説明

リストセチン非存在下のフォンビルブラント因子活性の測定方法及びADAMTS−13プロテアーゼの測定方法

本発明は、凝固診断の分野にあり、そして試料中のフォンビルブラント因子(VWF)活性をインビトロで測定する方法に関する。本方法はGPIbαタンパク質の突然変異機能獲得型変異の使用を含み、従ってリストセチン、ボトロセチン又は別のリストセチン−又はボトロセチン−等価物質の使用を省略することを可能にする。本発明は、更にADAMTS−13プロテアーゼのフォンビルブラント因子(VWF)切断活性を測定する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固診断の分野にあり、そして試料中のフォンビルブラント因子(VWF)の活性をインビトロで測定する方法に関する。本方法は、GPIbαタンパク質の突然変異機能獲得型変異体の使用を含み、それによりリストセチン、ボトロセチン、又は別のリストセチン−若しくはボトロセチン−等価物質の使用を省略することを可能にする。本発明は、更に、ADAMTS−13プロテアーゼのフォンビルブラント因子(VWF)切断活性を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォンビルブラント因子(VWF)は、一次止血の過程において重要な機能を有する、血漿中の高分子量多量体糖タンパク質である。VWFは、とりわけ血小板表面に位置するコラーゲン及び糖タンパク質Ib(GPIb)に対する結合部位を有する。GPIbは内在性膜タンパク質であり、それは、別の内在性膜タンパク質、糖タンパク質IX(GPIX)と共に、血小板膜において糖タンパク質Ib−IX−受容体複合体を形成する。GPIbは、約145kDaの見かけの分子量を有する重鎖(同義語:α鎖又はGPIbα)、及び約22kDaの見かけの分子量を有する軽鎖(同義語:β鎖又はGPIbβ)を含む2重鎖分子であり、互いにジスルフィド結合により連結されている[非特許文献1]。
【0003】
血管損傷の場合、コラーゲン表面は露出し、そこにVWFが結合する。コラーゲンへのその結合に因り、そしてコラーゲン結合VWFに作用するずり応力増加の影響下で、VWFは、それが血小板膜のGPIb−IX−受容体複合体中のGPIb重鎖(GPIbα)のアミノ末端に結合し得るように変化し又は活性化される。このようにして、活性化VWFは通過する血小板を捕捉し、損傷部位でVWF、コラーゲン及び血小板の最初の凝集形成をもたらす。続いて、血小板が活性化され、それにより、複数の増幅カスケード及び更なる血小板の付着後に、最終的に創傷閉塞をもたらす血漿凝固が開始する。
【0004】
定性的又は定量的VWF障害は、最も一般的な遺伝性出血性病態の1つとして、「フォンビルブラント症候群」(同義語:フォンビルブラント病、VWD)の原因である。種々のスクリーニング法が、例えば出血時間(BT)を測定することなど、例えばELISA法などのVWF抗原濃度(VWF:Ag)を測定する定量法、及び例えばリストセチン誘発血小板凝集(VWF:RCo)などのVWFを測定する方法など、フォンビルブラント症候群を診断するのに利用可能である。
【0005】
リストセチン補因子分析ともいわれる、安定化血小板のリストセチン誘発凝集方法は、VWF抗原濃度を測定する定量法によって検出されないVWFタンパク質のそれらの機能的欠陥も識別する。従って、フォンビルブラント症候群の完全診断には、リストセチン補因子活性を測定するためのリストセチン補因子分析を行なうことが必要になる。リストセチン補因子分析は、通常患者血漿試料を固定血小板と、及びリストセチンと混合することにより行われる。リストセチンは、試料中に存在するVWFの、加えた血小板のGPIb受容体への結合を誘発し、血小板の凝集をもたらす。この凝集反応の程度は患者試料中に存在する活性VWFの量と相関する。該凝集反応は、例えば、透過率の増加を測定することにより光学的に記録され、それによりVWF:RCo活性を定量化し得る。
【0006】
VWF抗原分析に比べて、リストセチン補因子分析はVWF活性を測定する利点を有し、従って機能的VWF障害を、及びフォンビルブラント症候群の種々サブタイプの分類を、そのうちのいくつかだけはVWF抗原濃度低下を伴うが、識別することを可能にする。該サブタイプは、しばしばVWFリストセチン補因子活性(VWF:RCo)とVWF抗原濃度(VWF:Ag)の比を計算することによって分類される。1未満のVWF:RCo/VWF:Ag比は、フォンビルブラント症候群サブタイプ2A、2B及び2Mに特徴的である。通常推奨される閾値は0.7の比である。
【0007】
古典的リストセチン補因子分析の欠点は、分析ミックス中の血小板を測定中常時撹拌しなければならないことから、自動化が困難なことである。もう1つの欠点は、分析の相対的精度の悪さ、及び標準変量の0%と20%の間の範囲内の低いVWF活性に対する不十分な定量性である。
【0008】
最近では、アミノ末端VWF結合領域を含有する組換えGPIbαフラグメント(それぞれ1〜289及び1〜290)を利用する、GPIbαベースのVWFのELISAが開発されている[特許文献1又は非特許文献2、非特許文献3]。これらの分析は、特異的な抗体を用いて組換えGPIbαフラグメントをELISAプレートに結合することを必要とする。患者試料のVWFが組換えGPIbαフラグメントに結合できるように、患者試料及びリストセチンが添加される。最後に、結合したVWFは、抗VWF抗体を用いて定量的に検出される。この種のVWFのELISAは、古典的な血小板ベースのVWFリストセチン補因子活性分析の結果と非常によく相関し、そしてより高感度でかつより高精度でもあることが示されている。
【0009】
非特許文献4は、位置233及び239に突然変異を有する組換えGPIbαフラグメント(1〜483)を利用する、GPIbαベースのVWFのELISAを記載している。これらの突然変異は、低濃度リストセチンの存在下にVWFに対して高親和性を有し、そして野生型GPIbαタンパク質よりも強くVWFと相互作用することが知られている機能獲得型変異である(特許文献2)。前記の突然変異は、GPIbα鎖のよく知られた突然変異体である。バリン残基によるGPIbα鎖の位置233のグリシン残基の置換(G233V)は、Millerら(特許文献3)により記載されている。該突然変異は、常染色体優性遺伝性出血病態である、血小板型フォンビルブラント症候群(PI−VWD)の原因である。バリン残基によるGPIbα鎖の位置239のメチオニンン残基の置換(M239V)は、Russell & Roth[非特許文献5]により記載されている。この突然変異はPT−VWDも引き起こす。
【0010】
不利なことには、GPIbαベースのVWFのELISA及びリストセチン補因子分析も、また、リストセチン又はGPIbα鎖へのVWFの結合を仲介する他の内因性の非生理学的モジュレータの使用をベースとすることである。細菌Nocardia lurida の糖タンパク質系抗生物質のリストセチン、及びBothrops属蛇毒のボトロセチン(同義語: 共同凝集素)は、血小板又は単離したGPIbαタンパク質若しくはそのフラグメントに対するVWFの結合を、インビトロで誘発するのに用いられることが知られている。リストセチンの使用は、それがVWFだけでなく、多くの他のタンパク質、例えばフィブリノーゲン又はさもなければ抗GPIbα抗体にも結合し得るという欠点を有する(幾つかの実験で認められている)。従って、VWF分析におけるリストセチンの使用は、試験結果を歪め得る非特異結合反応又は沈降反応が起こるリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開公報第01/02853(A2)号
【特許文献2】国際公開公報第93/16712号
【特許文献3】Miller et al. 米国特許第5317097号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Lopez, J.A. et al. (1987), Cloning of the α chain of human platelet glycoprotein Ib: A transmembrane protein with homology to leucine-rich α2-glycoprotein(ヒト血小板糖タンパク質Ibのα鎖のクローニング:ロイシンに富むα2糖タンパク質と相同性の膜貫通タンパク質), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 5615-5619
【非特許文献2】Vanhoorelbeke, K. et al. (2002), A reliable von Willebrand factor: Ristocetin cofactor enzyme-linked immunosorbent assay to differentiate between type 1 and type 2 von Willebrand disease(信頼性の高いフォンビルブラント因子:1型及び2型フォンビルブラント病を鑑別するリストセチン補因子酵素免疫吸着法), Semin Thromb Hemost. 28(2): 161-165
