説明

ラミネート用樹脂組成物並びにその積層体及びその積層体の製造方法

【課題】優れた基材との接着強度、カット性及び帯電防止性を有し、ヒートシール強度が大幅に改良されたラミネート用樹脂組成物並びにそれを用いた積層体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】190℃、21.18N荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が1〜100g/10分、密度が0.91〜0.97g/cmの高圧ラジカル重合法で得られたポリエチレン樹脂(A)100重量部に対し、各々特定量の(b1)脂肪酸グリセリンエステル、(b2)ポリオキシアルキレンアルキルアミン、(b3)脂肪族アルコール、及び(b4)アルキルスルホン酸金属塩の4種からなる帯電防止剤(B)を少なくとも配合し、(b1)/(b4)の配合重量比が1.5〜3.0であり、且つ(b2)/(b4)の配合重量比が0.3〜1.3であることを特徴とするラミネート用樹脂組成物など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて保管環境に左右されにくい帯電防止性能に優れたラミネート用樹脂組成物並びにその積層体及びその積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレン系樹脂は、食品、医薬、電子包装等々多岐にわたり幅広く使用されている。しかし、疎水性であるために、フィルム加工時に静電気の発生が著しく、また包装フィルムとして、内容物に対し静電気による商品価値を低下させるというトラブルが多発している。そういったトラブルを防止するために、ポリエチレン系樹脂組成物に、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミンのそれぞれを配合した処方箋が実施されている。
【0003】
例えば、ポリオレフィン樹脂と、帯電防止剤として、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、グリセリン高級脂肪酸エステル及び高級脂肪族アルコールとを配合した押出ラミネート成形用ポリオレフィン樹脂組成物が提案されている。(例えば、特許文献1〜3参照。)
しかし、上記の処方では、ヒートシール性が十分なものではなく、保管状態によっては長期帯電防止性能が得られないという問題があった。
【0004】
一方、上記特許文献3には、また、ポリオレフィン樹脂と、帯電防止剤として、アルキルスルホン酸金属塩とを、配合した押出ラミネート用樹脂組成物も、開示されている。
しかし、上記樹脂組成物では、ラミネート後の保管状態によっては、帯電防止性能とヒートシール強度が著しく低下し、実用的ではない。
【0005】
上記のように、従来提案されている押出ラミネート用樹脂組成物では、長期保管において、ラミネート接着強度、ヒートシール強度と帯電防止性能が十分でなく、またカット性も十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−141932号公報
【特許文献2】特開平4−214343号公報
【特許文献3】特開2002−212350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、優れた基材との接着強度、カット性及び帯電防止性を有し、ヒートシール強度が大幅に改良されたラミネート用樹脂組成物並びにそれを用いた積層体及びその積層体の製造方法を提供することにある。
また、長期高温保管でも、それらの効果が持続するラミネート用樹脂組成物並びにそれを用いた積層体及びその積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のポリエチレン系樹脂に、下記4種の成分を組み合わせることにより、長期高温保管でも、基材との接着強度、帯電防止性能、カット性及びヒートシール強度を持続し得る、押出ラミネート後の積層体を実現できることを見出し、それらの知見により、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、JIS K7210の190℃、21.18N荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が1〜100g/10分、密度が0.91〜0.97g/cmの高圧ラジカル重合法で得られてなるポリエチレン樹脂(A)100重量部に対し、下記の配合量の(b1)〜(b4)の4種からなる成分の帯電防止剤(B)を少なくとも配合し、(b1)/(b4)の配合重量比が1.5〜3.0であり、且つ(b2)/(b4)の配合重量比が0.3〜1.3であることを特徴とするラミネート用樹脂組成物が提供される。
[帯電防止剤(B)]
(b1)グリセリン脂肪酸モノエステル0.10〜0.50重量部
(b2)ポリオキシアルキレンアルキルアミン0.01〜0.1重量部
(b3)脂肪族アルコール0.01〜0.1重量部
