説明

ランプ用ガラス管、低圧放電ランプ、バックライトユニットおよび液晶表示装置

【課題】本発明は、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスをガラス材料として用いた場合でも、そのガラスにクラックが発生するのを防止することのできるランプ用ガラス管、低圧放電ランプ、バックライトユニットおよび液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために本発明のランプ用ガラス管は、熱膨張係数が60[K-1]〜110[K-1]であって、少なくともその外表面層がイオン交換層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ用ガラス管、低圧放電ランプ、バックライトユニットおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図16は、従来の低圧放電ランプ、例えば、冷陰極蛍光ランプ1の管軸X1を含む断面図である。従来の冷陰極蛍光ランプ1は、例えば液晶テレビ等の液晶表示装置の光源(バックライト)として多用されている。この種の冷陰極蛍光ランプ1は、ガラスバルブ2とこのガラスバルブ2内の両端部に設けられた電極3とを備えており、特に液晶表示装置の光源として使用するために例えば内径が1[mm]〜6[mm]の細径で、かつ例えば300[mm]〜1500[mm]の長尺な形状を有している。近時、液晶テレビは大型化が進んでいることから、より一層長尺な冷陰極蛍光ランプ1が求められている。
【0003】
冷陰極蛍光ランプ1では、このように細径で、かつ長尺な形状を有するが故にガラスの加工性等の問題から、数多くある種類の中でもホウ珪酸ガラス等の硬質ガラスからなるガラスバルブ2が用いられている(例えば特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2005−56707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
もっとも、冷陰極蛍光ランプ1のガラスバルブ2として、一般照明用の蛍光ランプで用いられているソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスの適用可能性自体についても多く提案されている。これら軟質ガラスへの適用は例えばコスト面で有利になる可能性がある。
【0005】
しかし、実際にこれらの軟質ガラスを適用し、実用化するには全く至っていないのが現状である。その理由の一つとして、これらの軟質ガラスは、前記硬質ガラスに比して機械的強度が弱いことが挙げられる。つまり、上記したように冷陰極蛍光ランプ1は細径で、かつ長尺であるが故にランプの製造プロセスや輸送過程において、ガラスバルブ2にクラックが発生しやすいからである。
【0006】
そこで、本発明は、このような提案レベルにとどまっていた状況を打破し、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスをガラス材料として用いた場合でも、そのガラスにクラックが発生するのを防止することのできるランプ用ガラス管、低圧放電ランプ、バックライトユニットおよび液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るランプ用ガラス管は、熱膨張係数が60[K-1]〜110[K-1]であって、少なくともその外表面層がイオン交換層であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るランプ用ガラス管は、前記イオン交換層におけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度は、非イオン交換層におけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度よりも高いことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るランプ用ガラス管は、前記アルカリ金属はカリウムであることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るランプ用ガラス管は、前記イオン交換層の厚みが5[μm]以上であってもよい。
【0011】
また、本発明に係るランプ用ガラス管は、前記イオン交換層は、第1イオン交換層および前記第1イオン交換層の外側に位置する第2イオン交換層の2層からなり、前記第1イオン交換層におけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度が非イオン交換層におけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度よりも高く、前記第2イオン交換層におけるアルカリ金属の濃度は、前記第1イオン交換層のアルカリ金属の濃度よりも低いことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るランプ用ガラス管は、酸化ホウ素の含有率が0[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るランプ用ガラス管は、アルミナの含有率が0[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るランプ用ガラス管は、アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の含有率の合計が10[mol%]以上30[mol%]以下の範囲内であって、かつ酸化ストロンチウムと酸化バリウムの含有率の合計が0[mol%]以上12[mol%]以下の範囲内であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るランプ用ガラス管は、内径が1[mm]以上8[mm]以下、厚みが0.2[mm]以上0.6[mm]以下、長さが300[mm]以上2000[mm]以下であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るランプ用ガラス管の製造方法は、少なくともガラス管をナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の融解塩に浸漬させる工程を含む第1イオン交換層形成工程と、少なくとも前記第1イオン交換層形成工程を経たガラス管を前記第1イオン交換層形成工程で用いたアルカリ金属よりもイオン半径の小さいアルカリ金属の融解塩に浸漬させる工程を含む第2イオン交換層形成工程を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る低圧放電ランプは、前記ランプ用ガラス管を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るバックライトユニットは、前記低圧放電ランプを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る液晶表示装置は、前記バックライトユニットを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るランプ用ガラス管、低圧放電ランプ、バックライトユニットおよび液晶表示装置は、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスをガラス材料として用いた場合でも、そのガラスにクラックが発生するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るランプ用ガラス管の管軸X100を含む断面図を図1(a)に、そのA部分の要部拡大断面図を図1(b)にそれぞれ示す。本発明の第1の実施形態に係るランプ用ガラス管100(以下、単に「ガラス管100」という)は、熱膨張係数が60[K-1]〜110[K-1]、例えば92.5[K-1]であって、外表面層の一部が後述するイオン交換処理によって形成されたイオン交換層100aと、イオン交換されていない本来のガラス組成を有する非イオン交換層100bとから形成される。
【0022】
<イオン交換層の説明>
イオン交換層100aでは、ナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度が非イオン交換層100bにおけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度よりも高くなっている。以下、ナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の一例としてカリウムを用いた場合について、図2を用いてイオン交換層100aの形成工程を説明する。
【0023】
<浸漬工程>
まず、図2(a)に示すようにイオン交換処理前のガラス管(以下、単に「ガラス管101」という)を準備する。ガラス管101は、例えば、表1に示す組成のもので、全長が730[mm]、外径が4[mm]、内径が3[mm]、肉厚が0.5[mm]である。
【0024】
このガラス管101を、350[℃]〜450[℃]に加熱した硝酸カリウム(KNO3)溶融塩102の入った浴槽103に例えば10[min]〜120[min]浸漬させる。ガラス管101を硝酸カリウム溶融塩102に浸漬させる時間によって、イオン交換層100aの厚みを変化させることができる。なお、ガラス管101の外表面層にのみイオン交換層100aを形成したい場合には、ガラス管101の両端開口部にソーダガラスや石英等の栓をすることが好ましい。