【非特許文献3】Federici, A.B. et al. (2004), A sensitive ristocetin co-factor activity assay with recombinant glycoprotein Ibα for the diagnosis of patients with low von Willebrand factor levels(低レベルのフォンビルブラント因子を有する患者の診断用の組換え糖タンパク質Ibαによるリストセチンの高感度補因子活性分析), Haematologica 89(1): 77-85
【非特許文献4】Hui et al. (Abstract, ISTH 2007)
【非特許文献5】Russell, S.D. & Roth, G.J. (1993), Pseudo-von Willebrand Disease: A mutation in the platelet glycoprotein Ibα gene associated with a hyperactive surface receptor(仮性フォンビルブラント病:高活性表面受容体に関連する血小板糖タンパク質Ibα遺伝子の突然変異), Blood 81(7), 1787-1791
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、リストセチンの非存在下に実施し得る、VWFの活性を測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、ヒトGPIbα受容体のアミノ酸配列に基づき、位置233及び239に2点の突然変異を有するGPIbα鎖の機能獲得型変異体を用いることにより達成された。GPIbα鎖の機能獲得型変異体は、本発明に従って、VWFに有意により高い親和性を有し、そして低濃度リストセチンの存在下に野生型GPIbαタンパク質より強くVWFと相互作用することが知られている突然変異体を意味する。
【0015】
本発明の主題は、試料中のフォンビルブラント因子(VWF)の活性を測定する方法であって、該試料を単離GPIbαタンパク質と混合して分析試料を得、かつ、その分析ミックスにリストセチンもボトロセチンも加えないことを含む方法である。使用するGPIbαタンパク質は、ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列に比べて、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そして位置233及び239に置換Xaaを有するアミノ酸配列(配列番号1)を含む。GPIbαの位置233のグリシン残基及び位置239のメチオニン残基の置換Xaaは、バリン残基(それぞれ、G233V及びM239V)又はセリン残基(それぞれ、G233S及びM239S)であることが好ましい。2つの位置における該異なる置換Xaaのいずれの組み合わせも可能である。本発明の明細書におけるGPIbαタンパク質への言及は、このような突然変異体への言及を意味する。
【0016】
更に、「リストセチン−又はボトロセチン−等価物質」が、分析混合物に加えられないことが好ましい。用語「リストセチン−又はボトロセチン−等価物質」は、本発明に従って、野生型GPIbα鎖又はそのフラグメントに対する溶解VWFのインビトロ結合を誘導することができる、外因性、即ち、非生理的物質を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の利点は、GPIbαの機能獲得型変異体を用いることにより、例えば、流動、撹拌又は振盪で分析ミックスにせん断応力をかけることをなくし得ることである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「試料」は、VWF活性の測定法に関する限りでは、検出すべき物質、即ち、VWFを含むことが疑われる材料を意味する。用語「試料」は、例えば血液、血漿又は血清などの、特にヒト及び動物の生体液、及びまた例えばVWF標準物質若しくはVWF対照、又は例えばフォンビルブラント症候群患者の補充療法のために設計される高濃縮のVWF濃縮物などの工業生産製品をも含む(例えば、Haemate P(登録商標))。適切な場合、試料は検体を検出方法に利用し易く、そして妨害する試料成分を取り除くために前処理する必要がある。そのような試料の前処理方法としては、細胞の除去及び/又は溶解又は試料の遠心分離を含んでもよい。用語「試料」は、上記試料材料の任意のものを含む反応混合物をも含み、それに対して単離VWFがVWF修飾因子の活性を測定する基質として加えられ、そして残存VWF活性が該VWF修飾因子と該VWF基質のインキュベーション後に測定される。そのような混合物の例は、例えば血漿試料におけるVWF切断性ADAMTS−13プロテアーゼを測定するための、分離高分子量VWFと血漿試料の混合物である。血漿試料中に存在するADAMTS−13プロテアーゼは、添加されたVWF基質を切断し、従って試料のVWF活性を低下させる。
【0019】
本発明の方法において使用されるGPIbα鎖は、組換え的又は合成的に生産されるGPIbαタンパク質であってよい。例えば、細菌(例えば、 E. coli)、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae, Pichia pastoris)、植物、動物又はヒト細胞培養での発現などの公知の原核生物又は真核生物の発現系は、組換えGPIbαタンパク質を生産するのに有用である。例えば、固相合成(例えば、メリフィールド合成)などのインビトロタンパク質合成の公知技術は、合成的GPIbαタンパク質を生産するのに好適である。本発明の方法において使用されるGPIbαタンパク質は、好ましくはヒト細胞の培養、好ましくはヒト胚性腎臓細胞(HEK細胞)の培養で生産されている、組換え生産GPIbαタンパク質である。
【0020】
本発明の方法において使用されるGPIbαタンパク質は、N末端で相同ヒトGPIbαシグナル配列MPLLLLLLLLPSPLHP(配列番号2、アミノ酸残基−16から−1とも呼ばれる)に融合してもよい。或いはまた、使用するGPIbαタンパク質は、N末端で異種シグナル配列に、即ち、通常はヒトGPIbαポリペプチドに存在せず、選択された発現系において組換え発現したGPIbαタンパク質の発現及び/又は分泌に対して有利な影響を有するポリペプチドに融合してもよい。好適な異種シグナル配列は、例えば、MPLQLLLLLILLGPGNSLQLWDTWADEAEKALGPLLARDRR(配列番号3)である。
【0021】
更に、本発明の方法において使用されるGPIbαタンパク質は、C末端で、例えば、組換え発現タンパク質が親和性担体に結合することを可能にするような、それにより、例えば、組換え発現GPIbαタンパク質を精製するか、さもなければ組換えGPIbαタンパク質が固相に結合するのを可能にするような、1つ又はそれ以上の親和性タグに融合してもよい。わずか12アミノ酸長さの小さい親和性タグが好ましい。Hisタグ、Flagタグ、Argタグ、c−Mycタグ及びStrepタグから成る群からの親和性タグが特に好ましい。高親和性を有する親和性タグに結合する好適な親和性担体の例は、特異抗体、固定化カチオン(例えば、Hisタグに親和性を有するNi2+)又は他のタイプの結合パートナー(例えば、Strepタグに親和性を有するストレプトアビジン)である。
【0022】
本発明の1つの実施態様では、GPIbαタンパク質は固相で結合する。用語「結合」は広い意味を有し、そして、例えば、共有及び非共有結合、直接及び間接結合、表面への吸着及び窪みへの包接を含む。共有結合では、単離GPIbαタンパク質は固相へ化学結合を経て結合する。非共有結合の例は表面吸着である。固相への直接結合に加えて、単離GPIbαタンパク質は、固相への他の特異的結合パートナーとの特異的な相互作用を経て、例えば、抗体と、好ましくは抗GPIbα抗体と、又は−単離GPIbαタンパク質が親和性タグを有する場合−抗親和性タグ抗体との特異的な相互作用を経て、間接的にも結合し得る。
【0023】
本発明による用語「固相」は、多孔性及び/又は非多孔性、水不溶性材料から成り、かつ、例えば、容器、チューブ、ミクロ滴定プレート(ELISAプレート)、ビーズ、微粒子、ロッド、ストリップ、濾紙、クロマトグラフィーペーパーなどの非常に様々な形状を有してもよい物を含む。固相の表面は、標準的には親水性であるか又は親水性にし得るものである。固相は、例えば、無機及び/又は有機材料、合成材料、天然及び修飾天然材料などの非常に様々な材料から成り得る。固相材料の例は、例えば、セルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、架橋デキストラン分子、アガロース、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリレート又はナイロンなどのポリマー;ラテックス;セラミックス;ガラス;金属、特に金及び銀などの貴金属;マグネタイト;それらの混合物又は組み合わせである。
【0024】
固相は、例えば、固相に対する試料成分の非特異的な結合を抑制又は防止するために、又は例えば微粒子固相の懸濁安定性、保存安定性、デザイン安定性又はUV光、微生物若しくは他の破壊剤への抵抗性を向上させるために、1つ又はそれ以上の層、例えばタンパク質、炭水化物、親油性物質、バイオポリマー、有機ポリマー又はそれらの混合物のコーティングを有してもよい。
【0025】
