説明

ラベル発行装置

【課題】搬送中における台紙のたるみの発生を防止して、高精度な印字処理に対応可能なラベル発行装置を提供する。
【解決手段】計量プリンタ1は、長尺のラベルシートLSに複数枚貼り付けられたラベルLを搬送しながら印字ユニット33において印字処理を行うラベル発行装置である。制御部20は、ラベルLに対して印字処理を行ってラベルシートLSを巻き取る正方向への搬送とラベルシートLSをバックフィードする際の搬送とで、バックフィード時における搬送速度が正方向への搬送速度よりも低速になるように、駆動モータ50を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の台紙に対して貼り付けられた複数のラベルを搬送しながら商品の価格等の情報を印字するラベル発行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スーパーマーケット等において、食料品等の商品を計量した後、その重量に応じた商品の値段を印刷して貼り付けるためのラベル発行装置が用いられている。このラベル発行装置では、巻回された長尺のシート(台紙)に対して複数貼り付けられたラベルを搬送しながら、印字ヘッドに対して対向配置された印字ローラとの間にラベルを挟み込むようにして所望の情報をプリントしている。
【0003】
例えば、特許文献1には、台紙上のラベルに対して印字処理を行った後、次の商品の計量とラベルのバックフィードとが完了したことを条件として、次のラベルの印字処理を開始するラベル発行装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−104354号公報(平成14年4月10日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のラベル発行装置に搭載されるブレーキ装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたラベル発行装置では、印字処理を行った後でラベルが貼られた台紙をバックフィード(後退)させているが、処理能力の向上を目的として、この後退時における台紙の搬送速度が前進時における搬送速度よりも速くなっている。このため、台紙を後退させた際に台紙に引っ張られて巻取り軸が巻取り方向とは反対に逆回転して台紙にたるみが生じる場合がある。このような台紙のたるみは、印字ヘッドによる印字位置におけるラベルの搬送を不安定にし、高精度な印字処理を行うことができなくなるおそれがある。
【0005】
特に、例えば、QRコード等のようなラベル印字の複雑高度化に伴って、印字位置におけるラベルの搬送精度の低下は許容しがたいものとなってきている。
本発明の課題は、搬送中における台紙のたるみの発生を防止して、高精度な印字処理に対応可能なラベル発行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るラベル発行装置は、ラベルが複数貼り付けられた長尺の台紙を搬送しながら印字処理を行い、ラベルが剥離された台紙を巻き取るラベル発行装置であって、搬送部と、巻取りローラと、搬送制御部と、を備えている。搬送部は、台紙が巻き取られる正方向およびその反対の逆方向へ台紙を搬送する。巻取りローラは、搬送部によって正方向へ搬送される台紙を巻き取る。搬送制御部は、台紙を逆方向に搬送する際には、正方向よりも低速で搬送する。
【0007】
ここでは、ラベルに対して印字処理を行い、そのラベルを台紙から剥離した後、次のラベルの印字位置と印字ヘッドとの位置合わせを行うために台紙を逆方向に搬送する(バックフィードする)場合には、台紙が巻き取られる正方向への搬送と比較して、低速で台紙を搬送する。
ここで、上記搬送制御部としては、単純に正逆方向における台紙の搬送速度を変化させる制御装置や、同じ速度の回転駆動を異なるギア比を介して伝達することで正逆方向における搬送速度を変化させる搬送機構等も含まれる。
【0008】
通常、ラベルの位置合わせのために台紙をバックフィードする場合には、台紙の逆方向への搬送によって巻取り軸に巻き取られた台紙のロールが逆回転することになる。このとき、台紙の逆方向への搬送が高速になるほど、ロール体が必要以上に回転するため印字位置の周辺における台紙にたるみが生じ易くなってしまう。
本発明のラベル発行装置では、バックフィード時における台紙の搬送を、正方向への搬送よりも低速で行う。
【0009】
これにより、バックフィード時において台紙に引っ張られて逆回転する巻き取られた台紙のロールの回転を抑制して、台紙にたるみが生じることを抑制することができる。この結果、印字位置における台紙の搬送を安定化させて、高精度な印字処理を実施することができる。
【0010】
第2の発明に係るラベル発行装置は、第1の発明に係るラベル発行装置であって、搬送制御部には、正方向への搬送速度と逆方向への搬送速度とが別々に設定される。
ここでは、ラベルに対する印字処理を行う際の台紙の搬送速度と、台紙のバックフィード時における搬送速度とが、別々に設定される。
