説明

ランプ構造体

【課題】ランプハウジングへのランプ部材の組付け作業性を向上させると共にコストを低減する。
【解決手段】合成樹脂製の絶縁シートにより挟着された偏平導体列から成る正極導体と負極導体間に、LED25を取り付けた絶縁配線材11から成るランプ配線材を、治具34によりランプ取付部であるランプハウジング31に設けた突起33を用いて固定する。LED25はランプハウジング31の孔部32からランプハウジング31内に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のランプハウジングにランプ部材を取り付けるためのランプ構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車の後部に装着されるターンシグナルランプ、バックランプ、テールランプ、ストップランプ等の各種ランプへの電力供給は、通常では電線から成るワイヤハーネスを使用した構造となっている。
【0003】
例えば、図11に示すような特許文献1の従来例で示すように、ハウジング1が車体側パネル2に組み付けられるランプ構造が知られている。ハウジング1には、ターンシグナルランプ3aを取り付けるボディ部分1aと、バックランプ3bを取り付けるリフレクタ部分1bとテール・ストップランプ3cを取り付けるリフレクタ部分1cとが設けられ、車体側パネル2には挿通孔2aがリフレクタ部分1aに対向する位置に設けられると共に、張り出し部2bがリフレクタ部分1a、1bの間に設けられている。
【0004】
ハウジング1のリフレクタ部分1a、1b、1cの反対側には、レンズ4a、4b、4cがそれぞれ取り付けられている。また、ランプ3a、3b、3cはソケット5a、5b、5cにそれぞれ保持されると共に、これらのソケット5a、5b、5cは、リフレクタ部分1a、1b、1cにそれぞれ取り付けられている。そして、ソケット5a、5b、5cはコネクタ6a、6b、6cを介して電線7a、電線7b、電線7cにそれぞれ接続され、電線7aの他端にはコネクタ8aが接続され、電線7b、7cの他端には共通のコネクタ8bが接続されている。そして、これらのコネクタ8a、8bは電源側コネクタ9に接続されている。
【0005】
このように、段差を有する部分にランプ3a、3b、3cを設ける場合の電力を供給するための配線は、ランプ1個ずつをハウジングにセットしなければならなく、またその配線についても同様に1個ずつコネクタに接続しなければならないので、取り付け作業が煩雑となる。
【0006】
また、特許文献1に開示されているようなフラット配線材は、列ごとの段差にあわせてフラット配線材を屈曲させてハウジングに付設しているので、前述のものより配線構造が簡略化されているが、デザイン的に曲面を有する車両に合わせてランプが三次元的に複雑に配置された場合は、特許文献1にあるような列ごと(又は、行ごと)にランプが取り付けられたフラット配線材では、取り付け作業の効率アップには限界がある。
【0007】
また、このフラット配線体は複雑な形状の回路であるため、多品種、少量の製品(ランプ構造体)には不向きである。更に、複雑な形状の回路であるため、配線材を作製する場合に、導体として使用しない材料を破棄しなければならず、コストダウンに限界がある。
【0008】
一方、最近では、特許文献2に示すような、平行な一対の導体となる金属層を絶縁層で被覆した配線材を、付設する部位の形状に合わせて屈曲させながら付設する態様が開示されている。確かに、特許文献1よりは導体の形状が簡素化され無駄な材料を出すことはないが、一括して全面に取り付けることができない煩雑さは残っている。
【0009】
また、特許文献3には、複数の組の導体が絶縁層に被覆された配線材の態様が開示されている。この場合に、一方向に対して等間隔の段差がある場合には、その方向に合致した屈曲を与えることで一括して付設することができるが、三次元的つまり行の方向と列の方向に段差がある場合は、一括して付設することは極めて困難である。
【0010】
その他の技術として、従来例のブスバーを用いる場合には、機械的強度は大きくなるものの、近年の高密度に電子部品が搭載される自動車においては、絶縁層で被覆されていないブスバーでは、近接する電子部品とのリード部や、回路と接触しないように或る程度のスペースが必要とされ、小型化には限界がある。
【0011】
【特許文献1】特開平9−148015号公報
【特許文献2】特開2005−322450号公報
