説明

ラベル

【課題】視覚と連動した触感を使用者に与えることができるラベルを提供すること。
【解決手段】第1の面31及び第2の面32を有する透明又は半透明な基材シート30における第1の面31に、連続した地柄模様部分11と、商品に関する情報を表示した能書部分12とが、印刷によって塗り分けられて形成されている。第2の面32に、基材シート30を挟んで、地柄模様部分11が形成されている位置と同位置に、地柄模様部分11と同じ模様の、有色印刷を透過識別可能な厚膜の仮想模様部分40が印刷によって形成されている。第2の面32に形成された仮想模様部分40を、第2の面32のうち、能書部分12が形成されている領域に対応する領域にまで延在させて、第2の面32の略全域に仮想模様部分を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品に取り付けられて使用されるラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
透明な基材シートの表面に、一層又は多層の樹脂層を部分的に形成して該基材シートの表面に、視覚上又は触覚上の凹凸感を付与する技術が知られている。例えば特許文献1には、透明樹脂からなる基材表面上に下地形成樹脂が部分的に積層され、該基材表面上に、下地形成樹脂積層部と、平面に見てこの下地形成樹脂積層部に囲まれた下地形成樹脂非積層部とを備えた表面模様構造が記載されている。この下地形成樹脂積層部上には模様形成樹脂が積層され、該模様形成樹脂の表面は微細凹凸したエンボス面部とされている。そして、下地形成樹脂非積層部は、基材表面が露出した抜窓部になっている。同文献の記載によれば、この表面模様構造は、見た目において光反射率の差により大きなコントラストをつけることができるとされている。
【0003】
また、特許文献2には、透明な合成樹脂基材シートの表面側に表面層を形成し、該表面層にインキ材料に不溶性無機物質を混入してなるインキにより光沢を下げた表面模様を印刷した化粧シートが記載されている。この基材シートの裏面側には、裏面模様が印刷形成されているとともに、該裏面模様を含む全裏面側に不透明隠蔽層が形成されている。同文献の記載によれば、この化粧シートは、表面の光沢差によってエンボス調の模様が発現し、質感差が強調されるとされている。また、表面と裏面との模様の同調が容易であるとされている。
【0004】
特許文献3には、本体部にロゴや能書きが印刷されたフィルムが配設された化粧品用容器が記載されている。このフィルムにおいては、ロゴ及び能書きの少なくとも一方が印刷された部位に、微細な凹凸部が形成されている。同文献の記載によれば、この微細な凹凸部の作用によって、滑りやすい環境で使用しても容器を確実に把持できるとされている。
【0005】
これらの技術の他に、基材の一方の表面に凸状模様を形成したり(特許文献4)、基材の一方の表面に着色表面層を部分的に形成して、該表面層が形成されていない部分が凹部をなして基材を露出するようにしたりする(特許文献5参照)技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−249675号公報
【特許文献2】実開平5−35268号公報
【特許文献3】特開平10−152159号公報
【特許文献4】特開昭61−130080号公報
【特許文献5】特開平8−1893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の各技術は、視覚的又は触覚的な点のいずれかのみに凹凸感を付与するにとどまり、視覚及び触覚の両方の感覚に基づいて凹凸感を付与することや、視覚に対応した触覚を付与することまでは検討されていない。
【0008】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術よりも高い凹凸感を付与することが可能なラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の面及びこれと反対側に位置する第2の面を有する透明又は半透明な基材シートにおける第1の面に、有色の連続した地柄模様部分と、商品に関する情報を表示した有色の能書部分とが、印刷によって塗り分けられて形成されており、
第2の面に、該基材シートを挟んで、前記地柄模様部分が形成されている位置と同位置に、該地柄模様部分と同じ模様であって、有色印刷を透過識別可能な仮想模様部分が、凹凸の手触り感を知覚するに足る厚みで印刷によって形成されているラベルであって、
第2の面に形成された前記仮想模様部分を、該第2の面のうち、前記能書部分が形成されている領域に対応する領域にまで延在させて、該第2の面の略全域に該仮想模様部分を形成したラベルを提供するものである。
