説明

リアクトル、複合材料、リアクトル用コア、コンバータ、及び電力変換装置

【課題】低損失で、磁気特性が低下し難いリアクトル、このリアクトルの部品に適したリアクトル用コア、このコアの材料に適した複合材料を提供する。
【解決手段】リアクトル1Aは、巻線2wを螺旋状に巻回してなる一つのコイル2と、コイル2の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3とを具える。磁性コア3は、コイル2内に配置される内側コア部31と、コイル2の外周を覆うように設けられた外側コア部32とを具える。外側コア部32は、磁性体粉末と樹脂との複合材料から構成されている。この複合材料の断面における気泡の最大径が300μm以下である。リアクトル1Aは、外側コア部32における気泡の最大径が300μm以下であることで、低損失で、磁気特性が低下し難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルなどの磁性部品の構成材料に適した複合材料、この複合材料からなるリアクトル用コア、このコアを具えるリアクトル、このリアクトルを具えるコンバータ、及びこのコンバータを具える電力変換装置に関するものである。特に、低損失で、磁気特性が低下し難いリアクトル、及び低損失で、磁気特性が低下し難いリアクトルが得られる複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルやモータといった、コイルと、磁性コアとを具える磁性部品が種々の分野で利用されている。例えば、特許文献1は、ハイブリッド自動車といった車両に載置されるコンバータの回路部品に利用されるリアクトルを開示している。また、特許文献1は、上記リアクトルに具える磁性コアの構成材料として、磁性体粉末と、この粉末を内包する樹脂(バインダ樹脂)とからなる複合材料を開示している。この複合材料は、原料となる磁性体粉末と未硬化の液状の樹脂とを混合したものを所望の形状の成形型に充填した後、樹脂を硬化することで製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-147403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の複合材料からなる磁性コアを用いたリアクトルでは、鉄損といった損失が大きくなったり、比透磁率やインダクタンスといった磁気特性が設定値よりも低くなったりすることがある。そこで、従来の複合材料を調べたところ、300μm超といった粗大な気泡が存在していた。
【0005】
磁性体粉末と樹脂との複合材料中に上述のような粗大な気泡が存在した場合、気泡は磁性体粉末よりも比透磁率が低いため、コイルがつくる磁束の多くは、粗大な気泡の周囲を迂回する。この磁束の迂回により、複合材料中に磁束線の粗密が局所的に生じると、複合材料全体としては比透磁率の低下を招く恐れがある。比透磁率の低下により、ひいてはインダクタンス値が設定値よりも低くなる恐れがある。また、上記磁束の迂回により、損失の増加を招く恐れがある。更に、粗大な気泡は、複合材料の熱伝導率の低下も招き、コイルからの放熱を十分にできないことで損失の増加を招く恐れがある。従って、上述のような粗大な気泡の存在がリアクトルの損失の増大や磁気特性の低下の一原因であると考えられる。このような複合材料をリアクトルに用いた場合の損失や磁気特性と当該複合材料中の気泡の大きさとの相関や、複合材料の熱伝導率と当該複合材料中の気泡の大きさとの相関について従来は考慮されておらず、本発明者が初めて着目したものである。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、低損失で、磁気特性が低下し難いリアクトルを提供することにある。また、本発明の他の目的は、低損失で、磁気特性が低下し難いリアクトルが得られるリアクトル用コアを提供することにある。更に、本発明の他の目的は、上記リアクトル用コアの素材や上記リアクトルの磁性コアの素材に適した複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料の製造工程において、複合材料中の気泡(気体)を十分に排出するための脱気工程を積極的に設けることで、気泡の最大径が300μm以下である複合材料が得られる、との知見を得た。また、気泡の最大径が300μm以下である複合材料を磁性コアの素材とし、この磁性コアを具えるリアクトルは、磁気特性が設定値から低下し難く、かつ損失が小さい、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
【0008】
本発明の複合材料は、磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料であり、上記複合材料の断面における気泡の最大径が300μm以下である。
【0009】
上記本発明複合材料は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。特に、この製造方法は、上記樹脂が熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂である場合に好適に利用することができる。この製造方法は、磁性体粉末と未硬化の樹脂とを混合した後、この樹脂を硬化させて複合材料を製造する方法に係るものであり、以下の混合工程、充填工程、脱気工程、硬化工程を具える。
混合工程:磁性体粉末と樹脂とを脱気しながら撹拌して混合流体を作製する工程。
充填工程:上記混合流体の粘度が最小となる温度をTmin(℃)とし、(Tmin−20)℃以上(Tmin−5)℃以下の範囲から選択された温度をT1(℃),T2(℃)とするとき、温度T1(℃)に加熱した上記混合流体を温度T2(℃)に加熱した成形型に充填する工程。
脱気工程:最終到達真空度が1Pa以下となるように脱気しながら、上記成形型に充填された上記混合流体を温度(Tmin±5)℃に所定時間保持する工程。
硬化工程:上記所定時間経過後、上記樹脂を硬化する工程。
【0010】
本発明のリアクトル用コアは、上記本発明複合材料からなる。本発明のリアクトルは、コイルと、磁性コアとを具え、上記磁性コアの少なくとも一部が上記本発明複合材料から構成されている。つまり、本発明リアクトルは、上記磁性コアの少なくとも一部が磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料から構成されており、この複合材料の断面における気泡の最大径が300μm以下である。
【0011】
本発明複合材料やこの複合材料からなる本発明リアクトル用コア、及び本発明リアクトルに具える磁性コアの少なくとも一部を構成する複合材料は、気泡が存在しても、その最大径が300μm以下であることから気泡の存在による磁束の粗密の発生を抑制することができる。そのため、例えば、インダクタンス値でみれば、設計値と実際値との差が小さく、設計値からの低下を十分に抑えられる。このような本発明複合材料や本発明リアクトル用コアを利用することで、低損失で、磁気特性が低下し難いリアクトルを製造することができる。本発明リアクトルは、上述の特定の複合材料=上記本発明複合材料や、本発明リアクトル用コアを具えることで、低損失で、磁気特性が低下し難い。
【0012】
更に、上記複合材料の断面における気泡の最大径が200μm以下である形態は、気泡が存在しても、当該気泡がより小さいことから、この形態の複合材料を用いることで、より低損失で磁気特性がより低下し難いリアクトルが得られる。また、この複合材料を具えるリアクトルは、より低損失で磁気特性がより低下し難い。
【0013】
上記製造方法では、まず、磁性体粉末と樹脂との混合・撹拌時に脱気する(代表的には真空引きする)ことで、混合流体中から気泡を排出し易い上に、雰囲気中の気体を混合流体中に巻き込み難く、気泡の含有量が低い混合流体を得ることができる。次に、この混合流体を成形型に充填するにあたり、混合流体及び成形型の双方を特定の範囲から選択された温度T1(℃),T2(℃)に加熱した状態とする。こうすることで混合流体は粘度が低くなり、流動性に優れて成形型に充填し易い上に、流動性に優れることで混合流体中の気泡を外部に排出し易い。また、上記双方が同程度の温度であることで、成形型に順次充填された混合流体は、成形型に接触しても当該混合流体の温度が低下し難くほぼ一定に保持されて粘度が低い状態を維持できることからも、気泡を排出し易い。そして、成形型に混合流体を充填後、樹脂の粘度が最も低くなる温度Tmin(℃)及びその近傍の温度に混合流体を保持して、樹脂を低粘度な状態とする。このため、成形型内の混合流体から気泡が抜け出し易く、かつ当該混合流体から排出された気体は、上記所定の真空度まで真空引きしていることで、外部に確実に排出でき、十分に脱気された混合流体とすることができる。この混合流体の樹脂を硬化することで、得られた複合材料は、気泡の最大径が300μm以下である。このように混合時及び充填時に脱気するだけでなく、特定の脱気工程を別途設けることで、気泡の最大径が300μm以下である本発明複合材料を製造することができる。
【0014】
本発明リアクトル及び本発明複合材料の一形態として、上記複合材料の断面における気泡の合計面積割合が1%以下である形態が挙げられる。
【0015】
上記形態は、気泡の最大径が300μm以下である上に、存在する気泡の合計含有量自体も少ない。そのため、上記形態の複合材料を用いることで、より低損失で磁気特性がより低下し難いリアクトルが得られ、上記形態のリアクトルは、より低損失で磁気特性がより低下し難い。
【0016】
本発明リアクトル及び本発明複合材料の一形態として、上記複合材料の断面における気泡の合計面積割合が0.2%以下である形態が挙げられる。
【0017】
上記形態は、気泡の最大径が300μm以下である上に、存在する気泡の合計含有量自体も非常に少ない。そのため、上記形態の複合材料を用いることで、更に低損失で磁気特性が更に低下し難いリアクトルが得られ、上記形態のリアクトルは、更に低損失で磁気特性が更に低下し難い。
【0018】
本発明リアクトル及び本発明複合材料の一形態として、上記複合材料における磁性体粉末の体積割合が30体積%以上70体積%以下である形態が挙げられる。
【0019】