(b4)アルキルスルホン酸金属塩0.01〜0.1重量部
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、(b1)グリセリン脂肪酸モノエステルは、ジグリセリン脂肪酸モノエステル又はトリグリセリン脂肪酸モノエステルであることを特徴とするラミネート用樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明に係るラミネート用樹脂組成物からなる層を、少なくとも片側表面に有することを特徴とする積層体が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1又は2の発明に係るラミネート用樹脂組成物からなる層を、基材上に、押出ラミネート加工することを特徴とする積層体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のラミネート用樹脂組成物は、基材との優れた接着強度、カット性及び帯電防止性を有し、ヒートシール強度が大幅に向上する。さらに、長期高温保管でも、前述の効果が持続する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のラミネート用樹脂組成物は、JIS K7210の190℃、21.18N荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が1〜100g/10分、密度が0.91〜0.97g/cmの高圧ラジカル重合法で得られたポリエチレン樹脂(A)100重量部に対し、下記(b1)〜(b4)の4種からなる帯電防止剤(B)を少なくとも特定量配合し、(b1)/(b4)の配合重量比が1.5〜3.0であり、且つ(b2)/(b4)の配合重量比が0.3〜1.3であることを特徴とするものである。
[帯電防止剤(B)]
(b1)グリセリン脂肪酸モノエステル0.10〜0.50重量部
(b2)ポリオキシアルキレンアルキルアミン0.01〜0.1重量部
(b3)脂肪族アルコール0.01〜0.1重量部
(b4)アルキルスルホン酸金属塩0.01〜0.1重量部
以下、項目毎に説明する。
【0014】
1.ポリエチレン樹脂(A)
本発明に用いられるポリエチレン樹脂(A)は、高圧ラジカル重合法により得られるものであり、ラミネート成形性の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)(A1)が好ましい。
ポリエチレン樹脂(A)は、JIS K7210の190℃、21.18N荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が1〜100g/10分、好ましくは3〜80g/10分、さらに好ましくは5〜70g/10分である。この範囲内であれば、樹脂組成物の溶融張力が適切な範囲となり、ラミネート成形がし易い。
【0015】
また、低密度ポリエチレン(LDPE)(A1)は、ラミネート成形性の観点から、JIS K7112で測定される密度が好ましくは0.910〜0.940g/cm、より好ましくは0.915〜0.935g/cm、さらに好ましくは0.912〜0.930g/cmの範囲である。
さらに、本発明に用いられるポリエチレン樹脂(A)は、上記の低密度ポリエチレン(LDPE)(A1)以外に、MFRが1〜100g/10分で、密度が0.94〜0.97g/cmの中密度ポリエチレン(MDPE)または高密度ポリエチレン(HDPE)を併用してもよい。
尚、JIS K6922では、低密度ポリエチレン(LDPE)は、密度が0.910以上〜0.930未満g/cm、中密度ポリエチレン(MDPE)は、密度が0.930以上〜0.942未満g/cm、高密度ポリエチレン(HDPE)は、密度が0.942以上g/cmと、規定されているが、本発明では、便宜的に上記のように、取り扱うものとする。
【0016】
また、本発明に用いられるポリエチレン樹脂(A)は、溶融張力は好ましくは1.5〜25g、より好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。
尚、ここでいう溶融張力とは、東洋精機製作所製キャピログラフを用い、炉内で、190℃で加熱安定された樹脂を内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスから1cm/minのピストン速度で押し出し、押し出された溶融樹脂を4m/minの速度で引っ張りその時に生じた抵抗力を測定し、溶融張力値としたものである。
さらに、Mw/Mnは、3.0〜15、好ましくは4.0〜10である。溶融張力、Mw/Mnは、樹脂の弾性項目であり、上記の範囲であれば、シート成形がし易い。
尚、Mw/Mnは、GPC分析による重量平均分子量/数平均分子量である。
【0017】
2.帯電防止剤(B)
本発明に用いられる帯電防止剤(B)は、下記(b1)〜(b4)の4種の成分をからなるものである。
(b1)グリセリン脂肪酸モノエステル