【0010】
また本発明は、第1の面及びこれと反対側に位置する第2の面を有する基材シートにおける第1の面に、有色の連続した地柄模様部分と、商品に関する情報を表示した有色の能書部分とが、印刷によって塗り分けられて形成されており、
前記地柄模様部分が形成されている位置の上に、該地柄模様部分と同じ模様であって、有色印刷を透過識別可能な仮想模様部分が、凹凸の手触り感を知覚するに足る厚みで印刷によって塗り重ねられて形成されているラベルであって、
第1の面に形成された前記仮想模様部分を、該第1の面のうち、前記能書部分が形成されている領域にまで延在させて、該第1の面の略全域に該仮想模様部分を形成したラベルを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のラベルによれば、連続地柄模様部分と同位置に形成された同模様の透明仮想模様部分によって、視覚と連動した触感を使用者に与えることができ、使用者の視覚と触覚の両方が刺激され、五感に一層訴える凹凸感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明のラベルを容器に取り付けてなるラベル付き容器の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すラベルを容器の本体部に取り付ける前の状態での展開図である。
【図3】図3は、図2に示す状態のラベルの厚み方向断面における要部を拡大して示す図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施形態のラベルの厚み方向断面における要部を拡大して示す図である。
【図5】図5は、本発明の更に別の実施形態のラベルの厚み方向断面における要部を拡大して示す図(図3相当図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明のラベル10を容器20に取り付けてなるラベル付き容器21の斜視図が示されている。容器20は、本体部22と蓋23とを備えている。本体部22は有底筒状のものであり、上部に開口部(図示せず)を有する。本体部22はその上端部に開口部を有している。内容物(図示せず)は、開口部を通じて本体部内に充填され、また容器外に取り出される。本体部22の上部には、ネジ部(図示せず)が設けられている。このネジ部に、略円筒形をした蓋23が螺合されるようになっている。
【0014】
ラベル10は、容器20の本体部22の側面に取り付けられている。ラベル10は、本体部22の周方向の全域を被覆している。ラベル10は、これが付される商品に関する情報を表示するために、あるいは商品の外観の印象(意匠性)を高めるために用いられるものである。
【0015】
図2には、容器20の本体部22に取り付けられる前のラベル10の展開図が示されている。ラベル10には、細かな網目からなる連続したレース調の地柄模様部分11が形成されている。またラベル10には、文字や説明図、商品表示のバーコード等を含む能書部分12も形成されている。地柄模様部分11及び能書部分12は印刷によって形成されている。また、地柄模様部分11と能書部分12とは、塗り分けられて形成されている。更にラベル10には、図示していないが、その長手方向(図2中、横方向)の一方の端部に、幅方向(図2中、上下方向)に延びる無印刷部分が位置している。無印刷部分は、後述するように、ラベル10を容器20に取り付けるときに、ラベル10の端部どうしを重ね合わせて貼り合わせるために用いられる部位である。ラベル10においては、能書部分12及び無印刷部分以外の領域の全域にわたって地柄模様部分11が形成されている。またラベル10には、地柄模様部分11に重なるように、大柄な模様からなる不連続の大柄模様部分13が形成されている。このように、細かな網目からなる連続した地柄模様部分11と、不連続の大柄模様部分13とが形成されていることで、ラベル10は視覚的な意匠性や高級感の訴求力が強くなる。
【0016】
能書部分12には、ラベル10が付される商品に関する情報が文字や説明図、またバーコード等によって表示されている。商品に関する情報は、例えば容器20そのものについての情報や、容器20内に充填されている内容物についての情報である。それらの情報には、例えば製造又は販売者名、商品名、商品のロゴ、原材料成分や効能、法定表示、使用方法、使用期限、価格、商品識別のバーコード等が含まれる。
【0017】
