説明

ランマ製造のための内筒の蓋板固定方法及びこれを用いたランマ

【課題】内筒の蓋板の固定作業と、外筒に対する内筒のかじり防止とを位置工程で実現できるランマ製造のための内筒の蓋板固定方法及びこれを用いたランマを提供する。
【解決手段】エンジン2からの出力で振動するピストンロッド8と、該ピストンロッド8の振動運動を整地シュー5に伝達する振動伝達機構14,15と、前記振動伝達機構14,15を保持し、下部が前記整地シュー5にて閉塞され、上部内に前記ピストンロッド8を貫通させる蓋板24を有する一方、前記蓋板24を支持する受け部を内表面に有する内筒16とを備えたランマ1において、前記蓋板24を前記受け部に載置し、前記蓋板24よりも上側における前記内筒16の周壁を内側に折り曲げ加工して曲げ部に形成し、この曲げ部と前記受け部との間に前記蓋板24を挟み付けて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランマを製造するために、ランマを形成する内筒の蓋板を固定するための固定方法及びこれを用いたランマに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ランマが特許文献1に開示されている。特許文献1に記載されたランマでは、内筒の上端に蓋が配置されている。一般的に、この蓋は溶接にて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−257018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶接作業は手間がかかり面倒である。また、内筒が外筒の内面に対して滑らかに摺動するように、いわゆる「かじり」防止のために、内筒の周壁の上端を外径が小さくなるように旋削している。しかしながら、旋削作業も手間がかかり面倒である。
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、内筒の蓋板の固定作業と、外筒に対する内筒のかじり防止とを一工程で実現できるランマ製造のための内筒の蓋板固定方法及びこれを用いたランマを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、エンジンからの出力で振動するピストンロッドと、該ピストンロッドの振動運動を整地シューに伝達する振動伝達機構と、前記振動伝達機構を保持し、下部が前記整地シューにて閉塞され、上部内に前記ピストンロッドを貫通させる蓋板が取り付けられる一方、前記蓋板を支持する受け部を内表面に有する内筒とを備えたランマにおいて、前記蓋板を前記受け部に載置し、前記蓋板よりも上側における前記内筒の周壁を内側に折り曲げ加工して曲げ部を形成し、この曲げ部と前記受け部との間に前記蓋板を挟み付けて固定することを特徴とするランマ製造のための内筒の蓋板固定方法を提供する。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記折り曲げ加工の後、前記蓋板と前記内筒の内周面とを溶接加工することを特徴としている。
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記折り曲げ加工の後、前記折り曲げ加工された前記内筒の外周面を旋削加工することを特徴としている。
【0008】
また、請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載のランマ製造のための内筒の蓋板固定方法によって蓋板が固定された内筒を備えるランマを提供する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、内筒の周壁を内側に折り曲げ加工して曲げ部を形成し、この曲げ部と受け部で蓋板を挟み付けて固定するので、蓋板を内筒内に固定するために溶接する必要がなくなり、作業性が高まる。また、内筒が上下動する際における端縁の摩耗を防止するため、内筒の外周の端縁近辺を旋削してR加工を施す必要もなくなり、さらに作業性を高めることができる。このように作業工程を簡略化することで、製造におけるコスト低減も図ることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、折り曲げ加工の後、蓋板と内筒の内周面を溶接加工するため、さらに蓋板の固定を強固にすることができる。
請求項3の発明によれば、折り曲げ加工の後、折り曲げ加工された部分における内筒の外周面を旋削加工するため、さらに内筒が上下動する際における端縁の摩耗を防止することができる。
【0011】
請求項4の発明によれば、請求項1と同様の効果を得ることができるランマを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るランマの概略外観図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明に係るランマ製造のための内筒の蓋板固定方法を順番に示す概略図である。
【図4】本発明に係るランマ製造のための内筒の蓋板固定方法を順番に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本発明に係るランマ1は、動力源たるエンジン2と、ランマヘッド3と、プロテクタとしての管4と、整地シュー5とを有している。エンジン2は、燃料タンク6から燃料を供給され、出力軸7(図2参照)に回転駆動させるものである。出力軸の回転運動は、ランマヘッド3にてピストンロッド8(図2参照)の振動運動に変換される。ピストンロッド8は管4内で振動し、整地シュー5を上下動させる。これにより、整地シュー5で地面をたたいて締め固めていく。
【0014】
上記動作をさらに詳しくいえば、図2に示すように、エンジン2からの動力はランマヘッド3内の出力軸7に伝達され、出力軸7を回転駆動させる。この出力軸7に設けられたピニオンギヤ(不図示)とクランクギヤ9が噛み合っていて、出力軸の回転に伴いクランクギヤ9も回転する。クランクギヤ9には、その回転中心から偏心した位置にクランク軸10が突出している。クランク軸10は、コンロッド11の上端に回転自在に連結されている。コンロッド11の下端はジョイントピン12を介してジョイント13と連結されている。ジョイント13はピストンロッド8の上端に固定されている。したがって、出力軸7の回転運動は、コンロッド11により振動運動に変換され、ピストンロッド8を上下動させる。