上記形態は、磁性成分の割合が十分に高いことから、飽和磁束密度といった磁気特性を高め易い上に、磁性体粉末が多過ぎないことで、樹脂と混合し易くなり、複合材料を製造し易い。
【0020】
本発明リアクトルの一形態として、上記磁性コアにおいて、巻線を巻回してなる筒状のコイルの内側に配置される箇所の少なくとも一部が上記複合材料によって構成された形態が挙げられる。
【0021】
本発明リアクトルに具える磁性コアは、その材質を部分的に異ならせることができる。上記形態では、磁性コアにおいてコイルの内側に配置される箇所の少なくとも一部を上述の複合材料とし、例えば、コイル外に配置される箇所を当該複合材料よりも比透磁率が高い材質とすると、コイル外に配置される箇所から外部への漏れ磁束を低減できるため、この漏れ磁束に伴う損失を低減できる上に、コイルによる磁束を十分に活用することができる。
【0022】
本発明リアクトルの一形態として、上記磁性コアにおいて、巻線を巻回してなる筒状のコイル外に配置される箇所の少なくとも一部が上記複合材料によって構成された形態が挙げられる。
【0023】
上記形態では、磁性コアにおいてコイル外に配置される箇所(以下、外コアと呼ぶ)の少なくとも一部を上述の複合材料とし、例えば、コイルの内側に配置される箇所(以下、内コアと呼ぶ)を当該複合材料よりも飽和磁束密度が高い材質とすることができる。この構成により、一定の磁束を得るとき、磁性コアの全体が、比透磁率が低い材質から構成されて飽和磁束密度が一様な場合に比較して、内コアの断面積を小さくできることから、上記形態は、リアクトルの小型化を図ることができる。また、内コアの小型化によって、コイルを構成する巻線も短くできるため、上記形態は、リアクトルの軽量化を図ることができる。
【0024】
本発明リアクトルの一形態として、上記磁性コアの実質的に全てが上記複合材料によって構成された形態が挙げられる。
【0025】
上記形態は、樹脂成分を含有することで、磁性コアの全体に亘って比透磁率が比較的低い材質となることから、例えば、ギャップレス構造とすることができる。また、上記形態は、磁性コアを同一材質で構成する場合、生産性に優れる。或いは、上記形態は、磁性体粉末の材質や含有量を調整するなどして、部分的に磁気特性が異なる磁性コアを容易に製造することができる。
【0026】
本発明リアクトルの一形態として、上記コイルと上記磁性コアとの組合体を収納するケースを更に具えた形態が挙げられる。この場合、上記コイルが上記ケースの底面に対してその軸が実質的に平行するように当該ケースに収納され、上記磁性コアにおいて上記コイルの外周の少なくとも一部を覆う箇所が上記複合材料により構成された形態が挙げられる。
【0027】
上記形態は、コイルの外周面がケースの底面に向くように、コイルがケースに収納されていることで、コイルの外周面からケースの底面までの距離が短くなり易い。従って、上記形態は、コイルの熱をケースの底面に伝え易く、この底面を介してリアクトルの設置対象に放熱できるため、放熱性に優れる。また、上記形態は、コイル及び磁性コアの組合体がケースに収納されることで、当該組合体の機械的保護や外部環境からの保護を図ることができる。上記形態のリアクトルは、例えば、上述した製造方法において成形型をケースとし、このケースにコイル、又はコイルと磁性コアの一部との組物を収納しておき、上記製造方法に則って複合材料を形成することで製造することができる。この複合材料は、リアクトルの磁性コアの少なくとも一部を構成する。成形型をケースとする場合は、上述した磁性コアにおいてコイル外に配置される箇所の少なくとも一部を上記複合材料とする形態や、磁性コアの実質的に全てを上記複合材料とする形態を容易に製造できる。
【0028】
上記の形態のリアクトルにおいて、上記磁性コアを構成する本発明複合材料の比透磁率は、当該リアクトルのインダクタンスを所定の値に調整するために、5以上50以下が好ましく、5以上20以下がより好ましい。特に、リアクトルに具える磁性コアの実質的に全てが本発明複合材料で構成される場合には、当該複合材料の比透磁率は、10以上20以下が望ましい。
【0029】
本発明リアクトルは、コンバータの構成部品に好適に利用することができる。本発明のコンバータは、スイッチング素子と、上記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを具え、上記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するものであり、上記リアクトルが本発明リアクトルである形態が挙げられる。この本発明コンバータは、電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。本発明の電力変換装置は、入力電圧を変換するコンバータと、上記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを具え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、上記コンバータが本発明コンバータである形態が挙げられる。
【0030】
本発明コンバータや本発明電力変換装置は、低損失で磁気特性が低下し難い本発明リアクトルを具えることで、低損失で、所望の磁気特性を維持し易い。
【発明の効果】
【0031】
本発明リアクトルは、低損失で、磁気特性が低下し難い。本発明リアクトル用コア及び本発明複合材料は、気泡の最大径が300μm以下であり、低損失で、磁気特性が低下し難いリアクトルの実現に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1に係るリアクトルの概略斜視図である。
【図2】(A)は、図1の(A)-(A)断面図、(B)は、図1の(B)-(B)断面図である。
【図3】(A)は、実施形態1に係るリアクトルに具える外側コア部の断面の顕微鏡写真、(B)は、比較例のリアクトルに具える外側コア部の断面の顕微鏡写真である。
【図4】(A)は、実施形態2に係るリアクトルの概略斜視図、(B)は、(A)の(B)-(B)断面図である。
【図5】(A)は、実施形態3に係るリアクトルの概略斜視図、(B)はこのリアクトルに具える磁性コアの概略斜視図である。
【図6】複合材料中の気泡の直径と、損失との関係を示すグラフである。
【図7】複合材料中の気泡の直径と、インダクタンスとの関係を示すグラフである。
【図8】複合材料中の気泡の含有量と、損失との関係を示すグラフである。
【図9】複合材料中の気泡の含有量と、インダクタンスとの関係を示すグラフである。
【図10】ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す概略構成図である。
【図11】本発明コンバータを具える本発明電力変換装置の一例を示す概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0034】
《実施形態1》
図1,図2を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。リアクトル1Aは、巻線2wを螺旋状に巻回してなる筒状の一つのコイル2と、コイル2の内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コア3と、コイル2と磁性コア3との組合体を収納するケース4Aとを具える。リアクトル1Aは、通常、冷却水の循環経路などといった冷却機構を具える冷却ベースなどの設置対象に設置され、上記冷却機構により冷却されて使用される。リアクトル1Aでは、ケース4Aが設置対象に固定される。磁性コア3は、コイル2の内側に配置される内側コア部31と、コイル2の外周を覆うように設けられた外側コア部32とを具える。リアクトル1Aの特徴とするところは、筒状のコイル2外に配置される箇所:外側コア部32が複合材料により構成されており、この複合材料中における気泡の最大径が300μm以下である点にある。以下、各構成及びリアクトルの製造方法を順に説明する。
【0035】
[コイル]
コイル2は、1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる筒状体である。巻線2wは、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる導体の外周に、絶縁性材料(代表的にはポリアミドイミドといったエナメル材料)からなる絶縁被覆を具える被覆線が好適である。導体は、横断面形状が長方形状である平角線、円形状である丸線、多角形状である異形線などの種々の形状のものを利用できる。特に、平角線は、エッジワイズ巻きにしてエッジワイズコイルとすると、占積率が高いコイルとし易いことから、占積率を高めて小型なコイルを得易く、リアクトルの小型化に寄与する。ここでは、コイル2は、導体が銅製で、横断面形状が長方形状の平角線からなり、絶縁被覆がエナメルからなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにして形成されたエッジワイズコイルとしている。
【0036】
(端面形状)
コイル2の端面形状及び軸方向に直交する方向の断面形状は、図1,図2(B)に示すように円形状が代表的である。円形状のコイルは、巻線に平角線を用いた場合でも巻回し易く、コイルの製造性に優れる上に、小型なコイルにし易い。その他、コイル2の端面形状は、非円形状であって、かつ曲線部を有する形状、例えば、楕円などの実質的に曲線のみからなる形状や、曲線部と直線部とを有する形状(例えば、長方形などの多角形の各角部を丸めた形状、直線と円弧とを組み合せてなるレーストラック状など)が挙げられる。直線部を具える形態では、直線部によりつくられる平面がケースの底面に平行するようにコイルをケースに収納することで、安定性に優れる上に、放熱性にも優れる。
【0037】
(巻線の端部)
コイル2を形成する巻線2wの両端部は、図1に示すようにターン形成部分から適宜引き延ばされて、絶縁被覆が剥がされて露出された導体部分に、銅やアルミニウムなどの導電性材料からなる端子部材(図示せず)が接続される。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行う電源などの外部装置(図示せず)が接続される。巻線2wの導体部分と端子部材との接続には、TIG溶接などの溶接、圧着などが利用できる。なお、巻線2wの両端部の引き出し方向は一例であり、適宜変更することができる。