図2中、黒で表される部位はすべて印刷によって形成された部位を意味している。また同図中、白抜きの部位は印刷されておらず、無印刷であって、ラベルの反対面が透過識別できる基材シート色が現れる部位を意味している。ただし、黒枠で囲った能書部分12はこの例外であり、能書部分はすべて印刷されており、透明な部位は存在していない(以下に述べる図3参照)。
【0018】
図3には、ラベル10の厚み方向の断面図が示されている。ラベル10は、基材シート30を有している。基材シート30は透明なものである。基材シート30は、第1の面31及びこれと反対側に位置する第2の面32を有している。第1の面31には、先に述べた地柄模様部分11が形成されている。これとともに、第1の面31には、能書部分12も形成されている。ラベル10の厚み方向に沿って見たとき(つまり、ラベル10を平面視したとき)、地柄模様部分11と能書部分12とは互いに重ならないように形成されている。つまり、先に述べたとおり地柄模様部分11と能書部分12とは塗り分け形成されている。
【0019】
地柄模様部分11は、印刷によって有色のインクを第1の面31に塗工することで形成されている。図3中、符号33で示される塗工部位が、地柄模様部分11を構成するレース調の細線を全面に形成したものを意味している。ここで言う「有色」とは、無色透明以外の色彩のことであり、白色を含む概念である。塗工部位33は、第1の面31の表面に直接形成されている。塗工部位33の間には非塗工部位が存在し、該非塗工部位には有色のインクは塗工されないことが好ましい。地柄模様部分の塗工部位33それ自体は、基材シート30の第1の面31の全域にわたって形成されている(ただし、能書部分12を除く)。
【0020】
地柄模様部分11においては、地柄模様部分の塗工部位33に重ね塗りが行われて大柄模様部分の塗工部位34も形成されている。ここで、地柄模様部分のレース調の細線部分からなる塗工部位33と、大柄模様部分の塗工部位34とが塗り重ねられている部分に関しては、ラベル10を平面視した場合、地柄模様部分11は大柄模様部分13によって遮られて該地柄模様部分11を視認することはできない。
【0021】
地柄模様部分11の模様は、レース調の細線部分に加えて大柄模様の塗工部位34と同一模様を配した合成物とすることもでき、その場合には該合成物に対応する塗工部分33を構成することができる。その場合、該合成物の模様からなる地柄模様部分11のうちの大柄模様に対応する塗工部位33を形成し、その上に大柄模様部分のみの塗工部位34を位置を、地柄模様部分11のうちの大柄模様と一致させて塗り重ねることにより、大柄模様部分のみ2度の重ね塗りで形成されるので、大柄模様部分をより意匠的に目立たせることができる。また、図3では、地柄模様部分11のレース調の細線部分からなる塗工部位33の上に重ねて、大柄模様のみの塗工部位34をこの順序で塗工しているが、これら塗工部位33,34の塗工の順序はどちらが先でもよい。特に、上述したとおり、塗工部位33がレース調の細線部分と大柄模様との合成物から構成される場合には、図4に示すように、大柄模様のみの塗工部位34の上に、レース調の細線部分と大柄模様との合成物から構成される塗工部位33を塗り重ねるほうが、位置合わせが容易になる点で好ましい。
【0022】
地柄模様部分の塗工部位33の色と、大柄模様部分の塗工部位34とは同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。図4に示す実施形態についても同様である。ラベル全体の統一感を高めたい場合や、レース調の質感を高めたい場合には、両塗工部位33,34の色を同じにすることが好ましい。例えば、白色系のインクを用いることで高級感や清潔感を訴求できる。また、華やかなイメージを高めたい場合には、例えば明色系の2つの異なる色を用いてもよい。
【0023】
一方、能書部分12に関しては、文字の形をなすように有色のインクが印刷によって塗工された塗工部位35が、第1の面31の表面に直接形成されている。更に能書部分12においては、文字の形をなす塗工部位35の全域を覆うように、有色インクを用いたベタ印刷による第1地塗り部位36が形成されている。第1地塗り部位36は、文字の形をなす塗工部位35を、基材シート30の第2の面32の側から見たときに、文字の形をなす塗工部位35の色と第1地塗り部位36の色とのコントラストによって、能書部分12の文字の可読性を高める目的で形成されている。この観点から、塗工部位35の色と第1地塗り部位36の色とは、それらの明度の差が大きいことが好ましい。例えば文字の形をなす塗工部位35を黒色のインクを用いて形成し、第1地塗り部位36を白色のインクを用いて形成することができる。このコントラストを一層高める目的で、第1地塗り部位36の上に、第1地塗り部位36の色と同色の第2地塗り部位37を形成しても良い。