【0025】
<洗浄工程>
次に図2(b)に示すように、イオン交換処理後のガラス管100を水104の入った浴槽105で洗浄することで、ガラス管100の表面に付着した余分な硝酸カリウム溶融塩102を除去する。
【0026】
<乾燥工程>
次に図2(c)に示すように、ガラス管100をヒータ106等で乾燥させることにより、洗浄工程で付着した水分を除去する。
【0027】
以上の工程を経ることにより、ガラス管100が完成される。
【0028】
<イオン交換層の形成のイメージ>
続いて、浸漬工程初期のガラス管101の外表面層の要部拡大断面のイメージ図を図3(a)に、浸漬工程終期のガラス管100の外表面層の要部拡大断面のイメージ図を図3(b)にそれぞれ示す。図3(a)に示すように、浸漬工程の初期においては、ガラス管101の外表面層には、ガラス管101の他の部分と同じように、ナトリウムイオン(Na+)が分布している。これに対して、図3(b)に示すように、浸漬工程終期においては、ガラス管100の外表面層のナトリウムイオンの一部が硝酸カリウム溶融塩に含まれるカリウムイオン(K+)と交換され、ガラス管100の外表面層にはガラス管100の他の部分よりもカリウムイオンが多く分布している。このカリウムイオンのイオン半径は、ナトリウムイオンのイオン半径よりも大きい。したがって、このようなイオン交換層100aでは、イオン半径が小さなナトリウムイオンが収まっていた部分にそのナトリウムイオンよりもイオン半径の大きなカリウムイオンが収まることで圧縮応力が働いている。このように圧縮応力の働いているイオン交換層100aがガラス管100の外表面層に形成されることで、ガラス管100が外部からの衝撃に対して強くなり、ガラス管100の機械的強度を向上し、クラックが発生するのを防止することができる。
【0029】
<非イオン交換層の説明>
非イオン交換層100bの具体的な組成比率を表1に示す。
【0030】
なお、表1に記載の組成比率は、酸化物換算したものである。以下、本実施形態や他の実施形態において、組成比率や含有比率の数値の記載のあるものについては、全て酸化物換算した値を用いている。また、イオン交換層100aは、ガラス管100の外表面層に形成されているにすぎないため、ガラス管100と非イオン交換層100bの組成比率は実質的に同一のものである。
【0031】
【表1】

【0032】
もっとも、非イオン交換層100bの組成は、表1に記載のものに限られず、その熱膨張係数が60[K-1]以上110[K-1]以下のものであればよい。
【0033】
しかし、非イオン交換層100bの酸化ナトリウムの含有率は、5[mol%]以上15[mol%]以下の範囲内であることが好ましい。この場合、ガラス管100の中にイオン交換されるナトリウムが十分に含まれているため、イオン交換層100aを形成しやすくすることができる。
【0034】
また、非イオン交換層100bの酸化ホウ素(B23)の含有率は、0[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内であることが好ましい。この場合、ナトリウムの析出を抑制してしまうホウ素の量を抑制することで、ガラス管100の中のナトリウムイオンの挙動を活性化させることができ、イオン交換層100aを形成しやすくすることができる。特に非イオン交換層100bの酸化ホウ素(B23)の含有率は、0[mol%]以上3[mol%]以下の範囲内であることがより好ましい。この場合、ナトリウムの析出を抑制してしまうホウ素の量をさらに抑制することで、ガラス管100の中のナトリウムイオンの挙動をさらに活性化させることができ、イオン交換層100aを形成しやすくすることができる。
【0035】
また、非イオン交換層100bのアルミナ(Al23)の含有率は、0[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内であることが好ましい。この場合、ナトリウムの析出を抑制してしまうアルミニウムの量を抑制することで、ガラス管100の中のナトリウムイオンの挙動を活性化させることができ、イオン交換層100aを形成しやすくすることができる。特に非イオン交換層100bのアルミナ(Al23)の含有率は、1.5[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内であることがより好ましい。この場合、ガラス管100の中のアルミニウムイオンが4配位のものよりも6配位のものが増加する。アルミニウムイオンは、4配位のものよりも6配位のものの方が各結合の強度が弱くなるため、ガラス管100の中のアルミニウム以外の他の成分、例えばナトリウムイオンの結合にも影響を及ぼし、ナトリウムイオンが溶出しやすく、イオン交換層100aを形成しやすくすることができる。
【0036】
また、非イオン交換層100bの酸化ホウ素(B23)の含有率が0[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内であって、かつアルミナ(Al23)の含有率が1.5[mol%]以上4[mol%]以下の範囲内であることが好ましい。この場合、ガラス管100の中のホウ素の一部が共有結合からイオン結合へと変換され、各結合の結合強度が弱くなるため、ガラス管100の中のホウ素以外の他の成分、例えばナトリウムイオンの結合にも影響を及ぼし、ナトリウムイオンが溶出しやすく、イオン交換層100aを形成しやすくすることができる。
【0037】
また、非イオン交換層100bの中のアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の含有率の合計が10[mol%]以上30[mol%]以下の範囲内であって、かつ酸化ストロンチウム(SrO)と酸化バリウム(BaO)の含有率の合計が0[mol%]以上12[mol%]以下の範囲内であることが好ましい。この場合、ストロンチウムイオンとバリウムイオンは、ナトリウムイオンに比べてイオン半径が大きいため、ナトリウムイオンがガラス中から外部に移動するのを抑制し、イオン交換層100aの形成が妨げられるのを防止することができる。
【0038】
<実験>
発明者らは、上記イオン交換処理を施したガラス管A1,A2,A3と未処理のガラス管Bとを破壊試験にかけて、両者の破壊強度を調べた。
【0039】
実験に用いたガラス管のガラス材料は、いずれも、表1にガラスaとして示す鉛フリーガラスで、全長が150[mm]、外径が4.0[mm]、内径が3.0[mm]である。イオン交換処理を施すにあたっては、加熱温度約540[℃]で、硝酸カリウム溶融塩に浸漬してイオン交換処理を行った。ただし、ガラス管A1,A2,A3では、下記のとおりそれぞれ浸漬時間のみが異なる。
【0040】
(1)ガラス管A1:浸漬時間120[min]
(2)ガラス管A2:浸漬時間180[min]
(3)ガラス管A3:浸漬時間240[min]
破壊試験は、万能試験機を使用し、図4に示すように、70[mm]のスパンで支持部材107によって支持されたガラス管の中央に圧子108により集中荷重を与え、ガラス管に曲げ荷重を与える3点曲げ法によって行った。そして、ガラス管が破壊した時(割れた時)の荷重値[kgf]を破壊強度として記録した。なお、集中荷重を加えるための圧子の移動速度は1[mm/min]とした。
【0041】
そして、上記4種類のガラス管A1,A2,A3,Bの各々を12[本]ずつ用意して試験を行った。試験結果を表2に示す。なお、表2に示すのは、各種ガラス管A1,A2,A3,Bに対するワイブル判定における50[%]破壊強度とワイブル係数である。50[%]破壊強度の値が大きいほど、ガラス管の機械的強度が強く、ワイブル係数が大きいほど、その機械的強度のばらつきが小さいことを示している。
【0042】
【表2】

【0043】
表2に示すように、ガラス管A1、ガラス管A2およびガラス管A3はともにイオン交換未処理のガラス管Bに比べて機械的強度が向上していることがわかる。
【0044】
ここで、それぞれのガラス管A1,A2,A3,Bの外表面層についての元素分析を日本電子株式会社製のJMX−8900により行い、ガラス管A1,A2,A3,Bの外表面層のナトリウムとカリウムの濃度を調べた。
【0045】
まず、ガラス管A1,A2,A3,Bの元素分析の測定方法を図6に示す。ガラス管A1,A2,A3,Bをその管軸方向の中央部で、管軸に対して垂直に切断し、管軸方向の厚みsが10[mm]の測定試料109を作製する。測定点は、その切断面における外表面層のうち、等間隔にあいた任意の4[箇所](外表面層1〜外表面層4)であって、一辺100[μm]の正方形で囲まれた部分である。測定結果は、その4[箇所]での値の平均値で算出した。
【0046】
測定結果を図5(a1)〜(a4)、(b1)〜(b4)に示す。図5(a1)〜(a4)はナトリウムの濃度変化を、図5(b1)〜(b4)はカリウムの濃度変化をそれぞれ示す。図5(a1)および(b1)はイオン交換未処理のガラス管Bを、図5(a2)および(b2)は浸漬時間120[min]でイオン交換処理を施したガラス管A1を、図5(a3)および(b3)は浸漬時間180[min]でイオン交換処理を施したガラス管A2を、図5(a4)および(b4)は浸漬時間240[min]でイオン交換処理を施したガラス管A3をそれぞれ示す。
【0047】
なお、図5(a1)〜(a4)、(b1)〜(b4)では、横軸に最外表面からの深さ[μm]をとって、ナトリウムの濃度変化を色の濃淡で表している。ただし、図面上、色の濃淡の境界が明確で、かつ直線的になっているが、これは模式化したものであって実際の濃度変化は連続的でその境界が明確に認識できるとは限らない。
