説明

ランキンサイクルシステム

【課題】コストを削減したランキンサイクルシステムを提供する。
【解決手段】エンジン2に取り付けられ、冷媒を送出する冷媒ポンプ32と、エンジン2に取り付けられ、エンジン2の廃熱を冷媒に回収する熱交換器36と、エンジン2に取り付けられ、熱交換器36によって温度が高くなった冷媒を膨張させることによって冷媒に回収された廃熱を動力に変換する膨張機37と、車体に取り付けられ、膨張機37によって膨張した冷媒を凝縮させる凝縮器38とを備えるランキンサイクルシステム30において、膨張機37と凝縮器38の間と、凝縮器38と冷媒ポンプ32の間とを、他と比べて柔性の大きなフレキシブル配管43a、44bで接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はランキンサイクルシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用のランキンサイクルシステムにおいて、蒸発器と膨張器とをエンジンに取り付けるものが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−182504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸発器および膨張器は、配管を介して他の部材、例えば車体に取り付けられる凝縮器などに接続されている。エンジンに取り付けられた部材と、車体に取り付けられた部材とでは振動数が異なるので、エンジンに取り付けられた部材と車体に取り付けられた部材とはフレキシブル配管によって接続される。フレキシブル配管は、例えばステンレス配管、アルミ配管などの剛性が高い配管よりも高価なため、使用量を少なくすることが望ましい。
【0005】
しかし、上記の発明では、このような点については考慮されておらず、ランキンサイクルシステムのコストが高くなる、といった問題点がある。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、フレキシブル配管の使用量を少なくし、ランキンサイクルシステムのコストを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係るランキンサイクルシステムは、エンジンに取り付けられ、冷媒を送出する冷媒ポンプと、エンジンに取り付けられ、エンジンの廃熱を冷媒に回収する熱交換器と、エンジンに取り付けられ、熱交換器によって温度が高くなった冷媒を膨張させることによって冷媒に回収された廃熱を動力に変換する膨張機と、車体に取り付けられ、膨張機によって膨張した冷媒を凝縮させる凝縮器とを備える。ランキンサイクルシステムは、膨張機と凝縮器の間と、凝縮器と冷媒ポンプの間とを、他と比べて柔性の大きなフレキシブル配管で接続する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比較的高価なフレキシブル配管の数を少なくし、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態の統合サイクルの概略構成図である。
【図2A】ポンプ及び膨張機を一体化した膨張機ポンプの概略断面図である。
【図2B】冷媒ポンプの概略断面図である。
【図2C】膨張機の概略断面図である。
【図3】冷媒系バルブの機能を示す概略図である。
【図4】ハイブリッド車両の概略構成図である。
【図5】エンジンの概略斜視図である。
【図6】排気管の配置を車両の下方から見た概略図である。
【図7A】ランキンサイクル運転域の特性図である。
【図7B】ランキンサイクル運転域の特性図である。
【図8】第1実施形態の統合サイクルの配管の様子を模式的に示した図である。
【図9】本発明の第2実施形態のハイブリッド車両の概略構成図である。
【図10】本発明の第2実施形態の統合サイクルの概略構成図である。
【図11】第2実施形態の統合サイクルの配管の様子を模式的に示した図である。
【図12】第3実施形態の統合サイクルの配管の様子を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は本発明の前提となるランキンサイクル31のシステム全体を表した概略構成図を示している。図1のランキンサイクル31は、冷凍サイクル51と冷媒および凝縮器38を共有する構成になっており、ランキンサイクル31と冷凍サイクル51を統合したランキンサイクルシステムのことを、これ以降統合サイクル30と表現する。図4は統合サイクル30が搭載されるハイブリッド車両1の概略構成図である。尚、統合サイクル30は、ランキンサイクル31と冷凍サイクル51の冷媒が循環する回路(通路)及びその途中に設けられたポンプ、膨張機、凝縮器等の構成要素に加え、冷却水や排気の回路(通路)等を含めたシステム全体を指すものとする。
【0012】