VWF活性を測定するための本発明の方法の好ましい実施態様は、粒子結合GPIbαタンパク質、好ましくはラテックス粒子結合GPIbαタンパク質の使用、及び微粒子固相のGPIbα仲介凝集に基づく該VWF活性の測定を含む。抗体を経て微粒子固相に結合したGPIbαタンパク質の使用が好ましい。この目的に好適なものは、抗GPIbα抗体、特にモノクローナル抗体VM16d[Mazurov, A.V. et al. (1991), Characterization of an antiglycoprotein Ib monoclonal antibody that specifically inhibits platelet-thrombin interaction(血小板−トロンビン相互作用を特異的に阻害する抗糖タンパク質Ibモノクローナル抗体のキャラクタリゼーション), Thromb Res. 62(6), 673-684; 例えば、 Sanbio B.V., Uden, Netherlandsから市販: 製品番号 MON 1146]、及びSZ−2 [Ruan, C. et al. (1987), A murine antiglycoprotein Ib complex monoclonal antibody, SZ 2, inhibits platelet aggregation induced by both ristocetin and collagen (マウス抗糖タンパク質Ib複合体モノクローナル抗体、SZ−2はリストセチン及びコラーゲンの両方により誘発される血小板凝集を阻害する), Blood 69(2), 570-577; 例えば、Beckman Coulter Inc., Fullerton, USAから市販: 製品番号 IM0409]である。使用するGPIbαタンパク質がC末端で1つ又はそれ以上のFlagタグに融合している場合、抗Flag抗体は同様に好適である[例えば、 米国特許第5011912号を参照; 例えば、Sigma-Aldrich Chemie GmbH, Steinheim, Germanyから市販]。試料中に存在するVWFの量又は活性と相関する凝集反応は、例えば、散乱光の強度を測定することを介して(比濁法)、又は培地の濁度を測定することを介して(混濁度法)、粒子凝集体へ光散乱を用いることにより定量的に測定し得る。
【0026】
界面活性剤の存在下に、好ましくは、ツィーン(Tween)(登録商標)20、テシット(Thesit)、トリトン(Triton)界面活性剤 (例えば、トリトン X-100(登録商標)又はトリトン X-405(登録商標)) 及びドデシル硫酸ナトリウム (SDS)から成る群からの界面活性剤の存在下に、微粒子固相のGPIbα仲介凝集に基づくVWF活性を測定することが好ましい。界面活性剤の存在は、微粒子固相の、特にラテックス粒子のVWFに依存した凝集速度に影響することが見出された。
【0027】
凝集速度を、種々のVWF濃度で、そしてツィーン(登録商標)20の濃度を増加させて測定した(図4を参照、実施例5に類似の方法で測定)。反応の増幅は、特に相対的に低濃度(0.02〜0.1g/l)のツィーン(登録商標)20で顕著であり、ツィーン(登録商標)20の濃度の増加と共に再び減少し、そして安定レベルに達することが明らかである。例えば、149.6%VWFでは、安定な増幅レベルはおよそ1g/lのツィーン(登録商標)20で到達し、その時の増幅はツィーン(登録商標)20なしでの初期値の85%である。従って、界面活性剤としてツィーン(登録商標)20を用いる場合2つの可能性がある。第一に、ツィーン(登録商標)20濃度は、特定のVWF濃度を20%まで特に強く増幅させるために低く(0.02〜0.1g/l)設定し得る。例えば、0.05g/lのツィーン(登録商標)20(分析混合物中で)では、凝集速度は30.4%のVWFにより216%増幅される。低いVWF濃度は特に測定が難しいことから、反応の増幅はこの場合非常に有用である。第二に、測定系をすべての適切なVWF濃度に対して界面活性剤の飽和領域で実施する場合に、一般的により安定である。これは、例えば、0.05g/lのツィーン(登録商標)20以上の場合である。この変形は、広範囲のVWF濃度に対するスクリーニング分析に対して好適である。0.6〜20.0g/l、好ましくは1g/lのツィーン(登録商標)20濃度は、20%を超えるVWF濃度を測定するために、凝集反応を増幅させるべき場合に有利である。
【0028】
テシット(同義語: Polidocanol, Schaerer & Schlaepfer Ltd., Rothrist, Switzerland)、トリトン界面活性剤(例えば、トリトン X-100(登録商標)又はトリトン X-405(登録商標))、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの他の界面活性剤は、凝集反応の増幅において、定常的な濃度依存性増加を示す(図5を参照、実施例5に類似の方法で測定:45μlの試料、しかしツィーン(登録商標)20の代わりにテシットを使用)。
【0029】
血漿試料のVWF活性は、あらかじめ該試料を希釈することにより、通常緩衝液又はVWF欠乏血漿を用いて測定される。検量線を作成するために、同じことが標準血漿(例えば、標準ヒト血漿)に当てはまる。しかしながら、VWF欠乏血漿による希釈及び常用界面活性剤濃度(分析ミックス中1g/l)は、十分な界面活性剤により抑制し得るGPIbαラテックス粒子凝集の望ましくない増幅をもたらすことが見出された。図6に示されるように、45μlの試料を含有する分析ミックス中の試料(この場合、標準ヒト血漿)をVWF欠乏血漿で又は緩衝液で希釈する場合、高い凝集速度が、VWF欠乏血漿の存在下の試料中において特定のVWF濃度で起こる。対照的に、分析系における界面活性剤の完全除去、及びVWF欠乏血漿による標準ヒト血漿の希釈は、緩衝液での希釈のように低い凝集速度をもたらす。しかしながら、十分な界面活性剤が加えられる場合(例えば、≧3g/lテシット)、緩衝液又は欠乏血漿による希釈での凝集速度は同じようになる。このことは、緩衝液での血漿試料の希釈が適切なことを確実にする。分析にとって、標準血漿(標準物質として)の希釈用としても患者試料の起こり得る希釈用としても、VWF欠乏血漿を使用しなければならない場合よりもむしろ、単純な緩衝液を使用できることは極めて有利である。緩衝液は安価であり、良好な保存安定性を確実にし、そして多くの自動分析機器は複合分析に対して単一の緩衝液を使用している。更に、VWF欠乏血漿は、すべてのラボラトリーにはしばしば利用不能である。VWF濃縮物の測定は特に高希釈を必要とし、緩衝液での適切な希釈は同様に非常に有利である。
【0030】
分析ミックス中ポリビニルピロリドン(PVP)の存在下に、好ましくは0.1%から1.0%までのポリビニルピロリドン濃度で、及び/又は分析ミックス中デキストランT500の存在下に、好ましくは0.1%から3%までのデキストランT500濃度で、及び/又は分析ミックス中アルギネート500〜600cPの存在下に、好ましくは0.01%から0.2%までのアルギネート500〜600cP濃度で、微粒子固相のGPIbα仲介凝集に基づきVWF活性を測定することは更に好ましい。
【0031】
VWF活性を測定するための本発明の方法の別の好ましい実施態様は、競合分析フォーマットである。該方法は、粒子結合抗GPIbα抗体、好ましくはVM16d、及び粒子結合VWFを反応ミックスに使用すること、並びにGPIbαタンパク質の添加である。該粒子は、GPIbαタンパク質の存在下、及びリストセチン、ボトロセチン又は等価物質の非存在下に凝集する。この凝集反応は、VWFを含む試料の添加により阻害される。凝集反応の該阻害は、該試料中に存在するVWFの量又は活性と相関する。
【0032】
VWF活性を測定するための本発明の方法の別の好ましい実施態様は、非微粒子固相に結合した、好ましくはマイクロタイタープレートの表面に結合したGPIbαタンパク質の使用、及び該GPIbαタンパク質に結合したVWF量の測定に基づき、該VWF活性を測定することを含む。非微粒子固相に抗体を介して結合したGPIbαタンパク質を用いることが好ましい。この目的に好適なものは、抗GPIbα抗体、特にモノクローナル抗体VM16d(上記を参照)及びMB45 [例えば、 Modderman, P.W. et al. (1992), Glycoproteins form a noncovalent complex in the platelet membrane(糖タンパク質V及びIb−IXは血小板膜において非共有複合体を形成する), J. Biol. Chem. 267(1), 364-369、及びその中に引用された26の参考文献を参照; 例えば、Sanguin, Amsterdam, Netherlandsから市販: PeliCluster CD42b、製品番号 M9142]である。使用されるGPIbαタンパク質が、C末端で1つ又はそれ以上のFlagタグに融合する場合、抗Flag抗体は同様に好適である[上記を参照]。GPIbαタンパク質に結合したVWFの量は、例えば、シグナル生成系の成分と直接的又は間接的に結合する抗VWF抗体を用いることにより測定することができ、それによりGPIbα結合VWFの量を定量することを可能にする。「活性な」(機能的に無傷の)VWFのみがGPIbα受容体に結合することから、この原理に従って算出したVWF抗原濃度は、VWF活性と相関する。
【0033】