【0038】
(配置形態)
コイル2は、図2(A)に示すようにコイル2の軸がケース4Aの底面40に実質的に平行するようにケース4A内に収納されている。端的に言うと、コイル2は、ケース4Aに対してコイル2が横長となるように収納されている(以下、この配置形態を横型形態と呼ぶ)。実質的に平行とは、外底面40o及び内底面40iの双方が平面で構成されて、コイル2の軸と両面40o,40iが平行な場合の他、外底面40o及び内底面40iの一部が平面で構成されておらず、コイル2の軸と平行にならない箇所が存在する場合(例えば、外底面40oが平面で構成され、内底面40iが凹凸形状である場合など)を含む。
【0039】
[磁性コア]
磁性コア3は、図2に示すようにコイル2内に挿通される柱状の内側コア部31と、内側コア部31の少なくとも一方の端面31e(ここでは両端面)、及びコイル2の外周面を覆うように形成された外側コア部32とを具え、コイル2を励磁した際に閉磁路を形成する。リアクトル1Aでは、磁性コア3が一様な材質から構成されておらず、部分的に材質が異なっており、部分的に磁気特性が異なる。具体的には、内側コア部31は、外側コア部32よりも飽和磁束密度が高く、外側コア部32は、内側コア部31よりも比透磁率が低い。
【0040】
(内側コア部)
内側コア部31は、コイル2の内周形状に沿った円柱体である。ここでは、図2(A)に示すように内側コア部31におけるコイル2の軸方向に沿った長さ(以下、単に長さと呼ぶ)がコイル2の長さよりも長く、コイル2の内周に挿通配置された状態において内側コア部31の両端面31e及びその近傍の外周面がコイル2の端面から若干突出している。内側コア部31の突出長さは適宜選択することができる。ここでは、内側コア部31においてコイル2の各端面から突出する突出長さを等しくしているが、後述する実施形態2のように異ならせてもよいし、コイル2のいずれか一方の端面からのみ突出部分が存在するように内側コア部の長さやコイルに対する配置位置を調整してもよい。また、内側コア部の長さとコイルの長さとが等しい形態、内側コア部の長さがコイルの長さよりも短い形態とすることもできるが、図2(A),図4(B)に示すように内側コア部31の長さがコイル2の長さと同等以上であると、コイル2がつくる磁束を内側コア部31に十分に通過させることができて好ましい。
【0041】
ここでは、内側コア部31は、絶縁被膜などの被膜を具える軟磁性材料からなる圧粉成形体から構成されている。圧粉成形体は、代表的には、表面にシリコーン樹脂などからなる絶縁被膜を具える軟磁性粉末や、この軟磁性粉末に加えて適宜結合剤を混合した混合粉末を成形後、上記絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成することにより得られる。圧粉成形体の作製にあたり、軟磁性粉末の材質や、軟磁性粉末と結合剤との混合比、絶縁被膜を含む種々の被膜の量などを調整したり、成形圧力を調整したりすることで飽和磁束密度を変化させることができる。例えば、飽和磁束密度の高い軟磁性粉末を用いたり、結合剤の配合量を低減して軟磁性材料の割合を高めたり、成形圧力を高くしたりすることで、飽和磁束密度が高い圧粉成形体が得られる。
【0042】
上記軟磁性粉末は、Fe,Co,Niなどの鉄族金属、Feを主成分とするFe基合金、例えばFe-Si,Fe-Ni,Fe-Al,Fe-Co,Fe-Cr,Fe-Si-Alなどといった鉄基材料からなる粉末、希土類金属粉末、フェライト粉末などが挙げられる。特に、鉄基材料は、フェライトよりも飽和磁束密度が高い磁性コアを得易い。軟磁性粉末に形成される絶縁被膜の構成材料は、例えば、燐酸化合物、珪素化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、硼素化合物などが挙げられる。この絶縁被覆は、特に軟磁性粉末を構成する磁性粒子が鉄族金属やFe基合金といった金属からなる場合に具えると、渦電流損を効果的に低減できる。結合剤は、例えば、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂、高級脂肪酸が挙げられる。この結合剤は、上述の焼成により消失したり、シリカなどの絶縁物に変化したりする。圧粉成形体は、複雑な立体形状であっても比較的容易に成形可能である上に、磁性粒子間に絶縁被膜などの絶縁物が存在することで、磁性粒子同士が絶縁されて渦電流損を低減でき、コイルに高周波の電力が通電される場合であっても、上述の損失を低減できる。圧粉成形体は、公知のものを利用することができる。柱状の内側コア部31は、所望の形状の金型を用いて成形した一体物としたり、複数のコア片を接着剤や接着テープなどで固定して一体物としたりすることで得られる。
【0043】
ここでは、内側コア部31は、ギャップ材やエアギャップが介在していない中実体としている。ギャップを有さないことで小型にできる上に、ギャップ部分の漏れ磁束がコイル2に影響を及ぼさないため、コイル2と内側コア部31とを近接でき、この点からもリアクトル1Aを小型にできる。更に、ギャップの省略により、損失の低減や、大電流の通電時におけるインダクタンスの低下の低減を図ることができる。なお、磁性コア3は、圧粉成形体や後述の複合材料よりも比透磁率が低い材料、代表的にはアルミナ板などの非磁性材料からなるギャップ材やエアギャップが介在した形態としてもよい。或いは、比透磁率が1よりも大きいギャップ材が介在した形態としてもよい。このギャップ材の構成材料は、非磁性材料(例えば、不飽和ポリエステルなどの樹脂)中に鉄やFe-Siなどの磁性体粉末を分散させたものが挙げられる。比透磁率が1よりも大きいギャップ材、いわば磁性を有するギャップ材を具えることで、リアクトルのインダクタンスを調整し易い。このギャップ材の厚さが必要以上に厚くならないようにするため、当該ギャップ材の比透磁率は、1超5以下が好ましく、更に1.1以上1.4以下が好ましい。
【0044】
(外側コア部)
外側コア部32は、ここでは、コイル2の両端面と外周面の実質的に全てと、内側コア部31の両端面31e及びその近傍の外周面とを覆っており、ケース4Aの内周面と、ケース4Aに収納されたコイル2と内側コア部31との組物の外周面とがつくる空間に沿った形状である。外側コア部32の一部が内側コア部31の両端面31eに連結するように設けられていることで、磁性コア3は閉磁路を形成する。
【0045】
そして、外側コア部32は、その全体が磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料により形成されており、この複合材料の断面をとったとき、気泡の最大径が300μm以下である。
【0046】
磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料は、代表的には、射出成形、注型成形により製造することができる。射出成形では、通常、磁性体粉末と流動性のある状態の樹脂(液状の樹脂)とを混合し、この混合流体を、所定の圧力をかけて成形型(ケース4Aを含む)に流し込んで成形した後、上記樹脂を硬化することで複合材料が得られる。注型成形では、射出成形と同様の混合流体を得た後、この混合流体を、圧力をかけることなく成形型に注入して成形・硬化することで複合材料が得られる。特に、気泡の最大径が300μm以下である複合材料は、後述する特定の条件で混合流体を作製して成形型に充填すると共に、特定の脱気工程を経ることで得られる。実施形態1ではケース4を成形型に利用している。この場合、複雑な形状の複合材料であっても、容易に成形できる。所望の形状の成形体を複数作製して組み合せて、所望の形状の磁性コアを形成することもできる。
【0047】
〔気泡〕
上記複合材料の断面は、コイル2の軸方向に沿って切断した断面、及び軸方向に直交する方向に切断した断面のいずれでもよい。気泡の最大径は、複合材料について一定の大きさの視野(例えば、5mm×7mm)の断面を複数とり(例えば、10断面)、各断面中に存在する気泡の輪郭から当該輪郭の円相当径(各断面において確認できる気泡の形状を、同じ面積の円に変換したときの直径)を算出し、この円相当径を気泡の直径とするとき、上記複数の断面中における気泡の直径の最大値とする。上記断面を光学顕微鏡などで観察し(10倍〜50倍程度)、観察像を市販の画像処理装置により画像処理することで、気泡の輪郭の抽出や円相当径の算出を容易に行える。磁気特性や損失への影響を考慮すると、気泡はできるだけ微小であることが好ましい。従って、気泡の最大径は、小さいほど好ましく、200μm以下、更に100μm以下がより好ましい。
【0048】
最大径が300μm以下の気泡が数多く存在すると、粗大な気泡が存在する場合と同様に、気泡に起因する磁束の迂回によって複合材料中に磁束線の粗密が局所的に生じて、磁気特性の低下や熱伝導率の低下を招く恐れがある。そのため、気泡の最大径が300μm以下であることに加えて、気泡の数もできるだけ少ないことが好ましい。即ち、気泡の含有量自体もできるだけ少ないことが好ましい。具体的には、上記複合材料の断面における気泡の合計面積割合は、1%以下が好ましい。更に、上記複合材料の断面における気泡の合計面積割合は、直径300μmの球状の気泡が1個存在し、この気泡の直径を通る断面円の面積割合以下、具体的には、0.2%以下がより好ましい。なお、直径300μm(0.3mm)の球状の気泡の直径を通る断面円の面積は、(半径0.15mmの2乗)×π≒0.07mm2である。従って、この球状の気泡が1個存在した場合に、5mm×7mm(35mm2)の視野の断面積に対する当該気泡の直径を通る断面円の面積割合は、(0.07/35)×100≒0.2%となる。
【0049】
上記合計面積割合とは、上述の5mm×7mmの視野の断面積に対する気泡の合計面積の割合とする。視野は、その面積が35±5mm2を満たせばよく、その形状は、長方形状、正方形状が挙げられる。
【0050】
〔磁性体粉末〕