ハイブリッド車両1では、エンジン2、モータジェネレータ81、自動変速機82が直列に連結され、自動変速機82の出力はプロペラシャフト83、ディファレンシャルギヤ84を介して駆動輪85に伝達される。エンジン2とモータジェネレータ81の間には第1駆動軸クラッチ86を設けている。また、自動変速機82の摩擦締結要素の一つが第2駆動軸クラッチ87として構成されている。第1駆動軸クラッチ86と第2駆動軸クラッチ87は、エンジンコントローラ71に接続されており、ハイブリッド車両の運転条件に応じてその断接(接続状態)が制御される。ハイブリッド車両1では、図7Bに示すように、車速がエンジン2の効率が悪いEV走行領域にあるときには、エンジン2を停止し第1駆動軸クラッチ86を遮断し第2駆動軸クラッチ87を接続してモータジェネレータ81による駆動力のみでハイブリッド車両1の走行を行わせる。一方、車速がEV走行領域を外れてランキンサイクル運転域に移行したときには、エンジン2を運転してランキンサイクル31(後述する)を運転する。エンジン2は排気通路3を備え、排気通路3は、排気マニホールド4と、排気マニホールド4の集合部に接続される排気管5とから構成される。排気管5は途中でバイパス排気管6と分岐しており、バイパス排気管6にバイパスされる区間の排気管5には、排気と冷却水との間で熱交換を行なうための廃熱回収器22を備える。廃熱回収器22とバイパス排気管6は、図6に示すように、これらを一体化した廃熱回収ユニット23として、床下触媒88とその下流のサブマフラー89との間に配置される。
【0013】
エンジン2は、ハイブリッド車両1の車体骨格をなすフレームメンバに、図示しないエンジンマウントを介して固定され、車体に搭載されている。エンジンマウントは、エンジン2と車体の間を伝わる振動を低減する(減衰させる)役割を果たし、エンジン2の振動を車体に伝え難くするとともに、車体の振動をエンジン2に伝え難くする。この結果、エンジン2と車体とは異なる振動を生じるので、エンジン2に固定されたエンジン2側部品と車体に固定された車体側部品も異なる振動を生じる。一般的には剛性の高い接続部品で接続される部品同士であっても、それらがエンジン2側と車体側とに分かれて搭載される場合、振動による相対変位を吸収するため、柔性の大きい(柔軟性に優れた)接続部品で接続する必要がある。
【0014】
図1に基づき、まず、エンジン冷却水回路について説明する。エンジン2を出た80〜90℃程度の冷却水は、ラジエータ11を通る冷却水通路13と、ラジエータ11をバイパスするバイパス冷却水通路14とに別れて流れる。その後、2つの流れは、両通路13、14を流れる冷却水流量の配分を決めるサーモスタットバルブ15で再び合流し、さらに冷却水ポンプ16を経てエンジン2に戻る。冷却水ポンプ16はエンジン2によって駆動され、その回転速度はエンジン回転速度と同調している。サーモスタットバルブ15は、冷却水温度が高い場合に冷却水通路13側のバルブ開度を大きくしてラジエータ11を通過する冷却水量を相対的に増やし、冷却水温度が低い場合に冷却水通路13側のバルブ開度を小さくしてラジエータ11を通過する冷却水量を相対的に減らす。エンジン2の暖機前など特に冷却水温度が低い場合には、完全にラジエータ11をバイパスさせて冷却水の全量がバイパス冷却水通路14側を流れる。一方、バイパス冷却水通路14側のバルブ開度は全閉になることはなく、ラジエータ11を流れる冷却水流量が多くなったときに、バイパス冷却水通路14を流れる冷却水の流量は、冷却水の全量がバイパス冷却水通路14側を流れる場合と比べて低下するが、流れが完全に停止することがないようにサーモスタットバルブ15が構成されている。ラジエータ11をバイパスするバイパス冷却水通路14は、冷却水通路13から分岐して後述の熱交換器36に直接接続する第1バイパス冷却水通路24と、冷却水通路13から分岐して廃熱回収器22を経た後に熱交換器36に接続する第2バイパス冷却水通路25とからなる。
【0015】
バイパス冷却水通路14には、ランキンサイクル31の冷媒と熱交換を行なう熱交換器36を備える。この熱交換器36は蒸発器と過熱器とを統合したものである。すなわち、熱交換器36には2つの冷却水通路36a、36bがほぼ一列に、また、冷媒と冷却水が熱交換可能なようにランキンサイクル31の冷媒が流れる冷媒通路36cは冷却水通路36a、36bと隣接して設けられている。さらに熱交換器36の全体を俯瞰して見たときにランキンサイクル31の冷媒と冷却水が互いに流れ方向が逆向きとなるように各通路36a、36b、36cが構成されている。
【0016】
詳細には、ランキンサイクル31の冷媒にとって上流(図1の左)側に位置する一方の冷却水通路36aは、第1バイパス冷却水通路24に介装されている。この冷却水通路36a及びこの冷却水通路36aに隣接する冷媒通路部分からなる熱交換器左側部分は、エンジン2から出た冷却水を冷却水通路36aに直接導入することで、冷媒通路36cを流れるランキンサイクル31の冷媒を加熱するための蒸発器である。
【0017】
ランキンサイクル31の冷媒にとって下流(図1の右)側に位置する他方の冷却水通路36bには、第2バイパス冷却水通路25を介して廃熱回収器22を経た冷却水が導入される。冷却水通路36b及びこの冷却水通路36bに隣接する冷媒通路部分からなる熱交換器右側部分(ランキンサイクル31の冷媒にとって下流側)は、エンジン2の出口の冷却水を排気によってさらに加熱した冷却水を冷却水通路36bに導入することで、冷媒通路36cを流れる冷媒を過熱する過熱器である。
【0018】
廃熱回収器22の冷却水通路22aは排気管5に隣接して設けている。廃熱回収器22の冷却水通路22aにエンジン2の出口の冷却水を導入することで、冷却水を高温の排気によって例えば110〜115℃程度まで加熱することができる。廃熱回収器22の全体を俯瞰して見たときに、排気と冷却水とが互いに流れる向きが逆向きとなるように冷却水通路22aが構成されている。
【0019】
廃熱回収器22を設けた第2バイパス冷却水通路25には制御弁26が介装されている。エンジン2の内部にある冷却水の温度を指すエンジン水温が、例えばエンジン2の効率悪化やノックを発生させないための許容温度(例えば100℃)を超えないように、エンジン2の出口の冷却水温度センサ74の検出温度が所定値以上になると、この制御弁26の開度を減少させるようにしている。エンジン水温が許容温度に近づくと、廃熱回収器22を通過する冷却水量を減少させるので、エンジン水温が許容温度を超えてしまうことを確実に防ぐことができる。
