説明

ラミネートチューブ

【課題】 本発明は、真正製品であることを外部から認識させることのできる表示を、ラミネートチューブの積層壁内に、外部から容易に視認できるようにすることにより、真正製品であることを認識させる表示の模倣を困難として、信頼性の高い模倣品防止効果を得ることを目的とする。
【解決手段】 帯状のラミネート原反6を丸めて、重ね合せた両側端部を加熱溶着して溶着部3に成形して原反チューブ2を形成し、この原反チューブ2に被覆層5を被覆して構成し、原反チューブ2の溶着部3に刻印表示4を成形すると共に、被覆層5を光透過性の樹脂製として、刻印表示4の模倣製作を困難として、高い模倣防止効果を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラミネートチューブ、特に模倣品の作成が困難なラミネートチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては流通の国際化も相俟って、ブランド品の高度な偽物も出回り、その対策が重要となってきており、たとえばICタグの物品への装着による方法が有力な方法の一つである。
【0003】
また、医薬品や化粧品の分野でも模倣品が多く出回り、中でも模倣品の薬による健康被害も報告されており、医薬品メーカーは模倣品を防止する対策として包装容器に蛍光印刷などによる隠し文字や図柄などを配設し(特許文献1参照)、商品の真偽を判別できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−258661公報
【0005】
上記した従来技術は、予め容器の表面に、透明な蛍光インキで模倣防止情報を印刷しておき、可視光線下では視認することが困難である模倣防止情報を、紫外線(ブラックライト)の照射によって蛍光発光させて視認し、この模倣防止情報の有無により商品の真偽を判別できるようにしている。
【0006】
しかしながら、上記した従来の模倣防止技術では、蛍光インキで印刷された模倣防止情報が商品の表面に設けられているが、商品表面の模倣防止情報からの可視光線のわずかな歪みにより模倣防止情報の存在が簡単に知られてしまい、模倣防止情報の存在が知られると、同じ蛍光インキを用いて模倣防止情報に似せた情報が印刷されて、模倣品が作られてしまう、と云う問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記した従来技術にける問題点を解消すべく創案されたもので、真正製品であることを外部から認識させることのできる表示を、ラミネートチューブの積層壁内に、外部から容易に視認できるようにすることを技術的課題とし、もって真正製品であることを認識させる表示の模倣を困難として、信頼性の高い模倣品防止効果を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するための本発明の主たる構成は、
帯状のラミネート原反を丸めて両側端部を重ね合せ、この重ね合せた両側端部を加熱溶着することにより溶着部に成形して原反チューブを形成し、さらにこの原反チューブの外表面に被覆層を被覆して構成すること、
原反チューブの溶着部の外表面に刻印表示を刻設すると共に、被覆層を光透過性の樹脂製とすること、
にある。
【0009】
刻印表示は、原反チューブの溶着部の外表面に成形されるものであるので、原反チューブの外表面に被覆層を被覆成形する前に、刻印成形される必要がある。
【0010】
また、刻印表示は、光透過性を有する被覆層を透して観察されるので、それ自体が凹凸構造であること、および被覆層の厚みによりプリズム効果が現出されることにより、陰影および立体感のある状態で観察されることになるが、特に陰影感を伴った立体感により、深みに富んだ表示効果を現出することになる。
【0011】
特に、刻印表示は、被覆層を透して観察されるので、被覆層を透過する光線は、どうしても被覆層からの光学的な歪みを受けることになる、これにより刻印表示は特有の歪みを有する状態で観察されることになる。
【0012】
帯状のラミネート原反を丸めて両側端部を重ね合せ、この重ね合せた両側端部を加熱溶着することにより溶着部に成形して原反チューブを形成する手法は、従来から一般的に行われていることであるが、溶着部に対する刻印表示の刻設は、溶着部を成形する際における加熱溶着処理における押圧力を利用して、刻印ベルト等を用いて簡単に実施することが可能であり、それゆえ既存の成形設備を利用して、独立した刻印処理を要することなく実施することが容易である。
【0013】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成において、ラミネート原反として、アルミラミネートフィルムを使用した、ものである。
【0014】
ラミネート原反として、アルミラミネートフィルムを使用したものにあっては、得られるラミネートチューブが、きわめて高いガスバリヤー性および遮光性を発揮する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、刻印表示を被覆層の被覆成形に先立って成形する必要があるので、ラミネートチューブ成形のための専用の設備がない限り、模倣することが困難であり、これにより高い模倣防止効果が発揮される。
【0016】
また、刻印表示は、陰影感を伴った立体感により、深みに富んだ表示効果を現出することになると共に、特有の歪みを有する状態で観察されることになるので、ラミネートチューブの表面に刻印表示に似た刻印装飾を施しても、同程度の深みに富んだ表示効果を現出することはきわめて困難であり、これによっても高い模倣防止効果を得ることができる。
【0017】
さらに、既存の成形設備を利用して、独立した刻印処理を要することなく実施することが容易であるので、無理なくかつ安価に実施することが可能である。
【0018】
ラミネート原反として、アルミラミネートフィルムを使用したものにあっては、きわめて高いガスバリヤー性および遮光性を得ることができるので、高級な化粧料や環境変化に敏感な薬品の収納保持容器として使用されるが、このようなラミネートチューブに、高い模倣防止作用を発揮する刻印表示を適用することにより、安心して購入及び使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態例を示す、一部除去した要部外観斜視図である。