外側コア部32を構成する複合材料中の磁性体粉末は、上述した内側コア部31を構成する圧粉成形体の軟磁性粉末と同様の組成でも異なる組成でもよい。外側コア部32を構成する複合材料は、非磁性材料である樹脂を比較的多く含有することから、上記磁性体粉末が内側コア部31を構成する圧粉成形体と同じ組成の軟磁性粉末であっても、上記圧粉成形体よりも飽和磁束密度が低く、かつ比透磁率も低くなる。外側コア部32を構成する磁性体粉末は、純鉄粉末やFe基合金粉末といった鉄基材料からなるものが好適である。また、上記磁性体粉末は、材質の異なる複数種の粉末を混合したものでもよい。上記磁性体粉末が特に金属材料で構成される場合、当該粉末を構成する各粒子の表面に燐酸塩などからなる絶縁被膜を具える被覆粉末であると、渦電流損を低減できる。
【0051】
外側コア部32を構成する複合材料中の磁性体粉末の平均粒径は、1μm以上1000μm以下、特に10μm以上500μm以下が好ましい。ここで、外側コア部32を構成する複合材料中の磁性体粉末と、原料に用いる粉末とは、その大きさが実質的に同じである(維持されている)。原料粉末に上記範囲の大きさの粉末を用いると、混合流体が流動性に優れるため、複合材料の製造性に優れる。上記磁性体粉末は、粒径が異なる複数種の粉末を含んでいてもよい。磁性体粉末が微細粉末と粗大粉末とを含む複合材料を磁性コアに用いることで、飽和磁束密度が高く、低損失なリアクトルが得られ易い。
【0052】
外側コア部32を構成する複合材料中の磁性体粉末の含有量は、複合材料を100%とするとき、30体積%以上70体積%以下、更に40体積%以上65体積%以下、特に40体積%以上60体積%以下が挙げられる。磁性体粉末が30体積%以上であることで、磁性成分の割合が十分に高いため飽和磁束密度といった磁気特性を高め易い。特に、磁性体粉末が鉄やFe-Si合金のような飽和磁束密度が2T程度の材質から構成される場合、磁性体粉末の含有量が30体積%以上であることで飽和磁束密度を0.6T以上にし易く、40体積%以上であることで飽和磁束密度を0.8T以上にし易くなる。磁性体粉末が70体積%以下であることで、製造時、磁性体粉末と樹脂とを混合し易くなり、製造性に優れる。
【0053】
〔樹脂〕
外側コア部32を構成する複合材料においてバインダとなる樹脂は、代表的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂が挙げられる。その他、バインダとなる樹脂として、熱可塑性樹脂、常温硬化性樹脂、或いは低温硬化性樹脂を利用することができる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0054】
〔その他の含有物〕
複合材料の一形態として、磁性体粉末及びバインダとなる樹脂に加えて、アルミナやシリカといったセラミックスからなるフィラー(代表的には、非磁性体粉末)を混合した形態が挙げられる。磁性体粉末に比較して比重が小さい上記フィラーを混合することで、磁性体粉末の偏在を抑制して、全体に磁性体粉末が均一的に分散した複合材料とすることができる。或いは、上記フィラーが熱伝導性に優れる材料から構成される場合、放熱性の向上に寄与することができる。上記フィラーの含有量は、複合材料を100質量%とするとき、0.2質量%以上が挙げられる。上記フィラーの含有量が多いほど、磁性体粉末の偏在の低減や放熱性の向上などの効果が得られるため、0.3質量%以上、更に0.5質量%以上が好ましい。一方、上記フィラーが多過ぎると磁性体粉末の割合の低下を招くことから、上記フィラーの含有量は20質量%以下、更に15質量%以下、特に10質量%以下が好ましい。上記フィラーは、磁性体粉末よりも微粒にすると磁性体粒子間に介在させ易く、当該フィラーの含有による磁性体粉末の割合の低下を抑制し易い。
【0055】
ここでは、外側コア部32は、平均粒径75μm以下の鉄基材料(純鉄)からなる粒子の表面に上記絶縁被膜を具える被覆粉末とエポキシ樹脂との複合材料から構成されている(複合材料中の純鉄粉の含有量:45体積%)。
【0056】
〔磁性体粉末の存在状態〕
複合材料中の磁性体粉末は、当該粉末を構成する磁性体粒子が複合材料中に均一的に分散した形態が代表的である。その他、後述するように脱気工程において保持時間を長くすることで、成形型の底面側(ここではケース4Aの底面40側)に磁性体粉末が多く存在する分布をとる形態とすることができる。つまり、外側コア部32においてケース4Aの底面40側の磁性体粉末の存在割合と、底面40に対向する開口側の磁性体粉末の存在割合とを比較すると、底面40側の存在割合が大きい形態とすることができる。
【0057】
〔形状〕
外側コア部32は、閉磁路が形成できればよく、その形状は特に問わない。ここでは、上述のように外側コア部32を構成する複合材料がコイル2と内側コア部31との組物の実質的に全周を覆うことから、外側コア部32は、コイル2や内側コア部31の封止材としても機能し、コイル2の外部環境から保護や機械的保護の強化を図ることができる。
【0058】
例えば、コイル2の外周の一部が外側コア部32を構成する複合材料により覆われない形態とすることができる。具体的は、例えば、コイル2の外周面においてケース4Aの開口側に配置される領域が上記複合材料に覆われず露出された形態、コイル2において底面側に配置される領域の一部を収納可能な溝をケース4Aの底面に設けて、この溝に収納された箇所が上記複合材料に覆われない形態が挙げられる。上記形態は、コイル2においてケース4Aの底面から最も離れた開口側の領域が露出されたり、ケース4Aとの接触箇所が多くなったりすることで、放熱性を高められる。コイル2の一部を露出させる形態では、ケースの開口部を覆う蓋を具えることが好ましい。この蓋を金属といった導電性材料(ケースと同じ材質でもよい)により構成すると、コイル2の露出箇所から外部への漏れ磁束を抑制できる上に、この蓋を放熱経路にも利用できる。
【0059】
或いは、ケース4Aの内底面40iにコイル2の位置決め部材(図示せず)を別途配置し、コイル2においてこの位置決め部材との接触部分が外側コア部を構成する複合材料により覆われない形態とすることができる。位置決め部材の材質は、コイル2とケース4Aとの間の絶縁性を高められるように絶縁性材料が好ましく、放熱性に優れる材料であると、放熱性を高められる。この位置決め部材とコイル2とは、外側コア部32を構成する複合材料により封止されることで、相互の位置が固定される。
【0060】
内側コア部31の一部も外側コア部32を構成する複合材料により覆われていない形態とすることができる。例えば、内側コア部31におけるコイル2の端面から突出した箇所を支持する支持部材を具え、内側コア部31においてこの支持部材との接触箇所が上記複合材料により覆われない形態が挙げられる。支持部材により内側コア部31は、ケース4Aに対して位置決めされ、内側コア部31が位置決めされることで、コイル2の位置決めも行える。更に、それぞれの位置は、外側コア部32を構成する複合材料により封止されることで固定される。従って、この支持部材を具える場合、上述のコイル2の位置決め部材を省略してもよい。内側コア部31とコイル2とが適切な位置に固定されることで、インダクタンスを設定値通りにし易い。この支持部材は、ケース4Aに一体に成形されたものでもよいし、上記複合材料やその他の材料により作製した別部材としてもよい。支持部材も放熱性に優れる材料により構成することで、放熱性を高められる。また、支持部材の大きさを調整して、内側コア部31を支持した状態においてコイル2とケース4Aの内底面40iとの両者間に隙間を有する形態とすると、両者間の絶縁性を高められ、両者が接触する形態とすると、放熱性を高められる。
【0061】
〔内側コア部と外側コア部との接合〕
内側コア部31と外側コア部32とは接着剤を介在することなく、外側コア部32を構成する複合材料中の樹脂により接合されている。また、ここでは、外側コア部32もギャップ材やエアギャップが介在しておらず、磁性コア3は、その全体に亘ってギャップ材を介することなく一体化された一体化物である。従って、リアクトル1Aでは、磁性コア3の製造に当たり、接着剤などで接合する工程が不要であり、リアクトル1Aの生産性に優れる。
【0062】
内側コア部31と外側コア部32とを接着剤により接合することも可能である。また、ギャップ材を具える形態では、内側コア部31と外側コア部32とギャップ材とを接着剤により接合することも可能である。接着剤により接合する場合には、複数の接着工程に分けて接合することができる。接着剤が十分に少ない場合、接着剤は、実質的にギャップ材として機能していないと考えられる。
【0063】
(磁気特性)
ここでは、内側コア部31は、飽和磁束密度:1.6T以上、かつ外側コア部32の1.2倍以上、比透磁率:100以上500以下、外側コア部32は、飽和磁束密度:0.5T以上内側コア部31の飽和磁束密度未満、比透磁率:5以上30以下、内側コア部31及び外側コア部32からなる磁性コア3全体(実質的に、ギャップ材やエアギャップを介在させていない場合)の比透磁率は10以上100以下である。一定の磁束を得る場合、内側コア部の飽和磁束密度の絶対値が高いほど、また、内側コア部の飽和磁束密度が外側コア部よりも相対的に大きいほど、内側コア部の断面積を小さくし易い。そのため、内側コア部の飽和磁束密度が高い形態は、全体の飽和磁束密度が均一的な磁性コアと同じ磁束を得る場合、内側コア部の断面積の小型化により、リアクトルの小型化に寄与することができる。内側コア部31の飽和磁束密度は、1.8T以上、更に2T以上が好ましく、外側コア部32の飽和磁束密度の1.5倍以上、更に1.8倍以上が好ましく、いずれも上限は設けない。圧粉成形体に代えて、珪素鋼板に代表される電磁鋼板の積層体を利用すると、内側コア部の飽和磁束密度を更に高め易い。一方、外側コア部32の比透磁率を内側コア部31よりも低くすると、例えば、内側コア部31に磁束を通過し易い。また、比透磁率が低い箇所を具えることで、磁気飽和を抑制できるためギャップレス構造の磁性コア3としたりすることができる。
【0064】
[コイルと磁性コア間の介在物]
コイル2と磁性コア3との両者間の絶縁性を高めるために、両者間に絶縁部材を介在させた形態とすることができる。例えば、コイル2の外周面や内周面に絶縁テープを貼り付けたり、コイル2の外周面や内周面を絶縁紙や絶縁シートで覆ったりすることが挙げられる。或いは、内側コア部31の外周やコイル2の外周に筒状のインシュレータを配置してもよい。インシュレータの構成材料には、PPS樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などの絶縁性樹脂が好適に利用できる。このインシュレータは、内側コア部31やコイル2の径方向に分割可能な分割片とすると、内側コア部31の外周やコイル2の外周に容易に配置できる。内側コア部31の外周に配置する筒状体として、両端の周縁から外方に突出する環状のフランジを具える形態とすると、このフランジによりコイル2の端面を覆うことができる。
