説明

リスペリドン含有口腔内崩壊錠及びその製造方法

【課題】熱や湿度に対する安定性に優れており、しかも良好な服用感を有するリスペリドン含有口腔内崩壊錠及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】リスペリドン、水溶性糖類、カルメロースカルシウム及びカルメロースを含み、クロスポビドンを含まず、且つカルメロースカルシウムとカルメロースとの重量割合が前者:後者=1:1〜10:1の範囲内であることを特徴とするリスペリドン含有口腔内崩壊錠、並びにその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗精神病剤として有用なリスペリドンを含有する口腔内崩壊錠及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内崩壊錠は、水なしで服用することができ、高齢者、小児、嚥下困難な患者等に、飲みやすい剤形であり、高齢化社会の到来や患者のコンプライアンス向上のため、その意義が重要視されるようになって来た。特に、抗精神病剤の場合、服用が容易な口腔内崩壊錠は、患者の積極的な治療への参加、服薬行動の向上に繋がるものと期待されている。
【0003】
従来、リスペリドン含有口腔内崩壊錠としては、リスペリドン、結晶セルロース、無機賦形剤、カルメロース及び滑沢剤を含有するものが公知である(特許文献1参照)。しかし、このリスペリドン含有口腔内崩壊錠には、錠剤中の大半を水難溶性の物質が占めるため、口当たりが悪いという欠点がある。
【0004】
また、リスペリドン、クロスポピドン、マンニトール、ポビドン、デキストレート等を含有するリスペリドン含有口腔内崩壊錠が公知である(特許文献2参照)しかし、このリスペリドン含有口腔内崩壊錠は、後述の比較データを参照すれば、クロスポビドンを含むことによって、製剤の熱安定性が不十分であると推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/081774号公報
【特許文献2】特開2007−507548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱や湿度に対する安定性に優れており、しかも良好な服用感を有するリスペリドン含有口腔内崩壊錠及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、水溶性糖類を含み、クロスポビドンを含まず、且つカルメロースカルシウムとカルメロースとを特定割合で含むリスペリドン含有口腔内崩壊錠によれば、良好な服用感を有し、熱や湿度に対する安定性に優れることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下に示す、リスペリドン含有口腔内崩壊錠及びその製造方法を提供するものである。
【0009】
1.リスペリドン、水溶性糖類、カルメロースカルシウム及びカルメロースを含み、クロスポビドンを含まず、且つカルメロースカルシウムとカルメロースとの重量割合が前者:後者=1:1〜10:1の範囲内であることを特徴とするリスペリドン含有口腔内崩壊錠。
【0010】
2.水溶性糖類が、D−マンニトールである上記項1に記載のリスペリドン含有口腔内崩壊錠。
【0011】
3.カルメロースカルシウムとカルメロースとの合計含有量が、錠剤重量の10〜30重量%である上記項1又は2に記載のリスペリドン含有口腔内崩壊錠。
【0012】
4.リスペリドン、水溶性糖類、カルメロースカルシウム及びカルメロースを含み、クロスポビドンを含まず、カルメロースカルシウムとカルメロースとの重量割合が前者:後者=1:1〜10:1の範囲内である混合粉末を、結合剤を含む溶液を用いて流動層造粒した後、添加剤を混合し、次いで、打錠することを特徴とするリスペリドン含有口腔内崩壊錠の製造方法。
【0013】
5.結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロースである上記項4に記載のリスペリドン含有口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠及びその製造方法によれば、以下の如き格別顕著な効果を得ることができる。
【0015】
(1)本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠は、熱や湿度に対する安定性に優れる。これは、後記実施例及び比較例に示される通り、崩壊剤として、クロスポビドンを含まず、且つカルメロースカルシウムとカルメロースとを重量割合が前者:後者=1:1〜10:1の範囲内で含むことによるものと考えられる。
【0016】
(2)また、本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠は、口当たりが良く、良好な服用感を有している。これは、特に、賦形剤として、水溶性糖類を含有していることによるものと考えられる。また、当該口腔内崩壊錠は、口溶け性が良好である。
【0017】
(3)更に、本発明の製造方法によれば、流動層造粒法により、特殊な製造設備を用いることなく、熱や湿度に対する安定性に優れており、しかも良好な服用感を有するリスペリドン含有口腔内崩壊錠を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
リスペリドン含有口腔内崩壊錠