【0048】
図5(a1)〜(a4)から明らかなように、イオン交換処理を施したガラス管A1,A2,A3では、外表面層におけるナトリウムの濃度がイオン交換未処理のガラス管Bのナトリウムの濃度を下回り、かつ最外表面に近づくほど低く、しかも浸漬時間が長いほど、ガラス管Bのナトリウム濃度よりも低濃度の領域が深くなっている。これとは反対に、図5(a1)〜(a4)から明らかなように、ガラス管A1,A2,A3では、外表面層におけるカリウムの濃度がガラス管Bのカリウムの濃度を上回り、最外表面に近づくほど高く、しかも浸漬時間が長いほど、ガラス管Bのカリウム濃度よりも高濃度の領域が深くなっている。
【0049】
ここで、イオン交換層100aを、カリウムの含有率が非イオン交換層100bにおけるカリウムの含有率に対して1[割]以上高い領域であると定義した場合、そのイオン交換層100aの厚みが5[μm]以上であることが好ましい。プロセス上、イオン交換層の厚みにばらつきが生じるおそれがあり、そのばらつきを考慮してもガラス管100全体の機械的強度を十分に向上させるためには、その厚みが5[μm]以上あることが好ましいからである。さらには、イオン交換層100aの厚みが30[μm]以上であることがより好ましい。ガラス管100の機械的強度がより向上し、ガラス管100の外表面に傷がつきにくく、外的負荷によってガラス管100が毀損しにくくなるからである。
【0050】
なお、イオン交換層100aを、カリウムの含有率が非イオン交換層100bにおけるカリウムの含有率に対して2[割]以上高い領域であると定義した場合、上記した理由と同様により、そのイオン交換層100aの厚みが2[μm]以上であることが好ましく、さらには20[μm]以上であることがより好ましい。
【0051】
なお、非イオン交換層100bにおけるカリウムの含有率は、ガラス管100におけるイオン交換処理の施されていない部分のカリウムの含有率であるが、以下の測定方法により測定することが好ましい。すなわち、図6に示す測定試料109の切断面における厚み方向中央部のうち、等間隔にあいた任意の4[箇所](中央部1〜中央部4)であって、一辺100[μm]の正方形で囲まれた部分を測定する。そして、その4[箇所]での値の平均値で測定結果を算出する。イオン交換層100aは、ガラス管100の表面から順次形成されていくため、ガラス管100の内表面層および外表面層の両方をイオン交換処理する場合、ガラス管100の厚み方向の中央部が最もイオン交換されにくいからである。ただし、ガラス管100の外表面層のみをイオン交換処理する場合には、ガラス管100の内表面側が最もイオン交換されにくいため、測定点の中心がガラス管100の内表面から100[μm]内側であって、等間隔にあいた任意の4[箇所]を測定することが好ましい。ここで、測定点の中心がガラス管100の内表面から100[μm]内側としたのは、ガラス管100の内表面は、外気にさらされるため、その測定値が不安定になるおそれがあるためである。
【0052】
なお、本実験では、ガラス管100の組成として表1に示すガラスaのものを用いたが、これに限らず例えば表1に示すガラスb、cの組成のものでも同様の結果が得られた。
【0053】
<小括>
上記のとおり、本発明の第1の実施形態に係るランプ用ガラス管100の構成によれば、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスをその材料として用いた場合でも、そのガラスにクラックが発生するのを防止することができる。
【0054】
ところで、液晶表示装置は、薄型でかつ大型化の傾向にあり、その内部に搭載されるバックライトユニットおよびバックライトに対しても同様の傾向がある。これを実現するために、冷陰極蛍光ランプ、外部電極型蛍光ランプ、熱陰極型蛍光ランプ等のバックライトに用いるガラス管は、細管で長尺のものが求められる。具体的には、内径が1[mm]以上8[mm]以下、厚みが0.2[mm]以上0.6[mm]以下、長さが300[mm]以上2000[mm]以下である。しかし、細管で長尺にするほどガラス管100にかかる負荷が大きくなり、ガラス管100の機械的強度がより求められるようになる。本発明の第1の実施形態に係るランプ用ガラス管は、このような細管で長尺なガラス管に対してその効果を最も発揮し、ガラス管を移送する際の負荷や、バックライトユニットに挿入する際の負荷や、バックライトユニットに挿入後に移送する際の負荷等によって毀損するのを防止することができる。
【0055】
また、ガラス管100の外表面層だけでなく、内表面層にもイオン交換層が形成されている場合、ガラス管100の機械的強度をさらに向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、ナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属としてカリウムについて詳細に説明したが、この他にもルビジウム(Rb)やセシウム(Cs)のようなアルカリ金属を適用することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸X200を含む断面図を図7(a)に、そのB部分の要部拡大断面図を図7(b)にそれぞれ示す。本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200(以下、単に「ランプ200」という)は、冷陰極蛍光ランプであって、ガラスバルブ201と、このガラスバルブ201内の両端部に設けられた内部電極3と、一端部がこの内部電極3に接続され、かつ他端部がガラスバルブ201の管端から外側に導出しているリード線202とで構成されている。
【0058】
<ガラスバルブの説明>
ガラスバルブ201は、本発明の第1の実施形態に係るランプ用ガラス管100を加工したものであって、管軸X200に対して垂直に切った断面が円環形状で、全長が730[mm]、外径が4[mm]、内径が3[mm]、肉厚が0.5[mm]である。ガラスバルブ201は、例えばその両端部がガラスビード203により封止されている。なお、ガラスバルブ201の封止は、ピンチシール法等の公知の種々の手法を用いることができる。
【0059】
ガラスバルブ201の内面には蛍光体層204が形成されている。蛍光体層204は、例えば赤色蛍光体(Y23:Eu2+)、緑色蛍光体(LaPO4:Ce3+,Tb3+)および青色蛍光体(BaMg2Al1627:Eu2+)からなる希土類蛍光体で形成されている。
【0060】
なお、ガラスバルブ201の外側の端とこの端に近い方の蛍光体層204の端との距離すなわち、蛍光体層204が形成されていないガラスバルブ201の領域の長さがガラスバルブ201の両側で異なっていることが好ましい。ガラスバルブ201が、細管で長尺である場合、ガラスバルブ201の内面に膜厚の均一な蛍光体層204を形成するのが難しくなる。つまり、蛍光体層204の厚みは、ガラスバルブ201の長手方向で均一とならず、例えば一端側から他端側に行くにつれて厚くなる。このようなランプ200を複数本バックライトユニット(図示せず)に並べて任意の方向で組み込んだ場合、バックライトユニット全体として輝度むらが起こるおそれがある。これを防止するためには、バックライトユニットに組み込むランプ200の管軸方向の向きを一本ずつ交互に逆向きにする必要がある。または、ランプ200を1[本]だけ使用する場合にもランプ200の方向に応じた光学系の補正が必要である。つまり、いずれの場合にもランプ200をソケット(図示せず)に自動挿入するためには、ランプ200の方向を自動的に判別できることが必要となる。そこで、ランプ200の方向を自動的に判断する方法として、例えばセンサにより、ランプ200の両端部におけるガラスバルブ201の外側の端とこの端に近い方の蛍光体層204の端との距離を識別する方法が考えられる。なお、その距離の差は2[mm]以上であることが好ましい。センサで十分に識別できる長さであり、識別ミスがほとんど起こらないからである。
【0061】
なお、ガラスバルブ201の内面と蛍光体層204との間には、例えば、酸化イットリウム(Y23)、アルミナ(Al23)、酸化カルシウム(CaO)、シリカ(SiO2)等の金属酸化物による保護膜が形成されていてもよい。
【0062】
ガラスバルブ201の内部には、例えば、約2[mg]の水銀、および、希ガスとして約8[kPa](20[℃])のネオンとアルゴンとの混合ガス(Ne95[%]+Ar5[%])がそれぞれ封入されている。なお、混合希ガスの分圧比はこれに限らず、ネオンを60[%]〜99.9[%]の範囲で設定し、残部をアルゴンで占めるようにしても構わない。また、ガス圧も6[kPa]〜18[kPa]の範囲で変更してもよい。
【0063】
<内部電極の説明>
内部電極3は、例えばニッケル(Ni)製の有底筒状のホロー電極であって、全長が5.2[mm]、外径が2.7[mm]、内径が2.3[mm]、肉厚が0.2[mm]である。なお、この内部電極3の材料としては、ニッケルに限定されず、例えばニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)またはタングステン(W)であってもよい。この内部電極3は、その管軸とガラスバルブ201の管軸とがほぼ一致するように配置されており、その外面とガラスバルブ201の内面との間隔が全域に亘ってほぼ均一となっている。
【0064】