【0065】
或いは、例えば、コイル2の外周面及び内周面、並びに端面を絶縁性樹脂で覆ったコイル成形体とする形態が挙げられる。コイル2の内周面を覆う樹脂の厚さを調整することで、当該樹脂を内側コア部31の位置決めに利用することができる。コイル2と内側コア部31とを絶縁性樹脂により一体に成形したコイル成形体としてもよい。この場合、コイル2と内側コア部31との一体物をケース4Aに収納し易い。上記絶縁性樹脂は、コイル2の形状を保持したり、コイル2をその自然長よりも圧縮状態に保持したりする機能も有することができる。このようにコイル成形体は、コイル2を取り扱い易く、コイル2の軸方向の長さを短くできる。コイル成形体における樹脂の厚さは、例えば、1mm〜10mm程度が挙げられる。コイル成形体の製造には、例えば、特開2009-218293号公報に記載される製造方法を利用することができる。成形には、射出成形やトランスファー成形、注型成形が挙げられる。絶縁性樹脂は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂やPPS樹脂、LCPなどの熱可塑性樹脂が好適に利用できる。絶縁性樹脂に、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、及び炭化珪素から選択される少なくとも1種のセラミックスからなるフィラーを混合したものを利用すると、放熱性を高められる。
【0066】
コイル2においてターン形成部分から延ばされた巻線2wの引出箇所には、ターン形成部分に比較して、高電圧が加わる場合がある。従って、上記巻線2wの引出箇所のうち、少なくとも磁性コア3(外側コア部32)との接触部分には、上記絶縁性樹脂で覆ったり、絶縁紙や絶縁テープ(例えば、ポリイミドテープ)、絶縁フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)などの絶縁材を適宜巻き付けたり、絶縁材をディップコーティングしたり、絶縁性チューブ(熱収縮チューブ及び常温収縮チューブのいずれでもよい)を配置したりすると、コイル2と磁性コア3(特にここでは外側コア部32)との間の絶縁性を高められる。
【0067】
[ケース]
ケース4Aは、代表的には、矩形板状の底面40と、底面40から立設される矩形枠状の側壁41とで構成される直方体状の箱体で、底面40との対向面が開口したものが挙げられる。なお、ケース4Aの底面40とは、リアクトル1Aが設置対象に設置されたとき、当該設置対象に接する面とする。ここでは、底面40が下方に配置された形態を示すが、側方(図1において左右)や上方に配置される場合がある。ケース4Aが冷却ベースといった設置対象に配置されることで、底面40は冷却面となり、コイル2の熱はケース4Aを介して設置対象に伝えられてコイル2が冷却される。
【0068】
ケース4Aは、代表的には、コイル2と磁性コア3との組合体を収納して、組合体を粉塵や腐食といった外部環境から保護したり、機械的に保護したりする容器として利用されると共に、放熱経路に利用される。従って、ケース4Aの構成材料は、熱伝導性に優れる材料、好ましくは鉄などの磁性体粉末よりも熱伝導率が高い材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金といった金属を好適に利用できる。これらアルミニウムやマグネシウム、その合金は、軽量であることから、軽量化が望まれる自動車部品の構成材料にも好適である。また、これらアルミニウムやマグネシウム、その合金は、非磁性材料で、かつ導電性材料でもあることから、ケース4A外部への漏れ磁束も効果的に防止できる。ここでは、ケース4Aは、アルミニウム合金から構成している。
【0069】
底面40は、図2に示すように、その表裏面(内底面40i及び外底面40o)を平面としてもよいが、上述のようにコイル2の外周形状に沿った溝や内側コア部31を支持する支持部材を具える形態とすると、コイル2や内側コア部31の熱をケース4Aに伝え易く、放熱性を高められる。また、側壁41に放熱フィンなどを具える形態とすると、放熱性を高められる。
【0070】
その他、ケース4Aは、図1に示すようにリアクトル1Aを設置対象にボルトといった固定部材により固定するためのボルト孔45hを有する取付部45を具える。取付部45を有することで、ボルトなどの固定部材によりリアクトル1Aを設置対象に容易に固定できる。このようなケース4Aは、鋳造や切削加工、塑性加工などにより、容易に製造できる。
【0071】
コイル2とケース4Aとの間の絶縁性を高めるために、コイル2とケース4Aとの間に上述した絶縁材を配置した形態とすることができる。この絶縁材は、コイル2とケース4Aとの間に求められる最低限の絶縁を確保できる程度に存在すればよく、できるだけ薄くすることで、放熱性を高められる上に、小型化を図ることができる。また、上記絶縁材として、熱伝導性に優れる材質からなるものを利用すると放熱性をより高められる。或いは、上記絶縁材として、絶縁性接着剤を利用すると、コイル2をケース4Aに確実に固定できる上に、絶縁を確保できる。この接着剤は、特に、熱伝導性に優れるもの、例えば、アルミナなどの熱伝導性及び電気絶縁性に優れるフィラーを含有するものを利用すると放熱性を高められる。
【0072】
そして、リアクトル1Aでは、ケース4Aに対してコイル2を横長に収納した横型形態としている。横型形態は、コイル2の外周面とケース4Aの内底面40iとの接触面積を大きくしたり、コイル2の外周面からケース4Aの内底面40iまでの距離が短い領域、即ち設置対象に近接した領域を増大し易い。そのため、横型形態は、コイル2の熱をケース4Aに効率よく伝達でき、この熱は、設置対象に接しているケース4Aの外底面40oを経て設置対象に伝えられる。従って、横型形態は、放熱性に優れる。
【0073】
[用途]
上記構成を具えるリアクトル1Aは、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用できる。
【0074】
[リアクトルの大きさ]
リアクトル1Aを車載部品とする場合、リアクトル1Aは、ケース4Aを含めた容量が0.2リットル(200cm3)〜0.8リットル(800cm3)程度であることが好ましい。より具体的には、端面形状が円形状のコイルの場合、内径:20mm〜80mm、巻き数:30〜70、円筒状の内側コア部の場合、直径:10mm〜70mm、高さ(軸方向の長さ):20mm〜120mm、矩形箱状のケースの底面の一辺:30mm〜100mmが挙げられる。本例では、約500cm3である。
【0075】
[リアクトルの製造方法]
気泡の最大径が300μm以下である複合材料からなる外側コア部32を具えるリアクトル1Aは、以下のようにして製造することができる。
【0076】
(準備工程)
まず、成形型となるケース4A、ケース4Aに収納するコイル2と内側コア部31との組物を用意する。コイル2と内側コア部31との間に、上述した絶縁材が介在する形態としてもよい。
【0077】
(混合工程)
所望の磁性体粉末及び樹脂、適宜非磁性体粉末を用意してこれらを容器内に入れ、混合・撹拌して混合流体を作製する。特に、この混合工程では、脱気しながら行う。脱気は、真空引きすることが挙げられる。混合工程の最終到達真空度は、10Pa〜1000Pa程度が好ましい。ここでは、500Pa程度とした。混合工程は、雰囲気中の気体(主として空気)を最も巻き込み易く、巻き込んだ気体が気泡として複合材料に残存し易い。従って、脱気しながら混合することで、複合材料中の気泡を小さく、かつ低減し易い。この混合工程は、容器内を脱気可能な脱気機構を具える市販の撹拌装置を利用することで容易に行える。なお、混合工程は、室温(20℃〜25℃程度)とすることができる。
【0078】
(充填工程)
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂は、一般に温度が高いほど、粘度が低くなり流動性を高められる。そこで、混合工程を経た混合流体を成形型(ここではケース4A)に充填するにあたり混合流体の温度を高くする。この温度は、混合流体の粘度が最小となる温度Tminよりも5℃以上20℃以下の範囲で低い温度とする。具体的には、この温度T1は、(Tmin−20)℃〜(Tmin−5)℃から選択された温度とする。混合流体の温度をT1(℃)にすることで、充填が容易な程度に混合流体を低粘度にできる。
【0079】
所望の混合流体における上記温度Tminは、所望の磁性体粉末、樹脂、適宜非磁性体粉末を所望の割合で配合した混合流体を作製し、当該混合流体の温度と粘度との関係を予め調べることで求められる。温度T1は、温度Tminにより決定するとよい。種々の組成の磁性体粉末や樹脂を用意し、配合量が異なる複数種の混合流体を予め作製して、各混合流体の粘度と温度との関係を予め測定したデータを用意しておくと、この測定データを参照することで所望の混合流体における温度Tminを容易に求められる。
【0080】
また、成形型(ここでは、用意した組物を収納したケース4A)の温度も、上述の温度範囲:(Tmin−20)℃〜(Tmin−5)℃から選択された温度:T2(℃)とする。このため、混合流体と成形型との温度差が小さい(最大15℃)。混合流体と成形型との温度差が無く、両者の温度を等しくしてもよい(T1=T2)。混合流体と成形型との両者を所定の温度(T1,T2)にすることで、両者の少なくとも一方が室温である場合と比較して、混合流体中の気泡を排出し易い。また、両者の温度差が小さい(最大で15℃)ことで、成形型に充填された混合流体が成形型に加熱されて粘度が高まったり、成形型に冷却されて気泡が逃げ難くなることを防止できる。この温度T2(℃)の成形型に、温度T1(℃)の混合流体を充填する。充填時にも真空引きを行うと(好ましくは最終到達真空度:1000Pa以下)、気泡をより低減し易い。この充填工程は、恒温槽に成形型を配置しておき、成形型を一定の温度に保持可能な状態として行うことが挙げられる。ここでは、温度Tmin:80℃、混合流体の温度T1及び成形型:ケース4Aの温度T2:70℃((Tmin−10)℃)とした。