【0020】
一方、第2バイパス冷却水通路25の流量が減少したことによって、廃熱回収器22により上昇する冷却水温度が上がりすぎて冷却水が蒸発(沸騰)してしまったのでは、冷却水通路内の冷却水の流れが悪くなって部品温度が過剰に上昇してしまう恐れがある。これを避けるため、廃熱回収器22をバイパスするバイパス排気管6と、廃熱回収器22の排気通過量とバイパス排気管6の排気通過量とをコントロールするサーモスタットバルブ7をバイパス排気管6の分岐部に設けている。すなわち、サーモスタットバルブ7は、そのバルブ開度が廃熱回収器22を出た冷却水温度が所定の温度(例えば沸騰温度120℃)を超えないように、廃熱回収器22を出た冷却水温度に基づいて調節される。
【0021】
熱交換器36とサーモスタットバルブ7と廃熱回収器22とは、廃熱回収ユニット23として一体化されていて、車幅方向略中央の床下において排気管途中に配設されている。サーモスタットバルブ7は、バイメタル等を用いた比較的簡易な感温弁でも良いし、温度センサ出力が入力されるコントローラによって制御される制御弁であっても良い。サーモスタットバルブ7による排気から冷却水への熱交換量の調節は比較的大きな遅れを伴うため、サーモスタットバルブ7を単独で調節したのではエンジン水温が許容温度を超えないようにするのが難しい。しかしながら、第2バイパス冷却水通路25の制御弁26をエンジン水温(出口温度)に基づき制御するようにしてあるので、熱回収量を速やかに低減し、エンジン水温が許容温度を超えるのを確実に防ぐことができる。また、エンジン水温が許容温度までに余裕がある状態であれば、廃熱回収器22を出る冷却水温度がエンジン水温の許容温度を越えるほどの高温(例えば110〜115℃)になるまで熱交換を行って、廃熱回収量を増加させることができる。冷却水通路36bを出た冷却水は、第2バイパス冷却水通路25を介して第1バイパス冷却水通路24に合流されている。
【0022】
バイパス冷却水通路14からサーモスタットバルブ15に向かう冷却水の温度が、例えば熱交換器36でランキンサイクル31の冷媒と熱交換することによって十分低下していれば、サーモスタットバルブ15の冷却水通路13側のバルブ開度が小さくされて、ラジエータ11を通過する冷却水量は相対的に減らされる。逆にバイパス冷却水通路14からサーモスタットバルブ15に向かう冷却水の温度が、ランキンサイクル31が運転されていないことなどによって高くなると、サーモスタットバルブ15の冷却水通路13側のバルブ開度が大きくされて、ラジエータ11を通過する冷却水量は相対的に増やされる。このようなサーモスタットバルブ15の動作に基づいて、エンジン2の冷却水温度が適当に保たれ、熱がランキンサイクル31へ適当に供給(回収)されるように構成されている。
【0023】
次に、ランキンサイクル31について述べる。ここでは、ランキンサイクル31は、単純なランキンサイクルでなく、冷凍サイクル51と統合した統合サイクル30の一部として構成されている。以下では、基本となるランキンサイクル31を先に説明し、その後に冷凍サイクル51に言及する。
【0024】
ランキンサイクル31は、エンジン2の冷却水を介してエンジン2の廃熱を冷媒に回収し、回収した廃熱を動力として回生するシステムである。ランキンサイクル31は、冷媒ポンプ32、過熱器としての熱交換器36、膨張機37及び凝縮器(コンデンサ)38を備え、各構成要素は冷媒(R134a等)が循環する冷媒通路41〜44により接続されている。冷媒通路41〜44は、一般的には冷媒のシール性の確保が容易な、比較的剛性の高い一般的な金属配管(鋼管)により構成されるが、本実施形態においては一部に柔性の高いフレキシブル配管を用いており、詳細は後述する。
【0025】
冷媒ポンプ32の軸は同一の軸上で膨張機37の出力軸と連結配置され、膨張機37の発生する出力(動力)によって冷媒ポンプ32を駆動すると共に、発生動力をエンジン2の出力軸(クランク軸)に供給する構成である(図2A参照)。冷媒ポンプ32の軸及び膨張機37の出力軸は、エンジン2の出力軸と平行に配置され、冷媒ポンプ32の軸の先端に設けたポンププーリ33と、クランクプーリ2aとの間にベルト34を掛け回している(図1参照)。すなわち、膨張機37の出力軸とエンジン2の出力軸とは動力伝達可能に構成されている。なお、本実施形態の冷媒ポンプ32としてはギヤ式のポンプを、膨張機37としてはスクロール式の膨張機を採用している(図2B、図2C参照)。冷媒ポンプ32および膨張機37は、図5に示すようにエンジン2に取り付けられている。
【0026】
また、ポンププーリ33と冷媒ポンプ32との間に電磁式のクラッチ(このクラッチを以下「膨張機クラッチ」という。)35(第1クラッチ)を設けて、冷媒ポンプ32及び膨張機37とを、エンジン2と断接可能にしている(図2A参照)。このため、膨張機37の発生する出力が冷媒ポンプ32の駆動力及び回転体が有するフリクションを上回る場合(予測膨張機トルクが正の場合)に膨張機クラッチ35を接続することで、膨張機37の発生する出力によってエンジン出力軸の回転をアシスト(補助)することができる。このように廃熱回収によって得たエネルギを用いてエンジン出力軸の回転をアシストすることで、燃費を向上できる。また、冷媒を循環させる冷媒ポンプ32を駆動するためのエネルギも、回収した廃熱で賄うことができる。なお、膨張機クラッチ35は、エンジン2から冷媒ポンプ32及び膨張機37に至る動力伝達経路の途中であればどこに設けられていてもよい。