【0024】
以上の各塗工部位を覆うように、メジウムを、基材シート30における第1の面31の全域に塗工してメジウム層38を形成することもできる。メジウム層38は、一般に無色透明のインクから形成される。メジウム層38は、上述の各塗工部位の保護の目的で、またラベル10を容器32に装着するときに第1の面31側の摩擦抵抗を低減させる目的で形成される。
【0025】
一方、基材シート30の第2の面32にも印刷が施されている。本実施形態のラベル10は、第2の面32に施されている印刷に特徴の一つを有する。詳細には、第2の面32には、基材シート30を挟んで、地柄模様部分11が形成されている位置と同位置に、該地柄模様部分11と同じ模様の仮想模様部分40が形成されている。具体的には、仮想模様部分40は、基材シート30を挟んで、第1の面31における地柄模様部分の塗工部位33の形成位置と同位置に、仮想模様部分40の塗工部位41が形成されてなるものである。したがって、ラベル10を平面視した場合、第1の面31に形成されている地柄模様部分の塗工部位33と、第2の面32に形成されている仮想模様部分40の塗工部位41とは、ほぼ完全に重なっている。したがって、仮想模様部分40も地柄模様部分11と同様の連続した細かな網目模様を構成している。また、先に述べたとおり、仮想模様部分40もパターンを、レース調の地柄模様部分11と大柄模様13を組み合わせた構成にしたり、第1の面32に形成されている地柄模様部分11が、レース調の細線部分と大柄模様部分との合成模様である場合には、仮想模様部分40の塗工部位41を該合成模様で形成したりすることができる。それにより、レース調の細線模様及び大柄模様の双方から知覚される視覚と同様の触覚を得ることができる。
【0026】
仮想模様部分の塗工部位41は、第1の面31に形成されている有色印刷である塗工部位33,34等を第2の面32の側から透過識別可能になっている。有色印刷を透過識別可能とは、第2の面32側からみたときに、第1の面31の側に形成されている有色の塗工部位33,34等を視認することが可能であることを言う。この場合、第1の面31の側に位置する有色の塗工部位33,34等の第2の面32の側からの視認は、該塗工部位33,34等を識別できる限り、該塗工部位33,34等に若干のにごりを含んで視認されても許容される。塗工部位41は例えば、下層の印刷情報が判読できるニスや透明なインクの塗工によって形成することができ、その場合には該塗工部位41は透明になる。ここで言う「透明」は、有色印刷を透過識別可能なものであって、無色透明及び有色透明の双方を包含する。仮想模様部分の塗工部位41が、第1の面31に形成されている有色の塗工部位33,34等を第2の面32の側から透過識別可能になっていることによって、ラベル10を、第2の面32の側から見ると、該塗工部位41は視覚的に知覚されにくく、その代わりに、基材シート30越しに地柄模様部分の塗工部位33及び大柄模様部分の塗工部位34が視覚的に知覚される。本明細書における「仮想模様」とは、このように、基材シートを触ったときに凸状を知覚できるよう、印刷によってニスやインクが塗工されており、かつその印刷によって模様が形成されているが、視覚的にその模様を知覚しづらいという意味で使用される。
【0027】
仮想模様部分の塗工部位41は、塗工膜厚が大きくなっている。本実施形態においては、該塗工部位41の塗工膜厚を、該塗工部位41に触れたときに、凹凸の手触り感を知覚するに足る厚みとしている。そのような手触り感を知覚するためには、例えば3μm以上、特に5μm以上の塗工厚みで該塗工部位41を形成することが好ましい。仮想模様部分の塗工部位41の厚みの上限に特に制限はないが、20μm程度に該塗工部位41が厚く形成されていれば、仮想模様部分40に触れたときに凹凸の手触り感を十分に知覚することができる。
【0028】
本実施形態のラベル10は、第1の面31が商品の表面に対向するように、すなわち容器20の表面に対向するように取り付けられて使用される。したがって、ラベル10における外方を向く面は第2の面32である。第2の面32に形成されている仮想模様部分40は、先に述べたとおり透明なのでこれを視覚的に知覚しづらい。その代わりに基材シート30越しに、第1の面31に形成されている地柄模様部分11や大柄模様部分13が視覚的に知覚される。そして、ラベル10が取り付けられた容器20を把持すると、ラベル10の第2の面32に形成されている厚く塗工された仮想模様部分40の凹凸感が使用者に知覚される。この場合、仮想模様部分40と地柄模様部分11とは基材シート30を挟んで同位置に形成され、かつ同模様になっているので、仮想模様部分40に触れた使用者は、該仮想模様部分40に起因する凹凸感が、あたかも第1の面31、つまりラベル10の裏側に形成されている地柄模様部分11に起因する凹凸感であるかの印象を受ける。このように、本実施形態によれば、視覚と連動した触感を使用者に与えることができるので、使用者の視覚と触覚の双方を刺激することができる。その結果、仮想模様部分40が形成されていないラベルに比較して、高級感を付与することができる。