【0081】
(脱気工程)
そして、成形型(ここではケース4A)に混合流体を充填した後、脱気しながら、当該混合流体を温度Tmin±5(℃)に所定時間保持する。混合流体を温度Tmin(℃)及びその近傍に保持することで、混合流体が最も低粘度であるため、混合流体中の気泡が移動し易く、混合流体中から排出され易い。かつ、脱気のために真空引きすることで、混合流体から排出された気泡を外部に確実に排出できる。特に、最終到達真空度を1Pa以下とすることで、気泡をより排出し易い。
【0082】
上記保持温度は、Tmin±3(℃)、更にTmin(℃)が好ましい。上記最終到達真空度は、0.1Pa以下、更に0.01Pa(1×10-2Pa)以下が好ましい。保持時間は、混合流体の樹脂の粘度や磁性体粉末の含有量などにもよるが、10分〜20分程度が挙げられる。脱気工程は、恒温槽に成形型(ここではケース4A)を収納した状態で真空引きすることで行える。ここでは、保持温度:80℃、保持時間:15分程度、最終真空度:1×10-2Paとした。なお、80℃における樹脂の粘度、及び混合流体の粘度を市販の標準的な粘度計で調べたところ、樹脂:1Pa・s程度、混合流体:4Pa・s程度であった。
【0083】
ここで、従来、複合材料を製造する場合、複合材料中に磁性体粉末を均一的に分散した状態にするため、成形型(ケースを含む)に混合流体を充填後、磁性体粉末が沈降しないように、できるだけ速やかに樹脂を硬化していた。これに対して、本発明では、混合流体を充填後に単に真空引きするだけでなく、混合流体が最も低粘度になる温度に当該混合流体を所定の時間保持する工程を積極的に設けている。そのため、本発明では、得られた複合材料中の磁性体粉末が成形型(ここではケース4A)の開口側に比較して底面側に多く存在する形態を許容する。特に、上記保持時間をより長くすると(例えば、30分以上)、磁性体粉末が成形型(ここではケース4A)の底面側に偏在した形態になり易い。上述した非磁性体粉末からなるフィラーを混合することで複合材料中における磁性体粉末の偏在を抑制することができる。なお、上述した横型形態の場合、ケース4Aの底面側に磁性体粉末が偏在したことによるインダクタンスの影響が後述する縦型形態に比較して小さい。また、ケースの底面側に偏在する磁性体粉末を放熱経路とすることで、ケースの底面にコイルの熱を伝え易く、放熱性を高められる。
【0084】
(硬化工程)
脱気工程を経て、樹脂を硬化する。硬化温度は、樹脂に応じて適宜選択するとよい。樹脂の架橋密度を高める場合は、硬化温度に保持した後、架橋密度を高める温度にして保持する、という2段階の硬化工程とするとよい。硬化工程では、真空引きを行う必要はないが、上記脱気工程で真空とした恒温槽にて、引き続いて硬化工程を行う場合、真空状態で硬化してもよい。ここでは、上記2段階の硬化工程を行っており、1段階目では、保持温度:120℃、保持時間:2時間、2段階目では、保持温度:150℃、保持時間:4時間とした。樹脂の硬化により、外側コア部32を形成することができ、同時にリアクトル1Aが得られる。
【0085】
複合材料中の樹脂として常温硬化性樹脂や低温硬化性樹脂を利用する場合には、常温における粘度や所定の低温としたときの粘度が十分に低いものを利用し、上述した製造方法において、温度以外の条件を適用する(脱気しながら撹拌、脱気しながら所定時間保持)ことで、気泡の最大径が300μm以下である複合材料が得られる。
【0086】
図3(A):実施例は、リアクトル1Aの外側コア部32の断面の顕微鏡写真である。図3(A)に示すように、上述の特定の脱気工程を具える製造方法により外側コア部32を形成することで、外側コア部32を構成する複合材料中における気泡の最大径が300μm以下であることが分かる。また、この例では、気泡が非常に少なく、実質的に存在していない。一方、比較例として、上述の特定の脱気工程を設けず、上述した充填工程を経た後、直ちに硬化工程を行ったリアクトルを作製し、同様に外側コア部の断面を顕微鏡により観察した。その結果、比較例のリアクトルでは、図3(B)に示すように、外側コア部を構成する複合材料中に最大径が300μm(0.3mm)を超える気泡が存在することが分かる。この例では、気泡の最大径が500μm(0.5mm)以上であり、気泡も多い。複合材料の断面に対する気泡の面積割合(複合材料の断面:5mm×7mmに存在する全ての気泡を合計し、断面:5mm×7mmに対する気泡の合計面積の割合)は1.4%であった。また、複合材料の他の断面についても同様に観察して、気泡の面積割合を同様に測定したところ、気泡の面積割合は、2.8%、3.7%であった。このように、比較例のリアクトルに具える複合材料では、粗大な気泡が存在する上に、複合材料の断面における気泡の面積割合がいずれも、1%以下になっていない。
【0087】
[効果]
リアクトル1Aは、磁性コア3の一部が磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料から構成されており、当該複合材料中の気泡の最大径が300μm以下であるため、損失の低下や磁気特性の低下を抑制することができる。従って、リアクトル1Aは、低損失で磁気特性に優れる。
【0088】
また、リアクトル1Aでは、外側コア部32が上記複合材料であることで、コイル2や内側コア部31の一部を覆うといった複雑な形状であっても外側コア部32を容易に形成できる。更に、リアクトル1Aでは、外側コア部32が上記複合材料であり、ケース4Aを成形型に利用することで、外側コア部32の形成と同時に、外側コア部32の構成樹脂により内側コア部31と外側コア部32とが接合されて磁性コア3が形成され、その結果リアクトル1Aが製造できるため、製造工程が少ない。加えて、リアクトル1Aは、ギャップレス構造であることから、ギャップ材の接合工程が不要である。これらの点から、リアクトル1Aは、生産性にも優れる。
【0089】
更に、リアクトル1Aは、コイル2を一つとし、このコイル2の軸方向がケース4Aの外底面40oに実質的に平行となるようにコイル2がケース4Aに収納された横型形態であるため、コイル2の外周面とケース4Aとの距離が短く、放熱性に優れる。また、リアクトル1Aは、嵩が小さく、小型である。
【0090】
その他、外側コア部32が上記複合材料であることで、(1)外側コア部32の磁気特性を容易に変更可能である、(2)コイル2の外周を覆う材料が磁性体粉末を含有するため、樹脂だけの場合よりも熱伝導率が高く放熱性に優れる、(3)外側コア部32が樹脂成分を具えることで、ケース4Aが開口していても、コイル2や内側コア部31の外部環境からの保護・機械的保護を図ることができる、といった効果を奏する。
【0091】
《実施形態2》
図4を参照して、実施形態2のリアクトル1Bを説明する。リアクトル1Bの基本的構成は、上述した実施形態1のリアクトル1Aと同様であり、コイル2と、磁性コア3と、コイル2及び磁性コア3を収納するケース4Bとを具える。磁性コア3は、コイル2に挿通配置された内側コア部31と、コイル2の外周を覆う外側コア部32とを具え、外側コア部32は、磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料で構成されている。また、この複合材料中の気泡の最大径が300μm以下である。リアクトル1Bにおいてリアクトル1Aとの相違点は、コイル2の収納形態にある。以下、この相違点及びその効果を詳細に説明し、実施形態1と共通するその他の構成及び効果は詳細な説明を省略する。
【0092】
ケース4Bは、矩形板状の底面40と底面40から立設される矩形枠状の側壁41とを具える。コイル2は、ケース4Bの内底面40iに対して、コイル2の軸が底面40(外底面40o)に垂直になるようにケース4Bに収納されている(以下、この形態を縦型形態と呼ぶ)。また、コイル2に挿通された内側コア部31もその軸が底面40に垂直になるように収納され、内側コア部31の一方の端面31eがケース4Bの内底面40iに接している。外側コア部32は、ケース4Bに収納されたコイル2の外周面と、内側コア部31の一方の端面31eの近傍の外周面と、内側コア部31の他方の端面31e及びその近傍の外周面とを覆う。
【0093】
ケース4B内には、図4(B)に示すようにケース4Bの中間部にコイル2を配置するために、コイル2の位置決め部材(図示せず)を具える。位置決め部材は、ケース4Bに一体に成形された形態でも、外側コア部32を構成する複合材料などで構成した別部材である形態でもよい。内側コア部31の位置決め部材(図示せず。例えば、内底面40iから突出した突起など)も具える形態とすることができる。
【0094】
縦型形態のリアクトル1Bは、ケース4Bの底面40を小さくできることから、横型形態のリアクトル1Aと比較して設置面積を小さくできる。また、内側コア部31は、その端面31eをケース4Bに対する接触面とすることでケース4Bに対する安定性に優れる。
【0095】
縦型形態のリアクトル1Bも、横型形態のリアクトル1Aと同様にして製造することができる。特に、縦型形態の場合、複合材料が縦に長くなり、気泡の排出経路が長くなる傾向にあるが、上述の特定の脱気工程を具えることで、粗大な気泡の発生を防止できる。
【0096】
《変形例1》
上記実施形態1,2は、内側コア部31が圧粉成形体から構成され、外側コア部32のみが複合材料から構成された形態を説明した。その他、内側コア部も磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料により構成された形態、つまり、磁性コアの実質的に全てが複合材料によって構成された形態とすることができる。この場合、ケースにコイルのみを収納した後、コイルの内外を覆うように混合流体をケースに充填することで、内側コア部及び外側コア部が同一の複合材料からなる形態を形成することができる。また、この形態は、磁性コアを一度に製造でき、生産性に優れる。
【0097】