本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠は、リスペリドン、水溶性糖類、カルメロースカルシウム及びカルメロースを含み、クロスポビドンを含まず、且つカルメロースカルシウムとカルメロースとの重量割合が前者:後者=1:1〜10:1の範囲内であることによって、特徴付けられる。
【0019】
リスペリドン
リスペリドンは、本発明口腔内崩壊錠の薬効成分であり、化学名が3−[2−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)ピペリジノ] エチル]−6,7,8,9−テトラヒドロ−2−メチル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オンである。リスペリドンは、ドパミンD受容体拮抗作用及びセロトニン5−HT2A受容体拮抗作用により、統合失調症に効果を示すと考えられ、抗精神病剤として有用である。
【0020】
添加剤
本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠においては、リスペリドン以外の製剤成分として、賦形剤として、水溶性糖類を含有することを必須とする。水溶性糖類によって、良好な服用感が発揮されるものと考えられる。水溶性糖類の含有量は、錠剤重量の40〜90重量%程度の範囲であるのが好ましい。
【0021】
また、本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠においては、リスペリドン以外の製剤成分として、崩壊剤として、クロスポビドンを含まず、且つカルメロースカルシウムとカルメロースとを重量割合が前者:後者=1:1〜10:1の範囲内で含むことを必須とする。崩壊剤として、クロスポビドンを含んでいる場合は熱に対する安定性が低下する場合があり、又カルメロースが上記範囲より少ない場合も熱に対する安定性が低下する場合があるので、いずれも好ましくない。カルメロースカルシウムとカルメロースとの合計含有量は、錠剤重量の10〜30重量%程度の範囲であるのが好ましい。
【0022】
本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠においては、リスペリドン、水溶性糖類、カルメロースカルシウム及びカルメロース以外に、製薬分野において通常使用される薬理学的に許容される各種添加剤、例えば、水溶性糖類以外の賦形剤、結合剤、カルメロースカルシウム及びカルメロース以外の崩壊剤、滑沢剤、矯味剤等の添加剤を、適宜組み合わせて、用いることができる。
【0023】
本発明口腔内崩壊錠の賦形剤として用いられる水溶性糖類としては、水に容易に溶解するものが好ましく、具体的には、例えば、D−マンニトール、デキストリン、白糖、果糖、乳糖、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、ラクチトールなどが挙げられる。これらの内、特にD−マンニトールが好ましい。これらの水溶性糖類は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
水溶性糖類以外の賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、軽質無水ケイ酸、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの賦形剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
カルメロースカルシウム及びカルメロース以外の崩壊剤としては、例えば、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、各種デンプン類などが挙げられる。これらの崩壊剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
結合剤としては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール、プルラン、デキストリン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、部分α化デンプン、寒天などが挙げられる。これらの結合剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
これらの賦形剤、崩壊剤及び結合剤である添加剤の割合は、リスペリドン100重量部に対して、100〜12000重量部程度の範囲から選択でき、通常、300〜10000重量部程度、好ましくは500〜8000重量部程度である。
【0028】
本発明において、賦形剤、崩壊剤及び結合剤以外に、必要に応じて用いられるその他の添加剤としては、例えば、滑沢剤、矯味剤、流動化剤、帯電防止剤、着色剤、香料、界面活性剤、湿潤剤、充填剤、増量剤、吸着剤、保存剤(例えば防腐剤など)、緩衝剤などを挙げることができる。
【0029】