内部電極3の外面とガラスバルブ201の内面との間隔は、0.2[mm]以下が好ましく、例えば0.15[mm]に設定されている。このように間隔を0.2[mm]以下に規定することにより、点灯中、内部電極3の外面とガラスバルブ201の内面との間に形成される空間に放電が入り込まず、内部電極3の内側のみで放電が起こる。したがって、点灯中の放電が内部電極3の外側に移行しにくくなり、ガラスバルブ201の内面への、過剰のスパッタリングを抑制して水銀の消耗速度を抑えることができ、ランプ200の長寿命化を図ることができる。また、放電がリード線202側へ回り込むことを防止することにより、リード線202の消耗を抑制することができる。
【0065】
<リード線の説明>
リード線202は、例えば、ジュメット製の内部リード線202aと半田等に付着し易いニッケル(Ni)製の外部リード線202bとの継線からなり、内部リード線202aと外部リード線202bとの接合面がガラスバルブ201の外面とほぼ面一である。すなわち、内部リード線202aは、その一端部がホロー状の内部電極3の底部に電気的かつ機械的に接続され、外部リード線202bと継線されている他端部側の大半がガラスビード203に封着されている。外部リード線202bは、実質的に全体がガラスバルブ201の外部に位置している。内部リード線202aは、例えば全長が3[mm]、線径が1.0[mm]である。外部リード線202bは、例えば全長が10[mm]、線形が0.8[mm]である。
【0066】
なお、リード線202の構成は上記構成に限定されず、例えば、内部リード線202aと外部リード線202bとが分けられておらず、例えば鉄とニッケルとの合金からなる一本線で構成されていてもよいし、または内部リード線202aあるいは外部リード線202bがさらに複数の線を継線したものでもよい。
【0067】
<小括>
上記のとおり、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200の構成によれば、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスをガラスバルブ201の材料として用いた場合でも、ガラスバルブ201にクラックが発生するのを防止することができる。
【0068】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るランプ用ガラス管の管軸X300を含む断面図を図8(a)に、そのC部分の要部拡大断面図を図8(b)にそれぞれ示す。本発明の第3の実施形態に係るランプ用ガラス管300(以下、単に「ガラス管300」という)は、熱膨張係数が60[K-1]〜110[K-1]、例えば92.5[K-1]であって、外表面層の一部が後述するイオン交換処理によって形成されたイオン交換層300aと、イオン交換されていない本来のガラス組成を有する非イオン交換層100bとから形成される。ガラス管300は、イオン交換層300aを除いては、本発明の第1の実施形態に係るランプ用ガラス管と実質的に同一の構成を有するため、イオン交換層300aについて詳細に説明し、それ以外の点については省略する。
【0069】
<イオン交換層の説明>
イオン交換層300aは、第1イオン交換層300bおよび第1イオン交換層300bの外側に位置する第2イオン交換層300cの2層からなり、第1イオン交換層300bにおけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度が非イオン交換層100bにおけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度よりも高く、第2イオン交換層300cにおけるアルカリ金属の濃度は、第1イオン交換層300bのアルカリ金属の濃度よりも低くなっている。以下、ナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属としてカリウムを用いた場合について、図9を用いてイオン交換層300aの形成工程を説明する。
【0070】
<第1浸漬工程>
まず、図9(a)に示すように、イオン交換処理前のガラス管101を準備する。なお、ガラス管101は、本発明の第1の実施形態に係るランプ用ガラス管100で用いたものと実質的に同一の表1に示す組成のもので、全長が730[mm]、外径が4[mm]、内径が3[mm]、肉厚が0.5[mm]のものである。このガラス管101を、350[℃]〜450[℃]に加熱した硝酸カリウム(KNO3)溶融塩301の入った浴槽302に例えば60[min]〜240[min]浸漬させる。ガラス管101を硝酸カリウム溶融塩301に浸漬させる時間によって、第1イオン交換層300bの膜厚を変化させることができる。
【0071】
<第1洗浄工程>
次に、図9(b)に示すように、第1浸漬工程後のガラス管303を水304の入った浴槽305で洗浄することで、ガラス管303の表面に付着した余分な硝酸カリウム溶融塩301を除去する。
【0072】
<第1乾燥工程>
次に、図9(c)に示すように、ガラス管303をヒータ306等で乾燥させることにより、洗浄工程で付着した水分を除去する。
【0073】
<第2浸漬工程>
次に、図9(d)に示すように、ガラス管303を、350[℃]〜450[℃]に加熱した硝酸ナトリウム(NaNO3)溶融塩307の入った浴槽308に例えば60[min]〜240[min]浸漬させる。ガラス管303を硝酸ナトリウム溶融塩307に浸漬させる時間によって、第2イオン交換層300cの膜厚を変化させることができる。
【0074】
<第2洗浄工程>
次に図9(e)に示すように、第2浸漬工程後のガラス管300を水309の入った浴槽310で洗浄することで、ガラス管300の表面に付着した余分な硝酸ナトリウム溶融塩307を除去する。
【0075】
<第2乾燥工程>
次に図9(f)に示すように、ガラス管300をヒータ311等で乾燥させることにより、洗浄工程で付着した水分を除去する。
【0076】
以上の工程を経ることによりガラス管300が完成される。
【0077】
<イオン交換層の形成のイメージ>
次に、イオン交換層300aがガラス管300の外表面層に形成される過程について説明する。第1浸漬工程初期のガラス管101の外表面層の要部拡大断面のイメージ図を図10(a)に、第1浸漬工程終期のガラス管303の外表面層の要部拡大断面のイメージ図を図10(b)に、第2浸漬工程終期のガラス管300の外表面層の要部拡大断面のイメージ図を図10(c)にそれぞれ示す。図10(a)に示すように、ガラス管101の外表面層には、ガラス管101の他の部分と同じように、ナトリウムイオン(Na+)が分布している。これに対して、図10(b)に示すように第1浸漬工程終期には、ナトリウムイオンの一部が、硝酸カリウム溶融塩に含まれるカリウムイオン(K+)とイオン交換されるため、ガラス管303の外表面層には、ガラス管303の他の部分よりもカリウムイオンが多く分布した第1イオン交換層300bが形成される。カリウムイオンのイオン半径は、ナトリウムイオンのイオン半径よりも大きい。したがって、このような第1イオン交換層300bでは、イオン半径が小さなナトリウムイオンが収まっていた部分にそのナトリウムイオンよりもイオン半径の大きなカリウムイオンが収まることで圧縮応力が働くこととなる。このように圧縮応力の働いている第1イオン交換層300bがガラス管303の外表面層に形成されることで、ガラス管303が外部からの衝撃に対して強くなり、ガラス管303の機械的強度を向上させることができる。次に、図10(c)に示すように、第2浸漬工程終期には、第1イオン交換層300bにおける外表面層のカリウムイオンがナトリウムイオンにより置換され、第2イオン交換層300cが形成される。これにより、第2イオン交換層300cに働いている圧縮応力は第1イオン交換層300bよりも小さく、第2イオン交換層300cには、傷等が入りやすい構造となっている。このようにイオン交換層300aが、大きな圧縮応力の働いている第1イオン交換層300bとその外側の小さな圧縮応力の働いている第2イオン交換層300cとで構成されていることで、ランプ用ガラス管300の外面に細かな傷がついても、その傷に起因してクラックに至るのを防止することができる。
【0078】
ここで、第1イオン交換層300bを、カリウムの含有率が非イオン交換層100bにおけるカリウムの含有率に対して1[割]以上高い領域であると定義し、第2イオン交換層300cを、第1イオン交換層の外側でカリウムの含有率が第1イオン交換層300bのカリウムの含有率よりも低い領域であると定義した場合、第1イオン交換層300bは、ガラス管300の十分な機械的強度を得るためには10[μm]以上であることが好ましい。さらに、第1イオン交換層300bは、20[μm]以上であることがより好ましい。この場合、ガラス管300の機械的強度がさらに向上し、外的負荷によって、ガラス管300が毀損しにくくなるからである。
【0079】
また、第2イオン交換層300cは、10[μm]以上であることがより好ましい。この場合、ガラス管300の表面に傷が入ったとしても、その傷が第2イオン交換層300cよりも内側に届きにくくなるからである。さらに、第2イオン交換層300cは、20[μm]以上であることがより好ましい。この場合、ガラス管の表面に傷が入ったとしても、その傷が第2イオン交換層300cよりも内側に一層届きにくくなり、その傷に起因してクラックに至るのを防止することができるからである。
【0080】
なお、第1イオン交換層300bおよび第2イオン交換層300cの厚みの合計は20[μm]以上であることが好ましい。第1イオン交換層300bおよび第2イオン交換層300cの厚みの合計が20[μm]より薄い場合には、第1イオン交換層300bを形成した後にその外側に第2イオン交換層300cを形成しにくいためである。
【0081】
