の位置は、記憶手段33に記憶される。記憶手段33には、テンションローラ8の現在の位置のみならず、過去の位置も記憶されている。パターン検出手段34は、記憶手段33を参照することにより、テンションローラ8の位置が遷移した履歴(遷移パターン)を知ることができる。制御手段35は、テンションローラ8の遷移パターンに基づいて、巻き取りロール2の駆動を制御する。
【0033】
図10〜12は、コントローラ32による巻き取りロール2の駆動制御の一例を示す図である。図10は、巻き始めの段階、つまり、巻き取りロール2に巻かれているラベルシート50の巻き径が小さい時の動作を示している。図12は、巻き終わりの段階、つまり、巻き取りロール2に巻かれているラベルシート50の巻き径が大きい時の動作を示している。図11は、図10と図12との中間段階の動作を示している。以下、図4,9〜12を参照して、具体的に説明する。なお、図10〜12中において丸で囲んだ数字は、領域R1〜R4のうちテンションローラ8が位置している領域に対応する数字を示している。
【0034】
初期状態においては、テンションローラ8は領域R1内に位置しているものとする。テンションローラ8が領域R1内に位置している場合、制御手段35は、巻き取りロール2の回転を停止させる。この状態でラベルプリンタがラベルシート50の発行を開始すると、次第にラベルシート50は弛んできて、時刻T1において、テンションローラ8の位置が領域R1から領域R2に移る。
【0035】
テンションローラ8の位置が領域R1から領域R2に移った場合、制御手段35は、所定の初速度で、巻き取りロール2の回転を開始させる。例えば、本実施の形態に係るラベル巻き取り装置1では、巻き取りロール2の回転速度を、最低の第1レベルから最高の第150レベルまでの150段階に設定可能である。時刻T1において、制御手段35は、例えば第20レベルの回転速度で、巻き取りロール2の回転を開始させる。また、テンションローラ8が領域R2内に位置している間、制御手段35は、巻き取りロール2の回転速度を、現在の回転速度から緩やかに減速していく。
【0036】
この段階では、巻き取りロール2へのラベルシート50の巻き径が小さいため、第20レベル程度の回転速度では、巻き取りロール2によるラベルシート50の巻き取り速度は不足している。従って、ラベルシート50はさらに弛んできて、時刻T2において、テンションローラ8の位置が領域R2から領域R3に移る。換言すれば、テンションローラ8の位置が領域R1→R2→R3の順に遷移したことにより、制御手段35は、現段階では巻き取りロール2へのラベルシート50の巻き径が小さいことを判定することができる。
【0037】
テンションローラ8の位置が領域R2から領域R3に移った場合、制御手段35は、巻き取りロール2の回転速度を、現在の回転速度から第1の変化率で緩やかに加速していく。テンションローラ8が領域R3内に位置している間、第1の変化率での巻き取りロール2の回転速度の加速が継続される。
【0038】
この段階では、巻き取りロール2へのラベルシート50の巻き径がまだ小さいため、巻き取りロール2によるラベルシート50の巻き取り速度は不足している。従って、ラベルシート50はさらに弛んできて、時刻T3において、テンションローラ8の位置が領域R3から領域R4に移る。
【0039】
テンションローラ8の位置が領域R3から領域R4に移った場合、制御手段35は、巻き取りロール2の回転速度を、現在の回転速度から、上記第1の変化率よりも大きい第2の変化率で急激に加速していく。テンションローラ8が領域R4内に位置している間、第2の変化率での巻き取りロール2の回転速度の加速が継続される。
【0040】
巻き取りロール2の回転速度が加速されるため、それに伴ってラベルシート50の巻き取り速度も上昇する。その結果、ラベルシート50が次第に張ってきて、時刻T4において、テンションローラ8の位置が領域R4から領域R3に移る。
【0041】
テンションローラ8の位置が領域R4から領域R3に移った場合、制御手段35は、まず、巻き取りロール2の回転速度を急激に減速する。例えば、時刻T3から時刻T4までの間に上昇した回転速度の変化分をY1として、その変化分Y1の1/2に相当する変化分Y2だけ、巻き取りロール2の回転速度を瞬間的に減速する。その後は、上記と同様に、テンションローラ8が領域R3内に位置している間、第1の変化率での巻き取りロール2の回転速度の加速が継続される。