【0029】
従来は、ラベルに凹凸感を付与するために、エンボス加工等の手段を用いて紙等の基材シートに部分的に浮きだし模様を形成することが行われていたが、そのような手段では繊細な浮きだし模様を形成することが容易ではない。これに対して本実施形態によれば、凹凸感を付与し得る部位である仮想模様部分40を印刷によって形成することができるので、レース調の繊細な凹凸感を容易に付与することができる。
【0030】
また、ラベル10が容器20に取り付けられた状態では、地柄模様部分11、能書部分12及び大柄模様部分13は、外部にラベル10の基材シート30と容器20の表面との間に介在し、外方には露出しないので、該地柄模様部分11等にスクラッチ(ひっかき傷)等の欠陥が発生しづらいという利点もある。
【0031】
しかも仮想模様部分40は、透明なインクから形成されているので、地柄模様部分11が形成されている面である第1の面31と反対側の面32に該仮想模様部分40を形成しても、該地柄模様部分11の視認性が阻害されづらい。
【0032】
そのうえ、凹凸感の高い部位である仮想模様部分40によって、該仮想模様部分40が形成されていない場合に比べて耐摩擦性が高まる。それによって、仮想模様部分40は、容器20を把持したときの滑り止めとしても作用し、容器20は持ちやすくかつ滑りにくいユニバーサルデザインに優れたものとなる。
【0033】
本実施形態のラベル10においては、第2の面32において、基材シート30を挟んで、地柄模様部分11が形成されている位置と同位置に仮想模様部分40が形成されていることに加えて、該仮想模様部分40を、第2の面32のうち、能書部分12が形成されている領域に対応する領域42(以下、この領域を「能書対応領域42」という。)にまで延在させて、仮想模様延出部分43を形成している。仮想模様延出部分43は、仮想模様部分40によって形成される模様に連なる連続した模様を形成している。その結果、基材シート30の第2の面32においては、その略全域にわたって、仮想模様部分40と仮想模様延出部分43とからなる仮想模様部分が形成されている。
【0034】
能書対応領域42に仮想模様延出部分43を形成することで、本実施形態のラベル10を取り付けられた容器20を把持するときに、ラベル10のどの位置を把持した場合であっても、仮想模様部分に起因する凹凸感が、地柄模様部分11に起因する凹凸感であるかの印象を与える。特に能書部分12は、上述のとおり、ベタ印刷による地塗り部位36,37を含んでいるので、能書対応領域42は平滑になっているとの印象を使用者に与えやすいが、該能書対応領域42も凹凸感を呈することで、容器20に一層の高級感を付与することができる。
【0035】
更にラベル10においては、先に述べたとおり、図2中、横方向の一方の端部に位置する部分である無印刷部分(図示せず)にも仮想模様部分40を延在させて、第2の仮想模様延出部分(図示せず)を形成している。第2の仮想模様延出部分は、仮想模様部分40によって形成される模様に連なる連続した模様を形成している。
【0036】
能書対応領域42における仮想模様延出部分43及び無印刷部分における第2の仮想模様延出部分は、仮想模様部分40と同様に、第1の面31に形成されている有色印刷である塗工部位35,36,37等を第2の面32の側から見たときに透過識別可能になっている。仮想模様延出部分43は、例えば透明なニスやインクの塗工によって形成された塗工部位44から構成される。この塗工部位44は、仮想模様部分を構成する塗工部位41と同様の透明なニスやインクを用い、かつ同様の厚みでもって連続した一体模様として形成されている。第2の仮想模様延出部分に関しても同様である。
【0037】
第2の面32における仮想模様部分40を構成する塗工部位41、仮想模様延出部分43を構成する塗工部位44及び第2の仮想模様延出部分を構成する塗工部位(図示せず)は、各種の印刷法、例えばグラビア印刷、凸版印刷、活版印刷、シルクスクリーン印刷等によって、透明インクを印刷することで形成される。特に、塗工膜厚を大きくすることが容易である点から、グラビア印刷を用いることが好ましい。また、これらの塗工部位41,44を形成するための透明なニスやインクとしては、当該技術分野において通常用いられているものが使用でき、乾燥後の凹凸感触を得るための樹脂片や微細なガラスビーズ、金属粉末、無機粉末等の固形物を混合できるニスを用いることが好ましい。