これにより、印字速度とバックフィード速度とで、バックフィードの方が遅くなるように別々に制御することができる。この結果、正方向への搬送速度をできる限り高速に設定し、バックフィード時の搬送速度を低速に設定することで、ラベル発行の処理効率を低下させることを防止できる。
【0011】
第3の発明に係るラベル発行装置は、第1または第2の発明に係るラベル発行装置であって、搬送部は、正方向へ台紙を搬送する第1駆動部と、逆方向へ台紙を搬送する第2駆動部と、を有している。
ここでは、正逆方向への台紙の搬送を、それぞれ別々の駆動部によって行っている。
これにより、各駆動部における搬送部へ伝達される回転駆動を、逆方向への搬送が遅くなるように容易に設定することができる。この結果、1つの駆動部によって搬送部による正逆方向への搬送速度を変化させる構成と比較して、搬送制御を簡略化させることができる。
【0012】
第4の発明に係るラベル発行装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係るラベル発行装置であって、搬送部は、正方向への搬送と逆方向への搬送とで異なるギア比のギア部を介して駆動される。
ここでは、台紙の正方向への搬送と逆方向への搬送とで、異なるギア比を有するギアを介して駆動される。具体的には、逆方向への搬送側に正方向の搬送側よりもギア比の小さいギアを用いる。
【0013】
これにより、共通の駆動源によって正逆方向に同じ回転速度で回転駆動させた場合でも、搬送部に対してギア比の異なるギアを介して回転駆動力を伝達することで、正逆方向へ異なる速度で台紙を搬送することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のラベル発行装置によれば、印字位置における台紙の搬送を安定化させて、高精度な印字処理を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係るラベル発行装置について、図1〜図7を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明において用いた「上流側」、「下流側」とは、ラベルシートLSがラベルシート巻取部32において巻き取られる正方向に搬送される状態における「上流側」、「下流側」をそれぞれ意味するものとする。
【0016】
[計量プリンタ1の構成]
計量プリンタ1は、計量部2あるいは他システムから商品の重量あるいは個数のデータを得て、設定された定額の商品価格とともにそれに対する概略単価を、長尺のラベルシート(台紙)LSに貼り付けられたラベルL(図3参照)に対して印字・発行する装置であって、図1に示すように、計量部2と、本体部3と、液晶モニタ4と、操作パネル5と、を備えている。
【0017】
計量部2は、計量プリンタ1の前方に配置されており、発行されたラベルLを貼り付ける対象となる商品の計量を行う。
本体部3は、計量部2に隣接する位置に配置されており、計量部2において計量された商品の重量に基づいて所望の印字処理を行う。そして、本体部3の前面部分には、印字処理されたラベルLを、図3に示すように、ラベルシートLSから剥離するための剥離板46(図6参照)が設けられたラベル発行口3aが設けられている。なお、本体部3の内部に格納された各種部材については、後段にて詳述する。
【0018】
液晶モニタ4は、本体部3の上部に取り付けられたタッチパネルモニタであって、操作者に操作を促すための種々の画面が表示される。
操作パネル5は、本体部3の上面に配置されており、選択した商品に関する各種のデータを呼び出すための呼出キー、商品を選択するためのテンキー、直接タッチすることによって商品名を指定し商品に関するデータを呼び出すためのPLU(Price Look Up)キー等を有している。
【0019】
[本体部3内部の構成]
本体部3は、図2および図3に示すように、内部に、上述したラベルシートLSを所定の方向へ搬送しながら印字処理を行うために、制御部(搬送制御部)20と、ラベル発行部30とを格納している。
(制御部20)
制御部20は、CPU,RAM,ROM等を有するマイクロコンピュータを有しており、計量部2や液晶モニタ4、操作パネル5等が接続されている。また、制御部20には、各商品に関するデータの束である商品マスタ21aが保存されるメモリ21と、CPU等を利用して演算を行う計算部22とが含まれている。さらに、制御部20は、ラベル発行部30に含まれる搬送機構(搬送部)34によるラベルシートLSの搬送方向や搬送速度等を制御する。なお、制御部20によるラベルシートLSの正逆方向への搬送制御については、後段にて詳述する。
【0020】
また、制御部20には、商品の計量を行う計量部2から、その計量結果である商品の重量データが送信される。