上記滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、水素添加植物油、マイクロクリスタリンワックス、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールなどを挙げることができる。矯味剤としては、例えば、クエン酸、無水クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、グリシン、アラニン、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオシドなどを挙げることができる。流動化剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、乾燥水酸化アルミニウムゲル、カオリン、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルクなどが挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸などを挙げることができる。着色剤としては、例えば、タール色素、酸化鉄、カラメル、ベンガラ、酸化チタン、天然色素などを挙げることができる。香料としては、例えば、ストロベリーフレーバー、レモンフレーバー、レモンライムフレーバー、オレンジフレーバー、l−メントール、ハッカ油などが挙げられる。
【0030】
これらその他の添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのその他の添加剤は、特に、最終製剤中の含量に制限はない。
【0031】
リスペリドン含有口腔内崩壊錠の製造方法
本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠の製造方法としては、特に限定されず、例えば、リスペリドン及び各種添加剤を含む製剤原料を、流動層造粒、高速撹拌造粒、転動造粒、押出造粒等の各種造粒法;乳鉢混合等によって、混合後、更に滑沢剤等の添加剤を混合し、打錠することによって、製造することができる。リスペリドン含有口腔内崩壊錠の好ましい製造方法としては、例えば、リスペリドン、水溶性糖類、カルメロースカルシウム及びカルメロースを含み、カルメロースカルシウムとカルメロースとの重量割合が前者:後者=1:1〜10:1の範囲内である混合粉末を、結合剤を含む溶液を用いて流動層造粒した後、添加剤を混合し、次いで、打錠することを特徴とするリスペリドン含有口腔内崩壊錠の製造方法が挙げられる。
【0032】
リスペリドン含有口腔内崩壊錠の上記好ましい製造方法においては、通常、リスペリドンと、賦形剤である水溶性糖類及び崩壊剤である特定割合のカルメロースカルシウム及びカルメロースを含み、更に必要に応じて、矯味剤等のその他の添加剤を含む製剤原料を用いて、結合剤を含む溶液を用いて流動層造粒を行った後、滑沢剤等の添加剤を混合後打錠することによって、リスペリドン含有口腔内崩壊錠を調製する。
【0033】
リスペリドン含有口腔内崩壊錠の上記製造方法においては、先ず、第1工程として、リスペリドンと、水溶性糖類及び特定割合のカルメロースカルシウム及びカルメロースとを含み、更に必要に応じて、矯味剤等のその他の添加剤を含む製剤原料を混合した粉末を、結合剤を含む溶液を用いて流動層造粒を行う。流動層造粒は、例えば、流動層造粒装置を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤を含む水溶液を、上記混合粉末にスプレーしながら、混合・造粒することが好ましい。流動層造粒の温度条件、スプレー速度等は、適宜決定すればよい。流動層造粒装置としては、「MP−01」(パウレック社製)、「FLO−5」(フロイント社製)等の市販品を用いることができる。
【0034】
流動層造粒で得られた造粒物は、乾燥後、整粒機を用いて整粒するのが好ましい。整粒に使用する装置としては、特に制限はないが、例えば、「パワーミル」(不二パウダル(株)製)、「コーミル」(パウレック社製)、「ロールグラニュレーター」(日本グラニュレーター(株)製)等の整粒機が挙げられる。また、篩などを使用して整粒してもよい。
【0035】
次いで、第2工程として、流動層造粒によって得られた造粒物に、通常、滑沢剤等の添加剤の少なくとも1種を混合した後、常法により、打錠を行う。打錠機としては、医薬品の製造に使用しうるものであれば特に制限はなく、例えばロータリー式打錠機や単発打錠機などが使用される。
【0036】
かくして得られる本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠を使用する場合には、ヒトに、統合失調症に対する治療有効量を投与すればよい。患者の年令、体重、症状、性別などにより投与量は変わりうるが、通常、1日当たり、1回または数回に分けて、リスペリドンとして、例えば0.25〜12mg程度を、水無しで、唾液のみで経口的に投与することができる。この場合において、本発明のリスペリドン口腔内崩壊錠は、口腔内崩壊性が、通常口腔内崩壊時間50秒以内程度と良好である。
【0037】
本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠は、通常、PTP包装またはボトル包装(例:プラスチック瓶、ガラス瓶、アルミニウム缶)されていてもよい。また、それらの包装された錠剤は、さらにピロー包装等の二次包装されていてもよい。包装中には脱臭剤、乾燥剤、脱酸素剤等を同封しても良い。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0039】
実施例1
リスペリドン1g、D−マンニトール77g、カルメロース10g及びカルメロースカルシウム10g、ヒドロキシプロピルセルロース1gを、磁性乳鉢に入れ混合後、そこに水を加えて、均一に分散させた。次に、恒温機(商品名「ミニジェットオーブンMO-92T」、富山産業(株)製)にて乾燥を行い、造粒物を得た。得られた造粒物を22号篩で整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸マグネシウム1gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を、小型卓上ロータリー打錠機(商品名「PICCOLA」、RIVA社製)を用いて打錠し、1錠当たりのリスペリドン含有量0.5mg、1錠重量50mgの口腔内崩壊錠を得た。