本発明は更に本発明の方法で用いる検査キットであって、ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有し、そしてGPIbαタンパク質が微粒子固相と結合する、アミノ酸配列を含むGPIbαタンパク質を含有する少なくとも1つの試薬を含む検査キットに関する。ラテックス粒子と結合するGPIbαタンパク質を含有する試薬を含む検査キットが好ましい。GPIbαタンパク質は、好ましくは抗体を介して微粒子固相に結合する。試薬(reaction)は、液体又は凍結乾燥の形態で提供されてもよい。試薬が凍結乾燥物の場合、検査キットは、更に、例えば、蒸留水又は適切な緩衝液などの該凍結乾燥物を懸濁するのに必要な溶媒を含んでもよい。
【0034】
本発明は、更に本発明の方法で用いる検査キットであって、ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有するアミノ酸配列を含むGPIbαタンパク質が結合する、非微粒子固相、好ましくはミクロ滴定プレートを含む検査キットに関する。抗体を介して非微粒子固相に結合しているGPIbαタンパク質が好ましい。検査キットは、更に、抗VWF抗体、好ましくはシグナル生成系の成分と直接的又は間接的に結合している抗VWF抗体を含有する試薬を含んでもよい。抗VWF抗体を含む試薬は、液体又は凍結乾燥の形態で与えられてもよい。試薬が凍結乾燥物の場合、検査キットは、更に、例えば、蒸留水又は適切な緩衝液などの該凍結乾燥物を懸濁するのに必要な溶媒を含んでもよい。
【0035】
本発明は、更に、インビトロでフォンビルブラント(VWF)活性を測定する方法において、ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、いずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有するアミノ酸配列を有する単離GPIbαタンパク質の使用であって、該VWF活性の測定法においてリストセチンもボトロセチンも用いられない使用に関する。
【0036】
位置233及び/又は239におけるアミノ酸置換Xaaがバリン又はセリン残基を含む、単離GPIbαタンパク質を用いることが好ましい。2つの位置において該異なる置換Xaaのいずれの組み合わせも可能である。
【0037】
本発明は、更に、ヒトGPIbαタンパク質(配列番号1)の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有する、アミノ酸配列を有する単離GPIbαタンパク質の取得方法であって、該GPIbαタンパク質を組換え技術により原核細胞又は真核細胞の培養で発現させること、そして親和性担体を用いる親和性クロマトグラフィーにより、細胞溶解物又は細胞培養上清から上記GPIbαタンパク質を単離することを含む方法に関する。
【0038】
位置233及び/又は239におけるアミノ酸置換Xaaがバリン又はセリン残基を含む、単離GPIbαタンパク質を取得する方法が好ましい。2つの位置において該異なる置換Xaaのいずれの組み合わせも可能である。
【0039】
本発明の別の主題は、ADAMTS−13プロテアーゼのフォンビルブラント因子(VWF)切断活性を測定する方法である。
【0040】
ADAMTS−13(トロンボスポンジンモチーフを有するジスインテグリン及びメタロプロテアーゼ)は、フォンビルブラント因子(VWF)をタンパク質分解的に切断し、それによりその活性を低下させるメタロプロテアーゼである。ADAMTS−13酵素活性の先天性及び後天性欠乏症は公知であり、例えば、微小循環に悪影響を及ぼす生命にかかわる血栓塞栓性疾患として、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)など種々の疾患を引き起こす。VWFの過大マルチマーはTTP患者の血漿中に認められ、そしてVWFに富む血栓及び血小板の形成原因と考えられる。従って、患者試料におけるADAMTS−13プロテアーゼのVWF切断プロテアーゼ活性を測定することは、診断上重要となる。
【0041】
先行技術は、ADAMTS−13プロテアーゼのVWF切断活性を測定し、そしてADAMTS−13欠乏症を診断する種々の方法を開示している。
【0042】
Furlan et al. (1996) は、該ADAMTS−13プロテアーゼを含有する試料を基質としての精製ヒトVWFとインキュベートし、該ADAMTS−13プロテアーゼのタンパク質分解活性を、SDSアガロースゲル電気泳動を用いてのVWFマルチマーのその後の分析により、又はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)及びその後の免疫ブロット法を用いてのVWFフラグメントの分析により、検出する方法を記載している[Furlan, M., Robles, R. and Laemmle, B. (1996), Partial purification and characterization of a protease from human plasma cleaving von Willebrand factor to fragments produced by in vivo proteolysis(フォンビルブラント因子をインビボタンパク質分解によって生産されるフラグメントに切断するヒト血漿由来のプロテアーゼの部分精製及びキャラクタリゼーション), Blood 87, 10: 4223-4234]。ゲル電気泳動によるこの種類のマルチマー分析は莫大な作業量と時間を必要とし、従って臨床ラボラトリーでの使用には適さない。
【0043】
他の機能的分析法では、ADAMTS−13プロテアーゼのタンパク質分解活性を、該ADAMTS−13プロテアーゼを含む試料を基質としてのVWFとインキュベートし、そして次に該VWF基質の活性の欠失を測定することにより測定する。ADAMTS−13プロテアーゼが試料中に存在すればするほど、VWF基質はますます切断され、従ってVWF活性はますます反応混合物中に検出し得なくなる。これらの機能的方法の利点は、VWF基質を用いること、そして大きなマルチマーの機能の欠失を測定することにより、ADAMTS−13プロテアーゼのインビボ関連機能を、インビトロでシミュレートする点である。
【0044】
国際公開公報第2004/005451(A2)号は、ADAMTS−13プロテアーゼを含む試料を精製ヒトVWF基質とインキュベートし、該ADAMTS−13プロテアーゼのタンパク質分解活性を、リストセチン補因子分析を用いて反応混合物中に残存しているVWF活性をその後に測定することによって検出する方法を開示している。或いはまた、反応混合物中に残存しているVWF活性は、コラーゲン結合分析(例えば、国際公開公報第00/50904号を参照)を用いて分析してもよい。不利なことに、VWFの十分なタンパク質分解をもたらすために、反応混合物を非常に長時間、時には一夜インキュベートしなければならないことである。60分という短縮したインキュベーション時間の改良法が、Kostousov, V., Fehr, J., Bombeli, T. (2006), Novel, semi-automated, 60-min-assay to determine von Willebrand factor cleaving activity of ADAMTS-13(ADAMTS−13のフォンビルブラント因子切断活性を測定する新規な半自動60分の分析), Thrombosis Res. 118: 723-731に記載されている。
【0045】
米国特許公開公報第2007/0065895(A1)号及び米国特許公開公報第2005/0186646(A1)号は、ADAMTS−13プロテアーゼを含む試料を、ADAMTS−13プロテアーゼに対し特異的切断部位を有するペプチドと、又は基質としてのVWFペプチド(フラグメント)とインキュベートし、ADAMTS−13プロテアーゼのタンパク質分解活性を、SDS PAGEを用いてその後に得られるペプチドを分析することにより、そして場合によりその後の免疫ブロット法により検出する方法を開示している。
【0046】
公知の分析方法は、それらが、例えば、SDS PAGEによるタンパク質分解から由来する基質フラグメントの分析などの複雑な技術を必要とするか、又は天然のVWF基質を使用しない点で不利であり、それによりADAMTS−13プロテアーゼの特定の機能異常が検出し得なくなる可能性がある。
【0047】
従って、本発明の目的は、ADAMTS−13プロテアーゼのフォンビルブラント因子(VWF)切断活性を測定する方法であって、できるだけ多くのADAMTS−13プロテアーゼの機能異常を該方法により検出することを可能とし、従来の臨床分析機で時間節約的にかつ自動的に行ない得る方法を提供することである。
【0048】
この目的は、ADAMTS−13プロテアーゼを含むことが疑われる試料を、基質としての単離VWFと混合して反応混合物を得ることにより達成され、該VWF基質は、野生型VWFモノマーから成る高分子量マルチマーVWFであるVWF基質と比べて、少なくとも1つのアミノ酸配列変異(多型又は突然変異)を有し、その結果該VWF基質がいずれの場合も促進的にADAMTS−13によって分解されるVWFモノマーを含む、高分子量マルチマーVWFである。
【0049】