本実施形態の計量プリンタ1では、図2等に示すように計量部2をラベル発行装置に接続したシステム構成を採っているが、例えば、商品の計量機能を有する計量部が装置内に組み込まれているシステム構成とすることも可能である。また、図2に示すように計量部2を装置に直接接続するのではなく、他システムを介して商品の重量データを装置に入力するようにしてもよい。さらには、重量にばらつきのないものであれば、商品に対応させて予め商品の重量を記憶させておいてもよい。
【0021】
(ラベル発行部30)
ラベル発行部30は、図2および図3に示すように、ラベル収納部31、ラベルシート巻取部32、印字ユニット33および搬送機構34を有している。
(ラベル収納部31)
ラベル収納部31は、複数のラベルが連続して貼付された長尺のラベルシートLSのロール体の紙管LTの部分が装着軸31aに対して装着されることで、ラベルシートLSを支持する。また、ラベル収納部31は、図4に示すように、本体部3の側壁面に対して回動軸35bを中心に回動可能な状態で取り付けられたロールガイド35aを有している。
【0022】
ロールガイド35aは、回動軸35bとは反対側の先端部分がラベルシートLSのロール体の中心部分に存在する紙管LTの一部の側方に側面視において重複する位置に近接して配置されており、紙管LTが装着軸31aから抜け落ちてしまうことを防止する。
(ラベルシート巻取部32)
ラベルシート巻取部32は、ラベル収納部31から引き出されて搬送され、ラベル発行口3aにおいてラベルLが剥離されたラベルシートLSを、巻取り軸32aに対して相対回転不能な状態で固定された巻取りボビン(巻取りローラ)32bによって巻き取る。
【0023】
巻取り軸32aは、図5に示すように、複数の駆動ギア45a,45b,45c,45dによって構成されるギア部45を介して、印字ローラ42の駆動ギア42aおよび搬送ローラ44の駆動ギア44aと連結されており、駆動ギア45a〜45dを介して印字ローラ42および搬送ローラ44と共通の駆動モータ50によって回転駆動される。
そして、巻取り軸32aは、図示しないワンウェイクラッチによってラベルシートLSの巻取り方向にのみ回転駆動が伝達され、巻取り方向とは反対方向には空回りする機構を有している。
【0024】
さらに、巻取り軸32aには、巻取り方向およびその反対方向の双方について回転駆動力にブレーキ力を付与するとともに、巻取り軸32aに所定の値以上のトルクがかかると、巻取り軸32aを滑らせながら回転させるトルクリミッタが設けられている。
これにより、巻取り軸32aにおけるラベルシートLSの巻取り径が変化していった場合でも、巻取り径に応じて適切に巻取り軸32aを回転駆動させることで、ほぼ一定の速度でラベルシートLSを巻き取ることができる。
【0025】
(印字ユニット33)
印字ユニット33は、図3および図6に示すように、印字ヘッド41と、これに対向する位置に近接配置された印字ローラ42とを有している。そして、印字ユニット33では、印字ローラ42に当接しながら搬送されるラベルシートLSに貼り付けられたラベルLに対して印字ヘッド41によって印字処理が行われる。
【0026】
印字ヘッド41は、搬送機構34によって搬送されるラベルシートLSを印字ローラ42との間に挟み込むような状態で、ラベルシートLSに対して上方から当接しながら印字処理を行うサーマルヘッドである。
印字ローラ42は、表面がゴム系の素材によって形成されたローラであって、図3および図6に示すように、印字ローラ42において搬送方向が変化するように、ラベルシートLSが巻きかけられている。このため、印字処理を行う際には、印字ローラ42に対してラベルシートLSが帯状に当接した状態でグリップしながら、対向配置された印字ヘッド41によって印字処理を行う。
【0027】
(搬送機構34)
搬送機構34は、図3に示すように、上記印字ユニット33の上流側に配置された搬送ローラ43,44によって構成される搬送ローラ対を有している。そして、搬送機構34は、この搬送ローラ43,44によって、ロール状に巻回したロール体からラベルシートLSを引き出しながら、印字ヘッド41の直下にある印字位置を経由して、ラベルシートLSが巻き取られるラベルシート巻取部32まで所定の方向へ搬送する。また、搬送機構40は、上述した制御部20によって、搬送方向や搬送速度等の搬送条件を制御されている。
【0028】
搬送ローラ43,44は、印字ローラ42と同様に、表面がゴム系の素材によって形成されたローラである。搬送ローラ43は、搬送ローラ44に対して近接配置されており、ラベルシートLSを上方から押下してラベルシートLSに適度な張力を付与する従動ローラである。一方、搬送ローラ44は、搬送ローラ43との間にラベルシートLSを挟持して回転することで、ラベルシートLSを所定の方向へ搬送する駆動ローラである。これらの搬送ローラ43,44は、上述したように、複数の駆動ギア45a,45b,45c,45dによって構成されるギア部45を介して、印字ローラ42や巻取り軸32aと同じ駆動モータ50から回転駆動力が伝達される。
【0029】
<ラベル発行処理の手順>