【0038】
また、図3においては、仮想模様部分40の塗工部位41は一層で形成されているが、該塗工部位41をニスで形成する場合には、例えば図4に示すように、更に塗工部位41の上部であって、かつ塗工部位41と同位置に、第2の塗工部位41’として、マットニスを厚み約1μm程度にグラビア印刷で形成することができる。仮想模様延出部分43の塗工部位44についても同様であり、例えば図4に示すように、該塗工部位44の上部であって、かつ該塗工部位44と同位置に、第3の塗工部位44’を形成することができる。この第2の塗工部位41’及び第3の塗工部位44’の形成によって、本来の仮想模様部分に対応するニスを保護することができ、かつ凹凸感や視覚的印象を一層高めることができる。
【0039】
一方、第1の面31における地柄模様部分11、能書部分12及び大柄模様部分13を構成する塗工部位33,34,35,36,37も、上述した印刷法によって、有色インクを印刷することで形成される。これらの塗工部位33,34,35,36,37においては重ね塗り印刷が行われることから、位置合わせ精度が高い印刷法を用いることが好ましい。これらの塗工部位33,34,35,36,37の厚みは、仮想模様部分40を構成する塗工部位41及び仮想模様延出部分43を構成する塗工部位44の厚みよりも薄くて足り、デザイン性や識別性に影響ないインキ濃度と塗工量を適宜設定でき、具体的には、これらの塗工部位33,34,35,36,37が透けない程度の厚みである0.1〜5μm程度で十分である。
【0040】
以上の各塗工部位が形成される基材シート30としては、例えば合成樹脂製の透明又は半透明なシートが用いられる。ここで言う「透明又は半透明な基材シート」とは、汎用的な合成樹脂製のフィルム状の基材シートであって、その一方の側から見たときに、該基材シート越しに他方の側に位置する有色印刷を視認することが可能な程度の透明性を有するものであり、フィルム形成時に若干のにごりを含んでいてもよい。「透明又は半透明な基材シート」には、無色透明又は半透明、及び有色透明の双方の基材シートが包含される。透明又は半透明な合成樹脂性の基材シートの例としては、該シートの表面に直接印刷可能なものが好ましく、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PS(ポリスチレン)、PLA(ポリ乳酸)やPVC(塩化ビニル)などが使用できるが、これ以外の材質も選択できる。また基材シート30は、熱収縮性のものであることも好ましい。熱収縮性の基材シート30からラベル10を製造することで、該ラベル10はいわゆるシュリンクフィルムとなるので、該ラベル10の容器20への取り付けが容易になる。そのような熱収縮性のシートは当該技術分野において良く知られたものである。
【0041】
また、ラベル10を容器20へ首尾良く装着するために、タックラベルとして粘着剤を塗工したラベルに、上述した各塗工部位の印刷を施すか、又は印刷されたラベル10が取り付けられる容器20の側面に、全面ないし部分的に接着剤ないし粘着剤を塗布することもできる。また印刷されたラベル10ないし容器20の側面に、全面ないし部分的に接着剤ないし粘着剤を塗布して、容器20の側面にラベル10を巻きつけて貼り付けても良い。
【0042】
基材シート30の厚みは本発明において臨界的でなく、ラベル10の具体的な用途に応じて適切な厚みが選択される。一般に20〜100μmの厚みの基材シートを用いることで、満足すべき結果が得られる。
【0043】
本実施形態のラベル10を容器20に取り付ける場合には、ラベル10の幅方向(図2中、上下方向)が高さ方向となるようにラベル10を筒状にして、容器20の側面に巻き付ける。筒状になったラベル10は、その長手方向(図2中、横方向)の2つの端部どうしが重なり合う。2つの端部のうちの一方の端部は、先に述べた無印刷部分になっている。これに対して、他方の端部は、地柄模様部分11になっている。また、二つの端部はいずれも第2の面32の側に仮想模様が印刷されている。2つの端部どうしを重なり合わせるときには、無印刷部分になっている端部の上に、地柄模様部分11になっている端部を位置させて、重ね合わされた部位を固定する。
【0044】