【特許文献3】特開2002−270044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1のようなフラットケーブルを用いる場合においては、回路ごとに必要な配線パターンに、板材又は箔材から導体を打ち抜くなどして成形しなければならず、除去すべき無駄な導体部分が多く、少量多品種に対応するには不向きである。また、LED、電灯等のランプ部材を1個ずつリフレクタに固定しなければならず、作業効率の向上には限界がある。
【0013】
更には、例えばリアコンビランプの形状はデザイン性が要求されるので、それに伴って、ランプ部材を取り付ける部位の構造も複雑な形状になる。従って、そのような部位に対してもランプ部材を一括に取り付けることができることが要求される。
【0014】
本発明の目的は、上述した問題点を解消し、リフレクタにランプ部材を一括して取り付けることができるランプ構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係るランプ構造体の技術的特徴は、複数個のランプ部材を取り付けた絶縁配線材をランプハウジングに取り付けるランプ構造体であって、前記絶縁配線材は、横断面形状が平角状の導体から成る正極導体及び負極導体で構成する導体列を複数列並べ、前記導体の外周に絶縁層を被覆し、前記導体列間の前記絶縁層には三次元的に変形可能な手段を設け、前記正極導体と前記負極導体には複数の電気接点部を形成し、前記正極導体と前記負極導体の前記電気接点部間に前記ランプ部材を接続したことにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るランプ構造体によれば、三次元的に変形ができる手段の作用によって、絶縁配線材を三次元的に複雑なランプ取付部位の形状に追従させて、ランプ部材を所望の個所に設置することができる。つまり、三次元的に複雑なランプ取付部位の形状に追従させる際に、絶縁層に変形を阻害する皺などが発生することがない。
【0017】
また、絶縁配線材にランプ部材を設けているので、一括してリフレクタにランプ部材を取り付けることが可能となる。
【0018】
更に、他の回路やリード部との接触等の虞れがなく、小型化が実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図1〜図10に図示の実施例に基づいて詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0020】
図1は本発明のランプ構造体の素材となる配線材の平面図、図2は図1のA−A線に沿った断面図を示している。絶縁配線材11は平角状の断面形状を有する2本1組の複数組の平角導体12が平行に配列され、両面から絶縁層13により被覆されている。また、平角導体12間の絶縁層13には、この絶縁配線材11を三次元的に変形可能とするための孔部14が設けられている。
【0021】
なお、2本1組の平角導体12が複数列設けられ、各組の平角導体12は後述するようにランプ部材に電流を供給するために、一方は正極導体15、他方は負極導体16とされている。
【0022】
平角導体12とは、偏平な形状とすると共に、図3(a)のように角部が略90度であるもの、(b)のように角部を丸くしたもの、(c)、(d)のように角部にバリ12aを有するもの、(e)のようにトラック状のものなどが挙げられる。具体的な寸法としては、幅Xは4mm〜20mm、厚さYは0.01mm〜2mm程度とされている。
【0023】
このような平角導体12を得る手段としては、図3(a)、(b)では母線を四角状のダイス孔を使用する伸線加工、(c)、(d)では板材をスリット加工、(e)では母線(横断面形状が円)を上下方向から圧延する圧延加工、その他に図示はしないが母線を上下左右方向から圧延する圧延加工がある。
【0024】
また、図3(f)のように基材17の表面に平角導体12となる材料を積層し、所定の個所をエッチングで除去して、基材17上に所望の平角導体12を得るエッチング加工法や材料を物理的に切り取る方法がある。
【0025】