【0042】
以降、巻き始めの段階では図10に示すように領域R2〜R4間での遷移が繰り返され、巻き取りロール2へのラベルシート50の巻き径が徐々に大きくなっていく。
【0043】
図11を参照して、中間段階では領域R2,R3間での遷移が繰り返され、巻き取りロール2へのラベルシート50の巻き径がさらに大きくなっていく。例えば時刻T23において、テンションローラ8の位置が領域R3から領域R2に移った場合、制御手段35は、巻き取りロール2の回転速度を、現在の回転速度から徐々に減速していく。テンションローラ8が領域R2内に位置している間、巻き取りロール2の回転速度の減速が継続される。このように、巻き取りロール2の回転速度を意図的に徐々に減速していくことにより、ラベルシート50の巻き径が徐々に大きくなることに起因して巻き取り速度が徐々に大きくなるという影響を、効果的にキャンセルすることができる。
【0044】
なお、テンションローラ8の位置が領域R2から領域R3に移った場合の動作は、上述した通りである。
【0045】
図12を参照して、巻き取りロール2へのラベルシート50の巻き径がさらに大きくなってくると、それに伴ってラベルシート50の巻き取り速度もさらに上昇する。そのため、ラベルシート50が次第に張ってきて、時刻T31において、テンションローラ8の位置が領域R2から領域R1に移る。テンションローラ8の位置が領域R2から領域R1に移った場合、制御手段35は、巻き取りロール2の回転を停止させる。
【0046】
巻き取りロール2の回転が停止されている間も、ラベルプリンタからのラベルシート50の発行は継続されているため、次第にラベルシート50が弛んできて、時刻T32において、テンションローラ8の位置が領域R1から領域R2に移る。
【0047】
テンションローラ8の位置が領域R1から領域R2に移った場合、制御手段35は、例えば第20レベルの初速度V1で、巻き取りロール2の回転を開始させる。また、上記と同様に、テンションローラ8が領域R2内に位置している間、制御手段35は、巻き取りロール2の回転速度を、現在の回転速度から緩やかに減速していく。
【0048】
この段階では、巻き取りロール2へのラベルシート50の巻き径が大きいため、第20レベル程度の回転速度によっても、巻き取りロール2によるラベルシート50の巻き取り速度は過剰気味である。従って、ラベルシート50はすぐに張ってきて、時刻T33において、テンションローラ8の位置が領域R2から領域R1に移る。換言すれば、テンションローラ8の位置が領域R1→R2→R1の順に遷移したことにより、制御手段35は、現段階では巻き取りロール2へのラベルシート50の巻き径が大きいことを判定することができる。
【0049】
テンションローラ8の位置が領域R1に移ったことにより、制御手段35は、巻き取りロール2の回転を停止させる。その後、時刻T34において、テンションローラ8の位置が領域R1から領域R2に移ったことにより、制御手段35は、巻き取りロール2の回転を開始させる。ここで、制御手段35は、回転の初速度を、前回の初速度V1よりも小さい初速度V2に設定する。例えば、今回の初速度V2は前回の初速度V1よりも5レベル分小さい値に設定される。
【0050】
以降、巻き終わりの段階では図12に示すように領域R1,R2間での遷移が繰り返され、時刻T39において、ラベル発行の完了信号をラベルプリンタから受信したことにより、ラベル巻き取り装置1の動作も終了する。
【0051】
図12に示すように、テンションローラ8の回転を再開させる際の回転の初速度V1〜V4は、後になるほど小さく設定されている。これにより、ラベルシート50の巻き径が大きくなっても、巻き取りロール2が回転駆動されている時間をある程度長く保つことができる。その結果、巻き取りロール2の回転及び停止が小刻みに繰り返されることを回避でき、それに伴って発生する振動がラベルシート50の巻き取りやラベルへの印字等に与える悪影響を回避することができる。
【0052】