【0027】
冷媒ポンプ32からの冷媒は冷媒通路41を介して熱交換器36に供給される。熱交換器36は、エンジン2の冷却水と冷媒との間で熱交換を行わせ、冷媒を気化し過熱する熱交換器である。
【0028】
熱交換器36からの冷媒は冷媒通路42を介して膨張機37に供給される。膨張機37は、気化し過熱された冷媒を膨張させることにより熱を回転エネルギに変換する蒸気タービンである。膨張機37で回収された動力は冷媒ポンプ32を駆動し、ベルト伝動機構を介してエンジン2に伝達され、エンジン2の回転をアシストする。
【0029】
膨張機37からの冷媒は冷媒通路43a、43bを介して凝縮器38に供給される。凝縮器38は、外気と冷媒との間で熱交換を行わせ、冷媒を冷却し液化する熱交換器である。このため、凝縮器38をラジエータ11と並列に配置し、ラジエータファン12によって冷却するようにしている。凝縮器38は、車体に取り付けられている。
【0030】
冷媒通路43aは、膨張機37に接続する。冷媒通路43bは冷媒通路43aと凝縮器38とを接続する。冷媒通路43aと冷媒通路43bとは、後述する冷凍サイクル合流点46において接続する。
【0031】
エンジン2側部品と車体側部品を接続する冷媒通路43aは、振動による相対変位を吸収するため、冷媒通路43bよりも柔性が大きい冷媒用フレキシブル配管である。柔性が大きいとは、剛性が低く、変形自在であることを言う。柔性を備えるために、フレキシブル配管は、蛇腹状の形状であったり、材料として柔らかく柔軟性に優れた素材を用いたりするものである。そのため、冷媒通路43aは、途中の部分を自在に曲げることができ、振動が伝達された場合には振動を吸収することができる。冷媒通路43aのエンジン2に取り付けられた膨張機37側の部分は、エンジン2や膨張機37と共に振動する。
【0032】
冷媒通路43bは凝縮器38に接続し、冷媒通路43aよりも柔性が小さい、つまり剛性が高い、例えばステンレス配管、アルミ配管である。冷媒通路43bは、車体に取り付けられた凝縮器38と共に振動する。
【0033】
冷媒通路43aは、エンジン2に取り付けられた膨張機37に接続している。また、冷媒通路43bは、車体に取り付けられた凝縮器38に接続している。そのため、車両が駆動されている場合には冷媒通路43aの振動数と冷媒通路43bの振動数とは異なる。本実施形態では、冷媒通路43aを冷媒用フレキシブル配管とすることで、冷媒通路43aによって冷媒通路43aのエンジン2側部分と冷媒通路43bとの間の振動差を吸収する。
【0034】
凝縮器38により液化された冷媒は、冷媒通路44a、44bを介して冷媒ポンプ32に戻される。冷媒ポンプ32に戻された冷媒は、冷媒ポンプ32により再び熱交換器36に送られ、ランキンサイクル31の各構成要素を循環する。
【0035】
冷媒通路44aは、凝縮器38に接続する。冷媒通路44bは冷媒通路43aと冷媒ポンプ32とを接続する。冷媒通路44aと冷媒通路44bとは、後述する冷凍サイクル分岐点45において接続する。
【0036】
冷媒通路44aは、冷媒通路44bよりも柔性が小さい、例えばステンレス配管、アルミ配管である。冷媒通路44aは凝縮器38と共に振動する。
【0037】
エンジン2側部品と車体側部品を接続する冷媒通路44bは、振動による相対変位を吸収するため、冷媒通路44aよりも柔性が大きい冷媒用フレキシブル配管である。冷媒通路44bのエンジン2側部分はエンジン2の振動が伝達されてエンジン2と共に振動する。
【0038】
冷媒通路44bを冷媒用フレキシブル配管とすることで、冷媒通路44bによって冷媒通路44aと冷媒通路44bとの間の振動差を吸収することができる。
【0039】
次に、冷凍サイクル51について述べる。冷凍サイクル51は、ランキンサイクル31を循環する冷媒を共用するため、ランキンサイクル31と統合され、冷凍サイクル51の構成そのものは簡素になっている。すなわち、冷凍サイクル51は、コンプレッサ(圧縮機)52、凝縮器38、エバポレータ(蒸発器)55を備える。
【0040】
コンプレッサ52は冷凍サイクル51の冷媒を高温高圧に圧縮する流体機械である。コンプレッサ52は、車体に取り付けられている。コンプレッサ52は電動コンプレッサであり、図示しないバッテリなどから電力が供給される。
【0041】
コンプレッサ52からの冷媒は冷媒通路56を介し、冷凍サイクル合流点46で冷媒通路43aと合流した後に冷媒通路43bを介して凝縮器38に供給される。冷媒通路56は、比較的剛性の高い一般的な金属配管(鋼管)により構成されている。凝縮器38は外気との熱交換によって冷媒を凝縮し液化する熱交換器である。凝縮器38からの液状の冷媒は、冷凍サイクル分岐点45において冷媒通路44aから分岐する冷媒通路57を介してエバポレータ(蒸発器)55に供給される。冷媒通路57についても、比較的剛性の高い一般的な金属配管(鋼管)により構成されている。エバポレータ55は、図示しないヒータコアと同様にエアコンユニットのケース内に配設されている。エバポレータ55は、凝縮器38からの液状冷媒を蒸発させ、そのときの蒸発潜熱によってブロアファンからの空調空気を冷却する熱交換器である。
【0042】
エバポレータ55によって蒸発した冷媒は冷媒通路58を介してコンプレッサ52に戻される。なお、エバポレータ55によって冷却された空調空気とヒータコアによって加熱された空調空気は、エアミックスドアの開度に応じて混合比率が変更され、乗員の設定する温度に調節される。
【0043】