ラベル10が容器に取り付けられた状態においては、前記の一方の端部と他方の端部とのつなぎ目の位置においても、仮想模様が存在していることが望ましいが、該つなぎ目の位置において仮想模様が存在していない場合には、該仮想模様が存在していない部位の幅(容器20の周方向における長さ)が3mm以下であることが好ましい。こうすることによって、ラベル10が取り付けられた容器20においては、視覚的に地柄模様部分11が知覚されるとともに、容器20を把持したときに、仮想模様部分40及び仮想模様延出部分43の凹凸感が途切れることなく使用者に知覚される。そして、第2の面32における前記のつなぎ目の位置に触れた使用者は、仮想模様部分40に起因する凹凸感が、あたかも容器全体で連続的であるかのような印象を受け、使用者の満足度をより高めることが可能となる。
【0045】
次に、本発明の別の実施形態を、図5を参照しながら説明する。本実施形態については、先に説明した実施形態と異なる点について説明し、特に説明しない点については、先の実施形態に関する説明が適宜適用される。また図5において図1ないし図4と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0046】
本実施形態のラベル10が、先の実施形態と異なる点は、仮想模様部分40及び仮想模様延出部分43の形成位置である。詳細には、先の実施形態においては、基材シート30の第1の面31に地柄模様部分11、能書部分12及び大柄模様部分13が形成され、第2の面32に仮想模様部分40及び仮想模様延出部分43が形成されていたのに対し、本実施形態においては、これらの部分がすべて基材シート30の一方の面にのみ(図5では第1の面31にのみ)形成されている。
【0047】
図5に示すように、本実施形態のラベル10においては、基材シート30における第1の面31の表面に有色の塗工部位33により地柄模様部分11が直接形成されている。また、地柄模様部分11が形成されていない領域に、有色の塗工部位35により能書部分12が形成されている。地柄模様部分11と能書部分12とは塗り分けられて、ラベル10を平面視したとき両者に重なり部分は存在していない。また地柄模様部分11においては、塗工部位33の上に有色の塗工部位34が重ね塗りされて大柄模様部分が形成されている。先の実施形態と異なり、本実施形態で用いられる基材シート30は透明又は半透明であることを要しない。尤も、透明又は半透明な基材シート30を用いることは何ら妨げられない。
【0048】
地柄模様部分11の上には、該地柄模様部分11と同位置に、該地柄模様部分11と同じ模様の、有色印刷を透過識別可能な仮想模様部分40が形成されている。仮想模様部分40は、透明なニスやインクを印刷によって厚膜塗工してなる塗工部位41から構成されている。
【0049】
更に本実施形態のラベル10においては、第1の面31において、地柄模様部分11が形成されている位置の上に仮想模様部分40が形成されていることに加えて、該仮想模様部分40を、第1の面31のうち、能書部分12が形成されている領域にまで延在させて、仮想模様延出部分43を形成している。仮想模様延出部分43は、仮想模様部分40によって形成される模様に連なる連続した模様を形成している。その結果、基材シート30の第1の面31においては、その略全域にわたって、仮想模様部分40と仮想模様延出部分43とからなる仮想模様部分が形成されている。
【0050】
以上の各部分が形成されているラベル10においては、第2の面32の表面にメジウム層38が直接形成されている。メジウム層38を形成することで、ラベル10を容器32に装着する際の摩擦抵抗を低減することができる。
【0051】
本実施形態のラベル10は、その第2の面32側が商品の表面に対向するように、例えば容器の表面に対向するように取り付けられて使用される。したがって、ラベル10における外方を向く面は第1の面31である。その結果、ラベル10が取り付けられた容器等においては、視覚的に地柄模様部分11が知覚されるとともに、把持によって仮想模様部分40及び仮想模様延出部分43の凹凸感が使用者に知覚される。そして、例えば仮想模様部分40に触れた使用者は、該仮想模様部分40に起因する凹凸感が、あたかも地柄模様部分11に起因する凹凸感であるかの印象を受け、商品に対して高級感をいだき、使用者の満足度を高めることが可能となる。
【0052】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の各実施形態はラベルに係るものであり、これを商品又は商品が収容された容器に取り付けたものであったが、これに代えて、前記の各実施形態と同様の構成を有するシートを作製し、該シートから袋等の包装容器を作製してもよい。
【0053】