或いは、内側コア部と外側コア部とは、磁性体粉末の材質や含有量が異なる複合材料により構成された形態とすることができる。この場合、例えば、所望の組成の混合流体により、柱状の複合材料を別途作製しておき、この複合材料を内側コア部に利用するとよい。この複合材料の製造に当たり、上述の特定の脱気工程を具える製造方法を利用することで、内側コア部を構成する複合材料も、気泡の最大径を300μm以下とすることができる。磁性体粉末の材質や含有量を異ならせることで、内側コア部の飽和磁束密度を外側コア部よりも高めた形態、外側コア部の飽和磁束密度を内側コア部よりも高めた形態とすることができる。磁性体粉末の配合量を多くすると、飽和磁束密度が高い複合材料が得られ易く、上記配合量を少なくすると、比透磁率が低い複合材料が得られ易い。
【0098】
《変形例2》
或いは、上述のように柱状の複合材料を内側コア部とし、外側コア部を圧粉成形体から構成された形態とすることができる。この形態は、内側コア部の比透磁率を外側コア部よりも低く、外側コア部の飽和磁束密度を内側コア部よりも高くすることができ、この構成により、外側コア部における漏れ磁束を低減できる。
【0099】
《実施形態3》
上記実施形態1,2は、コイル2を一つ具える形態を説明した。その他、図5(A)に示すリアクトル1Cのように1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる一対のコイル素子2a,2bを具えるコイル2と、これらコイル素子2a,2bが配置される環状の磁性コア3(図5(B))とを具える形態とすることができる。
【0100】
コイル2は、一対のコイル素子2a,2bの軸が平行するように横並び(並列)され、巻線2wの一部を折り返してなる連結部2rにより連結された形態が代表的である。各コイル素子2a,2bを別個の巻線により形成し、両コイル素子を構成する巻線の一端部同士をTIG溶接などの溶接、圧着、半田付けなどで接合した形態、上記一端部同士を別途用意した連結部材を介して接合した形態とすることもできる。コイル素子2a,2bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向であり、中空の筒状に形成されている。
【0101】
磁性コア3は、各コイル素子2a,2bの内側に配置される一対の柱状の内側コア部31,31と、コイル2外に配置されてコイル2から露出される一対の柱状の外側コア部32,32とを有する。磁性コア3は、図5(B)に示すように離隔して配置された両内側コア部31,31の一端面同士が一方の外側コア部32を介して連結され、両内側コア部31,31の他端面同士が他方の外側コア部32を介して連結されて環状に形成される。
【0102】
その他、リアクトル1Cは、コイル2と磁性コア3との間の絶縁性を高めるためのインシュレータ5を具える。このインシュレータ5は、柱状の内側コア部31の外周に配置される筒状部(図示せず)と、コイル2の端面(ターンが環状に見える面)に当接され、内側コア部31,31が挿通される二つの貫通孔(図示せず)を有する一対の枠板部52とを具える。インシュレータ5の構成材料には、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCPなどの絶縁性材料が利用できる。
【0103】
そして、この形態に具える磁性コア3は、例えば、実施形態1,2と同様に、コイル素子2a,2bの内側に配置される箇所:内側コア部31,31を圧粉成形体などとし、コイル2外に配置される箇所:外側コア部32,32を上述の複合材料とする形態(3-1)、コイル素子2a,2bの内側に配置される箇所:内側コア部31,31を上述の複合材料とし、コイル2外に配置される箇所:外側コア部32,32を圧粉成形体などとする形態(3-2)、変形例1と同様に、磁性コア3の全体を上述の複合材料とする形態(3-3)とすることができる。これら三つの形態(3-1),(3-2),(3-3)のいずれにおいても各内側コア部31は、複合材料や圧粉成形体などの磁性材料のみから構成される形態にすることができるし、図5(B)に示すように上述の磁性材料からなるコア片31mと、コア片31mよりも比透磁率が低い材料からなるギャップ材31gとを交互に積層した積層体から構成される形態にすることもできる。ギャップ材31gは、上述のように、非磁性材料からなるものでもよいし、非磁性材料と磁性体粉末とを含む混合材料から構成されて比透磁率が1よりも大きいもの(比透磁率は、1超5以下が好ましく、更に1.1以上1.4以下が好ましい)でもよい。各外側コア部32は、例えば、上述の磁性材料からなるコア片31mから構成される形態が挙げられる。なお、形態(3-1)の別の形態として、実施形態1と同様に、コイル2と内側コア部31,32との組物の外周を覆うように上述の複合材料が設けられた形態とすることができる。
【0104】
上述の形態(3-1)では、圧粉成形体などからなる内側コア部31の飽和磁束密度を、樹脂を含有する複合材料からなる外側コア部32よりも高くし易い。内側コア部31の飽和磁束密度が高いことで、上述のように内側コア部31の断面を小さくできる。内側コア部31の小型化により、形態(3-1)は、上述のように小型なリアクトルを構築することができる。また、内側コア部31の小型化により、形態(3-1)は、巻線2wを短くでき、リアクトルの軽量化を図ることができる。上述の形態(3-2)は、形態(3-1)とは逆に外側コア部32の飽和磁束密度を内側コア部31より高め易いため、外側コア部32から外部への漏れ磁束を低減できる。従って、形態(3-2)は、漏れ磁束に伴う損失を低減したり、コイル2による磁束を十分に活用できる。上述の形態(3-3)は、磁性コア全体を一様な材質とするとき、磁性コアを一つの成形体とする場合は勿論、複数のコア片によって構成する場合にも磁性コアを容易に製造でき、生産性に優れる。また、形態(3-3)は、磁性体粉末の材質や含有量を調整して比透磁率が低い(例えば、比透磁率が10以上20以下である)複合材料とする場合、ギャップレス構造とすることができ、ギャップ部分の漏れ磁束が生じ得ない上にギャップに伴うリアクトルの大型化の抑制を図ることができる。或いは、各コア片における磁性体粉末の材質や含有量を異ならせることで、形態(3-1)や形態(3-2)と同様に、形態(3-3)も、磁性コアの磁気特性を部分的に異ならせることができる。更に、形態(3-3)は、コイルの内外を複合材料によって覆う形態とすると、当該複合材料の樹脂成分によってコイルを保護できる。
【0105】
実施形態3のリアクトル1Cに具える内側コア部31も、実施形態1と同様に、所望の形状の金型を用いて成形した一体物としたり、複数のコア片を接着剤や接着テープなどで固定した一体物とすることができる。また、内側コア部31と外側コア部32との接合は、内側コア部31又は外側コア部32を構成する複合材料中の樹脂によって行うことができる。この場合、内側コア部31と外側コア部32とは、接着剤を介在することなく接合される。複合材料中の樹脂を接合に利用すると接着剤を不要にできるため、工程数を低減でき、リアクトル1Cの生産性に優れる。或いは、実施形態1と同様に、内側コア部31と外側コア部32とを接着剤により接合したり、ギャップ材を具える形態では内側コア部31と外側コア部32とギャップ材とを接着剤により接合したりすることができる。また、接着工程を複数に分けることもできる。接着剤が十分に少ない場合には、接着剤はギャップ材として機能していないと考えられる。
【0106】
《試験例1》
複合材料中に存在する気泡の大きさ(ここでは直径)と、損失(ここでは鉄損)及びインダクタンスとの関係をシミュレーションにより調べた。
【0107】
ここでは、実施形態1のリアクトル(コイル、磁性コア(内側コア部及び外側コア部)、磁性コアとコイルとの組物を収納するケース)をモデル化した試料を対象とした。そして、外側コア部を構成する複合材料中に表1に示す直径の気泡(モデル化した気泡)が一つ存在する場合を想定し、直径を変化したときの鉄損の変化、インダクタンスの変化を3次元磁場解析により計算した。解析には、市販のCAE(Computer Aided Engineering)ソフトを用いた。その結果を表1,図6(損失),図7(インダクタンス)に示す。気泡が存在しない理想状態の試料No.1の鉄損及びインダクタンス値を基準(1)とし、各試料No.2〜6について、理想状態の試料No.1の鉄損に対する鉄損の増加度合い、理想状態の試料No.1のインダクタンスに対するインダクタンスの低減度合いを求めた。インダクタンスは、通電電流値を170Aとした。
【0108】
【表1】

【0109】
表1,図6,図7に示すように、気泡の最大径が300μm(0.3mm)以下であると、損失の増大が非常に小さいことが分かる。具体的には、気泡の最大径が300μm(0.3mm)以下であると、気泡の最大径が0mmの場合、つまり、気泡が無い場合に対して、損失の増大率を0.01%以下に抑えられ、インダクタンスの低下率も0.01%以下に抑えられる。このように気泡の最大径が300μm(0.3mm)以下であると、損失の増大やインダクタンスの低下が極めて小さいことが分かる。以上から、気泡の最大径が300μm以下である複合材料をリアクトルの磁性コアの素材に用いることで、低損失で、磁気特性が低下し難いリアクトルが得られることが分かる。更に、表1,図6,図7に示す結果から、気泡の最大径が200μm以下、更に100μm以下であると、損失の増加やインダクタンスの低下を実質的にゼロにすることができるといえる。
【0110】
《参考試験例2》
複合材料中に存在する気泡の含有量(体積%)と、損失(ここでは鉄損)及びインダクタンスとの関係をシミュレーションにより調べた。
【0111】
ここでは、試験例1と同様に、実施形態1のリアクトルをモデル化した試料を対象とした。そして、外側コア部を構成する複合材料中に直径が300μmの気泡(モデル化した気泡)が存在する場合に、当該気泡の含有量が変化したときの鉄損の変化、インダクタンスの変化を試験例1と同様に市販のソフトを用いて3次元磁場解析により計算した。その結果を表2,図8(損失),図9(インダクタンス)に示す。試験例1と同様に気泡が存在しない理想状態の試料No.11の鉄損及びインダクタンス値を基準(1)とし、各試料No.12〜17について、理想状態の試料No.11の鉄損に対する鉄損の増加度合い、理想状態の試料No.11のインダクタンスに対するインダクタンスの低減度合いを求めた。気泡の含有量(体積%)は、複合材料に直径300μmの気泡が1つ以上存在するとして、気泡の個数を変化させることによって気泡の含有率を変化させた。インダクタンスは、通電電流値を170Aとした。