この計量プリンタ1では、商品マスタ21a(図2参照)にある種々の商品に対して、重量や入数(商品に含まれる単品の個数)を基準として価格を設定する販売形態、あるいは重量等に関係なく商品を定額で販売する定額販売形態といった販売形態に応じて、商品に貼付するラベルLを発行する。以下で、本計量プリンタ1において、定額販売形態を選択する場合のラベル発行処理の手順を説明する。
【0030】
液晶モニタ4に表示されるメニューに従って定額販売を選択してさらに商品を選択すると、例えば、図1に示すような画面が表示される。ここでは、呼出し番号1の商品名「国産牛モモ薄切り北海道産」に対して、特価モードの選択及び販売価格(定額)の入力を行う。
販売価格の入力は、操作パネル5のテンキー等を用いて行う。例えば、1パックを一律定額の360円で販売する場合には、「360」を入力する。
【0031】
特価モードの選択は、「なし」,「M特価」,「特単価」および「−%」の中から選択を行う。なお、「なし」は、商品を値引きなしの価格で販売する場合に選択される。「M特価」は、商品が特売品であり、ラベルに値引きの程度(値引き度合い)を印字させない場合に選択される。「特単価」は、商品が特売品であり、特売価格を併せて特売単価をラベルに印字させる場合に選択される。「−%」は、商品が特売品であり、特売価格の通常価格に対する割引率をラベルに印字させる場合に選択される。
【0032】
ここで入力された販売価格および特価モードは、商品マスタ21a内の商品別ファイルに記憶される。この商品別ファイルは、呼出し番号、商品名、通常単価等の商品毎の情報を記憶している。呼出し番号は、商品マスタ21aから各商品のデータを読み出す際に使用されるコードであり、呼出し番号ごとにこれらの商品情報が記憶される。
そして、特価モード選択時に、「なし」、「M特価」および「特単価」をそれぞれ選択した場合には、ラベル発行部30の印字ヘッド41によって、それぞれ対応するラベルが印字・発行される。
【0033】
<ラベルシートLSのバックフィード時における搬送制御>
本実施形態の計量プリンタ1では、上述したラベル発行処理を行う際に、図3等に示すラベル発行口3aにおいてラベルLをラベルシートLSから剥がした後、次に印字処理を行うラベルLの最下流側の端部が印字ヘッド41による印字位置にくるように、ラベルシートLSを上流側に向かって逆方向に搬送する。
【0034】
具体的には、図3に示すように、ラベル発行口3aにおいて印字処理済みのラベルLをラベルシートLSから剥がすためには、印字ユニット33における印字ヘッド41と印字ローラ42との間の挟持位置からラベルLの後端が外れるまでラベルシートLSを搬送する必要がある。このため、制御部20は、次に印字処理を行うラベルLの印字開始位置が印字ユニット33における印字位置と一致するまで、印字ローラ42および搬送機構34に含まれる搬送ローラ44を正回転方向(ラベルシートLSの巻取り方向)とは反対の方向に回転させて、ラベルシートLSを後退(バックフィード)させる。
【0035】
このとき、複数のギア45a〜45dを介して搬送機構34に対して伝達される回転駆動力は、図示しないワンウェイクラッチによって巻取り軸32aに対して伝達されない。 そして、このラベルシートLSのバックフィード時には、予め設定された搬送速度によってラベルシートLSを逆方向へと搬送する。
より詳細には、図7に示すように、制御部20が、ラベルシートLSの搬送を行う印字ローラ42や搬送ローラ44に連結されたギア45a〜45dを含むギア部45を駆動する駆動モータ50を、逆回転方向には正回転方向よりも低速で回転させるように制御する。具体的には、ラベルシートLSの正方向への搬送速度が120.0mm/sであるのに対し、バックフィード時における逆方向への搬送速度が60.0mm/sになるように搬送制御を行う。
【0036】
これにより、ラベルシートLSのバックフィード時の逆方向への搬送速度が低速になるため、ラベルシートLSに引っ張られた勢いで逆回転する巻取り軸32aの回転を最小限に抑制することができる。この結果、印字位置においてラベルシートLSにたるみが生じることを抑制して適度な張力を持たせることができるため、ラベルシートLSの正方向への搬送を再開した場合でも、印字位置においてラベルシートLSと印字ローラ42との間ですべりが生じることなく、高精度な印字処理を実施することができる。
【0037】
また、上述したバックフィード時における搬送速度と、正方向への搬送速度とは、図8に示すように、モニタ4に表示された設定画面4aにおいて、操作パネル5等を用いて別々に入力される。
これにより、ラベルシートLSの正方向および逆方向への搬送速度を、逆方向への搬送速度が正方向への搬送速度よりも低速になるように、別々に設定することが可能になる。
【0038】
[計量プリンタ1の特徴]
(1)
本実施形態の計量プリンタ1は、長尺のラベルシートLSに複数枚貼り付けられたラベルLを搬送しながら印字ユニット33において印字処理を行うラベル発行装置であって、図7に示すように、制御部20が、ラベルLに対して印字処理を行ってラベルシートLSを巻き取る正方向への搬送とラベルシートLSをバックフィードする際の搬送とで、バックフィード時における搬送速度が正方向への搬送速度よりも低速になるように、駆動モータ50を制御する。