(b2)ポリオキシアルキレンアルキルアミン
(b3)脂肪族アルコール
(b4)アルキルスルホン酸金属塩
【0018】
(1)グリセリン脂肪酸モノエステル(b1)
本発明において、(b1)グリセリン脂肪酸モノエステルは、炭素数8〜22、好ましくは炭素数12〜18の脂肪酸とグリセリン、ジグリセリン又はトリグリセリンとのモノエステル体である、モノグリセリン脂肪酸モノエステル、ジグリセリン脂肪酸モノエステル、トリグリセリン脂肪酸モノエステルである。
炭素数8〜22、好ましくは炭素数12〜18の脂肪酸としては、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等が挙げられ、帯電防止性及びヒートシール強度の観点からラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。
モノグリセリン脂肪酸モノエステルは、下記一般式(I)で表される化合物が好ましく、RCOOHで表される脂肪酸とグリセリンのエステル化反応により得られる化合物である。
【0019】
【化1】

【0020】
式中、Rは、一般に直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、炭素数が7〜21である場合、十分な帯電防止性能が得られるので好ましい。
グリセリン脂肪酸モノエステルとしては、ラウリン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、リノール酸モノグリセリド等が挙げられる。
市販品としては、エレクトロストリッパーTS−5(花王(株)製、商標、グリセリンモノステアレート)などが挙げられる。
また、ジグリセリン脂肪酸モノエステルとしては、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノリノレート等が挙げられる。
さらに、トリグリセリン脂肪酸モノエステルとしては、トリグリセリンモノラウレート、トリグリセリンモノパルミテート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンモノオレート、トリグリセリンモノリノレート等が挙げられる。
これらの化合物は、単独又は混合物のいずれであっても使用できる。
これらの中では、帯電防止性とヒートシール性の観点から、ジグリセリン脂肪酸モノエステル又はトリグリセリン脂肪酸モノエステルが好ましく、ジグリセリン脂肪酸モノエステルがより好ましい。
【0021】
上記グリセリン脂肪酸モノエステルの配合量は、該ポリエチレン樹脂(A)100重量部に対し、0.10〜0.50重量部であり、好ましくは0.10〜0.40重量、更に好ましくは0.10〜0.30重量部である。0.10重量部未満の場合、押出ラミネート加工後の積層体の帯電防止性能が低下し、一方、0.50重量部を超える場合、押出ラミネート加工後の積層体が白化し、好ましくない。
【0022】
(2)ポリオキシアルキレンアルキルアミン(b2)
(b2)ポリオキシアルキレンアルキルアミンは、下記一般式(II)で表される化合物である。
【0023】
【化2】

【0024】
式中、Rは、単素数8〜22の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、炭素数が8〜18が、帯電防止性およびヒートシール性の観点から好ましい。m及びnは1〜10の整数であり、m及びnが1であることが好ましい。
好ましいポリオキシアルキレンアルキルアミンは、ラウリルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン等が挙げられる。ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ラウリルジイソプロパノールアミン、ミリスチルジイソプロパノールアミン、パルミチルジイソプロパノールアミン、ステアリルジイソプロパノールアミン、ドデシルジオキシエチルアミン、テトラデシルジオキシエチルアミン、オクタデシルジオキシエチルアミン、16−オキシヘプタデシルジオキシエチルアミン、オクタデシルオキシエトキシアミン、17−オクタデニルジオキシエチルエチルアミン、1−メチルヘプタデシルジオキシエチルアミン等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。
【0025】
これらの中では、帯電防止性とヒートシール性の観点から、ラウリルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミンが好ましい。市販品として、例えば、エレクトロストリッパーEA(花王(株)製、商標、ラウリルジエタノールアミン)などが挙げられる。
【0026】