ヒトVWFモノマーは、インビボにおいて、最初に2813アミノ酸前駆タンパク質として合成される。細胞内プロセシングは、20,000kDaより大きいサイズとなり得るVWFマルチマーを生成する。これらのマルチマーは、ジスルフィド結合を介して互いに連結した直線状に配列した275kDa、2,050アミノ酸VWFモノマーを含む。VWFは、約500kDa(ダイマー)から15,000kDaを超える種々サイズの球状マルチマーの形態で血漿中に循環する。
【0050】
「高分子量マルチマーVWF基質」は、本発明に関する限り、10を超える二量化VWF分子を含み、そして当業者に周知のゲル電気泳動法により立証できる、5,000kDaより大きいサイズのVWFタンパク質を意味する。更に、高分子量マルチマーVWFは、野生型VWFモノマーから成る高分子量マルチマーVWFであるVWF基質と比べて、少なくとも1つのアミノ酸配列変異を有し、その結果、いずれの場合にも該VWF基質が促進的にADAMTS−13によって分解される、VWFモノマーを含む。
【0051】
ADAMTS−13プロテアーゼによるタンパク質分解切断に対するVWFの感受性を増加させる、VWFタンパク質のアミノ酸配列変異は、先行技術の一部である[例えば、 Hassenpflug, W.A., Budde, U., Obser, T., Angerhaus, D., Drewke, E., Schneppenheim, S., Schneppenheim, R. (2006), Impact of mutations in the von Willebrand factor A2 domain on ADAMTS 13-dependent proteolysis,(ADAMTS−13依存性タンパク質分解に及ぼすフォンビルブラント因子A2ドメインの突然変異の影響), Blood 107: 2339-2345、又はRayes, J., Hommais, A., Legendre, P., Tout, H., Veyradier, A., Obert, B., Ribba, A.S., Girma, J.P. (2006), Effect of von Willebrand disease type 2B and type 2M mutations on the susceptibility of von Willebrand factor to ADAMTS-13(ADAMTS−13に対するフォンビルブラント因子の感受性に及ぼすADAMTS−13依存性タンパク質分解に及ぼすフォンビルブラント病2B型及び2M型の影響), J. Thromb Haemost. 5: 321-328を参照]。本発明に特に好適なVWF基質は、以下の群:P1648S、E1638K、G1505R、S1506L、M1528V、R1569del、R1597W、V1607D、G1609R、G1629E、G1631D、R1597Q、V1499E及びY1584C;からの少なくとも1つのアミノ酸配列変異を有するVWFモノマーを含む、高分子量マルチマーVWFを含む。
【0052】
表示されたアミノ酸の位置は、VWF前駆タンパク質(例えば、NCBI登録No.AAB594578、バージョンAA59458.1、GI:340356を参照)の2813アミノ酸配列を示す。略語「del」は、対応するアミノ酸残基の欠失を意味する。フォンビルブラント因子の突然変異及び多型の命名法については、Goodeve, A.C., Eikenboom, J.C.J., Ginsburg, D., Hilbert, L., Mazurier, C., Peake, I.R., Sadler, J.E. and Rodeghiero, F. (2001), A standard nomenclature for von Willebrand factor gene mutations and polymorphisms(フォンビルブラント因子の遺伝子突然変異及び多型の標準命名法), Thromb Haemost. 85: 929-931をも参照されたい。
【0053】
VWFの天然に存在する又は人工生成アミノ酸配列変異は、野生型VWFモノマーから成る高分子量マルチマーVWFであるVWF基質と比べて、それらがいずれの場合にも、得られたVWF基質が促進的にADAMTS−13によって分解される結果をもたらす、即ち、得られたVWF基質がADAMTS−13に対する高められた感受性を有する結果をもたらす限り、同じように好適であり得る。高分子量マルチマーVWF基質が、純粋に野生型の高分子量マルチマーVWF基質よりも速くADAMTS−13によりインビトロでタンパク質分解される場合、即ち、VWF基質のより大きなフラグメント化が、例えば、当業者に公知のゲル電気泳動法によって立証し得る、同じインキュベーション条件下で引き起こされる場合、ADAMTS−13タンパク質分解に対する感受性は増加する。
【0054】
本発明の方法で用いられる単離高分子量マルチマーVWF基質は、好適なVWFアミノ酸配列変異のヘテロ接合性又はホモ接合性キャリアのドナー血漿から得られるか、又は当業者に公知の方法を用いて組換え発現させてもよい。組換え生産VWF基質は、それが分析ミックスに導入される場合に、試験結果を歪め得るようなADAMTS−13汚染が一切ないという点、それが完全に多量体化されている点、そして血漿から単離したVWFの場合にあり得る、それがタンパク質分解されていない点で有利である。
【0055】
ADAMTS−13プロテアーゼのフォンビルブラント因子(VWF)切断活性を測定する、本発明の方法の好ましい実施態様では、VWF基質の分解は、試料を更にヘパリンと及び/又は単離天然GPIbαタンパク質及び/又は組換え野生型GPIbαタンパク質と、及びリストセチン又はボトロセチンと混合することにより更に促進され得る。同じ目的で、代わりに、試料は、ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有するアミノ酸配列を含む、組換え又は合成GPIbαタンパク質と混合してもよい。好ましくは、使用するGPIbαタンパク質の位置233及び/又は239のアミノ酸置換Xaaは、バリン又はセリン残基を含む。試料をVWF基質とインキュベートした後に反応ミックス中に残存しているVWF活性は、種々の方法で、例えば、リストセチン−補因子活性(VWF:RCo)を測定することにより、又は他の公知の方法により測定してもよい。好ましい実施態様では、反応ミックス中に残存しているVWF活性は、反応ミックス又はそのアリコートを、ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaa(好ましくはXaa=バリン又はセリン残基)を有するアミノ酸配列を含む単離GPIbαタンパク質と混合することにより、そしてリストセチン及びボトロセチンのいずれも加えないことにより測定される。該GPIbαタンパク質を、残存VWF活性に応じて凝集する微粒子固相に結合させることが特に好ましい。反応混合物中に残存しているVWF活性は、凝集反応に基づいて測定することができ、その活性がひいては試料中に存在するADAMTS−13活性に関する情報を提供する。
【0056】
試料中のADAMTS−13プロテアーゼのフォンビルブラント因子(VWF)切断活性を測定する、本発明の方法の格別な利点は、VWF基質を尿素で処理することを省略することができるということであり、尿素の適用は、前処理時のインキュベーションの間、時間を厳守しない場合に、その後VWF活性を過度に低く測定するリスクをもたらす。先行技術の種々の方法は、最初にVWFをADAMTS−13プロテアーゼによる分解がし易くするために、尿素又は類似の変性物質によるVWF基質の前処理を必要とする(例えば、国際公開公報第2004/005451(A2)号を参照)。
【0057】
ADAMTS−13プロテアーゼのVWF切断活性を測定する予定の各々のヒト血漿試料は、試料固有のVWFを含むことから、実際の分析ミックスと並行して第2の分析ミックスの測定を実施することが有利であり、その場合、同じ試料の第2のアリコートは本発明の方法を用いるが、ただしVWF基質と混合した試料を実際の分析ミックスと同じ時間インキュベートせずに分析され、第2の分析ミックスのVWF活性は、試料及びVWF基質を混合した直後に測定される。従って、第2の分析ミックスのVWF活性(インキュベーション工程なし)と実際の分析ミックスのVWF活性(タンパク質分解性VWF分解のためのインキュベーション工程あり)との差は、実際の分析ミックス中でADAMTS−13により分解されるVWF活性を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】VWFの測定用に本発明で適用されるGPIbα−(aa1〜285G233V/M239V)及び野生型GPIbαのELISA分析法のデザインは、実施例4に記載されている。VWF/因子VIII濃縮物ヘマート(Haemate)(登録商標)の4つの異なる希釈倍率の希釈を試料として使用した。リストセチンの非存在下(0mg/ml)に、VWFの強い濃度依存性の結合は、突然変異体GPIbα−(aa1〜285G233V/M239V)を用いた場合に生じる(上図)。該結合はリストセチンを添加することにより若干増加し得るが、これは恐らくGPIbαなしでも起こる非特異結合によるものである。対照的に、同様に強いVWF結合は、1.2mg/mlのリストセチンを添加することによってのみ野生型GPIbαで達成し得る。リストセチンの添加なしでは、野生型GPIbαの使用でも結合は見られない(下図)。