【0039】
これにより、バックフィード時において逆方向に搬送されるラベルシートLSが、従来よりもゆっくりと搬送されるため、これに引っ張られて逆回転する巻取り軸32aの回転量を低減することでラベルシートLSのたるみの発生を防止することができる。この結果、ラベルシートLSのバックフィード後に印字処理を再開する際における印字位置におけるラベルシートLSの張力変動を最小限に抑え、高精度な印字処理を実施することができる。
【0040】
(2)
本実施形態の計量プリンタ1では、図8に示すように、ラベルシートLSの正方向への搬送速度と、バックフィード時における搬送速度とが、別々に設定される。
これにより、オペレータの所望の搬送速度になるように、正方向、逆方向への搬送速度を容易に設定することができる。
【0041】
また、バックフィード時における搬送速度を正方向への搬送速度よりも低速に設定した場合でも、例えば、正方向への搬送速度をできる限り高速に設定することで、ラベル発行処理に要する時間が延長されることを抑制することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
(A)
上記実施形態では、ラベルシートLSの逆方向への搬送速度を正方向よりも遅くする搬送制御として、制御部20において正転方向と逆転方向とにおける回転速度が個々に設定される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、正転方向における回転速度を設定すると、その数%小さい搬送速度が逆転方向における回転速度として自動的に設定されるように搬送制御が行われてもよい。
【0043】
この場合でも、台紙をバックフィードさせた際に巻取り軸が逆回転しすぎてしまうことを回避して、安定して高精度な印字処理を行うことができるという、上記と同様の効果を得ることができる。
(B)
上記実施形態では、図5に示すように、正逆いずれの方向への搬送も、共通のギア部45を介して共通の駆動モータ50から回転駆動力が伝達される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
例えば、図9に示すように、正方向への搬送と逆方向への搬送とを、別々の駆動機構(駆動モータ50a,50b、ギア部45,55)を介して行ってもよい。すなわち、ラベルシートの正方向への搬送するための回転駆動力を駆動モータ50aからギア部45を介して伝達し、逆方向への搬送するための回転駆動力を駆動モータ50bから逆転ギア部55によって伝達するようにしてもよい。
【0045】
この場合でも、制御部20によって、逆方向へ搬送するための回転駆動源となる駆動モータ50bが正方向へ搬送するための回転駆動源となる駆動モータ50aよりも低速でラベルシートLSを搬送するように各駆動モータ50a,50bの制御が行われることで、バックフィード時に印字位置におけるラベルシートのたるみの発生を防止して、高精度な印字処理を実施することができるという、上記と同様の効果を得ることができる。
【0046】
(C)
上記実施形態では、図5に示すように、正逆いずれの方向への搬送も、共通の駆動モータ50から共通のギア部45を介して回転駆動力が伝達される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図9に示すギア部45と逆転ギア部55とを、互いに異なるギア比とし、それぞれのギア部45,55を介して、駆動モータ50a,50bからの回転駆動力が伝達されるような機構であってもよい。
【0047】
この場合には、駆動モータ50a,50bにおける回転駆動を等速に設定した場合でも、逆方向への搬送では、正方向よりも低速でラベルシートを搬送するように搬送制御を行うことができる。この結果、簡易な制御によって、バックフィード時におけるラベルシートのたるみの発生を防止して、高精度な印字処理を実施することができるという、上記と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(D)
上記実施形態では、図7に示すように、逆方向への搬送速度を遅くする搬送制御を行う搬送制御部としての機能を、計量プリンタ全体を制御する制御部20が有している例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、計量プリンタ全体の制御を行う制御部20とは別に搬送制御部を装置内に設けてもよい。
【0049】
(E)
上記実施形態では、図7に示すように、制御部20が、ギア部45に含まれる複数のギア45a〜45dのうち、ギア45aに連結された駆動モータ50に接続されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、他のギア45b〜45dのいずれか1つに連結された駆動モータに対して制御部が接続された構成であってもよい。