【0040】
実施例2
流動層造粒機(商品名「マルチプレックスMP-01」、パウレック(株)製)にて、リスペリドン6g、D−マンニトール504g、カルメロース18g及びカルメロースカルシウム60gを、給気温度70℃で混合し、そこにヒドロキシプロピルセルロース6gを含む水溶液をスプレーした。続いて給気温度70℃で乾燥し、造粒物を得た。得られた造粒物を22号篩で整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸マグネシウム6gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を、小型卓上ロータリー打錠機(商品名「PICCOLA」、RIVA社製)を用いて打錠し、1錠当たりのリスペリドン含有量0.5mg、1錠重量50mgの口腔内崩壊錠を得た。
【0041】
実施例3
リスペリドン1g、D−マンニトール86g、カルメロース1g及びカルメロースカルシウム10g、ヒドロキシプロピルセルロース1gを、磁性乳鉢に入れ混合後、そこに水を加えて、均一に分散させた。次に、恒温機(商品名「ミニジェットオーブンMO-92T」、富山産業(株)製)にて乾燥を行い、造粒物を得た。得られた造粒物を22号篩で整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸マグネシウム1gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を、小型卓上ロータリー打錠機(商品名「PICCOLA」、RIVA社製)を用いて打錠し、1錠当たりのリスペリドン含有量0.5mg、1錠重量50mgの口腔内崩壊錠を得た。
【0042】
実施例4
流動層造粒機(商品名「マルチプレックスMP-01」、パウレック(株)製)にて、リスペリドン6g、D−マンニトール516g、カルメロース6g及びカルメロースカルシウム60gを、給気温度70℃で混合し、そこにヒドロキシプロピルセルロース6gを含む水溶液をスプレーした。続いて給気温度70℃で乾燥し、造粒物を得た。得られた造粒物を22号篩で整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸マグネシウム6gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を、小型卓上ロータリー打錠機(商品名「PICCOLA」、RIVA社製)を用いて打錠し、1錠当たりのリスペリドン含有量0.5mg、1錠重量50mgの口腔内崩壊錠を得た。
【0043】
実施例5
リスペリドン1g、D−マンニトール57g、無水リン酸水素カルシウム20g、カルメロース10g及びカルメロースカルシウム10g、ヒドロキシプロピルセルロース1gを、磁性乳鉢に入れ混合後、そこに水を加えて、均一に分散させた。次に、恒温機(商品名「ミニジェットオーブンMO-92T」、富山産業(株)製)にて乾燥を行い、造粒物を得た。得られた造粒物を22号篩で整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸マグネシウム1gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を、小型卓上ロータリー打錠機(商品名「PICCOLA」、RIVA社製)を用いて打錠し、1錠当たりのリスペリドン含有量0.5mg、1錠重量50mgの口腔内崩壊錠を得た。
【0044】
実施例6
リスペリドン1g、D−マンニトール85g、無水リン酸水素カルシウム1g、カルメロース1g及びカルメロースカルシウム10g、ヒドロキシプロピルセルロース1gを、磁性乳鉢に入れ混合後、そこに水を加えて、均一に分散させた。次に、恒温機(商品名「ミニジェットオーブンMO-92T」、富山産業(株)製)にて乾燥を行い、造粒物を得た。得られた造粒物を22号篩で整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸マグネシウム1gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を、小型卓上ロータリー打錠機(商品名「PICCOLA」、RIVA社製)を用いて打錠し、1錠当たりのリスペリドン含有量0.5mg、1錠重量50mgの口腔内崩壊錠を得た。
【0045】
比較例1
リスペリドン1g、D−マンニトール87g、カルメロース10g、ヒドロキシプロピルセルロース1gを、磁性乳鉢に入れ混合後、そこに水を加えて、均一に分散させた。次に、恒温機(商品名「ミニジェットオーブンMO-92T」、富山産業(株)製)にて乾燥を行い、造粒物を得た。得られた造粒物を22号篩で整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸マグネシウム1gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を、小型卓上ロータリー打錠機(商品名「PICCOLA」、RIVA社製)を用いて打錠し、1錠当たりのリスペリドン含有量0.5mg、1錠重量50mgの口腔内崩壊錠を得た。
【0046】
比較例2