ランキンサイクル31と冷凍サイクル51とからなる統合サイクル30には、サイクル内を流れる冷媒を制御するため、回路途中に各種の弁が適宜設けられている。例えば、ランキンサイクル31を循環する冷媒を制御するため、冷凍サイクル分岐点45と冷媒ポンプ32とを連絡する冷媒通路44bにポンプ上流弁61、熱交換器36と膨張機37とを連絡する冷媒通路42に膨張機上流弁62を備える。また、冷媒ポンプ32と熱交換器36とを連絡する冷媒通路41には、熱交換器36から冷媒ポンプ32への冷媒の逆流を防止するため逆止弁63を備えている。膨張機37と冷凍サイクル合流点46とを連絡する冷媒通路43aにも、冷凍サイクル合流点46から膨張機37への冷媒の逆流を防止するため逆止弁64を備えている。また、膨張機上流弁62上流から膨張機37をバイパスして逆止弁64上流に合流する膨張機バイパス通路65を設け、この膨張機バイパス通路65にバイパス弁66を設けている。さらに、バイパス弁66をバイパスする通路67に圧力調整弁68を設けている。冷凍サイクル51側についても、冷凍サイクル分岐点45とエバポレータ55とを接続する冷媒通路57にエアコン回路弁69を設けている。
【0044】
上記4つの弁61、62、66、69はいずれも電磁式の開閉弁である。圧力センサ72により検出される膨張機上流圧力の信号、圧力センサ73により検出される凝縮器38の出口の冷媒圧力Pdの信号、膨張機37の回転速度信号等がエンジンコントローラ71に入力されている。エンジンコントローラ71では、所定の運転条件に応じ、これらの各入力信号に基づいて、冷凍サイクル51のコンプレッサ52や、ラジエータファン12の制御を行なうとともに、上記4つの電磁式開閉弁61、62、66、69の開閉を制御する。
【0045】
例えば、圧力センサ72により検出される膨張機上流側圧力及び膨張機回転速度に基づいて膨張機トルク(回生動力)を予測し、この予測膨張機トルクが正のとき(エンジン出力軸の回転をアシストすることができるとき)に膨張機クラッチ35を締結し、予測膨張機トルクがゼロないし負のときに膨張機クラッチ35を解放する。センサ検出圧力と膨張機回転速度とに基づくことで、排気温度から膨張機トルク(回生動力)を予測する場合とくらべ、高い精度で膨張機トルクを予測することができ、膨張機トルクの発生状況に応じて膨張機クラッチ35の締結・解放を適切に行うことができる(詳細は特開2010−190185号公報参照)。
【0046】
上記4つの開閉弁61、62、66、69及び2つの逆止弁63、64は、冷媒系バルブである。これらの冷媒系バルブの機能を改めて図3に示す。
【0047】
図3において、ポンプ上流弁61は、ランキンサイクル31の停止中等、冷凍サイクル51の回路に比べてランキンサイクル31の回路に冷媒が偏り易くなる所定の条件で閉じることで、ランキンサイクル31への冷媒(潤滑成分含む)の偏りを防止するためのもので、後述するように、膨張機37下流の逆止弁64と協働してランキンサイクル31の回路を閉塞させる。膨張機上流弁62は、熱交換器36からの冷媒圧力が相対的に低い場合に冷媒通路42を遮断し熱交換器36からの冷媒が高圧になるまで保持することができるようにするものである。これによって、膨張機トルクが十分得られない場合でも冷媒の加熱を促し、例えばランキンサイクル31が再起動(回生が実際に行なえるようになる)するまでの時間を短縮させることができる。バイパス弁66は、ランキンサイクル31の始動時等にランキンサイクル31側に存在する冷媒量が十分でないときなどに、膨張機37をバイパスさせた上で冷媒ポンプ32の作動が行えるように開弁し、ランキンサイクル31の起動時間を短縮するためのものである。膨張機37をバイパスさせた上で冷媒ポンプ32を作動させることで、凝縮器38の出口あるいは冷媒ポンプ32の入口の冷媒温度が、その部位の圧力を考慮した沸点から所定温度差(サブクール度SC)以上に低下した状態が実現されれば、ランキンサイクル31には十分な液体冷媒が供給できる状態が整ったことになる。
【0048】
熱交換器36上流の逆止弁63は、バイパス弁66、圧力調整弁68、膨張機上流弁62と協働して膨張機37に供給される冷媒を高圧に保持するためのものである。ランキンサイクルの回生効率が低い条件ではランキンサイクルの運転を停止し、熱交換器の前後区間に亘って回路を閉塞することで、停止中の冷媒圧力を上昇させておき、高圧冷媒を利用してランキンサイクルが速やかに再起動できるようにする。圧力調整弁68は膨張機37に供給される冷媒の圧力が高くなり過ぎた場合に開いて、高くなり過ぎた冷媒を逃すリリーフ弁の役割を有している。
【0049】
膨張機37下流の逆止弁64は、上述のポンプ上流弁61と協働してランキンサイクル31への冷媒の偏りを防止するためのものである。ハイブリッド車両1の運転開始直後、エンジン2が暖まっていないとランキンサイクル31が冷凍サイクル51より低温となり、冷媒がランキンサイクル31側に偏ることがある。ランキンサイクル31側に偏る確率はそれほど高くないものの、例えば夏場の車両運転開始直後には、車内を早く冷やしたい状況にあって冷房能力が最も要求されることから、冷媒の僅かな偏在も解消して冷凍サイクル51の冷媒を確保したいという要求がある。そこで、ランキンサイクル31側への冷媒の偏在を防止するため逆止弁64を設けたものである。
【0050】