上記ポリオキシアルキレンアルキルアミンの配合量は、該ポリエチレン樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜0.1重量部であり、好ましくは0.01〜0.07重量部、更に好ましくは0.02〜0.05重量部である。該配合量が0.01重量部未満の場合、押出ラミネート加工後の積層体の帯電防止性能、ヒートシール強度、接着強度並びに長期高温保管時の接着強度、カット性、帯電防止性及びヒートシール強度が低下し、一方、0.1重量部を超える場合、押出ラミネート加工後の積層体の基材との接着強度及びヒートシール強度が低下する。
【0027】
(3)脂肪族アルコール(b3)
本発明に係る(b3)脂肪族アルコールは、炭素数12〜30、好ましくは炭素数12〜22、更に好ましくは炭素数12〜18の直鎖若しくは分岐鎖の飽和又は不飽和アルコールである。これら脂肪族アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルアルコール等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は混合物のいずれであってもよい。
【0028】
上記脂肪族アルコールの配合量は、該ポリエチレン樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜0.1重量部であり、好ましくは0.01〜0.07重量部、更に好ましくは0.02〜0.05重量部である。該配合量が0.01重量部未満の場合、押出ラミネート加工後の積層体の分散状態が悪く、ヒートシール強度、接着強度及びカット性、並びに長期高温保管時のこれらの性能が低下し、一方、0.1重量部を超える場合、押出ラミネート加工後の積層体がベタツキ及びヒートシール強度が低下し、好ましくない。
【0029】
(4)アルキルスルホン酸金属塩(b4)
本発明に係る(b4)アルキルスルホン酸金属塩とは、炭素数8〜22、好ましくは炭素数12〜22、更に好ましくは炭素数12〜18の直鎖もしくは分岐状のアルキル基又はアルケニル基を有するスルホン酸の塩である。
塩を形成する金属は、例えば、Li,Na,Kなどのアルカリ金属、Ba,Mg,Caなどのアルカリ土類金属、及びZn,Alなどの金属が挙げられ、中でも得られる押出ラミネート用樹脂組成物が高い帯電防止性能を有することから、金属として、Na,Liを有するアルキルスルホン酸金属塩が好ましく、Naがより好ましい。
具体的には、ラウリルスルホン酸Na、ラウリルスルホン酸Li、ミリスチルスルホン酸Na、ミリスチルスルホン酸Li、パルミチルスルホン酸Na、パルミチルスルホン酸Liなどが挙げられる。これらの化合物は、単独又は混合物のいずれであってもよい。
【0030】
上記アルキルスルホン酸金属塩(b4)の配合量は、ポリエチレン樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜0.1重量部、好ましくは0.03〜0.1重量部であり、更に好ましくは0.05〜0.08重量部である。該配合量が、該ポリエチレン樹脂(A)100重量部に対し、0.01重量部未満の場合、長期高温保管時の接着強度、カット性、帯電防止性及びヒートシール強度が低下し、押出ラミネート加工後の積層体の帯電防止性能が悪化し、好ましくなく、一方、0.1重量部を超える場合、押出ラミネート加工後の積層体のヒートシール強度が悪化し好ましくない。
【0031】
更に、(b4)アルキルスルホン酸金属塩に対する(b1)グリセリン脂肪酸グリセリンエステルの配合重量比〔(b1/b4)〕は1.5〜3.0であり、好ましくは1.8〜2.8である。
〔(b1/b4)〕1.5未満の場合、押出ラミネート加工後の積層体の帯電防止性能が低下し、一方、3.0を超える場合、長期高温保管時による帯電防止性能と接着強度が低下する。
また、(b4)アルキルスルホン酸金属塩に対する(b2)ポリオキシアルキレンアルキルアミンの重量比が〔(b2/b4)〕は、0.3〜1.3であり、好ましくは0.3〜1.0である。
(b2)ポリオキシアルキレンアルキルアミンの重量比が0.3未満の場合、押出ラミネート加工後の積層体の帯電防止性能が低下し、一方、1.3を越える場合、カット性と長期高温保管時時によるヒートシール強度とが低下する。
これらの観点から、配合重量比〔(b1/b4)〕が1.5〜3.0、且つ配合重量比〔(b2/b4)〕が0.3〜1.3であり、配合重量比〔(b1/b4)〕が1.8〜2.8、且つ配合重量比〔(b2/b4)〕が0.3〜1.0であることが、好ましい。
配合重量比〔(b1/b4)〕が3.0を超え、且つ配合重量比〔(b2/b4)〕が1.3を超えると、カット性が低下し、また長期高温保管時による帯電防止性、ヒートシール強度、接着強度、カット性が低下する。また、配合重量比〔(b1/b4)〕が1.5未満で、且つ配合重量比〔(b2/b4)〕が0.3未満では、帯電防止性が低下する。
尚、本発明に用いられるポリエチレン樹脂(A)には、上記以外の帯電防止剤を、本発明を損なわない限り、配合してもよい。
【0032】