このように、本実施の形態に係るラベル巻き取り装置1によれば、パターン検出手段34は、テンションローラ8とラベルシート50との当接位置の遷移パターンを検出し、制御手段35は、検出された遷移パターンに基づいて、巻き取りロール2の駆動を制御する。従って、何らかの時間(滞在時間や所要時間等)を計測して巻き取りロール2の制御に利用する必要がないため、時間をリアルタイムで計測するための手段が不要となって、装置構成や処理内容の簡単化を図ることができる。また、時間の計測とは異なり遷移パターンの検出には誤差が無い(又は少ない)ため、誤差が制御に及ぼす悪影響を回避することができる。さらに、計測時間と巻き取りロール2の回転速度の補正量との対応関係を予め規定しておく必要がないため、煩雑な作業を回避できるとともに、他の機種や他の製品への応用も容易となる。
【0053】
第1の変形例
図13は、本実施の形態の第1の変形例を説明するための図である。図10に対応させて、巻き始めの段階での巻き取りロール2の駆動制御の一例を示している。領域R3,R4間での遷移が繰り返されており、図13では、時刻T41,T43,T45の各々から領域R4が開始されている。上記の通り、テンションローラ8が領域R4内に位置する場合、制御手段35は、巻き取りロール2の回転速度を、現在の回転速度から第2の変化率で加速していく。ここで、制御手段35は、今回採用する第2の変化率の値を、前回採用した第2の変化率の値よりも小さく設定する。第2の変化率は図13において傾きX1〜X3として表され、図13に示すように、X1→X2→X3の順に傾きが小さくなっている。つまり、後になるほど第2の変化率が小さく設定されている。
【0054】
巻き取りロール2へのラベルシート50の巻き径は、処理が進むにつれて次第に大きくなる。従って、前回の第2の変化率よりも今回の第2の変化率を小さく設定することにより、ラベルシート50の巻き径に応じて、領域R4における巻き取りロール2の回転の急加速の度合いを適度に調整することができる。その結果、ラベルシート50の巻き取りがある程度進行した段階(巻き始めの段階の後半)において、巻き取りロール2が過剰に急加速されるという事態を回避することができる。
【0055】
第2の変形例
図14は、本実施の形態の第2の変形例を説明するための図である。本第2の変形例は、巻き終わりの段階での巻き取りロール2の駆動制御に関するものである。ここでは、ユーザの操作入力によって、高速巻き取り、中速巻き取り、及び低速巻き取りを任意に選択できるようになっている。そして、ユーザが高速巻き取りを選択した場合には、用意されている全段階(上記の例では150段階)の回転速度のうち、図14に示す範囲K1内のレベルを用いて処理が行われる。同様に、ユーザが中速巻き取りを選択した場合には、範囲K2内のレベルを用いて処理が行われ、ユーザが低速巻き取りを選択した場合には、範囲K3内のレベルを用いて処理が行われる。
【0056】
ユーザが例えば高速巻き取りを選択している場合を想定する。この場合、巻き終わりの段階での処理(図12参照)において、テンションローラ8の第1回目の回転再開時の初速度として、初速度V1aが設定される。その後は、上記の通り、回転再開時の初速度は後になるほど小さい値に設定される。すると、いずれは範囲K1の下限値V5aに到達し、それよりも小さい値を設定できなくなる。
【0057】
この場合、制御手段35は、範囲K1を範囲K2に自動的にシフトし、次回の回転再開時の初速度として、下限値V5aよりも小さい初速度V1bを設定する。同様に、範囲K2の下限値V5bに到達した場合には、制御手段35は、範囲K2を範囲K3に自動的にシフトし、次回の回転再開時の初速度として、下限値V5bよりも小さい初速度V1cを設定する。
【0058】
このように、ユーザの選択に拘束されずに制御手段35が範囲K2,K3に自動的にシフトすることにより、回転再開時の初速度として設定できる範囲が広がり、巻き終わりの段階における動作をスムーズに実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態に係るラベル巻き取り装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るラベル巻き取り装置の全体構成を示す側面図である。
【図3】ラベル巻き取り装置にラベルシートがセットされた状態を示す側面図である。
【図4】案内溝及びテンションローラを拡大して示す図である。
【図5】テンションローラの位置の検出方法を説明するための図である。
【図6】テンションローラの位置の検出方法を説明するための図である。
【図7】テンションローラの位置の検出方法を説明するための図である。
【図8】テンションローラの位置の検出方法を説明するための図である。