コンプレッサ52は、駆動停止時に冷媒が自由通過できる構造ではなく、エアコン回路弁69と協働して冷凍サイクル51への冷媒の偏りを防止することができる。これについて説明する。冷凍サイクル51の運転が停止したとき、定常運転中の比較的高い温度のランキンサイクル31側から冷凍サイクル51側へと冷媒が移動して、ランキンサイクル31を循環する冷媒が不足することがある。冷凍サイクル51の中で、冷房停止直後はエバポレータ55の温度が低くなっていて、比較的容積が大きく温度が低くなっているエバポレータ55に冷媒が溜まり易い。この場合に、コンプレッサ52の駆動停止によって凝縮器38からエバポレータ55への冷媒の動きを遮断するとともに、エアコン回路弁69を閉じることで、冷凍サイクル51への冷媒の偏りを防止するのである。
【0051】
次に、図5はエンジン2全体のパッケージを示すエンジン2の概略斜視図である。図5において特徴的なのは、熱交換器36が排気マニホールド4の鉛直上方に配置されていることである。つまり、熱交換器36はエンジン2に取り付けられている。排気マニホールド4の鉛直上方のスペースに熱交換器36を配置することによって、ランキンサイクル31のエンジン2への搭載性を向上させている。また、エンジン2にはテンションプーリ8が設けられる。
【0052】
次に、ランキンサイクル31の基本的な運転方法を図7A及び図7Bを参照して説明する。
【0053】
まず、図7A及び図7Bはランキンサイクル31の運転領域図である。図7Aには横軸を外気温、縦軸をエンジン水温(冷却水温度)としたときのランキンサイクル31の運転域を、図7Bには横軸をエンジン回転速度、縦軸をエンジントルク(エンジン負荷)としたときのランキンサイクル31の運転域を示している。
【0054】
図7A及び図7Bのいずれにおいても所定の条件を満たしたときにランキンサイクル31を運転するもので、これら両方の条件が満たされた場合にランキンサイクル31を運転する。図7Aにおいては、エンジン2の暖機を優先する低水温側の領域と、コンプレッサ52の負荷が増大する高外気温側の領域でランキンサイクル31の運転を停止している。排気温度が低く回収効率が悪い暖機時は、むしろランキンサイクル31を運転しないことで冷却水温度を速やかに上昇させる。高い冷房能力が要求される高外気温時はランキンサイクル31を止めて、冷凍サイクル51に十分な冷媒と凝縮器38の冷却能力を提供する。図7Bにおいては、ハイブリッド車両であるので、EV走行領域と、膨張機37のフリクションが増大する高回転速度側の領域でランキンサイクル31の運転を停止している。膨張機37は全ての回転速度でフリクションが少ない高効率な構造とすることが難しいことから、図7Bの場合では、運転頻度の高いエンジン回転速度域でフリクションが小さく高効率となるように、膨張機37が構成(膨張機37各部のディメンジョン等が設定)されている。
【0055】
本発明の第1実施形態の効果について説明する。
【0056】
図8は、第1実施形態の統合サイクル30の配管の様子を模式的に示している。上述の通り、ランキンサイクル31の冷媒ポンプ32、熱交換器36、膨張機37はそれぞれエンジン2に取り付けられ、凝縮器38は車体側に取り付けられている。冷媒ポンプ32と熱交換器36の間と、熱交換器36と膨張機37の間は、比較的剛性の高い一般的な金属配管(鋼管)101で接続され、膨張機37と凝縮器38の間と、凝縮器38と冷媒ポンプ32の間は、少なくとも途中の一部にフレキシブル配管100を含んでなる柔性の大きな通路(管路)で結ばれている。これにより、エンジン2側に取り付けられた膨張機37や冷媒ポンプ32と、車体側に取り付けられた凝縮器38の間の振動の違い(相対位置の変化)は、フレキシブル配管100によって吸収され、これによって部品信頼性を高め、或いは、乗員に不快な振動が伝わるのを抑制する。
【0057】
特に、本実施形態では、冷媒ポンプ32をエンジン2側に取り付けて、エンジン2で冷媒ポンプ32を駆動することができるように構成しただけでなく、膨張機37をエンジン2側に取り付けた上で膨張機37の回生出力によっても冷媒ポンプ32を駆動することがきるように構成し、エンジン2の動力によって冷媒ポンプ32を駆動できるようにしてランキンサイクル31の運転自由度を増しつつ、膨張機37の回生出力を利用しても冷媒ポンプ32を駆動できるようにしてエネルギ効率を改善することができる。このような前提の下で、さらに、冷媒ポンプ32と膨張機37の間に設けられる熱交換器36をエンジン2側に取り付けるようにしたため、冷媒ポンプ32と熱交換器36の間と、熱交換器36と膨張機37の間は、比較的剛性の高い通路(管路)101で接続することができ、膨張機37と凝縮器38の間と、凝縮器38と冷媒ポンプ32の間だけに限って、柔性の大きなフレキシブル配管100で結ぶことができるようにした。これによって、比較的高価なフレキシブル配管100の数を少なくし、コストを抑えることができるようになっている。すなわち、ランキンサイクル31の回路途中にフレキシブル配管100は2つしか設けられていない。
【0058】
具体的には、エンジン2に取り付けられた膨張機37に接続する冷媒通路43aの少なくとも一部を、車体に取り付けられた凝縮器38に接続する冷媒通路43bよりも柔性が大きい冷媒用フレキシブル配管とする。これにより、冷媒通路43aのエンジン2側部分と冷媒通路43bとの振動差を冷媒通路43aによって吸収することができる。また、冷媒通路43bを冷媒用フレキシブル配管よりも安価な例えば銅管、ステンレス配管、アルミ配管などの金属配管とすることができ、高価な冷媒用フレキシブル配管を少なくすることができる。そのため、統合サイクル30のコストを削減することができる。
【0059】
冷媒通路43aの少なくとも一部に冷媒用フレキシブル配管を用いることで、膨張機37と凝縮器38とを接続する配管の長さを短くすることができ、配管における圧損を小さくすることができ、統合サイクル30の効率を良くすることができる。
【0060】