【0015】
ピストンロッド8の下端にはピストンヘッド14が備わっている。ピストンヘッド14はその上下にバネ15が配設されている。バネ15は、内筒16内に収容されている。これらのピストンヘッド14とバネ15がピストンロッド8の振動を内筒16に伝える振動伝達機構である。内筒16は外筒17内を摺動可能である。すなわち、外筒17及び内筒16は入れ子式である。内筒16及び外筒17は、プロテクタとしての管4に囲繞されている。管5は、上部保護部材18と、下部保護部材19と、これらを連結する伸縮自在なベローズ20とからなる。ベローズ20は、下部保護部材19が回転しない方に保持するためのものである。外筒17の上部は、上部保護部材18に固定されている。内筒16の下部は、下部保護部材19に固定されている。すなわち、外筒17及び内筒16は、管5の上下端にそれぞれ結合されている。上部保護部材18は、ランマヘッド3にボルト21を介して固定されている。下部保護部材19は、ボルト22を介して整地シュー5に固定されている。
したがって、ピストンロッド8の上下動は、バネ15に伝達され、ランマヘッド3が上下動する。これに追従し、管4が跳ね上がる。管4はピストンロッド8の往復運動に追従して、これに伴い外筒17に固定された下部保護部材19も上下動する。そして、整地シュー5が振動する。したがって、ピストンロッド8の振動運動は、内筒16を介して整地シュー5に伝達される。下部保護部材19の上下動は、ベローズ20が伸縮することでこれを吸収する。これにより、管4は伸縮しながら内筒16及び外筒17を保護している。
【0016】
図2から明らかなように、内筒16の下部は整地シュー5にて閉塞されている。また、内筒16の上部は蓋板24で一部が覆われている。蓋板24が一部開港している部分は、ピストンロッド8が貫通可能な大きさに設定されている。これら整地シュー5及び蓋板24にて、振動伝達機構であるピストンヘッド14及びバネ15は内筒16内に保持されている。
【0017】
この蓋板24の固定方法は、以下のようにして行われる。まず、図3に示すように、蓋板24を内筒16内の受け部25に載置する。受け部25は、内筒16の上部周壁の厚みが薄くなるように、内表面を切欠いた段差を設けて形成される。この他、内表面に突出部を設けて受け部25を形成してもよい。この後、型26を内筒16の上端面に対して押し当て、さらにプレス機等により押し込む(図3の矢印D方向)。型26の押圧面は内側に屈曲しているので、内筒16の周壁はこれに沿って内側に折れ曲がる。これにより、図4に示すように、蓋板24よりも上側における内筒16の周壁は内側に折り曲げ加工され、曲げ部27が形成される。この曲げ部27と受け部25で蓋板24を挟み付けて、蓋板24は内筒16内に確実に固定される。したがって、蓋板24を内筒16内に固定するために溶接する必要がなくなり、作業性が高まる。また、内筒16の上縁も内側に配置されるので、内筒16が上下動する際に、外筒17内を摺動したときに生じる端縁の摩耗(いわゆるかじり)を防止するため、内筒16の外周の端縁近辺を旋削してR加工を施す必要もなくなり、さらに作業性を高めることができる。このように作業工程を簡略化することで、製造におけるコスト低減も図ることができる。
【0018】
一方で、上記効果を更に高めるため、折り曲げ加工の後、蓋板24と内筒16の内周面を溶接加工してもよい。これにより、さらに蓋板24の固定を強固にすることができる。他方、折り曲げ加工の後、折り曲げ加工された部分における内筒16の外周面を旋削加工してもよい。これにより、さらに内筒16が上下動する際における端縁の摩耗を防止することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 ランマ
2 エンジン
3 ランマヘッド
4 管
5 整地シュー
6 燃料タンク
7 出力軸
8 ピストンロッド
9 クランクギヤ
10 クランク軸
11 コンロッド
12 ジョイントピン
13 ジョイント
14 ピストンヘッド(振動伝達機構)
15 バネ(振動伝達機構)
16 内筒
17 外筒
18 上部保護部材
19 下部保護部材
20 ベローズ
21 ボルト
22 ボルト
24 蓋板
25 受け部
26 型
27 曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの出力で振動するピストンロッドと、
該ピストンロッドの振動運動を整地シューに伝達する振動伝達機構と、
前記振動伝達機構を保持し、下部が前記整地シューにて閉塞され、上部内に前記ピストンロッドを貫通させる蓋板が取り付けられる一方、前記蓋板を支持する受け部を内表面に有する内筒とを備えたランマにおいて、
前記蓋板を前記受け部に載置し、
前記蓋板よりも上側における前記内筒の周壁を内側に折り曲げ加工して曲げ部を形成し、この曲げ部と前記受け部との間に前記蓋板を挟み付けて固定することを特徴とするランマ製造のための内筒の蓋板固定方法。
【請求項2】
前記折り曲げ加工の後、前記蓋板と前記内筒の内周面とを溶接加工することを特徴とする請求項1に記載のランマ製造のための内筒の蓋板固定方法。
【請求項3】
前記折り曲げ加工の後、前記折り曲げ加工された前記内筒の外周面を旋削加工することを特徴とする請求項1又は2に記載のランマ製造のための内筒の蓋板固定方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のランマ製造のための内筒の蓋板固定方法によって蓋板が固定された内筒を備えるランマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−241562(P2011−241562A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113095(P2010−113095)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(594201397)株式会社日立建機カミーノ (18)
【Fターム(参考)】