平角導体12の外周に絶縁層13を形成させる手段としては、絶縁材料を平角導体12の外周に押出成形によって形成させる方法、シート状の絶縁材料によって平角導体12を挟むことによって形成させる方法などが挙げられる。絶縁材料によって平角導体12を挟着する場合は、対向する絶縁シートの表面に接着剤層を形成することが好ましく、この接着剤層があることによって、図3(c)、(d)のようにバリ12aを有する平角導体12を挟んでも、バリ12aが接着剤層中に吸収されるので、バリ12aによる絶縁層13の損傷が抑制される。このように、絶縁層13を絶縁シートにより作製する場合には、使用できる平角導体12の態様の選択肢が多くなる。
【0026】
その他に、エッチング加工法や物理的に切り取る方法によって得られた平角導体12を使用する場合には、平角導体12を貼り合わせた基材17を絶縁シートとし、平角導体12が形成された側の表面に別の絶縁シートを貼り合せて作製することもできる。
【0027】
絶縁配線材11を三次元的に変形ができる手段は、三次元的な凹凸を有する段差に追従できるものであれば、特に限定する必要はなく、実施例では絶縁層13を貫通する孔部14である。平面から見た孔部14の形状は、特に限定されるものではないが、三次元的に変形できる点で、図1に示すような平角導体12に対し平行部を有する形状のものが好ましい。より三次元的に変形できる点において、孔部14の形状は、台形、平行四辺形、長方形、正方形の中から選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。
【0028】
この孔部14を形成する方法は、図4に示すような孔部のない平角導体12と絶縁層13から成る中間材18を前述した方法により作製した後に、所定の個所の絶縁層13に孔部14を打抜いたり、或いは予め孔部14を形成した絶縁シートにより平角導体12を挟むことで作製できる。なお、孔部14の数、大きさは付設する個所の三次元形状に合わせて、適宜に設計すればよい。
【0029】
また、平角導体12は上述した正極導体15、負極導体16を1組とするものに限らず、図5に示すように3本の平角導体12を1組として複数組設けることもできる。つまり2本の正極導体15と、1本の負極導体16との組合わせで1組とすることもできる。或いは、1本の正極導体15、2本の負極導体16としてもよい。
【0030】
図6は絶縁配線材11に接続部を設けた状態の平面図である。この絶縁配線材11の絶縁層13は、絶縁シートにより挟着する態様で作製されたものであって、平角導体12は正極導体15、負極導体16から成る3組の導体列21a、21b、21cとされている。各導体列21a、21b、21cの複数個所には、電子部品との電気接点部22a、22bが形成されている。電気接点部22a、22bは予め絶縁層13に電気接点部22a、22b用の孔を形成したものを用意するか、後から平角導体12上の絶縁層13を除去することにより形成できる。また、各導体列21a、21b、21cごとに正極導体15、負極導体16の端部に電極端23a、23bが形成されている。
【0031】
各電気接点部22a、22bの近傍の各導体列21a、21b、21cの正極導体15、負極導体16間の絶縁層13には、後述するハウジングへの固定のために複数個の取付孔24が形成されている。取付孔24は絶縁性を確保できるのであれば絶縁層13、平角導体12を共に貫通したものであってもよく、つまりは絶縁配線材11内であれば何処に形成してもよい。取付孔24は正極導体15、負極導体16の導体間で、かつ電気接点部22a、22bの上下にそれぞれ形成させることで、電子部品のハウジングへの取り付けが正確にかつ容易にでき、電子部品をハウジングに安定して設置できる点で好ましい。
【0032】
図7は絶縁配線材11にLEDを取り付けたランプ構造体の平面図である。上述のようにして作製した絶縁配線材11の対応する電気接点部22a、22b間に、ランプ部材であるLED25の正負電極がスポット溶接により接続、固定されている。なお、この接続は他にレーザ溶接、ハンダ付け、かしめ、クリンティングなどの手段を用いることができる。
【0033】
また、導体列21aの電極端23bと導体列21bの電極端23a、導体列21bの電極端23bと導体列21cの電極端23aが、リード線26により接続され、導体列21aの電極端23aは図示しない電源の正極に、導体列21cの電極端23bは電源の負極に接続されている。或いは、電極端23a、23bにはリード線26に取り付けた接続端子を溶接などにより直接に接続することもできる。
【0034】
なお、リード線26を使用することなく、別個のフラットケーブルに設けた導体を、導体列21a、21b、21cと交差する方向に積層して配列し、正極導体15、負極導体16との交点において電気的に接続するようにすることもできる。