エンジン2に取り付けられた冷媒ポンプ32に接続する冷媒通路44bの少なくとも一部を、凝縮器38に接続する冷媒通路44aよりも柔性が大きい冷媒用フレキシブル配管とする。これにより、冷媒通路44aと冷媒通路44bのエンジン2側部分との振動差を冷媒通路44bによって吸収することができる。また、冷媒通路44aを冷媒用フレキシブル配管よりも安価な金属配管とすることができ、高価な冷媒用フレキシブル配管を少なくすることができる。そのため、統合サイクル30のコストを削減することができる。
【0061】
冷媒通路43aの少なくとも一部に冷媒用フレキシブル配管を用いることで、凝縮器38と冷媒ポンプ32とを接続する配管の長さを短くすることができ、配管における圧損を小さくすることができ、統合サイクル30の効率を良くすることができる。
【0062】
膨張機37の出力軸とエンジン2の出力軸とを動力伝達可能に構成した統合サイクル30において、冷媒通路43aを冷媒用フレキシブル配管とし、冷媒通路43bを例えば金属配管とすることで、上記効果をより得ることができる。
【0063】
次に本発明の第2実施形態について図9、10を用いて説明する。
【0064】
図9は、本実施形態におけるハイブリッド車両の概略構成図である。図10は本実施形態における統合サイクルの概略構成図である。第2実施形態については第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。第1実施形態と同じ構成については第1実施形態と同じ符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0065】
コンプレッサ59は、エンジン2に取り付けられており、エンジン2によって駆動される。図9に示すようにコンプレッサ59の駆動軸にはコンプレッサプーリ53が固定され、このコンプレッサプーリ53とクランクプーリ2aとにベルト34を掛け回している。エンジン2の駆動力がこのベルト34を介してコンプレッサプーリ53に伝達され、コンプレッサ59が駆動される。また、コンプレッサプーリ53とコンプレッサ59との間に電磁式のクラッチ54を設けて、コンプレッサ59とコンプレッサプーリ53とを断接可能にしている。
【0066】
コンプレッサ59に接続する冷媒通路56は、冷媒通路43bよりも柔性が大きい冷媒用フレキシブル配管である。
【0067】
コンプレッサ59と蒸発器55との間に設けられ、コンプレッサ59と接続する冷媒通路58は、冷媒通路56と同様に冷媒用フレキシブル配管である。
【0068】
コンプレッサ59がエンジン2に取り付けられると、車両が駆動されている場合にはコンプレッサ59に接続する冷媒通路56の振動数と、凝縮器38に接続する冷媒通路43bの振動数とは異なる。本実施形態では、冷媒通路56を冷媒用フレキシブル配管とすることで、冷媒通路56と冷媒通路43bとの振動差を冷媒通路56によって吸収する。
【0069】
本発明の第2実施形態の効果について説明する。
【0070】
図11は、第2実施形態の統合サイクル30の配管の様子を模式的に示している。第1実施形態との違いは、コンプレッサ59がエンジン2側に取り付けられていることから、コンプレッサ59前後の冷媒通路がフレキシブル配管100によって構成されていることである。第2実施形態によっても、比較的高価なフレキシブル配管100の数を少なくし、コストを抑えることができるようになっている。すなわち、ランキンサイクル31の回路途中にフレキシブル配管100は2つしか設けられておらず、統合サイクル30全体で見た場合に、フレキシブル配管100の数は4つに抑えられている。
【0071】
具体的には、冷媒通路56の少なくとも一部を冷媒用フレキシブル配管とし、冷媒通路56を冷凍サイクル合流点46において冷媒通路43bと接続する。これにより、冷媒通路43bと冷媒通路56との振動差を冷媒通路43bによって吸収することができる。
【0072】
次に本発明の第3実施形態について説明する。
【0073】
第3実施形態については第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0074】
第3実施形態では、冷媒通路43bを冷媒通路43aおよび冷媒通路56よりも柔性が大きいフレキシブル配管とする。また、冷媒通路43aおよび冷媒通路56を柔性が小さい例えばステンレス配管、アルミ配管とする。
【0075】
本発明の第3実施形態の効果について説明する。
【0076】
図12は、第3実施形態の統合サイクル30の配管の様子を模式的に示している。第2実施形態との違いは、膨張機37と凝縮器38とを接続する配管と、コンプレッサ59と凝縮器38とを接続する配管とを途中で互いに合流し、合流した後の部位がフレキシブル配管100で構成されていることである。第3実施形態によっても、比較的高価なフレキシブル配管100の数を少なくし、コストを抑えることができるようになっている。すなわち、ランキンサイクル31の回路途中にフレキシブル配管100は2つしか設けられておらず、統合サイクル30全体で見た場合に、フレキシブル配管100の数は3つに抑えられている。
【0077】
具体的には、凝縮器38に接続する冷媒通路43bを冷媒用フレキシブル配管とし、膨張機37に接続する冷媒通路43a、およびコンプレッサ59に接続する冷媒通路56とを、冷媒用フレキシブル配管よりも安価な例えばステンレス配管、アルミ配管とする。これにより、冷媒通路43bと、冷媒通路43aと冷媒通路56との振動差を吸収することができる。また、冷媒通路43aおよび冷媒通路56を安価な配管とすることができ、統合サイクル30のコストを削減することができる。