【0050】
(F)
上記実施形態では、図8に示すように、ラベルシートLSの正方向への搬送速度を120.0mm/s、逆方向への搬送速度を60.0mm/sに設定した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上記以外の搬送速度であっても、逆方向への搬送速度が正方向への搬送速度よりも低速に設定されている場合には、従来よりもバックフィード時における印字位置でのラベルシートのたるみの発生を抑制することができるため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(G)
上記実施形態では、計量プリンタ1に対して本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、計量機能を持たないラベル発行装置に対して本発明を適用することも当然に可能である。
【0052】
さらに、例えば、ラベル発行機構に計量機能および包装機能を組み合わせた自動計量包装値付装置や、計量プリンタ、スケールレジスター、インフォメーションラベルプリンタ等をネットワークを介して接続した計量包装値付システムに対して本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のラベル発行装置は、印字位置における台紙の搬送を安定化させて、高精度な印字処理を実施することができるという効果を奏することから、長尺のシートを所定の方向へ搬送しながら印字処理を行う各種装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る計量プリンタの外観を示す斜視図。
【図2】図1の計量プリンタに形成される制御ブロック図。
【図3】図1の計量プリンタの内部の構成を概略的に示す内部断面図。
【図4】図1の計量プリンタに含まれるラベル収納部近傍の構成を示す内部断面図。
【図5】図1の計量プリンタ内における搬送機構を駆動する駆動ギア等の構成を示す断面図。
【図6】図1の計量プリンタにおけるラベルシートの搬送状態を簡略的に示す概念図。
【図7】図1の計量プリンタにおけるラベルシートの搬送制御を説明するための概念図。
【図8】図1の計量プリンタに含まれるモニタに表示される設定画面を示す説明図。
【図9】本発明の他の実施形態に係る計量プリンタの搬送機構を示す側面図。
【符号の説明】
【0055】
1 計量プリンタ(ラベル発行装置)
2 計量部
3 本体部
3a ラベル発行口
4 液晶モニタ
5 操作パネル
20 制御部(搬送制御部)
21 メモリ
21a 商品マスタ
22 計算部
30 ラベル発行部
31 ラベル収納部
31a 装着軸
32 ラベルシート巻取部
32a 巻取り軸
32b 巻取りボビン(巻取りローラ)
33 印字ユニット
34 搬送機構(搬送部)
35a ロールガイド
35b 回動軸
41 印字ヘッド
42 印字ローラ
43 搬送ローラ
44 搬送ローラ
44a 駆動ギア
45 ギア部
45a〜45d 駆動ギア
46 剥離板
50 駆動モータ(駆動源)
50a 駆動モータ(駆動源)
50b 駆動モータ(駆動源)
55 逆転ギア部
L ラベル
LS ラベルシート(台紙)
LT 紙管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベルが複数貼り付けられた長尺の台紙を搬送しながら印字処理を行い、ラベルが剥離された前記台紙を巻き取るラベル発行装置であって、
前記台紙が巻き取られる正方向およびその反対の逆方向へ前記台紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって前記正方向へ搬送される前記台紙を巻き取る巻取りローラと、
前記台紙を前記逆方向に搬送する際には、前記正方向よりも低速で搬送する搬送制御部と、
を備えているラベル発行装置。
【請求項2】
前記搬送制御部には、前記正方向への搬送速度と前記逆方向への搬送速度とが別々に設定される、
請求項1に記載のラベル発行装置。
【請求項3】
前記搬送部は、前記正方向へ前記台紙を搬送する第1駆動部と、前記逆方向へ前記台紙を搬送する第2駆動部と、を有している、
請求項1または2に記載のラベル発行装置。
【請求項4】
前記搬送部は、前記正方向への搬送と前記逆方向への搬送とで異なるギア比のギア部を介して駆動される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のラベル発行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−223164(P2007−223164A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46957(P2006−46957)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】