また、第1イオン交換層300bの厚みが第2イオン交換層300cの厚みよりも厚いことが好ましい。この場合、ガラス管300の機械的強度を向上させつつ、ガラス管300の外表面に多少の傷がついたとしてもその傷に起因してクラックに至るのを防止することができるからである。
【0082】
さらに、第1イオン交換層300bの厚みが第2イオン交換層300cの厚みよりも5[μm]以上厚いことが好ましい。この場合、ガラス管300の外表面にさらに多くの傷がついたとしても、第1イオン交換層100bによりその傷の進行を抑制することができるため、その傷に起因してクラックに至るのを防止することができるからである。
【0083】
<小括>
上記のとおり、本発明の第3の実施形態に係るランプ用ガラス管300の構成によれば、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスをその材料として用いた場合でも、そのガラスにクラックが発生するのを防止することができる。また、ランプ用ガラス管300の外面に多少の傷がついたとしても、その傷に起因してクラックに至るのを防止することができる。ただし、その傷が増えたり深くなったりするとクラックを生じるおそれがあるが、その前にガラス管300の外表面についた傷を視認し交換することで、ガラス管300のクラックを未然に防止することができる。
【0084】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸X400を含む断面図を図11(a)に、そのD部分の要部拡大断面図を図11(b)にそれぞれ示す。本発明の第4の実施形態に係る低圧放電ランプ400(以下、単に「ランプ400」という)は、冷陰極蛍光ランプであって、ガラスバルブ401を除いては、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプと実質的に同じ構成を有している。
【0085】
<ガラスバルブの説明>
ガラスバルブ401は、本発明の第3の実施形態に係るランプ用ガラス管300を加工したものであって、管軸X400に対して垂直に切った断面が円環形状で、全長が730[mm]、外径が4[mm]、内径が3[mm]、肉厚が0.5[mm]である。
【0086】
<小括>
上記のとおり、本発明の第4の実施形態に係る低圧放電ランプ400の構成によれば、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスをガラスバルブ401の材料として用いた場でも、ガラスバルブ401にクラックが発生するのを防止することができる。また、ガラスバルブ401の外面に多少の傷がついたとしても、その傷に起因する破損を防止することができる。ただし、その傷が増えたり深くなったりするとクラックを生じるおそれがあるが、その前にガラスバルブ401の外表面についた傷を視認しランプ400を交換することで、ガラスバルブ401のクラックを未然に防止することができる。
【0087】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸X500を含む断面図を図12(a)に、そのE部分の要部拡大断面図を図12(b)に、そのF部分の要部拡大断面図を図12(c)にそれぞれ示す。本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプ500(以下、単に「ランプ500」という)は、外部電極型蛍光ランプである。ランプ500は、ガラスバルブ501とその両端部の外面に形成された外部電極502とで構成されている。
【0088】
<ガラスバルブの説明>
ガラスバルブ501は、その外表面層に本発明の第1の実施形態に係るランプ用ガラス管100と実質的に同一のイオン交換層100aを有することに加えて、さらにその内表面層であって、外部電極502と対応する部分にもイオン交換層100aを有する。ガラスバルブ501の内表面層であって、外部電極502と対応する部分は、ランプ500の点灯時に直接的に放電にさらされるため、イオン交換層100aにより、その部分にピンホールが発生するのを防止することができる。
【0089】
ガラスバルブ501は、例えば管軸X500に対して垂直に切った断面が円環形状で、全長が730[mm]、外径が4[mm]、内径が3[mm]、肉厚が0.5[mm]である。ガラスバルブ501は、例えばその両端部がガラスビード503により封止されている。なお、ガラスバルブ501の封止は、ピンチシール法等の公知の種々の手法を用いることができる。
【0090】
ガラスバルブ501の内面であって、外部電極に対応する部分を除く部分には蛍光体層504が形成されている。蛍光体層504は、例えば赤色蛍光体(Y23:Eu2+)、緑色蛍光体(LaPO4:Ce3+,Tb3+)および青色蛍光体(BaMg2Al1627:Eu2+)からなる希土類蛍光体で形成されている。なお、ガラスバルブ501の内面と蛍光体層504との間には、例えば、酸化イットリウム(Y23)等の金属酸化物による保護膜(図示せず)が形成されていてもよい。
【0091】
ガラスバルブ501の内部には、例えば、約2[mg]の水銀、および、希ガスとして約8[kPa](20[℃])のネオンとアルゴンとの混合ガス(Ne95[%]+Ar5[%])がそれぞれ封入されている。
【0092】
<外部電極の説明>
外部電極502は、例えば、アルミニウムの金属箔からなり、シリコン樹脂に金属粉体を混合した導電性粘着剤(図示せず)によってガラスバルブ501の両端部の外周面を覆うように貼着されている。
【0093】
なお、導電性粘着剤として、シリコン樹脂の代わりにフッ素樹脂、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂等を用いてもよい。また、金属箔を導電性粘着剤でガラスバルブ501に貼着する代わりに、銀ペーストをガラスバルブ501の電極形成部分の全周に塗布することによって外部電極502が形成されていてもよい。この場合、導電性粘着剤の劣化により外部電極502が剥がれることを防止することができる。また、上記の外部電極502の上に半田膜が形成されている場合には、外部電極502を損傷から保護することができる。また、超音波半田ディップ処理等の公知の手法により、半田膜のみで外部電極502を形成することも可能である。なお、図12(a)に示すランプ500の外部電極502は、ガラスバルブ501の管端まで形成されておらず、鉢巻状に形成されているが、ガラスバルブ501の管端全体を覆うように外部電極502が形成されていてもよい。
【0094】
また、例えば鉄とニッケルとの合金等からなる金属製のスリーブを被せ、その上から半田ディップ処理を施すことにより、外部電極502が形成されていてもよい。
【0095】
<小括>
上記のとおり、本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプ500の構成によれば、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスをガラスバルブ501の材料として用いた場合でも、ガラスバルブ501にクラックが発生するのを防止することができる。さらに、放電中にガラスバルブ501における外部電極の対応部分においてピンホールが発生するのを防止することができる。
【0096】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係るバックライトユニット600の分解斜視図を図13に示す。本発明の第6の実施形態に係るバックライトユニット600は直下方式であり、一つの面が開口した直方体状の筐体601と、この筐体601の内部に収納された複数のランプ200と、ランプ200を点灯回路(図示せず)に電気的に接続するための一対のソケット602と、筐体601の開口部を覆う光学シート類603とを備えている。なお、ランプ200は、本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200である。
【0097】
<筐体の説明>
筐体601は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製であって、その内面に銀などの金属が蒸着されて反射面604が形成されている。なお、筐体601の材料としては、樹脂以外の材料、例えば、アルミニウムや冷間圧延材(例えばSPCC)等の金属材料により構成してもよい。また、内面の反射面604として金属蒸着膜以外、例えば、ポリエチレンレンテレフタレート(PET)樹脂に炭酸カルシウム、二酸化チタン等を添加することにより反射率を高めた反射シートを筐体601に貼付したものを用いてもよい。
【0098】
筐体601の内部には、ソケット602、絶縁体605およびカバー606が配置されている。具体的に、ソケット602は、ランプ200の配置に対応して筐体601の短手方向(縦方向)に各々所定間隔を空けて設けられている。ソケット602は、例えばステンレスやりん青銅からなる板材を加工したものであって、リード線202が嵌め込まれる嵌込部602aを有している。そして、リード線202を嵌込部602aを押し拡げるように弾性変形させて嵌め込む。その結果、嵌込部602aに嵌め込まれたリード線202は、嵌込部602aの復元力によって押圧され、外れにくくなる。これにより、リード線202を嵌込部602aへ容易に嵌め込むことができつつ、外れにくくすることができる。
【0099】