本発明のラミネート用樹脂組成物は、例えば、ポリエチレン樹脂(A)と帯電防止剤(B)とを押出機等で溶融混合したものでも良いし、ポリエチレン樹脂(A)のペレット、帯電防止剤(B)を、予めポリオレフィン樹脂に練り込んだマスターバッチとを、ドライブレンドしたものであっても良い。
【0033】
また、本発明のラミネート用樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤等、通常ポリオレフィンに使用される添加剤を添加したものでもかまわない。
【0034】
3.積層体及びその製造方法
本発明の積層体は、本発明のラミネート用樹脂組成物からなる層を少なくとも片側表面に有することを特徴とする積層体である。
本発明の積層体は、本発明のラミネート用樹脂組成物を基材上に、押出ラミネート加工することにより製造することができる。
【0035】
(1)押出ラミネート加工
押出ラミネート加工とは、本発明のラミネート用樹脂組成物を、押出ラミネート成形法、サンドウィッチラミネート法、共押出ラミネート法等の各種成形法により、各種基材にラミネートし、本発明のラミネート用樹脂組成物を少なくとも片側の表面に有する積層体を得る製造方法である。
また、基材に、本発明のラミネート用樹脂組成物を直接押出ラミネートしてもよいが、基材上にエチレン系重合体層を設け、その上に本発明のラミネート用樹脂組成物を押出ラミートする方法が特に好ましい。
また、基材との接着性を高めるため、基材の接着面に対してはコロナ処理、フレーム処理、アンカーコート処理など、押出ラミネートされるエチレン系重合体に対しては、オゾン処理などの公知の表面処理を施してもよい。
【0036】
また、上記基材としては、パルプを原料とする紙類、合成高分子重合体フィルム、金属箔等が挙げられ、その中でもパルプを原料とする紙類が特に好ましく、例えば、クラフト紙、上質紙、グラシン紙、セロハン等が挙げられる。
合成高分子重合体フィルムとして、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム等が挙げられ、これら高分子重合体フィルムは、アルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着されたものでもよい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を、実施例によって、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた物性、加工性の測定方法と評価方法及び使用樹脂、基材、添加剤は、以下の通りである。
【0038】
1.物性の評価方法
(1)メルトフローレート(MFR):
JIS K7210の試験条件4(190℃、21.18N荷重)で測定した。
(2)密度:
JIS K7112で測定した。
【0039】
2.樹脂組成物および積層体の評価方法
(1)表面固有抵抗:
三菱油化製の表面固有抵抗測定器MCP−HT250で、500Vの電荷を1分かけ、測定した。
(2)ラミネート接着強度:
15mm幅に切断した積層フィルムを、基材とポリエチレン界面から剥離させ、東洋精機製引張試験機で試料を90度の角度にて、300mm/minの速度で引張り、その強度を測定した。数値が大きい方が好ましい。
(3)ヒートシール強度:
15mm幅に切断した積層フィルムを、シーラント面同士を合わせ、テスター産業製熱盤式ヒートシーラーの上部シールバーを120℃、下部シールバー30℃でシール圧力2kg/cm、シール時間1秒でヒートシールしたものを東洋精機製引張試験機にて引張速度300mm/分の速度でヒートシール部の強度を測定した。数値が大きい方が好ましい。
(4)カット性(手切れ性):
積層フィルムを手で切り裂いた状態を観察した。評価基準は、以下のとおり。
○:何の抵抗もなく綺麗に切れる。
△:わずかにポリエチレンが残るが使用上問題ない程度で切れる。
×:基材とポリエチレンが剥がれだし、切れ難い。
【0040】
3.原材料
(1)使用樹脂:
高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂(LDPEと称す)(密度:0.919g/cm、MFR:8g/10分、銘柄:ノバテックLD、LC607K、日本ポリエチレン(株)製)を用いた。
(2)基材:
セロハン#300、二村化学(株)製PLPを用いた。
【0041】
4.加工条件・装置
以下の装置、条件で、積層体を加工した。
装置:モダン社、90mmφシングルラミネート機
ダイ巾:500mm
加工速度:100m/min
アンカーコート剤:トヨバイン210K(ポリエチレンイミン)
ラミネート厚み:30μm
【0042】
[実施例1]
