説明

ランマ

【課題】上下の保護部材と外筒及び内筒を効率よく簡便に結合でき、さらにコストも抑えることができるランマを提供する。
【解決手段】整地シュー5に振動を伝達する入れ子式の外筒17及び内筒16を含み、これら外筒17及び内筒16がプロテクタとしての伸縮可能な管4に囲繞されている一方、前記管4の上下端にそれぞれ結合されているランマ1において、前記内筒16の前記管4に結合する下側部分は外側に拡大する拡径処理が施され、該拡径処理された前記内筒の下側部分は、前記管4の下端に圧入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外筒及び内筒とこれらを囲繞する管状のプロテクタとを有するランマに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ランマが特許文献1に開示されている。特許文献1に記載されたランマでは、内筒の下端がフランジ形状になっていて、これが直接プロテクトスリーブとよばれる略円筒状の下部保護部材とボルトにより接合されている。一般的に、内筒と下部保護部材は、ボルト締めの他に溶接処理も施される。この接合構造は、外筒と上部保護部材でも同様である。
【0003】
上記構造を実現するため、上下の保護部材と接合するために外筒及び内筒にボルト孔を設ける必要があり、したがって外筒及び内筒にフランジ形状を設ける必要がある。そのため、鋳造による一体成形で外筒及び内筒を形成している。あるいは、フランジ部品を外筒及び内筒に圧接して一体としていた。一般的には、外筒は鋳物で、内筒は摩擦圧接でそれぞれフランジ部分を形成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−257018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外筒及び内筒を鋳造で成形するには手間がかかりコストもかかる。また、フランジ部品を圧接するにはそのための工程が必要であり、また部品点数も多く取扱い性が悪いものであった。
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、上下の保護部材と外筒及び内筒を効率よく簡便に結合でき、さらにコストも抑えることができるランマを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、整地シューに振動を伝達する入れ子式の外筒及び内筒を含み、これら外筒及び内筒がプロテクタとしての伸縮可能な管に囲繞されている一方、前記管の上下端にそれぞれ結合されているランマにおいて、前記内筒の前記管に結合する下側部分は外側に拡大する拡径処理が施され、該拡径処理された前記内筒の下側部分は、前記管の下端に圧入されて構成されていることを特徴とするランマを提供する。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記外筒の前記管に結合する上側部分は外側に拡大する拡径処理が施され、前記拡径処理された前記外筒の上側部分は、前記管の上端に圧入されて構成されていることを特徴としている。
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記外筒又は内筒と前記管との圧入に際し、前記外筒又は内筒の外径を圧入公差の範囲内とするために前記外筒又は内筒の外周を旋削してあることを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明では、請求項1〜3の発明において、前記拡径処理は、バルジ加工を用いて行われることを特徴としている。
請求項5の発明では、請求項1〜4の発明において、前記整地シューと前記管とのボルト接続部には、前記内筒が介在しないことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、外筒及び内筒の一方の筒を予め拡径し、外径が大きくなった状態でプロテクタとしての管の上下いずれかに圧入する。したがって、両者は確実に固定される。このため、筒と管を結合するために筒にボルト孔が形成されたフランジを設ける必要がなく、作業の効率化が図られ、さらに簡略化し、部品点数も減少し、コスト低減が図られる。
【0011】
請求項2の発明によれば、外筒と内筒の両方を拡径してそれぞれ管の上下に圧入することで、片方だけでなく両方の筒にフランジを設ける必要がなくなり、さらに作業の効率化が図られ、さらに簡略化し、部品点数も減少し、コスト低減が図られる。
請求項3の発明によれば、拡径処理をした後、筒の外周を旋削して筒の外径を圧入公差の範囲内とするため、筒を管に圧入する際の効率性と作業性を高めることができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、拡径処理をバルジ加工で行うため、効率よく簡便に外筒又は内筒の拡径処理を行うことができる。したがって、作業性が向上する。
請求項5の発明によれば、内筒と管とを圧入することにより両者は固定されているので、整地シューと管のみを直接接続することで、整地シューと内筒との接続も併せて実現できる。したがって、将来整地シューと接続するための加工を内筒に施す必要がなくなり、製造効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るランマの概略外観図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】内筒と下部保護部材の結合状態を示す概略断面図である。
【図4】外筒と上部保護部材の結合状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、本発明に係るランマ1は、動力源たるエンジン2と、ランマヘッド3と、プロテクタとしての管4と、整地シュー5とを有している。エンジン2は、燃料タンク6から燃料を供給され、出力軸7(図2参照)に回転駆動させるものである。出力軸の回転運動は、ランマヘッド3にてピストンロッド8(図2参照)の振動運動に変換される。ピストンロッド8は管4内で振動し、整地シュー5を上下動させる。これにより、整地シュー5で地面をたたいて締め固めていく。
【0015】
上記動作をさらに詳しくいえば、図2に示すように、エンジン2からの動力はランマヘッド3内の出力軸7に伝達され、出力軸7を回転駆動させる。この出力軸7に設けられたピニオンギヤ(不図示)とクランクギヤ9が噛み合っていて、出力軸の回転に伴いクランクギヤ9も回転する。クランクギヤ9には、その回転中心から偏心した位置にクランク軸10が突出している。クランク軸10は、コンロッド11の上端に回転自在に連結されている。コンロッド11の下端はジョイントピン12を介してジョイント13と連結されている。ジョイント13はピストンロッド8の上端に固定されている。したがって、出力軸7の回転運動は、コンロッド11により振動運動に変換され、ピストンロッド8を上下動させる。