ソケット602は、互いに隣り合うソケット602同士で短絡しないように絶縁体605で覆われている。絶縁体605は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で構成されている。なお、絶縁体605は、上記の構成に限定されない。ソケット602はランプ200の動作中に比較的高温となる内部電極3の近傍にあることから絶縁体605は耐熱性のある材料で構成することが好ましい。耐熱性のある絶縁体605の材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂やシリコンゴム等を適用することができる。
【0100】
筐体601の内部には、必要に応じた場所にランプホルダ(図示せず)を設けてもよい。筐体601内側でのランプ200の位置を固定するランプホルダは、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂であり、ランプ200の外面形状に沿うような形状を有している。「必要に応じた場所」とは、ランプ200の長手方向の中央部付近のように、ランプ200が例えば全長600[mm]を越えるような長尺のものである場合に、ランプ200のたわみを解消するために必要な場所である。
【0101】
カバー606は、ソケット602と筐体601の内側の空間とを仕切るものであり、例えばポリカーボネート(PC)樹脂で構成し、ソケット602の周辺を保温するとともに、少なくとも筐体601側の表面を高反射性とすることにより、ランプ200の端部の輝度低下を軽減する。
【0102】
<光学シート類の説明>
筐体601の開口部は、透光性の光学シート類603で覆われており、内部にちりや埃などの異物が入り込まないように密閉されている。光学シート類603は、拡散板607、拡散シート608およびレンズシート609を積層してなる。
【0103】
拡散板607は、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂製の板状体であって、筐体601の開口部を塞ぐように配置されている。拡散シート608は、例えばポリエステル樹脂製である。レンズシート609は、例えばアクリル系樹脂とポリエステル樹脂の貼り合せである。これらの光学シート類603は、それぞれ拡散板607に順次重ね合わせるようにして配置されている。
【0104】
<小括>
上記のとおり、本発明の第6の実施形態に係るバックライトユニット600の構成によれば、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスを低圧放電ランプ200のガラスバルブ201の材料として用いた場合でも、ガラスバルブ201にクラックが発生するのを防止することができる。
【0105】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態に係るバックライトユニットの一部切欠斜視図を図14に示す。本発明の第7の実施形態に係るバックライトユニット700は、エッジライト方式で、反射板701、ランプ200、ソケット(図示せず)、導光板702、拡散シート703およびプリズムシート704から構成されている。
【0106】
反射板701は、液晶パネル側(矢印Q)を除く導光板702の周囲を囲むように配置されており、底面を覆う底面部701bと、ランプ200の配置されている側を除く側面を覆う側面部701aと、ランプ200の周囲を覆う曲面状のランプ側面部701cとで構成されており、ランプから照射される光を導光板702から液晶パネル(図示せず)側(矢印Q)に反射させる。また、反射板701は、例えばフィルム状のPETに銀を蒸着したものやアルミ等の金属箔と積層したもの等からなる。
【0107】
ソケットは、本発明の第6の実施形態に係るバックライトユニット600に用いられるソケット602と実質的に同じ構成を有している。なお、図14において、図示の便宜上により、ランプ200の端部については省略している。
【0108】
導光板702は、反射板により反射された光を液晶パネル側に導くためのものであって、例えば透光性プラスチックからなり、バックライトユニット700の底面に設けられた反射板701の上に積層されている。なお、材料としては、ポリカーボネート(PC)樹脂やシクロオレフィン系樹脂(COP)を適用することができる。
【0109】
拡散シート703は、視野拡大のためのものであって、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂やポリエステル樹脂製の拡散透過機能を有するフィルムからなり、導光板702の上に積層されている。
【0110】
プリズムシート704は、輝度を向上させるためのものであって、例えばアクリル系樹脂とポリエステル樹脂とを貼り合せたシートからなり、拡散シート703の上に積層されている。なお、プリズムシート704の上にさらに拡散板が積層されていてもよい。
【0111】
なお、本実施形態の場合には、ランプ200の周方向における一部分(バックライトユニット700に挿入した場合における導光板702側)を除き、ガラスバルブ101の外面に反射シート(図示せず)を設けたアパーチャ型のランプであってもよい。
【0112】
<小括>
上記のとおり、本発明の第6の実施形態に係るバックライトユニット700の構成によれば、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスを低圧放電ランプ200のガラスバルブ201の材料として用いた場合でも、ガラスバルブ201にクラックが発生するのを防止することができる。
【0113】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態に係る液晶表示装置の概要を図15に示す。図15に示すように液晶表示装置800は例えば32[inch]テレビであり、液晶パネル等を含む液晶画面ユニット801と本発明の第6の実施形態に係るバックライトユニット600と点灯回路802とを備える。
【0114】
液晶画面ユニット801は、公知のものであって、液晶パネル(カラーフィルター基板、液晶、TFT基板等)(図示せず)、駆動モジュール等(図示せず)を備え、外部からの画像信号に基づいてカラー画像を形成する。
【0115】
点灯回路802は、バックライトユニット600内部のランプ200を点灯させる。そして、ランプ200は、点灯周波数40[kHz]〜100[kHz]、ランプ電流3[mA]〜25[mA]で動作される。
【0116】
なお、図8では、液晶表示装置800の光源装置として本発明の第6の実施形態に係るバックライトユニット600に第2の実施形態に係る低圧放電ランプ200を挿入した場合について説明したが、これに限らず、本発明の第4の実施形態に係る低圧放電ランプ400や、本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプ500も適用することができる。また、バックライトユニットについても、本発明の第7の実施形態に係るバックライトユニット700も用いることができる。
【0117】
<小括>
上記のとおり、本発明の第8の実施形態に係る液晶表示装置の構成によれば、ソーダガラスや鉛フリーガラス等の軟質ガラスを低圧放電ランプ200のガラスバルブ201の材料として用いた場合でも、ガラスバルブ201にクラックが発生するのを防止することができる。
【0118】
<変形例>
以上、本発明を上記した各実施形態に示した具体例に基づいて説明したが、本発明の内容が各実施形態に示した具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を用いることができる。
【0119】
1.ランプ用ガラス管およびガラスバルブに用いるガラスについて
(1)紫外線吸収について
ランプ用ガラス管100,300の材料であるガラスに遷移金属の酸化物をその種類によって所定量をドープすることにより254[nm]や313[nm]の紫外線を吸収することができる。具体的には、例えば酸化チタン(TiO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収し、組成比率2[mol%]以上ドープすることにより313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化チタンを組成比率5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまうため、組成比率0.05[mol%]以上5.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0120】
また、酸化セリウム(CeO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化セリウムを組成比率0.05[mol%]以上0.5[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。なお、酸化セリウムに加えて酸化スズ(SnO)をドープすることにより、酸化セリウムによるガラスの着色を抑えることができるため、酸化セリウムを組成比率5.0[mol%]以下までドープすることができる。この場合、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]以上ドープすれば313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、この場合においても酸化セリウムを組成比率が5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまう。
【0121】