【0035】
このランプ構造体を例えば自動車の合成樹脂材料から成るランプハウジング31にLED25を取り付ける場合に、図8に示すようにランプ構造体に取り付けたLED25をランプ孔32からランプハウジング31内に挿入する。そして、ランプハウジング31から外側に突出して設けられた突起33を、取付孔24に挿入し位置決めする。
【0036】
続いて、図9に示すようにヒータを備えた治具34を用いて突起33を溶融・固化する。最終的に、図10に示すように突起33が変形した溶融部33’により絶縁配線材11をハウジング31に固定する。
【0037】
このように、本実施例では絶縁層13に三次元的に変形ができる手段を設けることによって、ランプ構造体がランプハウジング31の段差に追従するように三次元的に変形するので、LED25をランプハウジング31に一括して配置し固定することができる。そして、導体列21aの電極端23aと導体列21cの電極端23b間に給電を行うと、各LED25が点灯する。
【0038】
このように、ランプ構造体はリアコンビネーションランプ、コーナーランプなど三次元的にランプ部材を配列するために好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】絶縁配線材の平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】切断し打ち抜いた状態の平角導体の断面図である。
【図4】孔部を設けていない状態の絶縁配線材の平面図である。
【図5】他の形態の絶縁配線材の平面図である。
【図6】接続部を形成した絶縁配線材の平面図である。
【図7】LEDを接続した絶縁配線材の平面図である。
【図8】ランプ構造体をランプハウジングに取り付ける状態の説明図である。
【図9】ランプ構造体をランプハウジングに取り付けた状態の説明図である。
【図10】ランプ構造体をランプハウジングに固定した状態の説明図である。
【図11】従来例の構成図である。
【符号の説明】
【0040】
11 絶縁配線材
12 平角導体
13 絶縁層
14 孔部
15 正極導体
16 負極導体
21a、21b、21c 導体列
22a、22b 電気接点部
23a、23b 電極端
24 取付孔
25 LED
31 ランプハウジング
33 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のランプ部材を取り付けた絶縁配線材をランプハウジングに取り付けるランプ構造体であって、前記絶縁配線材は、横断面形状が平角状の導体から成る正極導体及び負極導体で構成する導体列を複数列並べ、前記導体の外周に絶縁層を被覆し、前記導体列間の前記絶縁層には三次元的に変形可能な手段を設け、前記正極導体と前記負極導体には複数の電気接点部を形成し、前記正極導体と前記負極導体の前記電気接点部間に前記ランプ部材を接続したことを特徴とするランプ構造体。
【請求項2】
前記三次元的に変形可能な手段は、貫通する孔部であることを特徴とする請求項1に記載のランプ構造体。
【請求項3】
前記孔部の形状は前記導体と平行である平行部を有することを特徴とする請求項2に記載のランプ構造体。
【請求項4】
前記孔部の形状は、台形、平行四辺形、長方形、正方形の中から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項2又は3に記載のランプ構造体。
【請求項5】
前記絶縁配線材に位置合わせ孔を形成し、前記ランプハウジングから突出した突起を前記位置合わせ孔に挿入し、前記絶縁配線材を前記ランプハウジングに位置決めして固定したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のランプ構造体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1つの請求項に記載のランプ構造体を用いたリアコンビネーションランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−110834(P2009−110834A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282870(P2007−282870)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】