【0016】
ピストンロッド8の下端にはピストンヘッド14が備わっている。ピストンヘッド14はその上下にバネ15が配設されている。このバネ15は、内筒16内に収容されている。内筒16は外筒17内を摺動可能である。すなわち、外筒17及び内筒16は入れ子式である。内筒16及び外筒17は、プロテクタとしての管4に囲繞されている。管5は、上部保護部材18と、下部保護部材19と、これらを連結する伸縮自在なベローズ20とからなる。ベローズ20は、下部保護部材19が回転しない方に保持するためのものである。外筒17の上側部分は、上部保護部材18に固定されている。内筒16の下側部分は、下部保護部材19に固定されている。すなわち、外筒17及び内筒16は、管5の上下端にそれぞれ結合されている。上部保護部材18は、ランマヘッド3にボルト21を介して固定されている。下部保護部材19は、ボルト22を介して整地シュー5に固定されている。したがって、ピストンロッド8の上下動は、バネ15に伝達され、ランマヘッド3が上下動する。これに追従し、管4が跳ね上がる。管4はピストンロッド8の往復運動に追従して、これに伴い外筒17に固定された下部保護部材19も上下動する。そして、整地シュー5が振動する。下部保護部材19の上下動は、ベローズ20が伸縮することでこれを吸収する。これにより、管4は伸縮しながら内筒16及び外筒17を保護している。
【0017】
上記内筒16と下部保護部材19との固定は、以下のようにして行われる。まず、内筒16の外径を拡大させる拡径処理を施す。拡径処理をした後、内筒16を下部保護部材19に圧入する。具体的には、内筒16に沿って下部保護部材19をスライドさせ、拡径部分にて押し込んで固定する。より詳しくは、図3に示すように、下部保護部材19は内側に向けて折り返し部23を有していて、この折り返し部23に対して内筒16が圧入されて固定される。したがって、内筒16を拡径させる部分は折り返し部23と接する一方の端部のみでよい。このような筒管結合方法を用いることで、図3に示すように、内筒16と下部保護部材19は確実に固定される。また、従来のように内筒16と下部保護部材19、そして整地シュー5とを結合するために、内筒16にボルト孔が形成されたフランジを設ける必要がなく、作業の効率化が図られ、さらに作業が簡略化し、部品点数も減少し、コスト低減が図られる。また組立工数も大幅に低減できる。
【0018】
さらに、図から明らかなように、内筒16と下部保護部材19を固定するに際してネジ等の別部品を用いていない。このことは、内筒16の摺動動作を整地シュー5に伝達するために、内筒16を直接整地シュー5に接続する必要はなく、下部保護部材19と整地シュー5とを直接接続すればよいことを示している。すなわち、整地シュー5と管4を構成する下部保護部材19のみを直接接続することで、整地シュー5と内筒16との接続も併せて実現できる。したがって、将来整地シュー5と接続するための加工を内筒16に施す必要がなくなり、製造効率が向上する。
【0019】
また、拡径処理をした後、内筒16の外周を旋削してもよい。このように内筒16を旋削処理してその外径を設定することで、内筒16の外径を圧入公差の範囲内とすることができる。これにより、圧入時の効率性と作業性を高めることができる。また、内筒16の拡径処理は、バルジ加工を用いて行われる。これにより、効率よく簡便に内筒16の拡径処理を行うことができ、作業性が向上する。バルジ加工は、公知の方法で行う。具体的には、内筒16内に軸方向に分割された円筒部材を入れ込み、この円筒部材の内径より径の大きい中実の棒材を円筒部材の軸線に沿って押し込むことで、円筒部材が内筒16を外側に押し広げ、内筒16を拡径する。
【0020】
外筒17についても内筒16と同様にして、上部保護部材18と固定可能である。外筒17及び内筒16について同様の方法で筒管結合することで、上記効果を外筒17及び内筒16の両方について得ることができる。このような筒管結合方法を用いて外筒17と上部保護部材18とを結合したものは、図4に詳細が記載されている。
【符号の説明】
【0021】
1 ランマ
2 エンジン
3 ランマヘッド
4 管
5 整地シュー
6 燃料タンク
7 出力軸
8 ピストンロッド
9 クランクギヤ
10 クランク軸
11 コンロッド
12 ジョイントピン
13 ジョイント
14 ピストンヘッド
15 バネ
16 内筒
17 外筒
18 上部保護部材
19 下部保護部材
20 ベローズ
21 ボルト
22 ボルト
23 折り返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整地シューに振動を伝達する入れ子式の外筒及び内筒を含み、これら外筒及び内筒がプロテクタとしての伸縮可能な管に囲繞されている一方、前記管の上下端にそれぞれ結合されているランマにおいて、
前記内筒の前記管に結合する下側部分は外側に拡大する拡径処理が施され、
該拡径処理された前記内筒の下側部分は、前記管の下端に圧入されて構成されていることを特徴とするランマ。
【請求項2】
前記外筒の前記管に結合する上側部分は外側に拡大する拡径処理が施され、
前記拡径処理された前記外筒の上側部分は、前記管の上端に圧入されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のランマ。
【請求項3】
前記外筒又は内筒と前記管との圧入に際し、前記外筒又は内筒の外径を圧入公差の範囲内とするために前記外筒又は内筒の外周を旋削してあることを特徴とする請求項1又は2に記載のランマ。
【請求項4】
前記拡径処理は、バルジ加工を用いて行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のランマ。
【請求項5】
前記整地シューと前記管とのボルト接続部には、前記内筒が介在しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のランマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−241561(P2011−241561A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113094(P2010−113094)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(594201397)株式会社日立建機カミーノ (18)
【Fターム(参考)】