また、酸化亜鉛(ZnO)の場合は、組成比率2.0[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化亜鉛を組成比率20[mol%]より多くドープした場合、ガラスが失透してしまうおそれがあるため、酸化亜鉛を2.0[mol%]以上20[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0122】
また、酸化鉄(Fe23)の場合は、組成比率0.01[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化鉄を組成比率2.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化鉄を組成比率0.01[mol%]以上2.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0123】
(2)赤外線透過係数について
ガラス中の水分含有量を示す赤外線透過率係数は、0.3以上1.2以下の範囲、特に0.4以上0.8以下の範囲となるように調整することが好ましい。赤外線透過率係数が1.2以下であれば、外部電極蛍光ランプ(EEFL)や長尺の冷陰極蛍光ランプ等の高電圧印加ランプに適用可能な低い誘電正接を得やすくなり、0.8以下であれば誘電正接が十分に小さくなって、さらに高電圧印加ランプに適用可能となる。
【0124】
なお、赤外線透過率係数(X)は下式で表すことができる。
【0125】
X=(log(a/b))/t
a:3840[cm-1]付近の極小点の透過率[%]
b:3560[cm-1]付近の極小点の透過率[%]
t:ガラスの厚み
(3)ランプ用ガラス管およびガラスバルブの形状について
ランプ用ガラス管100,300およびガラスバルブ201,401,501の形状は、直管形状のものに限られず、例えばL字形状、U字形状、コの字形状、渦巻き形状等であってもよい。また、その管軸に対して垂直に切った断面は、略円形状のものに限られず、例えばトラック形状や角丸形状のような扁平形状や楕円形状等であってもよい。
【0126】
2.蛍光体層の蛍光体について
(1)紫外線吸収について
例えば、近年、液晶カラーテレビの大型化に伴って、バックライトユニットの開口を塞ぐ拡散板に寸法安定性の良いポリカーボネートが使用されるようになっている。このポリカーボネートは、水銀が発する313[nm]の波長の紫外線により劣化しやすい。このような場合には、波長313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体を利用するとよい。なお、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体としては、以下のものがある。
【0127】
(a)青色
・ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1-x-ySrxEuyMg1-zMnzAl1017]又は[Ba1-x-ySrxEuyMg2-zMnzAl1627
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0≦z<0.1なる条件を満たす数であることが好ましい。
【0128】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al1627:Eu2+]、[BaMgAl1017:Eu2+] (略号:BAM−B)や、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al1627:Eu2+]、[(Ba,Sr)MgAl1017:Eu2+](略号:SBAM−B)等がある。
【0129】
(b)緑色
・マンガン不活マグネシウムガレート[MgGa24:Mn2+](略号:MGM)
・マンガン付活アルミン酸セリウム・マグネシウム・亜鉛[Ce(Mg,Zn)Al1119:Mn2+](略号:CMZ)
・テルビウム付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl1119:Tb3+](略号:CAT)
・ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1-x-ySrxEuyMg1-zMnzAl1017]又は[Ba1-x-ySrxEuyMg2-zMnzAl1627
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0.1≦z≦0.6なる条件を満たす数であり、zは0.4≦x≦0.5であることが好ましい。
【0130】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al1627:Eu2+,Mn2+]、[BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+](略号:BAM−G)や、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al1627:Eu2+,Mn2+]、[(Ba,Sr)MgAl1017:Eu2+,Mn2+](略号:SBAM−G)等がある。
【0131】
(c)赤色
・ユーロピウム付活リン・バナジン酸イットリウム[Y(P,V)O4:Eu3+](略号:YPV)
・ユーロピウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Eu3+](略号:YVO)
・ユーロピウム付活イットリウムオキシサルファイド[Y22S:Eu3+](略号:YOS)
・マンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム[3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+](略号:MFG)
・ジスプロシウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Dy3+](赤と緑の2成分発光蛍光体であり、略号:YDS)
なお、一種類の発光色に対して、異なる化合物の蛍光体を混合して用いてもよい。例えば、青色にBAM−B(313[nm]を吸収する。)のみ、緑色にLAP(313[nm]を吸収しない。)とBAM−G(313[nm]を吸収する。)、赤色にYOX(313nmを吸収しない。)とYVO(313[nm]を吸収する。)の蛍光体を用いてもよい。このような場合は、前述のように波長313[nm]を吸収する蛍光体が、総重量組成比率で50%より大きくなるように調整することで、紫外線がガラスバルブ外に漏れ出ることをほとんど防止できる。したがって、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体を蛍光体層105に含む場合には、上記のバックライトユニットの開口を塞ぐポリカーボネート(PC)からなる拡散板等の紫外線による劣化が抑制され、バックライトユニットとしての特性を長時間維持することができる。
【0132】
ここで、「313[nm]の紫外線を吸収する」とは、254[nm]付近の励起波長スペクトル(励起波長スペクトルとは、蛍光体を波長変化させながら励起発光させ、励起波長と発光強度をプロットしたものである。)の強度を100[%]としたときに、313[nm]の励起波長スペクトルの強度が80[%]以上のものと定義する。すなわち、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体とは、313[nm]の紫外線を吸収して可視光に変換できる蛍光体である。
【0133】
(2)高色再現について
液晶カラーテレビで代表される液晶表示装置では、近年における高画質化の一環としてなされる高色再現化に伴い、当該液晶表示装置のバックライトユニットの光源として用いられる冷陰極蛍光ランプや外部電極蛍光ランプにおいて、再現可能な色度範囲の拡大化の要請がある。
【0134】
このような要請に対して、例えば、以下の蛍光体を用いることで、実施の形態での蛍光体を用いる場合よりも、色度範囲の拡大を図ることができる。具体的には、CIE1931色度図において、高色再現用の当該蛍光体の色度座標値が、実施の形態で使用した3つの蛍光体の色度座標値を結んでできる三角形を含んで色再現範囲を広げる座標に位置する。
【0135】
(a)青色
・ユーロピウム付活ストロンチウム・クロロアパタイト[Sr10(PO46Cl2:Eu2+](略号:SCA)、色度座標:x=0.151、y=0.065
上記以外に、ユーロピウム付活ストロンチウム・カルシウム・バリウム・クロロアパタイト[(Sr,Ca,Ba)10(PO46Cl2:Eu2+](略号:SBCA)も使用でき、上記波長313(nm)の紫外線も吸収できるSBAM−Bも高色再現用に使用できる。
【0136】
(b)緑色
・BAM−G、色度座標:x=0.139、y=0.574
・CMZ、色度座標:x=0.164、y=0.722
・CAT、色度座標:x=0.267、y=0.663
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、MGMも高色再現用に使用することもできる。
【0137】
(c)赤色
・YOS、色度座標:x=0.651、y=0.344
・YPV、色度座標:x=0.658、y=0.333
・MFG、色度座標:x=0.711、y=0.287
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、YVO、YDSも高色再現用に使用することもできる。
【0138】