【図2】本発明の成形処理例の概略を説明するのに用いる、説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のラミネートチューブ1の一実施形態例を示す要部外観図で、ラミネートチューブ1は、帯状のラミネート原反6(図2参照)を丸めて両側端部を重ね合せ、この重ね合せた両側端部を加熱溶着することにより溶着部3に成形して原反チューブ2を形成し、この原反チューブ2の外表面に被覆層5を被覆して構成し、さらに原反チューブ2の溶着部3の外表面に刻印表示4を刻設すると共に、被覆層5を光透過性の樹脂製としている。
【0021】
ラミネート原反6としては、アルミラミネートシートが使用されているが、溶着部3における加熱溶着を安定的に達成するように、その内表面と外表面は相溶性を有する樹脂層で被覆されている。
【0022】
原反チューブ2の外表面に被覆形成される被覆層5は、光透過性を有する透明もしくは半透明の樹脂材料製であり、原反チューブ2に対して溶着性を有すると共に、印刷性が良好で、耐摩耗性に優れていることが望ましい。
【0023】
外表面に刻印表示4を成形した溶着部3の外表面上に被覆層5が位置することにより、刻印表示4は、必ず被覆層5を透して観察されることになり、このため刻印表示4は被覆層5の光学的作用を強く受けて観察される。
【0024】
このため、刻印表示4は、被覆層5の外表面に設けた場合に比べて、陰影や立体感の影響が強く作用した状態で観察されることになり、模倣により刻印表示4に似たものを被覆層5の外表面に設けたものと大きく相違した状態で視認されることになるので、刻印表示4の被覆層5外表面への模倣はきわめて困難である。
【0025】
刻印表示4は、その成形方法が特定されることはないが、一般的なラミネートチューブ1の成形手順からすると、原反チューブ2に対する被覆層5の被覆処理11(図2参照)に先立って行われる加熱溶着処理9と同時に行うのが望ましい。
【0026】
すなわち、(以下、図2参照)巻回されているラミネート原反6を巻き戻しながら走行させて、巻回処理7により、ラミネート原反6の両側端部を重ね合せて重なり部8を形成し、この重なり部8の重なり状態を保持しながら、重なり部8を、溶着温度まで加熱してから押圧して加熱溶着処理9をして溶着部3に成形する。
【0027】
この溶着部3を成形する加熱溶着処理9の押圧溶着に際して、重なり部8を外側から押圧する押圧ローラ(図示省略)と重なり部8との間に、刻印表示4を刻印成形する刻印ベルト等の刻印機能体9aを位置させ、この刻印機能体9aをラミネート原反6と同速でかつ同期して走行移動させて、加熱溶着処理9により重なり部8の溶着部3への溶着成形と同時に、この溶着部3の外表面に対する刻印表示4の刻印成形を達成する。
【0028】
この溶着部3の成形と刻印表示4の成形とにより原反チューブ2の成形は完了し、引き続いてこの原反チューブ2は押出し機10が位置する被覆処理部に送り込まれ、ここで押出し機10から押出された被覆樹脂材料の被覆処理11が施されて、ラミネートチューブ1に成形される。
【0029】
このように、刻印表示4は、既存のラミネートチューブ1の成形設備の、加熱溶着処理9を行う部分に、刻印ベルト等の刻印機能体9aを組付け、この刻印機能体9aを走行操作するだけで、既存のラミネートチューブ1の成形設備全体の主要部分の操作手順を変えることなく、わずかな操作処理の追加により、簡単にかつ無理なくそして効率よく成形することができる。
【0030】
上記したように、刻印表示4の成形は、ラミネートチューブ1の連続した一連の成形処理操作そのものを利用して実施するのが、安定して効率的に行うことができるので、ラミネートチューブ1の成形設備を有していない者が、刻印表示4を模倣して成形することは殆ど不可能となる。
【0031】
なお、本発明によるラミネートチューブ1の成形手法は、図2に示した成形手順に特定されることはなく、例えば成形してある原反チューブ2の溶着部3を加熱し、この加熱した溶着部3の外表面に適当な手段で刻印表示4を成形し、この溶着部3の外表面に刻印表示4を成形した原反チューブ2に、被覆層5を独立した被覆処理により成形することも可能である。
【0032】
また、ラミネート原反6は、アルミラミネートフィルムに限定されることはなく、高いガスバリヤー性を発揮する樹脂層や、高い遮光性を発揮する樹脂層を積層した合成樹脂製積層フィルムの使用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように本発明のラミネートチューブは、被覆成形される被覆層の内側に刻印表示を成形するので、この刻印表示の成形がきわめて困難であり、その分、模倣が難しく、模倣品対策として幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0034】
1 ;ラミネートチューブ
2 ;原反チューブ
3 ;溶着部
4 ;刻印表示
5 ;被覆層
6 ;ラミネート原反
7 ;巻回処理
8 ;重なり部
9 ;加熱溶着処理
9a;刻印機能体
10;押出し機
11;被覆処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のラミネート原反(6)を丸めて両側端部を重ね合せ、該重ね合せた両側端部を加熱溶着することにより溶着部(3)に成形して原反チューブ(2)を形成し、さらに該原反チューブ(2)の外表面に被覆層(5)を被覆して構成し、前記原反チューブ(2)の溶着部(3)の外表面に刻印表示(4)を刻設すると共に、前記被覆層(5)を光透過性の樹脂製としたラミネートチューブ。
【請求項2】
ラミネート原反(6)として、アルミラミネートフィルムを使用した請求項1に記載のラミネートチューブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−30852(P2012−30852A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172341(P2010−172341)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】