【0078】
なお、冷媒通路44aを冷媒用フレキシブル配管とし、冷媒通路44bをステンレス配管、アルミ配管などとしても良い。
【0079】
冷媒通路の少なくとも一部に冷媒用フレキシブル配管を用いることで、膨張機37およびコンプレッサ59と凝縮器38とを接続する配管、凝縮器38と冷媒ポンプ32とを接続する配管の長さを短くすることができ、配管における圧損を小さくすることができ、統合サイクル30の効率を良くすることができる。
【0080】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。例えば、振動による相対変位を吸収するための、柔性の大きな通路配管として、一般的な金属配管の一部に(途中に)柔性が大きい冷媒用フレキシブル配管を含んで構成されたものを採用しても良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0081】
2 エンジン
30 統合サイクル(ランキンサイクルシステム)
32 冷媒ポンプ
36 熱交換器
37 膨張機
38 凝縮器
43a 冷媒通路(第1配管)
43b 冷媒通路(第3配管)
44a 冷媒通路(第6配管)
44b 冷媒通路(第4配管)
51 冷凍サイクル
52 コンプレッサ
56 冷媒通路(第2配管)
57 冷媒通路(第5配管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに取り付けられ、冷媒を送出する冷媒ポンプと、
前記エンジンに取り付けられ、前記エンジンの廃熱を前記冷媒に回収する熱交換器と、
前記エンジンに取り付けられ、前記熱交換器によって温度が高くなった前記冷媒を膨張させることによって前記冷媒に回収された前記廃熱を動力に変換する膨張機と、
車体に取り付けられ、前記膨張機によって膨張した前記冷媒を凝縮させる凝縮器とを備えるランキンサイクルシステムにおいて、
前記膨張機と前記凝縮器の間と、前記凝縮器と前記冷媒ポンプの間とを、他と比べて柔性の大きなフレキシブル配管で接続したことを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項2】
前記凝縮器及び前記冷媒を共用する冷凍サイクルを備え、
前記冷凍サイクルに設けられたコンプレッサを前記エンジンに取り付けるとともに、前記膨張機と前記凝縮器の間の配管と、前記コンプレッサと前記凝縮器の間の配管とを、エンジン側に支持した状態で合流させ、当該合流点と前記凝縮器の間をフレキシブル配管で接続したことを特徴とする請求項1に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項3】
前記膨張機の出力軸とエンジン出力軸とが動力伝達可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項4】
エンジンに取り付けられ、前記エンジンの廃熱を冷媒に回収する熱交換器と、
前記エンジンに取り付けられ、前記熱交換器によって温度が高くなった前記冷媒を膨張させることによって前記冷媒に回収された前記廃熱を動力に変換する膨張機と、
車体に取り付けられ、前記膨張機によって膨張した前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器及び前記冷媒を共用するエアコンの冷凍サイクルとを備えるランキンサイクルシステムにおいて、
前記膨張機に接続する第1配管と、
前記第1配管と、前記冷凍サイクルのコンプレッサに接続する第2配管とに接続し、前記凝縮器に前記冷媒を導入する第3配管とを備え、
前記第1配管、前記第3配管のいずれか一方の配管は、もう一方の配管よりも柔性が大きいことを特徴とするランキンサイクルシステム。
【請求項5】
前記コンプレッサは車体に取り付けられ、
前記第1配管は、前記第2配管および前記第3配管よりも柔性が大きいことを特徴とする請求項4に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項6】
前記コンプレッサは前記エンジンに取り付けられ、
前記第1配管および前記第2配管は、前記第3配管よりも柔性が大きいことを特徴とする請求項4に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項7】
前記コンプレッサは前記エンジンに取り付けられ、
前記第3配管は、前記第1配管および前記第2配管よりも柔性が大きいことを特徴とする請求項4に記載のランキンサイクルシステム。
【請求項8】
前記凝縮器によって凝縮した前記冷媒を前記熱交換器に供給する冷媒ポンプと、
前記冷媒ポンプに接続する第4配管と、
前記第4配管と、前記冷凍サイクルの蒸発器に接続する第5配管とに接続し、前記凝縮器から排出された前記冷媒が流れる第6配管とを備え、
前記第4配管、前記第6配管のいずれか一方の配管は、もう一方の配管よりも柔性が大きいことを特徴とする請求項4から7のいずれか一つに記載のランキンサイクルシステム。
【請求項9】
前記膨張機の出力軸と、前記エンジンの出力軸とは動力伝達可能であることを特徴とする請求項4から8のいずれか一つに記載のランキンサイクルシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−76373(P2013−76373A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216772(P2011−216772)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】