リスペリドン1g、D−マンニトール87g、カルメロースカルシウム10g、ヒドロキシプロピルセルロース1gを、磁性乳鉢に入れ混合後、そこに水を加えて、均一に分散させた。次に、恒温機(商品名「ミニジェットオーブンMO-92T」、富山産業(株)製)にて乾燥を行い、造粒物を得た。得られた造粒物を22号篩で整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸マグネシウム1gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を、小型卓上ロータリー打錠機(商品名「PICCOLA」、RIVA社製)を用いて打錠し、1錠当たりのリスペリドン含有量0.5mg、1錠重量50mgの口腔内崩壊錠を得た。
【0047】
比較例3
リスペリドン1g、D−マンニトール87.5g、クロスポビドン3g、カルメロース1.5g及びカルメロースカルシウム5g、ヒドロキシプロピルセルロース1gを、磁性乳鉢に入れ混合後、そこに水を加えて、均一に分散させた。次に、恒温機(商品名「ミニジェットオーブンMO-92T」、富山産業(株)製)にて乾燥を行い、造粒物を得た。得られた造粒物を22号篩で整粒した。得られた整粒物、ステアリン酸マグネシウム1gを混合して打錠前粉末を得た。本粉末を、小型卓上ロータリー打錠機(商品名「PICCOLA」、RIVA社製)を用いて打錠し、1錠当たりのリスペリドン含有量0.5mg、1錠重量50mgの口腔内崩壊錠を得た。
【0048】
実施例1〜6及び比較例1〜3で得た各リスペリドン含有口腔内崩壊錠について、安定性試験及び溶出試験を行った。各試験方法は、以下の通りである。
【0049】
安定性試験方法
安定性試験として、25℃・75%RH開放下又は50℃密栓下で、4週間保存後、生成したリスペリドンの類縁物質をHPLCにより測定し、類縁物質生成率(%)を算出した。リスペリドンの類縁物質としては、加水分解生成物であるR2〜R4、酸化生成物であるR5 及びR6等が知られているが、ここでは熱や湿度によって、最も増加しやすい酸化生成物の一つR5を測定した。
【0050】
溶出試験方法
溶出試験器(富山産業(株)製)を用いて、第十五改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法:毎分50回転)に準じて、試験液を水として、溶出試験を行った。15分後のリスペリドンの溶出率(%)を、HPLC法によって、測定した。
【0051】
表1に、各実施例及び比較例で得た各リスペリドン含有口腔内崩壊錠について、安定性試験及び溶出試験の結果を示した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から明らかなように、水溶性糖類であるD−マンニトールを含み、クロスポビドンを含まず、且つカルメロースカルシウムとカルメロースとを特定割合で含む各実施例のリスペリドン含有口腔内崩壊錠は、いずれも、熱や湿度に対する安定性に優れていた。これに対して、比較例1では、カルメロースカルシウムを含んでいないために、溶出性が大きく低下している。また、比較例2では、カルメロースを含んでいないために、熱に対する安定性が低下している。更に、比較例3では、クロスポビドンを含んでいるために、熱に対する安定性が低下している。
【0054】
また、実施例1〜6及び比較例1〜3で得た各リスペリドン含有口腔内崩壊錠について、口腔内崩壊時間(口腔内で口を動かさずに崩壊するまでの時間)を測定したところ、いずれも50秒以内であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のリスペリドン含有口腔内崩壊錠は、熱や湿度に対する安定性に優れており、しかも良好な服用感を有しており、抗精神病剤として有用であり、本発明は製薬業分野において有効に利用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リスペリドン、水溶性糖類、カルメロースカルシウム及びカルメロースを含み、クロスポビドンを含まず、且つカルメロースカルシウムとカルメロースとの重量割合が前者:後者=1:1〜10:1の範囲内であることを特徴とするリスペリドン含有口腔内崩壊錠。
【請求項2】
水溶性糖類が、D−マンニトールである請求項1に記載のリスペリドン含有口腔内崩壊錠。
【請求項3】
カルメロースカルシウムとカルメロースとの合計含有量が、錠剤重量の10〜30重量%である請求項1又は2に記載のリスペリドン含有口腔内崩壊錠。
【請求項4】
リスペリドン、水溶性糖類、カルメロースカルシウム及びカルメロースを含み、クロスポビドンを含まず、カルメロースカルシウムとカルメロースとの重量割合が前者:後者=1:1〜10:1の範囲内である混合粉末を、結合剤を含む溶液を用いて流動層造粒した後、添加剤を混合し、次いで、打錠することを特徴とするリスペリドン含有口腔内崩壊錠の製造方法。
【請求項5】
結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロースである請求項4に記載のリスペリドン含有口腔内崩壊錠の製造方法。




【公開番号】特開2013−60392(P2013−60392A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199768(P2011−199768)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000209049)沢井製薬株式会社 (24)
【Fターム(参考)】