高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.919g/cm、MFR:8g/10分、銘柄:ノバテックLD LC607K、日本ポリエチレン(株)製)100重量部に対して、(b1)グリセリン脂肪酸モノエステルとして、ジグリセリンステアリン酸モノエステル(花王社製、銘柄名:KS−1197A)0.15重量部、(b2)ポリオキシエチレンアルキルアミンとして、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン0.04重量部及び(b3)脂肪族アルコールとして、ステアリルアルコール0.04重量部との等量混合物(花王社製、銘柄名:エレクトロストリッパーTS−2B)を合計0.08重量部、(b4)平均炭素数14.5のアルキルスルホン酸ナトリウム(花王社製、銘柄名:KS−1197B)0.08重量部を、押出機にて溶融混練してペレット化した。
次に、該ペレットを用いてモダン社、90mmφシングルラミネート機へ供給し、予め基材としてセロハン(#300 二村化学(株)製PLP)と低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.918g/cm、MFR:8g/10分、銘柄:ノバテックLD LC607K、日本ポリエチレン(株)製)とをアンカーコート剤(トヨバイン210K(ポリエチレンイミン)を介して押出ラミネートにより、LDPEが厚さ15μmとなるようにラミネートし得られた積層体のLDPE側上に、さらに、15μmの厚さになるようにラミネートして積層体を得た。
得られた積層体を用いて、接着時と6ケ月保管後(長期高温保管)における基材との接着性、帯電防止性能、カット性を評価した。それらの評価結果を表1に示した。
【0043】
[実施例2〜4]
表1に示す割合で、各(b1)〜(b4)の帯電防止剤の配合量を変化させた以外は、実施例1と同様にして、評価した結果を表1に示した。
【0044】
[比較例1〜6]
表2に示す割合で、各(b1)〜(b4)の帯電防止剤の配合量を変化させた以外は、実施例1と同様にして、評価した結果を表2に示した。
表1、2の数値は、ポリエチレン樹脂(A)100重量部に対する配合重量部である。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
「評価」
上記の表1の結果から、本発明の実施例1〜4に示されるように、(b1)〜(b4)の4種の帯電防止剤を適量使用し、(b1)/(b4)の配合重量比が1.5〜3.0であり、且つ(b2)/(b4)の配合重量比が0.3〜1.3である場合には、接着時と6ケ月保管後(長期高温保管)の評価において、帯電防止性、接着強度、ヒートシール強度、及びカット性に優れるものであった。一方、(b1)〜(b4)の4種の帯電防止剤のうち、1つでも条件を満たさない場合や、(b1)/(b4)の配合重量比及び(b2)/(b4)の配合重量比が範囲外のものは、本願の目的を達成することができなかった。尚、配合重量比は、小数点2桁目を四捨五入した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のラミネート用樹脂組成物は、基材との接着強度及び帯電防止性を有し、ヒートシール強度、カット性に優れるものであり、高速自動充填包装材用、粉末、顆粒状の医薬品、かつお削り節、コーヒー粉末等のラミネート用材料として好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K7210の190℃、21.18N荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が1〜100g/10分、密度が0.91〜0.97g/cmの高圧ラジカル重合法で得られたポリエチレン樹脂(A)100重量部に対し、下記の配合量の(b1)〜(b4)の4種成分からなる帯電防止剤(B)を少なくとも配合し、(b1)/(b4)の配合重量比が1.5〜3.0であり、且つ(b2)/(b4)の配合重量比が0.3〜1.3であることを特徴とするラミネート用樹脂組成物。
[帯電防止剤(B)]
(b1)グリセリン脂肪酸モノエステル0.10〜0.50重量部
(b2)ポリオキシアルキレンアルキルアミン0.01〜0.1重量部
(b3)脂肪族アルコール0.01〜0.1重量部
(b4)アルキルスルホン酸金属塩0.01〜0.1重量部
【請求項2】
(b1)グリセリン脂肪酸モノエステルは、ジグリセリン脂肪酸モノエステル又はトリグリセリン脂肪酸モノエステルであることを特徴とする請求項1記載のラミネート用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のラミネート用樹脂組成物からなる層を、少なくとも片側表面に有することを特徴とする積層体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のラミネート用樹脂組成物を、基材上に、押出ラミネート加工することを特徴とする積層体の製造方法。

【公開番号】特開2012−207101(P2012−207101A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73017(P2011−73017)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】