【図2】リストセチンなしのGPIbαラテックス粒子凝集分析による、ヒトシトレート血漿試料中のVWF活性(10%〜200%VWF活性)を測定する検量線(実施例5を参照)。粒子凝集速度は、VWF活性の関数として表される。
【図3】リストセチンなしのGPIbαラテックス粒子凝集分析による、ヒトシトレート血漿試料中の低いVWF活性(≧3%VWF活性)を測定する検量線(実施例5を参照、試料:45μl)。粒子凝集速度は、VWF活性の関数として表される。
【図4】異なるVWF濃度(14.9%から149.6%まで)の試料中に、リストセチンなしで、そして分析ミックス中に異なるツィーン(登録商標) 20濃度の存在下でのGPIbαラテックス粒子凝集分析(実施例5を参照、ツィーン(登録商標)20濃度の変動、試料:15μl)。
【図5】異なるVWF濃度(8%から40%)の試料中に、リストセチンなしで、そして分析ミックス中に異なるテシット濃度の存在下でのGPIbαラテックス粒子凝集分析(実施例5を参照、しかしツィーン(登録商標) 20の代わりテシット、試料:45μl)。
【図6】試料がVWF欠乏血漿又は緩衝液で予備希釈された、異なるVWF濃度の試料中に、リストセチンなしで、そして分析ミックス中に異なるテシット濃度の存在下でのGPIbαラテックス粒子凝集分析(実施例5を参照、しかしツィーン(登録商標)20の代わりにテシット、試料:45μl)。
【0059】
下記に記載の実施例は、本発明の個々の態様を実例により説明するために使用するものであり、それに限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0060】
〔実施例1〕
GPIbα−(G233V/M239V)−(3×Flag)−(6×His)構成体のクローニング
pIRESのneo2発現ベクター(BD Biosciences, Clontech, Art. No.: 6938-1) を、EcoRI及びNotI制限切断部位間に3×Flagタグ及び6×Hisタグを組み込むように修飾した。シグナルペプチド(配列番号2)及びヒトGPIbα受容体(配列番号1)のアミノ酸1〜285をコードし、そしてアミノ酸位置233と239をコードする部位でのバリンコード化コドンを含むフラグメントを、タグ配列の上流(5′)に挿入した。
【0061】
〔実施例2〕
HEK細胞における組換えGPIbα−(G233V/M239V)−(3×Flag)−(6×His)融合タンパク質の発現
HEK293細胞(ヒト胎児腎臓細胞;ATCC番号;CRL−1573;Cell Lines
Service CLS, Heidelberg, Germany)を、実施例1に記載の構成体でトランスフォーム
した。
【0062】
細胞は以下の培地で培養した:
DMEM(Art. No.: 31966-021, Invitrogen);
+10%FBS Origin EU (Art. No.: 10270-106, Invitrogen)、熱不活化;或いは10%FBS Origin USA (Art. No.: A15-003, Lot No.: A01123-678, PAA) ;
+1%抗生物質抗真菌性溶液 (100×) (Art. No.: P11-002, PAA);
+0.1%ゲンタマシン溶液50mg/ml (Art. No.: P11-005, PAA);
+500μg/mlゲネチシン(G418) 溶液50mg/ml活性ゲネチシン (Art. No. 10131-027, Invitrogen)。
【0063】
発現(生産)用として:
OPTIPRO-SFM (Art. No.: 12309-019, Invitrogen);
+0.5%抗生物質抗真菌性溶液 (100×) (Art. No.: P11-002, PAA);
+0.05%ゲンタマシン溶液50mg/ml (Art. No.: P11-005, PAA);
+2% Glutamax I (100×) (Art. No.: 35050-038, Invitrogen);
及びゲネチシンなし。
【0064】
操作は以下の通り:
1)細胞(5〜10×106細胞を含有する1「Kryo」)の解凍、そして血清含有培地中T175での96時間の培養;
2)4×T175へ分割、そして72〜96時間の培養;
3)25×T175へ分割、そして72〜96時間の培養;
4)1つのT175の分割、そして予備としてのその持続的培養。残りの24×T175の3×CellStack Corning (CellStack当り10レベル、合計で6,360cm2) への分割、そして72時間の培養;
5)培地の除去、FBSのないDMEMによる単層の1〜2×洗浄及び無血清OPTIPRO-SFM (CellStack当り1.8リットル) の添加、そして96時間の培養;
6)培地の採取。遠心分離による上清の除去及び剥離細胞ペレットの再懸濁、及び新鮮OPTIPRO-SFM によるCellStackへのそれらの戻し、そして96時間の培養;
7)6)に同じ;
8)培地の最終採取及び培養停止。
【0065】
〔実施例3〕
親和性クロマトグラフィーによる組換えGPIbα−(G233V/M239V)−(3×Flag)−(6×His)融合タンパク質の単離
実施例2で得られたGPIbα−(G233V/M239V)−(3×Flag)−(6×His)含有培地にまだ残存している細胞又は細胞残屑は、遠心分離によって除去した(35分、10,000rpm、Beckman J2-21, Beckman Coulter GmbH, Germany)。このようにして得られた無細胞上清は、10kDaのカットオフを有する限外濾過カセットを用いて接線フロー限外濾過により、当初の容積の1/10に濃縮した(PES 10, Schleicher & Schull, Germany)。
【0066】
精製は、メーカー資料により、Ni2+−Sepharose (His Prep FF16/10, GE Healthcare, Sweden) を用いて親和性クロマトグラフィーで実施した。GPIbα−(G233V/M239V)−(3×Flag)−(6×His)は、濃縮上清に500mmolのNaCl、20mmolのNa2HPO4及び5mMのイミダゾールを加え、そして5MHClを加えることによりpH7.4にpH調整して結合させた。非結合成分は、500mmolのNaCl、20mmolのNa2HPO4、5mMのイミダゾールのpH7.4緩衝液でカラムを洗浄処理することにより洗い流した。結合したGPIbα−(G233V/M239V)−(3×Flag)−(6×His)は、20mmolのNa2HPO4、500mmolのNaCl、500mmolのイミダゾールのpH7.4緩衝液で溶離した。このようにして得られた溶離液は、10kDaのカットオフの限外濾過膜(OMEGA 10 K, Pall Life Sciences, USA)により撹拌限界濾過セル中で当初の容積の1/10に濃縮した。更なる精製及び不純物の除去は、Superdex 200 prep grade 35/600 (GE Healthcare, Sweden) クロマトグラフィーカラムを用いたゲル濾過により、メーカー資料に従って実施した。クロマトグラフィーは、0.048mol/lのNa2HPO4、0.02mol/lのKH2PO4、0.145mol/lのNaCl、0.015mol/lのNaN3のpH7.2緩衝液を用いて5.0ml/分の流速で実施した。試料を注入後、GPIbα−(G233V/M239V)−(3×Flag)−(6×His)は、ほぼ300mlの溶離容積後のピーク中に、使用クロマトグラフィーカラムから溶離した。
【0067】
〔実施例4〕
リストセチンなしの抗FLAG/GPIbαのELISAにおけるVWF活性を測定する本発明の方法
Flagタグ(Sigma, Saint Louis, USA, ANTI-FLAG HS, M2 コーティング96ウェルプレート(透明)、製造番号 P2983)に対する抗体で前もってコーティングされたELISAプレートを使用した。ELISAプレートの各ウェルを、100mlの組換え野生型GPIbα−(3×Flag)−(6×His)融合タンパク質(細胞沈降後の培養培地の1:10希釈上清)を含むリン酸緩衝液、又は単離GPIbα−(aa1〜285G233V/M239V)−(3×Flag)−(6×His)融合タンパク質(実施例3を参照)を2.4μg/mlの濃度で充填し、その後2〜8℃で一夜インキュベーションした。リン酸緩衝液(+0.01%のツィーン(登録商標)20)で4回洗浄後、リン酸緩衝液+0.1%ウシ血清アルブミン中での50μlのヘマート(Haemate)(登録商標)(ZLB Behring, Marburg, Germany)の希釈液、及びリン酸緩衝液+0.1%ウシ血清アルブミン中での50μlのリストセチン希釈液を加えた。続いてこれを室温で1時間インキュベーションした。上記のように4回洗浄後、100μlのセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗VWF抗体(ウサギ抗ヒトVWF/HRP、DAKO, Ref. P0226)を加え、その後室温で1時間インキュベーションして引き続き上記のように洗浄した。その後、基質として100μlのテトラメチルベンジジン溶液(TMB基質、Dade Behring Marburg GmbH, Marburg, Germany, Ref. 450684)を加え、続いて室温で4分間インキュベーションした。反応は100μlの0.5N硫酸を加えることにより停止させた。504nmの吸光度を分光光度計で測定した。