【0112】
【表2】

【0113】
表2,図8,図9に示すように、気泡の最大径が300μm以下で、かつ、気泡の含有量が10体積%以下である複合材料をリアクトルの磁性コアの素材に用いることで、低損失で、磁気特性が低下し難いリアクトルが得られると言える。インダクタンスの低下度合いや損失の増加度合いの許容範囲によっては、気泡の含有量が5体積%以下、更に1体積%以下である複合材料をリアクトルの磁性コアの素材に用いることで、更に低損失で、磁気特性がより低下し難いリアクトルが得られると言える。損失をより小さくしたい場合には気泡の含有量が0.5体積%未満である複合材料をリアクトルの磁性コアの素材に用いるとよい。
【0114】
なお、リアクトルの磁性コアなどに用いられている複合材料中に存在する気泡の含有量(体積%)は、例えば、以下のようにして測定できる。まず、上記複合材料から適当なサイズの試験片を切り出し、試験片全体の密度:Dallを測定する。次に、この試験片において、気泡が存在していない部分を切り出して、この部分の密度:Dnoを測定する。そして、これらを用いて、気泡の含有量(体積%)は、{(気泡が存在しない部分の密度:Dno−試験片全体の密度:Dall)/気泡が存在しない部分の密度:Dno}×100(%)によって算出できる。密度ρの測定方法は、空気中での重さと水中での重さとを用いて、以下のように求められる。ρw:水の密度、ρair:空気の密度、Ww:水中での重さ、Wair:空気中での重さとすると、アルキメデスの原理から、
ρ=(ρw×Wairair×Ww)/(Wair-Ww)
となる。近似的には、ρw≫ρairなのでρ≒ρw×Wair/(Wair-Ww)とできる。
【0115】
《実施形態4》
上記実施形態1〜3や変形例1,2のリアクトルは、例えば、車両などに載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを具える電力変換装置の構成部品に利用することができる。
【0116】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、図10に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを具える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを具える。なお、図10では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを具える形態とすることができる。
【0117】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V〜300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V〜700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0118】
コンバータ1110は、図11に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトルLとを具え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子1111には、FET,IGBTなどのパワーデバイスが利用される。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上記実施形態1〜3や変形例1,2のリアクトル1Aなどを具える。磁束密度が高く低損失なリアクトル1Aなどを具えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110は、低損失である。
【0119】
なお、車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を具える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上記実施形態1〜3や変形例1,2のリアクトル1Aなどと同様の構成を具え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用することができる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上記実施形態1〜3や変形例1,2のリアクトル1Aなどを利用することもできる。
【0120】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。例えば、複合材料の材質(磁性体粉末の組成、含有量、樹脂の種類など)、磁性体粉末の大きさ、磁性コアの材質、コイルの端面形状などを変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明リアクトルは、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車といった車両に搭載されるDC-DCコンバータや、空調機のコンバータ、電力変換装置などの構成部品に利用することができる。本発明リアクトル用コアは、上記本発明リアクトルの構成部品に好適に利用することができる。本発明複合材料は、上記本発明リアクトルや、その他の磁性部品の構成材料に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1A,1B,1C リアクトル
2 コイル 2w 巻線 2a,2b コイル素子 2r 連結部
3 磁性コア 31 内側コア部 31e 端面 31m コア片 31g ギャップ材
32 外側コア部
4A,4B ケース 40 底面 40i 内底面 40o 外底面 41 側壁
45 取付部 45h ボルト孔
5 インシュレータ 52 枠板部
1100 電力変換装置 1110 コンバータ 1111 スイッチング素子
1112 駆動回路 L リアクトル 1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ 1160 補機電源用コンバータ
1200 車両 1210 メインバッテリ 1220 モータ 1230 サブバッテリ
1240 補機類 1250 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、磁性コアとを具えるリアクトルであって、
前記磁性コアの少なくとも一部は、磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料から構成されており、
前記複合材料の断面における気泡の最大径が300μm以下であることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記複合材料の断面における気泡の合計面積割合が1%以下である請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記複合材料の断面における気泡の合計面積割合が0.2%以下である請求項1に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記複合材料における磁性体粉末の体積割合が30体積%以上70体積%以下である請求項1に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記磁性コアにおいて、巻線を巻回してなる筒状のコイルの内側に配置される箇所の少なくとも一部が前記複合材料によって構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記磁性コアにおいて、巻線を巻回してなる筒状のコイル外に配置される箇所の少なくとも一部が前記複合材料によって構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記磁性コアの実質的に全てが前記複合材料によって構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記コイルと前記磁性コアとの組合体を収納するケースを更に具え、
前記コイルは、前記ケースの底面に対してその軸が実質的に平行するように当該ケースに収納され、
前記磁性コアにおいて、前記コイルの外周の少なくとも一部を覆う箇所が前記複合材料により構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項9】
磁性体粉末と樹脂とを含有する複合材料であって、
前記複合材料の断面における気泡の最大径が300μm以下であることを特徴とする複合材料。
【請求項10】
前記複合材料の断面における気泡の合計面積割合が1%以下である請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
前記複合材料の断面における気泡の合計面積割合が0.2%以下である請求項9に記載の複合材料。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の複合材料からなることを特徴とするリアクトル用コア。
【請求項13】
スイッチング素子と、前記スイッチング素子の動作を制御する駆動回路と、スイッチング動作を平滑にするリアクトルとを具え、前記スイッチング素子の動作により、入力電圧を変換するコンバータであって、
前記リアクトルは、請求項1〜8のいずれか1項に記載のリアクトルであることを特徴とするコンバータ。
【請求項14】
入力電圧を変換するコンバータと、前記コンバータに接続されて、直流と交流とを相互に変換するインバータとを具え、このインバータで変換された電力により負荷を駆動するための電力変換装置であって、
前記コンバータは、請求項13に記載のコンバータであることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−238836(P2012−238836A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−47082(P2012−47082)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】