また、前記の各実施形態のラベル10における地柄模様部分11は、菱形格子状の連続した網目模様を構成していたが、これ以外の連続した網目模様、例えば亀甲模様や各種のレース模様を採用してもよい。
【0054】
大柄模様部分13に関しても同様であり、前記の各実施形態では、植物の花や葉、茎をイメージした模様を形成したが、それとは異なる模様を形成することは何ら妨げられない。また、場合によっては、大柄模様部分13それ自体を形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 ラベル
11 地柄模様部分
12 能書部分
13 大柄模様部分
30 基材シート
31 第1の面
32 第2の面
33 塗工部位
34 塗工部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面及びこれと反対側に位置する第2の面を有する透明又は半透明な基材シートにおける第1の面に、有色の連続した地柄模様部分と、商品に関する情報を表示した有色の能書部分とが、印刷によって塗り分けられて形成されており、
第2の面に、該基材シートを挟んで、前記地柄模様部分が形成されている位置と同位置に、該地柄模様部分と同じ模様であって、有色印刷を透過識別可能な仮想模様部分が、凹凸の手触り感を知覚するに足る厚みで印刷によって形成されているラベルであって、
第2の面に形成された前記仮想模様部分を、該第2の面のうち、前記能書部分が形成されている領域に対応する領域にまで延在させて、該第2の面の略全域に該仮想模様部分を形成したラベル。
【請求項2】
第1の面側が商品の表面に対向するように該商品に取り付けられる請求項1記載のラベル。
【請求項3】
第1の面及びこれと反対側に位置する第2の面を有する基材シートにおける第1の面に、有色の連続した地柄模様部分と、商品に関する情報を表示した、文字からなる有色の能書部分とが、印刷によって塗り分けられて形成されており、
前記地柄模様部分が形成されている位置の上に、該地柄模様部分と同じ模様であって、有色印刷を透過識別可能な仮想模様部分が、凹凸の手触り感を知覚するに足る厚みで印刷によって塗り重ねられて形成されているラベルであって、
第1の面に形成された前記仮想模様部分を、該第1の面のうち、前記能書部分が形成されている領域にまで延在させて、該第1の面の略全域に該仮想模様部分を形成したラベル。
【請求項4】
第2の面側が商品の表面に対向するように該商品に取り付けられる請求項3記載のラベル。
【請求項5】
前記基材シートが熱収縮性のものである請求項1ないし4のいずれかに記載のラベル。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のラベルが容器に取り付けられてなるラベル付き容器。
【請求項7】
第1の面及びこれと反対側に位置する第2の面を有する透明又は半透明な基材シートにおける第1の面に、有色の連続した地柄模様部分と、商品に関する情報を表示した、文字からなる有色の能書部分とが、印刷によって塗り分けられて形成されており、
第2の面に、該基材シートを挟んで、前記地柄模様部分が形成されている位置と同位置に、該地柄模様部分と同じ模様であって、有色印刷を透過識別可能な仮想模様部分が、凹凸の手触り感を知覚するに足る厚みで印刷によって形成されている包装容器であって、
第2の面に形成された前記仮想模様部分を、該第2の面のうち、前記能書部分が形成されている領域に対応する領域にまで延在させて、該第2の面の略全域に該仮想模様部分を形成した包装容器。
【請求項8】
第1の面及びこれと反対側に位置する第2の面を有する基材シートにおける第1の面に、有色の連続した地柄模様部分と、商品に関する情報を表示した、文字からなる有色の能書部分とが、印刷によって塗り分けられて形成されており、
前記地柄模様部分が形成されている位置と同位置に、該地柄模様部分と同じ模様であって、有色印刷を透過識別可能な仮想模様部分が、凹凸の手触り感を知覚するに足る厚みで印刷によって塗り重ねられて形成されている包装容器であって、
第1の面に形成された前記仮想模様部分を、該第1の面のうち、前記能書部分が形成されている領域にまで延在させて、該第1の面の略全域に該仮想模様部分を形成した包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−215396(P2011−215396A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84038(P2010−84038)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】