【0068】
リストセチンの非存在下、実施例1〜3により調製した突然変異体GPIbαの使用時に、VWFの強い濃度依存性結合が生じた。リストセチンの添加は該結合を若干増加させたが、これは恐らくGPIbαなしでも起こる非特異結合に起因し得る。対照的に、同様に強いVWF結合が、1.2mg/mlのリストセチンを加えることによってのみ野生型GPIbαで達成し得た。リストセチンの添加なしでは、野生型GPIbαの使用でも結合は見られなかった(図1)。
【0069】
〔実施例5〕
リストセチンなしのGPIbαラテックス粒子凝集分析におけるVWF活性を測定する本発明の方法
3種の試薬を調製した。
試薬1:
モノクローナル抗GPIbα抗体のVM16d(Sanbio B.V., Uden, Netherlands: 製品番号MON1146)をラテックス粒子表面に結合し、そして後者を長期保存のために緩衝液(0.6g/lTRIS、1.1%ロイシン、12.5%蔗糖、0.05%HSA、6.25mg/lゲンタマイシン及び0.625mg/lアンホテリシン、pH8.25、ラテックス濃度0.22%)中に再懸濁した。
【0070】
試薬2:
VWF欠乏血漿。
試薬3:
以下の成分を混合して総量30mlの試薬3を得た:
2.5mlのリン酸緩衝液中ポリビニルピロリドン(PVP)(Fluka, Germany) の7.5%強度溶液(pH7.1);
12.9mlのTris緩衝液(pH7.1)中12.9ml(0.625mg/ml)のヘテロフィリック遮断試薬1(Scantibodies Laboratory Inc, Santee, CA 92071, USA);
3.4mlのリン酸緩衝液中21g/lのツィーン(登録商標) 20 (Sigma, St. Louis, Missouri, USA)を含有する溶液(pH7.2);
0.086mlのリン酸緩衝液中5.59mg/mlの組換えGPIbα−(G233V/M239V)−(3×Flag)−(6×His)(実施例3を参照)の溶液(pH7.1);及び
11.2mlのリン酸緩衝液(pH7.1)。
【0071】
分析は、BCS(登録商標)自動凝固分析計 (Behring Coagulation System, Dade Behring Marburg GmbH, Marburg, Germany)で実施した。15μlのヒトシトレート血漿試料、30μlの試薬2及び70μlの試薬3を混合した。反応は40μlの試薬3を混合しながら加えることにより開始させた。反応混合物の吸光度を575nmで連続的に測定した。ラテックス粒子凝集速度は、試料中のVWF活性の関数であった。
【0072】
VWF活性は、標準ヒト血漿(Dade Behring Marburg GmbH, Marburg, Germany)を用いて検量線を作成することによって算出した。使用したVWFの目標値はBCS(登録商標)システムに対する公表リストセチン補因子値であった。標準ヒト血漿量を増加し、そして同時に対応する量の試薬2を減少させることによって、200%までのVWF活性が生じた。標準ヒト血漿を試薬2で希釈することにより、低いVWF活性が生じた。図2は標準的な検量線を表す。試料のVWF活性は、測定した反応速度を用いて検量線から読み取ることができた。
【0073】
試料中の特に低いVWF活性を測定するために、15又は30μlの試料よりはむしろ45μlの試料(上記を参照)が分析ミックスで使用された。キャリブレーションには、3%までの低いVWF活性が生じるように、標準ヒト血漿を試薬2で希釈した。この方法は、分析において極端に低いVWF活性を正確に測定することができ、これはフォンビルブラント症候群のサブタイプを分類するためにVWF活性/抗原比を算出するのに特に重要である。VWF依存性凝集は、反応混合物においてPVP濃度を0.35%に、そして試料量を60μlに増加させることにより更に増幅することができ、ひいては1%VWF及び0%VWFでも識別することを可能にした。結果として、タイプ3フォンビルブラント病(0%VWF)を、他のタイプの大規模欠乏症(例えば1〜5%)と高い信頼性で識別し得た。
【0074】
〔実施例6〕
VWF基質として尿素前処理した高分子量多量体VWF(P1648S)を用いた、ADAMTS−13プロテアーゼのVWF切断活性を測定する本発明の方法
1.反応緩衝液:1mmol/lのPefabloc SC (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)、12.5mmol/lのBaCl2、0.5mmol/lのTRIS、pH8.0;
2.基質緩衝液の調製及び室温で正確に5分間のインキュベーション:8.3U/ml
(830%)の高分子量多量体組換え生産VWF−P1648S、4.6mol/lの尿素、4.6mol/lのTRIS、pH8.0;
3.15μlのヒト血漿試料を300μlの反応緩衝液と混合し、次いで150μlの基質緩衝液と混合する;
4.37℃で4から8時間の分析混合物のインキュベーション;
5.実施例5に記載の試料として、本反応混合物を用いたVWF活性の測定。
【0075】
〔実施例7〕
VWF基質として尿素前処理した組換え高分子量多量体VWF(P1648S)を用いた、ADAMTS−13プロテアーゼのVWF切断活性を測定する本発明の方法
1.6μlのヒト血漿試料(反応緩衝液で1:6に希釈、実施例6を参照)を20μlの反応緩衝液と混合する;
2.ADAMTS−13プロテアーゼを活性化するために、37℃で5分間の混合物のインキュベーション:
3.12μlの基質緩衝液(5U/ml(500%)の組換え高分子量多量体VWF−P1648S、5mol/lの尿素、5mmol/lのTris−HCl、pH8.0)の添加;
4.37℃で20分間の分析ミックスのインキュベーション;
5.実施例5に記載の試料として、本反応混合物を用いたVWF活性の測定。
【0076】
〔実施例8〕
VWF基質として高分子量多量体VWF(P1648S)を用いてADAMTS−13プロテアーゼのVWF切断活性を測定し、そしてADAMTS−13分解あり/なしとの差を算出する本発明の方法
分析1:
1.10μlのヒト血漿試料を、20μlのADAMTS−13プロテアーゼ活性化緩衝液(18.75mmol/lのBaCl2、pH8.0、5mmol/lのTris−HCl、1.5mmol/lのPefabloc SC (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany))と混合する;
2.37℃で5分間の混合物のインキュベーション:
3.5mmol/lのTris−HCl中、pH8.0で1.25U/ml(125%)の組換えVWF基質(P1648S)を含む20μlの添加;
4.37℃で20分間の分析ミックスのインキュベーション;
5.実施例5に記載の試料として、本反応混合物を用いたVWF活性の測定。
【0077】
分析2:
別の10μlの同じヒト血漿試料を分析1のように処理したが、37℃で20分のインキュベーション工程(工程番号4を参照)を行なわず、VWF活性を、VWF基質(P1648S)の添加直後に、この反応混合物を試料として用いて実施例5のように測定するという点が異なった。分析1及び分析2のVWF活性の差は、分解したVWF活性の量、従って、ADAMTS−13の活性を与えた。血漿試料中のADAMTS−13の活性は、その値からキャリブレーションに基づき定量した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離GPIbαタンパク質と混合されて分析ミックスを与える試料中のフォンビルブラント因子(VWF)活性を測定する方法であって、
a)ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有する、アミノ酸配列を含む単離GPIbαタンパク質を使用すること;及び
b)その分析ミックスにリストセチンもボトロセチンも加えないこと;
を含む、方法。
【請求項2】
分析ミックスにリストセチン−又はボトロセチン−等価物質が加えられない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用するGPIbαタンパク質の位置233及び/又は239におけるアミノ酸置換Xaaがバリン又はセリン残基を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用するGPIbαタンパク質が組換え的又は合成的に調製される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
使用するGPIbαタンパク質がN末端で相同ヒトGPIbαシグナル配列(配列番号2)又は異種シグナル配列に融合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
使用するGPIbαタンパク質がC末端で1つ又はそれ以上の親和性タグに融合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
使用するGPIbαタンパク質がC末端でHisタグ、Flagタグ、Argタグ、c−Mycタグ及びStrepタグから成る群からの1つ又はそれ以上の親和性タグに融合する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