また、上記で示した色度座標値は各々の蛍光体の粉体のみで測定した代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、各蛍光体の粉体が示す色度座標値は、上掲した値と若干異なる場合があり得る。参考として上記実施の形態1の各蛍光体の粉体の色度座標値は、YOX(x=0.644、y=0.353)、LAP(x=0.351、y=0.585)、BAM−B(x=0.148、y=0.056)で構成されている。
【0139】
さらに、赤、緑、青の各色を発光させるために用いる蛍光体は各波長につき1種類に限らず、複数種類を組み合わせて用いることとしても良い。
【0140】
ここで、上記の高色再現用の蛍光体粒子を用いて蛍光体層を形成した場合について説明する。ここでの評価は、CIE1931色度図内においてNTSC規格の3原色の色度座標値を結ぶNTSC三角形(NTSCtriangle)の面積を基準とした、高色再現用の蛍光体を用いた場合の3つの色度座標値を結んでできる三角形の面積の比(以下、NTSC比という。)で行なう。
【0141】
例えば、青色としてBAM−B、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例1)NTSC比が92[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例2)NTSC比が100[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYOXを用いると(例3)、NTSC比が95[%]となり、例1及び2に比べて輝度を10[%]向上させることができる。
【0142】
なお、ここでの評価に用いた色度座標値は、ランプ等が組み込まれた液晶表示装置とした状態で測定したものである為、カラーフィルターとの組み合わせにより色再現範囲が上記値より前後する可能性がある。
【0143】
3.ランプの種類について
なお、上記の各実施形態に係る低圧放電ランプにおいては、そのガラスバルブの内面に蛍光体層を有するものについて説明したが、例えば、蛍光体層を設けていない紫外線ランプであってもよい。
【0144】
また、低圧放電ランプは、冷陰極蛍光ランプや外部電極型蛍光ランプに限られず、熱陰極型蛍光ランプや外部内部電極型蛍光ランプであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、ランプ用ガラス管、低圧放電ランプ、バックライトユニットおよび液晶表示装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】(a)本発明の第1の実施形態に係るランプ用ガラス管の管軸を含む断面図、(b)図1(a)のA部分の要部拡大断面図
【図2】(a)ランプ用ガラス管のイオン交換処理の浸漬工程の概念図、(b)同じく洗浄工程の概念図、(c)同じく乾燥工程の概念図
【図3】(a)浸漬工程初期のランプ用ガラス管の外表面層の要部拡大断面におけるイメージ図、(b)浸漬工程終期のランプ用ガラス管の外表面層の要部拡大断面におけるイメージ図
【図4】破壊試験の条件を説明するための概念図
【図5】(a1)ガラス管Bの外表面層のナトリウムの濃度分布を示す図、(a2)ガラス管A1の外表面層のナトリウムの濃度を示す図、(a3)ガラス管A2の外表面層のナトリウムの濃度を示す図、(a4)ガラス管A3の外表面層のナトリウムの濃度を示す図、(b1)ガラス管Bの外表面層のカリウムの濃度を示す図、(b2)ガラス管A1の外表面層のカリウムの濃度を示す図、(b3)ガラス管A2の外表面層のカリウムの濃度を示す図、(b4)ガラス管A3の外表面層のカリウムの濃度を示す図
【図6】イオン交換層のカリウム濃度の測定方法を説明するための図
【図7】(a)本発明の第2の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸を含む断面図、(b)図7(a)のB部分の要部拡大断面図
【図8】(a)本発明の第3の実施形態に係るランプ用ガラス管の管軸を含む断面図、(b)図8(a)のC部分の要部拡大断面図
【図9】(a)ランプ用ガラス管のイオン交換処理の第1浸漬工程の概念図、(b)同じく第1洗浄工程の概念図、(c)同じく第1乾燥工程の概念図、(d)同じく第2浸漬工程の概念図、(e)同じく第2洗浄工程の概念図、(f)同じく第2乾燥工程の概念図
【図10】(a)第1浸漬工程初期のランプ用ガラス管の外表面層の要部拡大断面におけるイメージ図、(b)第1浸漬工程終期のランプ用ガラス管の外表面層の要部拡大断面におけるイメージ図、(c)第2浸漬工程終期のランプ用ガラス管の外表面層の要部拡大断面におけるイメージ図
【図11】(a)本発明の第4の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸を含む断面図、(b)図11(a)のD部分の要部拡大断面図
【図12】(a)本発明の第5の実施形態に係る低圧放電ランプの管軸を含む断面図、(b)図12(a)のE部分の要部拡大断面図、(c)図12(a)のF部分の要部拡大断面図
【図13】本発明の第6の実施形態に係るバックライトユニットの分解斜視図
【図14】本発明の第7の実施形態に係るバックライトユニットの分解斜視図
【図15】本発明の第8の実施形態に係る液晶表示装置の概略斜視図
【図16】従来の低圧放電ランプの管軸を含む断面図
【符号の説明】
【0147】
100,300 ランプ用ガラス管
100a,300a イオン交換層
200,400,500 低圧放電ランプ
201,401,501 ガラスバルブ
300b 第1イオン交換層
300c 第2イオン交換層
600,700 バックライトユニット
800 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱膨張係数が60[K-1]〜110[K-1]であって、少なくともその外表面層がイオン交換層であることを特徴とするランプ用ガラス管。
【請求項2】
前記イオン交換層におけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度は、非イオン交換層におけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のランプ用ガラス管。
【請求項3】
前記アルカリ金属はカリウムであることを特徴とする請求項2に記載のランプ用ガラス管。
【請求項4】
前記イオン交換層の厚みが5[μm]以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のランプ用ガラス管。
【請求項5】
前記イオン交換層は、第1イオン交換層および前記第1イオン交換層の外側に位置する第2イオン交換層の2層からなり、前記第1イオン交換層におけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度が非イオン交換層におけるナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の濃度よりも高く、前記第2イオン交換層におけるアルカリ金属の濃度は、前記第1イオン交換層のアルカリ金属の濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載のランプ用ガラス管。
【請求項6】
酸化ホウ素の含有率が0[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のランプ用ガラス管。
【請求項7】
アルミナの含有率が0[mol%]以上5[mol%]以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のランプ用ガラス管。
【請求項8】
アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の含有率の合計が10[mol%]以上30[mol%]以下の範囲内であって、かつ酸化ストロンチウムと酸化バリウムの含有率の合計が0[mol%]以上12[mol%]以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のランプ用ガラス管。
【請求項9】
内径が1[mm]以上8[mm]以下、厚みが0.2[mm]以上0.6[mm]以下、長さが300[mm]以上2000[mm]以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載のランプ用ガラス管。
【請求項10】
少なくともガラス管をナトリウムよりもイオン半径の大きいアルカリ金属の融解塩に浸漬させる工程を含む第1イオン交換層形成工程と、少なくとも前記第1イオン交換層形成工程を経たガラス管を前記第1イオン交換層形成工程で用いたアルカリ金属よりもイオン半径の小さいアルカリ金属の融解塩に浸漬させる工程を含む第2イオン交換層形成工程を含むことを特徴とするランプ用ガラス管の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の前記ランプ用ガラス管をガラスバルブとして用いたことを特徴とする低圧放電ランプ。
【請求項12】
請求項11に記載の前記低圧放電ランプを備えることを特徴とするバックライトユニット。
【請求項13】
請求項12に記載の前記バックライトユニットを備えることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−251430(P2008−251430A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93280(P2007−93280)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】