【図9】コントローラの機能構成を示すブロック図である。
【図10】巻き取りロールの駆動制御の一例を示す図である。
【図11】巻き取りロールの駆動制御の一例を示す図である。
【図12】巻き取りロールの駆動制御の一例を示す図である。
【図13】第1の変形例を説明するための図である。
【図14】第2の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ラベル巻き取り装置
2 巻き取りロール
8 テンションローラ
31 位置検出手段
32 コントローラ
33 記憶手段
34 パターン検出手段
35 制御手段
36 駆動手段
50 ラベルシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベルシートを巻き取る巻き取り部と、
前記巻き取り部よりも上流で前記ラベルシートに当接することにより、当該ラベルシートに張力を付与する張力付与手段と、
前記張力付与手段と前記ラベルシートとの当接位置が、前記張力付与手段の可動域内に設定された複数の領域のうちのどの領域に含まれるかを検出する位置検出手段と、
前記当接位置を含む領域の遷移パターンを検出するパターン検出手段と、
前記遷移パターンに基づいて前記巻き取り部の駆動を制御する制御手段と
を備える、ラベル巻き取り装置。
【請求項2】
前記複数の領域には、
第1領域と、
前記第1領域に隣接し、前記当接位置が前記第1領域よりも下方にある第2領域と、
前記第2領域に隣接し、前記当接位置が前記第2領域よりも下方にある第3領域と
が含まれ、
前記パターン検出手段は、
前記当接位置が前記第1領域、前記第2領域、及び前記第3領域の順に遷移した場合には、前記巻き取り部に巻かれている前記ラベルシートの巻き径は比較的小さいと判定し、
前記当接位置が前記第1領域、前記第2領域、及び前記第1領域の順に遷移した場合には、前記巻き径は比較的大きいと判定する、請求項1に記載のラベル巻き取り装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記当接位置が前記第1領域にある場合には、前記巻き取り部の駆動を停止し、
前記当接位置が前記第1領域から前記第2領域に遷移した場合には、所定の初速度で前記巻き取り部の回転を開始した後、前記巻き取り部の回転速度を、現在の回転速度から徐々に減速し、
前記当接位置が前記第3領域から前記第2領域に遷移した場合には、前記巻き取り部の回転速度を、現在の回転速度から徐々に減速する、請求項2に記載のラベル巻き取り装置。
【請求項4】
前記当接位置が前記第1領域及び前記第2領域を交互に遷移する場合において、
前記制御手段は、前記当接位置が前記第1領域から前記第2領域に遷移した場合の前記巻き取り部の回転の初速度を、前回のものよりも今回のものを遅く設定する、請求項3に記載のラベル巻き取り装置。
【請求項5】
前記複数の領域には、前記第3領域に隣接し、前記当接位置が前記第3領域よりも下方にある第4領域がさらに含まれ、
前記制御手段は、
前記当接位置が前記第2領域から前記第3領域に遷移した場合には、前記巻き取り部の回転速度を、現在の回転速度から、第1の変化率で徐々に加速し、
前記当接位置が前記第3領域から前記第4領域に遷移した場合には、前記巻き取り部の回転速度を、現在の回転速度から、前記第1の変化率よりも大きい第2の変化率で徐々に加速し、
前記当接位置が前記第4領域から前記第3領域に遷移した場合には、前記巻き取り部の回転速度を急減速した後、現在の回転速度から、前記第1の変化率で徐々に加速する、請求項2に記載のラベル巻き取り装置。
【請求項6】
前記当接位置が前記第3領域及び前記第4領域を交互に遷移する場合において、
前記制御手段は、前記当接位置が前記第3領域から前記第4領域に遷移した場合の前記第2の変化率を、前回のものよりも今回のものを小さく設定する、請求項5に記載のラベル巻き取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−46237(P2009−46237A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213175(P2007−213175)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】