使用するGPIbαタンパク質が固相と結合する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
使用するGPIbαタンパク質が抗体を介して固相と結合する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
使用するGPIbα蛋白質が抗GPIbα抗体を介して固相と結合する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
GPIbαタンパク質が抗親和性タグ抗体を介して固相と結合する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
固相が微粒子固相である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
微粒子固相がラテックスを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
VWF活性が微粒子固相のGPIbα仲介凝集に基づいて測定される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
使用するGPIbαタンパク質が、VM16d及びSZ2から成る群からのモノクローナル抗GPIbα抗体を介して微粒子固相と結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
使用するGPIbαタンパク質がC末端で1つ又はそれ以上のFlagタグに融合し、そして抗Flag抗体を介して微粒子固相と結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
分析ミックスが界面活性剤、好ましくはツィーン(登録商標)20、テシット、トリトン界面活性剤及びドデシル硫酸ナトリムから成る群からの界面活性剤を含む、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
分析ミックスが0.02g/l〜20g/lの濃度のツィーン(登録商標)20を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
固相が非微粒子固相である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
固相がミクロ滴定プレートの表面である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
使用するGPIbαタンパク質が、VM16d及びMB45から成る群からのモノクローナル抗GPIbα抗体を介して非微粒子固相と結合する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
使用するGPIbαタンパク質がC末端で1つ又はそれ以上のFlagタグに融合し、そして抗Flag抗体を介して非微粒子固相と結合する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項23】
試料がヒト又は動物起源の生体液である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
試料が基質として単離VWFを加えられている生体液を含む反応混合物である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有し、そしてGPIbαタンパク質が微粒子固相と結合する、アミノ酸配列を含むGPIbαタンパク質を含有する試薬を含む、請求項1に記載の方法を行なうための検査キット。
【請求項26】
ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有するアミノ酸配列を含むGPIbαタンパク質が結合する非微粒子固相を含む、請求項1に記載の方法を行なうための検査キット。
【請求項27】
GPIbαタンパク質が抗体を介して非微粒子固相に結合する、請求項26に記載の検査キット。
【請求項28】
非微粒子固相がミクロ滴定プレートである、請求項27に記載の検査キット。
【請求項29】
抗VWF抗体を含有する試薬を更に含む、請求項27に記載の検査キット。
【請求項30】
インビトロでフォンビルブラント因子(VWF)活性を測定する方法における、ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有するアミノ酸配列を有する単離GPIbαタンパク質の使用であって、ここでリストセチンもボトロセチンもVWF活性を測定する該方法において用いない使用。
【請求項31】
GPIbαタンパク質の位置233及び/又は239のアミノ酸置換Xaaがバリン又はセリン残基を含む、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有する、アミノ酸配列を有する単離GPIbαタンパク質の取得方法であって、該GPIbαタンパク質を組換え技術により原核細胞又は真核細胞の培養で発現させること;及び親和性担体を用いる親和性クロマトグラフィーにより、細胞溶解物又は細胞培養上清から上記GPIbαタンパク質を単離すること;を含む方法。
【請求項33】
以下の工程:
a)ADAMTS−13プロテアーゼを含むことが疑われる試料を、基質としての単離VWFと混合して反応ミックスを得ること;
b)該反応ミックスをインキュベートすること;そして
c)反応ミックス中の残存VWF活性を測定すること;
を含む、試料中のADAMTS−13プロテアーゼのフォンビルブラント因子(VWF)切断活性を測定する方法であって、野生型VWFモノマーで構成される高分子量マルチマーVWFであるVWF基質と比べて、少なくとも1つのアミノ酸配列変異を有し、上記VWF基質が促進的にADAMTS−13によって分解されることをもたらすVWFモノマーを含む高分子量マルチマーVWFである、VWF基質を含む方法。
【請求項34】
高分子量マルチマーVWFで構成されるVWF基質のVWFモノマーが、以下の群:
P1648S、E1638K、G1505R、S1506L、M1528V、R1569del、R1597W、V1607D、G1609R、G1629E、G1631D、R1597Q、V1499E及びY1584C;
からの少なくとも1つのアミノ酸配列変異を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
高分子量マルチマーVWF基質が組換え法で生産される、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
高分子量マルチマーVWF基質が、適したVWFアミノ酸配列変異のヘテロ接合性又はホモ接合性キャリアのドナー血漿から単離されている、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項37】
工程a)が試料を更にヘパリンと混合することを含む、請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
工程a)が、試料を、単離天然GPIbαタンパク質及び/又は組換え野生型GPIbαタンパク質、及びリストセチン又はボトロセチンと更に混合することを含む、請求項33〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
工程a)が、試料を、ヒトGPIbαタンパク質の野生型配列(配列番号1)と比べた場合、少なくともアミノ酸残基1〜268を含み、そしていずれの場合にも位置233及び239に1つのアミノ酸置換Xaaを有するアミノ酸配列を含む、組換え又は合成GPIbαタンパク質と更に混合することを含む、請求項33〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
使用するGPIbαタンパク質の位置233及び/又は239のアミノ酸置換Xaaがバリン又はセリン残基を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
工程c)が、リストセチン補因子活性を測定することにより反応ミックス中の残存VWF活性を測定することを含む、請求項33〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
工程c)が、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法により反応ミックス中の残存VWF活性を測定することを含む、請求項33〜37のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−532467(P2010−532467A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513781(P2010−513781)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005416
【国際公開番号】WO2009/007051
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(398032751)シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・プロダクツ・ゲーエムベーハー (36)
【Fターム(参考)】